説明

薄板状の焼結金属要素を接合する方法およびそれによって製造されたフィルタ本体

焼結金属フィルタ要素8および/または焼結金属フィルタ本体7を製造するために、焼結金属が充填されて成り隙間を有する担持体から形成された薄板状の焼結金属要素1を接合する方法は、接合工程の前に、接合部を連結する際に発生する温度に耐える微粒子状の粒子を接合領域5、12に隣接する金属領域6、14内の孔隙内に挿入することによって、焼結金属要素1、8の接合領域5、12に隣接する金属領域6、14内の空隙率を低下させることによって実行される。接合により密閉された、流入側および/または流出側の端部側のフィルタセル9を有する焼結金属フィルタ本体は、少なくとも端部側の密閉要素が、微粒子状粒子が充填された孔隙を有する材料領域14に隣接する接合領域12を有するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
本願発明は、焼結金属フィルタ要素および/または焼結金属フィルタ本体を製造するために、焼結金属が充填されて成り隙間を有する担持体から形成された薄板状の焼結金属要素を接合する方法に関する。本願発明は、さらに接合により密閉された、流入側および/または流出側の端部側のフィルタセルを有する、上記の方法で焼結金属要素から製造された焼結金属フィルタ本体に関する。
【0002】
薄板状の焼結金属要素は、例えば焼結金属条片または焼結金属板である。これは、排ガス粒子フィルタ用のフィルタ要素もしくはフィルタ本体を製造するために使用される。焼結金属フィルタ要素は、焼結工程にかけられる焼結金属の粉末が充填されて成り、隙間を有する金属製の担持体から形成される。担持体として、通常は、ワイヤメッシュまたはエキスパンデッドメタルが使用される。排ガス粒子フィルタを製造するためにこのような焼結金属板または焼結金属条片が使用される理由は、焼結金属板の金属特質によって、それから製造されるフィルタ本体が、排ガス流の高温だけではなく、このようなフィルタ本体の再生の際に煤塵を完全燃焼する作用で発生するさらに高い温度にも耐えられるからである。例えばWO 02/102494 A1から公知であるこのようなフィルタ本体を製造するために、個々のフィルタ要素は、このような焼結金属板または焼結金属条片を縁どりすることによって形成される。このように縁どりされたフィルタ要素を閉鎖するために、フィルタ材料条片の縦面と前面とを互いに連結することが必要である。公知のフィルタ本体の場合、フィルタ要素がフィルタ本体の径方向および縦軸方向に楔状に先細に形成されるので、連結される双方のフィルタ要素の壁部はこのようなフィルタ要素の先細の端部で互いに接している。通常は、フィルタ要素を製造するために、これらのフィルタ要素壁部はロール圧接によって連結される。重なったフィルタ要素壁部は接合のためにロール圧接装置のロールスリットを通って支障なく案内されるので、これは難なく可能である。
【0003】
公知のフィルタ本体の場合、実際のフィルタ本体を形成するには、事前に製造された複数の同類のフィルタ要素が支持管の周囲に径方向に配置される。フィルタ本体を密閉するため、もしくは汚れがない側を煤塵が付着した側(汚れた側)から分離するには、片側が開かれているフィルタ要素の互いに隣接する壁部分を接合することが必要である。要素の開口幅はわずか数ミリであり、その上、これは径方向外側から内側に先細になっているので、必要とされるその物質的な連結はロール圧接によっては行うことができない。したがって、フィルタ要素のこのように隣接した壁部を溶接によって互いに連結することが試みられてきた。しかし、満足できる溶接結果は達成されなかった。すなわち、均一な溶接継ぎ目の形成を達成することができなかった。同じことが、はんだ付け工程を用いた隣接するフィルタ要素壁部の接合についても当てはまる。
【0004】
したがって、本発明の目的は、上記の技術水準に基づいて、公知の技術水準に見られる欠点を負う必要がなく、2つの焼結金属部分の適切な物質的連結を有する、あるいはそれが可能な、または得られる、冒頭に記載の焼結金属要素を接合する方法、およびそれによって製造されたフィルタ本体を提供することにある。
【0005】
上記の目的は本発明によって、接合工程の前に、次工程で接合する際に発生する温度に耐える微粒子状の粒子を、接合領域に隣接する材料領域内の孔隙内に挿入することによって、焼結金属要素の接合領域に隣接する材料領域内の孔隙率を低下させることを特徴とする冒頭に記載の同種の方法によって達成される。
【0006】
さらに、上記の目的は、本発明によって、少なくとも端部側の密閉要素が、微粒子状粒子が充填された孔隙を有する材料領域に隣接する接合領域を有することを特徴とする冒頭に記載した同種のフィルタ本体によって達成される。
【0007】
前記の方法では、接合工程の前に、接合される部分に隣接する焼結金属部材の領域内の空隙率が低下される。この領域は、フィルタ本体の場合は、端部側を密閉するための接合領域に隣接する材料領域である。前記領域内の空隙率の低減は、微粒子状の粒子を例えば含浸塗覆工程によってこの材料領域の孔隙内に挿入することによって行われる。これに対して、前工程では、焼結金属要素において接合される領域もしくは部分には、基本的に微粒子は充填されない。このような手段を用いることで、接合時に付与される材料は、本来の接合領域もしくは接合部分の孔隙のみに侵入する。これによって、接合のために使用される材料の制御されない毛管吸出しが効果的に防止される。接合の際に付与される例えばはんだのような材料が接合される部分または領域の孔隙内に侵入するように、接合される領域または部分の焼結金属要素に孔隙が存在するように前工程において処理が為される。これによって、はんだが焼結金属要素により良好に付着する状態になる。また、接合の際に付与される材料がこの部分の孔隙に侵入することによって、付与される材料が焼結金属要素の金属担持体とも接触し、これと結合されることが保証される。その結果、接合のために備えられた焼結金属の領域または部分と例えばはんだのような接合のために使用される材料との結合は、付与された材料が金属部分の上面とだけ結合される結合状態と比較して明らかに抵抗力が高くなる。
【0008】
空隙率を低下させる粒子は勿論極めて微細な粒子であり、特に焼結金属の孔隙の平均の大きさよりも明らかに微細であり、接合時に発生する温度に耐え、したがって溶解せず、ひいては既に密閉された孔隙が再び開放されることがないような温度耐性を備えている。粒子としては例えば無機化学粒子および/またはいわゆるナノ粒子を使用可能である。さらに、空隙率を低下させるために、孔隙内に侵入可能であり、その内部に定着し、接合時に発生する温度に耐えるあらゆる粒子または混合粒子を使用することができる。
【0009】
これらの粒子は、含浸塗覆工程の途上で液体媒体を使用して挿入することができる。このような含浸塗覆は機械的な補助を伴って実行することができ、懸濁物として分散された粒子を含む媒体が機械要素によって塗り込まれる。液体媒体の乾燥後に粒子を互いに、また孔隙内に付着した状態に留める結合剤を使用することが有利である。供給される例えばはんだのような接合材料が、接合される金属部分から相当な量で吸収され得るほどに、孔隙内に挿入された粒子が孔隙から相当な量で排出される恐れが接合の際にないので、結合剤は基本的に耐熱性である必要はない。
【0010】
焼結金属要素の接合領域もしくは接合部分を強化するために、接合領域に1回または複数回の縁どりを用いて、好適にはエッジの軸を中心にして外側の終端部と平行に金属圧縮を行うことが好適である。その際に、中実の材料条片を縁どりされた部分に挿入するか、またはこのような縁どりなしでこれを使用するようにすることができる。
【0011】
方法技術上の理由から、接合領域に隣接して孔隙容積が少ない材料領域は、接合領域から延びるある程度の延長部を備えている。孔隙が充填されたこの材料領域に、焼結金属要素から製造されるフィルタヘッドのフィルタリングに有効なフィルタ壁をなす焼結金属要素の部分が接続している。接合後は、空隙率が低下した材料領域から、接合された要素に向けて強度的な特徴を有する移行領域が生ずる。この移行領域は、孔隙が充填されることで焼結金属要素の接合領域または部分よりもやや強度的に弱いが、焼結金属要素のその他の部分よりは強度的に強い。上記の移行領域を有することで、このような焼結金属要素から製造されたフィルタ本体は、例えば内燃機関の排ガスシステムで通常発生するような振動が存在する環境でも長寿命に耐えることができる。
【0012】
上記の方法を実施するための接合工程としては、基本的に溶接またははんだ付け工程が使用される。
【0013】
以下に本願発明の実施例を添付図面を参照して説明する。
【0014】
薄板状の焼結金属要素1は、図示した実施例ではワイヤメッシュとして形成された担持体2から成っており、そのうち3本のワイヤ3、3’、3”が断面で示されている。担持体2の役割を果たすワイヤメッシュのメッシュには、焼結金属4が充填されている。焼結金属4は焼結金属粉末としてメッシュ内に挿入され、引き続いて焼結工程にかけられる。これによって、焼結金属粉末の個々の粒子が互いに結合されるとともに、焼結金属粉末とワイヤメッシュとが結合される。焼結金属4は、図では極めて概略化して示されている。焼結金属4自体は有孔性であり、約50%の孔隙を有している。
【0015】
図1に示されている焼結金属要素1は、右側の部分が、接合によって別の対応構造の焼結金属要素と連結される。図示した実施例の場合は、接合用にはんだ付け法が利用される。焼結金属要素1の右側の部分がはんだ付け法によって別の焼結金属要素と連結される前に、焼結金属要素1において、別の焼結金属要素と接合される部分に隣接して別の焼結金属要素との連結には関与しない部分が、適切なはんだ付け結果を達成するために前処理される。この前処理工程においては、焼結金属要素1の接合される部分5に隣接する部分6の領域の孔隙に、部分5の接合時に供給されるはんだの毛管吸取り現象が避けられるようになるまで無機化学ナノ粒子が充填される。
【0016】
孔隙を充填するために備えられるナノ粒子は、図2に参照番号6で示されている焼結金属要素1の材料領域で含浸塗覆される。これは、懸濁物としてナノ粒子が含まれている液体媒体を準備することによって行われる。この溶液の一部は、また孔隙内で含浸塗覆された個々の粒子を互いに結合するために、あるいは孔隙の壁部に粒子を結合するための結合剤である。
【0017】
図3は、ディーゼルエンジンの排ガス流から煤塵を除去するための排ガス粒子フィルタのフィルタ本体7を示している。フィルタ本体7は、これも図1および図2のものと対応する焼結金属要素から形成されている複数の個々の袋状の焼結金属フィルタ要素8から構成されている。図示した実施例では、焼結金属フィルタ要素8は、WO 02/102494 A1から公知であるように互いに放射状に配置されている。フィルタ本体7を通る排ガスの貫流方向は、図3の太い矢印によって概略的に示されている。焼結金属フィルタ要素8は、また流入側の終端部の方向に先細にされた袋状の空隙9をそれぞれ密閉している。焼結金属フィルタ要素8は、流入側の終端部領域でロール圧接によって封鎖される。この部分は、図3の焼結金属フィルタ要素8において参照番号10で示されている。焼結金属フィルタ要素8の壁部は、排ガスが通過するフィルタ壁を形成している。
【0018】
フィルタ本体7の流入側の外表面11によって形成されて煤塵が付着することで汚れる側を汚れがない側と分離するために、それぞれ2つの焼結金属フィルタ要素8の互いに隣接して配置された流出側の端部領域は、それぞれ接合によって連結される。2つの焼結金属フィルタ要素8の間のこのような接合領域は、図3において参照番号12で示されている。接合領域12を画定する焼結金属フィルタ要素8の双方の部分の間には、それぞれ中実の材料条片13が配置されている。中実の材料条片13は、流出側の前面領域でのフィルタ本体7の安定性を高める役割を果たす。さらに、中実の材料条片13は、端部側の密閉領域に灰溜めを形成するために、フィルタ本体7の汚れた側のフィルタ壁を互いに離隔する目的を果たす。フィルタ本体7は、流出側の終端部の領域に配置されたフランジを有するハウジング(図示せず)内に保持されている。接合領域12を形成する焼結金属フィルタ要素8に隣接する領域14では、図1および図2の焼結金属要素1に記載されているように孔隙の充填がなされる。これによって、焼結金属フィルタ要素8の接合の際に接合領域12に付与される材料が、隣接する焼結金属材料に孔隙があることに起因して接合領域12近傍において過度に消費されるという現象が防止される。
【0019】
接合領域12において、焼結金属フィルタ要素8の接合は、はんだ付けによって行われる。はんだ付け工程においては、接合領域12に中実の材料条片13が接合されることで、その強度は比較的強固になり、それはフィルタヘッド7に流出側の前面領域で必要な安定性を付与するためにも望ましいことである。本来の接合領域12と孔隙に充填がなされた材料領域14との間の領域は、移行領域15と言うことができる。この移行領域15の特徴は本来の接合領域12内で吸収されるはんだの量と比較して、吸収されるはんだの量が少ないことである。そのことの理由は、焼結金属要素の材料の厚みに起因して、孔隙に充填がなされた材料領域14の正確な境界付けが不可能だからである。この移行領域15の剛性は吸収されるはんだの量が少ないので、本来の接合領域12の剛性よりも低い。然るに、この移行領域15の剛性は、本来のフィルタに備えられている焼結金属フィルタ要素8のその他の壁部における剛性よりも高い。したがって、領域15は、剛性に関して、焼結金属フィルタ部材8のその他の部分と接合領域12との移行領域となる。このことは、例えば内燃機関の排ガスシステムのように、特に振動する環境において使用する場合に、フィルタ本体の寿命を相当に高める。
【0020】
(符号の説明)
1 焼結金属フィルタ条片
2 担持体
3、3’、3” ワイヤ
4 焼結金属
5 接合領域
6 孔隙に充填がなされた材料領域
7 フィルタ本体
8 焼結金属フィルタ要素
9 空隙、フィルタセル
10 接合部分
11 フィルタ本体の外表面
12 接合領域
13 材料条片
14 孔隙に充填がなされた材料領域
15 移行領域
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】接合部分に隣接する部分内の孔隙を充填する工程前の焼結金属要素の概略を示す部分横断面図である。
【図2】孔隙が充填された部分を有する図1の焼結金属要素を示す図である。
【図3】図2に示される焼結金属要素を互いに接合することで製造された排ガス粒子フィルタのフィルタ本体の概略を示す簡略縦断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼結金属フィルタ要素(8)および/または焼結金属フィルタ本体(7)を製造するために、焼結金属が充填されて成り隙間を有する担持体から形成された薄板状の焼結金属要素(1)を接合する方法であって、前記接合工程の前に、次工程で接合する際に発生する温度に耐える微粒子状の粒子を接合領域(5、12)に隣接する材料領域(6、14)内の孔隙内に挿入することによって、前記焼結金属要素(1、8)の前記接合領域(5、12)に隣接する前記材料領域(6、14)内の孔隙率を低下させることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記粒子は液状媒体を使用して前記孔隙内に含浸塗覆されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記孔隙に、前記粒子と共に結合剤が挿入されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記孔隙に充填される粒子として無機化学粒子が使用されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記焼結金属要素の互いに接合される部分は、前記接合工程の前の前記孔隙率を低下させる工程の前または後に、個々にまたは一括して圧縮されることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記接合される部分の材料を圧縮するために、1つまたは複数の前記焼結金属要素が1回または複数回縁どりされることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記接合される部分の材料を圧縮するために、孔隙がない中実の材料からなる材料条片(13)が、接合される焼結金属フィルタ要素の2つの部分の間に介装されることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
金属部分ははんだ付けによって互いに連結されることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
接合により密閉された、流入側および/または流出側の端部側のフィルタセル(9)を有する請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の方法で焼結金属要素から製造された焼結金属フィルタ本体であって、少なくとも端部側の密閉要素は、微粒子状粒子が充填された孔隙を有する材料領域(14)に隣接する接合領域(12)を有することを特徴とする焼結金属フィルタ本体。
【請求項10】
焼結金属の前記接合領域は1回または複数回の縁どりによって終端部と平行に圧縮されることを特徴とする請求項9に記載のフィルタ本体。
【請求項11】
前記接合領域(12)内に、孔隙を有しない接合可能な中実の材料からなる材料条片(13)が配置されることを特徴とする請求項9または請求項10に記載のフィルタ本体。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2006−517142(P2006−517142A)
【公表日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−500552(P2006−500552)
【出願日】平成16年1月13日(2004.1.13)
【国際出願番号】PCT/EP2004/000158
【国際公開番号】WO2004/062770
【国際公開日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【出願人】(305060626)ハーヨットエス ファールツォイクテクニック ゲーエムベーハー ウント コー カーゲー (4)
【Fターム(参考)】