説明

薬剤塗布用器具

【課題】けが人や老人など痛みを抱えた力の弱い使用者が、ケースに入った薬剤を、手の届きにくい背中や臀部などの患部に容易に塗布できる薬剤塗布用器具を提供する。
【解決手段】湾曲したアーム3の一端に持ち手2を接続し、薬剤入りケース6を取り付け可能に形成された取り付け部4を、アーム3の他端に接続し、取り付け部4は、薬剤入りケース6に設けられた薬剤の塗布面7を外部に露出するように、薬剤入りケース6を支持する薬剤塗布用器具1である。この器具により、市販や処方されるケースに入った薬剤を、手の届きにくい患部に容易に塗布できる。また、薬剤の劣化も防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鎮痛剤や消炎剤などの市販されている塗布用の薬剤を、背中など使用者が一人で塗布しにくい場所にでも容易に塗布できる薬剤塗布用器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、痛みに対する鎮痛剤や、炎症に対する消炎剤などの塗布用の薬剤が用いられている。使用者は、患部にこれらの薬剤を塗布して使用する。
【0003】
ところが、患部が使用者の背中や臀部など手が直接には届かない部位であると、使用者自身で薬剤を塗布することができず、他人に薬剤を塗布してもらうしかない。特に、使用者は痛みや炎症などの患部を有しているのであるから、このような使用者が健常状態でも届きにくい部位に、手を届かせるのは非常な困難を伴う。
【0004】
このような使用者が、手の届きにくい患部に薬剤を塗布しやすいように、背中かきである孫の手の一端に薬剤を浸透させるスポンジを備えた器具について提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
しかしながら、特許文献1が開示する器具は、次のような問題がある。
【0006】
特許文献1に開示される器具は、棒体の一端にスポンジを備えて、このスポンジに薬剤を充填して使用される。しかし、現在の市販薬、処方薬は、薬剤のみで販売されるのではなく、ケースに薬剤が既に充填されており、ケースの蓋を開けると薬剤が染み出る塗布面を備えた薬剤入りケースが主流である。特許文献1に開示される器具では、このような薬剤入りケースに適用することができない問題がある。
【0007】
また、孫の手のような一端が鉤状に折り曲げられた棒体の一端に薬剤の塗布面が備えられている特許文献1に開示される器具では、背中の面とほぼ平行に使用することになるので、塗布面を患部に押し当てる圧力が弱くなる問題がある。これを解消するには、使用者が器具を強く握り、強い力で患部に押し当てる必要がある。しかし、使用者は痛みなどを有するけが人などがほとんどであり、強い力で塗布面を患部に押し当てることは困難である。つまり、患部に十分に薬剤を塗布して浸透させるには、特許文献1に開示される器具では不十分である問題がある。
【特許文献1】登録実用新案第3012601号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明は、けが人や老人など痛みを抱えた力の弱い使用者が、ケースに入った薬剤を、手の届きにくい背中や臀部などの患部に容易に塗布できる薬剤塗布用器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明に係る薬剤塗布用器具は、湾曲したアームの一端に持ち手を接続し、薬剤入りケースを取り付け可能に形成された取り付け部を、アームの他端に接続し、取り付け部は、薬剤入りケースに設けられた薬剤の塗布面を外部に露出するように、薬剤入りケースを支持する。
【0010】
この構成により、市販や処方により入手可能なケースに入った薬剤であっても、そのケースをなんら加工することもなく、薬剤塗布用器具に取り付けることができる。結果、背中や臀部など、手の届きにくい患部に対しても、市販や処方により入手できる薬剤を、容易に塗布することができ、使用者にとって好都合である。
【0011】
第2の発明に係る薬剤塗布用器具では、第1の発明に加えて、アームは、もち手から一定の長さにかけて第1円弧部を有し、第1円弧部から取り付け部にかけて第2円弧部を有し、第2円弧部の曲率は第1円弧部の曲率よりも大きい
この構成により、薬剤塗布用器具を握っている腕の角度を、特段変えることなく、使用者は、塗布面を患部に向けて垂直にあてがうことができる。更に、少ない力で、患部に対して圧力をかけることができるので、薬剤を塗布する際の圧力を高め、患部への薬剤の浸透を高めることができる。
【0012】
第3の発明に係る薬剤塗布用器具では、第1から第2のいずれかの発明に加えて、取り付け部は、対向する第1端部と第2端部を備えた筒状の部材を有し、第1端部はアームに接続され、第2端部は開口した開口部を有しており、開口部から薬剤入りケースが挿入されて取り付けられる。
【0013】
この構成により、市販されたり処方されたりすることで入手できる、薬剤入りケースを、容易に取り付けることができる。このため、特別な手間を要さずに、市販や処方された薬剤を、手の届きにくい患部に塗布することができる。
【0014】
第4の発明に係る薬剤塗布用器具では、第3の発明に加えて、筒状の側面に、筒状の部材の軸方向に沿ったスリットを形成してなる。
【0015】
この構成により、市販されたり処方されたりすることで入手できる、薬剤入りケースを、容易に取り付けることができる。特に、構造が簡単であり、コストも低減できる。
【0016】
第5の発明に係る薬剤塗布用器具では、第3の発明に加えて、筒状の部材の側面に、装着バンドを形成してなる。
【0017】
この構成により、薬剤入りケースの外形や形状の相違に対して、広く対応して取り付けることができる。
【0018】
第6の発明に係る薬剤塗布用器具では、第3の発明に加えて、筒状の部材の内側の側面に、薬剤入りケースを取り付け可能に形成された押さえ部を設けた。
【0019】
この構成により、薬剤入りケースを確実に固定して取り付けることができる。
【0020】
第7の発明に係る薬剤塗布用器具では、第1から第6のいずれかの発明に加えて、アームと取り付け部は、可動できる関節により接続されている。
【0021】
この構成により、患部の凹凸に対応して、薬剤を塗布することができる。
【0022】
第8の発明に係る薬剤塗布用器具では、第1から第7のいずれかの発明に加えて、アームは、伸縮可能である。
【0023】
この構成により、手の届きにくい患部の位置の違いにも、柔軟に対応して、薬剤を塗布できる。また、使用時には、小さくたたむことができ、整理や収納に効果的である。
【0024】
第9の発明に係る薬剤塗布用器具では、第1から第8のいずれかの発明に加えて、もち手の表面に滑り止めを形成してなる。
【0025】
この構成により、使用者の誤った使用を防止できる。
【0026】
第10の発明に係る薬剤塗布用器具では、第1から第9のいずれかの発明に加えて、アームは中空であって、中空に心棒が備えられ、心棒の一端は薬剤入りケースの底部に接し、他端はもち手に設けられたボタンに接し、ボタンが押されると心棒は薬剤箱の底部を押し上げ、薬剤入りケースに充填されている薬剤を塗布面に漏出させる。
【0027】
この構成により、薬剤入りケースを取り付けた後の使用中であっても、不足する薬剤を、塗布面に漏出させることができ、十分な量の薬剤の塗布を可能とする。
【0028】
第11の発明に係る薬剤塗布用器具では、第1から第10のいずれかの発明に加えて、取り付け部は、アームから取り外し可能である。
【0029】
この構成により、汚損や破損しやすい取り付け部のみを事後的に交換できる。また、使用する薬剤入りケースの相違に対応して、取り付け部のみを交換できる。結果として、低コストで、長期間にわたった使用ができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、けが人や老人など痛みを抱えた力の弱い使用者が、ケースに入った薬剤を、手の届きにくい背中や臀部などの患部に容易に塗布できる。
【0031】
特に、本発明の薬剤塗布用器具は、市販されている薬剤が充填されて塗布面を備えた薬剤入りケースを、簡単に着脱して使用できるので、使用者は、簡単に使用できる。また、特別な薬剤を購入する必要もないので、使用者にとってのコストも低減できる。
【0032】
また、使用時のみ薬剤入りケースを薬剤塗布用器具に装着すればよく、不使用時には、薬剤入りケースを救急箱などに保管できる。このため、従来の技術における器具と違い、薬剤が乾燥したり変質したりすることが防止され、薬剤の効能を持続させることができる。当然ながらコストも低減できる。
【0033】
また、病院で処方される場合には、予め本発明に係る器具を配布しておき、以降は、薬剤を処方して渡せば、使用者は処方された薬剤を、本器具に装着して使用することが容易にできる。
【0034】
また、本発明の薬剤塗布用器具は、十分に湾曲したアームを有しているので、力強く塗布面を患部に押し当てることが容易であり、けが人や老人など、力の衰えのある使用者にとって使いやすい。
【0035】
更に、取り付け部とアームとが可動できる間接で接続されていることで、肩甲骨の近辺など、凹凸の大きい患部に対しても、確実に薬剤を塗布することができる。
【0036】
また、アームを伸縮自在とすることで、より広範囲に塗布することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0038】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1について、図1から図5を用いて説明する。
【0039】
図1は、本発明の実施の形態1における薬剤塗布用器具の斜視図である。
【0040】
(全体概要)
まず、全体の概要について説明する。
【0041】
薬剤塗布用器具1は、もち手2の一端に湾曲したアーム3が取り付けられ、アーム3の先端には、薬剤入りケース6を取り付け可能とする取り付け部4を備えている。
【0042】
取り付け部4は、内部空間5をもつ部位であり、取り付け部4は、この内部空間5に、薬剤入りケース6を挿入して取り付ける。このとき、薬剤入りケース6に設けられた薬剤の塗布面7が外部に露出するように取り付けられる。
【0043】
薬剤塗布用器具1は、もち手2から薬剤の塗布面7までが大きく湾曲した構造を有している。
【0044】
もち手2は、樹脂などで形成されており、使用者が手で握りやすいように略円柱の形状を有している。また、表面は凹凸や切れ込みなどの滑り止めを備えていることも好適である。特に、使用者が薬剤を塗布する場合には、もち手2の握りがすべると、薬剤を塗りにくくなるので、表面が滑り止め加工されていることが好適である。
【0045】
なお、もち手2の表面は、織布で覆われていても良い。握り心地がよくなる効果があるからである。
【0046】
アーム3は、もち手2から取り付け部4までを接続する骨格であり、もち手2から取り付け部4までの間が湾曲している。湾曲は、背中など使用者の手の届きにくいところに薬剤の塗布面7が届くようにするものである。
【0047】
湾曲の形状や角度は、製品仕様や製造工程により適宜決められればよいが、もち手2を握った使用者が、薬剤の塗布面7を背中や臀部など、手の届きにくい身体の裏面に容易に届かせるに相当する形状を有していることが好適である。
【0048】
ここで、背中に薬剤を塗布したいと思う場合には、背中の面に対して垂直に近い角度で、塗布面7が背中の面に対向する形状が、塗りやすさ(特に、塗る際に、十分な圧力を塗布したい身体の部位に与えることができることを考慮して)の点から好適である。このため、図1に示されるように、アーム3は、もち手2から一定の長さまでの第1領域3aにおいてはゆるやかな円弧を有しており、第1領域3aから取り付け部4にかけての第2領域3bにおいては、第1領域3aよりも急峻な円弧を有していることが好ましい。この形状であれば、使用者は、少ない力で塗布しにくい背中の面などに、確実に薬剤を塗布することができる。
【0049】
アーム3は、もち手2と同じく樹脂などで形成されており、骨格として一定の強度と硬度を有している。
【0050】
取り付け部4は、市販や処方により使用者が入手できる薬剤入りケース6を取り付けることが可能な部材である。
【0051】
取り付け部4は、一方の端部がアーム3に接続された、略筒状の部材であって、アーム3と接続する端部と対向する端部は、開口した開口部となっている。この開口部から内部空間5が導かれる。薬剤入りケース6は、開口部から入って、この内部空間5に挿入される。なお、筒状の断面は略円形でもよく、楕円形でも良く、角形や角に丸みをつけた方形でも良い。いずれにしても、取り付ける薬剤入りケース6の断面形状に合わせた形状を有していることが好ましい。
【0052】
取り付け部4は、中空となって内部空間5を有しており、この内部空間5に薬剤入りケース6を挿入して取り付ける。薬剤入りケース6は、本体9と塗布面7を有しており、本体9が内部空間5に挿入され、塗布面7は外部に露出する。この露出した塗布面7が、身体の患部に接触し、塗布面7から染み出る薬剤が、患部に塗布される。
【0053】
取り付け部4も樹脂などで形成されており、患部に接触する可能性が高いことから、抗菌処理が施されていることが好ましい。
【0054】
また、取り付け部4の側面には孔が設けられて、この孔に指を入れて、取り付けられている薬剤入りケース6を取り出せるようにすることも好適である。また孔以外にも、取り付け部4の中に取り付けられた薬剤入りケース6を押し出せる、押し出し部などが設けられて、薬剤入りケースが取り出し可能であることが好ましい。
【0055】
薬剤入りケース6は、鎮痛剤や消炎剤などを含んでおり、塗布面7にこれらの鎮痛剤や消炎剤が染み出る構造を有している。例えば、薬剤入りケース6内部から、浸透圧により塗布面7に薬剤が染み出たり、本体9に加わる圧力により、塗布面7から薬剤が染み出る。この染み出た薬剤が、塗布面7から患部に塗布されるものである。
【0056】
(使用方法)
次に、図2を用いて、本発明の薬剤塗布用器具1の使用方法について説明する。
【0057】
図2は、本発明の実施の形態1における薬剤塗布用器具の使用状態の説明図である。
【0058】
使用者20は、右手で薬剤塗布用器具1を握っている。使用者20は、背中21の肩甲骨22の下にある患部23に薬剤を塗布している。通常、背中21においても、特に肩甲骨22に隠れる部分は、非常に手が届きにくい部位である上に、痛みやかゆみなどが強く発生しやすい部位である。このため、痛みなどを抱える使用者20は、市販薬の薬剤入りケース6をそのまま用いては、患部23に薬剤を塗布することはきわめて困難である。また、特許文献1に開示された孫の手の先端に薬剤を埋め込む器具であっても、患部23のような部位に対しては、薬剤の塗布を十分に行うことは難しい。薬剤の塗布面を、十分な角度と圧力をもって、患部23に当てることができないからである。
【0059】
本発明の薬剤塗布用器具1であれば、アーム3が十分な湾曲を有しているので、背中21である上に、肩甲骨22に隠れるような患部23であっても、十分な角度と圧力をもって、塗布面7を患部にあてがうことができる。更に、市販や処方により通常且つ簡単に入手できるケースに入った薬剤をそのまま使用できるので、特許文献1のように、薬剤のみを取り出して先端に注入する必要や手間もなく、簡便である。
【0060】
このようにして、使用者20は、手の届きにくい背中や臀部などの患部に対しても、容易に薬剤を塗布することができるものである。
【0061】
図2に示されるように、薬剤を塗布し終わった後は、取り付け部4に取り付けられた薬剤入りケース6を取り外せばよい。
【0062】
また、薬剤入りケース6は塗布面7を覆う蓋8を備えているので、塗布に必要な分だけが塗布された後は、薬剤の品質を劣化させることもない。特に、使用後は、薬剤入りケース6の塗布面7に蓋8がされて、薬剤入りケース6は、冷暗所などに保管可能であるので、薬剤の品質保持ができるメリットもある。
【0063】
なお、ここでは肩甲骨22の下の患部23を例にして説明したが、この例に限られるものではない。
【0064】
(取り付け部の変形例)
次に、図3〜図5を用いて、薬剤入りケース6を取り付ける取り付け部4の種々の変形例について説明する。
【0065】
図3、図4、図5は、本発明の実施の形態1における薬剤塗布用器具の斜視図である。
【0066】
図3においては、取り付け部4は、筒状の部材であって、その側面にスリット10を備えている。このスリット10により、内部空間5に挿入された薬剤入りケース6に対して、挟持する圧力がかかる。この圧力により、取り付け部4は、挿入された薬剤入りケース6を固定して挟持する。
【0067】
このようなスリット10により、取り付け部4は、十分な固定力をもって、薬剤入りケース6を取り付け、手の届きにくい患部に、薬剤を塗布することを可能とする。
【0068】
図4では、取り付け部4は、押さえ部12を備えて、薬剤入りケース6を取り付ける。
【0069】
薬剤入りケース6の本体9に図4のように、縦方向に複数の溝11が設けられている場合に、この溝11にはまり込むように形成された押さえ部12により、取り付け部4は、薬剤入りケース6を固定する。押さえ部12は、弾力性を有する部材の先端に設けられており、突起状である押さえ部12が、溝11にはまり込むと、その弾力により、薬剤入りケース6を固定する。弾力を持たせるために、押さえ部12につながる部材は、一端が開放された円筒状の側面部材の一部であればよい。また、図4に示されるように、押さえ部12が2箇所以上設けられて、薬剤入りケース6を固定することも好適である。
【0070】
図4に示されるような取り付け部4は、溝11が設けられている薬剤入りケース6などに最適に適用される。
【0071】
次に、図5では、取り付け部4は、装着バンド15により薬剤入りケース6を取り付ける。
【0072】
取り付け部4は、装着バンド15を備えており、装着バンド15は、面ファスナー16を備えている。装着バンド15は、筒状の部材である取り付け部4の外周に沿って形成されており、装着の容易性のため、装着バンド15は、筒状の一部の部材17の外側に設けられている。
【0073】
一部の部材17に、薬剤入りケース6があてがわれ、装着バンド15は、あてがわれた薬剤入りケース6の外周を抑えるようにして装着する。面ファスナー16により、薬剤入りケース6は固定される。もちろん、面ファスナー16以外のホックやボタンで固定されても良い。装着バンド15は、一定の幅を持って薬剤入りケース6を固定できる。
【0074】
図5に示される装着バンド15による取り付けにより、薬剤入りケース6の直径が取り付け部4の内部空間5の内径と、多少の差があっても、この差を埋めて取り付けることができ、汎用性が高い。
【0075】
製造者や使用者は、取り付ける薬剤入りケース6の形状や大きさ、種類に合わせた取り付け部4を備えた薬剤塗布用器具1を選択すればよい。
【0076】
なお、取り付け部4が、アーム3から取り外し可能であり、取り付け部4がアタッチメント部材として供給されることも好適である。
【0077】
使用者は、最初に薬剤塗布用器具1を購入し、以降は、取替え可能な取り付け部4を購入して、使用を継続することも好適である。例えば、薬剤塗布用器具1を購入後に、使用する薬剤入りケース6の形状や大きさが変わった場合には、それに合わせた取り付け部4を購入して取り替えるなどもよい。あるいは、アーム3などに比較して、薬剤の塗布により、直接的な圧力が加わる取り付け部4は、どうしても消耗が激しく、破損も生じやすい。このため、取り付け部4が事後的に交換可能であり、交換部品として入手可能であることは、薬剤塗布用器具1を長期間にわたって低コストで使用続けることにとって好適である。
【0078】
以上の薬剤塗布用器具1により、市販や処方により入手できる薬剤入りケース6を使って、少ない力と手間で、背中や臀部など、手の届きにくい場所に容易且つ確実に薬剤を塗布できる。特に、痛みを抱える患者にとっては、少ない力で塗布できるメリットは大きい。また、使用の都度薬剤入りケース6を、薬剤塗布用器具1から取り外すことができるので、薬剤塗布用器具1自体を、冷暗所に保管でき、薬剤の変質を防止できる。
【0079】
(実施の形態2)
次に、実施の形態2について、図6、図7を用いて説明する。
【0080】
図6、図7は、本発明の実施の形態2における薬剤塗布用器具の斜視図である。
【0081】
実施の形態2における薬剤塗布用器具1は、アーム3と取り付け部4が、可動できる間接30により接続されている。
【0082】
間接30は、図6、図7に示されるとおり、アーム3の先端と取り付け部4の接続部分に設けられ、左右や周回状に可動できる。すなわち、アーム3を基準として、取り付け部4が可動できる。
【0083】
間接30は、図6に示されるように、アーム3と取り付け部4が球状の接続部材で接続されることにより実現されてもよく、図7に示されるように、互い違いにビス止めされることで実現されても良い。
【0084】
図6、図7のいずれに示される間接30も、アーム3を基準として取り付け部4を可動させる。
【0085】
なお、図6、図7に示された間接30は、一例であり、アーム3に対して取り付け部4が左右や周回状に可動できるものであれば、いかなるものでも良い。また、間接30は、取り付け部4を可動にすると共に、アーム3と取り付け部4を接続するものである。また、実施の形態1で説明したように、間接30を基点に、取り付け部4が取り外し可能となっており、事後的に取り付け部4が交換可能であることも好適である。低コストで使用者の便宜が高まるからである。
【0086】
使用者は、手の届きにくい背中や臀部などへの薬剤の塗布を目的として、薬剤塗布用器具1を使用する。このとき、背中や臀部などは、凹凸が多く、アーム3に対して取り付け部4がそのまま接続されているだけであると、塗布面7を患部の凹凸にあわせるためには、使用者がアーム3全体で、向きや角度を変える必要がある。これだけでは、凹凸の全てに滑らかに対応して、塗布面を当てることができないこともある。また、使用者にとっての負担となり、例えば、腕に痛みを抱えている使用者は、患部の凹凸に合わせるために、腕を細かく動かすことは困難である。
【0087】
実施の形態2における薬剤塗布用器具1は、間接30により取り付け部4が左右や周回状に可動する。このため、使用者は背中や臀部などに向けて当てた塗布面7を、特別な動作無く、患部の凹凸に合わせてあてがうことが容易にできる。すなわち、使用者は背中や臀部などに塗布面7をまずあてがう。次いで、塗布面7をあてがった状態のままで、もち手2を握る手を上下や左右に軽く動かすだけで、塗布面7が患部の凹凸に沿って移動する。この結果、使用者に特段の負荷や手間を要求せずに、凹凸を有する患部に、薬剤を塗布することができる。
【0088】
なお、間接30の可動範囲は、適宜定められれば良く、間接30の可動性と接続における固定性とのバランスも適宜定められればよい。また、間接30の可動範囲や可動時の硬さ等は、使用者により調整可能であることも好適である。例えば、間接30に設けられたねじやビスなどの締め込みにより間接30の可動時の硬さが調整される。
【0089】
実施の形態2における薬剤塗布用器具1によれば、使用者の手間や負担を更に軽減した上で、凹凸のある患部に対しても容易に薬剤を塗布できる。
【0090】
(実施の形態3)
次に、図8を用いて実施の形態3について説明する。
【0091】
実施の形態3における薬剤塗布用器具1は、図8に示されるとおり、伸縮可能なアーム3を備えている。図8は、本発明の実施の形態3における薬剤塗布用器具の斜視図である。
【0092】
薬剤塗布用器具1は、実施の形態1と同じく、もち手2、アーム3、取り付け部4を基本構成として備え、取り付け部4は、市販や処方されたケース入り薬剤6を取り付けて、塗布面7に染み出る薬剤を、患部に塗布できるようにしている。
【0093】
実施の形態3においては、アーム3は、伸縮部40を備えている。伸縮部40は、アーム3の内部に納められた部材であり、アーム3の内部に収納することも、引き伸ばすことも可能である。
【0094】
この伸縮部40により、アーム3の長さを伸縮させることができる。このアーム3が伸縮することにより、腰上の背骨付近など、肩の上からもわき腹からも遠い場所などに存在する患部に対しても、十分に塗布面7を届かせることができる。
【0095】
あるいは、不使用時には、伸縮部40を縮めておき、使用時に伸ばすことで、効率的な使い方ができる。不使用時の整理が容易となる。
【0096】
なお、伸縮部40の伸縮状態を固定するために、留め具を使うことも好適である。
【0097】
実施の形態3における薬剤塗布用器具1により、不使用時における整理を容易にできる。また、遠い位置にある患部に対しても、苦も無く薬剤を塗布できる。
【0098】
(実施の形態4)
次に、図9を用いて実施の形態4について説明する。
【0099】
図9は、本発明の実施の形態4における薬剤塗布用器具の斜視図である。実施の形態4における薬剤塗布用器具1は、取り付けた薬剤入りケース6の塗布面7に、薬剤を容易に漏出させる機構を備えている。
【0100】
実施の形態4では、図9に示されるように、アーム3の内部が中空であり、この中空に心棒50が備えられている。心棒50の一端は、薬剤入りケース6の底部51に接しており、心棒50の底部51に接する部分には、押し上げ部52が設けられている。心棒50の他端は持ち手2に設けられたボタン53に接続されている。
【0101】
ボタン53は、使用者が押すことが可能であり、使用者がボタン53を押すことで、心棒50が押し出され、押し上げ部52を押し上げる。この押し上げ部52は、そのまま薬剤入りケース6の底部51を押し上げる。薬剤入りケース6の本体9には、鎮痛剤や消炎剤などの薬剤が封入されており、底部51が押し上げられると、内部の薬剤が塗布面7に漏出する。通常は、薬剤入りケース6を、使用者が指で直接圧力をかけることで、薬剤が塗布面7に漏出するが、実施の形態4における薬剤塗布用器具1であれば、取り付けられた状態であっても、使用者がボタン53を押すだけで、薬剤を塗布面7に漏出させることができる。
【0102】
例えば、使用者が、背中や臀部などの手の届きにくい患部に、薬剤を塗布している最中に、薬剤の出が悪くなった場合には、そのままの姿勢でボタン53を押せば、薬剤を塗布面に漏出させることができる。結果として、薬剤入りケース6を取り付け部4から取り外す手間無く、薬剤を塗布面7に漏出させることができ、そのまま薬剤の塗布を続けることができる。
【0103】
実施の形態4における薬剤塗布用器具1により、使用者の手間を省いた上で、塗布面7への薬剤の供給を簡単に行い、患部への薬剤の塗布を確実に行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明は、例えば、鎮痛剤や消炎剤などの市販されるケースに封入された薬剤を、手の届きにくい患部に塗布できる医療器具の分野等において好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】本発明の実施の形態1における薬剤塗布用器具の斜視図
【図2】本発明の実施の形態1における薬剤塗布用器具の使用状態の説明図
【図3】本発明の実施の形態1における薬剤塗布用器具の斜視図
【図4】本発明の実施の形態1における薬剤塗布用器具の斜視図
【図5】本発明の実施の形態1における薬剤塗布用器具の斜視図
【図6】本発明の実施の形態2における薬剤塗布用器具の斜視図
【図7】本発明の実施の形態2における薬剤塗布用器具の斜視図
【図8】本発明の実施の形態3における薬剤塗布用器具の斜視図
【図9】本発明の実施の形態4における薬剤塗布用器具の斜視図
【符号の説明】
【0106】
1 薬剤塗布用器具
2 もち手
3 アーム
4 取り付け部
5 内部空間
6 薬剤入りケース
7 塗布面
8 蓋
9 本体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
湾曲したアームの一端に持ち手を接続し、
薬剤入りケースを取り付け可能に形成された取り付け部を、前記アームの他端に接続し、
前記取り付け部は、前記薬剤入りケースに設けられた薬剤の塗布面を外部に露出するように、前記薬剤入りケースを支持する薬剤塗布用器具。
【請求項2】
前記アームは、前記もち手から一定の長さにかけて第1円弧部を有し、前記第1円弧部から前記取り付け部にかけて第2円弧部を有し、前記第2円弧部の曲率は前記第1円弧部の曲率よりも大きい請求項1記載の薬剤塗布用器具。
【請求項3】
前記取り付け部は、対向する第1端部と第2端部を備えた筒状の部材を有し、前記第1端部は前記アームに接続され、前記第2端部は開口した開口部を有しており、前記開口部から前記薬剤入りケースが挿入されて取り付けられる請求項1から2のいずれか記載の薬剤塗布用器具。
【請求項4】
前記筒状の側面に、前記筒状の部材の軸方向に沿ったスリットを形成してなる請求項3記載の薬剤塗布用器具。
【請求項5】
前記筒状の部材の側面に、装着バンドを形成してなる請求項3記載の薬剤塗布用器具。
【請求項6】
前記筒状の部材の内側の側面に、薬剤入りケースを取り付け可能に形成された押さえ部を設けた請求項3記載の薬剤塗布用器具。
【請求項7】
前記アームと前記取り付け部は、可動できる関節により接続されている請求項1から6のいずれか記載の薬剤塗布用器具。
【請求項8】
前記アームは、伸縮可能である請求項1から7のいずれか記載の薬剤塗布用器具。
【請求項9】
前記もち手の表面に滑り止めを形成してなる請求項1から8のいずれか記載の薬剤塗布用器具。
【請求項10】
前記アームは中空であって、前記中空に心棒が備えられ、前記心棒の一端は前記薬剤入りケースの底部に接し、他端は前記もち手に設けられたボタンに接し、前記ボタンが押されると前記心棒は前記薬剤箱の底部を押し上げ、薬剤入りケースに充填されている薬剤を塗布面に漏出させる請求項1から9のいずれか記載の薬剤塗布用器具。
【請求項11】
前記取り付け部は、前記アームから取り外し可能である、請求項1から10のいずれか記載の薬剤塗布用器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−307069(P2007−307069A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−138104(P2006−138104)
【出願日】平成18年5月17日(2006.5.17)
【出願人】(506168277)
【Fターム(参考)】