説明

薬剤増強洗浄法を用いて行う木材チップの加水分解と蒸解のための二槽反応器システムと方法。

【課題】加水分解抽出する第一反応槽と蒸解する第二反応槽を備えた蒸解装置で、薬剤増強洗浄法を用いて行う木材チップ等セルロース繊維材の加水分解処理のための方法と装置を提供する。
【解決手段】加水分解生成物と液とを抽出するスクリーン、この抽出スクリーンより上にあってセルロース材の加水分解反応を促進する条件に維持されている第一領域、上記抽出スクリーンより下にあって加水分解が実質的に抑制されている第二領域、抽出スクリーンより下にあって加水分解温度以下の温度の洗浄液を提供する洗浄液入口を備える第一反応槽10と、第一反応槽に接続された入口と第二反応槽12に接続された出口とを有する移送パイプとを備える反応槽システムであって、第二反応槽は、第二反応槽から液の一部分を抽出し、その液の一部を第一反応槽または移送パイプ62に導入するための液排出口を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルロース繊維材の加水分解処理のための方法と装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のシステムでは、木材チップ(または他のセルロースまたは繊維材)は、第一の反応槽で加水分解を受け、その後で第二の槽、例えば、蒸解缶に導入される。そのような従来のシステムの一つは、米国特許第4,174,997号明細書('997特許)に記載されている。第一の反応槽では、その槽を通過する木材チップのスラリーの加水分解が酸性の条件下に起こる。第一の反応槽では、加水分解生成物、例えば、ペントースやヘキソースのような糖類が、木材チップから抽出され、加水分解生成物が回収される。繊維材は、第一反応槽の底部から抜き出され、移送ライン経由で第二反応槽、例えば、蒸解缶の頂部へ移送され、ここでセルロース材の蒸解処理が行われる。
【0003】
従来のシステムでは、例えば、'997特許に記載の場合は、加水分解は第一反応槽全体で起こる。チップスラリーは、第一反応槽の頂部に導入され、同槽の底部から抜き出される。槽に熱を加えるのは、槽の底部には高温水を、例えば、150℃(摂氏)で、槽の頂部にはスチームを導入することによって行われる。さらに、酸性溶液が、特に繊維材が150℃以下の温度の場合に、加水分解を促進するために添加される。高温水は槽中を上方に流れるが、これは繊維材の下方への流れに対して向流である。高温水とスチームは、槽全体にわたって加水分解を維持するに十分な熱を供給する。
【0004】
幾つかの従来のシステムでは、白液のような蒸解薬剤が、第一反応槽の底部に導入され、次いで第一反応槽からチップスラリーを第二反応槽に移送するための移送パイプに導入される。第一反応槽の底部に蒸解薬剤を注入すると、第一反応槽の底部でセルロース材の繊維の浸透現象が始まるが、一方、加水分解反応も依然として進行中である、加水分解が進行中の間に、蒸解薬剤をセルロース材に導入することは、望ましいことではない。
【発明の開示】
【0005】
新しい加水分解システムが、パルプ製造システム向けに開発された。セルロース材、例えば、木材チップは第一槽の上部の領域で加水分解を受ける(加水分解反応槽)。加水分解は、槽中の繊維剤が150℃〜175℃、好ましくは160℃〜170℃の温度にある場合に行われるのが好ましい。加水分解は、槽中の繊維剤が1〜6のpH、好ましくは3〜4のpHにある場合に行われるのが好ましい。加水分解生成物と液は、抽出スクリーンを経由して加水分解反応槽から抜き出される。
【0006】
抽出スクリーンの下では、低温の洗浄液が、加水分解反応槽の洗浄ゾーンを通って抽出スクリーンの方向に上向きに流れる。洗浄液は低温であるので、抽出スクリーン下部のセルロース材の加水分解反応が抑制される。実質的にすべての加水分解が、加水分解反応槽の抽出スクリーンより上部で行われるのが好ましい。低温の洗浄液は、加水分解温度より10℃〜70℃だけ低い、より好ましくは20℃〜50℃だけ低い、最も好ましくは加水分解温度より25℃〜35℃だけ低いのが好ましい。低温の洗浄液は、好ましくは3〜7のpH、最も好ましくは4〜5のpHを有するのが好ましい。さらに、低温の洗浄液は、大部分が水から成り、槽中を流れるスラリー中のセルロース材、例えば、木材の量の0.01パーセント〜5パーセントの量の添加薬剤を含むのが好ましい。添加される薬剤の量は、スラリー中のセルロース材の量の0.1パーセント〜1パーセントであることが最も好ましい。低温の洗浄水に添加される薬剤は、水酸化ナトリウム(NaOH)または本質的に硫黄分を含まない白液のいずれか、または両方であり、これらによって低温の洗浄液が製造される。
【0007】
以下の構成の反応槽システムが開発された。このシステムは、セルロース材を受容するセルロース材入口とセルロース材排出口とを有し、セルロース材がセルロース材入口からセルロース材排出口に流れる第一反応槽;
第一反応槽中の、加水分解生成物と液との抽出スクリーン;
セルロース材入口と液抽出スクリーンとの間にあって、セルロース材の加水分解反応を促進する条件に維持される第一反応槽の第一領域;
第一領域内またはその上のセルロース材に添加される加熱流体を導入するための熱エネルギー入口ポート;
液抽出スクリーンとセルロース材排出口との間にあって、加水分解が実質的に抑制される第一反応槽の第二領域;
抽出スクリーンの下に洗浄液を導入し、第二領域を通って抽出スクリーンに洗浄液を流すためのものであり、洗浄液が加水分解温度以下の温度で導入され、洗浄液が第二領域における加水分解を抑制する洗浄液入口ポート;
第一反応槽のセルロース材排出口に接続された入口と第二反応槽に接続された出口とを有し、セルロース材がセルロース材排出口から第二反応槽に流れる移送パイプ;
を含み、そして第二反応槽では、蒸解液がセルロース材に供給され、第二反応槽は、第二反応槽から液の一部を抽出してその液部分を第一反応槽の下側入口の少なくとも一つまたは前記移送パイプに流す液出口を有することを特徴とするものである。
【0008】
フラッシュタンクは、第一反応槽の抽出スクリーン(複数を含む)から抽出された液を受容し、その槽の第一領域、またはその上にスチームを提供し得る。該フラッシュタンクは、加水分解生成物を加水分解生成物回収システムに排出し得る。
【0009】
以下の構成の他の反応槽システムが開発された。このシステムは、セルロース材を受容する上部セルロース材入口とセルロース材用底部セルロース材排出口とを有し、セルロース材がセルロース材入口からセルロース材排出口に流れる第一反応槽;
第一反応槽中の、加水分解生成物と液との抽出スクリーン;
セルロース材入口と液抽出スクリーンとの間にあって、セルロース材に加水分解反応が起こる温度以上の温度に維持される第一反応槽の上部領域;
第一反応槽の上部領域のセルロース材に加熱流体を導入するための熱エネルギー入口ポート;
液抽出スクリーンと底部セルロース材排出口との間にあって、加水分解が実質的に抑制される第一反応槽の下部領域;
槽に十分な洗浄液を導入し、洗浄液が下部領域を通って抽出スクリーンに上向きに流れるようにするために第一反応槽の下部領域に設けられ、洗浄液が加水分解温度以下の温度で導入され、洗浄液が冷却することで第一反応槽の第二領域における加水分解反応を抑制する洗浄液入口ポート;
第一反応槽のセルロース材排出口に接続された入口と第二反応槽に接続された出口とを有し、セルロース材が底部セルロース材排出口から第二反応槽の上部入口に流れる移送パイプ;
を含み、そして第二反応槽では、蒸解液が第二反応槽のセルロース材に供給され、第二反応槽は、第二反応槽から液の一部を抽出してその液部分を第一反応槽の下側入口の少なくとも一つまたは移送パイプに流す液出口を有することを特徴とするものである。
【0010】
セルロース材をパルプに転化するための処理システムが開発された。このシステムは、大気圧より高い圧力で運転される第一加圧反応槽を含み、この第一加圧反応槽が、
セルロース材を受容するセルロース材入口と、セルロース材を排出するセルロース材排出口とを備え、セルロース材はセルロース材入口からセルロース排出口へ流れ、さらに前記第一加圧反応槽は、
第一反応槽の上部領域の熱エネルギー入口ポートと、
セルロース材入口と液抽出スクリーンとの間にあって、少なくとも摂氏170度のセルロース材加水分解温度に維持される第一領域と、
第一槽から加水分解生成物と液とを抽出する出口を有する抽出ス
クリーンと、
液抽出スクリーンと排出口との間にあって、加水分解温度より低温に維持され、加水分解反応が実質的に抑制されている第二領域と、
第二領域の下に設けられた第一槽の排出口とを備え、
前記システムが、排出口から連続蒸解缶に連なる流れの導通を提供する移送パイプと、
第一反応槽から排出されるセルロース材を受容する連続蒸解缶とを備えることを特徴とする。
【0011】
セルロース材からパルプを製造する方法が開発された。この方法は、第一反応槽の上部入口にセルロース材を導入するステップ、槽に圧力と熱のエネルギーを加えることによって、第一反応槽の上部領域でセルロース材を加水分解するステップ、第一反応槽の上部領域の下にある抽出スクリーンを通してセルロース材から得られる加水分解生成物を抽出するステップ、第一反応槽の下部領域に洗浄液を導入し、洗浄液が下部領域のセルロース材の加水分解を抑制するようにし、洗浄液がセルロース材全体を通って抽出スクリーンに向かって上方に流れるようにするステップ、第一反応槽の下部出口からセルロース材を排出するステップ、排出されたセルロース材を第二反応槽に導入するステップ、および第二反応槽の頂部に蒸解液を導入し、セルロース材を蒸解し、パルプを製造するステップを含むことを特徴とする。
【0012】
セルロース材の加水分解を抑制する方法が開発された。この方法は、第一反応槽の上部入口にセルロース材を導入し、セルロース材が槽全体を通して下向きに移動するようにするステップ、第一反応槽に大気圧以上のスチームを添加するステップ、第一反応槽の上部領域でセルロース材を加水分解温度以上に維持するステップ、第一反応槽の上部領域の下の抽出スクリーンを通して加水分解生成物をセルロース材から抽出するステップ、抽出スクリーンの下のセルロース材を加水分解温度以下の温度に冷却するステップ、および第一反応槽の底部出口からセルロース材を排出するステップを含むことを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
2槽式反応槽システムでは、スチームは、加熱と加圧の目的で両方の槽の頂部に導入される。加水分解は、第一反応槽の頂部にある抽出スクリーンより上で起こる。第一反応槽の抽出スクリーンは、第一槽の頂部に導入された木材チップまたは他のセルロースまたは繊維材(集合的にセルロース材と称する)が槽中を移動して槽の下方の抽出ポートに移動するとき、加水分解生成物を抜き出す。
【0014】
セルロース材は第一反応槽では抽出スクリーンの下方で洗浄される。洗浄液は、第一反応槽の底部に導入され、抽出スクリーンに向かって上方に流れる。洗浄液は、水のみ、または一種以上の薬剤、例えば、水酸化ナトリウム(NaOH)や本質的に硫黄分を含まない白液と混合した水でもよい。第一槽の直径は、抽出スクリーンの上と下で均一とし得る。第一反応槽の抜き出しポートから排出されたセルロース材は第二反応槽の頂部に導入される。第二反応槽は、蒸解槽でもよい。セルロース材は、第二反応槽で蒸解され、パルプが生成し、パルプは第二反応槽の下部の抜き出しポートから排出される。
【0015】
第一反応槽では、セルロース材は、槽の下部で洗浄され、セルロース材から加水分解生成物が除去される。第一槽の下部での洗浄は、加水分解温度以下の温度の洗浄液で行われる。洗浄液温度は、加水分解温度より10℃〜70℃だけ低いのが好ましく、加水分解温度より20℃〜50℃だけ低いのが、より好ましく、加水分解温度より25℃〜35℃だけ低いのが、最も好ましい。洗浄液は、加水分解温度以下の温度にセルロース材を冷却する。低温の洗浄液は、セルロース材から残留加水分解生成物を洗い出し、セルロース材の温度を加水分解温度以下に下げ、セルロースのpHを調整し、第一反応槽で、つまり、第二反応槽でのセルロース材の蒸解の前に、中性(pH7)の近く、または幾分中性より上にする。
【0016】
低温の洗浄液は、好ましくは3〜7のpHを、より好ましくは4〜5のpHを有する。低温の洗浄液のpHをこれらの範囲に保持すると、第二反応槽の蒸解薬剤で溶解されたリグニンの沈降が防止、あるいは最小限に抑えられる。洗浄液には、添加薬剤、例えば、NaOHや本質的に硫黄分を含まない白液を含ませ、第一槽でセルロース材から抽出される加水分解生成物の量を増大させ得る。第一反応槽の底部に、大量の白液ではなく、洗浄液を導入すれば、第一反応槽の底部に大量の白液を添加した場合に起こり得る第一槽でのリグニン沈降が減少する。
【0017】
第二反応槽は、連続蒸解槽、例えば、蒸気相またはスチーム相蒸解缶とし得る。蒸気相またはスチーム相蒸解缶を使用すれば、第二反応槽の頂部における操作問題、すなわち、加水分解の際のガス発生で引き起こされる問題が回避される。第一および第二反応槽は、実質的に垂直形状で、少なくとも100フィートの高さ、槽の上部の入口、および槽の底部近くの排出口を備え得る。反応槽に加えられる熱エネルギーは、大気圧以上の圧力スチームとし得る。
【0018】
図1は、第一反応槽10(加水分解反応槽)と第二反応槽12、例えば、連続パルプ蒸解缶とを備える例示的チップ供給とパルプ処理のシステムの概要図である。第一反応槽は、チップ供給ライン33経由で従来のチップ供給アセンブリ15からセルロース材と液のスラリーを受容する反転型トップセパレーター14を備える。
【0019】
チップ供給アセンブリ15は、木材チップビン16、例えば、アンドリッツ社(Andritz Inc.)販売のダイアモンドバック(Diamondback)(登録商標)チップビンと、これに接続された二重スクリューチップメーター18とチップシュート20とを備え得る。高温水24は、パイプ26経由でチップシュート20のチップまたは他のセルロース材に送られ、セルロース材のスラリーが形成される。液調整タンク22は、水をチップチューブに供給する。水は、また、パイプ23を通してチップチューブに直接供給し得る。
【0020】
トップセパレーター14から分離され、排出され、パイプ27に取り出された液には、高温水を混合し得る(バルブ25を参照)。この混合液は、パイプ26を通って調整タンク22に流れ、さらにパイプ23経由でチップチューブ20に流れる。トップセパレーター14から排出された液と高温水24との混合液は、バルブ25を使って、セルロース材の通常の加水分解温度、例えば、好ましくは170℃より低い温度に制御される。水とトップセパレーター14から排出された液との温度は、100℃〜120℃(摂氏°)の範囲である。調整タンク22は、水とトップセパレーターからの液との混合物を一時的に溜めておくことによって、セルロース材のスラリーを形成するために使用される水と液との混合物の温度制御を提供するために使用し得る。例えば、温度制御は、トップセパレーター14からパイプ27経由で調整タンク22に流れる液と高温水24の調整タンクにおける相対的な量を調節することによって提供し得る。
【0021】
第一反応槽にチップを供給するために、セルロース材のスラリーは、1基または複数のポンプ32(例えば、アンドリッツ社(Andritz Inc.)販売のターボフィード(TurboFeed(登録商標))システムや米国特許第5,752,075号、第6,106,668号、第6,325,890号、第6,551,462号、第6,336,993号および第6,841,042号各明細書に記載のポンプ)で第一反応槽のトップセパレーター14にポンプ輸送される。他のスラリー供給システム、例えば、高圧フィーダを使うものも、好適であるかも知れない。
【0022】
第一反応槽10は、槽の圧力および温度のいずれか、または両方に基づいて制御し得る。圧力制御は、スチームパイプ74経由のスチームまたはこれに加えて第一反応槽に添加された不活性ガスの流れの量を使用して行い得る。第一反応槽の上部ガス領域45は、チップカラムの上部レベル44の上にある。
【0023】
ガス相から加えられる圧力は、セルロース繊維材を下方に、そして第一槽の底部56排出口から外に強制的に押し下げる補助作用を行う。潜在的ガス圧力プラス静水圧は、第一反応槽10では第二反応槽12より高くなければならない。そうすれば第一反応槽から第二反応槽に排出されるセルロース材を移送する補助作用が得られる。もし潜在的ガス圧力プラス静水圧が、第二反応槽の方で高いならば、第一槽から第二槽にセルロース材をポンプ移送するために、両槽の間にチップポンプを使用し得る。
【0024】
スチーム72は、加水分解が第一反応槽のセルローススラリーに起こるのを可能にするために、通常の加水分解温度、例えば、170℃以上の温度で供給される。スチームは、制御された方法で添加される。少なくとも部分的には、第一反応槽の加水分解を促進するような方法で添加される。スチーム添加は、ライン74と68経由で、第一反応槽の頂部またはその近くに、例えば、槽の蒸気相45に行われる。第一反応槽に導入されたスチームは、通常の加水分解温度、例えば150℃にまたはその上までにセルローススラリーの温度を上昇させる。
【0025】
第一反応槽の反転型トップセパレーター14に供給されたセルロース材スラリーは、余剰の量の液を有しているので、この液を使って移送パイプ33を通る流れを容易に作り得る。槽に入った後、余剰液はスラリーがトップセパレーター14を通過するにつれて除去される。セパレーターから除去された余剰液は、パイプ27経由でチップ供給システム、例えばチップチューブ20に返送され、スラリーに再導入され、第一槽の頂部にセルロースを移送するのに使用される。第一反応槽のトップセパレーター14と蒸気相45に、またはその近くに高温水を添加し得る。添加される液は、高温水24(配管は示さず)、または第一反応槽の抽出スクリーン48から抽出されて液パイプ31経由で第一反応槽の頂部に流れる高温液とし得る。
【0026】
トップセパレーター14は、チップまたは他の固形セルロース分を第一反応槽の液相(上部チップカラム44の下方)に排出する。トップセパレーター14は、例えば、垂直スクリューを回転することによって、セルロース材を反転型セパレーター14からガス相に押し流す。押し流されたセルロース材は、槽のガス相45を通じて、セルロース材の上部チップカラム44と第一反応槽に含まれている液の上に落下し得る。ガス相(もしそのような相があれば)と第一反応槽10の上部領域における温度は、通常の加水分解温度、例えば170℃以上である。セルロース材のスラリーは、第一反応槽を通じて下方に徐々に流下する。セルロース材が槽を通過するにつれて、新しいセルロース材と液とが、トップセパレーターからチップカラムの上部表面に追加される。
【0027】
加水分解は、第一反応槽10の上部領域46で起こる。ここでは温度は通常の加水分解温度以上に維持される。加水分解は、酸を添加すれば、低い温度で、例えば150℃以下で起こるけれども、加水分解は、水と、第一反応槽のトップセパレーターから再循環された液とだけを使って、高い温度、すなわち、150℃〜170℃以上で起こすのが好ましい。加水分解は、抽出スクリーン48の上、または抽出スクリーン48の複数段の上に位置する上部領域46のみで実質的に起こさせるべきである。
【0028】
セルロース材が抽出スクリーン48を通過して槽10を下方に移動するとき加水分解を停止させるには、セルロース材の温度を加水分解温度以下に低下させるか、またはセルロース材に含まれる酸を抽出スクリーン48経由で第一反応槽から除去することである。温度低下とセルロース材からの酸除去との二つの手段は、共に、または別々に使用して、加水分解を抑制し、好ましくは停止し得る。
【0029】
加水分解生成物は、加水分解から得られる生成物である。加水分解生成物は、抽出スクリーン48を通じて、洗浄液といくつかの他の液と共に取り出され、パイプ29に供給され、フラッシュタンク30に流入させられる。加水分解生成物、洗浄液、および他の取り出された液は、回収またはチップ供給システムに再循環される。第一反応槽10から取り出され、フラッシュタンク30に導かれた、パイプ29中の液には、第一反応槽から取り出された加水分解生成物が含まれる。フラッシュタンク30は、加水分解生成物を含んだ液からスチームを分離する。フラッシュタンク30からの液は、加水分解温度以下の温度であるのが好ましく、最も好ましくは110℃以下の温度である。加水分解生成物を含む液は、フラッシュタンク30からパイプ28に流入し、スチームは、パイプ68を経て第一反応槽10の上部ガス相に戻し得る。加水分解生成物の一部分は、従来の加水分解生成物回収システム70で回収される。
【0030】
スチーム68は、槽に導入し得るが、これは、特に、槽の圧力がフラッシュタンクの中より低い場合はそうである。槽の圧力がフラッシュタンクほど低くない場合は、スチームは、チップビン、水および/またはプロセスに使われる白液のヒーターに導入される。スチームおよび/または抽出された液の同様な循環は、米国特許第7,105,106号明細書と米国特許出願公開公報第2007−0000626号明細書に記載されている。
【0031】
フラッシュタンク30からの液は、加水分解生成物の一部を含んでおり、パイプ28と71経由でチップチューブ20のチップスラリーへ、そしてパイプ73経由で液調整タンク22へと流れる。チップシュート20のチップスラリーに添加された加水分解生成物を含む液の量は、チップスラリーのpHに対して過度な変化を避けるために、例えば、スラリーを過度にアルカリ性にするとか、または過度に酸性にするとかを避けるために制御できる。液をチップチューブ20でセルロース材に添加すると、チップスラリー材を、チップポンプ32経由で、そしてチップシュート20と第一反応槽10のトップセパレーター14との間に延びるチップスラリーパイプ33経由で、移送する補助作用が得られる。
【0032】
向流洗浄ゾーン54は、槽10では抽出スクリーン48の下方に位置する。洗浄ゾーン54は、抽出スクリーンの下で、かつ槽底部56の上の槽10の下部領域に位置する。洗浄ゾーンを通って流れる洗浄液50は、洗浄ゾーンを通って流れるセルロース材を冷却し、洗浄ゾーン54を下向きに移動するチップ流れの継続的加水分解を停止、または少なくとも最小限に抑える。洗浄液は、好ましくは、加水分解温度より10℃〜70℃だけ低くし、より好ましくは20℃〜50℃だけ低くし、最も好ましくは25℃〜35℃だけ低くする。
【0033】
洗浄液50は、第一反応槽のセルロース材の下向流れに対して向流方向、例えば、上向きに流れる。低温の洗浄液50は、第一反応槽10の底部に接続するパイプ52経由で洗浄ゾーンの底部にポンプ移送される。パイプ52中の洗浄液圧力は、洗浄液を、第一反応槽10を通して、上方に(50を示す矢印を参照)に、槽を通して下方に流れるセルロース材の方向に対して向流に流させるに十分な圧力である。洗浄液は抽出スクリーン48の箇所で抜き出される。
【0034】
薬剤82、例えば、NaOHまたは本質的に硫黄を含まない白液は、パイプ84を経て、槽10の底部に導入される前に、パイプ52経由で流れる低温の洗浄水に添加される。洗浄液に添加される薬剤の量は、槽を通って流れるスラリー中にセルロース材、例えば、木材の量の0.01パーセント(%)〜5パーセント(%)の量でよい。添加される薬剤の量は、好ましくは、セルロース材0.1パーセント〜1パーセントである。薬剤(複数を含む)は、加水分解を抑制し、加水分解生成物を除去し、オプションで洗浄液のpHを調整するために洗浄水に添加される。薬剤を洗浄水に添加すると、洗浄液が純粋に水であるときに起こる場合に較べて、洗浄ゾーンを通って流れるセルロース材から抽出される加水分解生成物が格段に大量になる結果となる。
【0035】
洗浄液50が、洗浄ゾーンで、そして抽出スクリーン48の箇所で、またはそのすぐ上でセルロース材と相互作用すると、同液は、セルロース材を加水分解温度以下に冷却し、そしてセルロース材から幾ばくかの薬剤を洗い落とす。好ましくは、低温の洗浄液が、抽出スクリーン48近くのセルロース材の温度を下げ、そして洗浄ゾーン54でセルロース材の加水分解反応を抑制し、停止することである。さらに、加水分解されたセルロース材が、抽出スクリーン48の下に移動するとき、セルロース材は、リグニンが溶けないpHレベルにあることが好ましい。洗浄液の量と洗浄液中の薬剤の量は、洗浄ゾーン54のセルロース材のpHレベルを既定のpH範囲内にあるように調整し得る。
【0036】
洗浄されたチップは、第一反応槽の底部56を通じて排出され、チップ移送パイプ62経由で、第二反応槽12、例えば、連続蒸解缶のトップセパレーター57、例えば、反転型トップセパレーターに送られる。ポンプ64は、オプションで使用され、第一反応槽から第二反応槽にパイプ62経由でセルロース材を移送する補助作用を行う。チップに残留する水および他の液は、パイプ62を通って流れるセルロース材中の液/チップの比を増すために使用し、パイプ62を経由して第二反応槽のトップセパレーター57にセルロース材を移送する補助作用を行い得る。
【0037】
パイプ58からの追加の液は、移送パイプ62中のセルロース材スラリーに、またはパイプ61を通して第一反応槽の底部に加え得る。この追加の液は、第二反応槽12のトップセパレーター57から抽出し得る。この追加の液は、ポンプを使い(ポンプ59を経て)パイプ58と61経由で第一槽の底部56に再循環し得る。ライン58の液は、パイプ62のセルロース材の排出流れに直接導入し得るし、またはパイプ61を経て第一反応槽の底部56に導入し、第一槽からのチップの排出を補助するのに使用される液の一部ともし得る。バルブ63は、ポンプ59とパイプ58からの液の流れをパイプ61、またはパイプ62に分岐するものである。第二槽のトップセパレーター57から再循環させられる液は、比較的アルカリ性剤を含まないものでなければならず、pH制御を調節することによって、再循環させられる液が、許容範囲のpHレベルを確実に有するようにし、その後で同液を第一反応槽10の底部または移送パイプ62に導入し得る。
【0038】
酸は、循環パイプ62に添加され、第一反応槽から第二反応槽に移送中のセルロース材のpH制御に補助作用を行う。チップ移送パイプ62中のセルロース材のpHが所望のpHレベルより高い場合は、酸性薬剤をパイプ62に、または第一反応槽の底部56に添加して、セルロース材のpHを低下し得る。
【0039】
pHモニタ79を使用して、第一反応槽から第二反応槽に流れるセルロース材のpHレベルを検出し得る。モニタ79が、セルロース材のpHレベルが所望のpH範囲より高いことを検出すれば、制御器は、第一槽10の底部56または移送パイプ62のセルロース材に酸性薬剤を添加するように作動し得る。さらに、モニタ78が、所望のpH範囲のより高いpHレベルを検出すれば、制御器は、第一槽10の底部56または移送パイプ62に追加の洗浄水を添加するように作動し得る。
【0040】
フラッシュタンク30と66から発生するスチームは、パイプ68を経て輸送し、チップ供給システム16、第一反応槽、および熱回収システム90のいずれかに熱を供給するのに使用される。例えば、第一反応槽10から抽出されたスチームは、チップビン16に供給され、セルロース材のスラリーの形成とスラリー中の液/木材比率の制御に補助作用を行い得る。スチームをチップ供給システム15に供給する前に、スチームをチエックし、スチームが実質的に硫黄を含まないことを確認し得る。硫黄分を含む薬剤は、第一反応槽10に導入されるセルロース材にも、他のどのような流れにも、液にも添加しないことが好ましい。第一反応槽10の中の硫黄分は、結果として槽10と12中の、そして抽出スクリーン48から抽出された液中の硫黄化合物となり得るので、望ましくない。
【0041】
追加スチーム72は、パイプ74経由で第一反応槽10の頂部および第二反応槽12の頂部に供給し得る。追加スチームは反応槽に熱エネルギーを提供し得る。
【0042】
蒸解薬剤、例えば、白液は、第二反応槽12の頂部、例えば、反転型トップセパレーター57に添加し得る。これらの蒸解薬剤の一部分は、トップセパレーター57から液を抽出し、第一反応槽の底部またはチップ移送ライン62に液を供給する循環ライン58に導入し得る。白液76を第二反応槽12のトップセパレーターに供給すると、セパレーターでの液とセルロース材との混合が促進され、その後でセルロース材と液の混合物がセパレーターから第二反応槽に排出される。
【0043】
循環ライン58をモニタすることは、pHモニタを含み、蒸解薬剤が第二反応槽12から第一反応槽10または移送パイプ62に流れないことを確認するのに有益であり得る。循環ライン58のpHは、pH4〜pH10の範囲、好ましくはpH6〜pH10の範囲、より好ましくはpH6〜pH8の範囲になければならない。循環ライン58のpHが高い場合は、追加の低温の洗浄水50を第一反応槽の底部56または移送ライン62に添加し得る。洗浄水50を、第一反応槽の底部または移送ライン62に添加すれば、セルロース材スラリーを第一槽から第二反応槽の頂部に押し上げる補助作用が得られる。
【0044】
第二反応槽12は、加圧されたガス相連続蒸解缶とし得る。第二反応槽における液レベルは、槽のガス相の下に位置し、セルロース材の固形分、例えば、チップを完全に浸液するに十分な高さである。第二反応槽の液レベルは、トップセパレーター57の上部の縁と同じくらい高い位置にあり得る。このように液レベルが高いと、チップに蒸解薬剤を迅速、かつ完全に浸透させるのに役立ち得る。第二槽における蒸解は、並流で行われる。
【0045】
第二反応槽12、例えば、蒸煮または蒸解缶は、複数の段階を備える単一槽システムとし得る。この場合、第一段階(上部の位置)を通過するセルロース材は、他の段階(下部の位置)のセルロース材より低い温度にあり得る。オプションの蒸煮または蒸解缶運転では、チップが蒸解液に導入されるとすぐにセルロース材を蒸解する方法が採用される。さらに別のオプションの蒸煮または蒸解缶運転では、セルロース材が蒸解液に順次導入されるにつれてセルロース材が蒸解され、蒸解プロセスが進行するにつれて相異なる温度でセルロース材の蒸解が行われる。例えば、第二反応槽は、相異なる高さの箇所に複数の蒸解ゾーンを備え、個々のゾーンは、相異なる蒸解温度に維持される。
【0046】
熱回収システム90とその方法は、従来的であり、パルプ製造プラントでは周知である。例えば、循環流からの熱、例えば、フラッシュタンク66からの熱は、熱交換器で、または他のそのような熱回収システム90で回収し得る。フラッシュタンクから回収された熱は、また、第二反応槽の頂部に導入される液、例えば、洗浄機濾液80や白液76を予熱するのに適用し得る。液をこのように予熱するのは、熱交換器を使用してフラッシュタンクから熱を抽出し、その熱を液に移動することによって達成し得る。
【0047】
以上、本発明は、現在最も実用的で、好ましい態様であると考えられるものに関して記載されたけれども、本発明は、開示された態様に限定されることなく、むしろ反対に、その精神内と前記特許請求の範囲とに含まれる多岐にわたる修正や等価の配置も網羅するものである。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】チップ供給、加水分解反応槽、および連続蒸解反応槽を備える連続パルプ製造システムの概要図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応槽システムが、
セルロース材を受容するセルロース材入口とセルロース材排出口とを有し、セルロース材がセルロース材入口からセルロース材排出口に流れる第一反応槽;
第一反応槽中の、加水分解生成物と液との抽出スクリーン;
セルロース材入口と液抽出スクリーンとの間にあって、セルロース材の加水分解反応を促進する条件に維持される第一反応槽の第一領域;
液抽出スクリーンとセルロース材排出口との間にあって、加水分解が実質的に抑制される第一反応槽の第二領域;
洗浄液を抽出スクリーンの下に導入して第二領域を通って抽出スクリーンに流すためのものであり、洗浄液が加水分解温度以下の温度で導入され、洗浄液が第二領域における加水分解を抑制する洗浄液入口ポート;
第一反応槽のセルロース材排出口に接続された入口と第二反応槽に接続された出口とを有し、セルロース材がセルロース材排出口から第二反応器に流れる移送パイプ;
を含み、そして
第二反応槽では、蒸解液がセルロース材に供給され、第二反応槽は、第二反応槽から液の一部を抽出してその液部分を第一反応槽の下側の入口の少なくとも一つまたは移送パイプに流す液出口を有し、そして
洗浄液が、水と、水酸化ナトリウムと実質的に硫黄分を含まない白液の少なくとも一つとの混合物であることを特徴とする反応槽システム。
【請求項2】
請求項1に記載の反応槽システムにおいて、水酸化ナトリウムと実質的に硫黄分を含まない白液の少なくとも一つが、槽を通って流れるセルロース材の量の0.01パーセント〜5パーセントの範囲にあることを特徴とする反応槽システム。
【請求項3】
請求項1に記載の反応槽システムにおいて、加水分解が150℃〜175℃の範囲の加水分解温度にて槽で行われることを特徴とする反応槽システム。
【請求項4】
請求項1に記載の反応槽システムにおいて、加水分解がpH1〜pH6の範囲にて槽で行われることを特徴とする反応槽システム。
【請求項5】
請求項3に記載の反応槽システムにおいて、洗浄液が加水分解温度より10℃〜70℃だけ低温であることを特徴とする反応槽システム。
【請求項6】
請求項1に記載の反応槽システムにおいて、洗浄液が3〜7の範囲のpHを有することを特徴とする反応槽システム。
【請求項7】
請求項1に記載の反応槽システムにおいて、第二反応槽にトップセパレーターをさらに備え、液の抽出された部分がトップセパレーターから抽出されることを特徴とする反応槽システム。
【請求項8】
請求項1に記載の反応槽システムにおいて、移送パイプのセルロース材スラリーのpHレベルをモニタするpHモニタをさらに備えることを特徴とする反応槽システム。
【請求項9】
請求項1に記載の反応槽システムにおいて、抽出スクリーンから抽出された液を受容し、第一反応槽の第一領域に、またはその上にスチームを供給するフラッシュタンクをさらに備えることを特徴とする反応槽システム。
【請求項10】
請求項9に記載の反応槽システムにおいて、フラッシュタンクが、システムのチップ供給アセンブリに液を供給する液の排出口を備えることを特徴とする反応槽システム。
【請求項11】
反応槽システムが、
セルロース材を受容する上部セルロース材入口と底部セルロース材排出口とを有し、セルロース材がセルロース材入口からセルロース材排出口に流れる第一反応槽;
第一反応槽中の、加水分解生成物と液との抽出スクリーン;
セルロース材入口と液抽出スクリーンとの間にあって、セルロース材に加水分解反応が起こる温度以上に維持される第一反応槽の上部領域;
第一反応槽の上部領域のセルロース材に加熱流体を導入するための熱エネルギー入口ポート;
液抽出スクリーンと底部セルロース材排出口との間にあって、加水分解が実質的に抑制される第一反応槽の下部領域;
槽に十分な洗浄液を導入して洗浄液が下部領域を通って抽出スクリーンに上向きに流れるようにするために第一反応槽の下部領域に設けられ、洗浄液が加水分解温度以下の温度で導入され、洗浄液が冷却することで下部領域における加水分解反応を抑制する洗浄液入口ポート;
第一反応槽のセルロース材排出口に接続された入口と第二反応槽に接続された出口とを有し、セルロース材が底部セルロース材排出口から第二反応槽の上部入口に流れる移送パイプ;
を含み、そして第二反応槽では、蒸解液がセルロース材に供給され、第二反応槽は、第二反応槽から液の一部を抽出してその液部分を第一反応槽の下側入口の少なくとも一つまたは移送パイプに流す液出口を有し、そして
洗浄液が、水と、水酸化ナトリウムと実質的に硫黄分を含まない白液との少なくとも一つとの混合物であることを特徴とする反応槽システム。
【請求項12】
請求項11に記載の反応槽システムにおいて、水酸化ナトリウムと実質的に硫黄分を含まない白液の少なくとも一つが、槽を通って流れるセルロース材の量の0.01パーセント〜5パーセントの範囲にあることを特徴とする反応槽システム。
【請求項13】
請求項11に記載の反応槽システムにおいて、加水分解が150℃〜175℃の範囲の加水分解温度にて槽で行われることを特徴とする反応槽システム。
【請求項14】
請求項11に記載の反応槽システムにおいて、加水分解がpH1〜pH6の範囲にて槽で行われることを特徴とする反応槽システム。
【請求項15】
請求項11に記載の反応槽システムにおいて、洗浄液が加水分解温度より10℃〜70℃だけ低温であることを特徴とする反応槽システム。
【請求項16】
請求項1に記載の反応槽システムにおいて、洗浄液が3〜7の範囲のpHを有することを特徴とする反応槽システム。
【請求項17】
請求項11に記載の反応槽システムにおいて、第二反応槽にトップセパレーターをさらに備え、液の抽出された部分がトップセパレーターから抽出されることを特徴とする反応槽システム。
【請求項18】
請求項11に記載の反応槽システムにおいて、移送パイプのセルロース材スラリーのpHレベルをモニタするpHモニタをさらに備えることを特徴とする反応槽システム。
【請求項19】
請求項11に記載の反応槽システムにおいて、抽出スクリーンから抽出された液を受容し、第一反応槽の第一領域に、またはその上にスチームを供給するフラッシュタンクをさらに備えることを特徴とする反応槽システム。
【請求項20】
請求項19に記載の反応槽システムにおいて、フラッシュタンクが、システムのチップ供給アセンブリに液を供給する液の排出口を備えることを特徴とする反応槽システム。
【請求項21】
セルロース材をパルプに転化するための処理システムにおいて、
このシステムが、大気圧より高い圧力で運転される第一加圧反応槽を含み、この第一加圧反応槽が、
セルロース材を受容するセルロース材入口と、セルロース材を排出するセルロース材排出口とを備え、セルロース材はセルロース材入口からセルロース排出口へ流れ、さらに前記第一加圧反応槽は、
第一反応槽の上部領域の熱エネルギー入口ポートと、
セルロース材入口と液抽出スクリーンとの間にあって、少なくとも摂氏150度のセルロース材加水分解温度に維持される第一領域と、
第一槽から加水分解生成物と液とを抽出する出口を有する抽出ス
クリーンと、
液抽出スクリーンと排出口との間にあって、加水分解温度より低温に維持され、加水分解反応が実質的に抑制されている第二領域と、
第二領域の下に設けられた第一槽の排出口とを備え、
前記システムが、排出口から連続蒸解缶に連なる流れの導通を提供する移送パイプと、
第一反応槽から排出されるセルロース材を受容する連続蒸解缶とを備えることを特徴とするセルロース材パルプ転化処理システム。
【請求項22】
請求項21に記載の処理システムにおいて、第一加圧反応槽に対して抽出スクリーンの下に位置する洗浄液入口をさらに備え、洗浄液入口が洗浄液源に接続され、洗浄液が、槽を通って流れるセルロース材の量の0.01パーセント〜5パーセントの範囲にある水酸化ナトリウムと実質的に硫黄分を含まない白液の少なくとも一つを含むことを特徴とする処理システム。
【請求項23】
請求項21に記載の処理システムにおいて、洗浄液が3〜7のpHを有することを特徴とする処理システム。
【請求項24】
請求項21に記載の処理システムにおいて、加水分解温度が150℃〜175℃の範囲にあることを特徴とする処理システム。
【請求項25】
請求項21に記載の処理システムにおいて、第一反応槽の第一領域のセルロース材が1〜6の範囲のpHを有することを特徴とする処理システム。
【請求項26】
請求項21に記載の処理システムにおいて、第一反応の第二領域の温度が加水分解温度より10℃〜70℃だけ低温の範囲にあることを特徴とする処理システム。
【請求項27】
請求項21に記載の処理システムにおいて、第一反応槽が実質的に垂直で、少なくとも100フィートの高さを有し、入口が槽の上部にあり、排出口が槽の底部近くに位置することを特徴とする処理システム。
【請求項28】
請求項21に記載の処理システムにおいて、第一反応槽の熱エネルギー入口ポートが大気圧以上のスチームを受容することを特徴とする処理システム。
【請求項29】
請求項21に記載の処理システムにおいて、抽出スクリーンから抽出された液を受容し、そして第一反応槽の第一領域、またはその上にスチームを供給し、そして加水分解生成物を加水分解回収システムに排出するフラッシュタンクをさらに備えることを特徴とする処理システム。
【請求項30】
請求項29に記載の処理システムにおいて、第二領域の下部部分に洗浄液入口をさらに備え、洗浄液入口が低温の洗浄液源に接続されていることを特徴とする処理システム。
【請求項31】
請求項21に記載の処理システムにおいて、洗浄液源が、低温の洗浄水の源と、水酸化ナトリウムと硫黄分を実質的に含まない白液の中の少なくとも一つとの源とを含み、水酸化ナトリウムと硫黄分を実質的に含まない白液の量が洗浄液中の水の5容量%以下であることを特徴とする処理システム。
【請求項32】
セルロース材からパルプを製造する方法が、
第一反応槽の上部入口にセルロース材を導入するステップ、
槽に圧力と熱のエネルギーを加えることによって、第一反応槽の上部領域でセルロース材を加水分解するステップ、
第一反応槽の上部領域の下にある抽出スクリーンを通してセルロース材から得られる加水分解生成物を抽出するステップ、
第一反応槽の下部領域に洗浄液を導入し、洗浄液が下部領域のセルロース材の加水分解を抑制するようにし、前記洗浄液がセルロース材全体を通って抽出スクリーンに向かって上方に流れるようにするステップ、
第一反応槽の下部出口からセルロース材を排出するステップ、
排出されたセルロース材を第二反応槽に導入するステップ、および
第二反応槽の頂部に蒸解液を導入し、セルロース材を蒸解し、パルプを製造するステップを含むことを特徴とするパルプ製造法。
【請求項33】
請求項32に記載の方法において、洗浄液が、第一反応槽を通って流れるセルロース材の量の0.01パーセント〜5パーセントの範囲にある水酸化ナトリウムと実質的に硫黄分を含まない白液との少なくとも一つを含むことを特徴とする方法。
【請求項34】
請求項32に記載の方法において、加水分解が150℃〜175℃の範囲の加水分解温度で行われることを特徴とする方法。
【請求項35】
請求項34に記載の方法において、洗浄液が加水分解温度より10℃〜70℃低温であることを特徴とする方法。
【請求項36】
請求項32に記載の方法において、加水分解が、セルロース材が1〜6の範囲のpHを有するときに行われることを特徴とする方法。
【請求項37】
請求項32に記載の方法において、洗浄液が3〜7のpHを有することを特徴とする方法。
【請求項38】
請求項32に記載の方法において、上部領域のセルロース材が、加水分解を促進するために加水分解温度以上の温度に維持され、下部領域のセルロース材が、加水分解温度より少なくとも10℃だけ低い温度に維持されることを特徴とする方法。
【請求項39】
請求項38に記載の方法において、加水分解温度が少なくとも170℃であることを特徴とする方法。
【請求項40】
請求項32に記載の方法において、第二反応槽から液を抽出し、抽出された液を第一反応槽の下部領域に導入するステップをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項41】
請求項40に記載の方法において、抽出された液のpHをモニタし、モニタされたpHが、既定のPHレベルを越えている場合は下部領域への洗浄液の流れを増やすステップをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項42】
請求項32に記載の方法において、第一反応槽にスチームを添加し、槽を加圧するとともに槽に熱エネルギーを加えるステップをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項43】
請求項32に記載の方法において、洗浄液が、水と、水酸化ナトリウムと白液の少なくとも一つとの混合物であり、水酸化ナトリウムと白液の量が洗浄液中の水の5容量パーセント以下であることを特徴とする方法。
【請求項44】
セルロース材の加水分解を抑制する方法が、
第一反応槽の上部入口にセルロース材を導入し、セルロース材が槽全体を通して下向きに移動するようにするステップ、
第一反応槽に大気圧以上のスチームを添加するステップ、
第一反応槽の上部領域でセルロース材を加水分解温度以上に維持するステップ、
第一反応槽の上部領域の下の抽出スクリーンを通して加水分解生成物をセルロース材から抽出するステップ、
抽出スクリーンの下のセルロース材を加水分解温度以下の温度に冷却するステップ、および
第一反応槽の底部出口からセルロース材を排出するステップを含むことを特徴とするセルロース材加水分解抑制法。
【請求項45】
請求項45に記載の方法において、冷却ステップが、抽出スクリーンの下に洗浄液を添加し、洗浄液が、第一反応槽を通って流れるセルロース材の量の0.01%〜5%の範囲にある水酸化ナトリウムと実質的に硫黄分を含まない白液との中の少なくとも一つを含むことを特徴とする反応槽システム。
【請求項46】
請求項44に記載の方法において、加水分解温度が150℃〜175℃の範囲にあることを特徴とする反応槽システム。
【請求項47】
請求項46に記載の方法において、洗浄ステップが、第一反応槽の抽出スクリーンの下に洗浄液を添加し、洗浄液が加水分解温度より10℃〜70℃だけ低温であることを特徴とする方法。
【請求項48】
請求項46に記載の方法において、洗浄液が3〜7のpHを有することを特徴とする反応槽システム。
【請求項49】
請求項44に記載の方法において、加水分解が、セルロース材が1〜6の範囲のpHを有するときに行われることを特徴とする反応槽システム。
【請求項50】
請求項44に記載の方法において、セルロース材を冷却するステップが、第一反応槽の下部領域に洗浄液を導入し、洗浄液を抽出スクリーンに向かって上向きに流すステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項51】
請求項44に記載の方法において、洗浄液が、水と、水酸化ナトリウムと実質的に硫黄分を含まない白液の少なくとも一つとの混合物であることを特徴とする方法。
【請求項52】
請求項44に記載の方法において、水酸化ナトリウムと白液の量が洗浄液中の水の5容量%以下であることを特徴とする方法。
【請求項53】
請求項44に記載の方法において、加水分解温度が少なくとも170℃であることを特徴とする方法。
【請求項54】
請求項44に記載の方法において、セルロース材を第一反応槽の底部排出口から第二反応槽の入口に排出するステップと、液を第二反応槽から抽出し、抽出された液を第一反応槽の下部領域に導入するステップとをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項55】
請求項54に記載の方法において、抽出された液のpHをモニタし、モニタされたpHが、既定のPHレベルを越えている場合は下部領域への洗浄液の流れを増やすステップをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項56】
請求項44に記載の方法において、第一反応槽にスチームを添加し、槽を加圧するとともに槽に熱エネルギーを加えるステップをさらに含むことを特徴とする方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−52187(P2009−52187A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−132885(P2008−132885)
【出願日】平成20年5月21日(2008.5.21)
【出願人】(502075342)アンドリッツ インコーポレーテッド (27)
【Fターム(参考)】