説明

薄膜半導体チップ

【課題】構造高さの小さな薄膜半導体チップを後にウェハレベルで簡単にテストでき、また、構造高さが小さく、良好な機械的安定性を有する薄膜発光ダイオードチップを提供する。
【解決手段】薄膜半導体チップ1が、電磁放射の形成に適した活性層体2と、活性層体2上の導電性かつ反射性のコンタクト材料層4と、導電性かつ反射性のコンタクト層4上のフレキシブルな導電性シート6から成る支持体層とを含み、導電性シート6はカーボンシートである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜半導体チップに関する。
【背景技術】
【0002】
薄膜半導体チップは例えば欧州出願第0905797号明細書から公知である。この種の薄膜半導体チップの製造では、光子の放出に適した活性層列を成長基板上に成長させる。成長基板はたいていの場合活性層列で形成された光子の一部を吸収してしまうので、光効率を高めるために、活性層列は成長基板から分離され、他の支持体へ被着される。支持体と活性層列とのあいだに反射層が設けられる。活性層列と支持体との接合は接着またははんだ付けにより行われる。通常はGaAsウェハまたはGaウェハなど、剛性の支持体が使用される。ただしこれらの支持体には、破損の危険のために厚さを任意に低減することができないという欠点がある。特に従来の製造方法によって100μmより小さい厚さの支持体を実現することは困難である。このことは薄膜半導体チップの構造高さを小さくすることに対する障害となっている。
【0003】
また、公知の薄膜半導体チップの別の欠点として、活性層列を基板から支持体へ移す際の取り扱いの困難さがある。
【0004】
この問題を回避するため、独国公開第10040448号明細書には、裏面のコンタクト材料層上に補強層および補助支持体層を被着する手段が提案されている。これらの層は従来の製造方法において使用されている機械的な支持体に置換され、これにより活性層列を簡単に取り扱うことができる。ただし、この手段では、活性層列を補助支持体へ移した後にウェハレベルで薄膜半導体チップの機能をテストすることが不可能となるか、可能であってもきわめてコストがかかるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】欧州出願第0905797号明細書
【特許文献2】独国公開第10040448号明細書
【特許文献3】国際公開第98/12757号明細書
【特許文献4】米国特許第5695847号明細書
【特許文献5】米国特許第5849130号明細書
【特許文献6】国際公開第98/14936号明細書
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】I.Schnitzer et al., Appl.Phys.Lett. 63(16), 18.Oct.1993の2174頁−2176頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の基礎とする課題は、構造高さの小さな半導体チップを簡単に製造できる薄膜半導体チップの製造方法を提供し、後に薄膜半導体チップをウェハレベルで簡単にテストできるようにすることである。また本発明の別の課題として、構造高さが小さく、良好な機械的安定性を有する薄膜発光ダイオードチップを提供することが挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は請求項1記載の薄膜半導体チップによって解決される。本発明の薄膜半導体チップの有利な実施形態は従属請求項2−11に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1A】本発明の方法の第1の実施例の第1の段階におけるウェハ積層体の概略的な断面図である。
【図1B】本発明の方法の第1の実施例の第2の段階におけるウェハ積層体の概略的な断面図である。
【図1C】本発明の方法の第1の実施例の第3の段階におけるウェハ積層体の概略的な断面図である。
【図1D】本発明の方法の第1の実施例の第4の段階におけるウェハ積層体の概略的な断面図である。
【図1E】本発明の方法の第1の実施例の第5の段階におけるウェハ積層体の概略的な断面図である。
【図1F】本発明の方法の第1の実施例の第6の段階におけるウェハ積層体の概略的な断面図である。
【図2A】本発明の方法の第2の実施例の第1の段階におけるウェハ積層体の概略的な断面図である。
【図2B】本発明の方法の第2の実施例の第2の段階におけるウェハ積層体の概略的な断面図である。
【図2C】本発明の方法の第2の実施例の第3の段階におけるウェハ積層体の概略的な断面図である。
【図3A】本発明の方法の第3の実施例の第1の段階におけるウェハ積層体の概略的な断面図である。
【図3B】本発明の方法の第3の実施例の第2の段階におけるウェハ積層体の概略的な断面図である。
【図4】チップ支持体上に被着され、電気コンタクトの設けられた本発明の薄膜半導体チップの概略的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の薄膜半導体チップの製造方法は、電磁放射の形成に適した活性層列(エピタキシ層列)を成長基板上に被着するステップ、反射性かつ導電性のコンタクト材料層を活性層列上に形成するステップ、活性層列およびコンタクト材料層をパターニングして活性層体およびコンタクト層を含む相互に分離したスタックを成長基板上に生じさせるステップ、フレキシブルな導電性シートを反射性かつ導電性のコンタクト層上に被着するステップ、および、成長基板を少なくとも部分的に除去するステップを有する。
【0011】
これに代えて、例えばマスク技術により、コンタクト層をラテラル方向にパターニングされた状態で被着し、続いて各コンタクト層がそれぞれの活性層体の上部に存在するように、下方の活性層列のみをパターニングしてもよい。コンタクト材料層は有利には金属を含む。
【0012】
本発明の方法は、コンタクト材料層の設けられた薄膜半導体チップの裏面がフレキシブルな導電性シートを介して電気的に接続され、その後、対向側の表面のコンタクト層に対してさらにコンタクトを形成することによりウェハレベルでのテストが容易となるので、有利である。
【0013】
フレキシブルな導電性シートを補助支持体層として使用することにより、このシートの高い延性に基づいて、例えば粒子状の不純物がシートと活性層体とのあいだに入り込んだ場合にも、不純物の周囲の障害半径がきわめて小さくなるという利点が得られる。したがって不純物による効率の損失が有利に低減される。
【0014】
また、支持体としてフレキシブルな導電性シートを使用することにより、薄膜半導体チップの構造高さを小さくすることができる。なぜなら、フレキシブルな導電性シートの厚さは、厚さを低減すると一般に破損の危険が増大してしまう剛性の支持体とは異なって、小さくすることができるからである。
【0015】
薄膜半導体チップの構造高さが小さくなるので、後にモジュールケーシング内の薄膜半導体チップへ付加的な要素を配置することが容易となる。例えば、薄膜半導体チップから発光された放射の波長を変換する発光物質を付加することができる。こうしたいわゆる波長変換材料については例えば国際公開第98/12757号明細書に説明されており、この刊行物を本願の参考文献とする。さらに、放射を調整するレンズなどの光学素子を直接に薄膜半導体チップ上に被着することもできる。
【0016】
本発明の方法によれば、例えば薄膜発光ダイオードチップ(薄膜LEDチップと略称することもある)が製造される。
【0017】
本発明の薄膜LEDチップでは、支持体エレメントに向かって電磁放射を形成するエピタキシ層列の第1の主表面に反射層が被着されるかまたは形成されており、この反射層によりエピタキシ層列で形成された電磁放射の少なくとも一部が反射され、エピタキシ層列は20μm以下、有利には10μmの厚さを有する。
【0018】
特に有利には、エピタキシ層列には混合構造を有する少なくとも1つの面を備えた少なくとも1つの半導体層が含まれており、理想的なケースではこの面によりエピタキシ層列内にほぼエルゴード的な光分布が生じる。つまりこの光分布は最大限にエルゴード的な確率分散特性を有している。
【0019】
この種の薄膜LEDチップの原理については例えばI. Schnitzer et al., Appl. Phys. Lett. 63 (16), 18. Oct. 1993の2174頁〜2176頁に記載されており、この刊行物を本願の参考文献とする。
【0020】
薄膜LEDチップは良好な近似によればランベルト表面放射器である。
【0021】
こうした薄膜半導体チップは有利には窒化物‐化合物半導体材料をベースにしている。「窒化物‐化合物半導体材料ベース」とは、本発明では、放射を発生するエピタキシ層またはこのエピタキシ層の少なくとも一部が窒化物‐III/V化合物半導体材料、有利にはAlGaIn1-n-mN[0≦n≦1,0≦m≦1,n+m≦1]であることを意味している。ここで、当該の材料は必ずしも当該の式に基づく数学的に厳密な組成を有していなくてもよい。むしろこの材料は、AlGaIn1-n-mN材料の物理的特性を大幅に変化させないかぎり、1つまたは複数のドープ物質や付加的な成分を有していてよい。ただしわかりやすくするため、部分的に微量の他の材料によって置換可能であるにしても、上述の式には結晶格子の主要な構成要素Al,Ga,In,Nだけを表してある。
【0022】
本発明の方法の有利な実施形態では、フレキシブルな導電性シートはカーボンシートである。こうしたカーボンシートは例えば米国特許第5695847号明細書および米国特許第5849130号明細書から公知であり、これらの刊行物を本願の参考文献とする。
【0023】
このカーボンシートは安価であるうえ、有利には高い熱伝導性および導電性を有し、厚さも小さい。当該のカーボンシートは、比較的小さな圧力および温度を印加するのみで、エピタキシ層およびコンタクト層を含むスタックに接合できるという利点を有する。これにより接合ステップにおける活性層体の破損の危険が低減される。また最下層にカーボンシートを含む薄膜半導体チップは従来の方法で容易にケーシング内に収容して電気コンタクトを形成することができる。さらに、カーボンシートの高い熱伝導性から、有利には、薄膜半導体チップの動作時に生じる熱を効果的に放散させることもできる。
【0024】
有利には、導電性シートは100μmより小さい厚さを有する。このシートは剛性の支持体とは異なってフレキシブルであるため、小さな支持体厚さを実現することができる。
【0025】
薄膜半導体チップを腐食から保護するために、パターニングの際に露出された活性層体の側面の少なくとも一部にパシベーション層が形成される。このパシベーション層は例えば窒化ケイ素を含む。パシベーション層は保護機能のほか、例えば電気的絶縁などの他の機能を有してもよい。
【0026】
本発明の方法の別の有利な実施形態では、導電性の補強層が反射性かつ導電性のコンタクト層上に被着される。補強層は例えば金属を含む。当該の補強層は、一方では活性層体の安定化に用いられ、他方では薄膜半導体チップの裏面での後の電気コンタクト形成に用いられる。
【0027】
別の有利な実施形態では、成長基板を除去する前に剛性の補助支持体とフレキシブルな導電性シートとが接合される。当該の付加的な剛性の補助支持体によって積層体が補強されるので、これを通常のテスト装置またはプロセス装置へ収容してウェハレベルで処理することができるようになる。
【0028】
積層体と剛性の補助支持体とを接合する層としてカーボンシートを使用することにより、特に有利には、多くのプロセステクノロジに対して互換性が得られる。例えばカーボンシートは接着剤層とは異なり、真空中にあっても、場合により障害となるガス状物質を周囲へ放出しない。
【0029】
成長基板を除去した後、従来の手法では、活性層体のうち成長基板のあった側に第2の導電性のコンタクト層が被着される。第2の導電性コンタクト層は例えば金属を含む。この第2のコンタクト層は薄膜半導体チップの第2の電気コンタクト位置となり、その上に例えばボンディングワイヤが被着される。
【0030】
さらに有利には、第2の電気コンタクト位置上に中間支持体が被着され、フレキシブルな導電性シートが除去される。この場合、薄膜半導体チップは相互に分離されて中間支持体上に固定され、例えば従来のピックアンドプレイス装置により容易に組み立てられる。中間支持体は第2のシート、例えばソーカットシートである。このようなソーカットシート上に半導体チップがウェハ積層体の形態で固定され、その後、例えばダイシングソーによってダイシングされる。
【0031】
有利には、後に薄膜半導体チップとなる側面全体にパシベーション層が設けられる。これは有利には、導電性シートと剛性の補助支持体とが接合されて成長基板が剥離された後に行われる。剛性の補助支持体により積層体が安定化され、通常のプロセス装置において当該の積層体にパシベーション層を設けることができるからである。
【0032】
薄膜半導体チップのダイシングは、有利には、第2の中間支持体、例えばシートまたはソーカットシートを活性層体のうち成長基板のあった側に被着し、フレキシブルな導電性シートを除去することによって行われる。本発明の薄膜半導体チップは、電磁放射の形成に適した活性層体、この活性層体上に配置された反射性かつ導電性のコンタクト層、および、このコンタクト層上に配置されたフレキシブルな導電性シートである支持体層を有する。
【0033】
このような薄膜半導体チップは構造高さが150μmより小さく、特に有利には100μmより小さいという利点を有する。したがって破損の危険なくチップをケーシング内に収容することができる。構造高さが小さいため、当該の薄膜半導体チップは、特に波長変換材料とともにきわめて小さい寸法のケーシングへ収容するのに適している。
【0034】
また、このような薄膜半導体チップでは、フレキシブルな導電性シートを介して裏面で容易に電気コンタクトを形成することができる。
【0035】
フレキシブルなシートを使用することにより、取り扱いの際や薄膜半導体チップの組み立ての際の破損の危険が低減される。
【0036】
特に有利な実施形態では、フレキシブルな導電性シートはカーボンシートである。カーボンシートは特に導電性および熱伝導性が高く、そのうえ安価である。
【0037】
別の有利な実施形態では、反射性かつ導電性のコンタクト材料層上に導電性の補強層が設けられる。当該の補強層は、一方では活性層体の安定化のために、他方では薄膜半導体チップの裏面でのフレキシブルな導電性シートを介した電気コンタクト形成のために用いられる。
【0038】
反射性かつ導電性のコンタクト層および導電性の補強層は、有利には、金属を含む。
【0039】
さらに、本発明の薄膜半導体チップの側面には有利には全面にわたってパシベーション層が設けられる。このような薄膜半導体チップは特にボンディングワイヤなしで電気コンタクトを形成するのに適している。したがってこうした薄膜半導体チップは、裏面で、チップ支持体上に設けられるかまたはリードフレームのチップ支持体そのものとして構成された電気的な導体路端子面に被着されることにより、コンタクトを形成する。薄膜半導体チップの表面では全面にわたる導電層またはパターニング導電層によってコンタクトが形成される。この導電層は、有利には、薄膜半導体チップから発光された電磁放射を良好に透過させる。
【実施例】
【0040】
薄膜半導体チップおよびその製造方法のさらなる利点、有利な実施形態および構成は、図1A−図1F,図2A−図2C,図3A,図3B,図4に則して説明する以下の実施例から得られる。
【0041】
図1A−図1Fには、本発明の方法の第1の実施例の種々の段階におけるウェハ積層体の概略的な断面図が示されている。図2A−図2Cには、本発明の方法の第2の実施例の種々の段階におけるウェハ積層体の概略的な断面図が示されている。図3A,図3Bには、本発明の方法の第3の実施例の種々の段階におけるウェハ積層体の概略的な断面図が示されている。図4には、チップ支持体上に被着され、電気コンタクトの設けられた本発明の薄膜半導体チップの概略的な断面図が示されている。
【0042】
実施例および図面において、同一の構成要素または同じ働きをもつ構成要素にはそれぞれ同じ参照符号が付されている。図中の要素、特に層厚さやその比は基本的には縮尺通りに描かれていない。むしろわかりやすくするために部分的に強調して大きめに描かれているものと解されたい。
【0043】
実施例1
実施例1の方法では、図1Aに示されているように、第1のステップで活性層列20が成長基板3上に被着される。これは、有利な実施例では、例えば窒化物‐III/V化合物半導体材料、例えばAlGaIn1−n−mN[0≦n≦1,0≦m≦1,n+m≦1]から成る複数の層をサファイア基板またはSiC基板上にエピタキシャル成長させることにより行われる。このことはもちろん、In,Al,Gaおよび/またはNのほかの元素が組成に含まれるケースを排除しない。
【0044】
電磁放射の形成に適した活性層列は、例えば従来のpn接合部、ダブルヘテロ構造、単一量子井戸構造(SQW構造)あるいは多重量子井戸構造(MQW構造)を有するものとすることができる。この種の構造は当業者に周知であるので、ここではこれ以上詳細に説明しない。上述の多重量子井戸構造は例えば国際公開第01/39282号明細書に説明されており、この刊行物を本願の参考文献とする。
【0045】
続いて、図1Bに示されているように、活性層列20上に反射性かつ導電性のコンタクト材料層40が形成される。当該のコンタクト材料層40は、後の薄膜半導体チップ1において、特に、活性層列20からコンタクト材料層40の方向へ発光された放射を反射して薄膜半導体チップ1の反対側の出力部へ向かわせ、放射出力効率を高める役割を有する。
【0046】
コンタクト材料層40は全面にわたってAg,AlまたはAuなどの金属材料を蒸着された状態で含むことができる。また複数の誘電層および集積された電気コンタクトから成る誘電性のリフレクタを用いてもよい。
【0047】
適切なリフレクタは例えば国際公開第01/82384号明細書から公知であり、この刊行物を本願の参考文献とする。
【0048】
同時に、コンタクト材料層40は活性層列20に対する裏面のコンタクト層として機能する。活性層列20および反射性かつ導電性のコンタクト材料層40はともに例えば厚さ8μmである。
【0049】
次のステップでは、活性層列20およびコンタクト材料層40を有する成長基板上の積層体から、図1Cに示されているように、相互に分離した活性層体2および反射性かつ導電性のコンタクト層4が形成される。これは例えばウェットケミカルエッチングまたはドライエッチングにより行われる。
【0050】
これに代えて、コンタクト材料層40をマスクによりラテラル方向にパターニングされた状態で活性層列20上に被着し、続いて活性層列20をパターニングして活性層体2が生じるようにしてもよい。これにより1つの活性層体2の上に1つずつ反射性かつ導電性のコンタクト層4が存在するようになる。
【0051】
続いて反射性かつ導電性のコンタクト層4上にフレキシブルな導電性シート6が被着される。このシートは例えば厚さ30μm〜80μmのカーボンシートである。
【0052】
カーボンシートは、温度≦150℃および比較的小さな圧力約1barでスタック21に接合可能であるという利点を有する。
【0053】
接合プロセスを実施するために、カーボンシートは支持体上に被着される。カーボンシートがプロセス中に当該の支持体と接合してしまわないようにするために、例えばテフロンから成る反接着シートを支持体とカーボンシートとのあいだに挿入することができる。こうした反接着シートは、接合プロセス中、カーボンシートが意図せず他の面と接合してしまう危険のある箇所であれば、他の位置で使用することもできる。
【0054】
次のステップでは活性層列20の成長に用いられた成長基板3が例えばレーザーリフトオフプロセスにより除去される。レーザーリフトオフプロセスについては例えば国際公開第98/14936号明細書に説明されている。こうして、図1Eに示されているように、活性層体2および反射性かつ導電性のコンタクト層4はフレキシブルな導電性シート6上に存在することになる。
【0055】
付加的なステップとして、図1Fに示されているように、スタック21のパターニング後に、スタック21の側面の少なくとも一部にパシベーション層5を形成することもできる。このパシベーション層は例えば窒化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウムまたは窒化酸化ケイ素から成る。
【0056】
薄膜半導体チップ1は、シート6をレーザーカット、ウォータージェットカットまたはソーカットなどの従来の手法で分離することにより、ダイシングされる。
【0057】
裏面にカーボンシート6の設けられた薄膜半導体チップ1は、圧力および温度を印加することにより、カーボンシート6を介して容易にケーシングに固定することができる。これに代えて、このような薄膜半導体チップ1を接着によりケーシングに接合することもできる。
【0058】
実施例2
実施例2の最初の3つのステップは実施例1と同様であり、活性層列20の形成、導電性のコンタクト材料層40の被着、および、これら2つの層からのスタック21のパターニングが行われる。実施例1とは異なり、導電性の補強層7がコンタクト層4上に被着されており、したがってスタック21は少なくとも3つの層を含む。導電性の補強層7は例えば電気化学的に被着された金属材料から成る。
【0059】
活性層2,反射性かつ導電性のコンタクト層4および金属の補強層7を含むスタック21の厚さは、例えば20μm〜25μmである。
【0060】
図2Aに示されているように、活性層列20および反射性かつ導電性のコンタクト材料層40をパターニングして相互に分離したスタック21が形成され、金属の補強層7が被着され、その後、パシベーション層5がスタック21の露出面に被着され、さらにカーボンシート6がスタック21に向かう側の金属の補強層7に被着される。
【0061】
このようにして形成された積層体を補強するために、カーボンシート6の裏面に、圧力および温度を加えることにより、別の剛性の安定な補助支持体8が被着される。補助支持体の厚さは例えば100μm〜150μmである。それよりも厚い支持体を使用してもよい。
【0062】
当該の剛性の補助支持体8により、積層体の取り扱いおよび従来のLED製造装置におけるさらなる処理が容易になる。剛性の補助支持体がモリブデン、タンタルまたはタングステンなどの導電性材料から成る場合、後に生じる薄膜半導体チップの裏面にウェハレベルで電気コンタクトを形成することができる。これにより、1つのウェハ上に製造された全ての薄膜半導体チップを従来の測定装置によってテストすることができる。
【0063】
次のステップでは、図2Bに示されているように、成長基板3が除去され、活性層体2のうち成長基板があった側に導電性の金属のコンタクト位置9が形成される。このコンタクト位置は例えば蒸着されたAg,AuまたはAlを含む。
【0064】
その後、活性層体2,導電性のコンタクト層4,補強層7,カーボンシート6およびコンタクト位置9から成る全ての薄膜半導体チップがウェハ積層体として従来のテスト装置でテストされる。
【0065】
次いで、図2Cに示されているように、導電性のコンタクト位置9の表面に中間支持体10が被着される。これはウェハのソーカットの際に使用されるシートである。カーボンシート6を例えばウェットケミカルプロセスによって選択的に除去することにより、薄膜半導体チップは再び剛性の補助支持体8から取り外され、同時にダイシングされる。中間支持体10上の個々の薄膜半導体チップは、従来のプロセス、例えばリードフレームおよび/またはケーシングボディへの実装に対して準備される。
【0066】
実施例3
実施例1,2と同様に、ウェハ積層体にスタック21が製造される。スタック21は活性層2,反射性かつ導電性のコンタクト層4,付加的な導電性の補強層7を含む。成長基板3の除去後、スタック21は導電性のシート6上に存在しており、この導電性のシート6は剛性の補助支持体8に接合されている。
【0067】
図3Aに示されているように、活性層体2,反射性かつ導電性のコンタクト層4および金属の補強層7から成る薄膜半導体チップの側面全体にわたってパシベーション層5を被着することができる。
【0068】
有利にはこのとき、パシベーション層5は、活性層体2,反射性かつ導電性のコンタクト層4,付加的な金属の補強層7,カーボンシート6および剛性の補助支持体8から成る積層体が形成された後に被着される。薄膜半導体チップは続いてカーボンシート6の選択的除去によりダイシングされる。その後、薄膜半導体チップの一方側が完全に絶縁される。したがって、デバイスができあがってからの付加的なパシベーションステップを省略することができる。こうしたステップは、標準プロセスにしたがって製造された薄膜半導体チップでは必須である。
【0069】
図3Bには、側面全体にわたってパシベーション層5の設けられた薄膜半導体チップがフレキシブルな導電性シート6に接合され、さらにこのシートが剛性の安定な補助支持体8に接合されている様子が示されている。剛性の補助支持体8がモリブデンなどの導電性材料から成る場合、この実施例で後に生じる薄膜半導体をテストすることができる。この状態が図3Bに示されている。
【0070】
実施例4
図4には、活性層体2,裏面の反射性かつ導電性のコンタクト層4および金属の補強層7から成る薄膜半導体チップが示されている。薄膜半導体チップの側面はここでは全体にわたってパシベーション層5によってカバーされている。
【0071】
このような薄膜半導体チップは、特に、適切なチップ支持体11を被着した後、ボンディングワイヤなしで電気コンタクトを形成するのに適している。
【0072】
このために、薄膜半導体チップは適切なチップ支持体11、例えば配線板上に被着される。この配線板は、有利には、薄膜半導体チップの裏面のコンタクト接続に用いられる導電性構造体12を含む。またチップ支持体11の残りの部分は電気的絶縁性材料、例えばプラスティックから成る。薄膜半導体チップはチップ支持体11の導電性構造体12上で位置決めされる。続いて導電層13を薄膜半導体チップおよびチップ支持体11の表面全体にわたって被着することにより電気コンタクトが形成される。有利には、導電層13は薄膜半導体チップから発光される電磁放射に対して高い透過係数を有する材料、例えばインジウム亜鉛酸化物ITOまたは酸化亜鉛から成る。
【0073】
ここで、ボンディングワイヤを省略することのできるコンタクト形成プロセスは本発明独自であることを指摘しておく。
【0074】
万全を期すために、本発明は上述した実施例に限定されず、本明細書において説明した基本原理を基礎とする全ての実施例が本発明の対象となりうることも付言したい。また、本発明の基本原理から離れないかぎり、種々の実施例の個々の要素を相互に組み合わせることができることにも注意されたい。
【符号の説明】
【0075】
1 薄膜半導体チップ、 2 活性層体、 3 成長基板、 4 コンタクト層、 5 パシベーション層、 6 導電性シート、 7 補強層、 8 補助支持体、 9 コンタクト位置、 10 中間支持体、 11 チップ支持体、 20 活性層列、 21 スタック、 40 コンタクト材料層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄膜半導体チップ(1)であって、
前記薄膜半導体チップが、電磁放射の形成に適した活性層体(2)と、該活性層体(2)上の導電性かつ反射性のコンタクト層(4)と、該導電性かつ反射性のコンタクト層(4)上のフレキシブルな導電性シート(6)から成る支持体層とを含み、
前記導電性シート(6)はカーボンシートである
ことを特徴とする薄膜半導体チップ(1)。
【請求項2】
前記導電性かつ反射性のコンタクト層(4)は金属材料を含む、請求項1記載の薄膜半導体チップ。
【請求項3】
前記支持体層と前記導電性かつ反射性のコンタクト層(4)とのあいだに導電性の補強層(7)が配置されている、請求項1または2記載の薄膜半導体チップ(1)。
【請求項4】
前記導電性の補強層(7)は金属材料を含む、請求項3記載の薄膜半導体チップ(1)。
【請求項5】
前記薄膜半導体チップ(1)の側面に少なくとも部分的にパシベーション層(5)が設けられている、請求項1から4までのいずれか1項記載の薄膜半導体チップ(1)。
【請求項6】
前記薄膜半導体チップの側面全体にパシベーション層(5)が設けられている、請求項1から4までのいずれか1項記載の薄膜半導体チップ(1)。
【請求項7】
前記薄膜半導体チップの全厚さは150μmより小さい、請求項1から6までのいずれか1項記載の薄膜半導体チップ(1)。
【請求項8】
前記薄膜半導体チップの全厚さは100μmより小さい、請求項1から7までのいずれか1項記載の薄膜半導体チップ(1)。
【請求項9】
前記カーボンシート(6)の厚さは30μmから80μmまでである、請求項1から8までのいずれか1項記載の薄膜半導体チップ(1)。
【請求項10】
前記活性層体(2)のための成長基板が除去されている、請求項1から9までのいずれか1項記載の薄膜半導体チップ(1)。
【請求項11】
前記カーボンシートは前記薄膜半導体チップの最下層である、請求項1から10までのいずれか1項記載の薄膜半導体チップ(1)。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図1E】
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【図1F】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−70094(P2013−70094A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−279713(P2012−279713)
【出願日】平成24年12月21日(2012.12.21)
【分割の表示】特願2007−522909(P2007−522909)の分割
【原出願日】平成17年7月20日(2005.7.20)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(599133716)オスラム オプト セミコンダクターズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (586)
【氏名又は名称原語表記】Osram Opto Semiconductors GmbH
【住所又は居所原語表記】Leibnizstrasse 4, D−93055 Regensburg, Germany
【Fターム(参考)】