説明

蓋の支持装置

【課題】蓋を容易に着脱できるとともに、蓋の幅方向のガタツキを無くして滑らかに開閉することができ、しかも簡単な構造で強度のある蓋開閉装置を提供する。
【解決手段】ケース本体1の開口部2の相対する内面に形成された第一の軸4並びに第二の軸5と、これらの軸に回動自在に嵌合する第一の軸受部並びに第二の軸受部を備えた蓋6とから構成され、第一の軸4は、左右にカット面4cが形成された軸部4aと扁平な面接段部4bとからなり、第二の軸5は、円柱状の軸部と扁平な面接段部とからなり、第一の軸受部は、受孔と、この受孔から蓋6の端面に向かって延びてその先端が蓋6の端面で開口する溝とを備え、第一の軸の面接段部4bは軸部4aから蓋の取り出し方向に延設され、第二の軸の面接段部は軸部から蓋の取り出し方向とは反対方向に延設されている構造とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分光光度計等の分析装置の箱体や筐体の開口部を開閉する蓋の支持装置に関し、特に、回転軸を中心に回動する蓋を着脱可能に支持する支持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
分光光度計では、測定試料を取り付ける試料室が設けられており、試料室内を通過する測定光路上に測定試料を取り付けるようにし、試料室の蓋を閉じて外光を遮光した状態で透過率や反射率の光学測定が行われる。
また、分光光度計では、通常の測定以外に、特別な光学系を用いて光学測定することができるように、試料室に着脱可能な測定ユニットがオプション部品として用意されている。具体的には、例えば、試料表面の散乱反射測定のための積分球を用いた測定ユニット等が用意されており、試料室の蓋を取り外すことで、これらの測定ユニットを取り付けることができるようにしてある。そのため試料室では、開閉のため回動する蓋が、試料室本体に対し、着脱可能に支持されている。
【0003】
蓋を着脱可能に支持する支持装置には、蓋を簡単な機構で容易に着脱できること、並びに、蓋を取り付けた際、軸方向、即ち蓋の幅方向のガタツキを無くして滑らかに回動できることが要求されている。
【0004】
図8に、従来の着脱可能な蓋の支持装置の一例を示す。
この支持装置では、蓋10に一対の取付片11、11が設けられ、この取付片11、11に軸受孔12または軸13’(図8(b)参照)が設けられている。また、ケース本体14に形成された開口部15の相対する内側面16に軸13または軸受孔12’(図8(b)参照)が設けられていて、この軸13(または13’)に軸受孔12(または12’)を嵌合させて蓋10を取り付けている。
上記の構成において、蓋10を取り付け、または取り外す場合、取付片11を撓ませて軸受孔12または12’を軸13または13’に嵌め込み、または軸から取り外すようにしている。
この方法では、蓋を支える取付片11が撓む構造であるため、軸支持部分の強度が弱くなるといった欠点があった。
【0005】
また、別の方法として、例えば特許文献1に示すように、軸(凸部)が軸受孔(回動孔)に対して弾力的に出没するようにしたものがある。しかしこの方法では、軸を付勢するための弾性部材を必要とすると共に、これらを組み込むための機構が複雑となってコスト高になるといった欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−254555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明は、蓋を容易に着脱できるとともに、蓋の幅方向のガタツキを無くして滑らかに開閉することができ、しかも簡単な構造で強度のある蓋開閉装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明では次のような技術的手段を講じた。即ち、本発明の蓋の支持装置は、ケース本体の開口部の相対する内面に形成された第一の軸並びに第二の軸と、前記第一の軸に回動自在に嵌合する第一の軸受部並びに前記第二の軸に回動自在に嵌合する第二の軸受部を備えた蓋とから構成され、前記第一の軸は、互いに平行をなすカット面が左右に形成された軸部と、この軸部の根元部から軸部の軸線と直交する方向でカット面の面方向に沿って延出された扁平な面接段部とからなり、前記第二の軸は、円柱状の軸部と、この軸部の根元部で軸部の軸線と直交する方向に延出された扁平な面接段部とからなり、前記第一の軸受部は、前記第一の軸の軸部を回動自在に受け入れる円形の受孔と、この受孔から蓋の端面に向かって延びてその先端が蓋の端面で開口する溝とを備え、前記溝の幅が前記軸部の左右のカット面の間隔と略同じ寸法で形成されており、前記第一の軸の面接段部は第一の軸の軸部から蓋の取り出し方向に向かって延設され、前記第二の軸の面接段部は第二の軸の軸部から蓋の取り出し方向とは反対方向に向かって延設されている構成とした。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、開閉動作の際、第一の軸並びに第二の軸の面接段部の平らな面が、蓋の左右の側面に面接触して両者間に隙間が生じることがなく、これにより蓋の左右方向(幅方向)のガタツキがなくなって、滑らかに開閉することができる。また、軸や軸受部分に撓みや弾性変形する要素を全く備えていないので、簡単な構造で強度の高い蓋の支持装置を得ることができる。
また、第一の軸の左右のカット面と第一の軸受部の溝方向を一致させた状態で、蓋を第二の軸を支点として傾斜姿勢で引き上げた際、第一の軸受部の溝が引き上げ方向とは反対側に位置しているので、第一の軸が邪魔になることなく、蓋を引き出すことができる。また、第二の軸の面接段部は蓋の取り出し方向とは反対方向に向かって形成されているので、蓋を傾斜させた時に蓋の側面がこの面接段部に当たって邪魔になることはない。これにより、蓋の着脱が容易にできる。
また、蓋取り付け時において、第一の軸の面接段部が軸部から蓋の取り出し方向側に設けられているので、第一の軸受部の受穴を軸部に嵌め込んだ時に、蓋の側面が面接段部の平らな面に接触している状態となって、この面接段部に干渉されることなく蓋を回動することができるといった効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る蓋の支持装置の斜視図である。
【図2】図1に示した蓋の支持装置の要部を示す拡大斜視図である。
【図3】本発明における第二の軸を示す拡大斜視図である。
【図4】本発明における蓋の要部を示す斜視図である。
【図5】図4に示した蓋の第一の軸受部を示す拡大斜視図である。
【図6】図4に示した蓋の第二の軸受部を示す拡大斜視図である。
【図7】蓋の着脱手順を示す断面図である。
【図8】従来の蓋の支持装置の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る蓋の支持装置を、図1〜図7に示した分光光度計における試料室の蓋構造の実施例に基づいて詳細に説明する。
図1に示すように、分光光度計のケース本体1は、その上壁面に開口部2と、この開口部2を開閉する蓋6(蓋は仮想線で示す)とが設けられている。開口部2の内側は試料室になっている。
【0012】
図2に示すように、ケース本体1の開口部2の相対する内面3、3に、第一の軸4と第二の軸5が相対向した状態で、かつ、その軸線(正確には後述する軸部4a、5aの軸線)が一致するようにして配置され、ケース本体1に一体的に形成されている。
第一の軸4は、円柱体の左右周面に互いに平行をなすカット面4c、4cが形成された軸部4aと、この軸部4aの根元部から軸部4aの軸線と直交する方向でカット面の面方向に沿って延出された扁平な面接段部4bとからなる。本実施例では、この面接段部4bは、カット面4c、4cの間隔と同じ幅で形成され、かつ面接段部4bの左右側面4d、4dが軸部4aのカット面4c、4cと同一平面をなすように連続して形成されている。また、面接段部4bは、軸部4aから蓋6の取り出し方向となる垂直な上方向に向かって形成されている。
【0013】
第二の軸5は、図3に示すように、円柱状の軸部5aと、この軸部5aの根元部で軸部5aの軸線と直交する方向に延出された扁平な面接段部5bとからなる。この面接段部5bは、軸部5aから蓋6の取り出し方向とは反対方向となる垂直な下方向に向かって形成されている。
第一の軸4並びに第二の軸5の面接段部4b、5bの平らな面4e、5cは、蓋6の左右の側面6a、6aに面接触する当接面を形成する。
【0014】
蓋6は、図4〜図6に示すように、その左右側面6a、6aに、前記第一の軸4に回動自在に嵌合する第一の軸受部7、並びに前記第二の軸5に回動自在に嵌合する第二の軸受部8を備えている。
第一の軸受部7は、前記第一の軸4の軸部4aを回動自在に受け入れる受孔7aと、この受孔7aから蓋6の端面6bに向かって延びて、その先端が蓋の端面6bで開口する溝7bとを備えている。この溝7bの幅は、軸部4aの左右のカット面4c、4cの間隔と略同一寸法で形成され、カット面4c、4cが嵌り込めるようにしてある。
第二の軸受部8は、第二の軸5の軸部5aを回動自在に受け入れる真円の穴で形成されている。
【0015】
第一の軸4の軸部4a並びに第二の軸5の軸部5aは、蓋6の第一の軸受部7の受孔7a並びに第二の軸受部8に対してそれぞれ嵌合して円滑に回動するように各寸法が設定されている。また、蓋6が開閉動作する際、第一の軸4並びに第二の軸5の面接段部4b、5bの平らな面4e、5cが、蓋6の左右の側面6a、6aに面接触して両者間に隙間が生じることがないように形成されている。
【0016】
次に、蓋の着脱手順の動作について説明する。
図7(a)では、蓋6の第一の軸受部の受孔7aが第一の軸の軸部4aに嵌合し、第二の軸受部8が第二の軸の軸部5aに嵌合することによって、蓋6がケース本体1の開口部2に取り付けられている。
この状態で、蓋6は軸部4a、5aを支点として図1並びに図2の仮想線で示す水平な閉じた姿勢から上方に回動することによって開閉することができる。この開閉動作の際、第一の軸4並びに第二の軸5の面接段部4b、5bの平らな面4e、5cが、蓋6の左右の側面6a、6aに面接触して両者間に隙間が生じることがないように形成されているので、蓋6の左右方向のガタツキが生じない。
【0017】
蓋6を取り外す時は、図7(b)に示すように、蓋6を垂直に立てて、軸部4aの左右のカット面4c、4cと溝7bとの方向を一致させる。
次いで、図7(c)に示すように、第一の軸受部7を設けた側が上位となるように、蓋6を、軸部5aを支点として少し傾斜させるように引き上げる。この際、第一の軸受部の溝7bが引き上げ方向とは反対側、即ち下向きに開口しているので、引き上げ上位側にある面接段部4bが邪魔になることなく、溝7bを軸部4aのカット面4c、4cに沿って摺動させることができる。これにより、図7(d)に示すように第一の軸受部7を軸部4aから上方に引き抜くことができる。また、第二の軸5の面接段部5bは軸部5aから蓋6の取り出し方向とは反対方向となる垂直な下方向に向かって形成されているので、蓋6を傾斜させた時に蓋7の側面が面接段部5bに当たって邪魔になることはない。
【0018】
また、蓋6を取り付ける時は、上記した手順と逆にして行う。即ち、蓋6を垂直に立てて、図7(d)から(c)の手順を経て(b)のように取り付ける。この蓋取り付け時において、第一の軸4の面接段部4bが軸部4aから上方側(蓋の取り出し方向側)に設けられているので、第一の軸受部7の受穴7aを軸部4aに嵌め込んだ時(図7(b)参照)に、蓋6の側面6aが面接段部4bの平らな面4eに接触している状態となる。これにより、面接段部4bに干渉されることなく蓋6を回動することができる。
【0019】
以上、本発明の代表的な実施例について説明したが、本発明は必ずしも上記の実施形態に特定されるものでない。例えば、上記実施例では第一の軸4並びに第二の軸5はケース本体1と一体的に形成したが、これらの軸を別部材で形成して、ビスや接着剤などの取付手段を介してケース本体1に取り付けるようにしてもよい。その他本発明の目的を達成し、請求の範囲を逸脱しない範囲内で適宜修正、変更することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明は、分光光度計等の分析機器の試料室を開閉する蓋の支持装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0021】
1 ケース本体
2 開口部
4 第一の軸
4a 第一の軸の軸部
4b 第一の軸の面接段部
4c カット面
5 第二の軸
5a 第二の軸の軸部
5b 第二の軸の面接段部
6 蓋
7 第一の軸受部
7a 第一の軸受部の受孔
7b 第一の軸受部の溝
8 第二の軸受部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース本体の開口部の相対する内面に形成された第一の軸並びに第二の軸と、
前記第一の軸に回動自在に嵌合する第一の軸受部並びに前記第二の軸に回動自在に嵌合する第二の軸受部を備えた蓋とから構成され、
前記第一の軸は、互いに平行をなすカット面が左右に形成された軸部と、この軸部の根元部から軸部の軸線と直交する方向でカット面の面方向に沿って延出された扁平な面接段部とからなり、前記第二の軸は、円柱状の軸部と、この軸部の根元部で軸部の軸線と直交する方向に延出された扁平な面接段部とからなり、
前記第一の軸受部は、前記第一の軸の軸部を回動自在に受け入れる円形の受孔と、この受孔から蓋の端面に向かって延びてその先端が蓋の端面で開口する溝とを備え、前記溝の幅が前記軸部の左右のカット面の間隔と略同じ寸法で形成されており、
前記第一の軸の面接段部は第一の軸の軸部から蓋の取り出し方向に向かって延設され、前記第二の軸の面接段部は第二の軸の軸部から蓋の取り出し方向とは反対方向に向かって延設されていることを特徴とする蓋の開閉装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−240719(P2012−240719A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−113575(P2011−113575)
【出願日】平成23年5月20日(2011.5.20)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】