説明

薬剤分包装置用の清掃ノズル先端部材及び薬剤分包装置

【課題】清掃箇所に対する清掃ノズルの引っ掛かりを抑制し、薬剤分包装置のユーザーに不快感を与えにくくした薬剤分包装置用の清掃ノズル先端部材、及び、これを用いた薬剤分包装置を提供する。
【解決手段】薬剤分包装置に備えられ、清掃対象物を吸引できる清掃ノズル2の先端に取り付けられる、薬剤分包装置用の清掃ノズル先端部材4において、先端から基端まで貫通し、前記清掃ノズル2の内部に連通可能な内部空間4aを有し、外部から前記内部空間4aへと通気可能な減圧部44を側部に備えたものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、清掃対象物を吸引できる清掃ノズルの先端に取り付けられる、薬剤分包装置用の清掃ノズル先端部材、及び、これを用いた薬剤分包装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
薬剤分包装置は使用に伴い、散剤の一部、及び、錠剤等が欠けることにより発生した粉塵が各部に付着する。そのため、薬剤分包装置には、この粉塵等の清掃対象物を除去するための清掃機構が設けられていることが多い(特許文献1参照)。
【0003】
この清掃機構は、基本的には家庭用の真空掃除機と同じ構成を有しており、負圧発生手段と、この負圧発生手段に接続された可撓性を有するホースと、このホースの先端に設けられた清掃ノズルとを備えている。前記の負圧発生手段に設けられたファン等によって発生する負圧を利用し、清掃ノズルの先端から清掃対象物を内部へ吸引できる。ユーザーは、薬剤分包装置からホースを引き出すことで、清掃ノズルをユーザーの望む位置に移動させ、清掃をしたい箇所を清掃することができる。
【0004】
清掃ノズルの先端部は、清掃箇所等との摩擦により、時間を経るにつれ磨耗していく。そのため、図9(A)に示すように、清掃ノズル501には消耗品としての清掃ノズル先端部材(以下、「先端部材」とも記す)502が交換可能に取り付けられていることが多い。この先端部材502は筒状のもので先端に開口部502aを有しており、この開口部502aから清掃対象物を清掃ノズル501の内部へ吸引することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−324012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記先端部材502を備えた清掃ノズル501を用いて清掃を行う際に、清掃箇所500が、例えば、薬剤分包装置における散剤分割のための分割板(図9(A)参照)のように平面を有する場合、問題が発生することがある。つまり、図9(B)に示すように、清掃ノズル501を前記平面上で移動させる際、先端部材502の開口部502aにおける吸引力により当該平面に開口部502aが密着して清掃ノズル501が引っ掛かること(いわゆる「スティックスリップ」)により、ユーザーに不快感を与えることがある。なお、このような引っ掛かりは、図9(A)に示したように前記平面が横方向に延びている清掃箇所500に対して、前記横方向に清掃ノズル501を移動させる際に、特に起こりやすい。
【0007】
そこで本発明は、清掃箇所に対する清掃ノズルの引っ掛かりを抑制し、薬剤分包装置のユーザーに不快感を与えにくくした薬剤分包装置用の清掃ノズル先端部材、及び、これを用いた薬剤分包装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、薬剤分包装置に備えられ、清掃対象物を吸引できる清掃ノズルの先端に取り付けられる、薬剤分包装置用の清掃ノズル先端部材において、先端から基端まで貫通し、前記清掃ノズルの内部に連通可能な内部空間を有し、外部から前記内部空間へと通気可能な減圧部を側部に備えたことを特徴としている。
【0009】
前記構成によると、外部から内部空間へと通気可能な減圧部を側部に備えたことにより、清掃を行う際における、清掃ノズル先端部材の内部空間の負圧を減圧させることで、この減圧に対応して先端部材の開口部における吸引力を減少させ、清掃箇所に対して先端部材の開口部が密着することを抑制できる。つまり、仮に先端部材の開口部が清掃箇所に吸い付いたとしても、減圧部からの通気により内部空間の負圧の減圧がなされ、開口部における吸引力が減少することにより、開口部の清掃箇所に対する密着力を低下させることができる。
【0010】
そして、本発明の清掃ノズル先端部材は、前記減圧部が複数設けられたものとすることが好ましい。
【0011】
前記好ましい構成によると、減圧部が複数設けられたことにより、清掃箇所に密着する等して複数のうち一部の減圧部が閉鎖した場合でも、開放している他の減圧部により内部空間の負圧を減圧させることを継続できる。
【0012】
また、本発明の清掃ノズル先端部材は、前記複数の減圧部が周方向における異なる位置に設けられたものとすることが好ましい。
【0013】
前記好ましい構成によると、複数の減圧部が、周方向における異なる位置に設けられたことにより、複数の減圧部が周方向における同じ位置に設けられた場合に比べ、清掃箇所に密着する等して減圧部が複数同時に閉鎖してしまう可能性を減少させることができる。
【0014】
また、本発明の清掃ノズル先端部材は、前記複数の減圧部が軸方向における異なる位置に設けられたものとすることが好ましい。
【0015】
前記好ましい構成によると、複数の減圧部が、軸方向における異なる位置に設けられたことにより、複数の減圧部が軸方向における同じ位置に設けられた場合に比べ、清掃箇所に密着する等して減圧部が複数同時に閉鎖してしまう可能性を減少させることができる。
【0016】
また、本発明は、清掃対象物を吸引できる清掃ノズルを備えた薬剤分包装置において、先端から基端まで貫通し、前記清掃ノズルの内部に連通可能な内部空間を有し、かつ、外部から当該内部空間へと通気可能な減圧部を側部に備えた清掃ノズル先端部材が前記清掃ノズルに取り付けられたことを特徴としている。
【0017】
前記構成によると、清掃ノズル先端部材の側部に、外部から内部空間へと通気可能な減圧部を備えたことにより、清掃を行う際における、清掃ノズル先端部材の内部空間の負圧を減圧させることで、この減圧に対応して先端部材の開口部における吸引力を減少させ、清掃箇所に対して先端部材の開口部が密着することを抑制できる。つまり、仮に先端部材の開口部が清掃箇所に吸い付いたとしても、減圧部からの通気により内部空間の負圧の減圧がなされ、開口部における吸引力が減少することにより、開口部の清掃箇所に対する密着力を低下させることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、清掃を行う際における、清掃ノズル先端部材の内部空間の負圧を減圧させることで、この減圧に対応して先端部材の開口部における吸引力を減少させ、清掃箇所に対して先端部材の開口部が密着することを抑制できるため、清掃箇所に対する清掃ノズルの引っ掛かりを抑制し、薬剤分包装置のユーザーに不快感を与えにくくした清掃ノズル先端部材、及び、これを用いた薬剤分包装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係る清掃ノズル先端部材が取り付けられた清掃ノズルを備えた薬剤分包装置の、内部機構を省略した斜視図である。
【図2】同実施形態に係る薬剤分包装置におけるサイドカバー内面側を示す斜視図である。
【図3】同実施形態に係る清掃ノズル先端部材が取り付けられた清掃ノズルの斜視図である。
【図4】同実施形態に係る清掃ノズル先端部材の斜視図である。
【図5】(A)は同実施形態に係る清掃ノズル先端部材の縦断面図であり、(B)は当該清掃ノズル先端部材を清掃ノズルに取り付ける直前の状態を示す要部の縦断面図である。
【図6】同実施形態に係る清掃ノズル先端部材を清掃ノズルに取り付けた状態を示す要部の縦断面図である。
【図7】(A)は同実施形態に係る清掃ノズル先端部材の減圧を示す断面視の概略図であり、(B)は当該清掃ノズル先端部材の減圧部から清掃対象物を吸引することを示す断面視の概略図である。
【図8】本発明の他の実施形態に係る清掃ノズル先端部材が取り付けられた清掃ノズルの要部の縦断面図である。
【図9】(A)は従来の清掃ノズルの使用方法の一例を示す斜視図であり、(B)は清掃ノズル先端部材の引っ掛かりの発生を示す断面視の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明につき、一実施形態を取り上げて説明を行う。
【0021】
図1に示すように、本実施形態の先端部材を備えた清掃ノズル2は清掃機構の一部として、薬剤分包装置100に取り付けられて用いられる。
【0022】
本実施形態の清掃機構は、図2に示すように、薬剤分包装置100のサイドカバー101における内面側に設けられており、負圧発生手段(図示しない)と、この負圧発生手段に対して通気可能に設けられた可撓性を有するホース1と、このホース1の先端に設けられた清掃ノズル2とを有している。
【0023】
本実施形態では、この清掃ノズル2は硬質プラスチック製であり、この清掃ノズル2を用い、薬剤分包装置100の、散剤を分包量に分割するために用いられるV枡や、分包紙に薬剤を導くために用いられるホッパー等の清掃箇所Cに付着した粉塵等の清掃対象物Dを、清掃ノズル2の先端から内部へ吸引することで、前記の清掃箇所Cから除去することができる。
【0024】
本実施形態の清掃機構は、ホース1を下方に凸に湾曲させて収納するホース収納機構3を備えている。このホース収納機構3は、ホース1の基端が接続され、ホース1の収納位置と引き出し位置とに対応する範囲内で回動可能とされたジョイント部31と、このジョイント部31を、ホース1の収納位置に対応する位置へと回動するように、自重により付勢できるウエイト部32とを備えている。このホース収納機構3により、ホース1及び清掃ノズル2が、図1に示すように、薬剤分包装置100の内部に収納できるものとされている。
【0025】
図3に示すように、清掃ノズル2の先端部22には、清掃ノズル先端部材4が着脱可能に取り付けられている。このため、先端部材4における先端部分が磨耗した場合等に、先端部材4を新しいものに交換することができる。本実施形態では、清掃ノズル2に対して嵌合により先端部材4が固定されるが(詳しくは後述する)、螺合により清掃ノズル2に先端部材4が固定されるものや、先端部材4とは別体とされたねじ、リング等の固定具を用いて清掃ノズル2に対して先端部材4が固定されるものであっても良い。
【0026】
本実施形態の先端部材4は軟質シリコン樹脂製とされている。このように先端部材4が軟質の材料からなるため、例えば清掃箇所Cが曲面等である場合でも、先端部材4を変形させて清掃箇所Cの形状に追随させることができ、清掃箇所Cにある清掃対象物Dの吸引を効率良くできる。ただし、場合によっては、先端部材4を硬質樹脂や金属等の硬質の材料で形成しても良い。
【0027】
図4に示すように、先端部材4は、軸方向に直交する断面が円形であるチューブ状とされている。具体的には、図5(A)に示すように、先端部材4の先端(図示左端)から基端(図示右端)まで貫通し、前記清掃ノズルに連通させることのできる内部空間4aを有している。この内部空間4aは、基端側から順に、基端側区間4a1、中間側区間4a2、先端側区間4a3とされている。基端側区間4a1には、図6に示すように、清掃ノズル2の先端部22が位置する。
【0028】
そして、先端部材4の基端は軸方向に対して直交して切断された形状とされている。一方、先端部材4の先端は軸方向に対して斜め方向に交わる平面にて切断された、傾斜した形状とされている。前記斜め方向に交わる平面は、図5(A)の紙面に直交する平面であって、図示下方が基端側に、図示上方が先端側に位置する仮想の平面である。また、先端部材4の先端は開口部43とされており、この開口部43にて前記の内部空間4aが外部へと開放している。そして、先端部材4の先端寄りの側部には貫通孔である減圧部44が設けられている(この減圧部44についての詳細は後述する)。
【0029】
次に、先端部材4の内面の形状について述べる。図5(A)に示すように、先端部材4の内面は、基端側から順に、基端側内面421、中間側内面422、先端側内面423とされている。基端側内面421は、前記の内部空間4aにおける基端側区間4a1の径方向内端縁を規定する。中間側内面422は、内部空間4aのうち中間側区間4a2の径方向内端縁を規定する。先端側内面423は、内部空間4aのうち先端側区間4a3の径方向内端縁を規定する。図5(B)に示すように、基端側内面421の径寸法d421は、清掃ノズル2の先端部22の外径寸法d22よりも小さい。そして、中間側内面422の径寸法d422は、清掃ノズル2の先端部22の内面221の径寸法d221と等しくされており、本実施形態ではこの径寸法が7mmとされている。先端側内面423の径寸法d423は、基端では中間側内面422の径寸法d422と同一であり、先端側に向かうにつれ拡大するものとされている。つまり、内部空間4aにおける先端側区間4a3は、先端にむかうにつれ拡大している。
【0030】
ここで、基端側内面421の径寸法d421の方が中間側内面422の径寸法d422よりも大きいことから、基端側内面421と中間側内面422との間には段差424が形成されている。
【0031】
内部空間4aにおける基端側区間4a1に清掃ノズル2の先端部22の先端部が挿入された際(図6参照)には、基端側内面421の径寸法d421が拡大する。そして前記のように、中間側内面422の径寸法d422は、清掃ノズル2の先端部22の内面221の径寸法d221と等しいため、この先端部22の挿入の際、図6に示すように、先端部22の内面221と中間側内面422とが同一面となり、段差のない状態となる。よって、清掃ノズル2の吸引に伴い内部空間4aを通過する気流が段差を越えることによる異音が発生しにくい。
【0032】
そして、図5(A)(B)に示すように、基端側内面421の基端寄りの位置には、清掃ノズル2に対する先端部材4の、軸方向への抜け止めとして嵌合凹部45が設けられている。この嵌合凹部45は、基端側内面421にて周方向に連続する1条の溝とされている。この溝の断面形状は半円形状とされている。これに対し、図5(B)に示すように、清掃ノズル2の先端部22には、前記の嵌合凹部45と対応する位置に、周方向に連続する1条の突条である嵌合凸部222が設けられている。嵌合凸部222の断面形状は半円形状であって、かつ、嵌合凹部45に嵌合可能な形状とされている。これにより、清掃ノズル2の先端部22に先端部材4が取り付けられた際には、先端部材4の嵌合凹部45と清掃ノズル2の嵌合凸部222とが嵌合するため、清掃ノズル2の先端部22から先端部材4が不意に抜け落ちてしまうことがない。
【0033】
先端部材4と清掃ノズル2との抜け止めについては、本実施形態のものに限られず、種々に変更して実施できる。例えば、嵌合凹部45及び嵌合凸部222を多条に形成しても良い。また、周方向に連続する溝と突条の組み合わせではなく、周方向あるいは軸方向に間欠的に設けた凹部と凸部の組み合わせでも良い。また、本実施形態とは逆に、ノズル取付部45に凸部を設け、清掃ノズル2に凹部を設けても良い。また、凹部を省略し、ノズル取付部45か清掃ノズル2のいずれか一方にのみ凸部を設けても良い。
【0034】
また、本実施形態では、基端側内面421の径寸法d421が、清掃ノズル2の先端部22の外径寸法d22よりも小さくされているため、清掃ノズル2の先端部22に先端部材4が取り付けられた際には、基端側内面421が清掃ノズル2の先端部22を径方向に締め付けることになる。そのため、嵌合凹部45及び嵌合凸部222を形成せずに、このような径寸法の関係にある基端側内面421と清掃ノズル2の先端部22とを先端部材4と清掃ノズル2との抜け止めとして用いても良い。
【0035】
次に、先端部材4の外面の形状について述べる。先端部材4の外面は、基端側から順に、基端側外面411、先端側外面412とされている。図5(B)に示すように、基端側外面411の径寸法d411は、先端側外面412の径寸法d412よりも小さく、基端側外面411と先端側外面412との間は、傾斜面である絞り部413とされている。基端側外面411と先端側外面412の径寸法の差は、基端側内面421の径寸法d421と清掃ノズル2の先端部22の径寸法d22の差にほぼ等しい。そのため、内部空間4aにおける基端側区間4a1に清掃ノズル2の先端部22が挿入された際には、基端側外面411の径寸法d411が拡大することになり、図6に示すように、基端側外面411と先端側外面412とがほぼ同径となる。なお、これに伴い、絞り部413の傾斜はほぼ消失する。このように基端側外面411と先端側外面412とがほぼ同径となることにより、狭い部分を清掃する際も、清掃箇所Cに先端部材4が引っ掛かりにくく、スムーズな清掃が可能となる。
【0036】
次に、減圧部44は、先端部材4の側部に設けられた、外部から内部空間4aへと通気可能な部分であって、本実施形態では、先端部材4の側面から管厚方向に貫通する貫通孔とされている。図7(A)に矢印で示すように、この減圧部44から外部の空気を吸引することにより、清掃機構の作動時における内部空間4aの負圧を減圧させる減圧作用を発揮できる。この減圧作用は、言い換えると、先端部材4に開口部43の他、常に通気可能な減圧部44を設けたことにより奏する、内部空間4aの負圧の上昇を抑制する作用である。
【0037】
このように減圧部44を設けたことにより、清掃機構における負圧発生手段の動力を変更することなく、先端部材4における吸引力を開口部43と減圧部44とで分けて担うことができ、その結果、先端部材4の開口部43における吸引力(すなわち、清掃箇所Cの表面に対する密着力)を減少させ、清掃箇所Cに対して先端部材4の開口部43が密着することを抑制できる。つまり、仮に先端部材4の開口部43が清掃箇所Cに吸い付いたとしても、減圧部44からの通気により内部空間4aの負圧の減圧がなされ、開口部43における吸引力が減少することにより、開口部43の清掃箇所Cにおける表面に対する密着力を低下させることができる。
【0038】
本実施形態の減圧部44は、管厚方向から見た場合に円形である貫通孔とされているが、これに限られず種々の形状とすることができ、例えば、多角形状の孔や長孔(スリット)としても良い。また、全周が閉じられた孔ではなく、開口部43の周縁から基端側に向かうように切り込んだ溝あるいはスリットとしても良い。これはつまり、開口部43の周縁全周が一つの平面上に位置しないように湾曲しており、当該湾曲した部分における空間から内部空間4aへと通気可能とされていれば良いということである。また、本実施形態では管厚方向に先端部材4の側面を打ち抜くことにより貫通孔が形成されているが、先端部材4を成型する(金型に樹脂を流し込む等)際に同時に貫通孔が形成されるようにしても良い。
【0039】
本実施形態では、先端部材4の基端側の位置に基端側減圧部44aが2箇所、同先端側の位置に先端側減圧部44bが2箇所、それぞれ径方向に対向する位置に設けられている。図5(A)にて紙面表裏方向に形成されている貫通孔が基端側減圧部44aであり(1箇所のみ図示している)、図示上下方向に形成されている貫通孔が先端側減圧部44bである。先端部材4の先端は傾斜した形状とされていることから、図5(A)における下側に設けられた先端側減圧部44bが、開口部43の周縁から最も近い位置となる。この、開口部43の周縁から最も近い位置の先端側減圧部44bは、図7(B)に示すように、清掃対象物Dの吸引にも用いられる。もちろん、その他の減圧部44も、清掃箇所Cとの位置関係により、清掃対象物Dの吸引に用いられ得る。
【0040】
また、基端側減圧部44aと先端側減圧部44bは、周方向に90°毎に交互に設けられている。つまり、本実施形態では、複数の減圧部44…44が互い違いの位置に設けられている。このように減圧部44を複数設けることで、一つの減圧部44が清掃箇所Cに密着する等により塞がってしまった場合でも、他の減圧部44が開放しており、当該減圧部44からの吸引を継続させることが可能である。
【0041】
そして前記のように、一部が塞がっても他を開放させるとの理由から、複数の減圧部44…44は、周方向における異なる位置に設けておくことが望ましい。複数の減圧部44…44が周方向における同じ位置に設けられた場合に比べると、清掃箇所Cに密着する等して減圧部44が複数同時に閉鎖してしまう可能性を減少させることができるからである。そしてこれに加えて、複数の減圧部44…44が軸方向での同じ位置(言い換えると、周方向に並ぶ位置)に設けられると先端部材4の強度が低下し、減圧部44…44を境に先端部材4が切断されてしまうおそれがあるため、強度の観点から、減圧部44…44を軸方向における異なる位置に設けることが望ましい。
【0042】
また、前記周方向の場合と同様、減圧部44…44を軸方向における異なる位置に設けておくと、一つの減圧部44が清掃箇所Cに密着する等により塞がってしまった場合でも、他の減圧部44が開放しており、当該減圧部44からの吸引を継続させることが可能である。例えば、清掃箇所Cである薬剤分包装置100に設けられるホッパー(図示していない)に上方から清掃ノズル2を挿入すると周方向における異なる位置に設けた減圧部44…44が密着してしまうことがあるが、軸方向に異なる位置に減圧部が設けられていると、全ての減圧部44…44がホッパーに密着してしまうことを抑制できる。
【0043】
ここで、減圧部44を種々の大きさの円形貫通孔として、開口部43での吸引力と先端部材4の減圧作用とを評価したので、結果を表1に示す(評価は発明者による感覚的な評価である)。表中、「○」は良好な評価を示し、「×」は良好ではない評価を示す。また、表中の「面積比」とは、減圧部44における通気可能な部分の面積(貫通孔の開口面積)の、内部空間4aのうち中間側区間4a2の横断面積に対する比率である。また、中間側内面422の径寸法d422は7mmとしている。
【0044】
【表1】

【0045】
前記の評価を考慮すると、減圧部44における通気可能な部分の面積(貫通孔では開口面積)は、内部空間4aのうち中間側区間4a2の横断面積に対して50〜90%とすることが望ましく、60〜80%とすることがより望ましい。本実施形態では、中間側内面422の径寸法d422が7mmであるのに対して、減圧部44は直径3mmの円形孔が4箇所に設けられており、通気可能な部分の面積(開口面積)の面積比は表1にも示したように約73.5%である。
【0046】
この減圧部44の通気可能な部分の面積は、内部空間4aのうち中間側区間4a2の横断面積に対して大き過ぎると、清掃機構における負圧発生手段の動力に対して開口部43と減圧部44の通気可能な部分の合計面積が大きくなるために、開口部43からの吸引力が低下し過ぎて清掃対象物Dを快適に吸い込むことができなくなる。一方、小さ過ぎると前記減圧部44の減圧作用を十分に奏することができないため、開口部43からの吸引力と減圧部44の減圧作用のバランスが良い関係となるように定めることが望ましい。
【0047】
この減圧部44の減圧作用により、開口部43における吸引力が大きくなり過ぎず、清掃ノズル2を清掃箇所C上で移動させる際、清掃箇所Cに先端部材4の開口部43が密着して清掃ノズル2が引っ掛かること(いわゆる「スティックスリップ」)が起こりにくくスムーズに清掃ノズル2を移動させることができる。そのため、前記の引っ掛かりによってユーザーに不快感を与えることがない。これは特に、薬剤分包装置100における散剤分割のための分割板(図9(A)参照)のように、清掃箇所Cが平面を有し、この平面が横方向に延びており、前記平面上で横方向に清掃ノズル2を移動させる際に有効である。
【0048】
また、減圧部44は先端部材4の先端寄りに形成されていることから、減圧部44からも吸引がなされる。そのため、図7(B)に示すように、開口部43に加え、この減圧部44(特に、開口部43の周縁から最も近い位置の先端側減圧部44b)からも清掃対象物Dの吸引をすることができ、効率の良い清掃が可能である。
【0049】
また、薬剤分包装置100に設けられるホッパー(図示していない)等が軟質シリコン樹脂等の軟質材料で形成されている場合、清掃ノズル2による吸引により変形(めくれ上がり等)が発生しやすいが、前記のような減圧部44の減圧作用により、このような変形の発生も抑制することができる。
【0050】
以上、本実施形態について説明したが、本発明の実施はこれに限られず、種々に変形して実施することができる。例えば、図8に示すように、清掃ノズル2の先端の内部へと先端部材4を嵌めるようにしても良い。具体的には、図示のように、清掃ノズル2の先端に取付凹部223を形成しておき、この取付凹部223に先端部材4の基端部を嵌め込むようにする。

【符号の説明】
【0051】
100 薬剤分包装置
2 清掃ノズル
4 清掃ノズル先端部材(先端部材)
44 減圧部
4a 内部空間
D 清掃対象物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤分包装置に備えられ、清掃対象物を吸引できる清掃ノズルの先端に取り付けられる、薬剤分包装置用の清掃ノズル先端部材において、
先端から基端まで貫通し、前記清掃ノズルの内部に連通可能な内部空間を有し、
外部から前記内部空間へと通気可能な減圧部を側部に備えたことを特徴とする薬剤分包装置用の清掃ノズル先端部材。
【請求項2】
前記減圧部が複数設けられたことを特徴とする請求項1に記載の薬剤分包装置用の清掃ノズル先端部材。
【請求項3】
前記複数の減圧部が周方向における異なる位置に設けられたことを特徴とする請求項2に記載の薬剤分包装置用の清掃ノズル先端部材。
【請求項4】
前記複数の減圧部が軸方向における異なる位置に設けられたことを特徴とする請求項2に記載の薬剤分包装置用の清掃ノズル先端部材。
【請求項5】
清掃対象物を吸引できる清掃ノズルを備えた薬剤分包装置において、
先端から基端まで貫通し、前記清掃ノズルの内部に連通可能な内部空間を有し、かつ、外部から当該内部空間へと通気可能な減圧部を側部に備えた清掃ノズル先端部材が前記清掃ノズルに取り付けられたことを特徴とする薬剤分包装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−228357(P2012−228357A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−98152(P2011−98152)
【出願日】平成23年4月26日(2011.4.26)
【出願人】(510154420)高園テクノロジー株式会社 (29)
【Fターム(参考)】