説明

薄片化黒鉛分散液の製造方法、薄片化黒鉛分散液及び薄膜の製造方法

【課題】 本発明は、薄片化黒鉛が安定的に分散してなる薄片化黒鉛分散液を効率良く製造することができる薄片化黒鉛分散液の製造方法を提供する。
【解決手段】 本発明は、黒鉛化合物と、一級アミン、ヒドラジン及びアンモニアからなる群から選ばれた少なくとも一種の窒素化合物と、水とを混合してpHが10〜14である混合液とし、上記黒鉛化合物を薄片化することを特徴とするので、黒鉛化合物の層面同士を剥離して薄片化黒鉛が安定的に分散してなる薄片化黒鉛分散液を効率良く製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄片化黒鉛分散液の製造方法及びこの製造方法で得られた薄片化黒鉛分散液、並びに、上記製造方法で得られた薄片化黒鉛分散液を用いた薄膜の製造方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
近年、炭素骨格を有し且つ形状異方性の高い物質として、黒鉛をその層面間で剥離し、層面(グラフェン)の重なりが数十層以下になるまで薄片化した薄片化黒鉛が注目されており、薄片化黒鉛は非常に大きな表面積を有するため、樹脂などと複合化すると、少量の薄片化黒鉛の添加で各種機能が発現すると期待されている。
【0003】
上記薄片化黒鉛の製造方法としては、例えば、特許文献1に、硫酸・硝酸及び過マンガン酸カリウムを用いて酸化させた黒鉛層間化合物を精製し、遠心分離した後、上澄みを除去することによって薄片化黒鉛が得られることが提案されている。
【0004】
しかしながら、上記方法では、薄片化黒鉛の製造に長時間を要し又は高温状態を利用するものであるため、薄片化黒鉛の製造効率が低いという問題点を有しており、薄片化黒鉛がより安定的に分散してなる薄片化黒鉛分散液をより効率良く製造することができる製造方法が要望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−53313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、薄片化黒鉛が安定的に分散してなる薄片化黒鉛分散液を効率良く製造することができる薄片化黒鉛分散液の製造方法及びこの製造方法で得られた薄片化黒鉛分散液、並びに、上記製造方法で得られた薄片化黒鉛分散液を用いた薄膜の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の薄片化黒鉛分散液の製造方法は、黒鉛化合物と、一級アミン、ヒドラジン及びアンモニアからなる群から選ばれた少なくとも一種の窒素化合物と、水とを混合してpHが10〜14である混合液とし、上記黒鉛化合物を薄片化することを特徴とする。
【0008】
本発明において用いられる黒鉛化合物としては、黒鉛、黒鉛層間化合物の何れであってもよい。なお、黒鉛に官能基が化学的に結合してしても、或いは、黒鉛に官能基が弱い相互作用により疑似的に結合していてもよい。
【0009】
黒鉛としては、粒子全体で単一の多層構造を有する黒鉛が好ましく、例えば、天然黒鉛、キッシュ黒鉛、高配向性熱分解黒鉛などが挙げられる。天然黒鉛とキッシュ黒鉛は、各層面(基本層)が略単一の方位を有する単独の結晶であり、高配向性熱分解黒鉛の各層面(基本層)は異なる方位を有する多数の小さな化粧の集合体である。
【0010】
黒鉛層間化合物は、上記黒鉛の層面間にインターカレーターを挿入することによって形成されている。黒鉛層間化合物における黒鉛の層面間に挿入されるインターカレーターとしては、特に限定されず、例えば、酸、酸化剤、金属、金属塩、気体、ハロゲン化合物などが挙げられ、高圧条件を用いることなく黒鉛層間化合物を生成することができるので、酸と酸化剤との混合物が好ましい。インターカレーターは単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0011】
酸としては、例えば、硝酸、塩酸、硫酸、カルボン酸、クロム酸、リン酸、ヨウ素酸などが挙げられる。酸化剤としては、例えば、硝酸カリウム、硝酸セリウムアンモニウム、過塩素酸、過マンガン酸塩などが挙げられる。金属としては、例えば、カリウム、ナトリウムなどが挙げられる。金属塩としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸銅、酢酸ナトリウムなどが挙げられる。気体としては、例えば、水素などが挙げられる。ハロゲン化合物としては、例えば、塩化ヨウ素、塩化臭素、臭化ヨウ素、フッ化ヨウ素、フッ化臭素、フッ化塩素、フッ素、塩素、塩化アルミニウムなどが挙げられる。
【0012】
黒鉛の層面間にインターカレーターを挿入して黒鉛層間化合物を製造する方法としては、公知の方法を採用することができ、例えば、黒鉛をインターカレーターの溶液に分散させて、分散液中において黒鉛とインターカレーターとを反応させて黒鉛層間化合物を製造する方法、黒鉛と気体状のインターカレーターとを高圧下にて反応させて黒鉛層間化合物を製造する方法、酸化剤を用いてHummers−Offeman法によって黒鉛層間化合物を製造する方法などが挙げられ、酸化剤を用いてHummers−Offeman法によって黒鉛層間化合物を製造する方法が好ましい。
【0013】
上述の要領で製造された黒鉛層間化合物に薄層化処理を施して原料黒鉛よりも薄層化させておくことが好ましい。黒鉛層間化合物に施す薄層化処理としては、例えば、黒鉛層間化合物にマイクロ波又は超音波を照射する方法、黒鉛層間化合物に物理的に応力を加えて黒鉛層間化合物を粉砕する方法などが挙げられる。
【0014】
黒鉛化合物において、レーザー光回折法により粒度分布を測定した場合に50%体積平均径として得られる値は、小さいと、黒鉛化合物を薄片化して得られる薄片化黒鉛において異方性が得られないことがあり、大きいと、黒鉛化合物の層面間に五員環を含有する環状化合物が侵入しにくくなり、黒鉛化合物の薄片化が進行しにくいことがあるので、0.1〜50μmが好ましい。
【0015】
なお、レーザー光回折法により粒度分布を測定した場合に50%体積平均径として得られる値が20μm未満である黒鉛化合物は、例えば、SECカーボン社から商品名「SNO−15」などのSNOシリーズにて、中越黒鉛工業所から商品名「CX−3000」にて、伊藤黒鉛社からCNP−シリーズにて、XGSience社から商品名「XGnP−5」にて市販されている。
【0016】
次に、黒鉛化合物と窒素化合物と水とを混合して混合液を作製する。窒素化合物としては、一級アミン、ヒドラジン及びアンモニアからなる群から選ばれた少なくとも一種の窒素化合物が用いられる。一級アミンとしては、例えば、メチルアミン、エタノールアミンなどが挙げられる。なお、窒素化合物は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0017】
黒鉛化合物と窒素化合物と水とを混合して混合液を作製する方法としては、特に限定されず、例えば、黒鉛化合物を水に分散させて黒鉛化合物分散液を作製すると共に、窒素化合物を水に溶解させて窒素化合物水溶液を作製し、黒鉛化合物分散液と窒素化合物水溶液とを均一に混合して混合液を作製する方法、窒素化合物を水に溶解させて窒素化合物水溶液を作製し、この窒素化合物水溶液に黒鉛化合物を添加して均一に混合して混合液を作製する方法などが挙げられる。
【0018】
黒鉛化合物と窒素化合物と水とを混合させて混合液を作製するにあたって、得られる混合液のpHが10〜14となるように黒鉛化合物と窒素化合物と水の混合割合を調整する。
【0019】
混合液をpH10〜14に調整する理由は明確には解明されていないが、黒鉛化合物の層面間に窒素化合物を挿入させることによって、窒素化合物の有する非共有電子対間の静電反発力によって黒鉛化合物の対向する層面を互いが離間する方向に変位させることにより黒鉛化合物の層面間の間隔が拡がり、黒鉛化合物における層面間の剥離の進行を促進し黒鉛化合物を薄片化して薄片化黒鉛の製造を効率的に行うことができると考えている。そして、混合液をpHが10〜14となるように調整することによって、黒鉛化合物の層面間への窒素化合物の進入が容易となり、その結果、上述の作用によって黒鉛化合物の層面間における剥離が円滑に行われて黒鉛化合物を薄片化して薄片化黒鉛を効率良く製造できると考えられる。
【0020】
更に、黒鉛化合物と窒素化合物と水とを混合して混合液を作製する際に、N-メチルピロリドンも添加して混合液を作製してもよい。N-メチルピロリドンを添加することによって黒鉛化合物の薄片化が更に効率よく進行し、高濃度の薄片化黒鉛の分散液を得ることができる。
【0021】
混合液にN-メチルピロリドンを添加する方法としては、特に限定されず、例えば、黒鉛化合物と窒素化合物と水とを混合して混合液を作製し、この混合液中にN-メチルピロリドンを添加する方法、窒素化合物を水に溶解させて窒素化合物水溶液を作製する一方、黒鉛化合物とN-メチルピロリドンとを混合して黒鉛化合物組成物を作製し、窒素化合物水溶液中に黒鉛化合物組成物を添加して混合液を作製すると同時に混合液中にN-メチルピロリドンを添加する方法などが挙げられる。
【0022】
混合液にN−メチルピロリドンを添加することによって上述の効果が生じる理由は明らかではないが、黒鉛化合物が黒鉛である場合には下記のように推察される。黒鉛は疎水性であるため、窒素化合物が黒鉛の層面間に進入しにくい場合がある一方、N-メチルピロリドンは黒鉛とのなじみがよく且つ窒素化合物とのなじみもよい。従って、N-メチルピロリドンを混合液中に存在させることによって、黒鉛の層面間に窒素化合物を効率良く進入させることができ、その結果、黒鉛化合物の薄片化をより効率良く行うことができるものと考えられる。
【0023】
又、黒鉛化合物粒子が黒鉛層間化合物又は官能基を有する黒鉛である場合にも、インターカレーターが挿入されていない層面間や、官能基を有していない層面間において、上述の現象が生じる結果、黒鉛化合物の薄片化をより効率良く行うことができるものと考えられる。
【0024】
混合液中へのN−メチルピロリドンの添加量は、少ないと、黒鉛化合物の薄片化の促進効果が発現しないことがあり、多いと、相対的に混合液中における窒素化合物の含有量が低下するので、窒素化合物と水との合計重量100重量部に対して10〜1000重量部が好ましい。
【0025】
上述のように、黒鉛化合物と窒素化合物と水とを混合させてpHが10〜14の混合液を製造した後、この混合液を静置することによって黒鉛化合物の層面間における剥離を進行させ、黒鉛化合物を薄片化させて得られる薄片化黒鉛が水中に安定的に分散してなる薄片化黒鉛分散液を得ることができる。
【0026】
更に、薄片化黒鉛分散液中に分散している薄片化黒鉛及び残存する黒鉛化合物における層面間の剥離を更に促進するために、薄片化黒鉛分散液中に分散している薄片化黒鉛及び残存する黒鉛化合物に剥離処理を施してもよい。このような剥離処理としては、例えば、(1)薄片化黒鉛分散液中に分散している薄片化黒鉛及び残存する黒鉛化合物に超音波を照射する方法、(2)薄片化黒鉛分散液中に分散している薄片化黒鉛及び残存する黒鉛化合物に物理的に応力を加える方法などが挙げられる。なお、上記(1)の方法において、超音波の周波数は、低すぎても高すぎても、得られる薄片化黒鉛分散液中の薄片化黒鉛の分散性が低下するので、20〜50kHzが好ましい。又、上記(1)の方法において、超音波の照射時間は、短いと、薄片化黒鉛又は黒鉛化合物の層面間における剥離が充分に進行しないことがあり、長いと、薄片化黒鉛における層面の面方向に沿った大きさが必要以上に小さくなることがあるので、5〜60分が好ましい。
【0027】
上述のようにして、黒鉛化合物がその層面間において剥離して薄片化黒鉛が生成し、この薄片化黒鉛が水中に安定的に分散してなる薄片化黒鉛分散液を製造することができる。なお、薄片化黒鉛分散液に沈殿物が生じる場合があるが、この沈殿物は、層面間において充分に剥離しなかった黒鉛化合物であると推定され、このような沈殿物が薄片化黒鉛分散液中に生じた場合は、薄片化黒鉛分散液における沈殿物が存在している下方部分を除いた部分を採取し、この採取液を薄片化黒鉛分散液とすればよい。
【0028】
得られた薄片化黒鉛分散液中に分散している薄片化黒鉛の層面の積層数は、15層以下が好ましく、5層以下がより好ましい。
【0029】
上述のようにして得られた薄片化黒鉛分散液は、極めて薄い薄片化黒鉛が安定に分散しているため、何ら処理を施すことなく、所望の用途に使用し又は分散液のまま安定的に保管しておくことがきる。薄片化黒鉛分散液の使用方法としては、薄片化黒鉛分散液を所望個所に噴霧し又は塗布する方法の他に、薄片化黒鉛分散液を水溶性合成樹脂と混合することによって樹脂組成物を得ることができ、薄片化黒鉛分散液を水溶性モノマーと混合することによって高濃度の薄片化黒鉛が含有されるモノマー組成物を容易に得ることができる。
【0030】
水溶性合成樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、エチレン−ビニルアルコール共重合体が挙げられる。水溶性モノマーとしては、例えば、メタクリル酸、アクリル酸、アクリルアミド、酢酸エチル、スチレンスルホン酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0031】
薄片化黒鉛分散液は、上述の通り、極めて薄い薄片化黒鉛が安定に分散しているため、水溶性合成樹脂や水溶性モノマーと混合しやすく、樹脂組成物又はモノマー組成物を簡便に得ることができる。更に、混合液中にN-メチルピロリドンを添加した場合には、高濃度の薄片化黒鉛分散液を得ることができるため、水溶性合成樹脂や水溶性モノマーと混合することにより、高濃度の薄片化黒鉛が含まれる樹脂組成物又はモノマー組成物を簡便に得ることができる。なお、得られる樹脂組成物、及び、モノマー組成物中の水溶性モノマーを重合させて得られる樹脂組成物は、バリア性材料、耐熱性材料、耐候性材料、電気伝導性材料、熱伝導性材料、IR反射性材料などとして用いることができる。
【0032】
薄片化黒鉛分散液の用途によっては水以外の分散媒が望ましいことがある。そのような場合には、薄片化黒鉛分散液を遠心分離などで濃縮して水量を減らしてから、他の溶媒を薄片化黒鉛分散液に加えて混合後に遠心分離などで濃縮する工程を繰返し、薄片化黒鉛の分散媒を交換すればよい。又、薄片化黒鉛分散液の分散媒の交換の際に、水と、交換後の分散媒の相溶性が良くない場合には、水と交換後の分散媒の双方に相溶性の良い第3の分散媒を経由して分散媒の交換を行ってもよい。
【0033】
そして、薄片化黒鉛分散液を用いて薄片化黒鉛からなる薄膜を形成することができる。具体的には、ガラスや合成樹脂板などの基材上に薄片化黒鉛分散液を塗布、乾燥させることによって薄片化黒鉛からなる薄膜を安定的に形成することができる。
【0034】
又、黒鉛層間化合物を形成するために用いたインターカレーターが酸化剤又は酸である場合、黒鉛層間化合物の各層面は酸化物を形成している。この黒鉛層間化合物を上述の要領で薄片化して得られた薄片化黒鉛はその各層面が酸化しており、各層面は酸化グラフェンと呼ばれる。
【0035】
この酸化グラフェンからなる薄片化黒鉛を導電膜などの用途に用いる場合には、高い導電性を得るために、酸化グラフェンを還元することが好ましい。薄片化黒鉛を構成している酸化グラフェンの還元方法としては、特に限定されず、例えば、薄片化黒鉛を構成している酸化グラフェンに還元剤を接触させる方法が挙げられる。
【0036】
薄片化黒鉛を構成している酸化グラフェンに還元剤を接触させる方法としては、例えば、上述のようにして薄片化黒鉛分散液を用いて薄片化黒鉛を含有する薄膜を形成し、この薄膜に還元剤を接触させることによって酸化グラフェンを還元させることが好ましい。このように、先ず、薄片化黒鉛を含む薄膜を基材上に形成し、この基材上の薄膜に還元剤を接触させることによって、薄片化黒鉛の凝集を防止しつつ、薄片化黒鉛を構成している酸化グラフェンの還元を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0037】
本発明は、黒鉛化合物と、一級アミン、ヒドラジン及びアンモニアからなる群から選ばれた少なくとも一種の窒素化合物と、水とを混合してpHが10〜14である混合液とし、上記黒鉛化合物を薄片化することを特徴とするので、黒鉛化合物の層面同士を剥離して薄片化黒鉛が安定的に分散してなる薄片化黒鉛分散液を効率良く製造することができる。
【0038】
本発明の薄片化黒鉛分散液の製造方法は、黒鉛を黒鉛層間化合物とすることなく黒鉛を直接、薄片化して薄片化黒鉛分散液を得ることも可能であり、工程の簡略化及び薄片化黒鉛の還元度の向上による導電性の改善を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0039】
次に本発明の実施例を説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0040】
(実施例1)
黒鉛化合物(SECカーボン社製 商品名「SNO−15」、レーザー光回折法により粒度分布を測定した場合に50%径として得られる値:15μm)を用意した。
【0041】
次に、pHが10のアンモニア水溶液を用意し、このアンモニア水溶液18gに上記黒鉛化合物0.05gを供給して均一に混合してpH10の混合液を製造し、この混合液を25℃にて60分間に亘って静置して黒鉛化合物をその層面間から剥離し薄片化して薄片化黒鉛を生成し、この薄片化黒鉛が水中に分散してなる薄片化黒鉛分散液を得た。
【0042】
更に、薄片化黒鉛分散液に周波数28kHz、100Wの条件下にて超音波を5分間に亘って照射し、続いて、周波数45kHz、100Wの条件下にて超音波を10分間に亘って照射して25℃にて2時間に亘って静置し、薄片化黒鉛分散液中に分散している薄片化黒鉛及び黒鉛化合物における層面間の剥離を更に促進した。なお、薄片化黒鉛分散液中には、黒鉛化合物と推定される沈殿物が残っていたので沈殿物のない上方部分を採取した。採取液は目視にて略無色透明であった。採取液に波長532nmのレーザー光を照射したところ、散乱光が確認できたため、薄片化黒鉛分散液中には高度に薄片化された薄片化黒鉛が分散していると推定された。
【0043】
薄片化黒鉛分散液の上方部分から試験液を3cm3採取し、この試験液を25℃にて24時間に亘って静置したが沈殿物は生成しなかった。
【0044】
又、薄片化黒鉛分散液の上方部分から塗布液を3cm3採取し、この塗布液をガラス板上に塗布し90℃にて乾燥させて薄片化黒鉛からなる薄膜を形成した。この薄片化黒鉛からなる薄膜は、銀灰色で且つ透明性が高かった。
【0045】
(実施例2)
pH10のアンモニア水溶液の代わりにpH12のアンモニア水溶液を用い、pH12の混合液を製造したこと以外は実施例1と同様にして薄片化黒鉛分散液を得た。なお、薄片化黒鉛分散液中に沈殿物が残っていた。更に、実施例1と同様の要領で、薄片化黒鉛分散液中に分散している薄片化黒鉛及び黒鉛化合物における層面間の剥離を促進させた。なお、薄片化黒鉛分散液中には黒鉛化合物と推定される沈殿物が残っていたので、薄片化黒鉛分散液の沈殿物のない上方部分を採取した。採取液は目視にて略無色透明であった。採取液に波長532nmのレーザー光を照射したところ、散乱光が確認できたため、薄片化黒鉛分散液中には高度に薄片化された薄片化黒鉛が分散していると推定された。
【0046】
薄片化黒鉛分散液の上方部分から試験液を3cm3採取し、この試験液を25℃にて24時間に亘って静置したが沈殿物は生成しなかった。
【0047】
又、薄片化黒鉛分散液の上方部分から塗布液を3cm3採取し、この塗布液をガラス板上に塗布し90℃にて乾燥させて薄片化黒鉛からなる薄膜を形成した。この薄片化黒鉛からなる薄膜は、銀灰色で且つ透明性が高かった。
【0048】
(実施例3)
pH10のアンモニア水溶液の代わりにpH13のアンモニア水溶液を用い、pH13の混合液を製造したこと以外は実施例1と同様にして薄片化黒鉛分散液を得た。なお、薄片化黒鉛分散液中には沈殿物が残っていた。更に、実施例1と同様の要領で、薄片化黒鉛分散液中に分散している薄片化黒鉛及び黒鉛化合物における層面間の剥離を促進させた。なお、薄片化黒鉛分散液中には黒鉛化合物と推定される沈殿物が残っていたので、薄片化黒鉛分散液の沈殿物のない上方部分を採取した。採取液に波長532nmのレーザー光を照射したところ、散乱光が確認できたため、薄片化黒鉛分散液中には高度に薄片化された薄片化黒鉛が分散していると推定された。
【0049】
薄片化黒鉛分散液の上方部分から試験液を3cm3採取し、この試験液を25℃にて24時間に亘って静置したが沈殿物は生成しなかった。
【0050】
又、薄片化黒鉛分散液の上方部分から塗布液を3cm3採取し、この塗布液をガラス板上に塗布し90℃にて乾燥させて薄片化黒鉛からなる薄膜を形成した。この薄片化黒鉛からなる薄膜は、銀灰色で且つ透明性が高かった。
【0051】
(実施例4)
pH10のアンモニア水溶液の代わりにpH14のアンモニア水溶液を用い、pH14の混合液を製造したこと以外は実施例1と同様にして薄片化黒鉛分散液を得た。なお、薄片化黒鉛分散液中には沈殿物が残っていた。更に、実施例1と同様の要領で、薄片化黒鉛分散液中に分散している薄片化黒鉛及び黒鉛化合物における層面間の剥離を促進させた。なお、薄片化黒鉛分散液中には黒鉛化合物と推定される沈殿物が残っていたので、薄片化黒鉛分散液の沈殿物のない上方部分を採取した。採取液に波長532nmのレーザー光を照射したところ、散乱光が確認できたため、薄片化黒鉛分散液中には高度に薄片化された薄片化黒鉛が分散していると推定された。
【0052】
薄片化黒鉛分散液の上方部分から試験液を3cm3採取し、この試験液を25℃にて24時間に亘って静置したが沈殿物は生成しなかった。
【0053】
又、薄片化黒鉛分散液の上方部分から塗布液を3cm3採取し、この塗布液をガラス板上に塗布し90℃にて乾燥させて薄片化黒鉛からなる膜を形成した。この薄片化黒鉛からなる膜は、銀灰色で且つ透明性が高かった。
【0054】
(実施例5)
pHが14のアンモニア水溶液18gに黒鉛化合物0.05g及びN−メチルピロリドン(和光純薬社製 試薬特級)1.8gを供給して均一に混合してpH14の混合液を製造したこと以外は実施例1と同様にして薄片化黒鉛分散液を得た。なお、薄片化黒鉛分散液中には僅かに沈殿物が残っていた。更に、実施例1と同様の要領で、薄片化黒鉛分散液中に分散している薄片化黒鉛及び黒鉛化合物における層面間の剥離を促進させた。なお、薄片化黒鉛分散液中には黒鉛化合物と推定される沈殿物が僅かに残っていたので、薄片化黒鉛分散液の沈殿物のない上方部分を採取した。採取液は、金属様の光沢を帯びた黒色懸濁液であったので、薄片化黒鉛分散液中には高度に薄片化された薄片化黒鉛が高い濃度で分散していると推定された。
【0055】
(実施例6)
pHが14のアンモニア水溶液1.8gに黒鉛化合物0.05g及びN−メチルピロリドン(和光純薬社製 試薬特級)18gを供給して均一に混合してpH12の混合液を製造したこと以外は実施例1と同様にして薄片化黒鉛分散液を得た。なお、薄片化黒鉛分散液中には僅かに沈殿物が残っていた。更に、実施例1と同様の要領で、薄片化黒鉛分散液中に分散している薄片化黒鉛及び黒鉛化合物における層面間の剥離を促進させた。なお、薄片化黒鉛分散液中には黒鉛化合物と推定される沈殿物が僅かに残っていたので、薄片化黒鉛分散液の沈殿物のない上方部分を採取した。採取液は、金属様の光沢を帯びた黒色懸濁液であったので、薄片化黒鉛分散液中には高度に薄片化された薄片化黒鉛が高い濃度で分散していると推定された。
【0056】
(比較例1)
pH10のアンモニア水溶液の代わりにpH9のアンモニア水溶液を用い、pH8.5の混合液を製造したこと以外は実施例1の要領で薄片化黒鉛分散液を製造しようとしたが、沈殿物と透明度の高い上澄み部とに分離してしまい薄片化黒鉛分散液を得ることができなかった。更に、実施例1と同様の要領で、混合液に周波数28kHz、100Wの条件下にて超音波を5分間に亘って照射し、続いて、周波数45kHz、100Wの条件下にて超音波を10分間に亘って照射して25℃にて2時間に亘って静置したが、沈殿物と光透過性の高い上澄み部とに分離してしまい薄片化黒鉛分散液を得ることができなかった。得られた混合液の上澄みは無色透明であった。上澄みに波長532nmのレーザー光を照射したが、散乱光は確認されなかった。
【0057】
薄片化黒鉛分散液の上澄みから試験液を3cm3採取し、この試験液を25℃にて24時間に亘って静置したが沈殿物は生成しなかった。試験液の上澄みは無色で透明性が高く、上澄みに波長532nmのレーザー光を照射したが、散乱光は確認されなかったことから、薄片化黒鉛は存在していないと推定された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
黒鉛化合物と、一級アミン、ヒドラジン及びアンモニアからなる群から選ばれた少なくとも一種の窒素化合物と、水とを混合してpHが10〜14である混合液とし、上記黒鉛化合物を薄片化することを特徴とする薄片化黒鉛分散液の製造方法。
【請求項2】
窒素化合物がアンモニア又はヒドラジンであることを特徴とする請求項1に記載の薄片化黒鉛分散液の製造方法。
【請求項3】
混合液にN−メチルピロリドンを添加することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の薄片化黒鉛分散液の製造方法。
【請求項4】
一級アミン、ヒドラジン及びアンモニアからなる群から選ばれた少なくとも一種の窒素化合物を水に溶解させてなる窒素化合物水溶液を作製し、この窒素化合物水溶液に、黒鉛化合物とN−メチルピロリドンとを予め混合した上で添加してpHが10〜14である混合液を作製することを特徴とする請求項3に薄片化黒鉛分散液の製造方法。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の薄片化黒鉛分散液の製造方法によって製造されてなることを特徴とする薄片化黒鉛分散液。
【請求項6】
請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の薄片化黒鉛分散液の製造方法で得られた薄片化黒鉛分散液を基材に塗布、乾燥させて薄片化黒鉛を含む薄膜を形成することを特徴とする薄膜の製造方法。