説明

蓋開閉装置

【目的】例えば自動車のコンソールボックスの蓋を両側から開閉可能とする蓋開閉装置において、蓋体を開く操作によって蓋体が外れることを防止し、かつ操作力や操作ストロークの設定を容易とする。
【構成】蓋体(2)の前後方向の両端面における左右方向の両端位置にそれぞれ軸線を一致させて出没自在に設けられ、突出状態において蓋体が取り付く開口の縁部(1a)内面に形成された軸受穴に回転自在に嵌合する2対のヒンジピン(11a,11b,12a,12b)と、蓋体内に設けられこれらヒンジピンをそれぞれ突出方向に付勢する付勢部材(13a,13b,14a,14b)と、前記ヒンジピンの各対に対応して摺動自在に蓋体に設けられた二つの操作ボタン(15,16)とより構成する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、例えば自動車のコンソールボックスの蓋を両側(運転席側と助手席側と)から開閉可能とする蓋開閉装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、この種の装置としては、特開平3−189249号公報に見られるように、カムにより蓋体上面に設けられたノブ(操作部)に連動して蓋体の側端面から出没し、突出したときにコンソールボックスの開口縁部の穴に嵌合する2対のロッドを有し、前記ノブの操作方向によって2対のロッドのうちいずれか1対を蓋体内に引き込んで、残りのロッドを揺動軸(ヒンジ)として蓋体を所定の側に開く構成のものがある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従来の開閉装置は、一つのノブにより2対のロッドの動作を操作して両方向の開操作を行なうものであるために、一方向に蓋体を開くつもりで一方向に押したノブを、蓋体を開いた後に反対方向に戻してしまった場合等に、ヒンジとなっていたロッドが引っ込んでしまい蓋体がコンソールボックスから外れてしまうことがあった。
【0004】また、摺接するカムによりノブの動きとロッドの動きを連動させる構成であるため、蓋体を開くためにノブを押す力と必要なストロークとをそれぞれ適正な値に設定することが困難であった。
【0005】すなわち、ノブを押す力が、ロッドを付勢するばねの仕様と、カムとロッドの摺接面の傾斜角度とで一義的に決まるのであれば、この摺接面の傾斜角度によりストロークを所望の値に設定し、さらにこの設定された傾斜角度を考慮しつつ前記ばねの仕様(ばね定数等)を決定することによりノブを押す力も所望の値に設定できる。
【0006】しかし、上記構成であると、実際はロッドとカムの間に無視できない摩擦があり、この摩擦による抵抗力は、摺接面の状態により変動するものであって、しかもノブの操作ストロークを小さくしようとして前記傾斜角度をノブの移動方向に対して大きくすればする程大きくなるので、実際にはノブの操作力等を設計により一定の値に設定することは困難である。
【0007】本発明は、このような従来の技術が有する問題点に着目してなされたもので、蓋体を開く操作によって蓋体が外れてしまう可能性が少なく、操作力や操作ストロークの設定が容易な蓋開閉装置を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】かかる目的を達成するための本発明の要旨とするところは、1 蓋体(2)を左右両側から開閉可能とする蓋開閉装置であって、蓋体(2)の前後の両端面における左端に軸線を一致させて出没自在に設けられ、突出状態において蓋体が取り付く開口の前後両内面における左端に形成された軸受穴に回転自在に嵌合して、蓋体(2)を右側から開ける際の揺動軸となる1対の左側ヒンジピン(11a,11b)と、蓋体の前後の両端面における右端に軸線を一致させて出没自在に設けられ、突出状態において蓋体が取り付く開口の前後両内面における右端に形成された軸受穴に回転自在に嵌合して、蓋体(2)を左側から開ける際の揺動軸となる1対の右側ヒンジピン(12a,12b)と、蓋体(2)内に設けられ前記左側ヒンジピン(11a,11b)及び右側ヒンジピン(12a,12b)をそれぞれ突出方向に付勢する付勢部材(13a,13b,14a,14b)と、前記左側ヒンジピン(11a,11b)及び右側ヒンジピン(12a,12b)の各対にそれぞれ対応して摺動自在に蓋体(2)に設けられた左側操作ボタン(15)及び右側操作ボタン(16)と、これら左側操作ボタン(15)あるいは右側操作ボタン(16)をそれぞれ一方向に押して嵌合解除位置まで摺動させると対応する前記左側ヒンジピン(11a,11b)あるいは右側ヒンジピン(12a,12b)の対が引かれて蓋体(2)内に没するよう、前記左側操作ボタン(15)あるいは右側操作ボタン(16)と対応する左側ヒンジピン(11a,11b)あるいは右側ヒンジピン(12a,12b)とをそれぞれ連結する引張りケーブル(17a,17b,18a,18b)と、よりなることを特徴とする蓋開閉装置。
【0009】2 前記左側操作ボタン(15)あるいは右側操作ボタン(16)は、それぞれ蓋体(2)の左側あるいは右側の端部に、摺動方向を蓋体の上面に沿う左右方向とされて配置され、前記引張りケーブル(17a,17b,18a,18b)は、前記一方向が左側操作ボタン(15)あるいは右側操作ボタン(16)を蓋体の内部に押込む方向となるよう、蓋体の左右の端部側から引き回されて前記左側操作ボタン(15)あるいは右側操作ボタン(16)の側部に取付けられ、前記蓋体(2)内には、前記左側操作ボタン(15)あるいは右側操作ボタン(16)が蓋体(2)の左右の端面よりも突出しないよう、前記左側操作ボタン(15)あるいは右側操作ボタン(16)の外方への摺動ストロークを規制するストッパ(24,25)が設けられていることを特徴とする請求項1記載の蓋開閉装置。
【0010】3 前記蓋体(2)には、前記嵌合解除位置まで押された前記左側操作ボタン(15)あるいは右側操作ボタン(16)にそれぞれ係合して、その他方向への摺動を阻止する左側係合部材(19,60)及び右側係合部材(20,60)がそれぞれ設けられ、前記左側操作ボタン(15)と右側操作ボタン(16)とは、蓋体(2)の前後方向における同位置に配置され、蓋体(2)内のこれら左側操作ボタン(15)と右側操作ボタン(16)との間には、これら操作ボタン(15,16)と同方向に摺動自在とされ、これら操作ボタン(15,16)の一方が前記嵌合解除位置に摺動すると、両端がこれら操作ボタン(15,16)の内側の端面に略当接する長さのロッド(21)が設けられていることを特徴とする請求項2記載の蓋開閉装置。
【0011】4 前記左側係合部材(19,50)あるいは右側係合部材(20,60)は、対応する前記左側操作ボタン(15)あるいは右側操作ボタン(16)の下側に揺動自在に設けられ、一端側が前記嵌合解除位置に移動してきた前記左側操作ボタン(15)あるいは右側操作ボタン(16)の下面の凹部に係合するよう付勢されるとともに、蓋体(2)が閉じられたときに蓋体(2)が取付く開口端面に他端側が押されて前記係合が解除する側に揺動する揺動部材(19,20,51,61)よりなることを特徴とする請求項3記載の蓋開閉装置。
【0012】
【作用】本発明の蓋開閉装置であると、蓋体(2)が開口に取付き、2対のヒンジピン(11a,11b,12a,12b)がそれぞれ前記開口縁部(1a)の軸受穴に嵌合した状態にあるときには、これらヒンジピンを嵌合する側に付勢する付勢部材(13a,13b,14a,14b)の力により、この蓋体が開口を閉じている状態は保持される。
【0013】そして、蓋体を開けようとする側と反対側のヒンジピンに対応する一方の操作ボタン(15又は16)を付勢部材の付勢力(13a,13b又は14a,14b)に抗して押して嵌合解除位置まで摺動させると、この側のヒンジピン(11a,11b又は12a,12b)の対が引張りケーブル(17a,17b又は18a,18b)を介して引かれてそれぞれ蓋体内に引き込まれるので、残りのヒンジピン(12a,12b又は11a,11b)を回転軸として所望の方向に蓋体を開くことができる。
【0014】しかも、残りのヒンジピンは、他方の操作ボタン(16又は15)を操作しない限り、付勢手段(14a,14b又は13a,13b)の作用によって、蓋体が取り付く開口縁部の軸受穴に嵌合したままとなっており、前記一方の操作ボタンを蓋体開操作後逆方向に戻すような異常な操作をしたとしても、蓋体が外れることはない。
【0015】そして、前記操作ボタンが、蓋体の左右の端部のうち対応する前記ヒンジピンが設けられた側の端部に配置され、その操作方向が蓋体の内部に押込む方向であり、蓋体の左右の端面よりも突出しないよう規制された場合には、蓋体を開けようとして掛けた手の指でそのまま操作ボタンを押して片手によってワンタッチで蓋体を開けることができるとともに、操作ボタンが常時蓋体内に収納された状態となるので見栄えも良くなる。
【0016】また、嵌合解除位置まで押込まれた操作ボタンの戻り方向への摺動を阻止する係合部材(19,20,50,60)が設けられ、操作ボタンの一方が前記嵌合解除位置に摺動したときに、両端が二つの操作ボタンの内側の端面に略当接する長さのロッド(21)が設けられている場合には、一方の操作ボタンが操作され嵌合解除位置で保持されると、前記係合部材の係合が解除されない限り、他方の操作ボタンは前記ロッドに阻止されて嵌合解除位置に向かう方向に移動できない。このため、一方の操作ボタンが操作されて蓋体が開けられた後、たとえ他方の操作ボタンに力が加えられても回転軸となっているヒンジピンが引っ込むことはなく、蓋体が外れてしまう可能性は完全に無くなる。
【0017】また、前記係合部材が、蓋体が閉じられたときに蓋体が取付く開口端部(1b)に他端側が押されて揺動し係合が解除する揺動部材(19,20,51,61)からなる場合には、蓋体を閉るという操作だけで、自動的に操作ボタンの嵌合解除位置への保持状態が解除されて、蓋体内に没していたヒンジピンが突出して開口縁部の穴に嵌合し、2対のヒンジピンが嵌合した状態(前記保持状態)に自動的に戻る。
【0018】
【実施例】以下、図1〜4に基づき本発明の第1実施例を説明する。図1,2は、この実施例の蓋開閉装置を適用したコンソールボックスの上面図であり、図3,4は、このコンソールボックスの一部を破断した側面図である。このコンソールボックスは、例えば合成樹脂よりなるもので、直方体状のボックス本体1と、このボックス本体1の上部開口を塞ぐ蓋体2とよりなる。
【0019】そして、この実施例の蓋開閉装置は、蓋体2の前後方向(図1における上下方向)の両端面における左端に軸線を一致させて出没自在に設けられた左側ヒンジピン11a,11bと、前記両端面における右端に軸線を一致させて出没自在に設けられた右側ヒンジピン12a,12bと、これらヒンジピンをそれぞれ突出方向に付勢する圧縮コイルバネ13a,13b,14a,14b(付勢部材)と、前記ヒンジピンの各対に対応して摺動自在に蓋体に設けられた左側操作ボタン15あるいは右側操作ボタン16と、これらの操作ボタン15,16と対応する二つのヒンジピンとをそれぞれ連結する引張りケーブル17a,17b,18a,18bと,後述する嵌合解除位置まで押込まれた操作ボタン15,16にそれぞれ係合して戻り方向への摺動を阻止する左側係合部材19あるいは右側係合部材20と、前記二つの操作ボタン15,16の間に摺動自在に配置され同時操作を防止するロッド21とよりなるものである。
【0020】左側ヒンジピン11a,11bあるいは右側ヒンジピン12a,12bは、突出状態においてボックス本体1における上部開口の前後に位置する縁部1aの両内面にそれぞれ形成された軸受穴(図示略)に回転自在に嵌合するもので、それぞれ同一軸線上に配置されている。
【0021】左側操作ボタン15あるいは右側操作ボタン16は、蓋体2の左右の端部のうち、対応するヒンジピンが設けられた側の端部に(この場合、左側操作ボタン15は左端に、右側操作ボタン16は右端に)配置され、摺動方向を蓋体の上面に沿う左右方向とされている。すなわち、蓋体2の左右両端の下面側には、蓋体2の前後方向の同一位置に位置して、蓋体2の上面に沿って内方に伸びる断面四角形の凹部3,4が形成され、各操作ボタン15,16は、この凹部3,4にそれぞれ摺動自在に嵌込まれている。
【0022】これら左側操作ボタン15あるいは右側操作ボタン16の奥側の端面の両端には、凹部3,4の奥側の壁を貫通して伸びる摺動軸22,23が形成され、これら摺動軸22,23の先端の大径部は、凹部3,4の奥側の壁に当接することにより操作ボタン15,16が蓋体2の左右の端面よりも突出しないよう、これら操作ボタン15,16の外方への摺動ストロークを規制するストッパ24,25を構成している。
【0023】そして、摺動軸22,23の周囲であって、操作ボタン15,16と凹部3,4の奥側の壁との間には、圧縮コイルバネ26,27が取付けられ、操作ボタン15,16を外方に付勢している。また、これら左側操作ボタン15あるいは右側操作ボタン16の両側面からは、それぞれ凹部3,4の側壁を貫通して伸びる突起28a,28b,29a,29bがそれぞれ形成され、それぞれ引張りケーブル17a,17b,18a,18bの一端が固定されるようになっている。なお、凹部3,4の側壁において、突起28a,28b,29a,29bが貫通する部分には、操作ボタン15,16の摺動方向に長穴(図示略)が形成され、干渉が起きないようになっている。
【0024】また、この操作ボタン15,16の摺動ストロークは、各ヒンジピンが前記軸受穴から完全に抜けて蓋体2内に没するためのストローク以上の値に設定され、この各ヒンジピンが前記軸受穴から完全に抜けて蓋体2内に没したときの操作ボタン15,16の位置が前記嵌合解除位置となっている。さらに、これら操作ボタン15,16の下面側には、左側係合部材19あるいは右側係合部材20が配置される凹部15a,16aがそれぞれ形成され、これら凹部15a,16a内には、左側係合部材19あるいは右側係合部材20が係合する段部15b,16bが形成されている。
【0025】引張りケーブル17a,17b,18a,18bは、対応するヒンジピンの嵌合を解除するための操作ボタン15,16の操作方向がこれらを蓋体2の内部に押込む方向となるよう、蓋体15,16の左右の端部側から引き回されて操作ボタン15,16の前記突起28a,28b,29a,29bに取付けられている。
【0026】すなわち、蓋体2の左右の端部における、凹部3,4のそれぞれ両側には、前記突起28a,28b,29a,29bよりも蓋体2の端部側に位置して、引張りケーブル17a,17b,18a,18bにそれぞれ摺接する摺接ピン30a,30b,31a,31bが設けられ、引張りケーブル17a,17b,18a,18bは、それぞれこれら摺接ピン30a,30b,31a,31bに巻回されて引き回され、蓋体2の端部側から前記突起28a,28b,29a,29bに取付けられている。
【0027】なお、このように引張りケーブル17a,17b,18a,18bを敷設する手段としては、上記の如く摺接ピンに限らず、例えば回転自在な滑車を使用してもよい。また、引張りケーブル17a,17b,18a,18bの長さは、左側ヒンジピン11a,11bあるいは右側ヒンジピン12a,12bが前記軸受穴に嵌合し、左側操作ボタン15あるいは右側操作ボタン16が自由状態(ストッパ24,25が効いており、左側操作ボタン15あるいは右側右側操作ボタン16の端面が蓋体2の端面の位置に一致している状態)にある場合に、図1に示すごとく、各引張りケーブルがたるみなく緊張するような値に設定されている。さらに、この引張りケーブル17a,17b,18a,18bの材質としては、十分な柔軟性があるとともに伸びの少ないものであれば各種のものが使用でき、例えば、鋼線,ピアノ線,絹糸等を使用することができる。
【0028】左側係合部材19あるいは右側係合部材20は、それぞれ、鋼線等の引張りケーブルを細長くループ状に曲げ、この引張りケーブルの両端を横方向に平行に伸ばした形状とされたもので、前記凹部3,4の底面に形成された突起32,33の二つの横穴に各端部が挿入されて支持され、全体の変形を伴いつつ上下方向に揺動するものである。
【0029】この左側係合部材19あるいは右側係合部材20は、ループ状部分の外側の一端が、図3に示す如くボックス本体1の開口端面1bに向かって下方に折曲しており、自然状態(変形していない状態)においては、この一端が蓋体2の下面から下方に伸び、内側の他端が上向くように、突起32,33への取付け位置等が設定されている。これにより、左側操作ボタン15あるいは右側操作ボタン16がヒンジピンの嵌合が外れる位置(以下、嵌合解除位置という。)まで押込まれると、自動的にこの左側係合部材19あるいは右側係合部材20の他端が前記段部15b,16bに係合するようになっている。
【0030】ロッド21は、前記凹部3,4の奥側の壁を両端部がそれぞれ貫通した状態に配置され、操作ボタン15,16と同方向に摺動自在とされて、操作ボタン15,16の一方が嵌合解除位置に摺動すると、両端がこれら二つの操作ボタン15,16の内側の端面に略当接する長さのものである。なお、このロッド21の一端と凹部4の奥面を構成する壁との間には圧縮ばね35が配設されて、このロッド21のがたつきを防止している。なお、ここで、略当接する長さとは、かならずしも接触する必要はないことを意味し、少なくとも、一方の操作ボタンが前記嵌合解除位置に押込まれて、前記係合部材によって戻り方向への摺動を阻止されている状態においては、他方の操作ボタンがその嵌合解除位置に摺動する前にロッド21の端面に当接することを意味する。
【0031】次に、上記第1実施例の作用を説明する。まず、蓋体2がボックス本体1の上部開口に取付き、左側ヒンジピン11a,11b及び右側ヒンジピン12a,12bがそれぞれ開口縁部1aの軸受穴に嵌合した状態にあるときには、これらヒンジピンを嵌合する側に付勢するばね13a,13b,14a,14bの力により、左側操作ボタン15あるいは右側操作ボタン16が押されない限り、蓋体2が開口を閉じている状態は保持される。(このとき、左側係合部材19あるいは右側係合部材20は、外側の端部がボックス本体1の上部開口端面1bに当接して蓋体2内に押込まれ、その内側の端部が各左側操作ボタン15あるいは右側操作ボタン16の段部15b,16bに乗り上げた状態にあり、変形状態となっている。)そして、例えば蓋体2を右側から開けようとする場合には、蓋体2の右端の右側操作ボタン16のある付近に手をかけて、この手の指で右側操作ボタン16を押して引けば、ワンタッチで開くことができる。すなわち、図2に示すように、右側操作ボタン16を嵌合解除位置まで押込むと、右側ヒンジピン12a,12bのみが引張りケーブル18a,18bを介して引かれてそれぞれ蓋体2内に引き込まれるので、左側ヒンジピン11a,11bを揺動軸として蓋体2を右側から開くことができる。
【0032】一方、蓋体2の左端の左側操作ボタン15のある付近に手をかけて、この手の指で右側操作ボタン16を嵌合解除位置まで押して引けば、同様に左側ヒンジピン11a,11bのみが引張りケーブル17a,17bを介して引かれてそれぞれ蓋体2内に引き込まれるので、図4に示す如く右側ヒンジピン12a,12bを揺動軸として蓋体2を左側からワンタッチで開くことができる。
【0033】この際、例えば蓋体2を左側から開くべく、左側操作ボタン15が嵌合解除位置まで押込まれたときには、図3に示す如く左側係合部材19がその変形状態からの復元力により自動的に反時計回り揺動し、この左側係合部材19の内側の端部が左側操作ボタン15の段部に自動的に係合して、左側操作ボタン15の戻りを阻止する。また、ロッド21は、二つの操作ボタン15,16の間に介在して、たとえ右側操作ボタン16に押込み方向の外力が加わってもこの右側操作ボタン16の摺動を阻止する。このため、蓋体2を一旦いずれかの側に開くと、一旦引き込まれた開いた側のヒンジピンが突出したり、蓋体2を支持している残りのヒンジピンが引き込まれて蓋体2が外れてしまうことはない。
【0034】そして、蓋体2を元の状態に閉じるには、単に開いた蓋体2をボックス本体1の上部開口端面1bに当接するまで倒せばよい。すると、開いた側の係合部材の外側の端部がこの開口端面1bに押されて揺動し、その内側の端部と操作ボタンの前記段部との係合が外れて、前述の蓋体2が開口を閉じている状態に戻る。
【0035】すなわち、例えば左側から開いた蓋体2を閉じた場合には、図3に示す如く、左側係合部材19がその外側の端部においてボックス本体1の開口端面1bに押されて時計回りに揺動し、この左側係合部材19の外側の端部と段部15bとの係合が外れる。このため、左側操作ボタン15あるいは左側ヒンジピン11a,11bは、バネ13a,13bあるいはバネ26の復元力により元の位置に戻り、左側ヒンジピン11a,11bは縁部1aの内面の軸受穴に嵌合する。
【0036】このように、上記蓋開閉装置であると、蓋体2を左右いずれの側にもワンタッチで開けて閉めることができ、しかもこの際蓋体2が外れてしまうことはない。なぜなら、左側操作ボタン15あるいは右側操作ボタン16は左右に別個に設けられ、いずれかの側に蓋体2を開くために反対側の操作ボタンも押してしまう可能性は極めて低く、またたとえ反対側の操作ボタンを押したとしても、前述の左側係合部材19あるいは右側係合部材20とロッド21の作用によりこの操作ボタンが嵌合解除位置に摺動することは不可能であるために、左側ヒンジピン11a,11bあるいは右側ヒンジピン12a,12bのうち両方とも引き込んだ状態になることはないからである。
【0037】また、上記蓋開閉装置であると、左側操作ボタン15あるいは右側操作ボタン16の必要ストローク(係合解除位置までの摺動距離)は、引張りケーブル17a,17b,18a,18bの引き回しにより一義的に決り(上記実施例の場合は、各ヒンジピンのストロークに等しい)、また、左側操作ボタン15あるいは右側操作ボタン16を摺動させるために必要な押圧力は、バネ13a,13bあるいはバネ26の復元力に略等しい(特に、摺接ピン28a,29a等の代りに滑車を使用した場合には、摩擦による抵抗力はほとんど無くなる)。このため、操作ストロークと操作力とを設計によりそれぞれ最適な値に設定することが極めて容易となる。
【0038】また、各ヒンジピン11a,11b,12a,12bや操作ボタン15,16は、蓋体2を開いたときにも常時内部に収納されて外部に露出しないため見栄えも良い。さらに、ヒンジを出没させるための操作力伝達部材として引張りケーブル17a,17b,18a,18bを使用する構成であるため、構造の簡単化及び軽量化が図れる。
【0039】つぎに、図5〜7により本発明の第2実施例を説明する。なお、第1実施例と同種の部位には同一符号を付し重複した説明を省略する。この第2実施例において特徴的なことは、まず引張りケーブル17a,17b,18a,18bの左側操作ボタン15あるいは右側操作ボタン16への取付け方である。
【0040】すなわち、前記摺接ピン28a,28b,29a,29bの代りに滑車41a,41b,42a,42bが凹部3,4の側壁に設けられ、また左側操作ボタン15あるいは右側操作ボタン16の側面の突起28a,28b,29a,29bにも、滑車43a,43b,44a,44bが取付けられている。そして、引張りケーブル17a,17b,18a,18bの左側操作ボタン15あるいは右側操作ボタン16側の端部は、図5R>5に示す如くこれら滑車に巻回され、その端末は蓋体2に固定されている。
【0041】つぎに、係合部材の構成であるが、この第2実施例の係合部材50,60は、三つのリンクからなるものとされている。すなわち、右側係合部材60は、蓋体2内の凹部4の下側の位置に上下に揺動自在とされて取付けられた揺動リンク61と、この揺動リンク61の外側の端部に揺動自在に連結され、その先端が揺動リンク61の揺動につれ蓋体2の下面から突出自在とされた当接リンク62と、揺動リンク61の内側の端部に揺動自在に連結され、その先端が揺動リンク61の揺動につれ凹部4内に突出自在とされた係合リンク63とよりなり、揺動リンク61がバネ64により時計回り方向に付勢されたものである。
【0042】また、左側係合部材50も、同様に揺動リンク51と、当接リンク52と、係合リンク53とよりなり、揺動リンク51がバネ54により反時計回り方向に付勢されたものである。
【0043】この第2実施例の蓋開閉装置によっても、前記第1実施例と同様のワンタッチの操作によって、左右いずれの側にも蓋体2を開くことができ、同様の効果を奏することができるが、特徴的なことは、まず、蓋体2を開くために必要な左側操作ボタン15あるいは右側操作ボタン16の操作ストロークが、前記第1実施例の場合の半分ですむ。すなわち、前述のように各引張りケーブルが引き回されて取付けられている結果、各ヒンジピンと各操作ボタンの移動量の関係は2対1になり、各ヒンジピンを引き込んで係合を解除するにはその半分のストロークだけ対応する操作ボタンを押込んでやればよいのである。
【0044】また、係合部材50,60は、前述の左側係合部材19あるいは右側係合部材20のように変形を伴って動作せず、蓋開操作時には、バネ54,64の付勢力により、揺動リンク51,61の揺動につれ、係合解除位置にきた左側操作ボタン15あるいは右側操作ボタン16の下面の段部15b,16bに係合リンク53,63の先端が係合する。そして、蓋閉操作時には、当接リンク52,62がボックス本体の開口端面に当接して押されて、揺動リンク51,61の揺動につれ、係合リンク53,63が下降して操作ボタンとの係合が解除される。
【0045】なお、この第2実施例において、左側操作ボタン15あるいは右側操作ボタン16が蓋体2の端面から突出しないようそのストロークを規制するストッパとしては、左側操作ボタン15あるいは右側操作ボタン16の両側の突起28a,28b,29a,29bに当接する蓋体2の凹部3,4の側壁がこの機能を果たしている。
【0046】
【発明の効果】本発明の蓋開閉装置によれば、蓋体を左右いずれの側にもワンタッチで開けて閉めることができ、しかもこの際蓋体が外れてしまうことがないという効果がある。また、操作ストロークと操作力とを設計によりそれぞれ最適な値に設定することが極めて容易となるとともに、ヒンジピンや操作ボタンが外部に露出せず見栄えもよくなる。さらに、ヒンジを出没させるための操作力伝達部材として引張りケーブルを使用する構成であるため、構造の簡単化及び軽量化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例を示す平面図である。
【図2】本発明の第1実施例を示す平面図である。
【図3】本発明の第1実施例を示す側面図である。
【図4】本発明の第1実施例を示す側面図である。
【図5】本発明の第2実施例を示す水平断面図である。
【図6】本発明の第2実施例を示す縦断面図である。
【図7】本発明の第2実施例における係合部材を示す斜視図である。
【符号の説明】
2…蓋体
11a,11b…左側ヒンジピン
12a,12b…右側ヒンジピン
13a,13b,14a,14b…付勢部材
15…左側操作ボタン
16…右側操作ボタン
17a,17b,18a,18b…引張りケーブル
19,50…左側係合部材
20,60…右側係合部材
(19,20,51,61…揺動部材)
21…ロッド
24,25…ストッパ

【特許請求の範囲】
【請求項1】蓋体を左右両側から開閉可能とする蓋開閉装置であって、蓋体の前後の両端面における左端に軸線を一致させて出没自在に設けられ、突出状態において蓋体が取り付く開口の前後両内面における左端に形成された軸受穴に回転自在に嵌合して、蓋体を右側から開ける際の揺動軸となる1対の左側ヒンジピンと、蓋体の前後の両端面における右端に軸線を一致させて出没自在に設けられ、突出状態において蓋体が取り付く開口の前後両内面における右端に形成された軸受穴に回転自在に嵌合して、蓋体を左側から開ける際の揺動軸となる1対の右側ヒンジピンと、蓋体内に設けられ前記左側ヒンジピン及び右側ヒンジピンをそれぞれ突出方向に付勢する付勢部材と、前記左側ヒンジピン及び右側ヒンジピンの各対にそれぞれ対応して摺動自在に蓋体に設けられた左側操作ボタン及び右側操作ボタンと、これら左側操作ボタンあるいは右側操作ボタンをそれぞれ一方向に押して嵌合解除位置まで摺動させると対応する前記左側ヒンジピンあるいは右側ヒンジピンの対が引かれて蓋体内に没するよう、前記左側操作ボタンあるいは右側操作ボタンと対応する左側ヒンジピンあるいは右側ヒンジピンとをそれぞれ連結する引張りケーブルと、よりなることを特徴とする蓋開閉装置。
【請求項2】前記左側操作ボタンあるいは右側操作ボタンは、それぞれ蓋体の左側あるいは右側の端部に、摺動方向を蓋体の上面に沿う左右方向とされて配置され、前記引張りケーブルは、前記一方向が左側操作ボタンあるいは右側操作ボタンを蓋体の内部に押込む方向となるよう、蓋体の左右の端部側から引き回されて前記左側操作ボタンあるいは右側操作ボタンの側部に取付けられ、前記蓋体内には、前記左側操作ボタンあるいは右側操作ボタンが蓋体の左右の端面よりも突出しないよう、前記左側操作ボタンあるいは右側操作ボタンの外方への摺動ストロークを規制するストッパがそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項1記載の蓋開閉装置。
【請求項3】前記蓋体には、前記嵌合解除位置まで押された前記左側操作ボタンあるいは右側操作ボタンにそれぞれ係合して、その他方向への摺動を阻止する左側係合部材及び右側係合部材がそれぞれ設けられ、前記左側操作ボタンと右側操作ボタンとは、蓋体の前後方向における同位置に配置され、蓋体内のこれら左側操作ボタンと右側操作ボタンとの間には、これら操作ボタンと同方向に摺動自在とされ、これら操作ボタンの一方が前記嵌合解除位置に摺動すると、両端がこれら操作ボタンの内側の端面に略当接する長さのロッドが設けられていることを特徴とする請求項2記載の蓋開閉装置。
【請求項4】前記左側係合部材あるいは右側係合部材は、対応する前記左側操作ボタンあるいは右側操作ボタンの下側に揺動自在に設けられ、一端側が前記嵌合解除位置に移動してきた前記左側操作ボタンあるいは右側操作ボタンの下面の凹部に係合するよう付勢されるとともに、蓋体が閉じられたときに蓋体が取付く開口端面に他端側が押されて前記係合が解除する側に揺動する揺動部材よりなることを特徴とする請求項3記載の蓋開閉装置。

【図3】
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【図7】
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【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図4】
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【図6】
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