説明

蓋付き容器及び保持構造

【課題】クリップベースの全周溶接を可能にすることで、ビスを用いず、よって工具がなくてもクリップの容器本体からの着脱が可能なクリップを備えた蓋付き容器及び保持構造を提供すること。
【解決手段】上部に開口する容器本体900と、容器本体900の開口を閉塞する蓋体902と、両者を固定するクリップ1とを有するクリップを備えた蓋付き容器800において、前記クリップは、容器本体900の外周面に溶接によって固定されるクリップベース3と、クリップベース3に対して、着脱手段により自在に取着可能なクリップ本体とからなり、クリップベースは、容器本体900の外周面900bに密着する密着面を有する蓋付き容器800。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓋付き容器及び保持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
異物の容器への混入を防止することは、食品や薬品の衛生環境上、今後ますます重要になりつつある。
そのため、例えば、容器の上縁に形成された縁巻き部分や把手部分を全周に亘って溶接し、異物の溜まるスペースや雑菌の温床となる繁殖スペースをできるだけ無くす方向で対応している。
しかしながら、蓋を容器本体に固定するためのクリップに関しては十分対応しきれていない。
【0003】
図11〜13は、従来のクリップを備えた蓋付き容器800を説明するための図である。
容器800は、食品や薬品が入れられる容器本体900と、その開口900a(図13参照)を密閉状態で閉塞する蓋体としての密閉蓋902と、閉めた密閉蓋902を容器本体900に固定するクリップ903とを含む。
【0004】
クリップ903は、複数設けられており、容器本体900の外壁である外周面900bに溶接又はビス止めによって固定されるクリップベース904と、このクリップベース904と一体のクリップ本体905とからなる。
【0005】
ところでクリップベース904は、これを容器本体900に固定すると、その形体上の関係で、湾曲された部分(以下、湾曲部)906(図12、13参照)と、容器本体900の外周面900bとの間に隙間Sを生じる(図12、13参照)。そして、隙間Sの大きさが溶接可能な許容範囲を超えるとクリップベース904のうち隙間Sのできる箇所を容器本体900の外周面900bに溶接することができない。
【0006】
つまり、クリップベース904のうち、容器本体900の外周面900bと当接する面の全周に亘って溶接ができないことになる。すると、クリップベース904と容器本体900の外周面900bとの間で溶接しても隙間Sに溶加材が十分行き届かず隙間が残ってしまう。この結果、当該隙間Sに異物が溜まり、雑菌の発生する虞がある。なお、溶接可能な箇所を符号908で示す(図12参照)。
【0007】
一方、ビス止めによりクリップ903を容器本体900に固定する場合、ビスを外してクリップ903を容器本体900から取った後、クリップ903を洗浄することで、雑菌の除去作業を行うことが可能である。しかし、ビスを紛失してしまう虞やビスの着脱に工具を用いなければならないという面があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−137623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、クリップベースのうち、容器本体の外周面と当接する当接面の全周溶接を可能にすると共に、
ビスを用いず、よって工具がなくてもクリップの容器本体からの着脱が可能なクリップを備えた蓋付き容器及び保持構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで本発明は、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
すなわち、本発明は、外壁と前記外壁上に掛受構造を形成する第一掛部と前記外壁の開口とを有する容器本体と、前記開口を閉塞する蓋体と、前記容器本体に前記蓋体を固定する着脱可能な固定具とを備え、前記固定具は、一端を前記外壁上の第一掛部に留める第一留部と、他端を前記蓋体に留める第二留部とを有し、前記蓋体は、前記固定具の第二留部を留める第二掛部を有する蓋付き容器である。
【0011】
また、前記第一掛部は、容器本体の外壁に当接する当接面を有し、当該当接面を容器本体の外周面に当てた状態で当接面の周囲が溶接されてなることを特徴とする。
【0012】
さらに、容器本体と、この容器本体の開口を閉塞する蓋体と、両者を固定するクリップとを有するクリップを備えた蓋付き容器において、前記クリップは、容器本体の外周面に溶接によって固定されるクリップベースと、このクリップベースに対して取着可能なクリップ本体とからなり、前記クリップ本体は、レバーと、このレバーに対して回動自在に取り付けられ、かつ容器本体を閉塞する蓋体の閉塞状態を保持するための保持部材とを有し、前記レバーは、レバー本体と、このレバー本体の回動中心であって、クリップベースに取着されかつクリップベースに対して着脱自在な軸とを有することを特徴とする。
【0013】
さらにまた、前記クリップベースは、略矩形状をした板材であって、その一側面から内部に向けて延びる切欠きが形成され、この切欠きを形成することにより当該切欠きを境に主部及び従部に別れ、前記主部には、前記一側面の側から見て斜めの切り込み穴が形成されるとともに、この切り込み穴と連続しかつ前記一側面に平行な長穴を有することを特徴とする。
【0014】
そして、前記切り込み穴は前記軸を前記長穴にまで通す大きさを有し、前記長穴は前記軸を支持する支持穴とされ、前記従部は、前記長穴内にある前記軸を回動中心に前記レバーをクリップベース側に回動すると、前記レバーが前記従部に当接する位置になるように形成され、前記レバーが前記従部に当接したときに前記保持部材により、前記蓋体が前記容器本体を密閉するように、前記レバー、前記保持部材及び前記従部の各寸法が定められていることを特徴とする。
【0015】
また本発明は、上部に開口する容器本体と、この容器本体の前記開口を閉塞する蓋体と、を備えた蓋付き容器に用いられる前記保持構造でもある。
その特徴とするところは、容器本体の外周面に溶接によって固定されるクリップベースと、このクリップベースに対して着脱手段により自在に取着可能なクリップ本体とからなり、クリップベースは、容器本体の外周面に密接する密接面を有することにある。
【0016】
前記クリップ本体は、レバーと、このレバーに対して回動自在に取り付けられ、かつ容器本体を閉塞する蓋体の閉塞状態を保持するための保持部材とを有し、前記レバーは、レバー本体と、このレバー本体の回動中心であって、クリップベースに取着されかつクリップベースに対して着脱自在な軸を有し、前記クリップベースは、略矩形状をした板材であって、その一側面から内部に向けて延びる切欠きが形成され、この切欠きを形成することにより当該切欠きを境に主部及び従部が形成され、前記主部には、前記一側面の側から見て斜めの切り込み穴が形成されるとともに、この切り込み穴と連続しかつ前記一側面に平行な長穴を有し、前記切り込み穴は前記軸を前記長穴にまで通す大きさを有し、前記長穴は前記軸を支持する支持穴とされ、前記切り込み穴を経由して前記長穴に前記レバーの軸
を入れることで、クリップ本体が、クリップベースと一体化することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、クリップベースのうち、容器本体の外周面と当接する当接面の全周溶接を可能にすると共に、ビスを用いず、よって工具がなくてもクリップの容器本体からの着脱ができる。このため、クリップベースの容器本体への当接面と容器本体との間に隙間ができない。よって、隙間に異物が溜まることに起因して、雑菌が発生することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る蓋付き容器のクリップを用いた容器の全体斜視図である。
【図2】図1の要部拡大斜視図である。
【図3】図2の縦断面図である。
【図4】クリップ本体の正面図及び右側面図である。
【図5】クリップ本体の背面図及び平面図である。
【図6】クリップベースの正面図、左側面図及び平面図である。
【図7】本発明に係るクリップを容器に取り付ける前の斜視図であり、クリップ本体をクリップベースに取り付ける直前の状態を示す図である。
【図8】図7に連続し、かつクリップベースにクリップ本体を取り付けた状態を示す図であって、そのときのクリップベースの長穴に対する回動軸の位置及び切欠きに対する線材の自由な端部の位置を併せて示す図である。
【図9】図8に連続し、かつ線材を持ち上げて密閉蓋の周縁に当接させた状態を示す図であって、そのときのクリップベースの長穴に対する回動軸の位置及び切欠きに対する線材の自由な端部の位置を併せて示す図である。
【図10】図9に連続し、かつレバーを下ろした状態を示す図であって、そのときのクリップベースの長穴に対する回動軸の位置及び切欠きに対する線材の自由な端部の位置を併せて示す図である。
【図11】従来のクリップを備えた蓋付き容器の全体斜視図である。
【図12】図11の要部拡大斜視図である。
【図13】図11の要部縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための最良の形態(以下、実施形態)を実施例に基づいて例示的に説明する。但し、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状その相対配置などは、特に特定的に記載がない限りは、この発明の範囲をそれらに限定する趣旨ではない。また、従来技術の説明で述べたクリップを備えた蓋付き容器と相違する点は、クリップ及びそれに関わる箇所である。よって、同一箇所には同一の符号を付して説明を省略する。
【0020】
容器800は、ステンレス、鉄、アルミ、ホーロー等でできている。そして、容器800はその上部が開口した円筒形状の有底容器であり、その開口は、円形なトレイ形状をした密閉蓋902によって塞がれる(図1〜3参照)。また、容器800の上端縁は、図3に示すように外側に巻かれて縁巻き901にされている(図3参照)。
【0021】
縁巻き901は、その巻き部分の終端部分が直線形状にされており、容器800の外周面900bと直交状態で当接するようになっている。そして、縁巻き901の端は、容器800の外周面900bに縁巻き901の全周に亘って溶接されている(当該箇所の溶着状態は図示せず)。上記のように縁巻き901の端が、容器800の外周面900bと直交状態で当接しているので、溶接が容易であり、溶接の結果、縁巻き901の内部空間に水や粉が入り込むことがない。なお、この実施例では、縁巻きの終端部分を直線形状にす
ることで、縁巻きの終端部分と容器800の外周面900bとが溶接され易いようにしたものを例示した。しかしこれに限定されるものではない。例えば、縁巻き901の終端部分が、容器800の外周面900bに溶接されない形体のものでもよい。
【0022】
密閉蓋902の周縁902aは、横断面で半円弧形状に湾曲されている(図3参照)。但し、湾曲の仕方は半円弧形状に限定されるわけではない。断面が楕円、その他の曲線形状に湾曲していてもよい。
周縁902aの内部には、横断面で半月状をしたパッキン907が充填されている(図3参照)。そして、容器本体900の開口900aを密閉蓋902で蓋をしたときに、パッキン907の下面に当たる平面部907aと縁巻き901の頂点901bとが当接する(図3参照)。
【0023】
ここで、この明細書において上下とは、容器本体900に取り付けられているクリップ1に正対して上側及び下側をいい、左右とは、同じく容器本体900に取り付けられているクリップ1に正対して右側を右といい、左側を左という。前後とは、容器本体900に取り付けられているクリップ1に正対して手前側を前といい、向こう側を後ということにする。
【0024】
次にクリップ1について述べる。
クリップ1は、容器本体900の外周面900bに溶接によって固定されるクリップベース3と、クリップベース3に対して着脱自在なクリップ本体5とからなる(図2、7参照)。
【0025】
クリップベース3は、正面から見た外形状が概略矩形状をした金属製の板材である(図6参照)。なお、正面とは、クリップベース3を立てた状態において板材の一番大きな一面をいう。また正面と対向する面を背面という。さらに板材の厚みとなる面を側面という。そして、側面のうちクリップベース3を上方から見た面を平面といい、平面と対向する面を底面ということにする。
【0026】
また、クリップベース3は、その一側面31からクリップベース3の内部に向けて切欠き36が延びている(図3、6参照)。一側面31に対向する他側面32は、容器本体900の外周面900bに当接する当接面として機能する。そして、当該当接面である他側面32は、これが、容器本体900の前記外周面900bと当接したときに、当該外周面900bとの間にほぼ隙間ができない状態で当接する密接面を形成する。
【0027】
但し、ここでいう密接面とは、他側面32を容器本体900の外周面900bに当接したときに外周面900bとの間にできる隙間が溶接の許容範囲内の小さな隙間しかできない程度に加工されたクリップベース3の一側面のことをいう。
【0028】
このように隙間があっても溶接が許容される範疇にある隙間は、この明細書では隙間がないものとして扱う。当該溶接が許容される範疇にある隙間を確保するにあたっては、クリップベース3は、その密接面である他側面32の両側にある正面及び背面、平面及び底面が、他側面32に対し直交状態である板材を例示できる。
【0029】
その他に密接面とは、他側面32を外周面900bの曲率に合わせて湾曲した面を挙げられる。このような密接面であれば、他側面32と外周面900bとの間に許容範囲外の隙間の発生が抑制される。
【0030】
また、クリップベース3は、前記切欠き36を境にして、クリップベース3の主部33となる部位及び従部34となる部位が形成されている(図6参照)。
主部33は、切欠き36の上部に位置する部位である。そして、当該主部33には、前記一側面31に正対して見たときに傾斜する切り込み穴331が形成されるとともに(図6参照)、この切り込み穴331と連続する長穴335を有する(図6参照)。
【0031】
切り込み穴331は、およそ30°の傾斜角が付けられている。本実施例では図6に示すように、一側面31に正対したときに右斜め上方より左斜め下方に延びる傾斜縁からなる切り込み穴とされている。但し、30°に限定されるわけではなく他の角度でもよい。
【0032】
長穴335は、競技用のトラック形状をしており、切り込み穴331よりも上下方向に長く形成されている。当該長穴335は、一側面31に平行になるように形成され、かつクリップベース3の肉厚方向に貫通している。
切り込み穴331と長穴335の幅寸法は、後述するレバー6の回動軸63の径よりも大きくされている。
【0033】
従部34は、切欠き36の下部に位置する部位であり、自由端34aが円弧形状をしている(図3参照)。そして、この自由端34aと、次に述べるクリップ本体5とが当接するようになっている(図3参照)。
【0034】
このような、クリップベース3は、密着面である他側面32が、容器本体900の外周面901aに突き当てられて、その全周に亘って溶着がされる。
【0035】
クリップ本体5は、図1〜3に示すように、レバー6と、このレバー6に対して回動自在に取り付けられ、かつ容器本体900の開口を閉塞する蓋体としての密閉蓋902に圧力を掛け、容器800の閉塞状態を保持するための保持部材である線材7とを有する。
【0036】
レバー6は、図3〜5に示すように、レバー本体61と、レバー本体61の回動中心であって、クリップベース3に回動自在に取着され、かつクリップベース3に対して、レバー6を着脱自在にするための回動軸63とを有する。回動軸63を介して、クリップベース3にレバー6を取着したとき、レバー6において、回動軸63の取り付けられている側と反対側がレバー6の自由端となる。この自由端に対して回動軸63のある側の端を基端という。
【0037】
レバー本体61は、正面形状が長方形状をした主部611と(図2〜5参照)、主部611の両側縁を直角に折り曲げてなす一対の側部613とからなる(図2〜5参照)。それ故、レバー本体61の一横断面形状は、"コの字"をしている(図5参照)。
【0038】
なお、図3〜5に示す限りにおいて、側部613の上端は、主部611より上方に突出し、主部611の下端は、側部613より下方に幾分湾曲した状態で突出しているのがわかる。また、側部の形状は、長方形の一隅を斜めに切断した如き形状をしている(図1〜4参照)。
【0039】
そして、レバー6を締めたとき、主部611の内面611aに、クリップベース3の従部34の自由端34aが当接する(図3参照)。同じくレバー6を締めたとき、密閉蓋902のパッキン907が線材7によって押圧されるようになっており、これにより容器800の上端縁である縁巻き901がシールされる(図3参照)。レバー6を締めたとき、レバー6の主部611が従部34に当接する位置で、密閉蓋902のパッキン907によるシールが適切にされるよう、従部34とレバー6との当接位置が定められている。
【0040】
さらに、レバー6の一対の側部613における基端近傍箇所には前記回動軸63が取り付けられている(図4〜5参照)。すなわち回動軸63は、一対の側部613に設けられ
た第1の通し孔613aに通され(図2、5参照)、かつ回動軸63の両側がフランジ64により固定されている(図2〜5参照)。回動軸63にフランジ64を設けることにより、回動軸63は、通し孔613aからの抜けが防止された状態で回動する。
そして、レバー6の一対の側部613に取着される回動軸63の近傍箇所には、線材7の回動中心となる第2の通し孔613bが形成されている(図2〜5参照)。
【0041】
線材7は、図3〜5からわかるように、一本の線材をその中央部分を折り曲げてU字形にしたものを、さらにその長手方向において2カ所離隔した位置で折り曲げることによりフック形状にしたものである。
なお、線材7は、U字形に折り曲げられた側、すなわち、線材の中央部側を自由端といい、反対側すなわち、線材の両端側を基端ということにする。これは、基端側がレバー本体61に回動自在に取り付けられることで、線材7がレバー本体61に対して自在に回動するようになっているからである。
【0042】
線材7の折り曲げ用の前記2カ所のうちの1カ所は、線材7の自由端から基端側に向けてわずかに離隔した箇所に位置する。当該箇所を符号72で示す(図3、4参照)。また、別の箇所は、符号73で示す。当該別の箇所73は、箇所72から線材7の基端側に向けて所定距離離隔した位置にあり、当該位置で折り曲げられてなるものである(図2〜4、7〜9参照)。
【0043】
箇所72で線材7は、密閉蓋902の周縁902aの横断面の曲率に合わせて湾曲されている。そして、箇所72で線材7が密閉蓋902の周縁902aに当接する。また、別の箇所73で線材7は、箇所72の曲率より小さな曲率で曲げられている。このように線材7を2カ所で折り曲げることで線材7をフック形状にする。箇所72の曲率が大きいので、周縁902aに係止したときに、そこから外れ難くなる。但し、線材7の形状がこのような形状に限定されるわけではない。一定曲率の円弧と、直線の組み合わせでもよい。3箇所以上の箇所で折り曲げても1箇所折り曲げたものでもよい。つまり密閉蓋902の周縁902aに線材が係止したときに、そこから線材が外れ難くなるような形状であればいかなる形状でも構わない。よって、線材の先端部が曲がっているものに限らない。また、線材でなくてもよい。例えば板材を上記した線材のように形成したものでもよい。
【0044】
フック形状に折り曲げられた線材7は、今度はその基端である線材7の一対の自由な端部75をそれぞれ内側に直角に折り曲げることによって形成される(図4、5参照)。当該一対の自由な端部75は、レバー本体61に設けられた第2の通し孔613bに通される(図2〜4、7参照)。これにより線材7が、レバー本体61に対して自在に回動できるようになる。なお、前記一対の自由な端部75同士の間の間隔s1(図4参照)は、クリップベース3の肉厚寸法t(図6参照)よりも大きい(図4参照)。
【0045】
次にこのような構成のクリップを備えた蓋付き容器の動作説明を行う。なお、クリップベース3は密着面である他側面32が、容器本体900の外周面901aにすでに全周に亘って溶着されているものとする。
【0046】
最初に、レバー6をクリップベース3に取り付ける手順について説明する。
図6に示すクリップベース3の斜めの切り込み穴331に合わせて、レバー6を斜めにする(図7参照)。するとレバー6の回動軸63も斜めの切り込み穴331に合わせて斜めになる。
【0047】
そして、その状態でレバー6の回動軸63を前記切り込み穴331に入れ、その後、長穴335に回動軸63を入れる。このときレバー6は、重力によって、自ずと下方に移動するので、それに伴い回動軸63が長穴335の底部に位置する(図8参照)。レバー6
の回動軸63を長穴335に入れることで、レバー6とクリップベース3とは一体化する。また、長穴335は、切り込み穴331よりも上下方向に長く形成されているので、長穴335に入った回動軸63が勝手に長穴から抜け出てしまうことはない。
【0048】
このとき、線材7の一対の自由な端部75は、クリップベース904の両側でかつ切欠き36と従部34を挟み込むように位置する(図8参照)。このため、レバー6のクリップベース3に対する左右方向の移動が線材7の自由端75と従部34との隙間の範囲に制限される。つまりがたつきが抑制される。また、レバー本体61と線材7は、図8に示すように垂下した状態にある。
【0049】
なお、レバー6の回動軸63が、切り込み穴331を経由して、長穴335の底部に入った状態は、回動軸63が長穴の底部に掛かり止めされた状態である。よって、この状態をレバー6が、クリップベース3を介して、外周面900bに掛止されているという。そして、レバー6の回動軸63を外周面900bに掛止するための切り込み穴331及び長穴335を含むクリップベース3のことを掛止構造を形成する第一掛部ということにする。
【0050】
次に、線材7を図8の状態から図9の状態になるまで持ち上げて回動し、線材7の箇所72を密閉蓋902の周縁902aに当接させる。線材7の回動に伴い、レバー本体61は、線材7に引っぱられその回動軸63を回動中心に図9において時計回りに回動し、水平よりもわずかに下方に傾斜した状態を維持する(図9参照)。
【0051】
このときレバー本体61は、その回動軸63が長穴335の最上部に移動する(図9参照)。また、線材7の一対の自由な端部75は、回動軸63よりもわずかに下方に位置する(図9参照)。長穴335によって回動軸63は支持される。よって長穴335を回動軸63の支持穴ということにする。そして、長穴335に支持される回動軸63のことを、クリップ1の一端を容器本体900の外周面900bの第一掛部であるクリップベース3に留める第一留部ということにする。
【0052】
レバー本体61が、図9に示すように、水平よりもわずかに下方に傾斜した状態になったら、レバー本体61を図9において反時計回りに回転するように下げる。すると、前記長穴335の最上部に位置する回動軸63を支点にし、レバー本体61の自由端を力点にし、線材7のうち線材7の自由端から基端側に向けてわずかに離隔した箇所に位置する箇所72を作用点とするようになる。
【0053】
レバー本体61を既述のように反時計回りに回転した結果、密閉蓋902の周縁902aが、パッキン907を介して、容器本体900の上縁に形成された縁巻き901を上から押しつけるようになる。このときの押圧力によりパッキン907が弾性的に押圧される。その結果、容器本体900がその開口縁でシールされた状態になる。このため、容器本体900は、密閉蓋902によって密閉された状態になる。
【0054】
なお、線材7の箇所72は、クリップ1の端部にあり、当該端部である箇所72が密閉蓋902に留まるため、箇所72のことをこの明細書では第二留部ということにする。そして、密閉蓋902の周縁902aのことを、第二留部である箇所72を留める第二掛部ということにする。
【0055】
このように、クリップ1により容器本体900に密閉蓋902を固定することができるので、クリップ1を固定具という。
なお、容器本体900に密閉蓋902を固定したとき、レバー本体61は、図10に示すように垂下した状態になる。
【0056】
その状態で、レバー本体61の回動軸63は、長穴335の最上部に位置し(図10参照)、線材7の一対の自由な端部75は、側面から見て、切欠き36に位置する(図10参照)。レバー本体61を図9の状態から図10の状態に移動する際に、線材7の一対の自由な端部75が、図9に示す円弧Aを描いて切欠き36に位置できるように、レバー本体61に取付けられている線材7の自由な端部75の位置、および線材7の長さ等が定められている。
【0057】
なお、図10の状態で、線材7の一対の自由な端部75が、切欠き36に位置するようになっていることで、使用者がレバー6を横揺れさせても、線材7の一対の自由な端部75が、切欠き36の存在によって、クリップベース904に当たることを回避できる。
【0058】
次に、レバー6をクリップベース904から取り外す手順について述べる。レバー6の取り外し手順は、上記取り付ける手順の逆である。つまり、図10においてレバー本体61を時計回りに回転して持ち上げる。これにより、図9の状態になり、線材7が自由な状態になる。線材7が自由になることで、容器本体900のパッキン907に掛かっていた押圧力が解除されるので、容器本体900は非シール状態になる。
【0059】
この状態から図8に示すように線材7を密閉蓋902の周縁902aから離脱させる。するとレバー6を支えるものがなくなり、レバー6は重力の影響で下降し、回動軸63が長穴335の底部に位置するようになる(図8参照)。
【0060】
そして、この状態になったら、クリップベース3の斜めの切り込み穴331に合わせて、レバー6を斜めにする。するとレバー6の回動軸63も長穴335内で斜めの切り込み穴331に合わせて斜めになる。その後は、レバー6の回動軸63を前記切り込み穴331から抜き出す(図7参照)。その結果、レバー6が、クリップベース3から分離されるので、レバー6の清浄を行うことができるようになる。
なお、レバー本体61の回動軸63は、クリップベース904の斜めの切り込み穴331及び長穴335に対して着脱するので、これらを着脱手段という。
【0061】
次に作用効果について説明する。
クリップベース3は、容器本体900の外周面900bに密着する密着面としての他側面32を有するので、クリップベース3を当該外周面900bに溶接するにあたり、他側面32を容器本体900の外周面900bに当てた状態で、当接面となる他側面32の全周に亘って溶接することが可能である(図2参照)。このため、クリップベース3の容器本体900への当接面である他側面32と容器本体900との間に隙間ができない。よって、隙間に異物が溜まることに起因して、雑菌が発生することを抑制できる。
【0062】
また、クリップベース3の長穴335に対してレバー6の回動軸63を出し入れするにあたり、切り込み穴331を経由する必要がある。切り込み穴331は傾斜しているので、クリップベース3に対してレバー6を入れるときも外すときも、レバー6の回動軸63が切り込み穴331に対応して斜めになるようにレバー6を斜めにする必要がある。レバー6を斜めにするには人の手を要するので、クリップベース3に切り込み穴331が形成されていても、人の手を介さない以上、レバー6がクリップベース3から勝手に外れることはない。
【0063】
さらに、クリップベース3からレバー6を外せるので、外したレバー6を洗浄することができる。
そして、容器本体の外周面へのクリップベースの取り付けにビスを用いないので、ビスを紛失してしまうことがなく、またビスの着脱に必要な工具を不要にできる。
【0064】
なお、本発明は、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
例えば周縁が湾曲されていない平蓋を用いて蓋をする容器の場合にも本発明は適用できる。この場合、平蓋の周縁は、横断面で湾曲されていないので、フック形状の線材7を係止することができない。そのため、蓋の上面に、蓋の引っ掛け部となる例えば金属板でできた突起物を形成し、当該突起物に線材7が掛かるようにする。
さらに、容器形状も円筒である必要はなく、切頭円錐形状のバケツ状をした容器でも、立方体形状をした容器でもよい。つまり、円筒以外の形状の容器でも構わない。
さらにまた、この実施例では、横断面で半月状をしたパッキン907を例示したが、これ以外の形状であってもよいのは勿論である。要は、密閉蓋902の周縁902aが、パッキン907を介して、容器本体900の上縁に形成された縁巻き901を上から押しつけたときの押圧力によりパッキン907が弾性的に押圧され、その結果、容器本体900がその開口縁でシールされた状態になるようなパッキン形状であればよい。
そして、この実施例では、フランジ64を有する回動軸63を例示したが、代わりに丸棒を用い、レバー6の一対の側部613のうち第1の通し孔613aに相当する箇所に丸棒の両端を直接溶着することでも対応可能である。この場合、丸棒は回転しない。丸棒が入る長穴335内において、丸棒が長穴の表面を滑ることで、レバー6が長穴335に対して回転するようになる。
【符号の説明】
【0065】
1 クリップ(固定具)
3 クリップベース(第一掛部)
5 クリップ本体
6 レバー
7 線材(保持部材)
31 クリップベースの一側面
32 クリップベースの他側面(当接面)
33 クリップベースの主部
34 クリップベースの従部
34a 従部の自由端
36 クリップベースの切欠き
61 レバー本体
63 回動軸(着脱手段、第一留部)
64 フランジ
72 線材の箇所(第二留部)
73 線材の別の箇所
75 線材の一対の自由な端部
331 切り込み穴(着脱手段)
335 長穴(回動軸の支持穴、着脱手段)
611 レバー本体の主部
611a 内面
613 レバー本体の側部
613a レバー本体側部の第1の通し孔
613b レバー本体側部の第2の通し孔
800 蓋付き容器
900 容器本体
900a 容器の開口
900b 外周面(外壁)
901 縁巻き
901b 縁巻きの頂点
902 密閉蓋
902a 密閉蓋の周縁(第二掛部)
903 クリップ
904 クリップベース
905 クリップ本体
906 クリップベースの湾曲部
907 パッキン
907a パッキンの平面部
S 隙間
s1 間隔
t 肉厚寸法

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外壁と前記外壁上に掛受構造を形成する第一掛部と前記外壁の開口とを有する容器本体と、
前記開口を閉塞する蓋体と、
前記容器本体に前記蓋体を固定する着脱可能な固定具とを備え、
前記固定具は、一端を前記外壁上の第一掛部に留める第一留部と、
他端を前記蓋体に留める第二留部とを有し、
前記蓋体は、前記固定具の第二留部を留める第二掛部を有する蓋付き容器。
【請求項2】
前記第一掛部は、容器本体の外壁に当接する当接面を有し、当該当接面を容器本体の外周面に当てた状態で当接面の周囲が溶接されてなることを特徴とする請求項1に記載の蓋付き容器。
【請求項3】
容器本体と、
この容器本体の開口を閉塞する蓋体と、
両者を固定するクリップとを有するクリップを備えた蓋付き容器において、
前記クリップは、容器本体の外周面に溶接によって固定されるクリップベースと、
このクリップベースに対して取着可能なクリップ本体とからなり、
前記クリップ本体は、
レバーと、
このレバーに対して回動自在に取り付けられ、かつ容器本体を閉塞する蓋体の閉塞状態を保持するための保持部材とを有し、
前記レバーは、
レバー本体と、
このレバー本体の回動中心であって、クリップベースに取着されかつクリップベースに対して着脱自在な軸とを有するクリップを備えた蓋付き容器。
【請求項4】
前記クリップベースは、略矩形状をした板材であって、その一側面から内部に向けて延びる切欠きが形成され、この切欠きを形成することにより当該切欠きを境に主部及び従部に別れ、
前記主部には、前記一側面の側から見て斜めの切り込み穴が形成されるとともに、この切り込み穴と連続しかつ前記一側面に平行な長穴を有することを特徴とする請求項3に記載のクリップを備えた蓋付き容器。
【請求項5】
前記切り込み穴は前記軸を前記長穴にまで通す大きさを有し、前記長穴は前記軸を支持する支持穴とされ、前記従部は、前記長穴内にある前記軸を回動中心に前記レバーをクリップベース側に回動すると、前記レバーが前記従部に当接する位置になるように形成され、
前記レバーが前記従部に当接したときに前記保持部材により、前記蓋体が前記容器本体を密閉するように、前記レバー、前記保持部材及び前記従部の各寸法が定められていることを特徴とする請求項4に記載のクリップを備えた蓋付き容器。
【請求項6】
上部に開口する容器本体と、
この容器本体の前記開口を閉塞する蓋体と、
を備えた蓋付き容器に用いられる保持構造であって、
容器本体の外周面に溶接によって固定されるクリップベースと、
このクリップベースに対して着脱手段により自在に取着可能なクリップ本体とからなり、クリップベースは、容器本体の外周面に密接する密接面を有する保持構造。
【請求項7】
前記クリップ本体は、
レバーと、
このレバーに対して回動自在に取り付けられ、かつ容器本体を閉塞する蓋体の閉塞状態を保持するための保持部材とを有し、
前記レバーは、
レバー本体と、
このレバー本体の回動中心であって、クリップベースに取着されかつクリップベースに対して着脱自在な軸を有し、
前記クリップベースは、略矩形状をした板材であって、その一側面から内部に向けて延びる切欠きが形成され、この切欠きを形成することにより当該切欠きを境に主部及び従部が形成され、
前記主部には、前記一側面の側から見て斜めの切り込み穴が形成されるとともに、この切り込み穴と連続しかつ前記一側面に平行な長穴を有し、
前記切り込み穴は前記軸を前記長穴にまで通す大きさを有し、前記長穴は前記軸を支持する支持穴とされ、前記切り込み穴を経由して前記長穴に前記レバーの軸を入れることで、クリップ本体が、クリップベースと一体化することを特徴とする請求項6に記載の保持構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−10518(P2013−10518A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−142878(P2011−142878)
【出願日】平成23年6月28日(2011.6.28)
【出願人】(593051205)日東金属工業株式会社 (2)
【Fターム(参考)】