説明

薄膜シート成形用ロール

【課題】 薄膜シートを効率よく容易に成形することができるシンプルな構造で安価な薄膜シート成形用ロールを提供する。
【解決手段】 弾性変形が可能な金属薄膜からなる金属製弾性外筒102と、該金属製弾性外筒102の内部に、上記金属製弾性外筒102の両端部を閉塞する弾性変形自在の環状シール部材103と冷却流体の螺旋状の流路を形成する弾性変形自在のスパイラル部材104を外周部に有する内筒105を、備えてなるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面平滑性が均一な薄膜シートを効率良く成形する薄膜シート成形用ロールに関する。
【背景技術】
【0002】
図5に熱可塑性樹脂によるシートを成形するシート成形機の概略を示す。
図5中、符号11は押出し機、12はダイ、13〜15は金属ロール、16は切断機を各々図示する。
同図に示すように、押出し機11の先端に付属するダイ12から押出された樹脂溶融膜17を、複数の金属ロール13〜15に導いて、該樹脂溶融膜17の両面をロール13〜15の表面で挟圧すると共に、冷却して薄膜状の薄膜シート18に成形して、その後切断機16で所定の長さに切断するか、或いは必要に応じて巻取り装置に(図示せず)により巻き取るようにしている。
【0003】
上記樹脂成形機によりダイ12からの樹脂溶融膜17を挟圧して薄膜シート18を成形する際に、ロールの間隙部にバンク(溶融樹脂溜り)が発生しながら成形することはよく知られている。
従来においては、上記成形された薄膜シート18の厚みが比較的厚い(例400μm以上)ものを得る場合では、上記バンクを制御し幅方向で均一にすることは比較的容易であり、また、厚い樹脂溶融膜の場合では若干のクッション性を有するので、バンクが幅方向で若干不均一であっても薄膜シート18の全幅にわたってロール表面でほぼ均一に押し付けることができ、平滑性のあるシートを成形することが可能であった。
【0004】
しかしながら、上述した剛体性の金属ロール13及び14で上記薄膜シート18の厚さが例えば300μm程度以下の極めて薄いシートを成形する場合においては、樹脂溶融膜17のクッション性が少ないので、バンクのある部分は金属ロール表面に押しつけられるものの、バンクのない部分は金属ロールの表面で押し付けられないので、シートの幅方向で部分的に表面が平滑でなくなるという問題がある。
【0005】
このため、従来では、上記金属ロールの一本のロールの表面をゴム等の弾性体とし、該弾性体の弾性力により、シート成形時にバンクマークを発生させないでシートを成形するような提案がある。
【0006】
しかしながら、ゴム等の弾性体の表面は金属ロールと同様な鏡面とする事ができず、ロール表面が転写する薄膜シートの表面平滑性に問題があった。
また、両面が鏡面であることが必須である透明シートの成形もできないという問題がある
【0007】
更に、ゴム等の弾性体は断熱体のために、冷却水等でロール内部や外部から冷却してもゴム等の弾性体に対する冷却効果が少なく、逆に樹脂溶融膜の熱でゴム等の弾性体の表面が高温になってしまい、効率よく良好な成形ができない、という問題がある。
【0008】
また、上記金属ロールの内の一本のロールを、ゴム等の弾性体の外部に表面を鏡面仕上げされている金属薄膜を被覆したロール(特許文献1、特許文献2)とすることが提案されている。
【特許文献1】特開平3−124425号公報
【特許文献2】特開平7−100960号公報
【0009】
上記提案においては、上記金属薄膜の内部に配した弾性体層(例えばゴム等)の弾性力により、薄膜シート成形時において樹脂溶融膜の厚みむらになじんだ状態で樹脂溶融膜を圧着することで、表面平滑性に優れた樹脂薄膜シートを得るようにしている。
【0010】
しかしながら、前記弾性体層は断熱体なので、冷却水等でロールの内部から冷却しても金属薄膜を効率良く冷却できないという問題がある。
【0011】
又、表面を鏡面仕上げした金属薄膜からなる金属製弾性外筒のロール(特許文献3)とすることが提案されている。
【特許文献3】特許第3422798号公報
【0012】
この場合は、金属製弾性外筒の内部を冷却水で直接冷却するので冷却効率は良い。しかし、請求項1の場合は薄膜シートを適切に圧着する為には冷却流体の内圧を高くする必要があり、該金属製弾性外筒の両端の閉塞部からの冷却流体の漏れを完全に防ぐことは難しく漏れた冷却流体が樹脂溶融膜に当り表面が不均一になり良好な薄膜シートを成形することができないという問題がある。
【0013】
また、請求項2の場合は弾性体ロールで金属製弾性外筒を内側から押し付けて薄膜シートを圧着しているので適切に圧着することができるが構造が複雑になり装置が高価になると共に、取り扱いも難しくなるという問題がある。
【0014】
更に、冷却流体は内筒の内部又は金属製弾性外筒及び弾性ロールとの平行状の間隔を単に流れて行くだけなので冷却流体の金属製弾性外筒への冷却効率は余り良くないという問題がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、薄膜シート成形用ロールの上記問題に鑑み、冷却の為の温度管理が容易であり、且つ、冷却流体の漏れが無く高効率で樹脂溶融膜を冷却でき、更に樹脂溶融膜を適切に圧着することができ高効率で表面平滑性が良好な薄膜シートを成形することができる、構造が簡単で取り扱いが容易であり且つ、安価な薄膜シート成形用ロールを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記課題を解決する本発明の薄膜シート成形用ロールは、少なくとも二以上のロールにより熱可塑性樹脂を挟圧しつつ冷却して薄膜シートを成形する薄膜シート成形用ロールであって、弾性変形が可能な金属薄膜からなる金属製弾性外筒と、該金属製弾性外筒の内側に、上記金属製弾性外筒の両端部を閉塞する弾性変形自在の環状シール部材及び冷却流体のスパイラル状流路を形成する弾性変形自在のスパイラル部材を外周部に有する内筒を、備えてなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
このような薄膜シート成形用ロールによれば、弾性変形が可能な金属薄膜からなる金属製弾性外筒を有する薄膜シート成形用ロールを用いて、押出し機先端のダイからの樹脂溶融膜を挟圧する際、該金属製外筒の金属薄膜が弾性変形自在であるので、樹脂溶融膜に厚みむらがあってもそれに対応して金属弾性外筒の部分はなじんだ形状に変化しつつ該樹脂溶融膜を圧着し、バンクマークの発生がない表面平滑性の均一な薄膜シートを成形することができる。
【0018】
又、弾性変形自在の環状シール部材及び弾性変形自在のスパイラル部材で金属性弾性外筒の内側から圧着するので冷却流体の圧力を高くしなくとも表面に圧着むらのない表面平滑性が良好な薄膜シートを成形出来ると共に、冷却流体の流路がスパイラル状になっているので金属製弾性外筒が冷却流体で効率良く冷却されて、薄膜シートを高効率で成形することが簡単な構造で取り扱い易い安価な装置で出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明を詳細に説述するために、添付の図面に従ってこれを説明する。
図1は、図5に示したシート成形機に用いる本発明にかかる薄膜シート成形用ロールの概略図である。
図1に示すように、本発明にかかる薄膜シート成形用ロール(以下「シート成形用ロール」という)101は、弾性変形可能な厚さの金属製弾性外筒102と、該金属製弾性外筒102の両端部を閉塞する左右の端部に設けた弾性変形自在の環状シール部材103及び弾性変形自在のスパイラル部材104を外周部に有する内筒105と、上記金属製弾性外筒102の内部に上記内筒105の軸部106を介して外部から冷却流体107を圧送する流体圧送手段(図示せず)とから構成されている。
【0020】
図2は内筒105部の概観を示したものである。
本図に示すように内筒105の外周両端部には環状シール部材103と、内筒の外周部にはスパイラル状に巻かれた1本又は複数のスパイラル部材104が配されていて冷却流体の流路108を形成している。
【0021】
冷却流体107はスパイラル状の流路108を流れていきながら金属製弾性外筒102を内部から直接冷却して図示しない反対側の軸部から流れ出ていく。冷却流体107がスパイラル状の流路108を流れるのて、冷却流体107の金属製外筒102に対する冷却効率が良いものとなる。
【0022】
冷却流体が単に平行状の間隔を流れていく場合より、スパイラル状の流路を流れる場合の方が冷却効率が良い(特許文献4)事はよく知られた事実である。
【特許文献4】特公昭57−29248号公報
【0023】
弾性変形自在の環状シール部材103及びスパイラル部材104で金属製弾性外筒102の内側から押すので冷却流体107の圧力を余り高くしなくとも樹脂溶融膜17を適切に挟圧する事が出来る。
【0024】
図3は、本発明に掛かる成形用ロール101を用いた成形部の概略を示すものである。
図3において、前記シート成形用ロール101と対向して従来と同様な表面が平滑な金属ロール118が配設されており、前記シート用ロール101は円弧状109に変形しながら、ダイ12からの樹脂溶融膜17を挟圧して薄膜シート18を成形している。
【0025】
そして、本発明によれば、図4に示すように、前記シート成形用ロール101を用い、ダイ12からの樹脂溶融膜17を挟圧する際に、弾性変形自在の両端部の環状シール部材103とスパイラル部材104とで金属製弾性外筒102を樹脂溶融膜17の形状になじんだ形状に対応させつつ変形させながら該樹脂溶融膜17を金属ロール118に圧着することとなる。
【0026】
よって、薄膜シート成形時にもバンク発生のないのは従来のゴム等の弾性ロールの場合と同様であるが、更に、金属製弾性外筒102の表面は、鏡面であり内部を直接冷却されるので、平滑性、透明性の良好な薄膜シート18を容易に効率よく成形できる。
【0027】
ここで、本発明にかかるシート成形用ロール101において、金属製弾性外筒102の材料として用いる弾性変形可能な金属薄膜の厚さは、0.15mm〜1mm程度が好ましい。
これは金属薄膜の厚さが0.15mm以下であると強度不足となり好ましくなく、一方、1mmを超えた場合には弾性変形の変化の度合いが少なく、シート成形時において樹脂溶融膜の表面形状の凹凸に柔軟に対応できないおそれがあるからである。
【0028】
また、前記金属薄膜の材質は特に限定されるものではないが、例えばばね鋼、ステンレス鋼、ニッケル等を用いるのが好適である。
さらに、前記金属製弾性外筒102を溶接継ぎ部のないシームレス構造とすることにより、樹脂溶融膜17を挟圧する際、溶接継ぎ跡の転写のない良好なシートが成形できる。
【0029】
前記弾性変形自在の環状シール部材103及びスパイラル部材104の材質は特に限定されるものでないが、EPDM(エチレンプロピレンゴム)、ネオプレンゴム、シリコンゴム等を例示することができると共に、硬度はHs30〜90が好ましい。
また、スパイラル部材104は金属製のコイル状のスプリングにすることも出来る。
【0030】
水密状態をより確実にする為に環状シール部材103は弾性外筒102と適宜接着剤等で接着される事が好ましく、スパイラル部材104は弾性外筒102直接接触していても、離れていても構わない。
【0031】
本発明のシート成形用ロールによれば、200μm以下の薄い樹脂シートのものから400μm以上の厚い樹脂シートまで平滑性の良好な透明性の高いシートを容易に成形することができる。
【実施例】
【0032】
以下本発明の実施例を説明する。
〔シート〕
厚み 0.18mm
〔樹脂〕
ホモPP MFR 0.8
〔成形条件〕
ダイ温度 240℃
〔金属製弾性外筒の仕様〕
外径 280mm
長さ 1000mm
金属薄膜厚 0.25mm
〔冷却水の仕様〕
冷却水の温度 18℃
冷却水の圧力 0.1MPa
【0033】
上記得られた薄膜シートは、薄膜でありながら、従来発生していたバンクマークの発生がなく、両面の平滑性が良好な鏡面薄膜シートであった。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係るシート成形用ロールの概略断面図である。
【図2】本発明に係るシート成形用ロールの内筒部の概観図である。
【図3】本発明に係るシート成形の概略図である。
【図4】本発明に係るシート成形の挟圧状態を示す概略図である。
【図5】シート成形機の概略図である。
【符号の説明】
【0035】
101 薄膜シート成形用ロール
102 金属製弾性外筒
103 環状シール部材
104 スパイラル部材
105 内筒
106 軸部
107 冷却流体
108 冷却流体流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも二以上のロールにより熱可塑性樹脂を挟圧しつつ冷却して薄膜シートを成形する薄膜シート成形用ロールであって、
弾性変形が可能な金属薄膜からなる金属製弾性外筒と、該金属製弾性外筒の内側に、上記金属製弾性外筒の両端部を閉塞する弾性変形自在の環状シール部材及び冷却流体のスパイラル状流路を形成する弾性変形自在のスパイラル部材を外周部に有する内筒を、備えてなることを特徴とする薄膜シート成形用ロール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−30426(P2008−30426A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−224698(P2006−224698)
【出願日】平成18年7月26日(2006.7.26)
【出願人】(504173194)
【Fターム(参考)】