説明

蓋体開閉装置

【課題】真空チャンバにおける蓋体をチャンバ本体から確実に分離することができ、低位置に下降することのできる蓋体の開閉装置を提供する。
【解決手段】チャンバ本体3と、当該チャンバ本体3上に着脱可能に備えた蓋体5とを備えた真空チャンバ1における前記蓋体5の開閉装置であって、前記チャンバ本体3を間にしてチャンバ本体3の両側方に配置した一対のガイド部材21A,21Bに沿って移動自在な一対の走行体25A,25Bと、上記一対の走行体25A,25Bにそれぞれ上下動可能に備えられた一対の昇降体39A,39Bと、前記蓋体5に備えた把持部材17を保持可能かつ前記昇降体39A,39Bに水平な軸心回りに回転可能に支持された一対の蓋保持体49A,49Bとを備えており、前記一対のガイド部材21A,21Bは一体的に連結してあり、かつ移動可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部を減圧し真空雰囲気にして、内部において各種の処理を行うための真空チャンバにおける蓋体の開閉装置に係り、さらに詳細には、前記蓋体の上下を反転しかつ低位置に下降することのできる蓋体開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば液晶表示装置(LCD)基板の製造においては、内部を減圧し真空雰囲気にした真空チャンバ内においてエッチング,アッシング,成膜等の処理が行われている。前記真空チャンバは、チャンバ本体と、このチャンバ本体の上部に開閉可能に備えられた蓋体とを備えた構成である。そして、内部の保守点検を行うときには、開閉機構を介して蓋体の開閉を行っている。
【0003】
ところで、従来は、チャンバ本体の上部にヒンジを介して蓋体を上方向に回動するように装置して開閉可能な構成としていた。このような構成においては、蓋体を上方向に回動して開いたとき、全体的高さが高くなり、蓋体に装着してある各種装置の保守点検を高位置で行うこととなる問題があった。
【0004】
そこで、チャンバ本体から蓋体を取り外して水平移動し、前記チャンバ本体の上方位置からずれた位置において蓋体の上下反転を行う構成が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特許第3527450号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1に示されている装置の構成は、図6に概略的に示すごとき構成である。すなわち、特許文献1に記載された真空チャンバ1は、チャンバ本体3と、このチャンバ本体3上に開閉可能に載置装着された蓋体5とを備えている。そして、前記チャンバ本体3の前後両面には左右方向に長いガイドレール7が一体的に備えられており、このガイドレール7の先端部には、前記チャンバ本体3の側方に折り畳み自在な延長レール9が備えられている。前記前後のガイドレール7には、台車11が移動自在に支持されており、この台車11には、水平な枢軸13を介して前記蓋体5を回動可能に支持する昇降体15が上下動可能に支持されている。
【0006】
上記構成において、前記蓋体5の開閉を行うには、図6(B)に示すように、延長レール9を左右方向に延伸すると共に、前記昇降体15を僅かに上昇して、チャンバ本体1から蓋体5を持上げる。その後、図6(C)に示すように、台車11を延長レール9上に移動して、蓋体5をチャンバ本体3の上方位置から側方位置へ移動する。そして、この側方位置において蓋体5を回転することにより、蓋体5の上下反転が行われる(図6(D),(E)参照)。
【0007】
したがって、従来の構成においては、蓋体5をチャンバ本体3の側方位置へ移動すると、蓋体5の大きな重量(数トン以上)がガイドレール7を介して偏荷重として作用し、精密に真空度を保つべきチャンバ本体3に歪みを生じ易いので、チャンバ本体3を必要以上に肉厚にして剛性を大きくし、全体的構成の重量が極めて大きくなり易いという問題がある。
【0008】
また、従来の構成においては、蓋体5の上下反転は、チャンバ本体3の上部とほぼ等しい高さ位置であるので、蓋体5の上下反転を行うときに、例えばクリーンルーム内の天井に蓋体が干渉する恐れがあると共に、反転した後の蓋体の位置が高位置であり、蓋体に装着してある装置の保守点検を行うときには作業足場が別途必要であるという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前述のごとき問題に鑑みてなされたもので、チャンバ本体と、当該チャンバ本体上に着脱可能に備えた蓋体とを備えた真空チャンバにおける前記蓋体の開閉装置であって、前記チャンバ本体を間にしてチャンバ本体の両側方に配置した一対のガイド部材に沿って移動自在な一対の走行体と、上記一対の走行体にそれぞれ上下動可能に備えられた一対の昇降体と、前記蓋体に備えた把持部材を保持可能かつ前記昇降体に水平な軸心回りに回転可能に支持された一対の蓋保持体とを備えていることを特徴とするものである。
【0010】
また、前記蓋体開閉装置において、前記一対のガイド部材は一体的に連結してあり、かつ移動可能であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、真空チャンバにおける蓋体を、チャンバ本体の側方位置へ移動して、任意の高さ位置で上下反転することができ、かつ上下を反転した後に、蓋体を低位置に下降することができ、前述したごとき従来の問題を解消することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明するに、前述した従来の構成と同一機能を奏する構成要素には同一符号を付することとして重複した説明は省略する。
【0013】
図1,図2に概略的、概念的に示すように、本実施形態において対象とする真空チャンバ1は、前述した従来の真空チャンバと同様に、チャンバ本体3と、このチャンバ本体3上に開閉可能に載置装着した蓋体5とを備えており、この蓋体5の前後面(図2においての左右側面)の左右方向の中央部には、適宜形状の把持部材17(図2参照)が溶接等によって一体に固定してある。
【0014】
前記真空チャンバ1における前記蓋体5の開閉を行うための開閉装置19は、前記チャンバ本体3を間にしてチャンバ本体3の前後両側に配置可能な一対のガイド部材21A,21Bを備えており、この一対のガイド部材21A,21Bの一端側は連結部材23によって一体に連結してある。したがって、前記ガイド部材21A,21B及び連結部材23は全体として他端側が開口した「コ」字形状に構成してある。
【0015】
前後の前記ガイド部材21A,21Bは互いに平行であって、かつ前記真空チャンバ1におけるチャンバ本体3の左右方向の幅寸法の約1.5〜2倍程度の長さに設けてある。より詳細には、ガイド部材21A,21Bがチャンバ本体3の左右方向の側方へ出ている部分の長さは、チャンバ本体3の左右方向の幅寸法にほぼ等しく設けてある。
【0016】
前記一対のガイド部材21A,21Bには、前記チャンバ本体3に対して蓋体5を持上げて左右の側方位置へ搬送するための蓋体搬送手段24A,24Bが左右方向へ移動自在に支持されている。より詳細には、前記一対のガイド部材21A,21Bには、それぞれ前後の走行体25A,25Bが左右方向へ移動自在に支持されている。そして、前記走行体25A,25Bを同期して左右方向に移動するために、走行体移動機構が設けられている。すなわち、前記ガイド部材21A,21Bに近接した位置に左右方向に長いボールネジ27A,27Bが回転自在に設けられており、このボールネジ27A,27Bには、前記走行体25A,25Bに備えたナット部材(図示省略)が移動自在に螺合してある。
【0017】
そして、前記ボールネジ27A,27Bを同期回転するために、前記連結部材23にはサーボモータ29によって回転される回転軸31が回転自在に支持されており、この回転軸31の両端部は、ギアボックス33A,33B内に備えたベベルギアなどのギア機構35A,35Bを介して前記ボールネジ27A,27Bと連動連結してある。
【0018】
上記構成により、サーボモータ29によって回転軸31を回転駆動すると、両端側のギアボックス33A,33Bを介して両ボールネジ27A,27Bが同期回転されるので、前後の走行体25A,25Bは同期して左右方向に移動されるものである。
【0019】
ところで、前記走行体25A,25Bを同期して左右方向へ移動するための走行体移動機構の構成として、連動して同期回転されるボールネジ機構の場合について例示したが、前記走行体移動機構の構成としては、例えばリニアモータを採用した構成や、タイミングベルト機構を採用した構成など、種々の構成を採用可能である。
【0020】
前記前後の走行体25A,25Bにはそれぞれガイドフレーム37A,37Bが垂直に立設してあり、このガイドフレーム37A,37Bには、昇降ユニット39A,39Bが上下動自在に備えられている。そして、前記昇降ユニット39A,39Bを上下動するために、前記ガイドフレーム37A,37Bには、それぞれ昇降作動装置が備えられている。
【0021】
より詳細には、前記ガイドフレーム37A,37Bには、モータ41A,41Bによって回転される駆動ネジ43A,43Bが垂直にかつ回転自在に備えられており、この駆動ネジ43A,43Bには、前記昇降ユニット39A,39Bに備えたナット部材45A,45Bが上下動可能に螺合してある。そして、前記昇降ユニット39A,39Bの上下位置を検出するための上下位置検出手段の一例として、前記各駆動ネジ43A,43Bの端部にはロータリーエンコーダ47A,47Bが連動連結してある。
【0022】
したがって、モータ41A,41Bによって駆動ネジ43A,43Bを回転することにより、前記昇降ユニット39A,39Bをガイドフレーム37A,37Bに沿って上下動することができるものである。そして、前記昇降ユニット39A,39Bの上下動位置は、上下位置検出手段としてのロータリーエンコーダ47A,47Bによって検出することができるものである。
【0023】
前記昇降ユニット39A,39Bには、前記蓋体5に備えた前記把持部材17を保持可能な蓋保持体49A,49Bが回転可能に備えられている。より詳細には、一方の蓋保持体49Aには反転用モータ(図示省略)によって回転される駆動回転軸51が水平にかつ回転自在に備えられている。すなわち、上記駆動回転軸51にはウォームホィール53が一体的に取付けてあり、このウォームホィール53には、前記反転用モータによって回転されるウォーム55が噛合してある。
【0024】
そして、前記駆動回転軸51に一体的に備えたクランプ基体57には、当該クランプ基体57との間に前記把持部材17をクランプ自在なクランプジョー59が備えられている。このクランプジョー59は、複数のボルトの如き締結具61によって前記クランプ基体57に固定してあると共に、前記把持部材17を貫通してクランプ基体57に螺着した複数の締付ネジ63によって前記把持部材17を一体的に固定自在である。
【0025】
他方の蓋保持体49Bは、前記駆動回転軸51と同軸上に位置決め可能な従動軸65が水平にかつ回転自在に備えた構成であって、この従動軸65に、クランプ基体57,クランプジョー59,締結具61,締付ネジ63を備えた構成である。
【0026】
以上のごとき構成において、常態においては、開閉装置19における前後の蓋体搬送手段24A,24Bは、図3(A)に示すように、真空チャンバ1の左右側方位置に位置決めした状態にある。前記真空チャンバ1の保守点検が必要なときには、サーボモータ29を適宜に回転すると、前後のボールネジ27A,27Bが同期して回転されるので、前後の蓋体搬送手段24A,24Bはガイド部材21A,21Bに沿って同期して移動し、真空チャンバ1の左右方向のほぼ中央位置に位置決めされる(図3(B)参照)。
【0027】
この際、蓋体搬送手段24A,24Bに備えた昇降ユニット39A,39Bは、蓋体5に備えた把持部材17に対応した高さ位置に予め位置決めされるものであり、また締付ネジ63は取り外された状態にある。したがって、前述のごとく蓋体搬送手段24A,24Bを真空チャンバ1のほぼ中央部に位置決めすると、蓋体5に備えた把持部材17はクランプ基体57とクランプジョー59との間に入り込んだ状態となる。よって、クランプジョー59,把持部材17を貫通して締付ネジ63をクランプ基体57に締付けると昇降ユニット39A,39Bと蓋体5とが一体化されるものである。
【0028】
その後、蓋体搬送手段24A,24Bに備えた駆動ネジ43A,43Bを同期して僅かに正回転すると、前後の昇降ユニット39A,39Bが上昇し、真空チャンバ1における蓋体5は僅かに持上げられ、チャンバ本体3から分離される(図4(A)参照)。したがって、前述のように蓋体5を持上げた状態にあるとき、前記ボールネジ27A,27Bを逆回転することにより、前後の蓋体搬送手段24A,24Bは元の位置へ復帰される。よって、蓋体5はチャンバ本体3の左右方向の側方位置へ搬送される(図4(B)参照)。
【0029】
前述のように、蓋体5をチャンバ本体3の側方位置へ搬送した後あるいは搬送途中において、反転用モータを駆動して蓋保持体49Aを回転すると、蓋体5の上下が反転される(図5(A),(B)参照)。その後、前後の駆動ネジ43A,43Bを逆回転して昇降ユニット39A,39Bを降下することにより、蓋体5は上下反転された状態で所望高さ位置に下降されることとなる(図5(C)参照)。
【0030】
以上のごとき説明より理解されるように、真空チャンバ1の保守点検を行う場合には、チャンバ本体3から蓋体5を確実に分離するものであり、しかも、例えば床に近接した低位置にまで下降することができるものであり、前述したごとき従来の問題を解消し得るものである。
【0031】
ところで、前記説明においては、1つの真空チャンバ1と1つの開閉装置19とが対応関係を保持した関係に配置した場合について例示したが、図1に示すように、ガイド部材21A,21Bにローラ(キャスター)67を備えて移動自在な構成とすることが望ましいものである。このように、開閉装置19を移動自在な構成とすることにより、1つの開閉装置19を複数のチャンバ1に対応して使用することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施形態に係る開閉装置を概略的,概念的に示した斜視説明図である。
【図2】本発明の実施形態に係る開閉装置を概略的,概念的に示した構成説明図である。
【図3】開閉装置の作用説明図である。
【図4】開閉装置の作用説明図である。
【図5】開閉装置の作用説明図である。
【図6】従来の真空チャンバの作用説明図である。
【符号の説明】
【0033】
1 真空チャンバ
3 チャンバ本体
5 蓋体
17 把持部材
19 開閉装置
21A,21B ガイド部材
25A,25B 走行体
27A,27B ボールネジ
31 回転軸
39A,39B 昇降ユニット
43A,43B 駆動ネジ
45A,45B ナット部材
49A,49B 蓋保持体
51 駆動回転軸
57 クランプ基体
59 クランプジョー
63 締付ネジ
65 従動軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバ本体と、当該チャンバ本体上に着脱可能に備えた蓋体とを備えた真空チャンバにおける前記蓋体の開閉装置であって、前記チャンバ本体を間にしてチャンバ本体の両側方に配置した一対のガイド部材に沿って移動自在な一対の走行体と、上記一対の走行体にそれぞれ上下動可能に備えられた一対の昇降体と、前記蓋体に備えた把持部材を保持可能かつ前記昇降体に水平な軸心回りに回転可能に支持された一対の蓋保持体とを備えていることを特徴とする蓋体開閉装置。
【請求項2】
請求項1に記載の蓋体開閉装置において、前記一対のガイド部材は一体的に連結してあり、かつ移動可能であることを特徴とする蓋体開閉装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−29843(P2007−29843A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−215997(P2005−215997)
【出願日】平成17年7月26日(2005.7.26)
【出願人】(000105512)コスミック工業株式会社 (2)