説明

蓋部の開閉機構

【課題】2つの蓋部を容易な操作で開放することを可能とすることで、操作性を向上させることが可能な蓋部の開閉機構を提供することを目的とする。
【解決手段】装置本体2の上部に設けられた前蓋部3と後蓋部4とのそれぞれの基部が、装置本体2に回動可能に支軸されていることで観音開きする蓋部の開閉機構において、後蓋部4には、開閉を操作するために突出した後蓋つまみ部452と、後蓋つまみ部452が開き操作されると、装置本体2に設けられた爪部203との係止状態が解除される凹部453と、爪部203との係止状態の解除に伴って前蓋部3を下側から押し上げる押上部455とを備えた保持部45が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装置本体の上部に設けた第1蓋部と第2蓋部とが観音開きする蓋部の開閉機構に関する。
【背景技術】
【0002】
装置本体上部に設けた2つの蓋部が観音開きする従来の蓋部の開閉機構として、特許文献1に記載されたものがある。この特許文献1に記載のファクシミリ装置は、前側に位置する原稿読取部カバーと、後側に位置する記録部カバーとが観音開きするものである。このファクシミリ装置は、原稿詰まりが生じると原稿読取部カバーを開放して点検したり、記録紙詰まりが生じると記録部カバーを開放して点検したり、両方を点検するときには原稿読取部カバーと記録部カバーとを開放して行うものである。
【特許文献1】特開平9−214658号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このような従来の蓋部の開閉機構を有するファクシミリ装置は、装置本体内部を点検するときに、広く観察できた方が内部の状態が観察しやすい。例えば、紙片の詰まりなどを早く発見したい場合には、両方のカバーを開いた状態で行うのが望ましい。また、昇華型の印刷部を有するファクシミリ装置などでは、印字するためのインクリボンを備えているが、このインクリボンを装着または交換するときには両方のカバーが開いた状態で行われる。
【0004】
しかし、両方のカバーを開いた状態にするには、まず、原稿読取部カバーか、または記録部カバーのいずれかを開放した後に、残りのカバーを開放する開き操作を行う必要があり、煩雑である。
【0005】
そこで本発明は、2つの蓋部を容易な操作で開放することを可能とすることで、操作性を向上させることが可能な蓋部の開閉機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の蓋部の開閉機構は、装置本体の上部に設けられた第1蓋部と第2蓋部とのそれぞれの基部が、前記装置本体に回動可能に支軸されていることで観音開きする蓋部の開閉機構において、前記第1蓋部には、開閉を操作するために突出した第1つまみ部と、前記第1つまみ部が開き操作されると、前記装置本体に設けられた爪部との係止状態が解除される係止部と、前記爪部との係止状態の解除に伴って前記第2蓋部を押し上げる押上部とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、第1蓋部を開き操作するだけで、第1蓋部だけでなく第2蓋部も開くことができるので、2つの蓋部を容易な操作で開放することを可能とすることで、操作性を向上させることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本願の第1の発明は、装置本体の上部に設けられた第1蓋部と第2蓋部とのそれぞれの基部が、装置本体に回動可能に支軸されていることで観音開きする蓋部の開閉機構において、第1蓋部には、開閉操作するために突出した第1つまみ部と、第1つまみ部が開き操作されると、装置本体に設けられた爪部との係止状態が解除される係止部と、爪部との係止状態の解除に伴って第2蓋部を押し上げる押上部とを備えたことを特徴としたものである。
【0009】
本発明の蓋部の開閉機構は、操作者が、第1つまみ部を持って第1蓋部の開き操作をすると、係止部と装置本体に設けられた爪部との係止状態が解除され、押上部が第2蓋部を押し上げる。従って、第1蓋部を開き操作するだけで、第1蓋部だけでなく第2蓋部も開くことができる。
【0010】
本願の第2の発明は、第1の発明において、装置本体には、第1蓋部が閉じ操作されたときに、第1蓋部の閉動作を制限して、静止状態とする制限部が設けられていることを特徴としたものである。
【0011】
本発明の蓋部の開閉機構は、操作者によって第1蓋部が閉じ操作されると、制限部が第1蓋部の閉動作を制限して静止状態とする。第1蓋部を閉めるには操作者はこの状態から更なる閉塞力をかけて閉める必要がある。従って、操作者に第1蓋部を、確実に閉めさせることができる。
【0012】
本願の第3の発明は、第1の発明において、爪部は、第1蓋部が閉じ操作されたときに、係止部が上面に当接する位置に設けられ、係止部は、爪部と係止可能な凹部が設けられると共に、基端部が回動可能であり、かつ弾性復元力により係止方向へ付勢され、閉じ操作によって爪部の上面に当接すると弾性復元力により静止状態となり、更なる閉塞力によって爪部の上面を摺動しつつ、係止方向とは反対となる方向へ回動し、凹部が爪部に係止することを特徴としたものである。
【0013】
操作者によって第1蓋部が閉じ操作されたときは、係止部が爪部の上面に当接するが、閉塞力が弾性復元力より小さければ、弾性復元力によって第1蓋部は爪部の上面にて静止する。そして更なる閉塞力によって、係止部が爪部の上面を摺動しながら、係止方向とは反対となる方向へ回動する。係止部が凹部の開口が爪部の先端を超える位置まで回動すると、弾性復元力によって係止方向へ回動することで、凹部と爪部とが係止状態となる。従って、第1蓋部を閉めるには、操作者は静止状態から更なる閉塞力をかけて閉める必要がある。従って、確実に第1蓋部を閉めさせることができる。
【0014】
本願の第4の発明は、第2の発明において、第2蓋部には、開閉操作するために突出した第2つまみ部が設けられ、第2つまみ部は、第1蓋部が制限部により閉動作が制限されているときの第1つまみ部の上面に、載って重なる位置に設けられていることを特徴としたものである。
【0015】
第1蓋部が制限部により閉動作が制限されていて静止状態となる位置にあるときには、第2蓋部の第2つまみ部は第1つまみ部に載って重なるような位置にある。つまり、第1蓋部が完全に閉まっていない状態にあるときには、第2蓋部は第1蓋部の上に位置することになるので、操作者に第2蓋部が完全には閉まってしない状態であることが視認しやすい。従って、操作者に第2蓋部が閉まっていないことを視認させることで、第1蓋部の開閉状態の再確認を誘導することができる。
【0016】
本願の第5の発明は、第4の発明において、第1蓋部は後蓋部であり、第2蓋部は前蓋部であり、第1つまみ部と第2つまみ部とは、第1つまみ部と第2つまみ部とは、後蓋部と前蓋部との位置関係と反対となるように配置されていることを特徴としたものである。
【0017】
第1つまみ部と第2つまみ部とが、前蓋部と後蓋部との位置関係と反対となるように配置されていることで、後蓋部にある第1つまみ部で開き操作するためには、前蓋部にある第2つまみ部を親指で少し押さえながら、第1つまみ部を人差し指で親指と交差するように押し上げ操作する。従って、操作者は自然な動きで第1蓋部および第2蓋部を開くことができる。
【0018】
本願の第6の発明は、第1から第5のいずれかの発明において、第1つまみ部は、第2蓋部と異なる色に形成されていることを特徴したものである。
【0019】
第1つまみ部が第2蓋部と色が異なることで、操作者が第1蓋部の開き操作を行うときに、第1つまみ部を視認しやすい。
【0020】
本願に第7の発明は、第1から第6のいずれかの発明において、第1つまみ部および押上部は、POM樹脂あるいはガラス繊維ABS樹脂で一体的に形成されていることを特徴としたものである。
【0021】
操作者が第1つまみ部を持って第1蓋部だけでなく第2蓋部までも持ち上げるときに、第1つまみ部には相当な応力がかかる。第1つまみ部および押上部をPOM樹脂あるいはガラス繊維ABS樹脂することで、破損や亀裂が生じてしまうことを防止することができる。
【0022】
(実施の形態)
本発明の実施の形態に係る蓋部の開閉機構を、ファクシミリ装置を例に、図1から図10に基づいて説明する。
【0023】
図1は、本発明の実施の形態に係るファクシミリ装置を示す斜視図である。図2は、図1に示すファクシミリ装置が観音開きした状態を示す斜視図である。図3は、装置本体の内部を示す要部拡大図である。図4(A)は、保持部がシャフトに取り付けられている状態を示す斜視図、図4(B)は、保持部の平面図、図4(C)は、保持部の斜視図、図4(D)は、保持部の右側面図、図4(E)は、保持部の底面図である。図5は、前蓋部が開いた状態を示す斜視図である。図6は、後蓋部の係止状態を示す右側面図である。図7は、後蓋部が前蓋部を押し上げている状態を示す右側面図である。図8は、後蓋部の係止状態が解除された状態を示す右側面図である。図9は、前蓋部および後蓋部が開いた状態を示す右側面図である。図10は、図9に示すファクシミリ装置の平面図である。まずは、本実施の形態に係るファクシミリ装置の構成について説明する。
【0024】
図1に示すように、ファクシミリ装置1は、装置本体2と、装置本体2の左側に配置された受話器Hとを備えている。装置本体2には、前側に開く前蓋部(第2蓋部)3と、後側に開く後蓋部(第1蓋部)4とが観音開きする蓋部が、上部に設けられている。
【0025】
装置本体2の内部には、図示しない記録紙や原稿を搬送する搬送系ローラと、搬送系ローラを回転させる駆動モータおよびギヤ群と、原稿紙のイメージを読み取るスキャナ部と、記録紙への印字を行う印字部と、これら電源を供給する電源部とが設けられている。装置本体2は、前部の両端部および後部の両端部に設けられた支軸201,202(図6参照)によって、前蓋部3および後蓋部4を回動可能に軸支している。
【0026】
装置本体2には、後蓋部4が閉まった状態のときに、後述する係止部と係止する爪部203(図6参照)が設けられている。また、後蓋部4を付勢力で押し上げる圧縮コイルバネ204(図3参照)が底部に設けられている。
【0027】
図1に示すように、前蓋部3の前面には、操作キー群31と、表示部32とが設けられている。操作キー群31としては、発信先電話番号を入力したり、文字入力したりするための数字キー群311と、メニュー選択などを行うカーソルを操作するための十字キー312と、選択されたメニューなどの決定をするための決定キー313などを備えている。また、前蓋部3には、その他のキーとして、メニューキーや、ファクシミリ送信キーなどが設けられている。操作キー群31は、前蓋部3の内部に設けられたプリント配線基板に実装され、キートップのみを露出させた状態で配置されている。前蓋部3は、銀色に着色されたPS樹脂で形成されている。
【0028】
表示部32は、操作者に発信先または発信元の電話番号を通知したり、メニュー表示したり、状態表示したりするものであり、バックライト付きの液晶表示パネルが使用できる。
【0029】
前蓋部3が後蓋部4と共に閉じられた状態のときに、前蓋部3と後蓋部4との間が原稿を給紙する給紙口P1となる。前蓋部3の内側面には格子状凸部33(図10参照)が形成されており、この格子状凸部33が記録紙搬送路の前面壁34(図8参照)となる。前蓋部3の右端には外側に向かって水平方向に突出した前蓋つまみ部35が設けられている。前蓋部3は、装置本体2と図示しない係止機構によって閉じ位置に保持される。
【0030】
後蓋部4は、装置本体2の支軸202に軸支された後蓋フレーム部41を有し、この後蓋フレーム部41に記録紙を給紙する給紙ローラ42が取り付けられている。後蓋フレーム部41の前部は傾斜面に形成され、記録紙搬送路の後面壁411となっている。この後面壁411は、前蓋部3が後蓋部4と共に閉じられたときは、前蓋部3の下側に位置している。後蓋部4には、前蓋部3と共に閉じられた状態のときに、前蓋部3との隙間である給紙口P1を塞ぐ給紙蓋部43が、後蓋フレーム部41の前上部に回動可能に設けられている。後蓋部4の後上部には、印字する記録紙を支持する給紙トレイ44が回動可能に設けられている。
【0031】
後蓋フレーム部41の右側には、装置本体2の内部の爪部203と係止して後蓋部4を閉じた状態に保持する保持部45が設けられている。ここで保持部45について詳細に説明する。
【0032】
保持部45は、前蓋部3とは異なる色とした白色に着色されたガラス繊維ABS樹脂で形成されている。保持部45は、ガラス繊維ABS樹脂で形成する以外に、一般的にはポリアセタール、アセタール樹脂などと呼ばれるポリオキシメチレン(POM)樹脂で形成することもできるが、前蓋部3および後蓋部4の開閉操作のときに亀裂や破損が生じなければ、他の材質のものを採用してもよい。
【0033】
保持部45は、後蓋フレーム部41の横方向に沿って配置されたシャフト46の右端に固定され、シャフト46によって回転可能に支持されている。このシャフト46の回転軸は後蓋フレーム部41の前端に位置している。シャフト46には、一端が後蓋フレーム部41を付勢し、他端が保持部45を付勢するようにねじりコイルバネ451(図9参照)が設けられている。このねじりコイルバネ451によって、保持部45に弾性復元力が付与されている。
【0034】
保持部45の上部には、外側に向かって水平方向に突出した後蓋つまみ部(第1つまみ部)452が設けられている。後蓋つまみ部452が後蓋フレーム部41より前側に位置するように保持部45に設けられていることで、前蓋つまみ部35と後蓋つまみ部452との位置関係が反対となっている。
【0035】
保持部45の下部には、装置本体2の爪部203と係止するために、係止部となる凹部453が設けられている。保持部45の底面は、後蓋部4の閉じ操作に伴って、爪部203の上面と容易に摺動可能なようにする傾斜面すなわち摺動部454が形成されている。保持部45の上面は、閉じられた後蓋部4を開き操作するときに、前蓋部3を下側から押し上げる押上部455である。
【0036】
以上のように構成される本発明の実施の形態に係るファクシミリ装置1の使用状態を、図面に基づいて説明する。まずは、前蓋部3と後蓋部4とが閉まった状態にあるファクシミリ装置1を開く場合を説明する。
【0037】
図1に示すように、前蓋部3と後蓋部4とが閉まった状態にあるときに、例えば、原稿や記録紙などの紙詰まりが発生したときやインクリボンの装着や交換のときなどに、前蓋部3と後蓋部4とを観音開きして、紙片の除去やインクリボンの脱着を行う。
【0038】
前蓋部3と後蓋部4と観音開きするときには、後蓋フレーム部41の前部に形成された後面壁411が前蓋部3の下側に位置しているので、まず、図5に示すように、前蓋部3から開き、次に後蓋部4を開くことが望ましい。しかし、使用者によっては後蓋部4から開こうとすることがある。
【0039】
図6に示すように、後蓋部4を開くときには、後蓋つまみ部452を持って押し上げ操作する必要がある。後蓋つまみ部452は白色、前蓋部3は銀色に着色されているので、操作者は視認しやすい。本実施の形態では、後蓋つまみ部452を白色、前蓋部3を銀色としているが、異なる色であれば他の色での組み合わせとしてもよい。その場合には、後蓋つまみ部452の方が前蓋部3より目立つ白色系または金属光沢を有するような塗装を施すのが望ましい、
後蓋部4を開き操作するには、後蓋つまみ部452が前、前蓋つまみ部35が後に位置しているので、前蓋つまみ部35を右手の親指で上面を軽く押さえるようにして操作する手を安定させ、後蓋つまみ部452を右手の人差し指で下面から、親指と交差するように押し上げる。このように、前蓋つまみ部35と後蓋つまみ部452とは、前蓋部3と後蓋部4との位置関係と反対となるように配置されているので、操作者は自然な動きで後蓋部4を開き操作することができる。
【0040】
後蓋つまみ部452が押し上げ操作されることで、保持部45がシャフト46(図6においては図示せず)を中心として、右側面視して時計方向に回動する。保持部45が回動することで、凹部453が装置本体2に設けられた爪部203との係止状態が解除される。つまり保持部45が係止方向とは反対となる方向へ回動することで係止状態が解除される。後蓋部4は、操作者による押し上げ操作と共に、圧縮コイルバネ204(図3参照)の付勢力によって、大きな押し上げ力を加えなくても後蓋部4を浮き上がらせるように開くことができる。
【0041】
図7に示すように、保持部45が係止方向とは反対となる方向へ回動して、保持部45の上面すなわち押上部455が前蓋部3の下側を押し上げることで、前蓋部3を閉じ位置から係止状態を解除して、浮き上がらせるように開くことができる。従って、後蓋部4を開き操作するだけで、後蓋部4の係止状態を解除して開くことができるだけでなく、前蓋部3も係止状態を解除して開くことができる。
【0042】
図8に示すように、前蓋部3および後蓋部4のそれぞれの係止状態が解除できれば、前蓋部3のいずれかの箇所を左手で持って開きつつ、後蓋部4を右手の人差し指で押し上げ操作することで、図9および図10に示すように、簡単に観音開き状態とすることができる。このように前蓋部3および後蓋部4が完全に閉まった状態では、前蓋部3または後蓋部4のいずれかを開くために、前蓋つまみ部35および後蓋つまみ部452を持って操作するしかない。前蓋部3と後蓋部4とのそれぞれに設けられたつまみ部を、それぞれ持って観音開きする従来の蓋部の開閉機構では、前蓋部3と後蓋部4とをそれぞれ一つずつ、前蓋部3と後蓋部4と比較して小さいつまみを持って開く必要があるので、開き操作が煩雑な作業となる。しかし、本発明の実施の形態に係るファクシミリ装置1では、後蓋部4の後蓋つまみ部452を押し上げて開き操作するだけで、前蓋部3の係止状態が解除され、開いた状態となるので、前蓋部3の前蓋つまみ部35を押し上げ操作することなく、前蓋部3のつかみやすいいずれかの箇所を持って開き操作することができる。従って、容易な操作で前蓋部3および後蓋部4を開放することが可能なので、操作性を向上させることが可能である。
【0043】
次に、前蓋部3と後蓋部4とが観音開きした状態にあるファクシミリ装置1を閉じる場合を説明する。
【0044】
図2に示すように操作者は、前蓋部3と後蓋部4とが観音開きした状態にあるときに、まず後蓋部4から閉める。後蓋部4を閉めるときには、後蓋つまみ部452を持って、支軸202を中心とした円弧を描くような閉じ操作を行う。閉じ操作に伴って後蓋部4に設けられた保持部45の底面である摺動部454が、装置本体2に設けられた爪部203の上面に当接する。急激な閉じ操作を行うと、保持部45だけでなく後蓋フレーム部41の後面壁411が装置本体2に激しく衝突をすることが懸念されるため、ゆっくりとした閉じ操作を行うのが望ましい。従って、図8に示すように、保持部45が爪部203の上面に当接するときの閉じ操作による閉塞力が、ねじりコイルバネ451の弾性復元力と圧縮コイルバネ204の付勢力より小さいものとなる。ねじりコイルバネ451の弾性復元力および圧縮コイルバネ204の付勢力によって後蓋部4は抵抗を受けるので、爪部203の上面に摺動部454が当接した状態で後蓋部4が静止する。つまり、爪部203が、後蓋部4の閉動作を制限して、静止状態とする制限部として機能する。
【0045】
そして、操作者により更なる閉塞力が加えられることで、摺動部454である傾斜面が爪部203の上面を滑り落ちるように摺動する。この摺動に伴い凹部453の開口方向が、後方から下方に向かうように回動する。摺動部454の後端が爪部203の先端を超えると保持部45全体が下降する。そして、凹部453の開口が爪部203の先端まで位置したとき、凹部453の開口方向が下方から後方へ、つまり係止方向へ、ねじりコイルバネ451の弾性復元力により回動することで、凹部453が爪部203に係止して閉じ位置で安定する。
【0046】
このように、操作者は、後蓋部4を完全に閉めるには静止状態から更なる閉塞力をかけることが必要となる。操作者が後蓋部4に更なる閉塞力をかける構成としたことにより、操作者に後蓋部4を確実に閉めさせることができる。
【0047】
後蓋部4の閉じ操作における静止状態は、操作者による閉塞力の加減によっておこる。つまり、閉塞力がねじりコイルバネ451の弾性復元力および圧縮コイルバネ204の付勢力より小さい場合には後蓋部4は静止状態となり、大きい場合には後蓋部4は、ねじりコイルバネ451の弾性復元力や圧縮コイルバネ204の付勢力よる抵抗を受け減速しつつも、爪部203と当接することで保持部45が回動して凹部453を爪部203に係止させることができる。従って、急激な閉じ操作であっても後蓋部4の急激な閉動作を軽減することができる。
【0048】
後蓋部4が閉じると、次に操作者は前蓋部3を閉じ操作する。前蓋部3の閉じ操作は、前蓋つまみ部35を持って、支軸201を中心とした円弧を描くような閉じ操作を行う。後蓋部4を閉じる際には、後蓋部4を一度静止状態とし、更なる閉塞力をかけさせることで二度の閉じ操作を行わせているので、操作者は閉じ操作には十分な注意が必要であることを感じている。従って、前蓋部3を閉じる際にはゆっくりと、かつ確実な閉じ操作をするので、前蓋部3を後蓋部4と同様に確実に閉じさせることができる。
【0049】
後蓋部4の閉じ操作を行っているときに、後蓋部4が完全に閉まっておらず、保持部45が爪部203の上面に載った静止状態であるにもかかわらず、後蓋部4が閉位置にあると誤認して更なる閉塞力を後蓋部4に加えない場合がある。
【0050】
後蓋部4が爪部203により閉動作が制限されていて静止状態となる位置にあるときには、前蓋つまみ部35は後蓋つまみ部452に載って重なるような位置にある。つまり、後蓋部4が完全に閉まっていない状態にあるときには、前蓋部3は後蓋部4の上に位置することになるので、前蓋部3は、後蓋部4より大きな角度で開いた状態にある。従って、後蓋部4より前蓋部3の方が開閉状態を視認しやすいので、前蓋部3が完全に閉じていない状態に気づかせることができれば、後蓋部4も完全には閉まってしない状態であることを操作者に気づかせることができる。従って、操作者に前蓋部3が閉まっていないことを視認させることで、後蓋部4の開閉状態の再確認を誘導することができる。
【0051】
例えば、後蓋部4が完全に閉まっていないことに気が付かない場合には、操作者は、後蓋部4は閉まっていると思い込んでいるので、前蓋部3に更に閉塞力を加えて前蓋部3を閉じ操作する。前蓋部3を閉じ操作することで前蓋部3の下側が、開き操作するときには前蓋部3の下側を押し上げるように作用する押上部455である保持部45の上面を押圧する。前蓋部3の下側が保持部45の上面を押圧することで、保持部45の摺動部454が爪部203の上面を滑り落ちるように摺動して、保持部45が係止方向とは反対となる方向へ回動する。摺動部454の後端が爪部203の先端を超えて保持部45全体が下降することで、保持部45が係止方向へ回動して、凹部453が爪部203に係止する。
【0052】
このように、後蓋部4が閉位置にないときでも前蓋部3を閉じ操作することで後蓋部4を閉じることができ、前蓋部3は閉じられているが後蓋部4が完全に閉じられていないという中途半端な状態が起きない。従って、後蓋部4を開き操作するだけで前蓋部3が開くだけでなく、前蓋部3を完全に閉めるように操作すれば、後蓋部4も完全に閉めることができるので、不完全な状態でファクシミリ装置1の送信動作や受信動作をしてしまうことを防止することができる。
【0053】
また、後蓋部4の前縁を前蓋部3の後縁に接近させて配置しても、後蓋部4を開き操作するだけで前蓋部3が開かせることができるので問題はない。従って、ファクシミリ装置1全体の大きさを小さくすることができる。
【0054】
上述したような前蓋部3および後蓋部4を開閉操作しても、保持部45がPOM樹脂あるいはガラス繊維ABS樹脂で一体的に形成されているので、破損や亀裂が生じてしまうことを防止することができる。
【0055】
なお、本実施の形態では、後蓋つまみ部452と、係止部である凹部453と、押上部455と、摺動部454とを、一体的に形成した保持部45としているが、操作者が開閉操作することでそれぞれが連動するように構成できれば、それぞれを別部材としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、2つの蓋部を容易な操作で開放することを可能とすることで、操作性を向上させることが可能なので、装置本体の上部に設けた第1蓋部と第2蓋部とが観音開きする蓋部の開閉機構に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の実施の形態に係るファクシミリ装置を示す斜視部
【図2】図1に示すファクシミリ装置が観音開きした状態を示す斜視図
【図3】装置本体の内部を示す要部拡大図
【図4】(A)保持部がシャフトに取り付けられている状態を示す斜視図、(B)保持部の平面図、(C)保持部の斜視図、(D)保持部の右側面図、(E)保持部の底面図
【図5】前蓋部が開いた状態を示す斜視図
【図6】後蓋部の係止状態を示す右側面図
【図7】後蓋部が前蓋部を押し上げている状態を示す右側面図
【図8】後蓋部の係止状態が解除された状態を示す右側面図
【図9】前蓋部および後蓋部が開いた状態を示す右側面図
【図10】図9に示すファクシミリ装置の平面図
【符号の説明】
【0058】
1 ファクシミリ装置
2 装置本体
201,202 支軸
203 爪部
204 圧縮コイルバネ
3 前蓋部
31 操作キー群
311 数字キー群
312 十字キー
313 決定キー
32 表示部
33 格子状凸部
34 前面壁
35 前蓋つまみ部
4 後蓋部
41 後蓋フレーム部
411 後面壁
42 給紙ローラ
43 給紙蓋部
44 給紙トレイ
45 保持部
451 ねじりコイルバネ
452 後蓋つまみ部
453 凹部
454 摺動部
455 押上部
46 シャフト
H 受話器
P1 給紙口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体の上部に設けられた第1蓋部と第2蓋部とのそれぞれの基部が、前記装置本体に回動可能に支軸されていることで観音開きする蓋部の開閉機構において、
前記第1蓋部には、開閉を操作するために突出した第1つまみ部と、
前記第1つまみ部が開き操作されると、前記装置本体に設けられた爪部との係止状態が解除される係止部と、
前記爪部との係止状態の解除に伴って前記第2蓋部を押し上げる押上部と
を備えたことを特徴とする蓋部の開閉機構。
【請求項2】
前記装置本体には、前記第1蓋部が閉じ操作されたときに、前記第1蓋部の閉動作を制限して、静止状態とする制限部が設けられていることを特徴とする請求項1記載の蓋部の開閉機構。
【請求項3】
前記爪部は、前記第1蓋部が閉じ操作されたときに、前記係止部が上面に当接する位置に設けられ、
前記係止部は、前記爪部と係止可能な凹部が設けられると共に、回動可能であり、かつ弾性復元力により係止方向へ付勢され、閉じ操作によって前記爪部の上面に当接すると弾性復元力により静止状態となり、更なる閉塞力によって前記爪部の上面を摺動しつつ、係止方向とは反対となる方向へ回動し、前記凹部が前記爪部に係止することを特徴とする請求項1記載の蓋部の開閉機構。
【請求項4】
前記第2蓋部には、開閉操作するために突出した第2つまみ部が設けられ、
前記第2つまみ部は、前記第1蓋部が前記制限部により閉動作が制限されているときの前記第1つまみ部の上面に、載って重なる位置に設けられていることを特徴とする請求項2記載の蓋部の開閉機構。
【請求項5】
前記第1蓋部は後蓋部であり、
前記第2蓋部は前蓋部であり、
前記第1つまみ部と第2つまみ部とは、前記後蓋部と前蓋部との位置関係と反対となるように配置されていることを特徴とする請求項4記載の蓋部の開閉機構。
【請求項6】
前記第1つまみ部は、前記第2蓋部と異なる色に形成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれかの項に記載の蓋部の開閉機構。
【請求項7】
前記第1つまみ部および前記押上部は、POM樹脂あるいはガラス繊維ABS樹脂で一体的に形成されていることを特徴とする請求項1から6のいずれかの項に記載の蓋部の開閉機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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