説明

薄膜太陽電池

【課題】薄膜光起電力素子の層のいくつかまたは全てを、化学蒸着から溶液堆積可能な材料で置き換えて、連続ロールツーロール製造技術によって薄膜太陽電池の経済的な製造を可能にする。
【解決手段】基体上に提供されるバックコンタクト、バックコンタクト上に提供されるp−型半導体吸収体層、p−型半導体吸収体層上に提供されるn−型半導体層、n−型半導体層上に提供される誘電有機材料層、誘電有機材料層上に提供される透明導電膜、並びに、場合によって透明導電膜上に提供される反射防止層を含む薄膜太陽電池及び薄膜太陽電池の製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は薄膜太陽電池(thin film photovoltaic cell)の分野に関する。より具体的には、本発明は薄膜太陽電池スタックおよびこれを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
薄膜太陽電池における関心は近年増大してきた。この増大した関心は、実験室スケールで製造された電池の変換効率の向上、並びに旧式で高価な結晶質および多結晶質シリコン技術と比較して製造コストが有意に低減されることができるという期待に向けられる場合がある。用語「薄膜」はこの種の太陽電池を、より一般的な、比較的厚いシリコンウェハを使用するシリコンベースの電池と区別するために使用される。単結晶シリコン電池は20%を超える変換効率についての記録を依然として保持しているが、この水準付近で機能する薄膜電池が製造されてきた。よって、薄膜電池の性能はもはやその商業的使用を制限する主たる問題ではない。薄膜太陽電池の大規模商業化について存在している1つの重大なハードルはコストである。経済的な薄膜太陽電池吸収体材料についての主たる候補材料は多結晶質化合物半導体材料(すなわち、CdTeおよびCu(In,Ga)(S,Se))である。
【0003】
従来のCdTeおよびCu(In,Ga)(S,Se)ベースの薄膜太陽電池は積層された多層構造を有する。このような薄膜太陽電池は基体(例えば、ガラス)とその上に形成されたモリブデンバックコンタクトを有する。CdTeもしくはCu(In,Ga)(S,Se)のp−型半導体吸収体層はモリブデンバックコンタクトの上に形成される。n−型半導体バッファー層(例えば、CdS)はp−型半導体吸収体層上に形成される。第2のn−型半導体(例えば、非ドープZnO)がバッファー層上に形成され、フロントコンタクト(すなわち、透明導電層(例えば、ZnO:AlまたはIn:Sn))が第2のn−型半導体上に形成される。
【0004】
CdTeおよびCu(In,Ga)(S,Se)吸収体層を含む従来の薄膜太陽電池は典型的にはガラス、金属もしくはポリマー基体から始まって製造される。基体上へのモリブデンの堆積はボトム導電層を形成する。吸収体層はモリブデン上にスパッタリングで、次いでセレン化プロセスで堆積される。次の工程は化学浴またはスパッタリング堆積プロセスによるCdSバッファー層の堆積であり、吸収体層とバッファー層との間にpn接合を形成する。次いで、真性ZnO層がCdSバッファー層上にスパッタ堆積される。最終工程において、AlドープZnO層が真性ZnO層上に堆積される。AlドープZnO層は光学的に透明な導電層を形成する。次いで、電極がAlドープZnO層のトップ上に蒸着されて電気接点を作ることができる。太陽光がこの電池上を照らしたときに、ボトムおよびトップ電極間に電圧が生じ、電力が電池から取り出されることを可能にする。
【0005】
CdTeまたはCu(In,Ga)(S,Se)ベースの薄膜太陽電池および製造方法の例は、ニーセン(Niesen)らによる米国特許出願公開第2009/0223556号に開示されている。ニーセンらは、a)第1のドーピングタイプのカルコピライト(chalkopyrite)半導体の第1の層を提供する工程;b)工程a)の後に、化学蒸着によって真性酸化亜鉛の第2の層を堆積させる工程;並びに、c)工程b)の後に、第1のドーピングタイプと反対の第2のドーピングタイプの酸化亜鉛半導体の第3の層を化学蒸着以外の方法で堆積させる工程;を含む膜膜光起電力素子を製造する方法を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第2009/0223556号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
にもかかわらず、従来の薄膜光起電力素子の層のいくつかまたは全てを、溶液堆積可能な材料で置き換えて、連続ロールツーロール製造技術によって薄膜太陽電池の経済的な製造を可能にする必要性が存在している。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、基体;基体上に提供されるバックコンタクト;バックコンタクト上に提供されるp−型半導体吸収体層;p−型半導体吸収体層上に提供されるn−型半導体層;n−型半導体層上に提供される誘電有機材料層;誘電有機材料層上に提供される透明導電膜;並びに、場合によって透明導電膜上に提供される反射防止層;を含む薄膜太陽電池を提供する。
本発明は、基体を提供し;バックコンタクトを提供し;バックコンタクトがp−型半導体吸収体層と電気的に連絡しているp−型半導体吸収体層を提供し;n−型半導体層をp−型半導体吸収体層上に提供し;誘電有機材料層前駆体を準備し;誘電有機材料層前駆体をn−型半導体層の表面に適用して、n−型半導体層の表面上に誘電有機材料層を形成し;並びに、誘電有機材料層上に透明導電膜を形成し;並びに、場合によっては、透明導電膜と電気的に接続しているフロント電極を提供する;ことを含む、薄膜太陽電池を製造する方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の薄膜光起電力スタックは、透明導電膜(すなわち、透明フロントコンタクト)とn−型半導体層(すなわち、バッファー層)との間に挿入される従来の半導体真性酸化亜鉛層の代わりに誘電層を使用する。本発明の薄膜光起電力スタックは、従来の化学蒸着される真性酸化亜鉛層を溶液堆積可能な材料で置き換えることを可能にする。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書および特許請求の範囲において使用される場合、用語「上」とは「直接的に上」(すなわち、それらの間に、挿入される中間材料、要素または空間がない)および「間接的に上」(すなわち、それらの間に、挿入される中間材料、要素または空間がある)の両方を包括的に含む。例えば、基体「上」に層を提供することは、その層と基体との間に中間材料を伴うことなく、基体の上に直接その層を形成すること;並びに、その層と基体との間に挿入された1種以上の介在材料を伴って基体上に非直接的にその層を提供することを含むことができる。
【0011】
本発明の薄膜太陽電池に使用される基体材料には、太陽電池に一般的に使用される基体材料が挙げられる。好適な基体材料には、例えば、ガラス、金属およびポリマー材料が挙げられる。ガラス基体については、ガラス基体上に透明導電性コーティング、例えば、酸化スズ(SnO)を提供することが望まれる場合がある。(例えば、ロールツーロール技術を使用する)大規模製造のためには、可とう性の基体が好ましい。好適な可とう性の基体には、例えば、金属薄箔(例えば、アルミニウム、ニオブ、チタン、クロム、鉄、ビスマス、アンチモンおよびスチールから製造される箔);およびポリマー材料(例えば、ポリエーテルエーテルケトン;ポリイミドおよびポリエステルから製造される膜)が挙げられる。
【0012】
本発明の薄膜太陽電池に使用されるバックコンタクトは、電気回路における薄膜太陽電池の電気的接続を容易にする。バックコンタクトは場合によっては、基体の全面を覆う。あるいは、バックコンタクトは、場合によっては、基体の表面の一部分を覆う。場合によっては、バックコンタクトは基体と接続されず、むしろバックコンタクトは、場合によっては、p−型半導体吸収体層と接続される。バックコンタクトは、モリブデン、アルミニウム、銀、酸化亜鉛もしくは酸化スズ(SnO)から製造されうる。好ましくは、バックコンタクトはモリブデン、銀およびアルミニウムの少なくとも1種から製造される。場合によっては、バックコンタクトはモリブデンから製造される。場合によっては、バックコンタクトはアルミニウムから製造される。場合によっては、バックコンタクトは銀から製造される。
【0013】
本発明の薄膜太陽電池において使用されるp−型半導体吸収体材料は場合によっては、当該技術分野においては「吸収体層材料」とも称される。p−型半導体吸収体層は、薄膜太陽電池に従来使用されてきたp−型半導体吸収体材料を含むことができる。p−型半導体吸収体材料は好ましくは、高い吸収係数を有する直接バンドギャップ材料から選択される。好ましいp−型半導体吸収体材料の例には、例えば、テルル化カドミウム(CdTe)、ケステライトCu(Zn,Fe)Sn(S,Se)、および銅カルコピライトが挙げられる。本発明の薄膜太陽電池におけるp−型半導体吸収体材料としての使用に好適な銅カルコピライトは、第1a−1b−3a−6a族混合金属カルコゲニド材料を含み、例えば、銅−インジウム−ジセレニド(CuInSe)、銅−ガリウム−ジセレニド(CuGaSe)および銅−インジウム−ガリウム−ジセレニド(CuIn1−xGaSe)が挙げられる。薄膜太陽電池において吸収体材料として使用される銅カルコピライトはCIGS材料と当業者に一般的に称される。好ましいp−型半導体吸収体材料は、式:NaCuIn(1−d)Ga(2+e)(1−f)Se(2+e)fに従い、式中0≦L≦0.75、0.25≦m≦1.5、0≦d≦1、−0.2≦e≦0.5、0<f≦1;0.5≦(L+m)≦1.5および1.8≦{(2+e)f+(2+e)(1−f)}≦2.5である。p−型半導体吸収体層は、場合によっては、バックコンタクトの表面(バックコンタクトがp−型半導体吸収体層の側部と電気接続している素子については、基体の表面)を完全に覆う。あるいは、p−型半導体吸収体材料は、場合によっては、バックコンタクト(または基体)の表面の一部分を覆う。
【0014】
本発明の薄膜太陽電池に使用されるN−型半導体材料は、当該技術分野において場合によっては「バッファー層材料」と称される。n−型半導体層は従来の薄膜太陽電池に使用されるn−型半導体材料を含むことができる。好ましくは、使用されるn−型半導体材料は硫化カドミウム(CdS);硫化亜鉛(ZnS);硫化インジウム(In);セレン化亜鉛(ZnSe)、セレン化インジウム(InSe)、セレン化亜鉛インジウム((Zn,In)Se);酸化亜鉛、硫化亜鉛、酸化硫化亜鉛(Zn(O,S));およびマグネシウム亜鉛(MgZn)が挙げられる。より好ましくは、使用されるn−型半導体材料は硫化カドミウム(CdS)および硫化亜鉛(ZnS)から選択される。最も好ましくは、使用されるn−型半導体材料はCdSである。n−型半導体層は場合によっては、p−型半導体吸収体層の表面を完全に覆う。あるいは、n−型半導体層は、場合によっては、p−型半導体吸収体層の表面の一部分を覆う。
【0015】
n−型半導体層は、p−型半導体吸収体層上に、好ましくは10〜150nm;より好ましくは10〜100nm;さらにより好ましくは40〜100nm;最も好ましくは40〜60nmの平均厚みを有する層で堆積される。
【0016】
本発明の薄膜太陽電池において使用される誘電有機材料はキャパシタ誘電体として使用するのに好適なポリマー材料であることができ、これは、400nm〜1200nmの電磁スペクトルにわたって80%以上の透過性も示す。好ましくは、使用される誘電有機材料は10Ω・cm以上、より好ましくは10Ω・cm以上、さらにより好ましくは10Ω・cm以上、最も好ましくは1010Ω・cm以上の抵抗率を示す。好ましくは、使用される誘電有機材料は、4以上、より好ましくは5以上、最も好ましくは7以上の誘電率を示す。好ましくは、使用される誘電有機材料はシルセスキオキサン、例えば、アルキルシルセスキオキサン、アリールシルセスキオキサン、ヒドリドシルセスキオキサンおよびこれらの混合物である。より好ましくは、使用される誘電有機材料はC1−10アルキルシルセスキオキサンである。最も好ましくは、使用される誘電有機材料はメチルシルセスキオキサン、エチルシルセスキオキサン、プロピルシルセスキオキサンおよびブチルシルセスキオキサンから選択される。誘電有機材料は場合によっては、n−型半導体層の表面を完全に覆う。あるいは、誘電有機材料は、場合によっては、n−型半導体層の表面の一部分を覆う。
【0017】
本発明の薄膜太陽電池は好ましくは、n−型半導体層の表面と透明導電膜の表面との間に挿入される、10〜150nm;より好ましくは10〜100nm;さらにより好ましくは40〜100nm;最も好ましくは40〜90nmの平均厚みを有する誘電有機材料層を含む。
【0018】
本発明の薄膜太陽電池に使用される透明導電膜材料はあらゆる従来の透明導電材料であることができる。使用される透明導電膜材料は透明導電酸化物(例えば、インジウムドープ酸化スズ、フッ素ドープ酸化スズ、ドープ酸化亜鉛、例えば、アルミニウムドープ酸化亜鉛、インジウムドープ酸化カドミウム);炭素ナノチューブネットワーク;グラフェン;透明導電ポリマー(例えば、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン);ポリ(スチレンスルホナートドープポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン));ポリ(4,4−ジオクチルシクロペンタジチオフェン);ヨードドープポリ(4,4−ジオクチルシクロペンタジチオフェン);および2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−1,4−ベンゾキノンドープポリ(4,4−ジオクチルシクロペンタジチオフェン));ナノネットワーク(例えば、銀ナノワイヤネットワーク、銀ナノフレークネットワーク、銀ナノキューブネットワーク、銀ナノ粒子ネットワーク)から選択されうる。好ましくは使用される透明導電膜材料はアルミニウムドープ酸化亜鉛である。透明導電膜は、場合によっては、誘電有機材料層の表面を完全に覆うことができ、または誘電有機材料層の表面の一部分のみを選択的に覆うことができる。
【0019】
本発明の薄膜太陽電池は、好ましくは、10〜150nm、より好ましくは50〜125nm、さらにより好ましくは75〜125nm、最も好ましくは100〜125nmの平均厚みを有する透明導電膜を含む。
【0020】
本発明の薄膜太陽電池に場合によって使用される反射防止材料は太陽電池における使用に好適なあらゆる反射防止材料から選択されうる。反射防止層は場合によっては、透明導電膜の表面を完全に覆うことができ、または場合によっては、透明導電膜の表面の一部分を選択的に覆うことができる。
【0021】
本発明の薄膜太陽電池は、電気ネットワークにおける薄膜太陽電池の接続を容易にするために、場合によっては、透明導電膜と電気的に連絡している電極、およびバックコンタクトと電気的に連絡している電極を含む。
【0022】
本発明の薄膜太陽電池は、好ましくは、ASTM E927−05に従って太陽光をシミュレートするAM1.5G光源を用いて測定して、9%以上、より好ましくは、9〜18%の素子効率を示す。
【0023】
本発明の薄膜太陽電池製造方法は、基体を提供し;バックコンタクトを提供し;バックコンタクトがp−型半導体吸収体層と電気的に連絡しているp−型半導体吸収体層を提供し;n−型半導体層をp−型半導体吸収体層上に提供し;誘電有機材料層前駆体を準備し;誘電有機材料層前駆体をn−型半導体層に適用して、誘電有機材料層を形成し;並びに、誘電有機材料層上に透明導電膜を形成し;場合によっては、透明導電膜と電気的に接続しているフロント電極を提供する;ことを含む。
【0024】
本発明の薄膜太陽電池製造方法においては、バックコンタクトは、従来の処理方法によって、p−型半導体吸収体層と電気的に連絡しているように提供される。例えば、バックコンタクトは、スパッタリング、積層、印刷、ゾルゲル、化学浴堆積、電気堆積、化学蒸着、物理蒸着、原子層堆積、導電シード層堆積、電気めっき、噴霧および熱分解によって、基体の表面に(またはp−型半導体吸収体層の側部に)適用されることができる。場合によっては、バックコンタクトは、基体の表面上に(または、p−型半導体吸収体層の側部に)均一な層として堆積される。場合によっては、バックコンタクトは、基体の表面の1つの部分もしくは複数の部分上に適用される。
【0025】
本発明の薄膜太陽電池製造方法においては、従来の処理方法によって、p−型半導体吸収体層がバックコンタクトの表面上に(または、バックコンタクトがp−型半導体吸収体層の側部と接続される場合の適用においては基体の表面上に)提供される。例えば、p−型半導体吸収体層はエバポレーション、溶液成長、スパッタリング、化学蒸着および液体堆積(例えば、湿潤コーティング、噴霧コーティング、スピンコーティング、ドクターブレードコーティング)を用いて形成されうる。場合によっては、p−型半導体吸収体層はバックコンタクト(または基体)の表面全体上に均一な層として適用される。場合によっては、p−型半導体吸収体層はバックコンタクト(または基体)の表面の1つの部分もしくは複数の部分上に適用される。
【0026】
場合によっては、p−型半導体吸収体層は第1a−1b−3a−6a族材料を含む。p−型半導体吸収体層が第1a−1b−3a−6a族材料を含む場合には、本発明の方法は、ナトリウムを含む第1a族ソースを場合によっては提供し;第1b族ソースを提供し;第3a族ソースを提供し;第6a族硫黄ソースを場合によっては提供し;第6a族セレンソースを提供し;ナトリウムを堆積させるために第1a族ソースを場合によって使用して、第1b族材料を堆積させるために第1b族ソースを使用して、第3a族材料を堆積させるために第3a族ソースを使用して、硫黄材料を堆積させるために第6a族硫黄ソースを場合によって使用して、並びにセレン材料を堆積させるために第6a族セレンソースを使用することにより、第1a−1b−3a−6a族前駆体材料を基体上に形成し;前駆体材料を処理して、式:NaSe(式中、Xは銅および銀から選択される少なくとも1種の第1b族材料であり、好ましくは銅であり;Yはアルミニウム、ガリウムおよびインジウムから、好ましくはインジウムおよびガリウムから選択される少なくとも1種の第3a族材料であり;0≦L≦0.75;0.25≦m≦1.5;nは1であり;0≦p<2.5;並びに、0<q≦2.5)を有する第1a−1b−3a−6a族材料を形成する;ことをさらに含むことができる。好ましくは、0.5≦(L+m)≦1.5、および1.8≦(p+q)≦2.5。好ましくはYは(In1−bGa)、式中0≦b≦1。より好ましくは、第1a−1b−3a−6a族材料は、式:NaCuIn(1−d)Ga(2+e)(1−f)Se(2+e)f(式中、0≦L≦0.75;0.25≦m≦1.5;0≦d≦1;−0.2≦e≦0.5;0<f≦1;0.5≦(L+m)≦1.5、および1.8≦{(2+e)f+(2+e)(1−f)}≦2.5)に従う。場合によっては、第1a族ソース、第1b族ソース、第3a族ソース、第6a族硫黄ソースおよび第6a族セレンソースの1種以上が一緒にされる。前駆体材料の成分は既知の方法によって処理されることができ、式:NaSeを有する第1a−1b−3a−6a族材料を形成することができる。
【0027】
本発明に従って使用するのに好適な第1a族ソースは、液体堆積技術、真空エバポレーション技術、化学蒸着技術、スパッタリング技術またはナトリウムを基体上に堆積させるための任意の他の従来のプロセスを用いて、ナトリウム(第1a族材料)を堆積させるための任意の従来のビヒクルを含む。好ましくは、第1a族ソースは、第1b族ソース、第3a族ソース、第6a族硫黄ソースまたは第6a族セレンソースの1種以上に組み込まれうる。あるいは、ナトリウムは別の第1a族ソースを使用して堆積されうる。
【0028】
本発明に従って使用するのに好適な第1b族ソースは、液体堆積技術、真空エバポレーション技術、化学蒸着技術、スパッタリング技術または第1b族材料を堆積させるための任意の他の従来のプロセスを用いて、第1b族材料を堆積させるための任意の従来のビヒクルを含む。好ましくは、第1b族材料には、銅および銀の少なくとも1種、より好ましくは銅が挙げられる。場合によっては、第1b族ソースは第1b族材料と共にセレンを含む(例えば、CuSe、AgSe)。
【0029】
本発明に従って使用するのに好適な第3a族ソースは、液体堆積技術、真空エバポレーション技術、化学蒸着技術、スパッタリング技術または第3a族材料を堆積させるための任意の他の従来のプロセスを用いて、第3a族材料を堆積させるための任意の従来のビヒクルを含む。好ましくは、第3a族材料には、ガリウム、インジウムおよびアルムニウムの少なくとも1種、より好ましくはガリウムおよびインジウムの少なくとも1種が挙げられる。場合によっては第3a族ソースは、第3a族材料と共にセレンを含む(例えば、InSe、GaSe)。場合によっては、第3a族ソースは第3a族材料と共に銅およびセレンを含む(例えば、CIGSナノ粒子)。
【0030】
本発明に従って使用するのに好適な第6a族硫黄ソースは、液体堆積技術、真空エバポレーション技術、化学蒸着技術、スパッタリング技術または硫黄を堆積させるための任意の他の従来のプロセスを用いて、硫黄を堆積させるための任意の従来のビヒクルを含む。
【0031】
本発明に従って使用するのに好適な第6a族セレンソースは、液体堆積技術、真空エバポレーション技術、化学蒸着技術、スパッタリング技術またはセレンを堆積させるための任意の他の従来のプロセスを用いて、セレンを堆積させるための任意の従来のビヒクルを含む。
【0032】
本発明の薄膜太陽電池製造方法においては、従来の処理方法によって、n−型半導体層がp−型半導体吸収体層上に提供される。例えば、n−型半導体層は溶液成長(例えば、化学浴堆積)、スパッタリング、およびエバポレーションを用いて形成されうる。場合によっては、n−型半導体層はp−型半導体吸収体層の表面全体上に適用される。場合によっては、n−型半導体層はp−型半導体吸収体層の表面の1つの部分または複数の部分上に適用される。
【0033】
本発明の薄膜太陽電池製造方法においては、液体処理技術によって誘電有機層がn−型半導体層上に提供される。好適な液体処理技術には、湿潤コーティング、噴霧コーティング、スピンコーティング、ドクターブレードコーティング、接触印刷、トップフィードリバース印刷、ボトムフィードリバース印刷、ノズルフィードリバース印刷、グラビア印刷、ミクログラビア印刷、逆ミクログラビア印刷、コマダイレクト(comma direct)印刷、ローラーコーティング、スロットダイコーティング、メイヤーバーコーティング、リップダイレクトコーティング、デュアルリップダイレクトコーティング、キャピラリーコーティング、インクジェット印刷、ジェット堆積、噴霧熱分解および噴霧堆積が挙げられる。場合によっては、誘電有機層は複数の分離した層として適用される。場合によっては、誘電有機層は、n−型半導体層の表面全体上に単一の均一な層として適用される。場合によっては、誘電有機層は、n−型半導体層の表面の1つの部分または複数の部分上に単一の層として適用される。
【0034】
好ましくは、誘電有機材料は、n−型半導体材料上に液体溶液から堆積される。好ましくは、誘電有機材料の堆積中のn−型半導体材料の温度は100℃未満である。好ましくは、誘電有機材料は、n−型半導体材料上への堆積の後で、200℃未満の温度で実質的に硬化させられる。好ましくは、誘電有機材料は、25〜150nm、より好ましくは50〜100nmの膜厚で堆積される。
【0035】
本発明の薄膜太陽電池製造方法においては、従来の処理方法によって、透明導電膜が誘電有機層上に提供される。例えば、透明導電膜はスピンコーティング、噴霧堆積(噴霧熱分解を含む)、化学蒸着、物理蒸着、およびスパッタリングを用いて堆積されうる。場合によっては、透明導電膜は導電酸化物層(例えば、アルミニウムドープ酸化亜鉛層)であり、この透明導電膜は、溶液処理された透明金属ナノワイヤメッシュ材料を用いて堆積される(すなわち、スピンコートされ、噴霧堆積される)。場合によっては、透明導電膜は透明導電酸化物であり、透明導電膜は化学蒸着またはスパッタリングを用いて堆積される。場合によっては、透明導電膜は銀ナノロッドを含む。
【0036】
ここで、本発明のいくつかの実施形態が以下の実施例において詳細に記載される。
【実施例】
【0037】
実施例1〜4:薄膜太陽電池
試験薄膜太陽電池が以下のように製造された:ガラス基体の表面上にモリブデンの層がスパッタ堆積されて、1μmの平均厚みを有するバックコンタクトを形成した。米国再生可能エネルギー研究所3ステージプロセス(例えば、米国特許第5,441,897号および第5,436,204号に記載される)を用いて、2μmの平均厚みを有するCIGS型吸収体層(すなわち、p−型半導体吸収体層)がコエバポレーションによって成長させられた。次いで、0.0015MのCdSO4、1.5MのNH4OH、および0.0075Mのチオ尿素の60℃の溶液からの化学浴堆積(CBD)によって、表1に示される平均厚みを有するCdS層(すなわち、n−型半導体層)がp−型半導体吸収体層の表面上に堆積された。次いで、表1に示された回転速度を用いて、プロピレングリコールメチルエーテルアセタート(PGMEA)中のGR650Fメチルシルセスキオキサン(オハイオ州、テクノグラスから市販されている)の2.8%溶液から、CdS層上にシルセスキオキサンの層(すなわち、誘電有機層)がスピンコートされ、次いで200℃で2分間硬化させられた。堆積されたシルセスキオキサン層の厚みは表1に提供される。次いで、AlドープZnOターゲットから、シルセスキオキサン層上に、アルミニウムドープ酸化亜鉛の層(すなわち、透明導電膜)が120nmの厚みにスパッタ堆積された。次いで、シャドーマスクを通した電子ビームエバポレーションを用いて、ニッケル/アルミニウムフィンガー電極がアルミニウムドープ酸化亜鉛層上に堆積された。太陽電池の活性な領域は0.5cmであった。この電池の効率は、ASTM E927−05に従って太陽光をシミュレートするAM1.5G光源を用いて、電流−電圧曲線から測定された。結果は表1に示される。
【0038】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体;
基体上に提供されるバックコンタクト;
バックコンタクト上に提供されるp−型半導体吸収体層;
p−型半導体吸収体層上に提供されるn−型半導体層;
n−型半導体層上に提供される誘電有機材料層;
誘電有機材料層上に提供される透明導電膜;並びに、
場合によって、透明導電膜上に提供される反射防止層;
を含む薄膜太陽電池。
【請求項2】
誘電有機材料層がシルセスキオキサンを含む、請求項1に記載の薄膜太陽電池。
【請求項3】
誘電有機材料層が10〜150nmの平均厚みを有する、請求項2に記載の薄膜太陽電池。
【請求項4】
基体が金属薄箔またはポリマー材料である請求項1に記載の薄膜太陽電池。
【請求項5】
バックコンタクトがモリブデンである請求項2に記載の薄膜太陽電池。
【請求項6】
p−型半導体吸収体層が、式:NaCuIn(1−d)Ga(2+e)(1−f)Se(2+e)f(式中0≦L≦0.75、0.25≦m≦1.5、0≦d≦1、−0.2≦e≦0.5、0<f≦1;0.5≦(L+m)≦1.5および1.8≦{(2+e)f+(2+e)(1−f)}≦2.5である)に従うCIGS材料およびCdTeから選択されるp−型半導体吸収体材料を含む、請求項2に記載の薄膜太陽電池。
【請求項7】
n−型半導体層が硫化カドミウムを含み、かつ10〜150nmの平均厚みを有する請求項6に記載の薄膜太陽電池。
【請求項8】
透明導電膜がアルミニウムドープ酸化亜鉛を含み、かつ10〜150nmの平均厚みを有する請求項7に記載の薄膜太陽電池。
【請求項9】
ASTM E927−05に従って太陽光をシミュレートするAM1.5G光源を用いて電流−電圧曲線から測定して、薄膜太陽電池が9%以上の素子効率を示す、請求項8に記載の薄膜太陽電池。
【請求項10】
基体を提供し;
バックコンタクトを提供し;
バックコンタクトがp−型半導体吸収体層と電気的に連絡しているp−型半導体吸収体層を提供し;
n−型半導体層をp−型半導体吸収体層上に提供し;
誘電有機材料層前駆体を準備し;
誘電有機材料層前駆体をn−型半導体層の表面に適用して、n−型半導体層の表面上に誘電有機材料層を形成し;
誘電有機材料層上に透明導電膜を形成し;並びに、
場合によっては、透明導電膜と電気的に接続しているフロント電極を提供する;
ことを含む、薄膜太陽電池を製造する方法。

【公開番号】特開2011−205098(P2011−205098A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−61899(P2011−61899)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(591016862)ローム・アンド・ハース・エレクトロニック・マテリアルズ,エル.エル.シー. (270)
【Fターム(参考)】