説明

蓋付容器

【課題】操作性を維持しつつ、幼児などによって内容物を取り出す容器本体の開口を容易に開放させないようにした蓋付容器を提供する。
【解決手段】本発明の蓋付容器は、有底筒状をなし、内容物が収容される容器本体2と、容器本体にヒンジを介して連結され、容器本体の開口を開閉する蓋体5と、蓋体に第1弾性部材を介して接続され容器本体の係合孔15Aに着脱自在に係合する係合突部6Aをそれぞれ有する一対の係合部材と、少なくとも係合突部が係合孔に係合された位置において蓋体をヒンジの回動方向に付勢する第2弾性部材と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓋付容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
内容物が収容される容器本体と、容器本体に内装されると共に容器本体の取出孔を開閉する板バネ部材と、を備え、板バネ部材に設けられた押しボタンを容器本体内に押し込むことによって、板バネ部材が弾性変形して上記取出孔を開放する容器が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−70980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような容器では、板バネ部材の押しボタンを押し込むだけで容器本体の取出孔が開放されるため、幼児などにこの取出孔を容易に開放させないようにするチャイルドプルーフ機能を付与することが望まれている。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑み成されたものであって、操作性を維持しつつ、幼児などによって内容物を取り出す容器本体の開口を容易に開放させないようにした蓋付容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の蓋付容器は、有底筒状をなし、内容物が収容される容器本体と、前記容器本体にヒンジを介して連結され、前記容器本体の開口を開閉する蓋体と、前記蓋体に第1弾性部材を介して接続され前記容器本体の係合孔に着脱自在に係合する係合突部をそれぞれ有する一対の係合部材と、少なくとも前記係合突部が前記係合孔に係合された位置において前記蓋体を前記ヒンジの回動方向に付勢する第2弾性部材と、を有することを特徴とする。
【0007】
この構成では、蓋体により開口を閉塞した状態において、一対の係合部材の係合突部を容器本体の2箇所の係合孔にそれぞれ係合させて蓋体を固定するので、開口を開放するためには、2箇所の係合を解除しなければならない。これにより、幼児などによって開口を容易に開放させないようにすることができる。
その一方で、係合突部と係合孔との係合を解除すると、第2弾性部材の付勢力によって蓋体が移動するため、その後の開放操作を容易に行うことができる。
したがって、この構成によれば、操作性を維持しつつチャイルドプルーフ機能を付与された蓋付容器を提供することができる。
【0008】
前記係合突部が前記係合孔に係合される位置において、前記蓋体の天面が前記開口の端部に一致する高さ又は前記開口の端部よりも低い位置に配置される構成としてもよい。
この構成によれば、蓋体により開口を閉塞した状態において、蓋体と開口とが平坦、あるいは蓋体が一段下がって配置された状態になるので、蓋体に手指等を引っ掛けにくくなる。これにより、蓋体を強引に開ける操作を困難にすることができ、チャイルドプルーフ機能を強化することができる。
【0009】
前記係合突部の外側面における前記蓋体の閉方向前方側に、斜面部が形成されている構成としてもよい。
この構成によれば、開口を閉塞する際に、係合突部を容器本体の内側に入り込ませる操作を円滑に行うことができるので、操作性に優れた蓋付容器とすることができる。
【0010】
前記第2弾性部材が前記蓋体の裏面に立設された部材であるとともに、少なくとも前記係合突部が前記係合孔に係合される位置において、前記容器本体の壁部内面に突き当てられて弾性変形し、前記蓋体を前記回動方向に付勢する構成としてもよい。
この構成によれば、蓋体を押し上げる構造を容易に形成することができる。
【0011】
前記容器本体の内壁面に、一対の前記係合突部を前記開口の端部から前記係合孔へ案内する案内溝が形成されている構成としてもよい。
この構成によれば、開口の閉塞操作において案内溝によって係合突部を確実に係合孔に案内することができ、係合突部と係合孔とを確実に係合させた状態で開口を閉塞することができるので、操作ミスにより蓋体が開きやすい状態になるのを防止することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、操作性を維持しつつチャイルドプルーフ機能を付与された蓋付容器が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施の形態に係る蓋付容器を示す斜視図。
【図2】蓋付容器の開放状態を示す斜視図。
【図3】蓋付容器のの断面図、正面図、及び拡大上面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態である蓋付容器について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするために縮尺を適宜変更している。
図1は、本実施の形態に係る蓋付容器を示す斜視図である。図2は、蓋付容器の開放状態を示す斜視図である。図3(a)及び図3(b)は蓋付容器の断面図である。図3(c)は蓋付容器の正面図である。図3(d)は蓋付容器の要部を拡大して示す上面図である。
【0015】
本実施形態における蓋付容器1は、図1から図3に示すように、内容物が収容される容器本体2と、容器本体2にヒンジ3を介して一体に連結されるとともに容器本体2の開口2Aを開閉する蓋体5と、を備えている。容器本体2は、横断面が長方形状の有底四角筒状をなしており、長方形状の底壁部11と、底壁部11の外周縁から上方に延設された四角筒状の筒壁部12と、を備えている。
【0016】
なお、本実施形態では、各図の説明において、容器本体2の底壁部11の長辺に沿う方向をX軸方向、底壁部11の短辺に沿う方向(X軸に直交する方向)をY軸方向、容器本体2の高さ方向(XY平面に直交する方向)をZ軸方向とするXYZ直交座標系を設定している。またZ軸に沿った二方向のうち、蓋体5側を上方、その反対側(底壁部11側)を下方とする。
【0017】
筒壁部12は、底壁部11の二長辺から立ち上がり、短辺方向(Y軸方向)で互いに向かい合う長方形状の一対の長辺壁部13、14と、底壁部11の二短辺から立ち上がり、長辺方向(X軸方向)で互いに向かい合う長方形状の一対の短辺壁部15、16と、を有する。
【0018】
長辺壁部14の上端部はヒンジ3を介して蓋体5に連結されている。短辺壁部15、16の上端寄りの位置に、短辺壁部15、16を貫通する長円状の係合孔15A、16Aがそれぞれ形成されている。係合孔15A、及び係合孔16Aは、その長円形状の長軸が容器本体2の高さ方向(Z軸方向)に対して傾いた状態で形成されている。
【0019】
長辺壁部13の内面には、図3に示すように、上記内面から突出し高さ方向(Z軸方向)に延びる凸条13Aが形成されている。凸条13Aの一方の端部は底壁部11に達しているが、他方の端部は長辺壁部13の上端よりも低い位置にある。凸条13Aの上側の端面13Bは、蓋体5を閉めたときに蓋体5と突き合わされ、蓋体5の容器本体2内への移動を規制する突合面である。
【0020】
短辺壁部15、16の内面側には、各々円弧状に延びる案内溝15B、16Bが形成されている。案内溝15B、及び案内溝16Bの一方の端部は開口2Aに達しており、他方の端部はそれぞれ係合孔15A、16Aと接続されている。案内溝15B、16Bの幅は、長円状の係合孔15A、16Aの短軸長とほぼ同等である。
【0021】
蓋体5は、横断面が長方形状の有頂四角筒状をなしている。蓋体5は、長方形状の天壁部21と、天壁部21の外周縁から下方に延設された四角筒状の側壁部22と、を備えている。
側壁部22は、長辺壁部13、14が向かい合う方向(Y軸方向)で互いに向かい合う長方形状の一対の第1周壁部23、24と、同様に短辺壁部15、16が向かい合う方向(X軸方向)で互いに向かい合う長方形状の一対の第2周壁部25、26と、を有する。第1周壁部23の下端部が、ヒンジ3を介して容器本体2の長辺壁部14の上端部に連結されている。
【0022】
第2周壁部25、26のそれぞれの下端部(天壁部21側と反対側の端部)には、係合部材6、7及びバネ部(第2弾性部材)8、9が形成されている。
係合部材6は第2周壁部25の下端部から延出された板状の弾性部材である脚部(第1弾性部材)6Bと、脚部6Bの先端に形成されるとともに第2周壁部25の外面側(X軸方向の外側)に向けて突出する係合突部6Aとを有する。係合部材7は、第2周壁部26の下端部から延出された脚部(第1弾性部材)7Bと、脚部7Bの先端に形成され第2周壁部26の外面側に向けて突出する係合突部7Aとを有する。係合突部6A、7AはX軸方向の同軸位置に配置されている。
【0023】
係合突部6A、7Aは係合孔15A、16Aに対応する長円状であり、図1に示す閉塞状態においてそれぞれ係合孔15A、16Aに係合される。
係合突部6A、7Aはそれらの長円形状の長軸方向がヒンジ3を介した回動方向に沿うように配置されている。係合突部6A、7Aのそれぞれの外面における閉方向前方側(ヒンジ3により蓋体5を閉塞位置に向けて回動させる方向の前方側)に、係合突部6A、7Aを閉方向前方に向かって先窄まり状とする斜面部6C、7Cが形成されている。
【0024】
バネ部8及びバネ部9は、それぞれ第2周壁部25、26の下端部において係合部材6、7よりヒンジ3側に形成されている。バネ部8、9は棒状の弾性体を略鉤形(略S形)に屈曲させた弾性部材であり、図3(a)に示すように、蓋体5を閉塞状態としたときに長辺壁部14の内面側に突き当てられることにより弾性変形し、蓋体5に対してヒンジ3回動方向の付勢力を付与する。
【0025】
以上の構成を備えた蓋付容器1を閉塞状態とするには、図2に示す開放状態から、蓋体5をヒンジ3回りに回動させる。そうすると、蓋体5の係合突部6A、7Aが開口2Aの端部(短辺壁部15、16の上端部)に突き当たる。この状態からさらに蓋体5を開口2Aに押し込むと、係合突部6A、7Aの前方部分に斜面部6C、7Cが形成されているので、かかる斜面部6C、7Cの作用により脚部6B、7Bを円滑に変形させて係合突部6A、7Aをそれぞれ内側へ変位させることができる。これにより係合突部6A、7Aを容器本体2の内側に入り込ませることができる。
【0026】
その後、係合突部6A、7Aは、容器本体2の短辺壁部15、16の内面側に形成された案内溝15B、16B内を摺動し、係合孔15A、16Aへ案内される。そして、係合突部6A、7Aが係合孔15A、16Aに達すると、脚部6B、7Bの弾性復帰力により係合突部6A、7Aがそれぞれ外側へ変位し、係合孔15A、16Aに係合される。
【0027】
係合突部6A、7Aが係合孔15A、16Aに係合された状態において、蓋体5の第1周壁部24、及び第2周壁部25、26は、容器本体2の内側に収容される。また、第1周壁部24の下端部は長辺壁部13の凸条13Aの端面13Bに突き当てられる。これらにより天壁部21は容器本体2の内部に入り込むことなく開口2Aとほぼ同じ高さに保持される。一方、蓋体5の第1周壁部23は、長辺壁部14と略平坦面をなす。
【0028】
次に、以上のような構成の蓋付容器1における開口2Aの開口動作について説明する。
閉塞状態の蓋付容器1では、蓋体5の天壁部21の上面(天面)が開口2Aと平坦に配置され、係合突部6A、7Aが係合孔15A、16Aに係合されることにより、容器本体2の開口2Aを開放する動作が規制されている。
【0029】
そのため、容器本体2の開口2Aを開放するためには、まず、図1の矢印Aに示すように、容器本体2側面の係合孔15A、16Aから露出している係合突部6A、7Aを押圧する。これらの係合突部6A、7Aを押し込むと、脚部6B、7Bが弾性変形し、係合突部6A、7Aが係合孔15A、16Aから離間するように容器本体2の内側へ向けて変位する。
【0030】
このとき、閉塞状態の蓋体5は、バネ部8、9によりヒンジ3回動方向に付勢されているため、係合突部6A、7Aを押し込むことにより係合孔15A、16Aとの係合が解除されると、バネ部8、9の付勢力により蓋体5がヒンジ3回りに回動し、図1の矢印Bの方向に押し上げられる。この押し上げ動作により、蓋体5は少なくとも半開状態となるので、蓋体5の第1周壁部24の下端部等に容易に手指等を引っ掛けることができるようになり、蓋体5を全開する等のその後の操作を行いやすくなる。
【0031】
以上のような構成の蓋付容器1によれば、2箇所の係合孔15A、16Aに係合突部6A、7Aが係合することにより蓋体5のヒンジ3回りの回動動作が規制されており、2箇所の係合を解除しなければ開口2Aを開放することができない構成としたことで、幼児などに対して容器本体2の開口2Aを容易に開放させないようにすることができる。
また、蓋体5により開口2Aを閉塞した状態において、蓋体5の天壁部21の上面(天面)と開口2Aとが平坦であるため、蓋体5に手指等を引っ掛けにくくなっており、蓋体5を強引に開けることも困難な構成とすることができる。
【0032】
その一方で、係合突部6A、7Aを押し込んで係合孔15A、16Aとの係合を解除すると、バネ部8、9の復帰力によって蓋体5が押し上げられ、容易に操作可能な状態となる。したがって、幼児などによって開口2Aを容易に開放させない構成としつつ、開口2Aの開放操作性にも優れた構成とすることができる。
【0033】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることができる。
例えば、閉塞状態において蓋体の天面と容器本体の開口とが平坦になるように配置する場合について説明したが、蓋体の天面が開口よりも低く配置されるようにしてもよい。
また容器本体及び蓋体の形状は、四角筒状でなく、他の形状であってもよい。脚部は、係合突部を支持可能な構造であれば、棒状に限られず、他の形状としてもよもい。係合孔は、係合突部の回動軌跡上の他の箇所に配設されてもよい。
また第2弾性部材は蓋体にヒンジ回りの付勢力を付与できるものであれば形状や設置数は特に限定されない。例えば、単純な棒状の弾性部材とすることもできる。また第2弾性部材を1つのみ設けてもよい。
【符号の説明】
【0034】
1…蓋付容器、2…容器本体、2A…開口、3…ヒンジ、5…蓋体、6,7…係合部材、6A,7A…係合突部、6B,7B…脚部(第1弾性部材)、6C,7C…斜面部、8,9…バネ部(第2弾性部材)、15A,16A…係合孔、15B,16B…案内溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底筒状をなし、内容物が収容される容器本体と、
前記容器本体にヒンジを介して連結され、前記容器本体の開口を開閉する蓋体と、
前記蓋体に第1弾性部材を介して接続され前記容器本体の係合孔に着脱自在に係合する係合突部をそれぞれ有する一対の係合部材と、
少なくとも前記係合突部が前記係合孔に係合された位置において前記蓋体を前記ヒンジの回動方向に付勢する第2弾性部材と、
を有することを特徴とする蓋付容器。
【請求項2】
前記係合突部が前記係合孔に係合される位置において、前記蓋体の天面が前記開口の端部に一致する高さ又は前記開口の端部よりも低い位置に配置されることを特徴とする請求項1に記載の蓋付容器。
【請求項3】
前記係合突部の外側面における前記蓋体の閉方向前方側に、斜面部が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の蓋付容器。
【請求項4】
前記第2弾性部材が前記蓋体の裏面に立設された部材であるとともに、少なくとも前記係合突部が前記係合孔に係合される位置において、前記容器本体の壁部内面に突き当てられて弾性変形し、前記蓋体を前記回動方向に付勢することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の蓋付容器。
【請求項5】
前記容器本体の内壁面に、一対の前記係合突部を前記開口の端部から前記係合孔へ案内する案内溝が形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の蓋付容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−246048(P2012−246048A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−121605(P2011−121605)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】