薬剤を肺に送達するための方法および組成物
本開示は、表面活性剤および肺への活性薬剤の複合体を含有する、吸入用に調合された薬剤組成物を提供する。表面活性剤は、ヒト肺胞/気体界面に対して親和性を有し、哺乳類肺界面活性剤またはその模倣体の少なくとも一部を含有する。本開示はまた、肺疾患に罹患しているかまたは罹患するリスクがある対象を治療する方法であって、肺治療用の薬剤および表面活性剤を含有する複合体を、肺内での薬剤効果を誘発するための有効量で吸入により対象に投与するステップを含む、方法を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2007年6月5日出願の米国仮特許出願第60/942,026号明細書の優先権を主張するものであり、その全体が参照により本明細書中に援用される。
【背景技術】
【0002】
慢性閉塞性肺疾患(COPD)、慢性気管支炎、および気腫を含む肺障害では、肺の内外において気流の慢性閉塞が存在する。これらの障害において現れる閉塞は持続性であることが多く、長期にわたり進行する。悪化すなわち呼吸機能の急性悪化によって罹患率および死亡率が上昇した。
【0003】
ここ数十年にわたるCOPDなどの慢性肺障害を治療するための研究においては、ヒト好中球エラスターゼ(HNE)の阻害剤の同定についての注目が集まっている。HNEは、構造タンパク質のフィブロネクチン、コラーゲン、およびエラスチンを含む極めて多数のタンパク質を分解する能力があるプロテアーゼである。HNEは、異常発現される場合、身体内で最も破壊的な酵素の中の1つである。HNEは組織破壊および炎症に関連性があり、COPD、嚢性線維症、および急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を含む極めて多数の肺疾患、ならびに身体の他の疾患に関与する。しかし、HNE阻害剤の開発はこれまで困難であり、数十年にわたり研究されているにもかかわらず、現市場で認められるHNE治療は1種類に過ぎず、それは日本国内だけでの使用が認められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
HNE阻害剤および肺治療用に設計された他の薬剤の開発は全身性治療を中心に行われている。かかるアプローチに伴う主な障害として、薬剤送達が経口、非経口、または吸入のいずれであっても肺内で多大な滞留時間がかかることである。したがって、有効な肺治療に対する需要は満たされていない状態である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、薬剤を肺に送達するための方法および組成物を提供する。現在、肺疾患の治療に関連した主な課題が肺内での活性薬剤分子の十分な滞留時間を得ることが困難であることは理解されている。肺は異物を除去する点で優れていることから、活性薬剤分子は所望の薬効が得られる前に肺から除去されうる。
【0006】
肺界面活性剤が肺内でII型肺胞上皮細胞(type II pneumocyte)により分泌され、肺胞内での表面張力が低下することから、呼気の際の肺胞破壊が阻止される。肺界面活性剤は、脂質とタンパク質の複合体であり、肺胞表面全体に広がることで表面張力が低下し、また肺内で長期間維持される。したがって、肺内の活性薬剤分子の滞留時間は、界面活性剤の脂質またはタンパク質に対する活性薬剤分子の共有結合により延長されうる。界面活性剤の脂質またはタンパク質に共有結合された活性薬剤分子の投与により、肺内での作用の持続時間の延長による用量の実質的減少および患者コンプライアンスの向上、活性薬剤分子の肺への局在化による全身毒性の低下、また局在化された肺濃度の有意な増加による有効性の向上がもたらされる。
【0007】
一態様では、本発明は、ヒト肺胞/気体界面に対して親和性を有する表面活性剤を含有する、吸入用に調合された薬剤組成物を提供する。表面活性剤は、ヒトに対して実質的に非免疫原性である哺乳類肺界面活性剤ポリペプチドまたはその模倣体の少なくとも一部を含有する。
【0008】
表面活性剤は肺への活性薬剤に共有結合され、それは肺/気体界面に接近可能な細胞外または細胞表面標的に結合する。細胞外または細胞表面標的は、例を挙げると、エラスターゼ、TNF受容体、EGF受容体、アドレナリン受容体、またはP2Xプリン受容体でありうる。特定の実施形態では、肺への活性薬剤に共有結合された表面活性剤は、細胞外または細胞表面標的に結合するものであり、限定はされないが結核、喘息、および肺癌を含む肺疾患を患う対象に投与される。例えば、結核(TB)に関与する作用物質は、マクロファージ内でのアポトーシスの下方制御により、破壊を回避し、細胞内増殖をもたらす。TBを有するマクロファージはP2Xプリン受容体を過剰発現する(Placidoら、Cell Immunol.244:10−8頁(2006年))。P2X作動薬、例えばATPはこれらのマクロファージ内でアポトーシスを誘発することから寄生性TBを殺滅することになる(Pfeifferら、J.Leukoc.Biol.75:1173頁(2004年))。ATPのベンゾイル誘導体は、P2X受容体の強力な細胞外作動薬であり、表面活性剤に共有結合され、長い持続時間のTB治療として吸入により送達されうる。β2アドレナリン受容体に対する作動薬は喘息を治療するための十分に確立された気管支拡張薬である(Anderson、Clin.Rev.Allergy Immunol.31:119−30頁(2006年))。しかし、β2アドレナリン受容体は遍在的に発現されることから、反復投与は有害な全身性副作用を有することになる可能性が高い。表面活性ペプチドに対するβ2アドレナリン受容体作動薬の共有結合によって活性剤が肺に対して本質的に分離することから、潜在的な全身毒性が回避または低減されることになる。表皮成長因子受容体(EGFR)は、乳癌を治療するための市販のハーセプチンなどの製剤とともに抗癌標的として認められている(Carney、Expert Rev.Mol.Diagn.7:309−19頁(2007年))。マトリックスメタロプロテアーゼは、細胞表面脱落機構を介してEGFRの内因性作動薬を放出することが示されている(Horiuchiら、Mol.Biol.Cell 18:176−188頁(2007年))。EGFRの活性化の阻害は非小細胞肺癌における有望な治療である(Y.H.Lingら、Molecular Pharmacology 72:248−58頁(2007年))。EGFRは、吸入により送達されるべき肺表面活性ペプチドへのMMPの小分子阻害剤の結合により、肺内で非活性化されうる。気腫、結核、喘息、および非小細胞肺癌を含むこれらの例は、吸入送達により肺内に特異的に存在する作用物質に対する治療分子の共有結合の一般性を示す。
【0009】
別の実施形態では、表面活性剤は、肺への活性薬剤および肺細胞に侵入する細胞膜透過性輸送分子に共有結合される。細胞内で機能する作用物質は、限定はされないが、レチノイド、スルビビン阻害剤、およびカスパーゼプロモーターを含む。
【0010】
別の実施形態では、表面活性剤は、ヒト肺界面活性剤または非ヒト哺乳類肺界面活性剤またはその画分を含有する。典型的な非ヒト哺乳類肺界面活性剤は、ウシ、ブタ、またはヒツジの肺界面活性剤またはその画分を含む。表面活性剤は、ヒトまたは非ヒト哺乳動物の肺から採取された哺乳類肺界面活性剤を含有するかまたはそれに由来する。
【0011】
別の実施形態では、表面活性剤は、哺乳類肺界面活性剤ポリペプチド、その対立遺伝子変異体、またはその合成模倣体の少なくとも一部を含有する。表面活性剤は、天然界面活性剤ポリペプチド、例えばSP−A、SP−B、SP−C、SP−D、それらの一部、またはそれらの混合物を含有しうる。表面活性剤は、SP−A、SP−B、SP−C、SP−Dの混合物またはその一部を含有しうる。典型的なペプチドは、天然界面活性剤ポリペプチドの少なくとも約5、10、15、20、25、30、35、40、45、もしくは50のアミノ酸断片を含む。表面活性剤は、SP−Bの少なくとも一部を含有しうる。典型的なSP−Bポリペプチドは、SP−Bの少なくとも約5、10、15、20、25、30、35、40、45、もしくは50のアミノ酸断片を含む。SP−Bペプチドは、アミノ末端ペプチドまたはカルボキシ末端ペプチドでありうる。典型的なSP−Bペプチドは、25のアミノ酸のアミノ末端ペプチドでありうる。
【0012】
別の実施形態では、表面活性剤は合成的に生成されるペプチドを含有する。ペプチド模倣体は、哺乳類肺界面活性剤ポリペプチドの少なくとも1つの欠失またはアミノ酸置換突然変異体を含みうる。ペプチド模倣体は、ヒト肺界面活性剤ポリペプチドの少なくとも1つの欠失またはアミノ酸置換突然変異体を含みうる。
【0013】
別の実施形態では、表面活性剤は組換え的に生成される界面活性剤ポリペプチドを含有しうる。組換え哺乳類肺界面活性剤ポリペプチド、例えばSP−A、SP−B、SP−C、SP−D、またはそれらの一部は、原核または真核発現系内での、SP−A、SP−B、SP−C、SP−D、またはそれらの一部をコードするDNAの発現により生成されうる。組換え界面活性剤ポリペプチドは、哺乳類肺界面活性剤ポリペプチドと同じかまたは異なりうる。組換えポリペプチドは、哺乳類、好ましくはヒト肺界面活性剤ポリペプチドの少なくとも1つの欠失またはアミノ酸置換突然変異体を含みうる。
【0014】
別の実施形態では、表面活性剤は界面活性剤ポリペプチドおよび脂質の双方を含有する。
【0015】
表面活性剤は肺への活性薬剤に共有結合される。肺への活性薬剤は、界面活性剤タンパク質または脂質に共有結合されうる。肺への活性薬剤は、界面活性剤ポリペプチドのアミノまたはカルボキシ末端アミノ酸または内部アミノ酸に共有結合されうる。特定の実施形態では、2つ以上の肺への活性薬剤が表面活性剤に結合される。他の実施形態では、単一の肺への活性薬剤が表面活性剤に結合され、かつ表面活性剤に結合された少なくとも1つの他の肺への活性薬剤と混合される。
【0016】
一実施形態では、肺への活性薬剤分子はアミノ酸または模倣体のリンカー、例えばグリシンリンカーで伸長され、自動ペプチド合成で用いられうる非天然アミノ酸が作製される。次いで、伸長された分子(すなわち薬剤+アミノ酸リンカー)はアミノ基またはヒドロキシル基を介して表面活性剤に結合されうる。
【0017】
肺への活性薬剤は、肺/気体界面に接近可能な細胞外または細胞表面結合標的に結合する。肺への活性薬剤は、エラスターゼ阻害剤、コルチコステロイド、気管支拡張薬、抗生物質、または化学療法剤でありうる。特定の実施形態では、2つ以上の肺への活性薬剤が表面活性剤に結合され、並行投与されうる。2つ以上の肺への活性薬剤が表面活性剤に共有結合される場合、薬剤は同じ薬剤、同じ薬剤クラスのメンバー、または異なる薬剤クラスのメンバーでありうる。
【0018】
薬剤組成物は、吸入装置によりヒト患者の肺に送達される。典型的な吸入装置は、固定用量吸入器、定量吸入器、および噴霧器を含む。
【0019】
別の態様では、本発明は、肺疾患に罹患しているかまたはそのリスクがある対象を治療するための方法を提供する。本方法は、ヒト肺胞/気体界面に対する親和性で特徴づけられる表面活性剤に共有結合された肺への活性薬剤を含有する複合体を投与するステップを含み、ここで表面活性剤は、ヒトに対して実質的に非免疫原性である哺乳類肺界面活性剤ポリペプチドまたはその模倣体の少なくとも一部を含有する。複合体は、肺内での薬剤効果を誘発するための有効量で吸入により対象に投与される。
【0020】
投与方法では、肺への活性薬剤がそれを必要とする対象の肺に対して標的にされる。本投与方法により、薬剤の全身バイオアベイラビリティが未複合薬剤の吸入投与に対して低下する。本投与方法により、肺内での薬剤の滞留時間が未複合薬剤の吸入投与に対して延長される。
【0021】
一実施形態では、肺への活性薬剤−表面活性剤複合体の投与により、投与頻度が未複合薬剤の投与に対して低下する。投与ステップは、毎日、1日おき、3日おき、4日おき、5日おき、または1週ごとに1回反復されうる。投与ステップは、プロペラント、定量吸入器(metered dosages)、または噴霧器を伴う場合または伴わない場合に、吸入器、エアロゾル、微粒子を用いて実施されうる。
【0022】
特定の実施形態では、治療を必要とする対象は、肺炎症もしくは疾患に罹患しているかまたは肺疾患に罹患するリスクがある。治療を必要とする対象は、気腫、慢性気管支炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息、呼吸窮迫障害(RDS)、肺炎、結核または他の細菌感染、嚢胞性線維症、および/または肺癌に罹患している場合がある。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1Aは、ヒト界面活性剤タンパク質Aをコードする核酸配列(配列番号1)を示す。図1Bは、ヒト界面活性剤タンパク質Aにおけるアミノ酸配列(配列番号2)を示す。
【図2】図2Aは、ヒト界面活性剤タンパク質Bをコードする核酸配列(配列番号3)を示す。図2Bは、ヒト界面活性剤タンパク質Bにおけるアミノ酸配列(配列番号4)を示す。図2Cは、成熟ヒト界面活性剤タンパク質Bにおけるアミノ酸配列(配列番号5)を示す。
【図3】図3Aは、ヒト界面活性剤タンパク質Cをコードする核酸配列(配列番号6)を示す。図3Bは、ヒト界面活性剤タンパク質Cにおけるアミノ酸配列(配列番号7)を示す。図3Cは、成熟ヒト界面活性剤タンパク質Cにおけるアミノ酸配列(配列番号8)を示す。
【図4】図4Aは、ヒト界面活性剤タンパク質Dをコードする核酸配列(配列番号9)を示す。図4Bは、ヒト界面活性剤タンパク質Dにおけるアミノ酸配列(配列番号10)を示す。図4Cは、成熟ヒト界面活性剤タンパク質Dにおけるアミノ酸配列(配列番号11)を示す。
【図5】図5Aは、ウシ界面活性剤タンパク質Aをコードする核酸配列(配列番号12)を示す。図5Bは、ウシ界面活性剤タンパク質Aにおけるアミノ酸配列(配列番号13)を示す。
【図6】図6Aは、ウシ界面活性剤タンパク質Bをコードする核酸配列(配列番号14)を示す。図6Bは、ウシ界面活性剤タンパク質Bにおけるアミノ酸配列(配列番号15)を示す。
【図7】図7Aは、ウシ界面活性剤タンパク質Cをコードする核酸配列(配列番号16)を示す。図7Bは、ウシ界面活性剤タンパク質Cにおけるアミノ酸配列(配列番号17)を示す。
【図8】図8Aは、ウシ界面活性剤タンパク質Dをコードする核酸配列(配列番号18)を示す。図8Bは、ウシ界面活性剤タンパク質Dにおけるアミノ酸配列(配列番号19)を示す。
【図9】図9Aは、ブタ界面活性剤タンパク質Aをコードする核酸配列(配列番号20)を示す。図9Bは、ブタ界面活性剤タンパク質Aにおけるアミノ酸配列(配列番号21)を示す。
【図10】図10Aは、部分的なブタ界面活性剤タンパク質Bをコードする核酸配列(配列番号22)を示す。図10Bは、ブタ界面活性剤タンパク質Bにおける部分的アミノ酸配列(配列番号23)を示す。
【図11】図11Aは、ブタ界面活性剤タンパク質Cをコードする核酸配列(配列番号24)を示す。図11Bは、ブタ界面活性剤タンパク質Cにおけるアミノ酸配列(配列番号25)を示す。
【図12】図12Aは、ブタ界面活性剤タンパク質Dをコードする核酸配列(配列番号26)を示す。図12Bは、ブタ界面活性剤タンパク質Dにおけるアミノ酸配列(配列番号27)を示す。
【図13】図13Aは、ヒツジ界面活性剤タンパク質Aをコードする核酸配列(配列番号28)を示す。図13Bは、ヒツジ界面活性剤タンパク質Aにおけるアミノ酸配列(配列番号29)を示す。
【図14】図14Aは、ヒツジ界面活性剤タンパク質Bをコードする核酸配列(配列番号30)を示す。図14Bは、ヒツジ界面活性剤タンパク質Bにおけるアミノ酸配列(配列番号31)を示す。
【図15】図15Aは、ヒツジ界面活性剤タンパク質Cをコードする核酸配列(配列番号32)を示す。図15Bは、ヒツジ界面活性剤タンパク質Cにおけるアミノ酸配列(配列番号33)を示す。
【図16】図16Aは、部分的なヒツジ界面活性剤タンパク質Dをコードする核酸配列(配列番号34)を示す。図16Bは、ヒツジ界面活性剤タンパク質Dにおける部分的アミノ酸配列(配列番号35)を示す。
【図17−1】典型的なヒト好中球エラスターゼ(HNE)阻害剤を示す表である。表中で列挙される参照番号は、Philip D.EdwardsおよびPeter R.Bernstein、「Synthetic Inhibitors of Elastase」、Medicinal Research Reviews、第14巻、第2号、127−194頁(1994年)において参照される化合物の識別子に対応する。
【図17−2】典型的なヒト好中球エラスターゼ(HNE)阻害剤を示す表である。表中で列挙される参照番号は、Philip D.EdwardsおよびPeter R.Bernstein、「Synthetic Inhibitors of Elastase」、Medicinal Research Reviews、第14巻、第2号、127−194頁(1994年)において参照される化合物の識別子に対応する。
【図17−3】典型的なヒト好中球エラスターゼ(HNE)阻害剤を示す表である。表中で列挙される参照番号は、Philip D.EdwardsおよびPeter R.Bernstein、「Synthetic Inhibitors of Elastase」、Medicinal Research Reviews、第14巻、第2号、127−194頁(1994年)において参照される化合物の識別子に対応する。
【図17−4】典型的なヒト好中球エラスターゼ(HNE)阻害剤を示す表である。表中で列挙される参照番号は、Philip D.EdwardsおよびPeter R.Bernstein、「Synthetic Inhibitors of Elastase」、Medicinal Research Reviews、第14巻、第2号、127−194頁(1994年)において参照される化合物の識別子に対応する。
【図17−5】典型的なヒト好中球エラスターゼ(HNE)阻害剤を示す表である。表中で列挙される参照番号は、Philip D.EdwardsおよびPeter R.Bernstein、「Synthetic Inhibitors of Elastase」、Medicinal Research Reviews、第14巻、第2号、127−194頁(1994年)において参照される化合物の識別子に対応する。
【図18】代表的な気腫阻害剤の化学合成を示す概略図である。図示される気腫阻害剤はグリシンリンカーを含有する。グリシンリンカー(円)は、化合物を、SP−BのN末端の1〜25のアミノ酸に対する共有結合のための標準のペプチド合成反応において用いられうる非天然アミノ酸に変換する。
【図19】HNE阻害剤として用いられる典型的な標的を示す表である。ヒト界面活性剤BペプチドのN末端の最初の25残基に結合される標的2は標的Cを形成する。同様に、ヒト界面活性剤BペプチドのN末端の最初の25残基に結合される標的3は標的Bを形成する。
【発明を実施するための形態】
【0024】
界面活性剤タンパク質
表面活性剤は、ヒトに対して実質的に非免疫原性である哺乳類肺界面活性剤ポリペプチドの少なくとも一部を含有する。ポリペプチドまたはその一部は、哺乳類肺界面活性剤部分またはその合成模倣体でありうる。典型的な界面活性剤ポリペプチドは、動物に由来し、組換えられ、合成される類似体、またはペプチド模倣体でありうる。
【0025】
肺の天然界面活性剤タンパク質は、SP−A、SP−B、SP−C、SP−D、またはそれらの一部を単独でまたは脂質と組み合わせられた状態で含む(米国特許第5,302,581号明細書)。一部の実施形態では、表面活性剤は完全長の界面活性剤ポリペプチドを含有する。他の実施形態では、表面活性剤は界面活性剤ポリペプチドの一部を含有する。例えば、ヒトSP−Bは79アミノ酸残基ポリペプチドであるが、SP−BのN末端の25アミノ酸残基は全ペプチドに匹敵する治療効果を有する(KurutzおよびLee、Biochem.、41、9627−36頁(2002年))。肺の天然界面活性剤タンパク質の典型的なペプチドは、少なくとも約5、10、15、20、25、30、35、40、45、もしくは50アミノ酸長でありうる。ヒトSP−Bの典型的なペプチドは表1に示される。
【0026】
一実施形態では、表面活性剤は、検視時のヒト死体の肺洗浄または同意成人の肺洗浄により得られるヒト肺界面活性剤を含有する。
【0027】
特定の実施形態では、表面活性剤は非ヒト哺乳類肺界面活性剤またはその画分を含有する。典型的な非ヒト界面活性剤は、ウシ、ブタまたはヒツジ肺界面活性剤またはその画分を含む。非ヒト界面活性剤は、当該技術分野で周知の技術を用いて非ヒト哺乳動物の肺から採取されうる。例えば、Bernhardら、Am.J.Respir.Cell Mol.Biol.17:41−50頁(1997年)(参照により本明細書中に援用される)に記載のように、ブタ界面活性剤は新生および/または成体ブタから得られる場合があり、そこでは生理食塩水で気管支肺胞洗浄(BAL)がなされた肺が採取される。採取されたBAL流体は遠心分離され、細胞が摘出され、次いで無細胞BAL流体がさらに遠心分離され、生の界面活性剤ペレットが生成される。Brackenburyら、Am.J.Respir Cir.Care Med.163:1135−1142頁(2001年)(参照により本明細書中に援用される)に記載のように、ヒツジ界面活性剤は成体ヒツジの全肺洗浄物から得られうる。採取された肺胞洗浄物は遠心分離され、細胞残屑の採取後にさらに遠心分離され、界面活性剤凝集ペレットに対応するペレットが得られる。Pandaら(J Colloid Interface Sci、311:551−5頁(2007年))(参照により本明細書中に援用される)に記載のように、ウシ界面活性剤もまた成体ウシの肺洗浄物から得られうる。リン脂質、中性脂質、SP−BおよびSP−Cポリペプチドを含有する天然ウシ界面活性剤抽出物であるAlveofact(登録商標)もまた用いられうる。
【0028】
ヒト肺界面活性剤に由来するかまたはそれに類似した特性を有するタンパク質およびポリペプチドもまた用いられうる。例えば、SP−Bは、Beersら、Am.J.Physiol Lung Cell Mol.Physiol.262:L773−L778頁(1992年)(参照により本明細書中に援用される)に記載のように、ディファレンシャル(differential)有機抽出、カラムクロマトグラフィー、および/または分取SDS−PAGEを用い、ウシ界面活性剤から単離されうる。
【0029】
哺乳類肺界面活性剤ポリペプチドまたはその一部はまた、組換え的に生成されうる。組換えSP−A、SP−B、SP−C、SP−D、またはそれらの一部は、様々な既知の技術を用い、適切な原核または真核発現系内での、SP−A、SP−B、SP−C、SP−D、またはそれらの一部をコードするDNA配列の発現により得られうる。界面活性剤ポリペプチドまたはその一部をコードする単離核酸を含むように容易に適合された組換えベクター、組換えベクターを有する宿主細胞、およびかかるベクターおよび宿主細胞を作成する方法、ならびに組換え技術によりコードされたポリペプチドを生成するためのそれらの使用については周知である。界面活性剤ポリペプチドまたはその一部をコードする核酸は、少なくとも1つの調節配列に作動可能に連結された界面活性剤ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む発現ベクター内に提供されうる。発現ベクターの設計が形質転換されるべき宿主細胞の選択および/または発現が望まれるタンパク質のタイプなどの要素に依存しうることは理解されるべきである。ベクターのコピー数、そのコピー数を制御する能力、およびベクターによりコードされる任意の他のタンパク質、例えば抗生物質マーカーの発現については考慮されるべきである。対象の核酸を用い、例えば培養物中で増殖された細胞内でのキナーゼまたはホスファターゼポリペプチドの発現および過剰発現が誘発され、融合タンパク質またはポリペプチドを含むタンパク質またはポリペプチドが生成されうる。
【0030】
宿主細胞は、界面活性剤ポリペプチドまたはその一部を発現するため、組換え遺伝子が形質移入されうる。宿主細胞は任意の原核または真核細胞でありうる。例えば、ポリペプチドは、細菌細胞、例えば大腸菌(E.coli)、昆虫細胞(バキュロウイルス)、酵母、または哺乳類細胞において発現されうる。宿主細胞がヒトである場合の例においては、それは生存対象内に存在する場合もあれば存在しない場合もある。他の適切な宿主細胞は当業者に既知である。さらに、宿主細胞は、ポリペプチドの発現を最適化するように、典型的には宿主内で見出されないtRNA分子で補完されうる。ポリペプチドの発現の最大化に適する他の方法は当業者に既知であろう。
【0031】
ポリペプチドを生成する方法は当該技術分野で周知である。例えば、界面活性剤ポリペプチドまたはその一部をコードする発現ベクターが形質移入された宿主細胞が適切な条件下で培養されることで、ポリペプチドの発現が生じうる。ポリペプチドは、細胞およびポリペプチドを含有する培地の混合物から分泌され、単離されうる。あるいは、ポリペプチドは細胞質に保持されうる。次いで、細胞が採取され、溶解され、タンパク質は細胞溶解液から単離される。
【0032】
細胞培養物は、宿主細胞、培地、および他の副生成物を含む。細胞培養に適する培地は当該技術分野で周知である。ポリペプチドは、硫酸アンモニウムまたはエタノールでの沈殿、酸抽出、アニオンまたはカチオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、リン酸セルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、親和性クロマトグラフィー、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、レクチンクロマトグラフィー、限界濾過、電気泳動、本発明のポリペプチドの特定のエピトープに対する特異的抗体での免疫親和性精製、および高性能液体クロマトグラフィー(「HPLC」)を含む、タンパク質を精製するための当該技術分野で既知の技術を用い、細胞培地、宿主細胞、またはその双方から単離されうる。したがって、界面活性剤ポリペプチドの全部または選択された一部をコードするヌクレオチド配列を用い、微生物または真核細胞過程によりタンパク質の組換え形態が生成されうる。配列のポリヌクレオチドコンストラクト、例えば発現ベクターへのライゲート、および宿主すなわち真核生物(酵母、鳥類、昆虫または哺乳類)または原核生物(細菌細胞)のいずれかへの形質転換または形質移入は、標準的方法である。類似の方法またはその改良を用い、本発明の組換えポリペプチドが微生物的手段または組織培養技術により調製されうる。
【0033】
組換えタンパク質を生成するための発現媒体はプラスミドおよび他のベクターを含む。例えば、本発明のポリペプチドの発現に適するベクターは、以下のタイプのプラスミド、すなわち、原核細胞、例えば大腸菌(E.coli)内で発現される、pBR322由来プラスミド、pEMBL由来プラスミド、pEX由来プラスミド、pBTac由来プラスミドおよびpUC由来プラスミドを含む。
【0034】
特定の実施形態では、哺乳類発現ベクターは、細菌内でのベクターおよび真核細胞内で発現される1つ以上の真核転写単位の増殖を促進する両方の原核生物配列を有する。pcDNAI/amp、pcDNAI/neo、pRc/CMV、pSV2gpt、pSV2neo、pSV2−dhfr、pTk2、pRSVneo、pMSG、pSVT7、pko−neoおよびpHygに由来するベクターは真核細胞の形質移入に適する哺乳類発現ベクターの例である。これらのベクターの一部は、細菌プラスミド、例えばpBR322に由来する配列で修飾され、原核および真核細胞の双方における複製および薬剤耐性選択が促進される。あるいは、ウシパピローマウイルス(BPV−I)、またはエプスタイン−バーウイルス(pHEBo、pREP由来およびp205)などのウイルスの誘導体は、真核細胞内でのタンパク質の一時的発現に用いられうる。プラスミドの調製および宿主生物の形質転換において用いられる様々な方法は当該技術分野で周知である。原核および真核細胞の双方における他の適切な発現系ならびに一般的な組換え方法においては、「Molecular Cloning A Laboratory Manual」、第2版、Sambrook、FritschおよびManiatis編(Cold Spring Harbor Laboratory Press、1989年)、第16章および第17章を参照のこと。場合によっては、組換えタンパク質をバキュロウイルス発現系の使用により発現することが望ましいことがある。かかるバキュロウイルス発現系の例として、pVL由来ベクター(pVL1392、pVL1393およびpVL941など)、pAcUW由来ベクター(pAcUWlなど)、およびpBlueBac由来ベクター([β]−galを有するpBlueBac IIIなど)が挙げられる。
【0035】
別の実施形態では、タンパク質の生成はインビトロ翻訳系を用いてなされうる。インビトロ翻訳系は、一般に、RNA分子のタンパク質への翻訳に必要な少なくとも最小の因子を有する無細胞抽出物である翻訳系である。インビトロ翻訳系は、典型的には、少なくともリボソーム、tRNA、イニシエーターのメチオニル−tRNAMet、翻訳に関与するタンパク質または複合体、例えばeIF2、eIF3、キャップ結合タンパク質(CBP)および真核開始因子4F(eIF4F)を含むキャップ結合(CB)複合体を含む。種々のインビトロ翻訳系は当該技術分野で周知であり、市販のキットを含む。インビトロ翻訳系の例として、真核溶解物、例えばウサギ網状赤血球溶解物、ウサギ卵母細胞溶解物、ヒト細胞溶解物、昆虫細胞溶解物および小麦麦芽抽出物が挙げられる。溶解物は、Promega Corp.(Madison,Wis.)、Stratagene(La Jolla,Calif.)、Amersham(Arlington Heights,IU.)およびGIBCO/BRL(Grand Island,N.Y.)などの製造業者から市販されている。インビトロ翻訳系は、典型的には高分子、例えば酵素、翻訳、開始および伸長因子、化学試薬、ならびにリボソームを含む。さらに、インビトロ転写系が用いられうる。かかる系は、典型的には、少なくともRNAポリメラーゼホロ酵素、リボヌクレオチドおよび任意の必要な転写開始、伸長および終結因子を含む。インビトロ転写および翻訳はワンポット反応で共役され、タンパク質が1つ以上の単離DNAから生成されうる。ポリペプチドのカルボキシ末端断片の発現、すなわち切断突然変異体が望ましい場合、開始コドン(ATG)を、発現されるべき所望の配列を有するオリゴヌクレオチド断片に付加することが必要でありうる。N末端位置でのメチオニンが酵素のメチオニンアミノペプチダーゼ(MAP)の使用により酵素的に切断されうることは当該技術分野で周知である。MAPは大腸菌(E.coli)(Ben−Bassatら、(1987年)J Bacteriol.169:751−757頁)およびネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)からクローン化されており、そのインビトロ活性は組換えタンパク質上で示されている(Millerら、(1987年)PNAS USA 54:2718−1722頁)。したがって、必要に応じ、N末端メチオニンの除去が、MAPを生成する宿主(例えば、大腸菌(E.coli)またはCM89または出芽酵母(S.cerevisiae))内でのかかる組換えポリペプチドのインビボでの発現か、または精製MAPのインビトロでの使用(例えばMillerらの方法)のいずれかによりなされうる。
【0036】
本発明のポリペプチドはまた、様々な変化、例えば挿入、欠失、および保存的または非保存的置換を受ける場合があり、ここでかかる変化はその使用において特定の利点をもたらす。保存的置換とは、1つのアミノ酸残基が別の生物学的に類似の残基で置換される場合である。保存的置換の例として、イソロイシン、バリン、ロイシンまたはメチオニンなどの1つの疎水残基と別の残基との置換、あるいはアルギニンとリジンの間、グルタミン酸とアスパラギン酸の間またはグルタミンとアスパラギンの間など、1つの極性残基と別の残基との置換が挙げられる。「保存的置換」という用語はまた、かかるポリペプチドが必須の結合活性をも示すという条件での、未置換の親アミノ酸の代わりとしての置換アミノ酸の使用を含む。
【0037】
本発明のポリペプチドはまた、完全長成熟ポリペプチドに対して切断されうる。ポリペプチドは、アミノ末端、カルボキシ末端、または両末端のいずれかで切断されうる。ポリペプチドは、少なくとも1つのアミノ酸、または少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65もしくは70のアミノ酸で切断されうる。
【0038】
哺乳類肺界面活性剤ポリペプチドまたはその一部は、ポリペプチド技術分野における当業者に既知の技術によりアミノ酸から合成されうる。多数の利用可能な技術の概要が、固相ペプチド合成については、J.M.StewardおよびJ.D.Young、「Solid Phase Peptide Synthesis」、W.H.Freeman Co.(San Francisco)、1969年、およびJ.Meienhofer、「Hormonal Proteins and Peptides」、第2巻、46頁、Academic Press(New York)、1983年の中に、ならびに従来の溶液合成については、E.SchroderおよびK.Kubke、「The Peptides」、第1巻、Academic Press(New York)、1965年の中に見出されうる。
【0039】
一般に、これらの方法は、1つ以上のアミノ酸残基または適切に保護されたアミノ酸残基の成長するペプチド鎖への順次付加を含む。通常、第1のアミノ酸残基のアミノ基またはカルボキシル基のいずれかが、適切な選択的に除去可能な保護基により保護される。反応性側基を有するアミノ酸(例えばリジン)においては、選択的に除去可能な異なる保護基が用いられる。
【0040】
一例として固相合成を用いると、保護または脱保護アミノ酸は、その未保護のカルボキシル基またはアミノ基を介して不活性の固体支持体に結合される。次いで、アミノ基またはカルボキシル基の保護基は選択的に除去され、適切に保護された相補(アミノまたはカルボキシル)基を有する配列内の次のアミノ酸が、既に固体支持体に結合された残基とのアミド結合の形成に適する条件下で混合され、反応される。次いでアミノ基またはカルボキシル基の保護基はこの新しく付加されたアミノ酸残基から除去され、次いで(適切に保護された)次のアミノ酸が付加される、といったことが生じる。すべての所望のアミノ酸が適切な配列内で結合された後、任意の残存する末端基および側基の保護基(および任意の固体支持体)が順次または同時に除去され、最終のポリペプチドが得られる。次いで、そのポリペプチドは低級脂肪族アルコール中への溶解により洗浄され、乾燥される。乾燥された界面活性剤ポリペプチドは、必要に応じ、既知の技術によりさらに精製されうる。
【0041】
特定の実施形態では、αアミノ基のt−BOCまたはf−MOC保護などの一般に用いられる方法が用いられうる。両方の方法は、単一のアミノ酸がペプチドのC末端から開始される各ステップで付加されるという段階的合成を含む(Coliganら、「Current Protocols in Immunology」、Wiley Interscience、1991年、Unit9を参照)。本発明のペプチドは、例えば、0.1〜1.0mモルのアミン/gポリマーを有するコポリ(スチレン−ジビニルベンゼン)を用い、Merrifield、J.Am.Chem.Soc.85:2149頁、1962年と、StewartおよびYoung、1969年、「Solid Phase Peptide Synthesis」、27−62頁に記載の周知の固相ペプチド合成方法により合成されうる。化学合成の完了時、ペプチドは、0℃で約1/4〜1時間にわたる液体HF−10%アニソールでの処理により、ポリマーから脱保護され、切断されうる。試薬の蒸発後、ペプチドは1%酢酸溶液でポリマーから抽出され、次いで凍結乾燥により原料が得られる。これは通常、溶媒として5%酢酸を用いるSephadex G−15上でのゲル濾過などの技術により精製されうる。カラムの適切な画分の凍結乾燥により均一なペプチドまたはペプチド誘導体が得られることになり、次いでそれはアミノ酸分析、薄層クロマトグラフィー、高性能液体クロマトグラフィー、紫外線吸収分光、モル回転、溶解度などの標準技術により特徴づけられ、固相エドマン分解により定量されうる。
【0042】
一実施形態では、組換えおよび/または合成SP−Bペプチドは、配列番号5のアミノ酸2、4、6、および9を有する。配列番号5のプロリン2、4、および6とトリプトファン9は、タンパク質機能における本質的な構造モチーフを構成しうる。一部の実施形態では、SP−Bペプチドは、(配列番号5について)トリプトファン9のアミノ酸以外の任意のアミノ酸残基で置換されうる。
【0043】
肺界面活性剤ポリペプチド模倣体は、一般にヒト界面活性剤タンパク質の本質的な特性を模倣するように改変されたポリペプチドである。典型的な模倣ペプチドはSP−Bを模倣する。SP−B模倣体の一例が、KL4、すなわち配列KLLLLKLLLLKLLLLKLLLLK(配列番号94)を含む21アミノ酸残基ペプチドである。このSP−B模倣タンパク質はまた、Lucinactant(Surfaxin(登録商標)、Discovery Laboratories)として知られている。
【0044】
界面活性剤脂質
特定の実施形態では、本発明で用いられる表面活性剤は界面活性剤タンパク質、その一部、またはその混合物を含有し、インビボで天然界面活性剤脂質と結合する。他の実施形態では、本発明で用いられる表面活性剤は脂質または脂質−タンパク質複合体を含有する。
【0045】
天然の哺乳類肺界面活性剤は、リン脂質、中性リン脂質、およびタンパク質の複合体である。本明細書で開示の本発明で用いられる表面活性剤は1種以上の脂質を含有しうる。一部の実施形態では、表面活性剤は、得られる組成物が界面活性剤活性を有する限り、例えばわずか約0.05〜100%重量パーセントの脂質を含有しうる。重量パーセントは、組成物(重量)中の化合物(重量)の百分率を意味する。したがって、50重量パーセントの脂質を有する組成物は、例えば100グラムの全組成物当たり50グラムの脂質を含有する。表面活性剤は0.1〜50重量パーセントの脂質を含有しうるが、より高濃度の脂質が用いられうる。したがって、リン脂質と界面活性剤ポリペプチドまたはその一部の双方を含有する表面活性剤は、0.1、1、10、50、80〜約100重量パーセントの脂質と、約50、20、10重量パーセント〜1重量パーセント未満の界面活性剤ポリペプチドを含有しうる。あるいは、表面活性剤は脂質対界面活性剤ポリペプチドの逆比を含有しうる。
【0046】
本明細書で用いられる「脂質」という用語は、一般に両親媒性である、天然、合成または半合成(すなわち修飾天然)化合物を示す。脂質は、典型的には親水性成分および疎水性成分を含有する。典型的な脂質は、限定はされないが、リン脂質、脂肪酸、脂肪アルコール、中性脂肪、ホスファチド、オイル、糖脂質、脂肪族アルコール、ワックス、テルペンおよびステロイドを含む。半合成(または修飾天然)という語句は、いくつかの方法で化学的に修飾されている天然化合物を意味する。
【0047】
リン脂質の例として、天然および/または合成リン脂質が挙げられる。用いられうるリン脂質は、限定はされないが、ホスファチジルコリン(飽和および不飽和)、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸、ホスファチジルイノシトール、スフィンゴ脂質、ジアシルグリセリド、カルジオリピン、セラミド、セレブロシドなどを含む。典型的なリン脂質は、限定はされないが、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジラウリルホスファチジルコリン(DLPC)(C12:0)、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)(C14:0)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジフィタノイルホスファチジルコリン、ノナデカノイルホスファチジルコリン、アラキドイルホスファチジルコリン、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)(C18:1)、ジパルミトレオイルホスファチジルコリン(C16:l)、リノレオイルホスファチジルコリン(C18:2)、ミリストイルパルミトイルホスファチジルコリン(MPPC)、ステアロイルミリストイルホスファチジルコリン(SMPC)、ステアロイルパルミトイルホスファチジルコリン(SPPC)、パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン(POPC)、パルミトイルパルミトオレオイルホスファチジルコリン(PPoPC)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、パルミトイルオレオイルホスファチジルエタノールアミン(POPE)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン(DMPE)、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG)、パルミトイルオレオイルホスファチジルグリセロール(POPG)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、ジミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG)、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG)、ジミリストイルホスファチジルセリン(DMPS)、ジステアロイルホスファチジルセリン(DSPS)、パルミトイルオレオイルホスファチジルセリン(POPS)、大豆レシチン、卵黄レシチン、スフィンゴミエリン、ホスファチジルイノシトール、ジホスファチジルグリセロール、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジン酸、および卵ホスファチジルコリン(EPC)を含む。
【0048】
脂肪酸および脂肪アルコールの例として、限定はされないが、ステロール、パルミチン酸、セチルアルコール、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、フィタン酸、ジパルミチン酸などが挙げられる。典型的な脂肪酸はパルミチン酸を含む。
【0049】
脂肪酸エステルの例として、限定はされないが、パルミチン酸メチル、パルミチン酸エチル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸コレステリル、パルミチン酸パルミチル、パルミチン酸ナトリウム、パルミチン酸カリウム、トリパルミチンなどが挙げられる。
【0050】
界面活性剤ポリペプチドおよび界面活性剤脂質は静力学的相互作用により相互作用する。帯電したアミノ酸は脂質の極性ヘッド基と相互作用し、疎水性アミノ酸はリン脂質のアシル側鎖と相互作用する。例えば、SP−BおよびSP−Cは疎水性タンパク質である。SP−BおよびSP−Cの双方はアニオン脂質、例えばDPPCではなくホスファチジルグリセロール(PG)に優先的に結合する。SP−AおよびSP−Dは親水性タンパク質であり、グリセロリン脂質、スフィンゴリン脂質、グリコスフィンゴ脂質、脂質A、およびリポグリカンを含む広範囲の両親媒性脂質と相互作用する。SP−AはDPPCに結合する。例を挙げると、静力学的相互作用は、SP−B模倣体、KL4、および天然界面活性剤中の脂質または表面活性剤中に含有される脂質の場合に認められる。例えば、KL4ペプチド中のリジン残基はDPPCの帯電したヘッド基と相互作用し、疎水性ロイシン残基はホスファチジルグリセロールのリン脂質アシル側鎖と相互作用する。
【0051】
特定の実施形態では、本明細書で開示される薬剤組成物は、哺乳類肺界面活性剤ポリペプチドまたはその模倣体の一部を含有する表面活性剤を含有し、脂質または脂質の混合物をさらに含有することはない。哺乳類肺界面活性剤ポリペプチドまたはその模倣体のほんの一部を含有する表面活性剤を含有する、吸入により投与される薬剤組成物は、静力学的相互作用により肺内の天然界面活性剤と相互作用しうる。例えば、組換えSP−Bは、アニオンリン脂質、例えばホスファチジルグリセロールへの結合により肺内の天然界面活性剤と相互作用しうる。
【0052】
他の実施形態では、本明細書で開示される薬剤組成物は、哺乳類肺界面活性剤ポリペプチドまたはその模倣体の一部と少なくとも1種の脂質の双方を含有する表面活性剤を含有する。ポリペプチドまたはその模倣体と少なくとも1種の脂質の双方を含有する薬剤組成物の肺内の天然界面活性剤への吸収を促進するため、リン脂質単層(天然界面活性剤中に見出されるものを模倣)が用いられうる。典型的な脂質混合物は、ジパルミトイルホスファチジルコリン/パルミトイルオレオイルホスファチジルグリセロールを、例えば7:3のw/w比で含有する。哺乳類肺界面活性剤ポリペプチドはリン脂質単層に挿入され、タンパク質/脂質混合物は吸入後に肺内の肺胞/気体界面で天然界面活性剤に吸収されうる。
【0053】
肺への活性薬剤
肺への活性薬剤は、限定はされないが、エラスターゼ阻害剤、コルチコステロイド、気管支拡張薬、抗生物質、および化学療法剤を含みうる。
【0054】
典型的なエラスターゼ阻害剤は図17中に示される化合物を含有する。他の典型的なエラスターゼ阻害剤は、Philip D.EdwardsおよびPeter R.Bernstein、「Synthetic inhibitors of Esterase」、Medicinal Research Reviews、第14巻、第2号、127−194頁(1994年)(参照により本明細書中に援用される)に記載の化合物を含有する。2種以上のエラスターゼ阻害剤は、本発明の表面活性剤に結合され、並行投与されうる。あるいは、エラスターゼ阻害剤は、表面活性剤に結合され、表面活性剤に結合された第2のエラスターゼ阻害剤と並行投与されうる。
【0055】
肺に送達されうる典型的なコルチコステロイド系は、限定はされないが、アルクロメタゾン、アルドステロン、アムシノニド、ベクロメタゾン、βメタゾン、ブデソニド、シクレソニド、クロベタゾル、クロベタゾン、クロコルトロン、クロプレドノール、コルチゾン、コルチバゾール、デフラザコート、デオキシコルチコステロン、デソニド、デスオキシメタゾン、デスオキシコルトン、デキサメタゾン、ジフロラゾン、ジフルコルトロン、ジフルプレドナート、フルクロロロン、フルドロコルチゾン、フルドロキシコルチド、フルメタゾン、フルニソリド、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、フルオコルチン、フルオコルトロン、フルオロメトロン、フルペロロン、フルプレドニデン、フルチカゾン、ホルモコータル、ハルシノニド、ハロメタゾン、ヒドロコルチゾン/コルチゾール、ヒドロコルチゾンアセポネート、ヒドロコルチゾンブテプラート、ヒドロコルチゾンブチラート、ロテプレドノール、メドリゾン、メプレドニゾン、メチルプレドニゾロン、メチルプレドニゾロンアセポネート、フランカルボン酸モメタゾン、パラメタゾン、プレドニカルベート、プレドニゾン、プレドニゾロン、プレドニリデン、リメキソロン、チキソコルトール、トリアムシノロン、およびウロベタゾールを含む。2種以上のコルチコステロイド系が本発明の表面活性剤に結合され、並行投与されうる。あるいは、コルチコステロイド系は、表面活性剤に結合され、表面活性剤に結合された第2のコルチコステロイド系と並行投与されうる。
【0056】
肺への活性薬剤はまた、短時間作用型β2アドレナリン受容体作動薬、長時間作用型β2アドレナリン受容体作動薬、短時間作用型抗コリン作動薬、および長時間作用型抗コリン作動薬などの気管支拡張薬を含有しうる。非限定的な短時間作用型β2アドレナリン受容体作動薬は、サルブタモールまたはアルブテロール、テルブタリン、フェノテロール、臭化水素酸フェノテロール、リミテロール、レプロテロール、ピルブテロール、イソプレナリン、オルシプレナリン、ビトルテロール、およびブロキサテロール(broxaterol)を含む。非限定的な長時間作用型β2アドレナリン受容体作動薬は、サルメテロール、キシナホ酸サルメテロール、フォルモテロール、フマル酸フォルモテロール、クレンブテロール、およびプロカテロールを含む。非限定的な短時間作用型抗コリン作動薬は、イプラトロピウム、臭化イプラトロピウム、オキシトロピウムおよびその塩を含む。非限定的な長時間作用型抗コリン作動薬は、チオトロピウムおよび臭化チオトロピウム水和物を含む。他の気管支拡張薬は、限定はされないが、アミノフィリン、オルシプレナリン、オクストリフィリン、硫酸テルブタリン、およびテオフィリンを含みうる。2種以上の気管支拡張薬が本発明の表面活性剤に結合され、並行投与されうる。あるいは、気管支拡張薬は、表面活性剤に結合され、表面活性剤に結合された第2の気管支拡張薬と並行投与されうる。
【0057】
肺に送達可能な典型的な抗生物質は、限定はされないが、ペニシリン系、ペニシリンおよびβラクタマーゼ系阻害剤、セファロスポリン系(第1世代、第2世代、第3世代、および第4世代)、マクロライド系およびリンコサミン系、キノロン系およびフルオロキノロン系、カルバペネム系、モノバクタム系、アミノグリコシド系、グリコペプチド系、テトラサイクリン系、スルホンアミド系、リファンピン系、オキサゾリドン系、ストレプトグラミン系、スルホンアミド系、ならびにその他を含む。2種以上の抗生物質が本発明の表面活性剤に結合され、並行投与されうる。あるいは、抗生物質は、表面活性剤に結合され、表面活性剤に結合された第2の抗生物質と並行投与されうる。
【0058】
典型的なペニシリン系は、限定はされないが、アモキシシリン、アンピシリン、バカンピシリン、カルベニシリン、カルベニシリンインダニル、メズロシリン、ピペラシリン、およびチカルシリンを含む。
【0059】
典型的なペニシリン系およびβラクタマーゼ系阻害剤は、限定はされないが、アモキシシリン−クラブラン酸、アンピシリン−スルバクタム、ベンジルペニシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、フェノキシメチルペニシリン、カルベニシリン、メチシリン、オキサシリン、ペニシリンG(ベンザチン、カリウム、プロカイン)、ペニシリンV、プロピシリン、エピシリン、シクラシリン、ピペラシリン+タゾバクタム、チカルシリン+クラブラン酸、およびナフィシリン(naficillin)を含む。
【0060】
典型的なセファロスポリン系(第1世代)は、限定はされないが、セファドロキシル、セファゾリン、セファレキシン、セファロチン、セファピリン、およびセフラジンを含む。セファロスポリン系(第2世代)は、限定はされないが、セファクロール、セファマンドール、セフォニシド、セフォラニド、セフォキシチン、セフプロジル、セフメタゾール、セフロキシム、セフロキシムアキセチル、およびロラカルベフを含む。セファロスポリン系(第3世代)は、限定はされないが、セフジニル、セフチブテン、セフジトレン、セフェタメト、セフォペラゾン、セフィキシム、セフォタキシム、セフポドキシム、セフタジジム、セフチブテン、セフチゾキシム、およびセフトリアキソンを含む。セファロスポリン系(第4世代)は、限定はされないがセフェピムを含む。
【0061】
典型的なマクロライド系およびリンコサミン系は、限定はされないが、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、クリンダマイシン、ジリスロマイシン、エリスロマイシン、リンコマイシン、テリスロマイシン、およびトロレアンドマイシンを含む。
【0062】
モノバクタム系は、限定はされないが、アズトレオナムを含む。カルバペネムは、限定はされないが、ドリペネム、イミペネム−シラスタチン、およびメロペネムを含む。
【0063】
アミノグリコシド系は、限定はされないが、アミカシン、硫酸アミカシン、ゲンタマイシン、硫酸ゲンタマイシン、カナマイシン、メチルマイシン(metilmicin)、ネオマイシン、ネチルマイシン、ストレプトマイシン、トブラマイシン、およびパロモマイシンを含む。
【0064】
グリコペプチド系は、限定はされないが、ダルババンシン、オリタバンシン、テラバンシン、テイコプラニン、およびバンコマイシンを含む。
【0065】
テトラサイクリン系は、限定はされないが、デメクロサイクリン、ドキシサイクリン、メタサイクリン、ミノサイクリン、オキシテトラサイクリン、テトラサイクリン、およびクロルテトラサイクリンを含む。
【0066】
オキサゾリジノン系は、限定はされないが、リネゾリドを含む。ストレプトグラミン系は、限定はされないが、キヌプリスチン+ダルホプリスチンを含む。
【0067】
スルホンアミド系は、限定はされないが、マフェニド、スルファジアジン銀、スルファセタミド、スルファジアジン、スルファメトキサゾール、スルファサラジン、スルファニルアミド、スルフイソキサゾール、トリメトプリム−スルファメトキサゾール、およびスルファメチゾールを含む。
【0068】
他の抗生物質として、限定はされないが、バシトラシン、クロラムフェニコール、コリスチメテート、ホスホマイシン、イソニアジド、メテナミン、メトロニダゾール、ムピロシン、ニトロフラントイン、ニトロフラゾン、ノボビオシン、ポリミキシンB、スペクチノマイシン、トリメトプリム、コリスチン、シクロセリン、カプレオマイシン、ピラジナミド、パラアミノサリチル酸、エリスロマイシンエチルスクシネート+スルフイソキサゾール、およびチゲサイクリンが挙げられる。
【0069】
肺に送達されうる化学療法薬は、限定はされないが、アルキル化剤、抗エストロゲン、アクラルビシン、アクチノマイシンD、アルデスロイキン、アレムツズマブ、アリトレチノイン、アロプリノール、アルトレタミン、アミホスチン、アナストロゾール、アスパラギナーゼ、ベキサロテン、ビサントレン、ブレオマイシン、ブスルファン、BCNU(カルムスチン)、カルステロン、カペシタビン、カルボプラチン、セレコキシブ、クロラムブシル、シスプラチン、クラドリビン、シクロホスファミド、シクロオキシゲナーゼ2阻害剤、シタラビン、CCNU(ロムスチン)、ダカルバジン、ダウノルビシン、ダウノマイシン、デニロイキン・ディフィトックス、デクスラゾキサン、ジアジコン、ドセタキセル、ドキソルビシン、エピルビシン、エポエチンα、エソルビシン、エストラムスチン、エトポシド(VP−16)、エキセメスタン、フィルグラスチム、フロクスウリジン、フルダラビン、5−フルオロウラシル、フルベストラント、ガラクチトール、ゲムシタビン、ゲムツズマブ、酢酸ゴセレリン、ヒドロキシ尿素、イブリツモマブチウキセタン、イダルビシン、イホスファミド、イマチニブメシル酸塩、インターフェロンα、インターフェロンγ、イリノテカン、イロプラチン(iroplatin)、レトロゾール、ロイコボリン、レバミゾール、ロニダミン、酢酸メゲストロール、メルファラン、メルカプトプリン、メスナ、メトトレキサート、メトキサレン、マイトマイシンC、ミトタン、ミトキサントロン、ミトグアゾン、フェンプロピオン酸ナンドロロン、ノフェツモマブ(Nofetumomab)、窒素マスタード、オプレルベキン、オキサリプラチン、パクリタキセル、パミドロネート、ペガデマーゼ、ペガスパルガーゼ、ペグフィルグラスチム、ペントスタチン、ピポブロマン、プリカマイシン、ポルフィマーナトリウム、プロカルバジン、プロゲスチン、プレドニムスチン、PCNU、キナクリン、ラスブリカーゼ、リツキシマブ、サルグラモスチム、ストレプトゾシン、タルク、タモキシフェン、テモゾロマイド、テニポシド(VM−26)、テストラクトン、チオグアニン、チオテパ、トポテカン、トレミフェン、トシツモマブ、トラスツズマブ、トレチノイン、ウラシルマスタード、バルルビシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、およびゾレドロネートを含む。
【0070】
2種以上の化学療法剤が本発明の表面活性剤に結合され、並行投与されうる。あるいは、化学療法剤は、表面活性剤に結合され、表面活性剤に結合された第2の化学療法剤と並行投与されうる。典型的な併用療法は、パクリタキセルおよびカルボプラチン、シスプラチンおよび酒石酸ビノレルビン、シスプラチンおよびエトポシド、ならびにカルボプラチンおよびエトポシドを含む。
【0071】
共有結合
多数の方法を用い、肺への活性薬剤が本発明で用いられる表面活性剤に共有結合されうる。一般に、肺への活性薬剤は、薬剤の天然部位を保存しかつ肺/気体界面での表面活性剤の有意な滞留時間を保持する結合またはリンカーを用いて表面活性剤に共有結合されうる。少なくとも1つの追加的残基が本明細書で開示される界面活性剤ポリペプチドのアミノもしくはカルボキシ末端または内部アミノ酸残基に付加され、薬剤分子を表面活性剤に共有結合するためのリンカーが生成されうる。典型的な実施形態では、SP−Bが少なくとも1つのアミノ酸により伸長され、非天然アミノ酸が自動ペプチド合成により生成されうる。薬剤は、アミノ酸、例えばグリシン残基にアミノ基またはヒドロキシル基により複合されうる。代表的な共有結合であれば、エステル、アミド、または尿素を含みうる(March、「Advanced Organic Chemistry」、第4版、John Wiley & Sons、1992年)。
【0072】
アミノ酸残基リンカーは通常、少なくとも1アミノ酸残基長であり、40以上のアミノ酸残基長、より多くの場合に1〜10アミノ酸残基長、およびほとんどの場合に1〜5アミノ酸残基長でありうる。リンカーは通常、小さい中性の極性また非極性アミノ酸である。連結に用いられる典型的なアミノ酸残基は、グリシン、チロシン、システイン、リジン、グルタミン酸、およびアスパラギン酸などである。
【0073】
他の実施形態では、リンカーは、天然アミノ酸ではないヘテロ二官能性リンカーでありうる。
【0074】
投与の方法
本発明の組成物は吸入により肺に送達される。吸入装置、例えば吸入器(乾燥粉末吸入器および定量吸入器を含む)および噴霧器(アトマイザーとしても知られる)を用い、開示される組成物が肺へ送達されうる。典型的な乾燥粉末吸入器は、米国特許第5,458,135号明細書;米国特許第5,740,794号明細書;米国特許第5,785,049号明細書(参照により本明細書中に援用される)に記載のように、Inhale Therapeutic Systemsから得られうる。乾燥粉末吸入器はまた、米国特許第6,029,661号明細書(参照により本明細書中に援用される)に記載のように、3Mから得られうる。
【0075】
本明細書で開示される組成物はまた、米国特許第5,320,094号明細書および米国特許第5,672,581号明細書(双方とも参照により本明細書中に援用される)に記載のように、医薬的に不活性な液体プロペラント、例えばクロロフルオロカーボン(CFC)またはフルオロカーボン中に薬剤の溶液または懸濁液を有する定量吸入器(MDI)を用いて投与されうる。定量吸入器は、作動または「一吹き(puff)」当たり固定単位用量の薬剤、例えば一吹き当たり10〜5000μgの薬剤の範囲内で送達するように設計される。典型的な定量阻害剤は、米国特許第5,224,183号明細書;米国特許第5,290,534号明細書;米国特許第5,511,540号明細書;米国特許第6,454,140号明細書;および米国特許第6,615,826号明細書(参照により本明細書中に援用される)に記載のように、3Mから得られうる。定量吸入器はまたCFCフリーでありうる。吸入器と併用されるべき薬剤組成物は、液体または懸濁液のエアロゾル化された固体粒子または小滴の形態でありうる。
【0076】
あるいは、本明細書中に記載の組成物は、溶媒中、例えば水中または生理食塩水中に溶解または懸濁され、噴霧により投与されうる。エアロゾル化溶液を送達するための典型的な噴霧器は、AERx(商標)(Aradigm)、Ultravent(登録商標)(Mallinkrodt)、Pari LC Plus(商標)またはPari LC Star(商標)(Pari GmbH(Germany))、DeVilbiss Pulmo−Aide、およびAcorn II(登録商標)(Marquest Medical Products)を含む。
【0077】
製剤
本明細書で開示される薬剤組成物は、気道および肺への吸入に適する担体中の粒子の溶液中および/または懸濁液中に調合されうる。かかる担体はまた、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」、第16版、1980年、Arthur Osol編(参照により本明細書中に援用される)に記載のように、気道への、粉末、霧またはエアロゾルからなる、例えば約0.5〜1ミクロン、および好ましくは約0.5〜約0.7ミクロンのオーダーの、細かい小滴の送達のための吸入剤および吸入可能な微粒子の送達のための吸入剤について熟知している当業者に周知である。
【0078】
一実施形態では、吸入投与用の薬剤組成物は粉末として投与されうる。粉末化された薬剤または組成物は通常、硬ゼラチンカプセルまたはブリスター包装などの容器あるいはマルチドーズデバイス(multi−dose devise)の内部に位置する。カプセルまたはブリスターは吸入器装置内部で破裂または開口することにより、粉末の吸入が可能になる。一般に、吸入に用いられる薬剤の平均粒径は1〜10ミクロンであり、ここで2〜5ミクロンの粒径範囲は肺の末梢気道の通過に特に適する。かかる粒径範囲は、一般に微粉末化または噴霧乾燥により得られる。
【0079】
粉末化された薬剤組成物は、薬剤と不活性担体のブレンドまたは混合物を含有する組成物として投与されることが多い。通常、不活性担体は薬剤の平均粒径よりも実質的に大きい平均粒径を有する。これにより、他にも利点はあるが、流れ特性における改善や組成物の正確な調合がもたらされる。
【0080】
生成される薬剤に対して一般に記述される担体材料は、炭酸カルシウムおよび糖類、例えばスクロース、マンニトールまたはデキストロース、あるいはより具体的には乳糖を含み、それらは、投与中に吸収される任意の残留物が消化時に良好な耐容性を示すか、あるいは肺からのディスイリュージョン(disillusion)(例えば糖類の場合)または粘液線毛クリアランスにより容易に除去されうることから、医薬的に許容でき、毒性の問題が全くない。
【0081】
カプセル中またはブリスター中の組成物は約25mgであることが多い。この重量は、おそらくは過度の副作用、例えば咳を伴うことなく楽に吸入されうる最も多量の粉末を示し、また通常は充填機により調合される最少量に対応する。
【0082】
特定の実施形態では、粉末吸入用に調合される組成物は、約95.0〜99.99重量%、より詳細には97.0〜99.9重量%、特に98.0〜99.8重量%の濃度で存在する担体を含有する。既知の方法の適用または適応によりかかる粉末を調製するための方法はまた、本発明の特徴となる。
【0083】
他の実施形態では、薬剤組成物は、当該技術分野で周知の方法を用い、エアロゾル製剤として調合されうる。かかるエアロゾル製剤を調合するために広く用いられる一方法は、薬剤の懸濁液製剤の液化プロペラントガス中の微粉化粉末としての作製を含む。あるいは、薬剤がおそらくは薬剤の溶解を補助するための可溶化剤および共溶媒を含有するプロペラント系中に溶解される場合、溶液製剤は調製されうる。加圧型定量吸入器(pMDI)は通常、患者に対してかかる製剤を調合するのに用いられる。プロペラントは、クロロフルオロカーボン(CFC)、フルオロカーボン(FC)、またはヒドロフルオロアルカン(HFA)プロペラントを含みうる。
【0084】
治療の方法
本開示はまた、肺炎症または肺疾患を患う対象を治療するための方法を提供する。別の実施形態では、本開示は、肺疾患に罹患するリスクがある対象を治療するための方法を提供する。本方法は、表面活性剤に共有結合された肺への活性薬剤を含有する複合体を対象に投与するステップを含み、ここで表面活性剤は、ヒト肺胞/気体界面に対して親和性を有しかつヒトに対して実質的に非免疫原性である哺乳類肺界面活性剤ポリペプチドまたはその模倣体の少なくとも一部を含有する。複合体は、肺内での薬剤効果を誘発するための有効量で、吸入により対象に投与される。対象は、ヒト、サル、チンパンジー、ウマ、イヌ、ネコ、ウシ、ヒツジ、ブタ、ラットまたはマウスでありうる。典型的な実施形態では、対象はヒトである。
【0085】
治療を必要とする対象は、肺炎症に罹患しているか、あるいは肺疾患に罹患しているかまたは罹患するリスクがある。本明細書中に記載の薬剤組成物で治療されうる典型的な肺疾患は、限定はされないが、気腫、慢性気管支炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息、呼吸窮迫障害(RDS)、肺炎、結核または他の細菌感染、嚢性線維症、および/または肺癌を含む。
【0086】
用量
表面活性剤に複合された肺への活性薬剤の投与により、未複合薬剤の投与に対して投与頻度が減少する。特定の実施形態では、投与ステップは、毎日、1日おき、3日おき、4日おき、5日おき、または1週ごとに1回反復されうる。
【実施例】
【0087】
本発明は、以下の実施例によりさらに例示される。実施例は、あくまで例示目的で提供され、かつ本発明の範囲または内容を限定するものとして解釈されるべきでは決してない。
【0088】
実施例1:SP−Bペプチドに対するヒト好中球エラスターゼ阻害剤の複合
1群の強力な小分子ヒト好中球エラスターゼ(HNE)阻害剤は、SP−Bのアミノ末端の25のアミノ酸(FPIPLPYCWLCRALIKRIQAMIPKG)(配列番号88)を含むSP−Bペプチドに複合されうる。アミノ末端の25のアミノ酸を含むSP−Bペプチドの全分子量は、水分子の除去後には2926.97である。HNE阻害剤は、図18中に表される連結に類似のグリシンリンカーを用い、SP−BのN末端の25−merに複合される。
【0089】
実施例2:標的Bの合成
反応に用いられるすべての溶媒はLRグレードの溶媒であった。室温(RT)は27〜32℃の範囲の温度を示す。すべての反応は、特定されない限り、TLCにより監視した。溶液を、ロータリーエバポレーターを用い、減圧下で蒸発させた。NMRをVarian 400MHz上で行った。カラムクロマトグラフィーは、特定されない限り、シリカゲル100〜200メッシュを用いて行った。
【0090】
ステージ1の合成
【化1】
乾燥テトラヒドロフラン(85mL)中のCbz−Val−Pro−OH(5g、14mモル)の溶液を窒素下で−20℃に冷却した。N−メチルモルホリン(1.74mL、15mモル)、次いでクロロぎ酸イソブチル(2mL、15mモル)を反応混合物に添加した。反応混合物を−20℃で15分間撹拌し、次いで−40℃に冷却した。テトラヒドロフラン(25mL)中のL−バリノール(1.62g、15mモル)の溶液を反応混合物に滴下添加した。反応混合物を室温になるまで一晩温めておいた。反応混合物を濾過し、濾過物を酢酸エチル(60mL)で希釈した。結合された有機層を、1N HCl(60mL)、NaHCO3(30mL)および塩水(30mL)で十分に洗浄した。有機層を硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過し、濃縮し、所望の生成物(5.7g)を得た。HPLC Rt:5.76;LCMS(M+1):434;収率:92.5%。
【0091】
ステージ2の合成
【化2】
乾燥ジクロロメタン(110mL)中の塩化オキサリル(2.45mL、28mモル)の溶液を−60℃に冷却し、ジクロロメタン(35mL)中のDMSO(4.09mL、57.7mモル)の溶液を1時間にわたって滴下添加し、反応混合物を−45℃の温度で維持した。反応混合物を−30℃まで温めておき、ジクロロメタン(35mL)中のステージ1(6.1g、14mモル)の溶液を1時間にわたって滴下添加した。反応混合物を−25℃で1時間撹拌した。反応混合物を−40℃に冷却し、ジイソプロピルエチルアミン(10mL、57.7mモル)を1時間にわたって滴下添加した。反応物を室温まで温め、次いで1N HCl(60mL)および塩水(60mL)で洗浄した。有機層を、減圧下で、硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過し、濾過物を濃縮し、所望の生成物(5.7g)を得た。HPLC Rt:6.81;LCMS(M+1):432;収率:94%。
【0092】
ステージ3の合成
【化3】
乾燥テトラヒドロフラン(100mL)中の亜鉛(2.5g、39mモル)およびステージ2(5.64g、13mモル)の懸濁液を窒素雰囲気下で60℃に加熱した。ブロモジフルオロ酢酸エチル(7.93g、39mモル)を添加し、反応物を60℃になるまで1時間加熱した。反応混合物を室温まで冷却し、テトラヒドロフランを減圧下で除去し、酢酸エチル(100mL)を添加した。反応混合物を1M KHSO4(50mL)および塩水(50mL)で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥した。有機層を減圧下で濾過し、濃縮し、粗生成物を得て、次いでそれを分取HPLCで精製し、所望の生成物(2.9g)を得た。HPLC Rt:7.44;LCMS(M+1):556;収率:40%。
【0093】
ステージ4の合成
【化4】
エタノール(40mL)中のステージ3(1.8g、3.2mモル)およびベンジルアミン(1.06mL、9.7mモル)の溶液を4時間還流で撹拌した。反応混合物を室温まで冷却し、窒素雰囲気下でさらに48時間撹拌した。溶媒を減圧下で除去した。残留物を酢酸エチル(50mL)中に溶解し、溶液を1N HCl(20mL)および塩水(20mL)で洗浄した。有機層を硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過し、溶媒を真空下で除去し、所望の生成物(1.7g)を得た。HPLC Rt:7.56;LCMS(M+1):616;収率:88%。
【0094】
ステージ5
【化5】
酢酸エチル(50mL)中のステージ4(1.85g、3mモル)および20%水酸化パラジウム(1g)の混合物を200psiでの圧力容器内に20時間入れた。反応混合物をセライトを通して濾過し、濾過物を真空下で濃縮し、所望の生成物を数種の出発原料とともに得て、それを、精製を全く伴わない追加的反応のためにそのまま用いた(1.1g)。HPLC Rt:4.90;LCMS(M+1):482;収率:80%。
【0095】
ステージ6
【化6】
0℃での乾燥ジクロロメタン(50mL)中のステージ5(1g、2.1mモル)の溶液にトリエチルアミン(0.25mL、1.8mモル)を添加した。次いで、ジクロロメタン(20mL)中の塩化エチルオキサリル(0.2mL、1.87mモル)の溶液を滴下添加した。反応混合物を室温まで温めておき、さらに2時間撹拌した。反応混合物を水(25mL)で急冷した。有機層を分離し、減圧下で、硫酸ナトリウム上で乾燥し、蒸発させ、所望の生成物を得て、次いでそれを分取HPLCにより精製した。HPLC Rt:6.72;LCMS(M+1):583;収率:0.5g(42%)。
【0096】
ステージ7
【化7】
トリフルオロ酢酸(0.92mL、12.02mモル)を、乾燥ジクロロメタン(25mL)中のステージ6(1.75g、3mモル)およびデス・マーチン・ペルヨージナン(5.1g、12.02mモル)の撹拌溶液に添加した。混合物を窒素雰囲気下、室温で4時間撹拌した。酢酸エチル(100mL)を添加し、混合物を飽和チオ硫酸ナトリウム(60mL)、飽和NaHCO3(60mL)および塩水(60mL)で洗浄した。有機層を、減圧下で、硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過し、蒸発させ、所望の生成物を得て、それを追加的ステップのためにそのまま用いた。HPLC Rt:7.32;LCMS(M+1):581;収率:1.7g(97%)。
【0097】
ステージ8
【化8】
メタノール対水1:1(20mL)中のステージ7(2.2g、3.7mモル)の溶液を1N NaOH(0.18g、4.5mモル)で処理し、室温で4時間撹拌した。反応混合物を濃縮し、メタノールを除去し、1N HClで酸性化し、酢酸エチル(60mL)で抽出した。有機層を、減圧下で、硫酸ナトリウム上で乾燥し、蒸発させ、所望の生成物を得て、次いでそれを分取HPLCにより精製した。HPLC Rt:6.47〜6.61;LCMS(M+1):553;収率:500mg(分取後24%)。
【0098】
ステージ9
【化9】
ワン樹脂(2.5g、0.5等量)をDMF(15mL)中の20%ピペリジンで処理し、約1時間撹拌した。次いでそれをDMF(2回、15mL)、DCM(3回、15mL)で洗浄し、次いで真空下で乾燥した。カイザー試験を樹脂上で行い、F−moc基の完全な除去を確認した。次いで、それをステージ8生成物との共役のために用いた。DMF中の樹脂の溶液に、DMF(5mL)中の上記の酸(97mg、0.176mモル)の溶液を添加後、PyBoP(91mg、0.176mモル)およびN−メチルモルホリン(0.24mL、0.22mモル)を添加した。反応混合物を振とう器上で約3時間振とう状態にした。溶液をデカントし、上記試薬の新しいロットを再び添加し、それをさらに3時間振とう状態にした。このプロセスを約4回繰り返した。溶液をデカントし、樹脂をDMF(3回、15mL)、DCM(3回、15mL)で洗浄し、真空下で乾燥した。カイザー試験を樹脂上で行い、共役が生じていることを確認した。
【0099】
ステージ10
【化10】
切断溶液を作製するための手順。TFA(81%)、フェノール(5%)、チオアニソール(5%)、1,2,エタンジチオール(2.5%)、水(3%)、硫化ジメチル(2%)、ヨウ化アンモニウム(1.5%)。樹脂に切断溶液を添加し、それを振とう器上で約3時間振とう状態にした。樹脂を、綿を通して濾過し、TFAで洗浄した。次いで、濾過物を真空下で濃縮し、冷却エーテルで粉末化し、白色固体を得て、次いでそれを分取HPLCにより精製し、所望の生成物を得た。LCMS(M/3):1155;収率:46mg(1.84%)。
【0100】
実施例3:標的Cの合成
ステージ6
【化11】
室温での乾燥THF(50mL)中のステージ5(3.2g、6.6mモル)の溶液に、マロン酸モノエチル(0.7mL、6mモル)、次いでHOBT(1.63g、12mモル)、EDCI(1.27g、6.6mモル)およびN−メチルモルホリン(1.6mL、15mモル)を添加した。次いで、反応混合物を室温で4時間撹拌しておいた。次いで、THFを除去するため、反応混合物を水で急冷し、減圧下で蒸発させた。次いで、水層を酢酸エチル(100mL)で抽出した。有機層を硫酸ナトリウム上で乾燥し、濃縮し、粗生成物を得て、次いでそれを分取HPLCにより精製した(0.98g)。HPLC Rt:6.44;LCMS(M+1):596;収率:分取後25%。
【0101】
ステージ7
【化12】
トリフルオロ酢酸(0.45mL、5.7mモル)を、乾燥ジクロロメタン(30mL)中のステージ6(0.86g、1.45mモル)およびデス・マーチン・ペルヨージナン(2.46g、5.7mモル)の撹拌溶液に添加した。混合物を窒素雰囲気下、室温で4時間撹拌した。酢酸エチル(50mL)を添加し、混合物を飽和チオ硫酸ナトリウム(20mL)、飽和NaHCO3(20mL)および塩水(20mL)で洗浄した。有機層を硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過し、溶媒を真空下で除去し、所望の生成物(0.74g)を得た。HPLC Rt:7.05;LCMS(M+1):595;収率:86%。
【0102】
ステージ8
【化13】
メタノール対水1:1(5mL:5mL)中のステージ7(0.75g、1.2mモル)の溶液を1N NaOH(0.060g、1.5mモル)で処理し、室温で4時間撹拌した。反応混合物を濃縮し、メタノールを除去し、(pH2になるまで)1N HClで酸性化し、酢酸エチル(50mL)で抽出した。有機層を、減圧下で、硫酸ナトリウム上で乾燥し、濃縮し、所望の生成物を得て、次いでそれを分取HPLCにより精製した(0.4g)。HPLC Rt:6.01〜6.51;LCMS(M+1):567;収率:分取後56%。
【0103】
ステージ9
【化14】
ワン樹脂(2g、0.08mモル)をDMF(20mL)中の20%ピペリジンで処理し、約1時間撹拌した。次いでそれをDMF(2回)、DCM(3回)で洗浄し、次いで減圧下で乾燥した。カイザー試験を樹脂上で行い、F−moc基の完全な除去を確認した。次いで、それをステージ8との共役のために用いた。DMF(5mL)中の樹脂(2g、0.08mモル)の溶液に、DMF(3mL)中の上記の酸(0.1g、0.16mモル)の溶液を添加後、PyBoP(0.83g、0.16mモル)およびN−メチルモルホリン(0.2mL、0.2mモル)を添加した。反応混合物を振とう器上で約3時間振とう状態にした。溶液をデカントし、上記試薬の新しいロットを再び添加し、それをさらに3時間振とう状態にした。このプロセスを約4回繰り返した。溶液をデカントし、樹脂をDMF(3回)、DCM(3回)で洗浄し、減圧下で乾燥した。カイザー試験を樹脂上で行い、共役が生じていることを確認した。
【0104】
ステージ10
【化15】
切断溶液(TFA(81%)、フェノール(5%)、チオアニソール(5%)、1,2,エタンジチオール(2.5%)、水(3%)、硫化ジメチル(2%)、ヨウ化アンモニウム(1.5%))を作製するための手順。樹脂に切断溶液(25mL)を添加し、それを振とう器上で約3時間振とう状態にした。樹脂を綿を通して濾過し、TFAで洗浄した。次いで、濾過物を減圧下で濃縮し、冷却エーテルで粉末化し、白色固体を得て、次いでそれを分取HPLCにより精製し、所望の生成物(0.080g)を得た。LCMS(M/3):1160;収率:2.4%。
【0105】
実施例4:HNE暴露後の肺の気管支肺胞洗浄
動物14匹の全部をこの試験で用いた。麻酔したマウスはブラントチップカテーテルにより気管の開口部に送達された溶液0.1mlを受け、動物の肺に溶液を吸引することができた。すべての動物を2時間の治療に暴露し、再麻酔した。肺の気管支肺胞洗浄を下記のように行った。HNE(気腫の原因物質)を与えた動物4匹は、0.053gの重量に対して平均肺血球レベルを有した。標的2(1990年代初期にZenecaにより開発された強力なHNE阻害剤)では、HNEを与えた際、肺内での平均血液レベルが34%低下し、0.035gになった。標的C(ヒト界面活性剤BペプチドのN末端の最初の25残基に共有結合されたZeneca分子)では、HNEを与えた際、肺内での平均血液レベルが87%低下し、0.007gになった。
【0106】
一連の動物を用い、試験におけるHNEの最適濃度を判定した。50μgのHNEに暴露した初期試料は暴露に対して生存しなかった。HNEの量を40μgに減少させることで、最も有害であるが生存可能な効果が維持された。40μgのHNEに暴露した動物は全試験を行うのに十分な長期間生存できた。全試験で生き残ったすべての動物を40μgのHNEに暴露した。
【0107】
標的2(Zeneca分子)をHNEに対して70倍過剰なモルで与えた。動態試験においては、標的2は2nMの親和性を有する。動態試験においては標的C(ヒト界面活性剤ペプチドBの最初の25残基に共有結合されたZeneca分子)は標的2に対して約2桁の効力を失うことから、標的CはHNEに対して約200nMの親和性を有する。したがって、これらの試験においては、標的CをHNEに対して100倍過剰なモルで動物に与えた。
【0108】
気管支肺胞洗浄(BAL)を、1)動物の麻酔;2)動物に対する気管切開の実行および胸部の切開および肋骨を広げて全肺への拡大の実現;3)PBS緩衝溶液1mlの気管切開カテーテルを通した肺への加圧;4)肺から外部への溶液の吸引;5)回収溶液の遠心分離による赤血球画分の液体画分からの分離;および6)赤血球画分の秤量により行う。
【0109】
【表2】
【0110】
参照による援用
本明細書中で参照される特許文献および科学論文の各々の開示内容全体は、あらゆる目的において参照により援用される。
【0111】
等価物
本発明は、その趣旨または本質的特質から逸脱することなく他の特定の形態で実現されうる。それ故、上記の実施形態は、本明細書中に記載の本発明について限定するものではなく、あらゆる観点で例示として解釈されるべきである。したがって、本発明の範囲は上記の説明ではなく添付の特許請求の範囲により示され、特許請求の範囲の等価物の意味および範囲に含まれるすべての変形は本明細書中に包含されるように意図されている。
【表1−1】
【表1−2】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2007年6月5日出願の米国仮特許出願第60/942,026号明細書の優先権を主張するものであり、その全体が参照により本明細書中に援用される。
【背景技術】
【0002】
慢性閉塞性肺疾患(COPD)、慢性気管支炎、および気腫を含む肺障害では、肺の内外において気流の慢性閉塞が存在する。これらの障害において現れる閉塞は持続性であることが多く、長期にわたり進行する。悪化すなわち呼吸機能の急性悪化によって罹患率および死亡率が上昇した。
【0003】
ここ数十年にわたるCOPDなどの慢性肺障害を治療するための研究においては、ヒト好中球エラスターゼ(HNE)の阻害剤の同定についての注目が集まっている。HNEは、構造タンパク質のフィブロネクチン、コラーゲン、およびエラスチンを含む極めて多数のタンパク質を分解する能力があるプロテアーゼである。HNEは、異常発現される場合、身体内で最も破壊的な酵素の中の1つである。HNEは組織破壊および炎症に関連性があり、COPD、嚢性線維症、および急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を含む極めて多数の肺疾患、ならびに身体の他の疾患に関与する。しかし、HNE阻害剤の開発はこれまで困難であり、数十年にわたり研究されているにもかかわらず、現市場で認められるHNE治療は1種類に過ぎず、それは日本国内だけでの使用が認められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
HNE阻害剤および肺治療用に設計された他の薬剤の開発は全身性治療を中心に行われている。かかるアプローチに伴う主な障害として、薬剤送達が経口、非経口、または吸入のいずれであっても肺内で多大な滞留時間がかかることである。したがって、有効な肺治療に対する需要は満たされていない状態である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、薬剤を肺に送達するための方法および組成物を提供する。現在、肺疾患の治療に関連した主な課題が肺内での活性薬剤分子の十分な滞留時間を得ることが困難であることは理解されている。肺は異物を除去する点で優れていることから、活性薬剤分子は所望の薬効が得られる前に肺から除去されうる。
【0006】
肺界面活性剤が肺内でII型肺胞上皮細胞(type II pneumocyte)により分泌され、肺胞内での表面張力が低下することから、呼気の際の肺胞破壊が阻止される。肺界面活性剤は、脂質とタンパク質の複合体であり、肺胞表面全体に広がることで表面張力が低下し、また肺内で長期間維持される。したがって、肺内の活性薬剤分子の滞留時間は、界面活性剤の脂質またはタンパク質に対する活性薬剤分子の共有結合により延長されうる。界面活性剤の脂質またはタンパク質に共有結合された活性薬剤分子の投与により、肺内での作用の持続時間の延長による用量の実質的減少および患者コンプライアンスの向上、活性薬剤分子の肺への局在化による全身毒性の低下、また局在化された肺濃度の有意な増加による有効性の向上がもたらされる。
【0007】
一態様では、本発明は、ヒト肺胞/気体界面に対して親和性を有する表面活性剤を含有する、吸入用に調合された薬剤組成物を提供する。表面活性剤は、ヒトに対して実質的に非免疫原性である哺乳類肺界面活性剤ポリペプチドまたはその模倣体の少なくとも一部を含有する。
【0008】
表面活性剤は肺への活性薬剤に共有結合され、それは肺/気体界面に接近可能な細胞外または細胞表面標的に結合する。細胞外または細胞表面標的は、例を挙げると、エラスターゼ、TNF受容体、EGF受容体、アドレナリン受容体、またはP2Xプリン受容体でありうる。特定の実施形態では、肺への活性薬剤に共有結合された表面活性剤は、細胞外または細胞表面標的に結合するものであり、限定はされないが結核、喘息、および肺癌を含む肺疾患を患う対象に投与される。例えば、結核(TB)に関与する作用物質は、マクロファージ内でのアポトーシスの下方制御により、破壊を回避し、細胞内増殖をもたらす。TBを有するマクロファージはP2Xプリン受容体を過剰発現する(Placidoら、Cell Immunol.244:10−8頁(2006年))。P2X作動薬、例えばATPはこれらのマクロファージ内でアポトーシスを誘発することから寄生性TBを殺滅することになる(Pfeifferら、J.Leukoc.Biol.75:1173頁(2004年))。ATPのベンゾイル誘導体は、P2X受容体の強力な細胞外作動薬であり、表面活性剤に共有結合され、長い持続時間のTB治療として吸入により送達されうる。β2アドレナリン受容体に対する作動薬は喘息を治療するための十分に確立された気管支拡張薬である(Anderson、Clin.Rev.Allergy Immunol.31:119−30頁(2006年))。しかし、β2アドレナリン受容体は遍在的に発現されることから、反復投与は有害な全身性副作用を有することになる可能性が高い。表面活性ペプチドに対するβ2アドレナリン受容体作動薬の共有結合によって活性剤が肺に対して本質的に分離することから、潜在的な全身毒性が回避または低減されることになる。表皮成長因子受容体(EGFR)は、乳癌を治療するための市販のハーセプチンなどの製剤とともに抗癌標的として認められている(Carney、Expert Rev.Mol.Diagn.7:309−19頁(2007年))。マトリックスメタロプロテアーゼは、細胞表面脱落機構を介してEGFRの内因性作動薬を放出することが示されている(Horiuchiら、Mol.Biol.Cell 18:176−188頁(2007年))。EGFRの活性化の阻害は非小細胞肺癌における有望な治療である(Y.H.Lingら、Molecular Pharmacology 72:248−58頁(2007年))。EGFRは、吸入により送達されるべき肺表面活性ペプチドへのMMPの小分子阻害剤の結合により、肺内で非活性化されうる。気腫、結核、喘息、および非小細胞肺癌を含むこれらの例は、吸入送達により肺内に特異的に存在する作用物質に対する治療分子の共有結合の一般性を示す。
【0009】
別の実施形態では、表面活性剤は、肺への活性薬剤および肺細胞に侵入する細胞膜透過性輸送分子に共有結合される。細胞内で機能する作用物質は、限定はされないが、レチノイド、スルビビン阻害剤、およびカスパーゼプロモーターを含む。
【0010】
別の実施形態では、表面活性剤は、ヒト肺界面活性剤または非ヒト哺乳類肺界面活性剤またはその画分を含有する。典型的な非ヒト哺乳類肺界面活性剤は、ウシ、ブタ、またはヒツジの肺界面活性剤またはその画分を含む。表面活性剤は、ヒトまたは非ヒト哺乳動物の肺から採取された哺乳類肺界面活性剤を含有するかまたはそれに由来する。
【0011】
別の実施形態では、表面活性剤は、哺乳類肺界面活性剤ポリペプチド、その対立遺伝子変異体、またはその合成模倣体の少なくとも一部を含有する。表面活性剤は、天然界面活性剤ポリペプチド、例えばSP−A、SP−B、SP−C、SP−D、それらの一部、またはそれらの混合物を含有しうる。表面活性剤は、SP−A、SP−B、SP−C、SP−Dの混合物またはその一部を含有しうる。典型的なペプチドは、天然界面活性剤ポリペプチドの少なくとも約5、10、15、20、25、30、35、40、45、もしくは50のアミノ酸断片を含む。表面活性剤は、SP−Bの少なくとも一部を含有しうる。典型的なSP−Bポリペプチドは、SP−Bの少なくとも約5、10、15、20、25、30、35、40、45、もしくは50のアミノ酸断片を含む。SP−Bペプチドは、アミノ末端ペプチドまたはカルボキシ末端ペプチドでありうる。典型的なSP−Bペプチドは、25のアミノ酸のアミノ末端ペプチドでありうる。
【0012】
別の実施形態では、表面活性剤は合成的に生成されるペプチドを含有する。ペプチド模倣体は、哺乳類肺界面活性剤ポリペプチドの少なくとも1つの欠失またはアミノ酸置換突然変異体を含みうる。ペプチド模倣体は、ヒト肺界面活性剤ポリペプチドの少なくとも1つの欠失またはアミノ酸置換突然変異体を含みうる。
【0013】
別の実施形態では、表面活性剤は組換え的に生成される界面活性剤ポリペプチドを含有しうる。組換え哺乳類肺界面活性剤ポリペプチド、例えばSP−A、SP−B、SP−C、SP−D、またはそれらの一部は、原核または真核発現系内での、SP−A、SP−B、SP−C、SP−D、またはそれらの一部をコードするDNAの発現により生成されうる。組換え界面活性剤ポリペプチドは、哺乳類肺界面活性剤ポリペプチドと同じかまたは異なりうる。組換えポリペプチドは、哺乳類、好ましくはヒト肺界面活性剤ポリペプチドの少なくとも1つの欠失またはアミノ酸置換突然変異体を含みうる。
【0014】
別の実施形態では、表面活性剤は界面活性剤ポリペプチドおよび脂質の双方を含有する。
【0015】
表面活性剤は肺への活性薬剤に共有結合される。肺への活性薬剤は、界面活性剤タンパク質または脂質に共有結合されうる。肺への活性薬剤は、界面活性剤ポリペプチドのアミノまたはカルボキシ末端アミノ酸または内部アミノ酸に共有結合されうる。特定の実施形態では、2つ以上の肺への活性薬剤が表面活性剤に結合される。他の実施形態では、単一の肺への活性薬剤が表面活性剤に結合され、かつ表面活性剤に結合された少なくとも1つの他の肺への活性薬剤と混合される。
【0016】
一実施形態では、肺への活性薬剤分子はアミノ酸または模倣体のリンカー、例えばグリシンリンカーで伸長され、自動ペプチド合成で用いられうる非天然アミノ酸が作製される。次いで、伸長された分子(すなわち薬剤+アミノ酸リンカー)はアミノ基またはヒドロキシル基を介して表面活性剤に結合されうる。
【0017】
肺への活性薬剤は、肺/気体界面に接近可能な細胞外または細胞表面結合標的に結合する。肺への活性薬剤は、エラスターゼ阻害剤、コルチコステロイド、気管支拡張薬、抗生物質、または化学療法剤でありうる。特定の実施形態では、2つ以上の肺への活性薬剤が表面活性剤に結合され、並行投与されうる。2つ以上の肺への活性薬剤が表面活性剤に共有結合される場合、薬剤は同じ薬剤、同じ薬剤クラスのメンバー、または異なる薬剤クラスのメンバーでありうる。
【0018】
薬剤組成物は、吸入装置によりヒト患者の肺に送達される。典型的な吸入装置は、固定用量吸入器、定量吸入器、および噴霧器を含む。
【0019】
別の態様では、本発明は、肺疾患に罹患しているかまたはそのリスクがある対象を治療するための方法を提供する。本方法は、ヒト肺胞/気体界面に対する親和性で特徴づけられる表面活性剤に共有結合された肺への活性薬剤を含有する複合体を投与するステップを含み、ここで表面活性剤は、ヒトに対して実質的に非免疫原性である哺乳類肺界面活性剤ポリペプチドまたはその模倣体の少なくとも一部を含有する。複合体は、肺内での薬剤効果を誘発するための有効量で吸入により対象に投与される。
【0020】
投与方法では、肺への活性薬剤がそれを必要とする対象の肺に対して標的にされる。本投与方法により、薬剤の全身バイオアベイラビリティが未複合薬剤の吸入投与に対して低下する。本投与方法により、肺内での薬剤の滞留時間が未複合薬剤の吸入投与に対して延長される。
【0021】
一実施形態では、肺への活性薬剤−表面活性剤複合体の投与により、投与頻度が未複合薬剤の投与に対して低下する。投与ステップは、毎日、1日おき、3日おき、4日おき、5日おき、または1週ごとに1回反復されうる。投与ステップは、プロペラント、定量吸入器(metered dosages)、または噴霧器を伴う場合または伴わない場合に、吸入器、エアロゾル、微粒子を用いて実施されうる。
【0022】
特定の実施形態では、治療を必要とする対象は、肺炎症もしくは疾患に罹患しているかまたは肺疾患に罹患するリスクがある。治療を必要とする対象は、気腫、慢性気管支炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息、呼吸窮迫障害(RDS)、肺炎、結核または他の細菌感染、嚢胞性線維症、および/または肺癌に罹患している場合がある。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1Aは、ヒト界面活性剤タンパク質Aをコードする核酸配列(配列番号1)を示す。図1Bは、ヒト界面活性剤タンパク質Aにおけるアミノ酸配列(配列番号2)を示す。
【図2】図2Aは、ヒト界面活性剤タンパク質Bをコードする核酸配列(配列番号3)を示す。図2Bは、ヒト界面活性剤タンパク質Bにおけるアミノ酸配列(配列番号4)を示す。図2Cは、成熟ヒト界面活性剤タンパク質Bにおけるアミノ酸配列(配列番号5)を示す。
【図3】図3Aは、ヒト界面活性剤タンパク質Cをコードする核酸配列(配列番号6)を示す。図3Bは、ヒト界面活性剤タンパク質Cにおけるアミノ酸配列(配列番号7)を示す。図3Cは、成熟ヒト界面活性剤タンパク質Cにおけるアミノ酸配列(配列番号8)を示す。
【図4】図4Aは、ヒト界面活性剤タンパク質Dをコードする核酸配列(配列番号9)を示す。図4Bは、ヒト界面活性剤タンパク質Dにおけるアミノ酸配列(配列番号10)を示す。図4Cは、成熟ヒト界面活性剤タンパク質Dにおけるアミノ酸配列(配列番号11)を示す。
【図5】図5Aは、ウシ界面活性剤タンパク質Aをコードする核酸配列(配列番号12)を示す。図5Bは、ウシ界面活性剤タンパク質Aにおけるアミノ酸配列(配列番号13)を示す。
【図6】図6Aは、ウシ界面活性剤タンパク質Bをコードする核酸配列(配列番号14)を示す。図6Bは、ウシ界面活性剤タンパク質Bにおけるアミノ酸配列(配列番号15)を示す。
【図7】図7Aは、ウシ界面活性剤タンパク質Cをコードする核酸配列(配列番号16)を示す。図7Bは、ウシ界面活性剤タンパク質Cにおけるアミノ酸配列(配列番号17)を示す。
【図8】図8Aは、ウシ界面活性剤タンパク質Dをコードする核酸配列(配列番号18)を示す。図8Bは、ウシ界面活性剤タンパク質Dにおけるアミノ酸配列(配列番号19)を示す。
【図9】図9Aは、ブタ界面活性剤タンパク質Aをコードする核酸配列(配列番号20)を示す。図9Bは、ブタ界面活性剤タンパク質Aにおけるアミノ酸配列(配列番号21)を示す。
【図10】図10Aは、部分的なブタ界面活性剤タンパク質Bをコードする核酸配列(配列番号22)を示す。図10Bは、ブタ界面活性剤タンパク質Bにおける部分的アミノ酸配列(配列番号23)を示す。
【図11】図11Aは、ブタ界面活性剤タンパク質Cをコードする核酸配列(配列番号24)を示す。図11Bは、ブタ界面活性剤タンパク質Cにおけるアミノ酸配列(配列番号25)を示す。
【図12】図12Aは、ブタ界面活性剤タンパク質Dをコードする核酸配列(配列番号26)を示す。図12Bは、ブタ界面活性剤タンパク質Dにおけるアミノ酸配列(配列番号27)を示す。
【図13】図13Aは、ヒツジ界面活性剤タンパク質Aをコードする核酸配列(配列番号28)を示す。図13Bは、ヒツジ界面活性剤タンパク質Aにおけるアミノ酸配列(配列番号29)を示す。
【図14】図14Aは、ヒツジ界面活性剤タンパク質Bをコードする核酸配列(配列番号30)を示す。図14Bは、ヒツジ界面活性剤タンパク質Bにおけるアミノ酸配列(配列番号31)を示す。
【図15】図15Aは、ヒツジ界面活性剤タンパク質Cをコードする核酸配列(配列番号32)を示す。図15Bは、ヒツジ界面活性剤タンパク質Cにおけるアミノ酸配列(配列番号33)を示す。
【図16】図16Aは、部分的なヒツジ界面活性剤タンパク質Dをコードする核酸配列(配列番号34)を示す。図16Bは、ヒツジ界面活性剤タンパク質Dにおける部分的アミノ酸配列(配列番号35)を示す。
【図17−1】典型的なヒト好中球エラスターゼ(HNE)阻害剤を示す表である。表中で列挙される参照番号は、Philip D.EdwardsおよびPeter R.Bernstein、「Synthetic Inhibitors of Elastase」、Medicinal Research Reviews、第14巻、第2号、127−194頁(1994年)において参照される化合物の識別子に対応する。
【図17−2】典型的なヒト好中球エラスターゼ(HNE)阻害剤を示す表である。表中で列挙される参照番号は、Philip D.EdwardsおよびPeter R.Bernstein、「Synthetic Inhibitors of Elastase」、Medicinal Research Reviews、第14巻、第2号、127−194頁(1994年)において参照される化合物の識別子に対応する。
【図17−3】典型的なヒト好中球エラスターゼ(HNE)阻害剤を示す表である。表中で列挙される参照番号は、Philip D.EdwardsおよびPeter R.Bernstein、「Synthetic Inhibitors of Elastase」、Medicinal Research Reviews、第14巻、第2号、127−194頁(1994年)において参照される化合物の識別子に対応する。
【図17−4】典型的なヒト好中球エラスターゼ(HNE)阻害剤を示す表である。表中で列挙される参照番号は、Philip D.EdwardsおよびPeter R.Bernstein、「Synthetic Inhibitors of Elastase」、Medicinal Research Reviews、第14巻、第2号、127−194頁(1994年)において参照される化合物の識別子に対応する。
【図17−5】典型的なヒト好中球エラスターゼ(HNE)阻害剤を示す表である。表中で列挙される参照番号は、Philip D.EdwardsおよびPeter R.Bernstein、「Synthetic Inhibitors of Elastase」、Medicinal Research Reviews、第14巻、第2号、127−194頁(1994年)において参照される化合物の識別子に対応する。
【図18】代表的な気腫阻害剤の化学合成を示す概略図である。図示される気腫阻害剤はグリシンリンカーを含有する。グリシンリンカー(円)は、化合物を、SP−BのN末端の1〜25のアミノ酸に対する共有結合のための標準のペプチド合成反応において用いられうる非天然アミノ酸に変換する。
【図19】HNE阻害剤として用いられる典型的な標的を示す表である。ヒト界面活性剤BペプチドのN末端の最初の25残基に結合される標的2は標的Cを形成する。同様に、ヒト界面活性剤BペプチドのN末端の最初の25残基に結合される標的3は標的Bを形成する。
【発明を実施するための形態】
【0024】
界面活性剤タンパク質
表面活性剤は、ヒトに対して実質的に非免疫原性である哺乳類肺界面活性剤ポリペプチドの少なくとも一部を含有する。ポリペプチドまたはその一部は、哺乳類肺界面活性剤部分またはその合成模倣体でありうる。典型的な界面活性剤ポリペプチドは、動物に由来し、組換えられ、合成される類似体、またはペプチド模倣体でありうる。
【0025】
肺の天然界面活性剤タンパク質は、SP−A、SP−B、SP−C、SP−D、またはそれらの一部を単独でまたは脂質と組み合わせられた状態で含む(米国特許第5,302,581号明細書)。一部の実施形態では、表面活性剤は完全長の界面活性剤ポリペプチドを含有する。他の実施形態では、表面活性剤は界面活性剤ポリペプチドの一部を含有する。例えば、ヒトSP−Bは79アミノ酸残基ポリペプチドであるが、SP−BのN末端の25アミノ酸残基は全ペプチドに匹敵する治療効果を有する(KurutzおよびLee、Biochem.、41、9627−36頁(2002年))。肺の天然界面活性剤タンパク質の典型的なペプチドは、少なくとも約5、10、15、20、25、30、35、40、45、もしくは50アミノ酸長でありうる。ヒトSP−Bの典型的なペプチドは表1に示される。
【0026】
一実施形態では、表面活性剤は、検視時のヒト死体の肺洗浄または同意成人の肺洗浄により得られるヒト肺界面活性剤を含有する。
【0027】
特定の実施形態では、表面活性剤は非ヒト哺乳類肺界面活性剤またはその画分を含有する。典型的な非ヒト界面活性剤は、ウシ、ブタまたはヒツジ肺界面活性剤またはその画分を含む。非ヒト界面活性剤は、当該技術分野で周知の技術を用いて非ヒト哺乳動物の肺から採取されうる。例えば、Bernhardら、Am.J.Respir.Cell Mol.Biol.17:41−50頁(1997年)(参照により本明細書中に援用される)に記載のように、ブタ界面活性剤は新生および/または成体ブタから得られる場合があり、そこでは生理食塩水で気管支肺胞洗浄(BAL)がなされた肺が採取される。採取されたBAL流体は遠心分離され、細胞が摘出され、次いで無細胞BAL流体がさらに遠心分離され、生の界面活性剤ペレットが生成される。Brackenburyら、Am.J.Respir Cir.Care Med.163:1135−1142頁(2001年)(参照により本明細書中に援用される)に記載のように、ヒツジ界面活性剤は成体ヒツジの全肺洗浄物から得られうる。採取された肺胞洗浄物は遠心分離され、細胞残屑の採取後にさらに遠心分離され、界面活性剤凝集ペレットに対応するペレットが得られる。Pandaら(J Colloid Interface Sci、311:551−5頁(2007年))(参照により本明細書中に援用される)に記載のように、ウシ界面活性剤もまた成体ウシの肺洗浄物から得られうる。リン脂質、中性脂質、SP−BおよびSP−Cポリペプチドを含有する天然ウシ界面活性剤抽出物であるAlveofact(登録商標)もまた用いられうる。
【0028】
ヒト肺界面活性剤に由来するかまたはそれに類似した特性を有するタンパク質およびポリペプチドもまた用いられうる。例えば、SP−Bは、Beersら、Am.J.Physiol Lung Cell Mol.Physiol.262:L773−L778頁(1992年)(参照により本明細書中に援用される)に記載のように、ディファレンシャル(differential)有機抽出、カラムクロマトグラフィー、および/または分取SDS−PAGEを用い、ウシ界面活性剤から単離されうる。
【0029】
哺乳類肺界面活性剤ポリペプチドまたはその一部はまた、組換え的に生成されうる。組換えSP−A、SP−B、SP−C、SP−D、またはそれらの一部は、様々な既知の技術を用い、適切な原核または真核発現系内での、SP−A、SP−B、SP−C、SP−D、またはそれらの一部をコードするDNA配列の発現により得られうる。界面活性剤ポリペプチドまたはその一部をコードする単離核酸を含むように容易に適合された組換えベクター、組換えベクターを有する宿主細胞、およびかかるベクターおよび宿主細胞を作成する方法、ならびに組換え技術によりコードされたポリペプチドを生成するためのそれらの使用については周知である。界面活性剤ポリペプチドまたはその一部をコードする核酸は、少なくとも1つの調節配列に作動可能に連結された界面活性剤ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む発現ベクター内に提供されうる。発現ベクターの設計が形質転換されるべき宿主細胞の選択および/または発現が望まれるタンパク質のタイプなどの要素に依存しうることは理解されるべきである。ベクターのコピー数、そのコピー数を制御する能力、およびベクターによりコードされる任意の他のタンパク質、例えば抗生物質マーカーの発現については考慮されるべきである。対象の核酸を用い、例えば培養物中で増殖された細胞内でのキナーゼまたはホスファターゼポリペプチドの発現および過剰発現が誘発され、融合タンパク質またはポリペプチドを含むタンパク質またはポリペプチドが生成されうる。
【0030】
宿主細胞は、界面活性剤ポリペプチドまたはその一部を発現するため、組換え遺伝子が形質移入されうる。宿主細胞は任意の原核または真核細胞でありうる。例えば、ポリペプチドは、細菌細胞、例えば大腸菌(E.coli)、昆虫細胞(バキュロウイルス)、酵母、または哺乳類細胞において発現されうる。宿主細胞がヒトである場合の例においては、それは生存対象内に存在する場合もあれば存在しない場合もある。他の適切な宿主細胞は当業者に既知である。さらに、宿主細胞は、ポリペプチドの発現を最適化するように、典型的には宿主内で見出されないtRNA分子で補完されうる。ポリペプチドの発現の最大化に適する他の方法は当業者に既知であろう。
【0031】
ポリペプチドを生成する方法は当該技術分野で周知である。例えば、界面活性剤ポリペプチドまたはその一部をコードする発現ベクターが形質移入された宿主細胞が適切な条件下で培養されることで、ポリペプチドの発現が生じうる。ポリペプチドは、細胞およびポリペプチドを含有する培地の混合物から分泌され、単離されうる。あるいは、ポリペプチドは細胞質に保持されうる。次いで、細胞が採取され、溶解され、タンパク質は細胞溶解液から単離される。
【0032】
細胞培養物は、宿主細胞、培地、および他の副生成物を含む。細胞培養に適する培地は当該技術分野で周知である。ポリペプチドは、硫酸アンモニウムまたはエタノールでの沈殿、酸抽出、アニオンまたはカチオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、リン酸セルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、親和性クロマトグラフィー、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、レクチンクロマトグラフィー、限界濾過、電気泳動、本発明のポリペプチドの特定のエピトープに対する特異的抗体での免疫親和性精製、および高性能液体クロマトグラフィー(「HPLC」)を含む、タンパク質を精製するための当該技術分野で既知の技術を用い、細胞培地、宿主細胞、またはその双方から単離されうる。したがって、界面活性剤ポリペプチドの全部または選択された一部をコードするヌクレオチド配列を用い、微生物または真核細胞過程によりタンパク質の組換え形態が生成されうる。配列のポリヌクレオチドコンストラクト、例えば発現ベクターへのライゲート、および宿主すなわち真核生物(酵母、鳥類、昆虫または哺乳類)または原核生物(細菌細胞)のいずれかへの形質転換または形質移入は、標準的方法である。類似の方法またはその改良を用い、本発明の組換えポリペプチドが微生物的手段または組織培養技術により調製されうる。
【0033】
組換えタンパク質を生成するための発現媒体はプラスミドおよび他のベクターを含む。例えば、本発明のポリペプチドの発現に適するベクターは、以下のタイプのプラスミド、すなわち、原核細胞、例えば大腸菌(E.coli)内で発現される、pBR322由来プラスミド、pEMBL由来プラスミド、pEX由来プラスミド、pBTac由来プラスミドおよびpUC由来プラスミドを含む。
【0034】
特定の実施形態では、哺乳類発現ベクターは、細菌内でのベクターおよび真核細胞内で発現される1つ以上の真核転写単位の増殖を促進する両方の原核生物配列を有する。pcDNAI/amp、pcDNAI/neo、pRc/CMV、pSV2gpt、pSV2neo、pSV2−dhfr、pTk2、pRSVneo、pMSG、pSVT7、pko−neoおよびpHygに由来するベクターは真核細胞の形質移入に適する哺乳類発現ベクターの例である。これらのベクターの一部は、細菌プラスミド、例えばpBR322に由来する配列で修飾され、原核および真核細胞の双方における複製および薬剤耐性選択が促進される。あるいは、ウシパピローマウイルス(BPV−I)、またはエプスタイン−バーウイルス(pHEBo、pREP由来およびp205)などのウイルスの誘導体は、真核細胞内でのタンパク質の一時的発現に用いられうる。プラスミドの調製および宿主生物の形質転換において用いられる様々な方法は当該技術分野で周知である。原核および真核細胞の双方における他の適切な発現系ならびに一般的な組換え方法においては、「Molecular Cloning A Laboratory Manual」、第2版、Sambrook、FritschおよびManiatis編(Cold Spring Harbor Laboratory Press、1989年)、第16章および第17章を参照のこと。場合によっては、組換えタンパク質をバキュロウイルス発現系の使用により発現することが望ましいことがある。かかるバキュロウイルス発現系の例として、pVL由来ベクター(pVL1392、pVL1393およびpVL941など)、pAcUW由来ベクター(pAcUWlなど)、およびpBlueBac由来ベクター([β]−galを有するpBlueBac IIIなど)が挙げられる。
【0035】
別の実施形態では、タンパク質の生成はインビトロ翻訳系を用いてなされうる。インビトロ翻訳系は、一般に、RNA分子のタンパク質への翻訳に必要な少なくとも最小の因子を有する無細胞抽出物である翻訳系である。インビトロ翻訳系は、典型的には、少なくともリボソーム、tRNA、イニシエーターのメチオニル−tRNAMet、翻訳に関与するタンパク質または複合体、例えばeIF2、eIF3、キャップ結合タンパク質(CBP)および真核開始因子4F(eIF4F)を含むキャップ結合(CB)複合体を含む。種々のインビトロ翻訳系は当該技術分野で周知であり、市販のキットを含む。インビトロ翻訳系の例として、真核溶解物、例えばウサギ網状赤血球溶解物、ウサギ卵母細胞溶解物、ヒト細胞溶解物、昆虫細胞溶解物および小麦麦芽抽出物が挙げられる。溶解物は、Promega Corp.(Madison,Wis.)、Stratagene(La Jolla,Calif.)、Amersham(Arlington Heights,IU.)およびGIBCO/BRL(Grand Island,N.Y.)などの製造業者から市販されている。インビトロ翻訳系は、典型的には高分子、例えば酵素、翻訳、開始および伸長因子、化学試薬、ならびにリボソームを含む。さらに、インビトロ転写系が用いられうる。かかる系は、典型的には、少なくともRNAポリメラーゼホロ酵素、リボヌクレオチドおよび任意の必要な転写開始、伸長および終結因子を含む。インビトロ転写および翻訳はワンポット反応で共役され、タンパク質が1つ以上の単離DNAから生成されうる。ポリペプチドのカルボキシ末端断片の発現、すなわち切断突然変異体が望ましい場合、開始コドン(ATG)を、発現されるべき所望の配列を有するオリゴヌクレオチド断片に付加することが必要でありうる。N末端位置でのメチオニンが酵素のメチオニンアミノペプチダーゼ(MAP)の使用により酵素的に切断されうることは当該技術分野で周知である。MAPは大腸菌(E.coli)(Ben−Bassatら、(1987年)J Bacteriol.169:751−757頁)およびネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)からクローン化されており、そのインビトロ活性は組換えタンパク質上で示されている(Millerら、(1987年)PNAS USA 54:2718−1722頁)。したがって、必要に応じ、N末端メチオニンの除去が、MAPを生成する宿主(例えば、大腸菌(E.coli)またはCM89または出芽酵母(S.cerevisiae))内でのかかる組換えポリペプチドのインビボでの発現か、または精製MAPのインビトロでの使用(例えばMillerらの方法)のいずれかによりなされうる。
【0036】
本発明のポリペプチドはまた、様々な変化、例えば挿入、欠失、および保存的または非保存的置換を受ける場合があり、ここでかかる変化はその使用において特定の利点をもたらす。保存的置換とは、1つのアミノ酸残基が別の生物学的に類似の残基で置換される場合である。保存的置換の例として、イソロイシン、バリン、ロイシンまたはメチオニンなどの1つの疎水残基と別の残基との置換、あるいはアルギニンとリジンの間、グルタミン酸とアスパラギン酸の間またはグルタミンとアスパラギンの間など、1つの極性残基と別の残基との置換が挙げられる。「保存的置換」という用語はまた、かかるポリペプチドが必須の結合活性をも示すという条件での、未置換の親アミノ酸の代わりとしての置換アミノ酸の使用を含む。
【0037】
本発明のポリペプチドはまた、完全長成熟ポリペプチドに対して切断されうる。ポリペプチドは、アミノ末端、カルボキシ末端、または両末端のいずれかで切断されうる。ポリペプチドは、少なくとも1つのアミノ酸、または少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65もしくは70のアミノ酸で切断されうる。
【0038】
哺乳類肺界面活性剤ポリペプチドまたはその一部は、ポリペプチド技術分野における当業者に既知の技術によりアミノ酸から合成されうる。多数の利用可能な技術の概要が、固相ペプチド合成については、J.M.StewardおよびJ.D.Young、「Solid Phase Peptide Synthesis」、W.H.Freeman Co.(San Francisco)、1969年、およびJ.Meienhofer、「Hormonal Proteins and Peptides」、第2巻、46頁、Academic Press(New York)、1983年の中に、ならびに従来の溶液合成については、E.SchroderおよびK.Kubke、「The Peptides」、第1巻、Academic Press(New York)、1965年の中に見出されうる。
【0039】
一般に、これらの方法は、1つ以上のアミノ酸残基または適切に保護されたアミノ酸残基の成長するペプチド鎖への順次付加を含む。通常、第1のアミノ酸残基のアミノ基またはカルボキシル基のいずれかが、適切な選択的に除去可能な保護基により保護される。反応性側基を有するアミノ酸(例えばリジン)においては、選択的に除去可能な異なる保護基が用いられる。
【0040】
一例として固相合成を用いると、保護または脱保護アミノ酸は、その未保護のカルボキシル基またはアミノ基を介して不活性の固体支持体に結合される。次いで、アミノ基またはカルボキシル基の保護基は選択的に除去され、適切に保護された相補(アミノまたはカルボキシル)基を有する配列内の次のアミノ酸が、既に固体支持体に結合された残基とのアミド結合の形成に適する条件下で混合され、反応される。次いでアミノ基またはカルボキシル基の保護基はこの新しく付加されたアミノ酸残基から除去され、次いで(適切に保護された)次のアミノ酸が付加される、といったことが生じる。すべての所望のアミノ酸が適切な配列内で結合された後、任意の残存する末端基および側基の保護基(および任意の固体支持体)が順次または同時に除去され、最終のポリペプチドが得られる。次いで、そのポリペプチドは低級脂肪族アルコール中への溶解により洗浄され、乾燥される。乾燥された界面活性剤ポリペプチドは、必要に応じ、既知の技術によりさらに精製されうる。
【0041】
特定の実施形態では、αアミノ基のt−BOCまたはf−MOC保護などの一般に用いられる方法が用いられうる。両方の方法は、単一のアミノ酸がペプチドのC末端から開始される各ステップで付加されるという段階的合成を含む(Coliganら、「Current Protocols in Immunology」、Wiley Interscience、1991年、Unit9を参照)。本発明のペプチドは、例えば、0.1〜1.0mモルのアミン/gポリマーを有するコポリ(スチレン−ジビニルベンゼン)を用い、Merrifield、J.Am.Chem.Soc.85:2149頁、1962年と、StewartおよびYoung、1969年、「Solid Phase Peptide Synthesis」、27−62頁に記載の周知の固相ペプチド合成方法により合成されうる。化学合成の完了時、ペプチドは、0℃で約1/4〜1時間にわたる液体HF−10%アニソールでの処理により、ポリマーから脱保護され、切断されうる。試薬の蒸発後、ペプチドは1%酢酸溶液でポリマーから抽出され、次いで凍結乾燥により原料が得られる。これは通常、溶媒として5%酢酸を用いるSephadex G−15上でのゲル濾過などの技術により精製されうる。カラムの適切な画分の凍結乾燥により均一なペプチドまたはペプチド誘導体が得られることになり、次いでそれはアミノ酸分析、薄層クロマトグラフィー、高性能液体クロマトグラフィー、紫外線吸収分光、モル回転、溶解度などの標準技術により特徴づけられ、固相エドマン分解により定量されうる。
【0042】
一実施形態では、組換えおよび/または合成SP−Bペプチドは、配列番号5のアミノ酸2、4、6、および9を有する。配列番号5のプロリン2、4、および6とトリプトファン9は、タンパク質機能における本質的な構造モチーフを構成しうる。一部の実施形態では、SP−Bペプチドは、(配列番号5について)トリプトファン9のアミノ酸以外の任意のアミノ酸残基で置換されうる。
【0043】
肺界面活性剤ポリペプチド模倣体は、一般にヒト界面活性剤タンパク質の本質的な特性を模倣するように改変されたポリペプチドである。典型的な模倣ペプチドはSP−Bを模倣する。SP−B模倣体の一例が、KL4、すなわち配列KLLLLKLLLLKLLLLKLLLLK(配列番号94)を含む21アミノ酸残基ペプチドである。このSP−B模倣タンパク質はまた、Lucinactant(Surfaxin(登録商標)、Discovery Laboratories)として知られている。
【0044】
界面活性剤脂質
特定の実施形態では、本発明で用いられる表面活性剤は界面活性剤タンパク質、その一部、またはその混合物を含有し、インビボで天然界面活性剤脂質と結合する。他の実施形態では、本発明で用いられる表面活性剤は脂質または脂質−タンパク質複合体を含有する。
【0045】
天然の哺乳類肺界面活性剤は、リン脂質、中性リン脂質、およびタンパク質の複合体である。本明細書で開示の本発明で用いられる表面活性剤は1種以上の脂質を含有しうる。一部の実施形態では、表面活性剤は、得られる組成物が界面活性剤活性を有する限り、例えばわずか約0.05〜100%重量パーセントの脂質を含有しうる。重量パーセントは、組成物(重量)中の化合物(重量)の百分率を意味する。したがって、50重量パーセントの脂質を有する組成物は、例えば100グラムの全組成物当たり50グラムの脂質を含有する。表面活性剤は0.1〜50重量パーセントの脂質を含有しうるが、より高濃度の脂質が用いられうる。したがって、リン脂質と界面活性剤ポリペプチドまたはその一部の双方を含有する表面活性剤は、0.1、1、10、50、80〜約100重量パーセントの脂質と、約50、20、10重量パーセント〜1重量パーセント未満の界面活性剤ポリペプチドを含有しうる。あるいは、表面活性剤は脂質対界面活性剤ポリペプチドの逆比を含有しうる。
【0046】
本明細書で用いられる「脂質」という用語は、一般に両親媒性である、天然、合成または半合成(すなわち修飾天然)化合物を示す。脂質は、典型的には親水性成分および疎水性成分を含有する。典型的な脂質は、限定はされないが、リン脂質、脂肪酸、脂肪アルコール、中性脂肪、ホスファチド、オイル、糖脂質、脂肪族アルコール、ワックス、テルペンおよびステロイドを含む。半合成(または修飾天然)という語句は、いくつかの方法で化学的に修飾されている天然化合物を意味する。
【0047】
リン脂質の例として、天然および/または合成リン脂質が挙げられる。用いられうるリン脂質は、限定はされないが、ホスファチジルコリン(飽和および不飽和)、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸、ホスファチジルイノシトール、スフィンゴ脂質、ジアシルグリセリド、カルジオリピン、セラミド、セレブロシドなどを含む。典型的なリン脂質は、限定はされないが、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジラウリルホスファチジルコリン(DLPC)(C12:0)、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)(C14:0)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジフィタノイルホスファチジルコリン、ノナデカノイルホスファチジルコリン、アラキドイルホスファチジルコリン、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)(C18:1)、ジパルミトレオイルホスファチジルコリン(C16:l)、リノレオイルホスファチジルコリン(C18:2)、ミリストイルパルミトイルホスファチジルコリン(MPPC)、ステアロイルミリストイルホスファチジルコリン(SMPC)、ステアロイルパルミトイルホスファチジルコリン(SPPC)、パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン(POPC)、パルミトイルパルミトオレオイルホスファチジルコリン(PPoPC)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、パルミトイルオレオイルホスファチジルエタノールアミン(POPE)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン(DMPE)、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG)、パルミトイルオレオイルホスファチジルグリセロール(POPG)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、ジミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG)、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG)、ジミリストイルホスファチジルセリン(DMPS)、ジステアロイルホスファチジルセリン(DSPS)、パルミトイルオレオイルホスファチジルセリン(POPS)、大豆レシチン、卵黄レシチン、スフィンゴミエリン、ホスファチジルイノシトール、ジホスファチジルグリセロール、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジン酸、および卵ホスファチジルコリン(EPC)を含む。
【0048】
脂肪酸および脂肪アルコールの例として、限定はされないが、ステロール、パルミチン酸、セチルアルコール、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、フィタン酸、ジパルミチン酸などが挙げられる。典型的な脂肪酸はパルミチン酸を含む。
【0049】
脂肪酸エステルの例として、限定はされないが、パルミチン酸メチル、パルミチン酸エチル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸コレステリル、パルミチン酸パルミチル、パルミチン酸ナトリウム、パルミチン酸カリウム、トリパルミチンなどが挙げられる。
【0050】
界面活性剤ポリペプチドおよび界面活性剤脂質は静力学的相互作用により相互作用する。帯電したアミノ酸は脂質の極性ヘッド基と相互作用し、疎水性アミノ酸はリン脂質のアシル側鎖と相互作用する。例えば、SP−BおよびSP−Cは疎水性タンパク質である。SP−BおよびSP−Cの双方はアニオン脂質、例えばDPPCではなくホスファチジルグリセロール(PG)に優先的に結合する。SP−AおよびSP−Dは親水性タンパク質であり、グリセロリン脂質、スフィンゴリン脂質、グリコスフィンゴ脂質、脂質A、およびリポグリカンを含む広範囲の両親媒性脂質と相互作用する。SP−AはDPPCに結合する。例を挙げると、静力学的相互作用は、SP−B模倣体、KL4、および天然界面活性剤中の脂質または表面活性剤中に含有される脂質の場合に認められる。例えば、KL4ペプチド中のリジン残基はDPPCの帯電したヘッド基と相互作用し、疎水性ロイシン残基はホスファチジルグリセロールのリン脂質アシル側鎖と相互作用する。
【0051】
特定の実施形態では、本明細書で開示される薬剤組成物は、哺乳類肺界面活性剤ポリペプチドまたはその模倣体の一部を含有する表面活性剤を含有し、脂質または脂質の混合物をさらに含有することはない。哺乳類肺界面活性剤ポリペプチドまたはその模倣体のほんの一部を含有する表面活性剤を含有する、吸入により投与される薬剤組成物は、静力学的相互作用により肺内の天然界面活性剤と相互作用しうる。例えば、組換えSP−Bは、アニオンリン脂質、例えばホスファチジルグリセロールへの結合により肺内の天然界面活性剤と相互作用しうる。
【0052】
他の実施形態では、本明細書で開示される薬剤組成物は、哺乳類肺界面活性剤ポリペプチドまたはその模倣体の一部と少なくとも1種の脂質の双方を含有する表面活性剤を含有する。ポリペプチドまたはその模倣体と少なくとも1種の脂質の双方を含有する薬剤組成物の肺内の天然界面活性剤への吸収を促進するため、リン脂質単層(天然界面活性剤中に見出されるものを模倣)が用いられうる。典型的な脂質混合物は、ジパルミトイルホスファチジルコリン/パルミトイルオレオイルホスファチジルグリセロールを、例えば7:3のw/w比で含有する。哺乳類肺界面活性剤ポリペプチドはリン脂質単層に挿入され、タンパク質/脂質混合物は吸入後に肺内の肺胞/気体界面で天然界面活性剤に吸収されうる。
【0053】
肺への活性薬剤
肺への活性薬剤は、限定はされないが、エラスターゼ阻害剤、コルチコステロイド、気管支拡張薬、抗生物質、および化学療法剤を含みうる。
【0054】
典型的なエラスターゼ阻害剤は図17中に示される化合物を含有する。他の典型的なエラスターゼ阻害剤は、Philip D.EdwardsおよびPeter R.Bernstein、「Synthetic inhibitors of Esterase」、Medicinal Research Reviews、第14巻、第2号、127−194頁(1994年)(参照により本明細書中に援用される)に記載の化合物を含有する。2種以上のエラスターゼ阻害剤は、本発明の表面活性剤に結合され、並行投与されうる。あるいは、エラスターゼ阻害剤は、表面活性剤に結合され、表面活性剤に結合された第2のエラスターゼ阻害剤と並行投与されうる。
【0055】
肺に送達されうる典型的なコルチコステロイド系は、限定はされないが、アルクロメタゾン、アルドステロン、アムシノニド、ベクロメタゾン、βメタゾン、ブデソニド、シクレソニド、クロベタゾル、クロベタゾン、クロコルトロン、クロプレドノール、コルチゾン、コルチバゾール、デフラザコート、デオキシコルチコステロン、デソニド、デスオキシメタゾン、デスオキシコルトン、デキサメタゾン、ジフロラゾン、ジフルコルトロン、ジフルプレドナート、フルクロロロン、フルドロコルチゾン、フルドロキシコルチド、フルメタゾン、フルニソリド、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、フルオコルチン、フルオコルトロン、フルオロメトロン、フルペロロン、フルプレドニデン、フルチカゾン、ホルモコータル、ハルシノニド、ハロメタゾン、ヒドロコルチゾン/コルチゾール、ヒドロコルチゾンアセポネート、ヒドロコルチゾンブテプラート、ヒドロコルチゾンブチラート、ロテプレドノール、メドリゾン、メプレドニゾン、メチルプレドニゾロン、メチルプレドニゾロンアセポネート、フランカルボン酸モメタゾン、パラメタゾン、プレドニカルベート、プレドニゾン、プレドニゾロン、プレドニリデン、リメキソロン、チキソコルトール、トリアムシノロン、およびウロベタゾールを含む。2種以上のコルチコステロイド系が本発明の表面活性剤に結合され、並行投与されうる。あるいは、コルチコステロイド系は、表面活性剤に結合され、表面活性剤に結合された第2のコルチコステロイド系と並行投与されうる。
【0056】
肺への活性薬剤はまた、短時間作用型β2アドレナリン受容体作動薬、長時間作用型β2アドレナリン受容体作動薬、短時間作用型抗コリン作動薬、および長時間作用型抗コリン作動薬などの気管支拡張薬を含有しうる。非限定的な短時間作用型β2アドレナリン受容体作動薬は、サルブタモールまたはアルブテロール、テルブタリン、フェノテロール、臭化水素酸フェノテロール、リミテロール、レプロテロール、ピルブテロール、イソプレナリン、オルシプレナリン、ビトルテロール、およびブロキサテロール(broxaterol)を含む。非限定的な長時間作用型β2アドレナリン受容体作動薬は、サルメテロール、キシナホ酸サルメテロール、フォルモテロール、フマル酸フォルモテロール、クレンブテロール、およびプロカテロールを含む。非限定的な短時間作用型抗コリン作動薬は、イプラトロピウム、臭化イプラトロピウム、オキシトロピウムおよびその塩を含む。非限定的な長時間作用型抗コリン作動薬は、チオトロピウムおよび臭化チオトロピウム水和物を含む。他の気管支拡張薬は、限定はされないが、アミノフィリン、オルシプレナリン、オクストリフィリン、硫酸テルブタリン、およびテオフィリンを含みうる。2種以上の気管支拡張薬が本発明の表面活性剤に結合され、並行投与されうる。あるいは、気管支拡張薬は、表面活性剤に結合され、表面活性剤に結合された第2の気管支拡張薬と並行投与されうる。
【0057】
肺に送達可能な典型的な抗生物質は、限定はされないが、ペニシリン系、ペニシリンおよびβラクタマーゼ系阻害剤、セファロスポリン系(第1世代、第2世代、第3世代、および第4世代)、マクロライド系およびリンコサミン系、キノロン系およびフルオロキノロン系、カルバペネム系、モノバクタム系、アミノグリコシド系、グリコペプチド系、テトラサイクリン系、スルホンアミド系、リファンピン系、オキサゾリドン系、ストレプトグラミン系、スルホンアミド系、ならびにその他を含む。2種以上の抗生物質が本発明の表面活性剤に結合され、並行投与されうる。あるいは、抗生物質は、表面活性剤に結合され、表面活性剤に結合された第2の抗生物質と並行投与されうる。
【0058】
典型的なペニシリン系は、限定はされないが、アモキシシリン、アンピシリン、バカンピシリン、カルベニシリン、カルベニシリンインダニル、メズロシリン、ピペラシリン、およびチカルシリンを含む。
【0059】
典型的なペニシリン系およびβラクタマーゼ系阻害剤は、限定はされないが、アモキシシリン−クラブラン酸、アンピシリン−スルバクタム、ベンジルペニシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、フェノキシメチルペニシリン、カルベニシリン、メチシリン、オキサシリン、ペニシリンG(ベンザチン、カリウム、プロカイン)、ペニシリンV、プロピシリン、エピシリン、シクラシリン、ピペラシリン+タゾバクタム、チカルシリン+クラブラン酸、およびナフィシリン(naficillin)を含む。
【0060】
典型的なセファロスポリン系(第1世代)は、限定はされないが、セファドロキシル、セファゾリン、セファレキシン、セファロチン、セファピリン、およびセフラジンを含む。セファロスポリン系(第2世代)は、限定はされないが、セファクロール、セファマンドール、セフォニシド、セフォラニド、セフォキシチン、セフプロジル、セフメタゾール、セフロキシム、セフロキシムアキセチル、およびロラカルベフを含む。セファロスポリン系(第3世代)は、限定はされないが、セフジニル、セフチブテン、セフジトレン、セフェタメト、セフォペラゾン、セフィキシム、セフォタキシム、セフポドキシム、セフタジジム、セフチブテン、セフチゾキシム、およびセフトリアキソンを含む。セファロスポリン系(第4世代)は、限定はされないがセフェピムを含む。
【0061】
典型的なマクロライド系およびリンコサミン系は、限定はされないが、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、クリンダマイシン、ジリスロマイシン、エリスロマイシン、リンコマイシン、テリスロマイシン、およびトロレアンドマイシンを含む。
【0062】
モノバクタム系は、限定はされないが、アズトレオナムを含む。カルバペネムは、限定はされないが、ドリペネム、イミペネム−シラスタチン、およびメロペネムを含む。
【0063】
アミノグリコシド系は、限定はされないが、アミカシン、硫酸アミカシン、ゲンタマイシン、硫酸ゲンタマイシン、カナマイシン、メチルマイシン(metilmicin)、ネオマイシン、ネチルマイシン、ストレプトマイシン、トブラマイシン、およびパロモマイシンを含む。
【0064】
グリコペプチド系は、限定はされないが、ダルババンシン、オリタバンシン、テラバンシン、テイコプラニン、およびバンコマイシンを含む。
【0065】
テトラサイクリン系は、限定はされないが、デメクロサイクリン、ドキシサイクリン、メタサイクリン、ミノサイクリン、オキシテトラサイクリン、テトラサイクリン、およびクロルテトラサイクリンを含む。
【0066】
オキサゾリジノン系は、限定はされないが、リネゾリドを含む。ストレプトグラミン系は、限定はされないが、キヌプリスチン+ダルホプリスチンを含む。
【0067】
スルホンアミド系は、限定はされないが、マフェニド、スルファジアジン銀、スルファセタミド、スルファジアジン、スルファメトキサゾール、スルファサラジン、スルファニルアミド、スルフイソキサゾール、トリメトプリム−スルファメトキサゾール、およびスルファメチゾールを含む。
【0068】
他の抗生物質として、限定はされないが、バシトラシン、クロラムフェニコール、コリスチメテート、ホスホマイシン、イソニアジド、メテナミン、メトロニダゾール、ムピロシン、ニトロフラントイン、ニトロフラゾン、ノボビオシン、ポリミキシンB、スペクチノマイシン、トリメトプリム、コリスチン、シクロセリン、カプレオマイシン、ピラジナミド、パラアミノサリチル酸、エリスロマイシンエチルスクシネート+スルフイソキサゾール、およびチゲサイクリンが挙げられる。
【0069】
肺に送達されうる化学療法薬は、限定はされないが、アルキル化剤、抗エストロゲン、アクラルビシン、アクチノマイシンD、アルデスロイキン、アレムツズマブ、アリトレチノイン、アロプリノール、アルトレタミン、アミホスチン、アナストロゾール、アスパラギナーゼ、ベキサロテン、ビサントレン、ブレオマイシン、ブスルファン、BCNU(カルムスチン)、カルステロン、カペシタビン、カルボプラチン、セレコキシブ、クロラムブシル、シスプラチン、クラドリビン、シクロホスファミド、シクロオキシゲナーゼ2阻害剤、シタラビン、CCNU(ロムスチン)、ダカルバジン、ダウノルビシン、ダウノマイシン、デニロイキン・ディフィトックス、デクスラゾキサン、ジアジコン、ドセタキセル、ドキソルビシン、エピルビシン、エポエチンα、エソルビシン、エストラムスチン、エトポシド(VP−16)、エキセメスタン、フィルグラスチム、フロクスウリジン、フルダラビン、5−フルオロウラシル、フルベストラント、ガラクチトール、ゲムシタビン、ゲムツズマブ、酢酸ゴセレリン、ヒドロキシ尿素、イブリツモマブチウキセタン、イダルビシン、イホスファミド、イマチニブメシル酸塩、インターフェロンα、インターフェロンγ、イリノテカン、イロプラチン(iroplatin)、レトロゾール、ロイコボリン、レバミゾール、ロニダミン、酢酸メゲストロール、メルファラン、メルカプトプリン、メスナ、メトトレキサート、メトキサレン、マイトマイシンC、ミトタン、ミトキサントロン、ミトグアゾン、フェンプロピオン酸ナンドロロン、ノフェツモマブ(Nofetumomab)、窒素マスタード、オプレルベキン、オキサリプラチン、パクリタキセル、パミドロネート、ペガデマーゼ、ペガスパルガーゼ、ペグフィルグラスチム、ペントスタチン、ピポブロマン、プリカマイシン、ポルフィマーナトリウム、プロカルバジン、プロゲスチン、プレドニムスチン、PCNU、キナクリン、ラスブリカーゼ、リツキシマブ、サルグラモスチム、ストレプトゾシン、タルク、タモキシフェン、テモゾロマイド、テニポシド(VM−26)、テストラクトン、チオグアニン、チオテパ、トポテカン、トレミフェン、トシツモマブ、トラスツズマブ、トレチノイン、ウラシルマスタード、バルルビシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、およびゾレドロネートを含む。
【0070】
2種以上の化学療法剤が本発明の表面活性剤に結合され、並行投与されうる。あるいは、化学療法剤は、表面活性剤に結合され、表面活性剤に結合された第2の化学療法剤と並行投与されうる。典型的な併用療法は、パクリタキセルおよびカルボプラチン、シスプラチンおよび酒石酸ビノレルビン、シスプラチンおよびエトポシド、ならびにカルボプラチンおよびエトポシドを含む。
【0071】
共有結合
多数の方法を用い、肺への活性薬剤が本発明で用いられる表面活性剤に共有結合されうる。一般に、肺への活性薬剤は、薬剤の天然部位を保存しかつ肺/気体界面での表面活性剤の有意な滞留時間を保持する結合またはリンカーを用いて表面活性剤に共有結合されうる。少なくとも1つの追加的残基が本明細書で開示される界面活性剤ポリペプチドのアミノもしくはカルボキシ末端または内部アミノ酸残基に付加され、薬剤分子を表面活性剤に共有結合するためのリンカーが生成されうる。典型的な実施形態では、SP−Bが少なくとも1つのアミノ酸により伸長され、非天然アミノ酸が自動ペプチド合成により生成されうる。薬剤は、アミノ酸、例えばグリシン残基にアミノ基またはヒドロキシル基により複合されうる。代表的な共有結合であれば、エステル、アミド、または尿素を含みうる(March、「Advanced Organic Chemistry」、第4版、John Wiley & Sons、1992年)。
【0072】
アミノ酸残基リンカーは通常、少なくとも1アミノ酸残基長であり、40以上のアミノ酸残基長、より多くの場合に1〜10アミノ酸残基長、およびほとんどの場合に1〜5アミノ酸残基長でありうる。リンカーは通常、小さい中性の極性また非極性アミノ酸である。連結に用いられる典型的なアミノ酸残基は、グリシン、チロシン、システイン、リジン、グルタミン酸、およびアスパラギン酸などである。
【0073】
他の実施形態では、リンカーは、天然アミノ酸ではないヘテロ二官能性リンカーでありうる。
【0074】
投与の方法
本発明の組成物は吸入により肺に送達される。吸入装置、例えば吸入器(乾燥粉末吸入器および定量吸入器を含む)および噴霧器(アトマイザーとしても知られる)を用い、開示される組成物が肺へ送達されうる。典型的な乾燥粉末吸入器は、米国特許第5,458,135号明細書;米国特許第5,740,794号明細書;米国特許第5,785,049号明細書(参照により本明細書中に援用される)に記載のように、Inhale Therapeutic Systemsから得られうる。乾燥粉末吸入器はまた、米国特許第6,029,661号明細書(参照により本明細書中に援用される)に記載のように、3Mから得られうる。
【0075】
本明細書で開示される組成物はまた、米国特許第5,320,094号明細書および米国特許第5,672,581号明細書(双方とも参照により本明細書中に援用される)に記載のように、医薬的に不活性な液体プロペラント、例えばクロロフルオロカーボン(CFC)またはフルオロカーボン中に薬剤の溶液または懸濁液を有する定量吸入器(MDI)を用いて投与されうる。定量吸入器は、作動または「一吹き(puff)」当たり固定単位用量の薬剤、例えば一吹き当たり10〜5000μgの薬剤の範囲内で送達するように設計される。典型的な定量阻害剤は、米国特許第5,224,183号明細書;米国特許第5,290,534号明細書;米国特許第5,511,540号明細書;米国特許第6,454,140号明細書;および米国特許第6,615,826号明細書(参照により本明細書中に援用される)に記載のように、3Mから得られうる。定量吸入器はまたCFCフリーでありうる。吸入器と併用されるべき薬剤組成物は、液体または懸濁液のエアロゾル化された固体粒子または小滴の形態でありうる。
【0076】
あるいは、本明細書中に記載の組成物は、溶媒中、例えば水中または生理食塩水中に溶解または懸濁され、噴霧により投与されうる。エアロゾル化溶液を送達するための典型的な噴霧器は、AERx(商標)(Aradigm)、Ultravent(登録商標)(Mallinkrodt)、Pari LC Plus(商標)またはPari LC Star(商標)(Pari GmbH(Germany))、DeVilbiss Pulmo−Aide、およびAcorn II(登録商標)(Marquest Medical Products)を含む。
【0077】
製剤
本明細書で開示される薬剤組成物は、気道および肺への吸入に適する担体中の粒子の溶液中および/または懸濁液中に調合されうる。かかる担体はまた、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」、第16版、1980年、Arthur Osol編(参照により本明細書中に援用される)に記載のように、気道への、粉末、霧またはエアロゾルからなる、例えば約0.5〜1ミクロン、および好ましくは約0.5〜約0.7ミクロンのオーダーの、細かい小滴の送達のための吸入剤および吸入可能な微粒子の送達のための吸入剤について熟知している当業者に周知である。
【0078】
一実施形態では、吸入投与用の薬剤組成物は粉末として投与されうる。粉末化された薬剤または組成物は通常、硬ゼラチンカプセルまたはブリスター包装などの容器あるいはマルチドーズデバイス(multi−dose devise)の内部に位置する。カプセルまたはブリスターは吸入器装置内部で破裂または開口することにより、粉末の吸入が可能になる。一般に、吸入に用いられる薬剤の平均粒径は1〜10ミクロンであり、ここで2〜5ミクロンの粒径範囲は肺の末梢気道の通過に特に適する。かかる粒径範囲は、一般に微粉末化または噴霧乾燥により得られる。
【0079】
粉末化された薬剤組成物は、薬剤と不活性担体のブレンドまたは混合物を含有する組成物として投与されることが多い。通常、不活性担体は薬剤の平均粒径よりも実質的に大きい平均粒径を有する。これにより、他にも利点はあるが、流れ特性における改善や組成物の正確な調合がもたらされる。
【0080】
生成される薬剤に対して一般に記述される担体材料は、炭酸カルシウムおよび糖類、例えばスクロース、マンニトールまたはデキストロース、あるいはより具体的には乳糖を含み、それらは、投与中に吸収される任意の残留物が消化時に良好な耐容性を示すか、あるいは肺からのディスイリュージョン(disillusion)(例えば糖類の場合)または粘液線毛クリアランスにより容易に除去されうることから、医薬的に許容でき、毒性の問題が全くない。
【0081】
カプセル中またはブリスター中の組成物は約25mgであることが多い。この重量は、おそらくは過度の副作用、例えば咳を伴うことなく楽に吸入されうる最も多量の粉末を示し、また通常は充填機により調合される最少量に対応する。
【0082】
特定の実施形態では、粉末吸入用に調合される組成物は、約95.0〜99.99重量%、より詳細には97.0〜99.9重量%、特に98.0〜99.8重量%の濃度で存在する担体を含有する。既知の方法の適用または適応によりかかる粉末を調製するための方法はまた、本発明の特徴となる。
【0083】
他の実施形態では、薬剤組成物は、当該技術分野で周知の方法を用い、エアロゾル製剤として調合されうる。かかるエアロゾル製剤を調合するために広く用いられる一方法は、薬剤の懸濁液製剤の液化プロペラントガス中の微粉化粉末としての作製を含む。あるいは、薬剤がおそらくは薬剤の溶解を補助するための可溶化剤および共溶媒を含有するプロペラント系中に溶解される場合、溶液製剤は調製されうる。加圧型定量吸入器(pMDI)は通常、患者に対してかかる製剤を調合するのに用いられる。プロペラントは、クロロフルオロカーボン(CFC)、フルオロカーボン(FC)、またはヒドロフルオロアルカン(HFA)プロペラントを含みうる。
【0084】
治療の方法
本開示はまた、肺炎症または肺疾患を患う対象を治療するための方法を提供する。別の実施形態では、本開示は、肺疾患に罹患するリスクがある対象を治療するための方法を提供する。本方法は、表面活性剤に共有結合された肺への活性薬剤を含有する複合体を対象に投与するステップを含み、ここで表面活性剤は、ヒト肺胞/気体界面に対して親和性を有しかつヒトに対して実質的に非免疫原性である哺乳類肺界面活性剤ポリペプチドまたはその模倣体の少なくとも一部を含有する。複合体は、肺内での薬剤効果を誘発するための有効量で、吸入により対象に投与される。対象は、ヒト、サル、チンパンジー、ウマ、イヌ、ネコ、ウシ、ヒツジ、ブタ、ラットまたはマウスでありうる。典型的な実施形態では、対象はヒトである。
【0085】
治療を必要とする対象は、肺炎症に罹患しているか、あるいは肺疾患に罹患しているかまたは罹患するリスクがある。本明細書中に記載の薬剤組成物で治療されうる典型的な肺疾患は、限定はされないが、気腫、慢性気管支炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息、呼吸窮迫障害(RDS)、肺炎、結核または他の細菌感染、嚢性線維症、および/または肺癌を含む。
【0086】
用量
表面活性剤に複合された肺への活性薬剤の投与により、未複合薬剤の投与に対して投与頻度が減少する。特定の実施形態では、投与ステップは、毎日、1日おき、3日おき、4日おき、5日おき、または1週ごとに1回反復されうる。
【実施例】
【0087】
本発明は、以下の実施例によりさらに例示される。実施例は、あくまで例示目的で提供され、かつ本発明の範囲または内容を限定するものとして解釈されるべきでは決してない。
【0088】
実施例1:SP−Bペプチドに対するヒト好中球エラスターゼ阻害剤の複合
1群の強力な小分子ヒト好中球エラスターゼ(HNE)阻害剤は、SP−Bのアミノ末端の25のアミノ酸(FPIPLPYCWLCRALIKRIQAMIPKG)(配列番号88)を含むSP−Bペプチドに複合されうる。アミノ末端の25のアミノ酸を含むSP−Bペプチドの全分子量は、水分子の除去後には2926.97である。HNE阻害剤は、図18中に表される連結に類似のグリシンリンカーを用い、SP−BのN末端の25−merに複合される。
【0089】
実施例2:標的Bの合成
反応に用いられるすべての溶媒はLRグレードの溶媒であった。室温(RT)は27〜32℃の範囲の温度を示す。すべての反応は、特定されない限り、TLCにより監視した。溶液を、ロータリーエバポレーターを用い、減圧下で蒸発させた。NMRをVarian 400MHz上で行った。カラムクロマトグラフィーは、特定されない限り、シリカゲル100〜200メッシュを用いて行った。
【0090】
ステージ1の合成
【化1】
乾燥テトラヒドロフラン(85mL)中のCbz−Val−Pro−OH(5g、14mモル)の溶液を窒素下で−20℃に冷却した。N−メチルモルホリン(1.74mL、15mモル)、次いでクロロぎ酸イソブチル(2mL、15mモル)を反応混合物に添加した。反応混合物を−20℃で15分間撹拌し、次いで−40℃に冷却した。テトラヒドロフラン(25mL)中のL−バリノール(1.62g、15mモル)の溶液を反応混合物に滴下添加した。反応混合物を室温になるまで一晩温めておいた。反応混合物を濾過し、濾過物を酢酸エチル(60mL)で希釈した。結合された有機層を、1N HCl(60mL)、NaHCO3(30mL)および塩水(30mL)で十分に洗浄した。有機層を硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過し、濃縮し、所望の生成物(5.7g)を得た。HPLC Rt:5.76;LCMS(M+1):434;収率:92.5%。
【0091】
ステージ2の合成
【化2】
乾燥ジクロロメタン(110mL)中の塩化オキサリル(2.45mL、28mモル)の溶液を−60℃に冷却し、ジクロロメタン(35mL)中のDMSO(4.09mL、57.7mモル)の溶液を1時間にわたって滴下添加し、反応混合物を−45℃の温度で維持した。反応混合物を−30℃まで温めておき、ジクロロメタン(35mL)中のステージ1(6.1g、14mモル)の溶液を1時間にわたって滴下添加した。反応混合物を−25℃で1時間撹拌した。反応混合物を−40℃に冷却し、ジイソプロピルエチルアミン(10mL、57.7mモル)を1時間にわたって滴下添加した。反応物を室温まで温め、次いで1N HCl(60mL)および塩水(60mL)で洗浄した。有機層を、減圧下で、硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過し、濾過物を濃縮し、所望の生成物(5.7g)を得た。HPLC Rt:6.81;LCMS(M+1):432;収率:94%。
【0092】
ステージ3の合成
【化3】
乾燥テトラヒドロフラン(100mL)中の亜鉛(2.5g、39mモル)およびステージ2(5.64g、13mモル)の懸濁液を窒素雰囲気下で60℃に加熱した。ブロモジフルオロ酢酸エチル(7.93g、39mモル)を添加し、反応物を60℃になるまで1時間加熱した。反応混合物を室温まで冷却し、テトラヒドロフランを減圧下で除去し、酢酸エチル(100mL)を添加した。反応混合物を1M KHSO4(50mL)および塩水(50mL)で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥した。有機層を減圧下で濾過し、濃縮し、粗生成物を得て、次いでそれを分取HPLCで精製し、所望の生成物(2.9g)を得た。HPLC Rt:7.44;LCMS(M+1):556;収率:40%。
【0093】
ステージ4の合成
【化4】
エタノール(40mL)中のステージ3(1.8g、3.2mモル)およびベンジルアミン(1.06mL、9.7mモル)の溶液を4時間還流で撹拌した。反応混合物を室温まで冷却し、窒素雰囲気下でさらに48時間撹拌した。溶媒を減圧下で除去した。残留物を酢酸エチル(50mL)中に溶解し、溶液を1N HCl(20mL)および塩水(20mL)で洗浄した。有機層を硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過し、溶媒を真空下で除去し、所望の生成物(1.7g)を得た。HPLC Rt:7.56;LCMS(M+1):616;収率:88%。
【0094】
ステージ5
【化5】
酢酸エチル(50mL)中のステージ4(1.85g、3mモル)および20%水酸化パラジウム(1g)の混合物を200psiでの圧力容器内に20時間入れた。反応混合物をセライトを通して濾過し、濾過物を真空下で濃縮し、所望の生成物を数種の出発原料とともに得て、それを、精製を全く伴わない追加的反応のためにそのまま用いた(1.1g)。HPLC Rt:4.90;LCMS(M+1):482;収率:80%。
【0095】
ステージ6
【化6】
0℃での乾燥ジクロロメタン(50mL)中のステージ5(1g、2.1mモル)の溶液にトリエチルアミン(0.25mL、1.8mモル)を添加した。次いで、ジクロロメタン(20mL)中の塩化エチルオキサリル(0.2mL、1.87mモル)の溶液を滴下添加した。反応混合物を室温まで温めておき、さらに2時間撹拌した。反応混合物を水(25mL)で急冷した。有機層を分離し、減圧下で、硫酸ナトリウム上で乾燥し、蒸発させ、所望の生成物を得て、次いでそれを分取HPLCにより精製した。HPLC Rt:6.72;LCMS(M+1):583;収率:0.5g(42%)。
【0096】
ステージ7
【化7】
トリフルオロ酢酸(0.92mL、12.02mモル)を、乾燥ジクロロメタン(25mL)中のステージ6(1.75g、3mモル)およびデス・マーチン・ペルヨージナン(5.1g、12.02mモル)の撹拌溶液に添加した。混合物を窒素雰囲気下、室温で4時間撹拌した。酢酸エチル(100mL)を添加し、混合物を飽和チオ硫酸ナトリウム(60mL)、飽和NaHCO3(60mL)および塩水(60mL)で洗浄した。有機層を、減圧下で、硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過し、蒸発させ、所望の生成物を得て、それを追加的ステップのためにそのまま用いた。HPLC Rt:7.32;LCMS(M+1):581;収率:1.7g(97%)。
【0097】
ステージ8
【化8】
メタノール対水1:1(20mL)中のステージ7(2.2g、3.7mモル)の溶液を1N NaOH(0.18g、4.5mモル)で処理し、室温で4時間撹拌した。反応混合物を濃縮し、メタノールを除去し、1N HClで酸性化し、酢酸エチル(60mL)で抽出した。有機層を、減圧下で、硫酸ナトリウム上で乾燥し、蒸発させ、所望の生成物を得て、次いでそれを分取HPLCにより精製した。HPLC Rt:6.47〜6.61;LCMS(M+1):553;収率:500mg(分取後24%)。
【0098】
ステージ9
【化9】
ワン樹脂(2.5g、0.5等量)をDMF(15mL)中の20%ピペリジンで処理し、約1時間撹拌した。次いでそれをDMF(2回、15mL)、DCM(3回、15mL)で洗浄し、次いで真空下で乾燥した。カイザー試験を樹脂上で行い、F−moc基の完全な除去を確認した。次いで、それをステージ8生成物との共役のために用いた。DMF中の樹脂の溶液に、DMF(5mL)中の上記の酸(97mg、0.176mモル)の溶液を添加後、PyBoP(91mg、0.176mモル)およびN−メチルモルホリン(0.24mL、0.22mモル)を添加した。反応混合物を振とう器上で約3時間振とう状態にした。溶液をデカントし、上記試薬の新しいロットを再び添加し、それをさらに3時間振とう状態にした。このプロセスを約4回繰り返した。溶液をデカントし、樹脂をDMF(3回、15mL)、DCM(3回、15mL)で洗浄し、真空下で乾燥した。カイザー試験を樹脂上で行い、共役が生じていることを確認した。
【0099】
ステージ10
【化10】
切断溶液を作製するための手順。TFA(81%)、フェノール(5%)、チオアニソール(5%)、1,2,エタンジチオール(2.5%)、水(3%)、硫化ジメチル(2%)、ヨウ化アンモニウム(1.5%)。樹脂に切断溶液を添加し、それを振とう器上で約3時間振とう状態にした。樹脂を、綿を通して濾過し、TFAで洗浄した。次いで、濾過物を真空下で濃縮し、冷却エーテルで粉末化し、白色固体を得て、次いでそれを分取HPLCにより精製し、所望の生成物を得た。LCMS(M/3):1155;収率:46mg(1.84%)。
【0100】
実施例3:標的Cの合成
ステージ6
【化11】
室温での乾燥THF(50mL)中のステージ5(3.2g、6.6mモル)の溶液に、マロン酸モノエチル(0.7mL、6mモル)、次いでHOBT(1.63g、12mモル)、EDCI(1.27g、6.6mモル)およびN−メチルモルホリン(1.6mL、15mモル)を添加した。次いで、反応混合物を室温で4時間撹拌しておいた。次いで、THFを除去するため、反応混合物を水で急冷し、減圧下で蒸発させた。次いで、水層を酢酸エチル(100mL)で抽出した。有機層を硫酸ナトリウム上で乾燥し、濃縮し、粗生成物を得て、次いでそれを分取HPLCにより精製した(0.98g)。HPLC Rt:6.44;LCMS(M+1):596;収率:分取後25%。
【0101】
ステージ7
【化12】
トリフルオロ酢酸(0.45mL、5.7mモル)を、乾燥ジクロロメタン(30mL)中のステージ6(0.86g、1.45mモル)およびデス・マーチン・ペルヨージナン(2.46g、5.7mモル)の撹拌溶液に添加した。混合物を窒素雰囲気下、室温で4時間撹拌した。酢酸エチル(50mL)を添加し、混合物を飽和チオ硫酸ナトリウム(20mL)、飽和NaHCO3(20mL)および塩水(20mL)で洗浄した。有機層を硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過し、溶媒を真空下で除去し、所望の生成物(0.74g)を得た。HPLC Rt:7.05;LCMS(M+1):595;収率:86%。
【0102】
ステージ8
【化13】
メタノール対水1:1(5mL:5mL)中のステージ7(0.75g、1.2mモル)の溶液を1N NaOH(0.060g、1.5mモル)で処理し、室温で4時間撹拌した。反応混合物を濃縮し、メタノールを除去し、(pH2になるまで)1N HClで酸性化し、酢酸エチル(50mL)で抽出した。有機層を、減圧下で、硫酸ナトリウム上で乾燥し、濃縮し、所望の生成物を得て、次いでそれを分取HPLCにより精製した(0.4g)。HPLC Rt:6.01〜6.51;LCMS(M+1):567;収率:分取後56%。
【0103】
ステージ9
【化14】
ワン樹脂(2g、0.08mモル)をDMF(20mL)中の20%ピペリジンで処理し、約1時間撹拌した。次いでそれをDMF(2回)、DCM(3回)で洗浄し、次いで減圧下で乾燥した。カイザー試験を樹脂上で行い、F−moc基の完全な除去を確認した。次いで、それをステージ8との共役のために用いた。DMF(5mL)中の樹脂(2g、0.08mモル)の溶液に、DMF(3mL)中の上記の酸(0.1g、0.16mモル)の溶液を添加後、PyBoP(0.83g、0.16mモル)およびN−メチルモルホリン(0.2mL、0.2mモル)を添加した。反応混合物を振とう器上で約3時間振とう状態にした。溶液をデカントし、上記試薬の新しいロットを再び添加し、それをさらに3時間振とう状態にした。このプロセスを約4回繰り返した。溶液をデカントし、樹脂をDMF(3回)、DCM(3回)で洗浄し、減圧下で乾燥した。カイザー試験を樹脂上で行い、共役が生じていることを確認した。
【0104】
ステージ10
【化15】
切断溶液(TFA(81%)、フェノール(5%)、チオアニソール(5%)、1,2,エタンジチオール(2.5%)、水(3%)、硫化ジメチル(2%)、ヨウ化アンモニウム(1.5%))を作製するための手順。樹脂に切断溶液(25mL)を添加し、それを振とう器上で約3時間振とう状態にした。樹脂を綿を通して濾過し、TFAで洗浄した。次いで、濾過物を減圧下で濃縮し、冷却エーテルで粉末化し、白色固体を得て、次いでそれを分取HPLCにより精製し、所望の生成物(0.080g)を得た。LCMS(M/3):1160;収率:2.4%。
【0105】
実施例4:HNE暴露後の肺の気管支肺胞洗浄
動物14匹の全部をこの試験で用いた。麻酔したマウスはブラントチップカテーテルにより気管の開口部に送達された溶液0.1mlを受け、動物の肺に溶液を吸引することができた。すべての動物を2時間の治療に暴露し、再麻酔した。肺の気管支肺胞洗浄を下記のように行った。HNE(気腫の原因物質)を与えた動物4匹は、0.053gの重量に対して平均肺血球レベルを有した。標的2(1990年代初期にZenecaにより開発された強力なHNE阻害剤)では、HNEを与えた際、肺内での平均血液レベルが34%低下し、0.035gになった。標的C(ヒト界面活性剤BペプチドのN末端の最初の25残基に共有結合されたZeneca分子)では、HNEを与えた際、肺内での平均血液レベルが87%低下し、0.007gになった。
【0106】
一連の動物を用い、試験におけるHNEの最適濃度を判定した。50μgのHNEに暴露した初期試料は暴露に対して生存しなかった。HNEの量を40μgに減少させることで、最も有害であるが生存可能な効果が維持された。40μgのHNEに暴露した動物は全試験を行うのに十分な長期間生存できた。全試験で生き残ったすべての動物を40μgのHNEに暴露した。
【0107】
標的2(Zeneca分子)をHNEに対して70倍過剰なモルで与えた。動態試験においては、標的2は2nMの親和性を有する。動態試験においては標的C(ヒト界面活性剤ペプチドBの最初の25残基に共有結合されたZeneca分子)は標的2に対して約2桁の効力を失うことから、標的CはHNEに対して約200nMの親和性を有する。したがって、これらの試験においては、標的CをHNEに対して100倍過剰なモルで動物に与えた。
【0108】
気管支肺胞洗浄(BAL)を、1)動物の麻酔;2)動物に対する気管切開の実行および胸部の切開および肋骨を広げて全肺への拡大の実現;3)PBS緩衝溶液1mlの気管切開カテーテルを通した肺への加圧;4)肺から外部への溶液の吸引;5)回収溶液の遠心分離による赤血球画分の液体画分からの分離;および6)赤血球画分の秤量により行う。
【0109】
【表2】
【0110】
参照による援用
本明細書中で参照される特許文献および科学論文の各々の開示内容全体は、あらゆる目的において参照により援用される。
【0111】
等価物
本発明は、その趣旨または本質的特質から逸脱することなく他の特定の形態で実現されうる。それ故、上記の実施形態は、本明細書中に記載の本発明について限定するものではなく、あらゆる観点で例示として解釈されるべきである。したがって、本発明の範囲は上記の説明ではなく添付の特許請求の範囲により示され、特許請求の範囲の等価物の意味および範囲に含まれるすべての変形は本明細書中に包含されるように意図されている。
【表1−1】
【表1−2】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸入用に調合された薬剤組成物であって、
ヒト肺胞/気体界面に対する親和性によって特徴づけられる表面活性剤であって、ヒトに対して実質的に非免疫原性であり、かつ前記表面活性剤に共有結合された、哺乳類肺界面活性剤ポリペプチドまたはその模倣体の少なくとも一部を含有する表面活性剤と、
前記肺/気体界面に接近可能な細胞外または細胞表面結合標的に結合する肺への活性薬剤と、
を含有する、吸入用に調合された薬剤組成物。
【請求項2】
前記表面活性剤が、ヒト肺界面活性剤、ブタまたはウシ肺界面活性剤などの非ヒト哺乳類肺界面活性剤、哺乳類肺界面活性剤ポリペプチドの欠失またはアミノ酸置換突然変異体を含むペプチド模倣体、あるいはその画分を含有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記表面活性剤が、合成的または組換え的に生成された、哺乳類肺界面活性剤部分の前記ポリペプチド成分の一部を含有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記表面活性剤が、SP−A、SP−B、SP−C、SP−D、またはそれらの混合物の少なくとも一部を含有する、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記表面活性剤が、SP−BのN末端由来の25のアミノ酸断片などのSP−Bの少なくとも一部を含有する、請求項3に記載の組成物。
【請求項6】
脂質をさらに含有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記表面活性剤が、哺乳動物の肺から採取される哺乳類肺界面活性剤を含有するかまたはそれに由来する、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記肺への活性薬剤が、エラスターゼ阻害剤、コルチコステロイド、気管支拡張薬、抗生物質、および化学療法剤からなる群から選択される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記肺への活性薬剤が、βメタゾン、ブデソニド、コルチゾン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、プレドニゾン、およびトリアムシノロンからなる群から選択されるコルチコステロイドである、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記肺への活性薬剤が、サルブタモール、アルブテロール、テルブタリン、フェノテロール、臭化水素酸フェノテロール、リミテロール、レプロテロール、ピルブテロール、イソプレナリン、オルシプレナリン、ビトルテロール、ブロキサテロール、サルメテロール、キシナホ酸サルメテロール、フォルモテロール、フマル酸フォルモテロール、クレンブテロール、プロカテロール、イプラトロピウム、臭化イプラトロピウム、チオトロピウム、臭化チオトロピウム水和物、アミノフィリン、オルシプレナリン、オクストリフィリン、硫酸テルブタリン、およびテオフィリンからなる群から選択される気管支拡張薬である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記肺への活性薬剤が、アモキシシリン、アンピシリン、バカンピシリン、カルベニシリン、カルベニシリンインダニル、メズロシリン、ピペラシリン、チカルシリン、アモキシシリン−クラブラン酸、アンピシリン−スルバクタム、ベンジルペニシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、フェノキシメチルペニシリン、カルベニシリン、メチシリン、オキサシリン、ペニシリンG(ベンザチン、カリウム、プロカイン)、ペニシリンV、プロピシリン、エピシリン、シクラシリン、ピペラシリン+タゾバクタム、チカルシリン+クラブラン酸、ナフィシリン、セファドロキシル、セファゾリン、セファレキシン、セファロチン、セファピリン、セフラジン、セファクロール、セファマンドール、セフォニシド、セフォラニド、セフォキシチン、セフプロジル、セフメタゾール、セフロキシム、セフロキシムアキセチル、ロラカルベフ、セフジニル、セフチブテン、セフジトレン、セフェタメト、セフォペラゾン、セフィキシム、セフォタキシム、セフポドキシム、セフタジジム、セフチブテン、セフチゾキシム、セフトリアキソン、セフェピム、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、クリンダマイシン、ジリスロマイシン、エリスロマイシン、リンコマイシン、テリスロマイシン、トロレアンドマイシン、アズトレオナム、ドリペネム、イミペネム−シラスタチン、メロペネム、アミカシン、硫酸アミカシン、ゲンタマイシン、硫酸ゲンタマイシン、カナマイシン、メチルマイシン、ネオマイシン、ネチルマイシン、ストレプトマイシン、トブラマイシン、パロモマイシン、ダルババンシン、オリタバンシン、テラバンシン、テイコプラニン、バンコマイシン、デメクロサイクリン、ドキシサイクリン、メタサイクリン、ミノサイクリン、オキシテトラサイクリン、テトラサイクリン、クロルテトラサイクリン、リネゾリド、キヌプリスチン+ダルホプリスチン、マフェニド、スルファジアジン銀、スルファセタミド、スルファジアジン、スルファメトキサゾール、スルファサラジン、スルファニルアミド、スルフイソキサゾール、トリメトプリム−スルファメトキサゾール、スルファメチゾール、バシトラシン、クロラムフェニコール、コリスチメテート、ホスホマイシン、イソニアジド、メテナミン、メトロニダゾール、ムピロシン、ニトロフラントイン、ニトロフラゾン、ノボビオシン、ポリミキシンB、スペクチノマイシン、トリメトプリム、コリスチン、シクロセリン、カプレオマイシン、ピラジナミド、パラアミノサリチル酸、エリスロマイシンエチルスクシネート+スルフイソキサゾール、およびチゲサイクリンからなる群から選択される抗生物質である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記肺への活性薬剤が、アルキル化剤、抗エストロゲン、アクラルビシン、アクチノマイシンD、アルデスロイキン、アレムツズマブ、アリトレチノイン、アロプリノール、アルトレタミン、アミホスチン、アナストロゾール、アスパラギナーゼ、ベキサロテン、ビサントレン、ブレオマイシン、ブスルファン、BCNU(カルムスチン)、カルステロン、カペシタビン、カルボプラチン、セレコキシブ、クロラムブシル、シスプラチン、クラドリビン、シクロホスファミド、シクロオキシゲナーゼ2阻害剤、シタラビン、CCNU(ロムスチン)、ダカルバジン、ダウノルビシン、ダウノマイシン、デニロイキン・ディフィトックス、デクスラゾキサン、ジアジコン、ドセタキセル、ドキソルビシン、エピルビシン、エポエチンα、エソルビシン、エストラムスチン、エトポシド(VP−16)、エキセメスタン、フィルグラスチム、フロクスウリジン、フルダラビン、5−フルオロウラシル、フルベストラント、ガラクチトール、ゲムシタビン、ゲムツズマブ、酢酸ゴセレリン、ヒドロキシ尿素、イブリツモマブチウキセタン、イダルビシン、イホスファミド、イマチニブメシル酸塩、インターフェロンα、インターフェロンγ、イリノテカン、イロプラチン、レトロゾール、ロイコボリン、レバミゾール、ロニダミン、酢酸メゲストロール、メルファラン、メルカプトプリン、メスナ、メトトレキサート、メトキサレン、マイトマイシンC、ミトタン、ミトキサントロン、ミトグアゾン、フェンプロピオン酸ナンドロロン、ノフェツモマブ、窒素マスタード、オプレルベキン、オキサリプラチン、パクリタキセル、パミドロネート、ペガデマーゼ、ペガスパルガーゼ、ペグフィルグラスチム、ペントスタチン、ピポブロマン、プリカマイシン、ポルフィマーナトリウム、プロカルバジン、プロゲスチン、プレドニムスチン、PCNU、キナクリン、ラスブリカーゼ、リツキシマブ、サルグラモスチム、ストレプトゾシン、タルク、タモキシフェン、テモゾロマイド、テニポシド(VM−26)、テストラクトン、チオグアニン、チオテパ、トポテカン、トレミフェン、トシツモマブ、トラスツズマブ、トレチノイン、ウラシルマスタード、バルルビシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、およびゾレドロネートからなる群から選択される化学療法剤である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
ヒト患者により用いられる吸入装置内で処理される、請求項1〜12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
肺疾患に罹患しているかまたはそのリスクがあるヒトを治療する方法であって、
ヒト肺胞/気体界面に対する親和性により特徴づけられる表面活性剤に対して共有結合された肺治療用の薬剤を含有する複合体を提供するステップであって、前記表面活性剤が、ヒトに対して実質的に非免疫原性である哺乳類肺界面活性剤ポリペプチドまたはその模倣体の少なくとも一部を含有するステップと、
前記複合体を、肺内での薬剤効果を誘発するための有効量で吸入により前記ヒトに投与するステップと、
を含む、方法。
【請求項15】
前記投与により、前記薬剤の全身バイオアベイラビリティが未複合薬剤の吸入投与に対して低下する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記投与により、肺内での前記薬剤の滞留時間が未複合薬剤の吸入投与に対して延長される、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記投与ステップが、毎日、1日おき、3日おき、5日おき、または1週ごとに1回反復される、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記投与ステップが吸入装置を用いて行われる、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記提供される複合体が請求項1〜13のいずれか一項に記載の組成物を含有する、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
前記ヒト肺の疾患または症状の治療用薬剤を調製するための、請求項1〜12のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項1】
吸入用に調合された薬剤組成物であって、
ヒト肺胞/気体界面に対する親和性によって特徴づけられる表面活性剤であって、ヒトに対して実質的に非免疫原性であり、かつ前記表面活性剤に共有結合された、哺乳類肺界面活性剤ポリペプチドまたはその模倣体の少なくとも一部を含有する表面活性剤と、
前記肺/気体界面に接近可能な細胞外または細胞表面結合標的に結合する肺への活性薬剤と、
を含有する、吸入用に調合された薬剤組成物。
【請求項2】
前記表面活性剤が、ヒト肺界面活性剤、ブタまたはウシ肺界面活性剤などの非ヒト哺乳類肺界面活性剤、哺乳類肺界面活性剤ポリペプチドの欠失またはアミノ酸置換突然変異体を含むペプチド模倣体、あるいはその画分を含有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記表面活性剤が、合成的または組換え的に生成された、哺乳類肺界面活性剤部分の前記ポリペプチド成分の一部を含有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記表面活性剤が、SP−A、SP−B、SP−C、SP−D、またはそれらの混合物の少なくとも一部を含有する、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記表面活性剤が、SP−BのN末端由来の25のアミノ酸断片などのSP−Bの少なくとも一部を含有する、請求項3に記載の組成物。
【請求項6】
脂質をさらに含有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記表面活性剤が、哺乳動物の肺から採取される哺乳類肺界面活性剤を含有するかまたはそれに由来する、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記肺への活性薬剤が、エラスターゼ阻害剤、コルチコステロイド、気管支拡張薬、抗生物質、および化学療法剤からなる群から選択される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記肺への活性薬剤が、βメタゾン、ブデソニド、コルチゾン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、プレドニゾン、およびトリアムシノロンからなる群から選択されるコルチコステロイドである、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記肺への活性薬剤が、サルブタモール、アルブテロール、テルブタリン、フェノテロール、臭化水素酸フェノテロール、リミテロール、レプロテロール、ピルブテロール、イソプレナリン、オルシプレナリン、ビトルテロール、ブロキサテロール、サルメテロール、キシナホ酸サルメテロール、フォルモテロール、フマル酸フォルモテロール、クレンブテロール、プロカテロール、イプラトロピウム、臭化イプラトロピウム、チオトロピウム、臭化チオトロピウム水和物、アミノフィリン、オルシプレナリン、オクストリフィリン、硫酸テルブタリン、およびテオフィリンからなる群から選択される気管支拡張薬である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記肺への活性薬剤が、アモキシシリン、アンピシリン、バカンピシリン、カルベニシリン、カルベニシリンインダニル、メズロシリン、ピペラシリン、チカルシリン、アモキシシリン−クラブラン酸、アンピシリン−スルバクタム、ベンジルペニシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、フェノキシメチルペニシリン、カルベニシリン、メチシリン、オキサシリン、ペニシリンG(ベンザチン、カリウム、プロカイン)、ペニシリンV、プロピシリン、エピシリン、シクラシリン、ピペラシリン+タゾバクタム、チカルシリン+クラブラン酸、ナフィシリン、セファドロキシル、セファゾリン、セファレキシン、セファロチン、セファピリン、セフラジン、セファクロール、セファマンドール、セフォニシド、セフォラニド、セフォキシチン、セフプロジル、セフメタゾール、セフロキシム、セフロキシムアキセチル、ロラカルベフ、セフジニル、セフチブテン、セフジトレン、セフェタメト、セフォペラゾン、セフィキシム、セフォタキシム、セフポドキシム、セフタジジム、セフチブテン、セフチゾキシム、セフトリアキソン、セフェピム、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、クリンダマイシン、ジリスロマイシン、エリスロマイシン、リンコマイシン、テリスロマイシン、トロレアンドマイシン、アズトレオナム、ドリペネム、イミペネム−シラスタチン、メロペネム、アミカシン、硫酸アミカシン、ゲンタマイシン、硫酸ゲンタマイシン、カナマイシン、メチルマイシン、ネオマイシン、ネチルマイシン、ストレプトマイシン、トブラマイシン、パロモマイシン、ダルババンシン、オリタバンシン、テラバンシン、テイコプラニン、バンコマイシン、デメクロサイクリン、ドキシサイクリン、メタサイクリン、ミノサイクリン、オキシテトラサイクリン、テトラサイクリン、クロルテトラサイクリン、リネゾリド、キヌプリスチン+ダルホプリスチン、マフェニド、スルファジアジン銀、スルファセタミド、スルファジアジン、スルファメトキサゾール、スルファサラジン、スルファニルアミド、スルフイソキサゾール、トリメトプリム−スルファメトキサゾール、スルファメチゾール、バシトラシン、クロラムフェニコール、コリスチメテート、ホスホマイシン、イソニアジド、メテナミン、メトロニダゾール、ムピロシン、ニトロフラントイン、ニトロフラゾン、ノボビオシン、ポリミキシンB、スペクチノマイシン、トリメトプリム、コリスチン、シクロセリン、カプレオマイシン、ピラジナミド、パラアミノサリチル酸、エリスロマイシンエチルスクシネート+スルフイソキサゾール、およびチゲサイクリンからなる群から選択される抗生物質である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記肺への活性薬剤が、アルキル化剤、抗エストロゲン、アクラルビシン、アクチノマイシンD、アルデスロイキン、アレムツズマブ、アリトレチノイン、アロプリノール、アルトレタミン、アミホスチン、アナストロゾール、アスパラギナーゼ、ベキサロテン、ビサントレン、ブレオマイシン、ブスルファン、BCNU(カルムスチン)、カルステロン、カペシタビン、カルボプラチン、セレコキシブ、クロラムブシル、シスプラチン、クラドリビン、シクロホスファミド、シクロオキシゲナーゼ2阻害剤、シタラビン、CCNU(ロムスチン)、ダカルバジン、ダウノルビシン、ダウノマイシン、デニロイキン・ディフィトックス、デクスラゾキサン、ジアジコン、ドセタキセル、ドキソルビシン、エピルビシン、エポエチンα、エソルビシン、エストラムスチン、エトポシド(VP−16)、エキセメスタン、フィルグラスチム、フロクスウリジン、フルダラビン、5−フルオロウラシル、フルベストラント、ガラクチトール、ゲムシタビン、ゲムツズマブ、酢酸ゴセレリン、ヒドロキシ尿素、イブリツモマブチウキセタン、イダルビシン、イホスファミド、イマチニブメシル酸塩、インターフェロンα、インターフェロンγ、イリノテカン、イロプラチン、レトロゾール、ロイコボリン、レバミゾール、ロニダミン、酢酸メゲストロール、メルファラン、メルカプトプリン、メスナ、メトトレキサート、メトキサレン、マイトマイシンC、ミトタン、ミトキサントロン、ミトグアゾン、フェンプロピオン酸ナンドロロン、ノフェツモマブ、窒素マスタード、オプレルベキン、オキサリプラチン、パクリタキセル、パミドロネート、ペガデマーゼ、ペガスパルガーゼ、ペグフィルグラスチム、ペントスタチン、ピポブロマン、プリカマイシン、ポルフィマーナトリウム、プロカルバジン、プロゲスチン、プレドニムスチン、PCNU、キナクリン、ラスブリカーゼ、リツキシマブ、サルグラモスチム、ストレプトゾシン、タルク、タモキシフェン、テモゾロマイド、テニポシド(VM−26)、テストラクトン、チオグアニン、チオテパ、トポテカン、トレミフェン、トシツモマブ、トラスツズマブ、トレチノイン、ウラシルマスタード、バルルビシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、およびゾレドロネートからなる群から選択される化学療法剤である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
ヒト患者により用いられる吸入装置内で処理される、請求項1〜12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
肺疾患に罹患しているかまたはそのリスクがあるヒトを治療する方法であって、
ヒト肺胞/気体界面に対する親和性により特徴づけられる表面活性剤に対して共有結合された肺治療用の薬剤を含有する複合体を提供するステップであって、前記表面活性剤が、ヒトに対して実質的に非免疫原性である哺乳類肺界面活性剤ポリペプチドまたはその模倣体の少なくとも一部を含有するステップと、
前記複合体を、肺内での薬剤効果を誘発するための有効量で吸入により前記ヒトに投与するステップと、
を含む、方法。
【請求項15】
前記投与により、前記薬剤の全身バイオアベイラビリティが未複合薬剤の吸入投与に対して低下する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記投与により、肺内での前記薬剤の滞留時間が未複合薬剤の吸入投与に対して延長される、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記投与ステップが、毎日、1日おき、3日おき、5日おき、または1週ごとに1回反復される、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記投与ステップが吸入装置を用いて行われる、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記提供される複合体が請求項1〜13のいずれか一項に記載の組成物を含有する、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
前記ヒト肺の疾患または症状の治療用薬剤を調製するための、請求項1〜12のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17−1】
【図17−2】
【図17−3】
【図17−4】
【図17−5】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17−1】
【図17−2】
【図17−3】
【図17−4】
【図17−5】
【図18】
【図19】
【公表番号】特表2010−529138(P2010−529138A)
【公表日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−511296(P2010−511296)
【出願日】平成20年6月4日(2008.6.4)
【国際出願番号】PCT/US2008/065776
【国際公開番号】WO2008/151235
【国際公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【出願人】(509335410)パカ パルモナリー ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月4日(2008.6.4)
【国際出願番号】PCT/US2008/065776
【国際公開番号】WO2008/151235
【国際公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【出願人】(509335410)パカ パルモナリー ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】
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