説明

薬剤供給具

【課題】薬剤の安定した溶出を可能にする薬剤供給具を提供する。
【解決手段】水洗トイレ用貯水タンクの給水受皿の上面に載置される薬剤供給具であって、固形薬剤を収容可能な供給具本体10と、供給具本体10の上方を覆う蓋体とを備え、供給具本体10は、水を内部に導入する取水口15と、底部に形成された排出口12と、取水口15から導入された水を排出口12に向けて案内する複数の導水路14,14と、各導水路14,14間を仕切ると共に固形薬剤の底面を支持する台座部16とを備えており、台座部16は、隣接する導水路14,14間を連通する連通路17と、外部から連通路17に臨む補助口18とを備え、導水路14,14及び連通路17を通過する水が、固形薬剤の底面に接触するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤供給具に関し、より詳しくは、水洗トイレ用貯水タンクの給水受皿の上面に載置される薬剤供給具に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の薬剤供給具として、例えば特許文献1に開示された構成が知られている。この薬剤供給具は、図12に示すように、給水受皿の上面と接する供給具本体60が、放射状に形成された複数の導水溝61と、隣接する各導水溝61,61間を仕切る座部62とを備えており、固形薬剤(図示せず)は、座部62の上面と接するように搭載される。取水口63から切欠部64aを介してガイドリング64内に流入した水は、固形薬剤(図示せず)の底面と接触しながら導水溝61を通過し、中央に形成された流出口65から排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平6−87481号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の薬剤供給具は、ガイドリング64の内側における切欠部64aと対向する位置に堤66が設けられており、切欠部64aから流れ込む水を左右両側の導水溝61に分配するように構成されている。ところが、このような構成によっても、特に使用初期における薬剤の溶出が不十分になり易いという問題があった。このような問題は、給水受皿に対する給水蛇口の配置や、供給具本体をカバーする蓋体および供給具本体の形状等によって、供給具本体の外面を伝って供給具本体の内部に流れ込む給水の量が少ない場合には、より顕著となっていた。また、流通しているトイレタンクの給水受皿の形状や勾配が様々であり、給水蛇口からの水流も家庭によって差異がある為、供給具本体への入水量に偏りが生じ、使用途中に薬剤が傾く等して溶解にバラツキが生じる場合があった。
【0005】
そこで、本発明は、薬剤の安定した溶出を可能にする薬剤供給具の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の前記目的は、水洗トイレ用貯水タンクの給水受皿の上面に載置される薬剤供給具であって、固形薬剤を収容可能な供給具本体と、該供給具本体の上方を覆う蓋体とを備え、前記供給具本体は、水を内部に導入する取水口と、底部に形成された排出口と、前記取水口から導入された水を前記排出口に向けて案内する複数の導水路と、前記各導水路間を仕切ると共に固形薬剤の底面を支持する台座部とを備えており、前記台座部は、隣接する前記導水路間を連通する連通路と、外部から前記連通路に臨む補助口とを備え、前記導水路及び連通路を通過する水が、固形薬剤の底面に接触するように構成されている薬剤供給具により達成される。
【0007】
この薬剤供給具において、前記取水口は、前記導水路ごとに設けられていることが好ましい。
【0008】
また、前記取水口は、下部中央が下方に向けて突出するように形成されていてもよく、該突出部の周縁において給水受皿の上面と当接可能に構成することができる。
【0009】
また、前記導水路は、前記排出口から放射状に延びるように形成されていることが好ましい。
【0010】
また、前記供給具本体は、給水受皿の上面に載置した状態で、給水受皿の長手方向両側に位置する前記取水口の総開口面積よりも、他の位置における前記取水口の総開口面積が小さくなるように構成されていることが好ましい。
【0011】
前記台座部には、固形薬剤が載置される。前記固形薬剤は、前記導水路及び連通路を通過する水と底面が接触することにより、底面形状をほぼ一定に維持したまま溶解するように配置されていることが好ましい。また、前記固形薬剤は、横断面が一定のものを好ましく使用することができる。或いは、前記固形薬剤は、複数層によって構成されたものも好ましく使用することができる。
【0012】
また、前記供給具本体の外面に、前記取水口の下部近傍に配置された突出部と、前記排出口を中心とする前記取水口よりも径方向外方領域に配置された支持部とを備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、薬剤の安定した溶出を可能にする薬剤供給具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係る薬剤供給具の側面図である。
【図2】図1に示す薬剤供給具における供給具本体の平面図である。
【図3】図1に示す薬剤供給具における供給具本体を上方から見た斜視図である。
【図4】図1に示す薬剤供給具における供給具本体を下方から見た斜視図である。
【図5】図3に示す薬剤供給具の変形例を示す斜視図である。
【図6】本発明の実施例の測定結果を示す図である。
【図7】本発明の比較例の測定結果を示す図である。
【図8】図1に示す薬剤供給具に収容される固形薬剤図の斜視図である。
【図9】図1に示す薬剤供給具の変形例を示す側面図である。
【図10】図9に示す薬剤供給具における供給具本体を下方から見た斜視図である。
【図11】本発明の実施例の他の測定結果を示す図である。
【図12】従来の薬剤供給具における供給具本体の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実態形態について添付図面を参照して説明する。なお、各図面において、同様の構成部分には同一の符号を付して、繰り返しの説明を省略する。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態に係る薬剤供給具の側面図である。薬剤供給具1は、円柱状の固形薬剤50を収容可能な椀状の供給具本体10と、供給具本体10の上方を覆う蓋体4とを備えている。
【0017】
供給具本体10は、横長に形成され、上縁の長手方向両側に係合部6,6を備えており、蓋体4の下縁に設けられた突部4a,4aを係合部6,6に係合させることで、蓋体4が供給具本体10に着脱可能に取り付けられる。供給具本体10の上部には、周方向に沿って延びる窓部8が形成されており、固形薬剤50の芳香成分の蒸散や、固形薬剤50の残存量の確認が可能である。供給具本体10の底部中央には、排出口12が形成されており、排出口12の周囲から下方に突出するように複数の脚部13,13が設けられている。
【0018】
蓋体4は、合成樹脂、陶器、ガラス等から構成することができ、本実施形態においては、固形薬剤50に直接水がかからないように開口の無いものを使用しているが、蓋体4に1または複数の揮散口を形成してもよい。
【0019】
図2は供給具本体10の平面図であり、図3及び図4は、供給具本体10をそれぞれ上方及び下方から見た斜視図である。供給具本体10は、内面の長手方向に沿って補強リブ11が設けられている。また、供給具本体10の内部には、排出口12から放射状に延びる複数の導水路14,14が形成されており、各導水路14,14の外方には個別に対応するように取水口15,15が設けられている。本実施形態においては、供給具本体10の長手方向両側を含む合計6箇所に、取水口15が等間隔に形成されている。
【0020】
導水路14は、断面V字状に形成されており、取水口15から排出口12に向けて下方に傾斜している。取水口15の下部中央は、導水路14の形状に応じてV字状に下方に突出している。各取水口15は、同一の形状を有しているが、供給具本体10の長手方向両側に形成されたもの以外は、開口上部を覆う遮蔽片15bが設けられており、これによって、供給具本体10の長手方向両側に形成された取水口15の総開口面積よりも、他の位置に形成された取水口15の総開口面積が小さく設定されている。
【0021】
各導水路14,14の間は、台座部16によって仕切られており、固形薬剤50の底面は、各台座部16によって支持される。台座部16は、周方向両側に隣接する導水路14,14の間を連通する切欠溝状の連通路17を備えている。台座部16の上面から連通路17の底部までの深さは、例えば、最深部で4mm、最浅部で2mmである。この深さは、浅すぎると連通路17を設けた効果が生じにくい一方、深すぎると通過水が固形薬剤50と接触しにくくなるため、1mm〜7mmであることが好ましい。
【0022】
台座部16における連通路17の径方向外方には、外部から連通路17に臨む補助口18が、取水口15よりも径方向内方位置に形成されている。また、台座部16における連通路17の径方向内方には、排出口12の周縁側を切り欠いた状態で上下方向に貫通する補助排出部19が形成されている。
【0023】
上記のように、導水路14はV字状の断面を有しているため、導水路14から連通路17へは、昇り傾斜が形成される。この傾斜により、取水口15から取り込まれた水が定量的に連通路17に導かれるため、固形薬剤50の溶解の均一化を促すことができる。連通部17の構成は、溝状のもの以外に、例えば貫通孔やパイプ状などであってもよい。
【0024】
各導水路14及び台座部16は、収容される固形薬剤50の直径よりも僅かに大きい内径を有するリング状の遮水壁20により囲まれている。遮水壁20の外方には、各台座部16に対応する位置に脱水口21が形成されている。また、遮水壁20の上端部は、各脱水口21に対応する位置にスリット22が形成されている。
【0025】
遮水壁20に囲まれた領域における連通路17が占める総面積の割合は、平面視において2%以上80%以下であることが好ましく、10%以上30%以下がより好ましい。前記割合を少なくとも2%以上とすることにより、連通路17を介して水を分配する間に、固形薬剤50との十分な接触が可能となり、薬剤底面における均一な溶出を促すことができる。
【0026】
以上のように構成された薬剤供給具1は、供給具本体10の遮水壁20内に固形薬剤50を収容することにより、固形薬剤50の底部が各台座部16,16によって支持される。そして、蓋体4を閉じた状態で、図1に示すように、水洗トイレ用貯水タンクの給水受皿52に形成された流下口54に脚部13,13を挿入することにより、取水口15における突出部15aの周縁が給水受皿52の上面と当接し、薬剤供給具1が給水受皿52の上面に載置される。給水受皿52の形状が一般的な長方形状である場合には、供給具本体10の長手方向が給水受皿52の長手方向と一致するように載置することができる。
【0027】
給水受皿52に蛇口(図示せず)から供給された水は、主に各取水口15から供給具本体10に導入され、各導水路14及び連通路17を通過する際に、台座部16に支持された固形薬剤50の底面と接触し、排出口12から排出される。このように、薬剤供給具1は、導水路14に加えて連通路17を有することにより、固形薬剤50との広い接触面積を得ることができ、使用開始直後から薬剤を十分溶出させることができる。また、一部の取水口15における取水量が少ない場合、特定の取水口15からしか取水できない場合、使用中に固形薬剤50の一部が崩壊して導水路14の一部が閉塞された場合などにおいても、連通路17を介して導水路14,14間の水の分配を容易に行うことができ、薬剤の溶出を安定させることができる。
【0028】
固形薬剤50からの薬剤の溶出は、導水路14及び連通路17を通過する水との接触によって、主として底面のみから略均一に行われる。したがって、固形薬剤50を本実施形態のように円柱状とすることにより、初期の直径を維持したまま固形薬剤50の嵩減りを生じさせることができ、使用終了まで固形薬剤50を台座部16において安定的に支持することができる。固形薬剤50の形状は、円柱状以外に、角柱状など横断面が上下にわたって一定であれば、横断面を一定に維持したまま嵩減りを生じさせることができるので、上記と同様の効果を得ることができる。
【0029】
また、固形薬剤50の形状は、上述した横断面が一定のもの以外に、錐状、錐台状、球状など他の形状であってもよく、これらの場合も、導水路14及び連通路17を通過する水が固形薬剤50の底面に略均一に接触することにより、固形薬剤50を、底面形状がほぼ一定の状態を維持したまま溶解させることができる。
【0030】
また、固形薬剤50は、1層のみの構成に限定されず、複数層から構成したものを好ましく使用することができる。例えば、図8(a)に示すように、円柱状の中心層50aの周囲にリング状の外層50bが例えば1:3の重量比で同心円状に配置されたもの等、中心層の周囲が1層以上の外層で覆われた複数層から構成されたものを使用することにより、上記効果と相俟って、各層から溶出する有効成分や色素等の割合を所望の値に維持することができる。このような構成を有する固形薬剤は、例えば特開2000−109897号公報に開示された混練成形製法や、熱で成分を溶融混合し、型に充填して冷却後に型から薬剤を抜く溶融製法などにより、製造することができる。
【0031】
固形薬剤を構成する中心層としては、界面活性剤、無機硫酸塩、有効成分(撥水剤、親水化剤、防汚剤、消臭剤、賦香剤、除菌剤、抗菌剤、殺菌剤、キレート剤、酵素、着色剤などの1又は2種以上)を含んだものを例示することができ、外層としては、界面活性剤、色素、香料、無水硫酸塩などを主として含むものを例示することができる。複数層を有する固形薬剤50の構成は、上記以外に、例えば、図8(b)に示すように、平面視扇形状(又は半円状)の各層50c,50d,50eを円柱状に組み合わせたもの、図8(c)に示すように、円柱状の層50f内に、これよりも小径の円柱状の層50g,50h,50iが充填されたもの、図8(d)に示すように、各層50j、50k、50lを上下方向に積層して、下層50j全体が溶解してから上方に隣接する層50k、50lが順次溶解するものを挙げることができる。なお、上記各構成において隣接する各層は、含有する1又は複数の成分のうち、1つ以上の成分について種類や割合が互いに相違していればよい。
【0032】
また、供給具本体10は横長に形成されており、長手方向の両側に形成された取水口15の総開口面積よりも、他の位置に形成された取水口15の総開口面積が小さくなるように設定されているので、最も一般的である長方形状の給水受皿52に載置した際に、給水蛇口からの水流や、給水受皿52の形状又は勾配等に拘わらず、各取水口15から略均一に水を導入することができ、薬剤の十分かつ安定した溶出を促すことができる。本実施形態においては、供給具本体10を横長に構成することで、給水受皿52に載置したときに、開口面積の大きい取水口15が給水受皿52の長手方向両側に自然に位置するように構成しているが、供給具本体10は必ずしも横長である必要はなく、蓋体4の形状や柄の配置などを適宜設定することによっても、開口面積の大きい取水口15が給水受皿52の長手方向両側に位置するように使用者に促すことができる。
【0033】
更に、取水口15は、下部中央が下方に向けて突出するように形成されているので、給水受皿52との当接面積が少なく、薬剤供給具1を正確な姿勢で載置することができ、薬剤供給具1の外面をつたって流れ込む水の量が少ないような場合でも、給水受皿52に供給された水を供給具本体10内に確実に導入することができる。なお、薬剤供給具1に導入されない余剰の水は、供給具本体10の下面と給水受皿52との間を通過して、流下口54からタンク内に流下する。
【0034】
また、台座部16には、連通路17に臨む補助口18が形成されているので、補助口18を介して水の出し入れを行うことにより連通路17を通過する水の流量を調整することができ、この点からも薬剤の十分かつ安定した溶出が可能である。補助口18からの導水は、導水路14から連通路17に流れ込む水に対する呼び水としても機能し、連通路17へのスムースな導水を促す効果も有している。
【0035】
供給具本体10の窓部8から浸入した水は、遮水壁20で堰き止められて脱水口21から流出する。また、取水口15から過剰な量の水が導水された際には、余剰分の水はスリット22を介して脱水口21から流出する。よって、そのような場合においても、遮水壁20内に水が過度にたまることはない。
【0036】
以上、本発明の一実施形態について詳述したが、本発明の具体的な態様は上記実施形態に限定されない。例えば、本実施形態においては、取水口15を導水路14ごとに複数設けているが、必ずしも導水路14に個別に対応させる必要はなく、取水口15から水が導入された後に複数の導水路14,14に分配されるように構成してもよい。また、一部の取水口15に設けた遮蔽片15bは、必ずしも必要ではない。
【0037】
本実施形態においては、連通路17を台座部16の径方向の略中央位置に溝状に形成し、連通路17の内方及び外方に同程度の幅で台座部16を残すように構成しているが、取水口15から導入された水が各導水路14に分配され、通過する水が使用初期の固形薬剤50の底面と接触可能である限り、他の配置や形状であってもよい。
【0038】
また、供給具本体10における蓋体4の取り付け構造は、本実施形態以外に種々の態様が可能であり、例えば、図5に示すように、供給具本体10の内面上部に複数の係合突起106,106を設け、これら係合突起106,106を、陶器等からなる蓋体の下部周囲に沿って形成した係合溝に係合させる構成にすることができる。
【0039】
また、本実施形態においては、導水路14を断面V字状に形成することで、取水口15の下部中央から下方に突出する形状部分が突出部15aを構成しているが、この突出部15aは、図9及び図10に示すように、各取水口15の下部近傍に設けられた突片などから構成してもよい。このような突出部15aの下方への突出長さは特に限定されないが、例えば1mm程度である。突出部15aは、複数であることが好ましいが、必ずしも全ての取水口15に設ける必要はない。このように、取水口15の下部近傍に突出部15aを設けることにより、取水口15と給水受皿52との間に水の通過スペースを確保することができ、取水口15の浸漬を防止することができる。突出部15aを突片から構成する場合、取水口15の形状は一般的な矩形状などであってもよい。
【0040】
更に、図9及び図10に示す構成は、供給具本体10の外面に細片状の支持部10aが設けられている。支持部10aは、排出口12を中心として取水口15よりも径方向外方に存在する領域の任意の箇所に設けることが可能であり、これによって、給水受皿52の勾配が急で突出部15aが給水受皿52と当接できないような場合や、流下口54の口径が大きいために突出部15aの全体が流下口54内に収容されるような場合でも、供給具本体10と給水受皿52との間にスペースを確保して、取水口15への水の流路を確保することができ、また供給具本体10の底面と給水受皿52との間に隙間を確保することにより、流下口54へのスムースな排水を行うことができる。支持部10aの配置は、取水口15からの導水を妨げない位置がより好ましく、図9においては、4つの支持部10aが、それぞれ異なる脱水口21の周縁近傍に分散配置されている。
【0041】
支持部10aの長さは、長すぎると突出部15aが有効に機能しなくなるおそれがあるため、供給具本体10内の固形薬剤50が水平に支持された状態(すなわち、図9に示す側面視の状態)で、突出部15aの下端よりも支持部10aの下端が上方に位置することが好ましい。これによって、給水受皿52の湾曲面に沿って供給具本体10を設置しやすくすることができる。支持部10aの長さとしては、例えば4mm程度を挙げることができる。
【0042】
このように、供給具本体10が突出部15a及び支持部10aを備える構成においては、薬剤供給具1が載置される給水受皿52の形状や、給水受皿52への水の供給量等に拘わらず、各取水口15から供給具本体10の内部に水を安定的に導入することができ、薬剤底面における均一な溶出をより確実にすることができる。
【0043】
すなわち、給水受皿52の勾配が急である場合には、図9(a)に示すように、支持部10aの下端が高さHにおいて給水受皿52の上面と当接し、供給具本体10の側面と給水受皿52との間に隙間を確保することができる。したがって、供給具本体10の側面が給水受皿52に密着するおそれがなく、給水受皿52に供給された水を、取水口15から供給具本体10の内部に確実に導入することができる。
【0044】
一方、給水受皿52の勾配が緩やかである場合には、図9(b)に示すように、突出部15aの下端が給水受皿52の上面と当接し、供給具本体10の底面と給水受皿52との間に隙間を確保することができる。したがって、供給具本体10の底面が流下口54を閉塞するおそれがなく、給水受皿52に水が溜まって取水口15から必要以上の水が取り込まれることを確実に防止できる。
【実施例】
【0045】
以下、実施例及び比較例に基づき、本発明を更に詳細に説明する。但し、本発明が以下の実施例に限定されるものではない。
【0046】
実施例として、図1に示す構成の薬剤供給具に、小林製薬株式会社製の「ブルーレット陶器のおくだけ(すずらんの香り)」に用いられる固形薬剤を収容し、貯水タンク(東陶機器株式会社製、機種番号:S721B)の給水受皿に載置して、1時間に1回、「大」にてフラッシュを行った(水温:25℃、気温:25℃)。そして、各回における薬剤供給具を通過した水が流れ込んだ貯水タンクの貯留水を試験管に採取し、波長630nmにおける吸光度を分光光度計(株式会社島津製作所、型番:UV−1700)により測定した。この結果を図6(a)に示す。図6(a)は、N=3の各吸光度を1000倍した値で示している。また、使用した固形薬剤は2層構造であり、成分等は以下のとおりである。
(使用した固形薬剤)
外層:香料、界面活性剤、色素、酵素、キレート剤、緑茶抽出物
内層:界面活性剤、色素、キレート剤
内容量:25g (外層:内層=3:1)
水の色:青色
吸光度×1000の値は、50〜110の範囲が最も使用感の良い色合いである。図6(a)から明らかなように、実施例の結果は、使用開始直後から色出が良く、且つ、使用期間を通じて安定した色出が得られていることを示している。
【0047】
次に、薬剤供給具を載置する貯水タンクとして種々のものを使用して上記と同様の試験を行い、20回目のフラッシュ後に採取した水の吸光度(×1000)を測定した。この結果を図6(b)に示す。図6(b)から明らかなように、実施例については、試験を行ったいずれの貯水タンクについても、使用初期直後から良好な色出が得られている。
【0048】
一方、比較例として、特開2004−316417号公報に開示された構成(具体的には、同公報の図14に示す蓋体と、図16に示す供給具本体とを組み合わせた構成)の容器を使用し、収容される固形薬剤は実施例と同じものを使用して、上記と同様の試験を行った。この結果を図7(a)及び(b)に示す。
【0049】
図7(a)から明らかなように、比較例については、特に初期の色出が十分でなく、この結果は、図7(b)に示すように他の貯水タンクについても同様であった。また、実施例と比較して、使用期間全体における色出の安定性も劣る結果であった。
【0050】
なお、各貯水タンクの給水受皿に供給される水の量は、図6(b)に10秒間の値として示すとおりであり、実際には給水受皿に水が60秒間供給される。すなわち、給水受皿への水の供給総量は、図6(b)に示す値の6倍である。
【0051】
次に、供給具本体10に突出部15a及び支持部10aを設けた効果を確認するため、図1に示す構成の薬剤供給具と、図9に示す構成の薬剤供給具とを用いて、上記と同様に20回フラッシュ後に採取した水の吸光度を測定すると共に、取水口15から水が導入される様子を観察した。貯水タンクは、東陶機器株式会社製の機種番号S771Bを使用した。この給水タンクは、給水受皿への水の供給量が、通常は500mL/10secであるが、本実施例ではより過酷な条件下で試験を行うため、給水受皿への水の供給量が、750mL/10sec及び800mL/10secの場合について、それぞれ試験を行った。この結果を図11に示す。
【0052】
図11の吸光度から明らかなように、給水受皿への水の供給量が増加した場合、図9に示す構成は、図1の構成に比べて薬剤の色出の増加を抑制できていることがわかる。取水口15から水が導入される様子を観察したところ、図1の構成では、供給具本体10の底面と給水受皿52の上面との間に形成された隙間が僅かであるため、給水受皿52への水の供給量が通常使用時よりも多くなることによって、流下口54からの排出量よりも給水受皿52への供給量が多くなる結果、給水受皿52に水が溜まった状態になり、図1の側面視の状態では、取水口15の上部が水面よりも僅かに露出するのみで、取水口15の大部分が水没した状態となっていた。
【0053】
これに対し、図9の構成では、突出部15aの下端が給水受皿52の上面と当接することにより、給水受皿52への供給量が通常の使用状態では生じ得ないほどの多量であっても、供給具本体10の底面と給水受皿52の上面との間を余剰水が十分通過可能であるため、各取水口15から適量の水が連続的に導入されており、供給具本体10内で各導水路14を介して水が適切に分配されていることが推測された。
【符号の説明】
【0054】
1 薬剤供給具
4 蓋体
10 供給具本体
12 排出口
14 導水路
15 取水口
16 台座部
17 連通路
18 補助口
50 固形薬剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水洗トイレ用貯水タンクの給水受皿の上面に載置される薬剤供給具であって、
固形薬剤を収容可能な供給具本体と、前記供給具本体の上方を覆う蓋体とを備え、
前記供給具本体は、水を内部に導入する取水口と、底部に形成された排出口と、前記取水口から導入された水を前記排出口に向けて案内する複数の導水路と、前記各導水路間を仕切ると共に固形薬剤の底面を支持する台座部とを備えており、
前記台座部は、隣接する前記導水路間を連通する連通路と、外部から前記連通路に臨む補助口とを備え、前記導水路及び前記連通路を通過する水が、固形薬剤の底面に接触するように構成されている薬剤供給具。
【請求項2】
前記取水口は、前記導水路ごとに設けられている請求項1に記載の薬剤供給具。
【請求項3】
前記取水口は、下部中央が下方に向けて突出するように形成されており、該突出部の周縁において給水受皿の上面と当接可能に構成されている請求項1または2に記載の薬剤供給具。
【請求項4】
前記導水路は、前記排出口から放射状に延びるように形成されている請求項1から3のいずれかに記載の薬剤供給具。
【請求項5】
前記供給具本体は、給水受皿の上面に載置した状態で、給水受皿の長手方向両側に位置する前記取水口の総開口面積よりも、他の位置における前記取水口の総開口面積が小さくなるように構成されている請求項1から4のいずれかに記載の薬剤供給具。
【請求項6】
前記台座部に、固形薬剤が載置されており、
固形薬剤は、前記導水路及び前記連通路を通過する水と底面が接触することにより、底面形状をほぼ一定に維持したまま溶解するように配置されている請求項1から5のいずれかに記載の薬剤供給具。
【請求項7】
前記台座部に、横断面が一定の固形薬剤が載置された請求項1から6のいずれかに記載の薬剤供給具。
【請求項8】
前記台座部に、複数層から構成された固形薬剤が載置された請求項1から7のいずれかに記載の薬剤供給具。
【請求項9】
前記供給具本体の外面に、前記取水口の下部近傍に配置された突出部と、前記排出口を中心とする前記取水口よりも径方向外方領域に配置された支持部とを備える請求項1から8のいずれかに記載の薬剤供給具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【図12】
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【図6】
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【図7】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−144979(P2012−144979A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−105841(P2012−105841)
【出願日】平成24年5月7日(2012.5.7)
【分割の表示】特願2007−52318(P2007−52318)の分割
【原出願日】平成19年3月2日(2007.3.2)
【出願人】(000186588)小林製薬株式会社 (518)
【Fターム(参考)】