説明

薄膜の製造方法

【課題】可撓性基板の幅方向及び長手方向の皺の発生を防止して、大面積の可撓性基板でも、全面に亘って平坦性が向上し、均一な膜厚分布の安定化した薄膜が得られる薄膜の製造方法を提供することにある。
【解決手段】本発明は、成膜装置100を用いた薄膜の製造方法において、可撓性基板1の幅方向一端部を挟持する第1保持機構部12Aと、第1保持機構部12に対向した可撓性基板1の幅方向他端部を挟持する第2保持機構部12Cとにより可撓性基板1の両端部近傍を挟持しながら、第1保持機構部12A及び前記第2保持機構部12Cから長手方向に間隔を空けて設けた引張機構部12B,12Dにより第1保持機構部12Aと第2保持機構部12Cとを互いの距離を広げる方向に移動させて可撓性基板1を引っ張り、引っ張りながら可撓性基板1を押さえ込んで成膜を行っている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に薄膜光電変換素子ならびにその他の可撓性基板上に複数の薄膜層を成膜するような成膜装置を用い、大面積で柔軟かつ薄い可撓性基板を対象として電圧制御を行う際に必要とされる、電界強度に関わる電極間距離を均一に維持して、薄膜を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
薄膜太陽電池は、薄型で軽量、製造コストの安さ、大面積化が容易であることなどから、今後の太陽電池の主流となると考えられており、かかる薄膜太陽電池の薄膜を製造する装置として、プラズマ化学蒸着気相法(プラズマCVD)などを利用した成膜装置がある。
この成膜装置においては、巻出しロールと巻取りロールとの間に設置された成膜室内に可撓性基板を搬送し、当該成膜室内で高周波電圧の印加により作用する電界効果にて電極間にプラズマを生成し、原材料となる物質を分解、励起することで周辺雰囲気下に存在する可撓性基板上にアモルファスシリコン膜などの半導体薄膜を成膜している。
【0003】
特に、a−Si(アモルファスシリコン)光電変換装置を用いた太陽電池の高品質な光電変換装置として、微結晶Si系の研究開発が推進されている。微結晶Si膜は光吸収係数が小さく、光電変換装置として膜を積層する場合は、通常2μm程度の膜厚が必要となり、プラズマCVD装置のタクトはI層の成膜速度により律速されることから、成膜速度の向上を図る必要がある。
【0004】
また、薄膜光電変換素子の製造方法として、プラズマCVD装置の平行平板電極の電極間距離が1mm〜1cmとなるように狭間隔に制御して成膜する手法がある。フィルム等の可撓性基板に成膜する場合、フィルムには張力と加熱により皺が発生することになる。このような皺は、狭間隔の電極間距離の条件をさらに不均一にする要因であり、結果として、薄膜特性が著しく低下したり、色むらが生じて外観上の製品価値が低下したりするといった問題を生ずることになる。
【0005】
従来、かかる問題を解決するために、例えば、可撓性基板の幅両端部をそれぞれ保持機構により挟持し、この挟持した保持機構がその間の距離が離れる方向に移動して可撓性基板の幅方向に力を与えながら延伸することによって、可撓性基板に生じた皺を伸ばし、この状態で、薄膜を形成する方法が提案されている(特許文献1参照)。
この技術は、図6に示す可撓性基板の支持方式の平面図において、プラズマCVD室2の可撓性基板1の搬送方向両側で、第1保持機構部30によって可撓性基板1の幅方向における一端部を挟持し、第2保持機構部40によって可撓性基板1の幅方向における他端部を挟持し、この第2保持機構部40で挟持された他端部を引張機構部50によって可撓性基板1の幅方向に引っ張るように構成している。すなわち、かかる技術では、第1保持機構部30と第2保持機構部40のいずれか片方の距離を広げる2点引張りにより、可撓性基板1の皺を伸ばすようにしている。
これにより、可撓性基板1の皺が伸ばされ、その平坦性が向上し、膜厚分布の良好な薄膜を安定して形成することが可能となる。なお、図6において、100aは真空容器、2aは巻出しロール、2bは巻取りロールである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−72408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、プラズマCVD装置により成膜を行う際には、薄膜を高い精度での水平な平面に形成して維持することが必要であるが、成膜に必要な加熱による基板の伸縮が可撓性基板の形状を平面にすることを阻害している。その一方で、薄膜を製造することに関し、大面積の基板にて成膜を行うことにより生産性の向上を図るという要望がある。
しかしながら、上記従来の製造方法では、可撓性基板の幅方向の皺の除去は十分であるが、可撓性基板の長手方向の皺を確実に除去するのは困難である。このため、可撓性基板の長手方向の皺の発生による平坦性の低下及び、膜厚分布の安定化が阻害されている。
【0008】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであって、その目的は、可撓性基板の幅方向及び長手方向の皺の発生を防止して、大面積の可撓性基板でも、全面に亘って平坦性が向上し、均一な膜厚分布の安定化した薄膜が得られる薄膜の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記従来技術の有する課題を解決するために、本発明は、可撓性基板を巻装した巻出しロールと前記可撓性基板を巻取る巻取りロールとの間で前記可撓性基板の搬送途中に設置される成膜室と、該成膜室内において内部に加熱ヒータを有する接地電極と、前記成膜室内において高周波電源に接続される高周波電極とを備え、前記接地電極と前記高周波電極との間に前記可撓性基板を走行させて前記成膜室内で前記可撓性基板上に薄膜を成膜する成膜装置を用いた薄膜の製造方法において、前記可撓性基板の幅方向一端部を挟持する第1保持機構部と、該第1保持機構部に対向した前記可撓性基板の幅方向他端部を挟持する第2保持機構部とにより前記可撓性基板の両端部近傍を挟持しながら、前記第1保持機構部及び前記第2保持機構部から長手方向に間隔を空けて設けた引張機構部により前記第1保持機構部と前記第2保持機構部とを互いの距離を広げる方向に移動させて前記可撓性基板を引っ張り、引っ張りながら前記可撓性基板を押さえ込んで成膜を行っている。
【0010】
また、本発明において、前記引張機構部は、一点を前記可撓性基板の搬送方向と平行な一定角度以内になるように保持して引っ張っている。
【0011】
さらに、本発明において、前記引張機構部は、一点を前記可撓性基板の搬送方向に保持して引っ張るとともに、他点を前記可撓性基板の搬送方向と逆方向に保持して引っ張っている。
【0012】
そして、本発明において、前記引張機構部は、一点を前記可撓性基板の搬送方向と平行な一定角度以内になるように保持して引っ張るとともに、他点を前記可撓性基板の搬送方向と逆方向で搬送方向と平行な一定角度以内に保持して引っ張っている。
【発明の効果】
【0013】
上述の如く、本発明に係る薄膜の製造方法は、可撓性基板を巻装した巻出しロールと前記可撓性基板を巻取る巻取りロールとの間で前記可撓性基板の搬送途中に設置される成膜室と、該成膜室内において内部に加熱ヒータを有する接地電極と、前記成膜室内において高周波電源に接続される高周波電極とを備え、前記接地電極と前記高周波電極との間に前記可撓性基板を走行させて前記成膜室内で前記可撓性基板上に薄膜を成膜する成膜装置を用いて、前記可撓性基板の幅方向一端部を挟持する第1保持機構部と、該第1保持機構部に対向した前記可撓性基板の幅方向他端部を挟持する第2保持機構部とにより前記可撓性基板の両端部近傍を挟持しながら、前記第1保持機構部及び前記第2保持機構部から長手方向に間隔を空けて設けた引張機構部により前記第1保持機構部と前記第2保持機構部とを互いの距離を広げる方向に移動させて前記可撓性基板を引っ張り、引っ張りながら前記可撓性基板を押さえ込んで成膜を行うので、4箇所の保持機構部及び引張機構部にて囲まれた領域で、隈なく可撓性基板を延伸させることが可能となる。
【0014】
したがって、可撓性基板の大型化のため、加熱による可撓性基板の熱膨張に起因して伸縮量が増加しても、2個の引張機構部により張力を負荷することで張力負荷の不可能な位置が存在しないことで平面性を向上させることができ、上述の熱膨張による伸びが延伸可能となり、これにより可撓性基板の熱膨張による伸びにより発生していた可撓性基板の緩みが抑制され、可撓性基板に発生していた皺状の変位を抑えることができる。
【0015】
また、本発明において、前記引張機構部は、一点を前記可撓性基板の搬送方向と平行な一定角度以内になるように保持して引っ張っているので、より一層、可撓性基板に発生していた皺状の変位を抑えることができる。
【0016】
さらに、本発明において、前記引張機構部は、一点を前記可撓性基板の搬送方向に保持して引っ張るとともに、他点を前記可撓性基板の搬送方向と逆方向に保持して引っ張り、あるいは、前記引張機構部は、一点を前記可撓性基板の搬送方向と平行な一定角度以内になるように保持して引っ張るとともに、他点を前記可撓性基板の搬送方向と逆方向で搬送方向と平行な一定角度以内に保持して引っ張っているので、4個の引張機構部を遊動的に配置して移動可能とすることにより、引張機構部の固定部が無くなり、可撓性基板の配置に関して慎重な張力の釣り合いは要求されるが、高い引っ張り荷重の延伸効果が得られることになる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態に係る成膜装置を示す概略構成配置図である。
【図2】(A)〜(C)は、上記第1実施形態の可撓性基板の成膜室における形成手順を示す概略断面図である。
【図3】可撓性基板の保持方式を比較して示すものであり、(A)は上記第1実施形態の平面図、(B)は比較例の平面図である。
【図4】可撓性基板の皺状変位を比較して示すものであり、(A)は上記第1実施形態の線図、(B)は比較例の線図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る可撓性基板の保持方式を示す平面配置図である。
【図6】従来技術における可撓性基板の保持方式を示す平面配置図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る薄膜の製造方法について、その実施の形態に基づき図面を参照しながら詳細に説明する。
【0019】
[第1実施形態]
図1は本発明の第1実施形態に係る成膜装置の概略構成配置図である。
図1において、可撓性基板1を巻装した巻出しロール2aと、可撓性基板1を巻取る巻取りロール2bとの間であって、可撓性基板1の搬送途中には、成膜装置100が設置されており、可撓性基板1は、2つのロール2a,2bの回転駆動により搬送されるようになっている。
成膜装置100の成膜室(反応室)10内には、可撓性基板1を支持し内部に基板への加熱ヒータ8を有する接地電極4と、高周波電源3aに電気的に接続される高周波電極3とが、走行させる可撓性基板1を挟んで所定の間隔を空けて対向して配置されている。しかも、可撓性基板1への加熱ヒータ8を有する接地電極4と高周波電極3とは、お互いが平行となるように配置されている。
【0020】
また、成膜装置100は、接地電極4と高周波電極3を内部に収納して、成膜室10を形成する仕切りとなる一対の押さえ枠5,6を備えている。これら押さえ枠5,6は、互いの開口部が向き合う断面コ字状に形成され、少なくとも一方の接地電極側の押さえ枠6は移動可能に構成されており、これら押さえ枠5,6の周辺部を重ね合わせることによって可撓性基板1を挟み込み、成膜室10を分離している。
さらに、成膜装置100の成膜室10の外側に位置する内側壁面には、可撓性基板1の端部を挟持する端部保持機構部と、可撓性基板1を引っ張る引張機構部の機能を兼備している4個の保持及び引張機構部12が可撓性基板1の搬送方向の上下流の出入口付近で互いに対向して配置されている。
【0021】
図2(A)〜(C)は、本発明の第1実施形態における可撓性基板1の成膜室10の形成手順を示す概略断面図である。
可撓性基板1を搬送するときには、図2(A)に示すように、接地電極4を反対側方向に引いて、接地電極4と高周波電極3とが接触しないようになっており、成膜室10内で薄膜を形成するときには、図2(B)に示すように、加熱ヒータ8を内蔵した接地電極4を移動させることにより可撓性基板1に押し付けて、可撓性基板1を加熱して設定の温度に昇温する。次いで、後述するように、保持及び引張機構部12により可撓性基板1に対する固定保持と張力の負荷を行った後、図2(C)に示すように、押さえ枠5,6を押し込めば、成膜室10が形成されることになる。
【0022】
図3は、可撓性基板の保持方式を比較して示すものであり、(A)は本発明の第1実施形態の平面図、(B)は比較例(例えば、特願2009−6352号)の平面図であり、図3(A)、(B)において、Xは可撓性基板1の運動方向、1aは可撓性基板1の表面変位測定方位である。
また、12A、12B、12C、12Dは可撓性基板1の保持及び引張機構部であり、各保持及び引張機構部は、可撓性基板1を保持するととともに、可撓性基板1に引張り作用を行うことが可能に構成されている。
【0023】
これら保持及び引張機構部12のうち、第1の保持及び引張機構部(第1保持機構部)12Aは、可撓性基板1の幅方向一端部を挟持するものであって、可撓性基板1上に固定されている。
また、保持及び引張機構部12のうち、第2の保持及び引張機構部(第2保持機構部)12Cは、第1の保持及び引張機構部12Aに対向した可撓性基板1の幅方向他端部を挟持するともに、図の矢印方向の外向きの引張り荷重を可撓性基板1に与えるように構成されている。
さらに、保持及び引張機構部12のうち、第3の保持及び引張機構部(引張機構部)12Bは、第1の保持及び引張機構部12Aから可撓性基板1の長手方向に距離S1の間隔を空けて設けられ、可撓性基板1を挟持し、かつ図の矢印方向の引張り荷重、つまり可撓性基板1の搬送方向(矢印X方向)またはやや垂直方向に角度αを付けて、可撓性基板1を引張り、可撓性基板1に張力を与えるように構成されている。この角度αは、後述するように、±15°以内が好適である。
そして、保持及び引張機構部12のうち、第4の保持及び引張機構部(引張機構部)12Dは、第2の保持及び引張機構部12Cから可撓性基板1の長手方向に距離S2の間隔をおいて設けられ、可撓性基板1を挟持し、かつ図の矢印方向外向きの引張り荷重を可撓性基板1に与えるように構成されている。
【0024】
なお、第1及び第2の保持及び引張機構部12A,12Cと、第3及び第4の保持及び引張機構部12B,12Dの具体的な構成は、図6に示した特許文献1の第1保持機構部30、第2保持機構部40及び引張機構部50と(30,40,50は、特許文献1の符号)同様な構成を有している。
【0025】
次に、本発明の第1実施形態に係る成膜装置100を用いた薄膜の製造方法の作用効果について説明する。
図3(A)は本発明の第1実施形態の基板変位を示し、図3(B)は比較例(特願2009−6352号)の基板変位を示している。図3(A)及び(B)のどちらにおいても、A点は固定点であり、可撓性基板1の位置が固定されている。
図3(B)に示す比較例(特願2009−6352号)の成膜工程では、接地電極のみが可撓性基板1の非成膜面に移動して接触しながら可撓性基板1を加熱し、特許文献1(特開2005−72408号公報)と同様に、第1保持機構部と第2保持機構部とにより可撓性基板1の両端部を挟持し、挟持しながら第1保持機構部と第2保持機構部をお互いの距離が広がる方向へ引張機構部によって移動させて可撓性基板1の両端部を基板長手方向に引っ張る。そして、押さえ枠を移動して可撓性基板1を押さえ込んで挟み、成膜室の開口部を閉じて放電空間を形成した状態で、可撓性基板1に対して成膜している。
【0026】
図3(B)の比較例では、第1の保持及び引張機構部12Aにより挟持される可撓性基板1の位置が固定点であることから、第1の保持及び引張機構部12Aと第3の保持及び引張機構部12Bとの距離S3は固定されるため、これら第1の保持及び引張機構部12A〜第3の保持及び引張機構部12B間(距離S3)における可撓性基板1の熱伸びを延伸することはできなかった。
このため、可撓性基板1の第1の保持及び引張機構部12Aと第3の保持及び引張機構部12B間の熱による伸びが長くなり、第1の保持及び引張機構部12Aと第3の保持及び引張機構部12B間の距離が長くなると、可撓性基板1の熱伸びによる皺が発生することになる。この皺は、第2の保持及び引張機構部12Cと第4の保持及び引張機構部12Dとの間(距離S4)においても同様に、張力が負荷された方位に皺が伝播して広がり、その結果、可撓性基板1の平面性を低下させることになった。
【0027】
一方、本発明の第1実施形態では、図3(A)に示すように、第3の保持及び引張機構部12Bは、第1の保持及び引張機構部12Aから可撓性基板1の長手方向に距離S1の間隔を空けて設けられ、可撓性基板1を挟持し、かつ図中矢印方向の引張り荷重を可撓性基板1に与えている。
すなわち、第3の保持及び引張機構部12Bによる可撓性基板1の保持点Bにおいて、可撓性基板1の搬送方向(X矢方向)またはやや垂直方向に角度αを付けて、第3の保持及び引張機構部12Bによって可撓性基板1に張力を与えている。この角度αは、±15°以内が好適である。
【0028】
この張力により、可撓性基板1の両端部近傍の2箇所(第1の保持及び引張機構部12Aと第2の保持及び引張機構部12C)を挟持しながら、第1の保持及び引張機構部12Aと第2の保持及び引張機構部12Cから長手方向に距離S1、S2の間隔を空けて設けた第3の保持及び引張機構部12Bと第4の保持及び引張機構部12Dにより、可撓性基板1の互いの距離を広げる方向に保持しながら引っ張るので、4箇所の保持及び引張機構部12A〜12Dに囲まれた領域で、隈なく可撓性基板1を延伸させることが可能となる。
【0029】
したがって、本実施形態の製造方法によれば、可撓性基板1の大型化のため、加熱による可撓性基板1の熱膨張に起因して伸縮量が増加しても、2個の保持及び引張機構部12B,12Dにより張力を負荷することで張力負荷の不可能な位置が存在しないことになり、平面性の向上を図ることができて、可撓性基板1の熱膨張による伸びが延伸可能となり、これにより可撓性基板1の熱膨張による伸びにより発生していた可撓性基板1の緩みが抑制され、可撓性基板1に発生していた皺状の変位を抑えることができる。
【0030】
図4は、1m幅の可撓性基板1を用い、第1実施形態の基板表面の皺状変位と上記比較例の基板表面の皺状変位とを比較した線図である。すなわち、図4(A)は、第1実施形態における可撓性基板1の皺状変位の実測値、図4(B)は、比較例における可撓性基板1の皺状変位の実測値である。
図4から明らかなように、本発明の第1実施形態においては、前述した方法を行ったことにより、可撓性基板1の皺状変位が大幅に減少し、小さな変位に収まっていることが分かる。
【0031】
[第2実施形態]
図5は、本発明の第2実施形態に係る可撓性基板の支持方式を示す平面配置図である。
この第2実施形態においては、可撓性基板1の第2の保持及び引張機構部12Cと第4の保持及び引張機構部12Dを上記第1実施形態と同様に外向きに対称に配置し、第1の保持及び引張機構部12Aと第3の保持及び引張機構部12Bの引張り荷重の作用方向を、可撓性基板1の幅方向線1cを基準に対称に配置して、該幅方向線1cで対称な逆方向に作用させている。すなわち、第3の保持及び引張機構部12Bは、可撓性基板1の搬送方向(矢印X方向)またはやや垂直方向に角度αを付けて、可撓性基板1を保持して引っ張るとともに、第1の保持及び引張機構部12Aは、可撓性基板1の搬送方向(矢印X方向)と逆方向またはやや垂直方向に角度αを付けて、可撓性基板1を保持して引っ張っている。その他の構成及び配置は、上記第1実施形態と同様である。
このように、第1〜第4の保持及び引張機構部12A、12B、12C、12Dを遊動的に配置すれば、保持及び引張機構部の固定部が無くなるため、可撓性基板1の配置に関しては慎重な張力の釣り合いを要求するが、高い引張り荷重の延伸効果が得られることになる。その他の作用効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0032】
以上、本発明の実施の形態につき述べたが、本発明は既述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変更及び変形が可能である。
【符号の説明】
【0033】
1 可撓性基板
2a 巻出しロール
2b 巻取りロール
3 高周波電極
3a 高周波電源
4 接地電極
5,6 押さえ枠
8 加熱ヒータ
10 成膜室
12A 保持及び引張機構部(第1保持機構部)
12B 保持及び引張機構部(引張機構部)
12C 保持及び引張機構部(第2保持機構部)
12D 保持及び引張機構部(引張機構部)
100 成膜装置
X 可撓性基板の運動方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性基板を巻装した巻出しロールと前記可撓性基板を巻取る巻取りロールとの間で前記可撓性基板の搬送途中に設置される成膜室と、該成膜室内において内部に加熱ヒータを有する接地電極と、前記成膜室内において高周波電源に接続される高周波電極とを備え、前記接地電極と前記高周波電極との間に前記可撓性基板を走行させて前記成膜室内で前記可撓性基板上に薄膜を成膜する成膜装置を用いた薄膜の製造方法において、
前記可撓性基板の幅方向一端部を挟持する第1保持機構部と、該第1保持機構部に対向した前記可撓性基板の幅方向他端部を挟持する第2保持機構部とにより前記可撓性基板の両端部近傍を挟持しながら、前記第1保持機構部及び前記第2保持機構部から長手方向に間隔を空けて設けた引張機構部により前記第1保持機構部と前記第2保持機構部とを互いの距離を広げる方向に移動させて前記可撓性基板を引っ張り、引っ張りながら前記可撓性基板を押さえ込んで成膜を行うことを特徴とする薄膜の製造方法。
【請求項2】
前記引張機構部は、一点を前記可撓性基板の搬送方向と平行な一定角度以内になるように保持して引っ張ることを特徴とする請求項1に記載の薄膜の製造方法。
【請求項3】
前記引張機構部は、一点を前記可撓性基板の搬送方向に保持して引っ張るとともに、他点を前記可撓性基板の搬送方向と逆方向に保持して引っ張ることを特徴とする請求項1に記載の薄膜の製造方法。
【請求項4】
前記引張機構部は、一点を前記可撓性基板の搬送方向と平行な一定角度以内になるように保持して引っ張るとともに、他点を前記可撓性基板の搬送方向と逆方向で搬送方向と平行な一定角度以内に保持して引っ張ることを特徴とする請求項3に記載の薄膜の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−146818(P2012−146818A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−3957(P2011−3957)
【出願日】平成23年1月12日(2011.1.12)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【出願人】(000165974)古河機械金属株式会社 (211)
【Fターム(参考)】