説明

薄膜半導体の結晶性測定装置及びその方法

【課題】ポリシリコン等の半導体からなる薄膜試料のごく微小領域の結晶性を評価するための指標値を,非破壊及び非接触で,かつ短時間及び高精度で測定できること。
【解決手段】ポリシリコン等の半導体の薄膜試料20aに対してマイクロ波が照射される側と反対側に導体部材である試料台10を配置し,その試料台10の表面と薄膜試料20aの測定部位との間の距離がマイクロ波の波長の四分の一の距離又はその距離に前記マイクロ波の波長の整数倍を加えた距離となるように,ガラスやセラミック等の誘電体である基板保持部12によって保持し,その状態で,薄膜試料20aの測定部位とその近傍それぞれに対し,マジックTに接続された2つの導波管5a,5bを通じてマイクロ波Op1,Op2を照射し,そのマイクロ波の反射波の差信号Rt1の強度のピーク値Spをミキサ6及び信号処理装置7により検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,ポリシリコンや単結晶シリコン等の半導体からなる薄膜試料の結晶性の測定を行う薄膜半導体の結晶性測定装置及びその方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置などのフラットパネルディスプレイの技術分野において,厚さ数十nm(ナノメートル)程度のTFT素子をガラス基板上に形成させるSOG(System On Glass)技術が注目されている。
従来,液晶表示装置のガラスパネルに形成されるTFT素子は,主としてアモルファスシリコン(a−Si)薄膜で構成されている。しかしながら,昨今,液晶表示装置の表示映像の高精細化,高画質化,大画面化及び応答速度の向上に対応するため,液晶表示装置のガラスパネル(ガラス基板上)に,電界効果移動度の高いポリシリコン(p−Si)の半導体薄膜(以下,p−Si薄膜という)からなるTFT素子を形成させる技術が進展してきている。
ガラス基板上にp−Si薄膜を形成させる方法は,高温プロセス法と低温プロセス法とに大別される。
高温プロセス法は,約1000℃の高温処理工程を有するため,ガラス基板の材料として,耐熱性の高い石英ガラスなどを採用する必要がある。しかしながら,高耐熱性の石英ガラスなどは高価であり,コスト的に採用し難い。
一方,低温プロセス法は,a−Si部材にレーザ光を照射するレーザアニールにより,そのa−Siを結晶化させてp−Si薄膜を生成する。このため,ガラス基板の材料として,比較的耐熱性の低い安価なガラスを採用できる。
しかしながら,レーザアニ−ルによる結晶化によって得られたp−Si薄膜は,レーザ光の強度や照射時間などの条件変動により,その結晶性がばらつきやすい。ここでいう結晶性とは,ダングリングボンドに起因する試料中の欠陥の量(欠陥の存在度合い)や結晶粒径のことである。この結晶性のばらつきは,ガラス基板上のTFT素子の性能に大きな悪影響を及ぼす。このため,p−Si薄膜(TFT素子)が形成されたガラスパネルの製造ラインにおいて,そのp−Si薄膜の結晶性評価のための測定をインラインで,即ち,非破壊かつ短時間で行い,その測定結果を製造条件にフィードバックすることが,生産性向上(歩留まり向上)のために非常に重要となる。また,製品の品質劣化防止の観点から,p−Si薄膜の測定は,非接触測定であることが望ましい。
さらに,近年,ガラス基板上の各TFT素子の結晶性のばらつきを抑えるため,TFT素子を形成させる領域だけを局所的に結晶化させる技術の開発が盛んである。このため,p−Si薄膜の結晶性評価では,局所的な(微小な)領域の結晶性を評価することも非常に重要である。
例えば,モバイル機器向けの液晶表示装置用のガラス基板の製造ラインでは,約1m×1mの大きさ(面積)のガラス基板を1枚当たり1分の速さで製造ラインが流れるため,そのガラス基板に形成されたp−Si薄膜の測定をインラインで行うためには,ガラス基板1枚当たりのp−Si薄膜の測定時間を1分以内に抑える必要がある。さらに,ガラス基板1枚ごとに複数箇所のp−Si薄膜を順次測定するためには,1箇所の測定時間をさらに短縮する必要がある。
一方,従来の薄膜試料の結晶性の評価手法としては,ラマン分光による結晶性評価,X線回析法,ラザフォード後方散乱法,透過電子回析法及び走査式電子顕微鏡を用いた結晶性評価などが知られている。
例えば,特許文献1には,ラマン分光によりアモルファス結晶シリコンのラマンシフトを測定することにより,薄膜試料の結晶化の過程を評価する技術が示されている。
【特許文献1】特開2002−176009号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら,ラマン分光による結晶性評価や,X線解析法,ラザフォード後方散乱法及び透過電子回析法による結晶性評価は,いずれも測定装置が高価であり,測定に要する時間も長いことから,生産プロセスでの製品検査(インライン検査)への適用には不向きであるという問題点があった。例えば,ラマン分光による測定は,非破壊測定である点で優れているが,検出するラマン散乱光の強度が極めて微弱であるため,高精度の測定を行うためには多数回の測定及びその測定値の積分が必要となり,測定に要する時間が長くなる。
特に,液晶表示装置用のガラス基板の製造ライン等では,大型の(約1m四方)ガラス基板について多数の測定部位を短時間で測定する必要があり,そのような大型の測定対象の複数箇所を短時間で測定(評価)できることが望まれる。
また,走査式電子顕微鏡を用いた結晶性評価も,これは本質的に破壊試験であり,さらに,測定時間も長時間を要することから,生産プロセスでの製品検査への適用には不向きであるという問題点があった。
従って,本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり,その目的とするところは,ポリシリコン等の半導体からなる薄膜試料のごく微小領域の結晶性を評価するための測定を,非破壊及び非接触で,かつ短時間及び高精度で行うことができる薄膜半導体の結晶性測定装置及びその方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するために本発明は,半導体からなる薄膜試料の測定部位に対して励起光及び電磁波を照射し,前記励起光の照射により変化する前記電磁波の前記薄膜試料からの反射波の強度を検出,その検出データに基いて前記薄膜試料の結晶性を測定する薄膜半導体の結晶性測定装置であり,次の(1)〜(3)に示す各構成要素を備える。
(1)前記薄膜試料に対して前記電磁波が照射される側と反対側に配置された導体部材。
(2)前記導体部材の表面と前記薄膜試料の測定部位との間の距離が,その間の媒質における前記電磁波の波長の略四分の一の距離又はその距離に前記電磁波の波長の整数倍を加えた距離となるように前記薄膜試料を保持する試料保持手段。
(3)前記試料保持手段により保持された前記薄膜試料に対する前記励起光の照射によって変化する,前記電磁波の前記薄膜試料からの反射波の強度を検出する電磁波強度検出手段。
ここで,前記薄膜試料が所定の基材(例えばガラス板)の表面に形成されており,前記試料保持手段が,例えば前記基材と前記導体部材との間に挿入される固形の誘電体(固体)であることが考えられる。これにより,前記基材を前記導体部材との間に空間を設けて支持する場合に比べ,前記基材に重力による歪が生じにくい。特に,前記基材が大きい(面積が広い)場合,重力による歪が生じやすくなるが,前記試料保持手段によってその歪の発生を防止できる。
また,前記薄膜試料はシリコン等の半導体の薄膜であり,その典型例は,数nm〜数十nm程度の厚みのポリシリコンからなる半導体薄膜や,数μm以下の厚みの単結晶シリコンからなる半導体薄膜等である。
なお,前記電磁波を前記測定部位に導いてその測定部位に近接する端部において前記電磁波を前記薄膜試料に放射するとともにその電磁波の反射波を捕捉する導波管アンテナを備え,その導波管アンテナの前記測定部位に近接する端部を通じて,前記励起光が前記測定部位に照射されることが考えられる。
【0005】
半導体試料に電磁波を照射すると,その反射波の強度は,励起光の照射により測定部位に生じる励起キャリアの影響を受け,その影響度合いは,試料中の不純物,欠陥等の程度に依存する。即ち,半導体試料に照射した電磁波の反射波の強度は,励起光パルスの照射によって一時的に強くなった後に減衰するが,試料中の不純物,欠陥等が多いほど,その反射波の強度のピーク値は小さくなり,その減衰時間(キャリア寿命)も短くなる。このため,半導体試料に照射した電磁波の反射波の強度は,試料の結晶性の指標となる。しかもその反射波の強度の検出(測定)は,非破壊かつ非接触で行うことができる。
ここで,前記薄膜試料が,数nm〜数十nm程度のポリシリコンや,数μm以下の単結晶シリコン等である場合のように厚みがごく薄い場合,前記反射波の強度の変化はごく微小となり,十分な測定感度が得られない結果,十分な測定精度が確保されない。また,測定感度を高めるために励起光の強度を強くし過ぎると,試料の損傷の原因となり,さらに,励起光の光源のコスト増にもつながる。
これに対し,本発明のように,前記導体部材の表面と前記薄膜試料の測定部位との間の距離が,その間の媒質における前記電磁波の波長の四分の一の距離(又はその距離に前記電磁波の波長の整数倍を加えた距離)となるように前記薄膜試料を保持することにより,前記電磁波が,試料に対する照射波と前記導体部材からの反射波との干渉により,前記導体部材の表面の位置で節,前記測定部位の位置で腹となる定在波となる。このため,前記電磁波(定在波)は,最も振幅が大きい腹の位置で前記測定部位における特性変化の影響を受けるため,その反射波の変化(励起光照射による変化)が大きくなって測定感度が向上する。さらに,前記反射波の変化が大きいので,測定感度を上げるために多数回分の測定値を積分する必要がなく,ごく短時間での測定が可能である。特に,液晶表示装置用のガラス基板のように大型の測定対象について多数の測定部位を測定する場合,その測定時間短縮の効果がより顕著となる。
また,前記励起光は,レンズにより集光して微小領域に照射することが可能であり,試料中の微小領域(測定部位)のみに光励起キャリアを発生させることができる。従って,前記励起光の照射により変化する前記反射波の強度を検出すれば,その検出強度は,試料の微小領域(前記測定部位)の結晶性を表す指標となる。
【0006】
また,本発明に係る薄膜半導体の結晶性測定装置において用いられる前記励起光が,紫外光でれば,比較的低パワーの光で効率的に前記薄膜試料を励起できるので好適である。
また,本発明に係る薄膜半導体の結晶性測定装置が,さらに,次の(4)〜(6)に示す各構成要素を備えていればなお好適である。
(4)前記電磁波を2分岐するとともに2分岐された前記電磁波各々の前記薄膜試料に対する反射波各々の差信号を出力するマジックT。
(5)前記マジックTにより2分岐された前記電磁波の一方を前記測定部位に導いて放射するとともにその反射波を捕捉して前記マジックTまで折り返し導く第1の導波手段。
(6)前記マジックTにより2分岐された前記電磁波の他方を前記測定部位の近傍まで前記第1の導波手段と同一経路長で導いて放射するとともにその反射波を捕捉して前記マジックTまで折り返し導く第2の導波手段。
なお,この場合,前記電磁波強度検出手段が,前記マジックTにより出力される前記反射波の差信号の強度を検出する。
前記第1の導波管及び前記第2の導波管によって補足される2つの前記反射波は,前記薄膜試料の変位(振動)等によって生じるノイズの影響を同程度に受ける。このため,前記マジックTから出力される前記反射波の差信号は,ノイズ成分が相殺されたS/N比の高い信号となる。従って,前記マジックTにより出力される前記反射波の差信号の強度を検出すれば,励起光照射による前記測定部位の微小な変化を高感度で測定することができる。
ここで,前記電磁波強度検出手段により検出される前記反射波の強度の変化のピーク値を検出する強度ピーク値検出手段をさらに具備することが考えられる。
一般に,数百マイクロメートル程度以上の厚みを有するバルク半導体のキャリア寿命(いわゆるライフタイム)の測定では,材料の特性評価の指標値として,前記測定部位からの電磁波の反射波の強度がピークに達してから所定レベル(ピーク値に対して相対的なレベル)まで減衰する時間(減衰時間)が測定され,その時間はマイクロ秒のオーダーである。
これに対し,数十ナノメートル以下のオーダーの厚みしかない薄膜試料に対し,前記励起光及び前記電磁波を照射すると,その電磁波の反射波の強度変化は非常に急峻となり,前記バルク半導体でのライフタイム測定と同様に前記減衰時間の測定を行うと,その減衰時間はナノ秒以下のオーダーとなる。そのようなナノ秒以下のオーダーで急峻に変化する信号の減衰時間を測定するには非常に高価な測定装置が必要となる。
一方,前記反射波の強度変化が急峻な場合,そのピーク値と半導体試料のキャリア寿命(ライフタイム)とはほぼ比例関係を示す。そこで,前記励起光の照射により変化する前記電磁波の前記薄膜試料からの反射波の強度のピーク値を検出(測定)すれば,その検出値は,前記薄膜試料の測定部位におけるキャリア寿命の指標値となる。
【0007】
また,本発明は,半導体からなる薄膜試料の測定部位に対して励起光及び電磁波を照射し,前記励起光の照射により変化する前記電磁波の前記薄膜試料からの反射波の強度を検出する薄膜半導体測定方法として捉えることもできる。
即ち,本発明に係る薄膜半導体測定方法は,前記薄膜試料に対して前記電磁波が照射される側と反対側に導体部材が配置された状態で,所定の試料保持手段により,前記導体部材の表面と前記薄膜試料の測定部位との間の距離が,その間の媒質における前記電磁波の波長の略四分の一の距離となるように前記薄膜試料を保持させ,その状態で前記薄膜試料の測定部位に対して前記励起光及び前記電磁波を照射し,前記励起光の照射により変化する前記電磁波の前記薄膜試料からの反射波の強度を所定の電磁波強度検出手段により検出することを特徴とする測定方法である。
このような測定方法は,前述した本発明に係る薄膜半導体の結晶性測定装置と同様の作用効果を奏する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば,数nm〜数十nm程度の厚みのポリシリコンからなる半導体薄膜や,数μm以下の厚みの単結晶シリコンからなる半導体薄膜(薄膜試料)について,結晶性評価の指標となる測定値(反射電磁波の強度)を,高い空間分解能で(ごく微小な領域を),非破壊及び非接触で,かつ短時間及び高精度で測定できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下添付図面を参照しながら,本発明の実施の形態について説明し,本発明の理解に供する。尚,以下の実施の形態は,本発明を具体化した一例であって,本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
ここに,図1は本発明の実施形態に係る薄膜半導体の結晶性測定装置Xの概略構成を表す図,図2は薄膜半導体の結晶性測定装置Xによる測定手順を表すフローチャート,図3は薄膜半導体の結晶性測定装置Xにおける薄膜試料の測定部位から試料台までの距離とその測定部位におけるマイクロ波の強度との関係のシミュレーション結果を表すグラフである。
【0010】
まず,図1に示す概略構成図を参照しつつ,本発明の実施形態に係る薄膜半導体の結晶性測定装置Xについて説明する。
薄膜半導体の結晶性測定装置Xは,半導体からなる薄膜試料20aの結晶性評価に用いる測定値を取得するための装置であり,前記薄膜試料20aの測定部位に対して励起光及びマイクロ波を照射し,その励起光の照射により変化するマイクロ波の前記薄膜試料20aからの反射波の強度を検出するものである。
また,前記薄膜試料20aは,ガラス等からなる基板20b(基材)の表面に形成されたシリコン等の半導体の薄膜であり,例えば,数nm〜数十nm程度の厚みのポリシリコン(p−Si)や,エピウェハやSOIウェハにおける表層の単結晶シリコン層等である。また,前記基板20bは,例えば,厚み0.7mm程度,大きさ(広さ)が730mm×920mm程度の液晶表示装置用のガラス基板等である。以下,前記基板20bとその表面に形成された前記薄膜試料20aとを併せて試料基板20と称する。
薄膜半導体の結晶性測定装置Xは,図1に示すように,パルスレーザ1,マイクロ波発振器2,方向性結合器3,マジックT(4),第1導波管5a及び第2導波管5b,ミキサ6,信号処理装置7,コンピュータ8,ステージコントローラ9,試料台10,X−Yステージ11,基板保持部12,ミラー13及び集光レンズ14等を備えている。
【0011】
前記パルスレーザ1は,前記薄膜試料20aに照射する励起光を出力する光源であり,例えば,波長349nm,パワー10μJ/pulse,パルス幅10ns程度,ビーム径1.5mm程度のパルス状の紫外光(YLFレーザ第三高調波等)を励起光として出射する半導体レーザ等である。上記波長(紫外光の波長)における浸透長は約10nmであり,前記薄膜試料20a(p−Si薄膜)の膜厚50nmと比較して十分に短い。
前記パルスレーザ1の出力光(励起光)は,前記薄膜試料20aのバンドキャップ以上のエネルギーを有する。ここで,励起光が前記薄膜試料20aのバンドキャップ以上のエネルギーを有することは,前記薄膜試料20aの導電率を変化させるための条件である。また,パルスレーザ1は,前記コンピュータ8から伝送されてくるタイミング信号の入力をトリガとして励起光(パルス光)を出力する。なお,前記タイミング信号は,同時に前記信号処理装置7に対しても伝送される。
前記パルスレーザ1から出力された励起光は,前記ミラー13で反射されるとともに,集光レンズ14(集光手段)によって集光され,前記第1導波管5aに設けられた微小開口5cを通過し,その第1導波管5aの前記薄膜試料20aに近接する端部(開口部)を通じて,前記薄膜試料20aの微小な測定部位(例えば,直径5〜10μm程度のスポット)に対して照射される。このように,前記ミラー13及び集光レンズ14が,パルスレーザ1から出力された励起光を集光して前記薄膜試料20aへ導く。これにより,前記薄膜試料20aにおける微小な励起光照射領域(測定部位)において,励起キャリアが発生する。
【0012】
前記マイクロ波発振器2は,前記薄膜試料20aの測定部位(励起光による励起部を含む部分)に照射するマイクロ波(電磁波)を出力するものである。このマイクロ波発振器2は,例えば,周波数26GHzのガンダイオード等である。
前記方向性結合器3は,前記マイクロ波発振器2から出力されたマイクロ波を2分岐するものであり,分岐後の一方の出力波(以下,第1マイクロ波Op1という)は前記マジックT(4)側へ伝送され,他方の出力波(以下,第2マイクロ波Op2という)は前記ミキサ6のLO入力端へ伝送される。この方向性結合器3は,例えば,10dBカプラ等が採用される。
前記マジックT(4)は,前記第1マイクロ波Op1を2分岐するとともに,2分岐された前記第1マイクロ波各々の前記薄膜試料20aに対する反射波各々の差信号Rt1(以下,反射波差信号という)及び和信号を出力するものである。
前記マジックT(4)により2分岐された第1マイクロ波Op1の一方(以下,第1主マイクロ波Op11という)は,そのマジックT(4)に接続された前記第1導波管5aにより,前記薄膜試料20aの測定部位(励起部を含む部分)に導かれてその先端の開口部から放射される。これにより,前記第1主マイクロ波Op11が,前記薄膜試料20aの測定部位に照射される。さらに前記第1導波管5aは,前記第1主マイクロ波Op11を放射するアンテナ(導波管アンテナ)としての機能に加え,前記測定部位に照射された前記第1主マイクロ波Op11の反射波をその先端開口部で捕捉し,前記マジックT(4)まで折り返し導く(遡って導く)機能も果たす。
一方,前記マジックT(4)により2分岐された前記第1マイクロ波Op1の他方(以下,第1副マイクロ波Op12という)は,前記マジックT(4)に接続された前記第2導波管5bにより,前記薄膜試料20aの測定部位の近傍(励起光による励起部を含まない部分)に導かれてその先端の開口部から放射される。これにより,前記第1副マイクロ波Op12が,前記薄膜試料20aの測定部位の近傍に照射される。さらに前記第2導波管5bは,前記第1副マイクロ波Op12を放射するアンテナ(導波管アンテナ)としての機能に加え,前記測定部位の近傍に照射された前記第1副マイクロ波Op12の反射波をその先端開口部で捕捉し,前記マジックT(4)まで折り返し導く機能も果たす。ここで,前記第1導波管5aがマイクロ波を導く経路長と,前記第2導波管5bがマイクロ波を導く経路長とは等しい(同一経路長)。
【0013】
また,前記第1導波管5a及び前記第2導波管5bにより前記マジックT(4)に導かれた2つの反射波(2分岐後の前記第1マイクロ波Op11,Op12各々が前記薄膜試料20aに反射したもの)の差信号(前記反射波差信号Rt1)が,そのマジックT(4)により出力され,前記ミキサ6のRF入力端に伝送される。
前記ミキサ6は,前記第2マイクロ波Op2及び前記反射波差信号Rt1を混合することによって検波信号Sg1を出力する。この検波信号Sg1は,前記反射波差信号Rt1の強度(前記薄膜試料20aに照射された前記第1マイクロ波Op1の反射波の強度の一例)を表す信号であり,前記信号処理装置7に取り込まれる。前記反射波差信号Rt1は,後述する基板保持部12によって所定位置に保持された前記薄膜試料20aに対する励起光の照射によってその強度が変化する。このように,前記ミキサ6は,前記反射波差信号Rt1の強度を検出するものであり(前記電磁波強度検出手段の一例),このミキサ6の代わりに,マイクロ波を入力してその強度に応じた電気信号(電流或いは電圧)出力するマイクロ波検出器(検波器)が設けられてもよい。
前記ミキサ6により検出される前記反射波差信号Rt1の強度は,前記薄膜試料20aの測定部位に対する励起光の照射により変化する。具体的には,前記反射波差信号Rt1の強度は,励起光(パルス光)の照射によって一時的に強くなった後に減衰する。また,前記測定部位に不純物や欠陥等が多いほど,前記反射波差信号Rt1の強度のピーク値は小さくなり,その減衰時間(キャリア寿命)も短くなる。
【0014】
ここで,励起光(パルス光)の照射により変化する前記反射波差信号Rt1の強度について,そのピーク値や,ピークが生じてから所定レベルに減衰するまでの時間(減衰時間)が,前記薄膜試料20aの結晶性を評価する指標値となる。
しかしながら,例えば,数nm〜数十nm程度の厚みのポリシリコンからなる前記薄膜試料20aに対し,パルス幅10ns程度の励起光を照射した場合,前記反射波差信号Rt1の強度の変化の時定数はナノ秒のオーダーとなる場合がある。そのような時定数の小さな信号の減衰時間を実用的な精度で検出するためには,10MHz以上のサンプリング周波数での信号測定が必要となるが,そのような信号の測定装置は非常に高価であり実用的でない。
これに対し,前記反射波差信号Rt1の強度変化のピーク値は,高価な測定装置を要することなく測定できる。具体的には,前記反射波差信号Rt1に対して所定の遅延回路によって遅延処理を施すことにより,そのピーク値付近についてのみ信号変化の速度を遅延させることができ,実際の信号測定のサンプリング周波数が比較的小さくても,実効的なサンプリング周波数を擬似的に高めることができる。
【0015】
前記信号処理装置7は,前記ミキサ6により検出される前記反射波差信号Rt1の強度の変化のピーク値Spを検出し,その検出結果を前記コンピュータ8に伝送する装置である。より具体的には,前記信号処理装置7は,前記コンピュータ8からの前記タイミング信号の入力をトリガとして前記反射波差信号Rt1の変化を所定時間監視し,その間に得られる前記反射波差信号Rt1のレベルの最高値を前記反射波差信号Rt1の強度の変化のピーク値Spとして検出する。ここで,前記信号処理装置7は,前記反射波差信号Rt1に対して遅延処理を施す遅延回路を備え,遅延処理後の信号に対して所定のサンプリング周波数で信号強度を順次検出し,その検出値の変化から前記反射波差信号Rt1の強度の変化のピーク値Spを検出する。
前記コンピュータ8は,CPU,記憶部,入出力信号のインターフェース等を備え,CPUが所定のプログラムを実行することによって各種の処理を実行する。
例えば,前記コンピュータ8は,前記パルスレーザ1及び前記信号処理装置7に対して励起光の出力タイミングを表す前記タイミング信号を出力するとともに,前記信号処理装置7によって検出される前記反射波差信号Rt1のピーク値Spを取り込んで当該コンピュータ8が備える記憶部に記録する。記録された前記反射波差信号Rt1は,前記薄膜試料20aの結晶性評価に用いられる。
また,前記ステージコントローラ9は,コンピュータ8からの指令に従ってX−Yステージ11を制御することにより,前記薄膜試料20aにおける測定部位の位置決め制御を行う。
【0016】
前記試料台10は,アルミニウム,ステンレス或いは鉄等の金属又はその他の導体からなる板状部材(導体部材)であり,その上側に前記基板保持部12が設けられ,さらにその基板保持部12の上に前記試料基板20が載置される。これにより,前記試料台10は,前記薄膜試料20aを含む前記試料基板20に対して前記第1マイクロ波Op11,Op12が照射される側と反対側(前記試料基板20の下側)に配置される。
前記基板保持部12は,前記試料台10に対してその上側に固定された固形の誘電体であり,前記試料台10(導体部材)の上面と前記薄膜試料20aの測定部位(前記薄膜試料20aの表面)との間の距離が,その間の媒質における前記第1マイクロ波Op1の波長λmの四分の一の距離又はその距離に波長の整数倍を加えた距離(λm/4+n・λm:nは0以上の整数)となるように,前記薄膜試料20aを含む前記試料基板20を保持するものである(前記試料保持手段の一例)。図1に示すように,前記基板保持部12は,前記基板20b(基材)と前記試料台10(導体部材)との間に挿入される固形の誘電体であり,その材質は,例えば,ガラスやセラミック等の比較的屈折率の大きな誘電体である。これにより,前記基板保持部12を媒質とするマイクロ波の波長が短くなり,前記基板保持部12としてより厚みの薄い軽量なものを採用できる。
なお,前記基板保持部12として複数種類の材質からなる誘電体を採用することも考えられるが,異なる材質の界面でのマイクロ波の反射等による損失を考慮すると,前記基板保持部12は単一材質の誘電体を採用することが望ましい。
【0017】
また,前記基板保持部12は,上方から(マイクロ波の照射方向から)見て前記薄膜試料20全体を含む大きさ(例えば,約1m×1m以上の大きさ)に形成されている。ここで,前記基板保持部12は,例えば,前記試料台10に形成された窪み(凹部)に嵌合されることにより,或いは所定の固定具を介して前記試料台10にビス止めされることにより,前記試料台10に対して固定される。
液晶表示装置用のガラス基板等の量産品である前記試料基板20は,その厚み(前記基板20b及び前記薄膜試料20aの厚み)が予めわかっているため,前記基板保持部12の厚みは,前記試料基板20の既知の厚みに応じて決定される。また,厚みが異なる複数種類の前記試料基板20が測定対象となる場合は,厚みが異なる複数種類の前記基板保持部12を用意して,それを前記試料台10に対して着脱自在(交換可能)に構成し,前記試料基板20の厚みに応じた前記基板保持部12を前記試料台10に対して装着すればよい。
例えば,マイクロ波の周波数が2.65GHz,前記基板20b及び前記基板保持部12(マイクロ波の媒質)が屈折率2.35のガラスであり,前記基板20bの厚みが0.7mmである場合,ガラス媒質中におけるマイクロ波の波長λmが4.81mmとなるので,前記基板保持部12の厚みを0.5mm程度(≒4.81/4−0.70)とすればよい。
【0018】
図3は,図1に示した薄膜半導体の結晶性測定装置Xにおける,前記薄膜試料20aの測定部位から試料台10までの距離とその測定部位におけるマイクロ波の強度との関係を周知の電磁界シミュレーションにより求めた結果を表すグラフである。
シミュレーションの条件は,マイクロ波の周波数が2.65GHz,前記基板20b及び前記基板保持部12(マイクロ波の媒質)が屈折率2.35のガラスである。この場合,ガラス媒質中におけるマイクロ波の波長λmが4.81mmとなる。なお,図3において,前記薄膜試料20aの測定部位から試料台10までの距離を「ガラス厚さ」と表記し,前記薄膜試料20aの測定部位におけるマイクロ波の強度を「信号強度」と表記している。この信号強度は,前記反射波差信号Rt1のピーク値Spとほぼ比例する。
図3からわかるように,前記ガラス厚さが約1210μmのときに前記信号強度がピークとなる。即ち,前記基板20bの厚みが0.7mmである場合,前記基板保持部12の厚みを0.51mmとすれば前記信号強度がピークとなる。また,そのピーク値は,前記試料基板20を前記試料台10上に直接載置する場合(ガラス厚さが700μm)に比べて約5倍となる。また,図3には示されていないが,前記ガラス厚さが(1210+4810×i[μm]:iは1以上の整数)である場合も,その値は若干下がるものの前記強度がピークとなる。
図3から,前記基板保持部12を設けて測定部位と試料台10との距離を約(1/4λm+n・λm)とすることにより,測定感度が格段に向上することがわかる。
【0019】
前記X−Yステージ11は,前記基板保持部12上に前記試料基板20が載置された状態で,前記試料台10をほぼ水平な二次元方向に移動させて位置決めすることにより,前記薄膜試料20aに対する前記第1マイクロ波Op11,Op12及び励起光の照射位置,即ち,前記薄膜試料20aにおける測定部位の位置決めを行うものである。このX−Yステージ11によって前記測定部位の位置決めを行うごとに,前記第1マイクロ波Op11,Op12及び励起光の照射による前記反射波差信号Rt1のピーク値Spの測定を行うことにより,その測定値に基づいて,前記薄膜試料20aにおける結晶性の分布を評価することができる。なお,前記X−Yステージ11は,前記第1マイクロ波Op11,Op12及び励起光の照射方向に対して垂直な方向に板状の前記試料台10,前記基板保持部12及び前記試料基板20を移動させるため,その移動によって前記試料台10の上面と前記薄膜試料20aの測定部位との間の距離(λm/4+n・λm)は変化しない。
【0020】
次に,図2に示すフローチャートを参照しつつ,薄膜半導体の結晶性測定装置Xによる前記薄膜試料20aの測定手順について説明する。以下,ステップS1,S2,…は処理手順(ステップ)の識別符号を表す。また,コンピュータ8が実行する処理は,コンピュータ8が備えるCPU(プロセッサ)が所定のプログラムを実行することにより実現される。
まず,コンピュータ8は,前記ステージコントローラ9を通じて前記X−Yステージ11を制御することにより,前記薄膜試料20aの測定位置(励起光の照射位置)を設定する(S1)。
次に,コンピュータ8は,前記マイクロ波発振器2を動作させ,前記薄膜試料20aの測定部位及びその近傍位置に,前記第1導波管5a及び前記第2導波管5bそれぞれを通じて前記第1主マイクロ波Op11及び前記第1副マイクロ波Op12を照射させる(S2,電磁波照射手順の一例)。このとき,前記薄膜試料20aに対して前記第1マイクロ波Op11,OP12が照射される側と反対側に導体部材である前記試料台10が配置されており,また,前記基板保持部12にり,前記試料台10の上面と前記薄膜試料20aの測定部位との間の距離が(λm/4+n・λm:nは0以上の整数)の距離となるように前記薄膜試料20aが保持されている。
さらに,コンピュータ8は,前記パルスレーザ1及び前記信号処理装置7に前記タイミング信号を出力することにより,励起光(パルス光)を前記薄膜試料20aの測定部位に照射させるとともに,前記ミキサ6及び前記信号処理装置7によって検出される前記反射波差信号Rt1の強度変化のピーク値Spを取り込み,そのピーク値Spを記憶部に記憶させる(S3)。なお,このステップS3において,前記ピーク値Spの検出に用いる信号値としては,パルス状の励起光を1回照射して得られる前記反射波差信号Rt1の信号値を用いることの他,パルス状の励起光を複数回照射して得られる前記反射波差信号Rt1の信号値の積分値を用いることも考えられる。但し,前記反射波差信号Rt1の変化は比較的大きいので,前記積分値を用いる場合でも,ごく少数回の励起光照射による前記積分値で足りる。このため,1箇所の測定部位についての測定時間はごく短時間で済む。
次に,コンピュータ8は,予め定められた測定位置(測定部位)全てについて,当該薄膜試料20aの測定が終了したか否かを判別する(S4)。
以降,コンピュータ8は,全測定位置についての測定が終了したと判別するまで,前述したステップS1〜S4の処理を繰り返す。
そして,コンピュータ8は,全測定位置についての測定が終了したと判別した場合,ステップS3で得た前記反射波差信号Rt1の強度変化のピーク値Spに基づいて,前記薄膜試料20aの結晶性の評価指標値を算出し,その算出結果をコンピュータ8の記憶部に記録するとともに,所定の外部装置(例えば,表示装置等)に出力し(S5),測定処理を終了させる。
【0021】
以上に示したように,半導体薄膜測定装置Xは,導体部材である前記試料台10の表面と前記薄膜試料20aの測定部位との間の距離を,照射する第1マイクロ波Op11,Op12の波長をλmとしたときに(λm/4+n・λm)の距離となるように前記薄膜試料20aを保持する。これにより,前記第1マイクロ波Op11,Op12が,前記薄膜試料20aに対する照射波と前記試料台10からの反射波との干渉により,前記試料台10の上面の位置で節,前記測定部位の位置で腹となる定在波となる。このため,前記第1主マイクロ波Op11(定在波)は,最も振幅が大きい腹の位置で前記測定部位における特性変化の影響を受けるため,その反射波の変化,即ち,励起光照射による前記反射波差信号Rt1の変化が大きくなって測定感度が向上する。さらに,測定感度を上げるために多数回分の測定値を積分する必要がなく,ごく短時間での測定が可能である。特に,1枚の前記試料基板20について,多数箇所の測定部位を順次測定する場合には,1箇所の測定時間の短縮が,前記試料基板20の測定時間全体の短縮に大きく寄与する。なお,前記ステージコントローラ9の制御によって前記X−Yステージ11を2次元方向に走査させることにより,前記試料基板20のマッピング測定が可能である。
また,前記第1導波管5a及び前記第2導波管5bによって補足される2つの前記反射波は,前記薄膜試料20aの変位(振動)等によって生じるノイズの影響を同程度に受ける。このため,前記マジックT(4)から出力される前記反射波差信号Rt1は,ノイズ成分が相殺されたS/N比の高い信号となる。従って,前記マジックT(4)により出力される前記反射波差信号Rt1の強度を検出すれば,励起光照射による前記測定部位の微小な変化を高感度で測定することができる。
さらに,薄膜半導体の結晶性測定装置Xにおいて用いられる励起光(前記パルスレーザ1の出力光)が紫外光であるため,前記薄膜試料20aの厚みに対する励起光の波長が十分に短く,比較的低パワーの光で効率的に前記薄膜試料20aを励起できる。その結果,励起光による前記薄膜試料20aの組成破壊を防止でき,また,装置(光源)のコスト低減につながる。
【産業上の利用可能性】
【0022】
ポリシリコンや単結晶シリコン等の半導体からなる薄膜試料の結晶性を評価するための測定装置に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態に係る薄膜半導体の結晶性測定装置Xの概略構成を表す図。
【図2】薄膜半導体の結晶性測定装置Xによる測定手順を表すフローチャート。
【図3】薄膜半導体の結晶性測定装置Xにおける薄膜試料の測定部位から試料台までの距離とその測定部位におけるマイクロ波の強度との関係のシミュレーション結果を表すグラフ。
【符号の説明】
【0024】
X :薄膜半導体の結晶性測定装置
1 :パルスレーザ(励起光の光源)
2 :マイクロ波発振器
3 :方向性結合器
4 :マジックT
5a:第1導波管(導波管アンテナ)
5b:第2導波管(導波管アンテナ)
6 :ミキサ
7 :信号処理装置
8 :コンピュータ
9 :ステージコントローラ
10:試料台
11:X−Yステージ
12:基板保持部
13:ミラー
14:集光レンズ
20:試料基板
20a:薄膜試料
20b:基板
S1,S2,…:処理手順(ステップ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体からなる薄膜試料の測定部位に対して励起光及び電磁波を照射し,前記励起光の照射により変化する前記電磁波の前記薄膜試料からの反射波の強度を検出し,その検出データに基いて前記薄膜試料の結晶性を測定する薄膜半導体の結晶性測定装置であって,
前記薄膜試料に対して前記電磁波が照射される側と反対側に配置された導体部材と,
前記導体部材の表面と前記薄膜試料の測定部位との間の距離が,その間の媒質における前記電磁波の波長の略四分の一の距離又はその距離に前記電磁波の波長の整数倍を加えた距離となるように前記薄膜試料を保持する試料保持手段と,
前記試料保持手段により保持された前記薄膜試料に対する前記励起光の照射によって変化する,前記電磁波の前記薄膜試料からの反射波の強度を検出する電磁波強度検出手段と,
を具備してなることを特徴とする薄膜半導体の結晶性測定装置。
【請求項2】
前記薄膜試料が所定の基材の表面に形成されており,
前記試料保持手段が,前記基材と前記導体部材との間に挿入される固形の誘電体である請求項1に記載の薄膜半導体の結晶性測定装置。
【請求項3】
前記励起光が紫外光である請求項1又は2のいずれかに記載の薄膜半導体の結晶性測定装置。
【請求項4】
前記電磁波を2分岐するとともに2分岐された前記電磁波各々の前記薄膜試料に対する反射波各々の差信号を出力するマジックTと,
前記マジックTにより2分岐された前記電磁波の一方を前記測定部位に導いて放射するとともにその反射波を捕捉して前記マジックTまで折り返し導く第1の導波手段と,
前記マジックTにより2分岐された前記電磁波の他方を前記測定部位の近傍まで前記第1の導波手段と同一経路長で導いて放射するとともにその反射波を捕捉して前記マジックTまで折り返し導く第2の導波手段と,を具備し,
前記電磁波強度検出手段が,前記マジックTにより出力される前記反射波の差信号の強度を検出してなる請求項1〜3のいずれかに記載の薄膜半導体の結晶性測定装置。
【請求項5】
前記電磁波強度検出手段により検出される前記反射波の強度の変化のピーク値を検出する強度ピーク値検出手段を具備してなる請求項1〜4のいずれかに記載の薄膜半導体の結晶性測定装置。
【請求項6】
前記薄膜試料がポリシリコン又は単結晶シリコンからなる半導体薄膜である請求項1〜5のいずれかに記載の薄膜半導体の結晶性測定装置。
【請求項7】
半導体からなる薄膜試料の測定部位に対して励起光及び電磁波を照射し,前記励起光の照射により変化する前記電磁波の前記薄膜試料からの反射波の強度を検出し,その検出データに基いて前記薄膜試料の結晶性を測定する薄膜半導体の結晶性測定方法であって,
前記薄膜試料に対して前記電磁波が照射される側と反対側に導体部材が配置された状態で,所定の試料保持手段により,前記導体部材の表面と前記薄膜試料の測定部位との間の距離が,その間の媒質における前記電磁波の波長の略四分の一の距離又はその距離に前記電磁波の波長の整数倍を加えた距離となるように前記薄膜試料を保持させ,その状態で前記薄膜試料の測定部位に対して前記励起光及び前記電磁波を照射し,前記励起光の照射により変化する前記電磁波の前記薄膜試料からの反射波の強度を所定の電磁波強度検出手段により検出することを特徴とする薄膜半導体の結晶性測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−191123(P2008−191123A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−28764(P2007−28764)
【出願日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【出願人】(000130259)株式会社コベルコ科研 (174)