薬剤揮散装置
【課題】拡散性を向上させた薬剤揮散装置を提供する。
【解決手段】筐体10は側面の略全周に亘り通気口11を有する。薬剤保持体21は筐体10内に配置され常温揮散性の薬剤を保持する。回転動力部31〜34は薬剤保持体を回転させて薬剤保持体から揮散した薬剤を含む空気を通気口から放出させる。拡散促進部40は通気口11に筐体10の側面を取り巻くように配置された二巻以上の螺旋形状のルーバーからなる。
【解決手段】筐体10は側面の略全周に亘り通気口11を有する。薬剤保持体21は筐体10内に配置され常温揮散性の薬剤を保持する。回転動力部31〜34は薬剤保持体を回転させて薬剤保持体から揮散した薬剤を含む空気を通気口から放出させる。拡散促進部40は通気口11に筐体10の側面を取り巻くように配置された二巻以上の螺旋形状のルーバーからなる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蚊などの害虫を駆除又は忌避する殺虫・防虫薬剤を拡散させるための薬剤揮散装置に関し、特に、非加熱タイプの薬剤揮散装置の拡散性を向上させるための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
蚊などの害虫を駆除又は忌避するために、薬剤を部屋全体に揮散、放出させるものとして、蚊取線香、電気蚊取マット、及び液体式電気蚊取があり、これらは主に薬剤を加熱して揮発させる加熱タイプのものである。また、常温で薬剤含浸体にファン等により風をあてて薬剤を揮散させる送風タイプの薬剤揮散装置も、室内用や携帯用として既に実用化されている。
例えば、従来の送風タイプの薬剤揮散装置が、特許文献1〜3に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−44055号公報
【特許文献2】特開2005−102700号公報
【特許文献3】特開2009−124987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
送風タイプの薬剤揮散装置は、加熱タイプのものに較べて消費電力が少なくてすむので、電池による駆動が可能であり、設置場所の制約が少なく利便性が高い。しかしながらその反面、拡散性があまり高いとは言えないので、薬剤を効率よく拡散させるための工夫が望まれる。
【0005】
それ故に、本発明は、拡散性を向上させた薬剤揮散装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、薬剤揮散装置に向けられている。そして上記課題を解決するために、本発明の薬剤揮散装置は、筐体、薬剤保持体、回転動力部、及び拡散促進部を備える。筐体は、側面の略全周に亘り通気口を有する。薬剤保持体は、筐体内に配置され、常温揮散性の薬剤を保持する。回転動力部は、薬剤保持体を回転させて、薬剤保持体から揮散した薬剤を含む空気を、前記通気口から放出させる。拡散促進部は、前記通気口に、筐体の側面を取り巻くように配置された、二巻以上の螺旋形状のルーバーからなる。
【0007】
好ましくは、前記拡散促進部は、前記通気口から放出される前記揮散した薬剤を含む空気が渦巻き状に放出され、薬剤が周囲に拡散するように形成されているとよい。
好ましくは、前記拡散促進部において、前記通気口から放出される前記揮散した薬剤を含む空気が、前記筐体の内側から外側に向かうときにルーバーに添って流れるように、前記拡散促進部におけるルーバーにテーパーが形成されているとよい。
【0008】
好ましくは、前記拡散促進部におけるルーバーが、前記筐体の内側から外側に向かって、水平面に対して上向きに傾いているとよい。
好ましくは、前記拡散促進部におけるルーバーの巻きピッチが7mm以下であり、使用時において、前記通気口に、開口幅が7mmを超える部分が存在しないように、当該ルーバーが配置されているとよい。
好ましくは、前記筐体は、さらに、天井部分に通気孔を有するとよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、薬剤保持体を回転させることによって効率よく揮散した薬剤が、通気口に配置された螺旋形状のルーバーによって、渦を巻くように周囲に拡散していくので、拡散性を向上させた薬剤揮散装置が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施形態に係る薬剤揮散装置の使用時の外観を示す図
【図2】薬剤を取り付けていない状態の薬剤交換時の外観を示す図
【図3】薬剤を取り付けた状態の薬剤交換時の外観を示す図
【図4】図1に示す薬剤揮散装置1を図中Aの上面方向から見た揮散した薬剤の流れの様子を示す図
【図5】図1に示す薬剤揮散装置1を図中Bの正面方向から見た揮散した薬剤の流れの様子を示す図(その1)
【図6】図1に示す薬剤揮散装置1を図中Bの正面方向から見た揮散した薬剤の流れの様子を示す図(その2)
【図7】シロッコカートリッジを用いて、螺旋形状でない水平なルーバーを備える薬剤揮散装置による薬剤の拡散状態を撮影した図
【図8】シロッコカートリッジを用いて、螺旋形状のルーバーを備える薬剤揮散装置1による薬剤の拡散状態を撮影した図
【図9】薄型カートリッジを用いて、螺旋形状でない水平なルーバーを備える薬剤揮散装置による薬剤の拡散状態を撮影した図
【図10】薄型カートリッジを用いて、螺旋形状のルーバーを備える薬剤揮散装置1による薬剤の拡散状態を撮影した図
【図11】第1の変形例における薬剤揮散装置1の通気口11から上の部分を、図4の破線Cにおいて、駆動モータ31の中心を通るように切断し、図5と同様に正面方向から見た図
【図12】第2の変形例における薬剤揮散装置1の通気口11から上の部分を、図4の破線Cにおいて、駆動モータ31の中心を通るように切断し、図5と同様に正面方向から見た図
【図13】第3の変形例における薬剤揮散装置1の通気口11から上の部分を、図4の破線Cにおいて、駆動モータ31の中心を通るように切断し、図5と同様に正面方向から見た図
【図14】天井部分に楕円の孔401〜403を横一列に形成した薬剤揮散装置を、図4と同様に上面方向から見た図
【図15】天井部分に丸孔411〜414を中心の周りに形成した薬剤揮散装置を、図4と同様に上面方向から見た図
【図16】天井部分にハート型の孔421〜424を中心の周りに形成した薬剤揮散装置を、図4と同様に上面方向から見た図
【図17】天井部分に、文字やマークの形に開けられたデザイン孔431を形成した薬剤揮散装置を、図4と同様に上面方向から見た図
【図18】効力試験の結果を示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
[第1の実施形態]
<構成>
図1は、本実施形態に係る薬剤揮散装置の使用時の外観を示す図である。また、図2は、薬剤交換時の外観を示す図であり、薬剤を取り付けていない状態である。また、図3は、薬剤交換時の外観を示す図であり、薬剤を取り付けた状態である。
【0012】
図1〜3に示すように、薬剤揮散装置1は、蚊などの害虫を駆除又は忌避するために、薬剤を部屋全体に揮散、放出させる装置であり、筐体10と、薬剤保持部20と、回転動力部30(31〜34の総称)と、拡散促進部40とを備える。
筐体10は、プラスチック等の樹脂製の専用容器であり、図1における下部に回転動力部30を収納し、上部の側面の略全周に亘り通気口11を有している。
【0013】
薬剤保持部20は、部屋全体に揮散させることにより、蚊などの対象となる昆虫を駆除又は忌避する作用を持ち、かつ常温で気化又は昇華するような常温揮散性の薬剤を保持する、交換用として販売されるカートリッジである。本実施形態では、薬剤保持部20は、メッシュ状の樹脂や繊維等に薬剤を含侵させた略円盤形状の薬剤保持体21と、薬剤保持体21を保持する樹脂製の枠を持つカートリッジ体22とからなる。なお、薬剤保持部20は、網目やスリット等があり通気性を備える樹脂製等のケースに固形の薬剤を収めたものであってもよい。
【0014】
また本実施形態では、図3に示すように、カートリッジ体22の一部がファン51となって一体化しており、薬剤が無くなると薬剤保持体21やカートリッジ体22の枠の部分とともにファン51も交換されることになる。また薬剤保持部20は、その中心が回転動力部30のモータ軸52に勘合するようになっており、これらが勘合し接続されて薬剤保持部20が回転する。また、図3においてカートリッジ体22と一体化したファン51を、上方向から見て右周りに回転させることにより、上から下への方向に向かう風を発生させて薬剤保持体21の中に風を通り抜けさせて薬剤を効率よく揮散させ、通気口11から揮散した薬剤を含む空気を放出させている。
【0015】
なお、ファン51の形状は、図3に示すような形状に限られず、薬剤保持体21に当たるように風を起こすことができるものであれば如何なる形状であってもよい。例えばシロッコカートリッジは、薬剤を保持するドーナツ型の部分から、円周側及び中心側に突き出た短い板が、円周方向に添って並んだシロッコファンを備えている。
また例えばファン51をカートリッジ体22から独立させ、ファン51を薬剤の交換の度に交換しないようにしてもよい。また、ファン51だけが回転しさえすれば風を発生させることができるので、ファン51だけを回転させ、薬剤保持体21とカートリッジ体22の枠の部分を回転させないようにしてもよい。
【0016】
また、カートリッジ体の一部がファンとなっていない軽量タイプの薄型カートリッジを使うこともできる。薄型カートリッジを使った場合には、上下方向に積極的に風を起こすことはできないが、風の抵抗が少なく、かつ軽量であるため消費電力を著しく低く抑えることができ、かつ薄型カートリッジを回転させることによって、薬剤を外気に対して相対的に動かすことで、薬剤を効率よく揮散させることができる。
【0017】
ここで薬剤は、揮散性の殺虫剤、殺ダニ剤、忌避剤(例えば、ディート、ヒノキチオール、カルボン、サフロール、シトロネロール、ケイ皮アルデヒドなどの防虫香料など)、であり、芳香剤、消臭剤などでもよい。また殺虫剤の中では、常温揮散性ピレスロイド系薬剤が好適で、このような薬剤としては、フッ素置換ベンジルアルコールエステル化合物を例示することができる。また薬剤保持体21に保持させる薬剤量は、薬剤の種類、使用期間、使用目的等に応じて適宜決定するとよい。
【0018】
回転動力部30は、モータ軸52に回転力を与える駆動モータ31と、駆動モータ31に電力を供給する電力部32と、電力を供給するしないを切り替えるスイッチ33と、電力を供給しているときに点灯するパイロットランプ34とを含み、電力によりモータ軸52に回転力を与える。
【0019】
また本実施形態では、電力部32は電池により電力を供給しているが、家庭用コンセントに接続して、商用電源から電力を供給してもよいし、あるいはソーラパネルを付けて、太陽光や室内照明等から得られた電力を直接又は一時的に蓄積して供給してもよい。また、例えば圧縮空気等の電力以外の動力を供給し、モータ軸52に回転力を与えても良い。
【0020】
拡散促進部40は、通気口11に、筐体10の側面を取り巻くように配置された、二巻以上の螺旋形状のルーバーからなり、通気口11から放出される揮散した薬剤を含む空気が、回転を伴い渦巻き状に放出され、薬剤が周囲に拡散するように形成されている。また本実施形態では、拡散促進部40を、その外形が略円錐台形状になるように、上方に向かうにつれてルーバーの径をだんだん小さくなるようにして、全体的に見て貝殻をイメージさせる形状とし、これをシェル型と呼んでいる。また本実施形態では、ルーバーを7本の柱41により支え剛性を高めている。
【0021】
なお、拡散促進部40においてルーバーの径を上から下まで略同一径にし、拡散促進部40の全体の形状、あるいは、薬剤揮散装置1を全体的に見て、略円柱形状や略角柱形状になるようにしてもよい。また本実施形態では、標準的な幼児の指が通気口11の隙間に入らないようにするため、拡散促進部40は、その螺旋形状における巻きピッチを7mm以下とし、使用時において、通気口11に開口幅が7mmを超える部分が存在しないように配置している。また、本実施形態では、仮に何かが通気口11の隙間に入って回転する薬剤保持部20に触れたとしても、挿入された物を傷つけることなく薬剤保持部20が容易に停止するように、駆動モータ31の出力を調整している。
【0022】
また本実施形態では、筐体10の下層部分に単三電池を最大6本まで装備できるようにしており、アルカリ単三電池を2本装備した場合には、駆動モータ31がおよそ30日間程度連続で駆動するようにし、アルカリ単三電池を4本装備した場合には、駆動モータ31がおよそ60日間程度連続で駆動するようにし、アルカリ単三電池を6本装備した場合には、駆動モータ31がおよそ90日間程度連続で駆動するように調整している。
【0023】
また、薬剤保持部20の交換の際における利便性を考慮して、拡散促進部40、及びこれより上の部分を比較的容易に開閉できるように、筐体10はヒンジ12とフック13とを備えている。
【0024】
<効果の検証>
図4〜6は、本実施形態の薬剤揮散装置1により揮散した薬剤の流れの様子を示す図である。ここで、図4は、図1に示す薬剤揮散装置1を図中Aの上面方向から見た図、図5、6は、図1に示す薬剤揮散装置1を図中Bの正面方向から見た図である。なお、図5、6において、薬剤保持部20は記載していない。
図4〜6に示す矢印のように、揮散した薬剤を含む空気が通気口11から、回転を伴い渦巻き状に放出され、薬剤が周囲に拡散する。
【0025】
このように、本実施形態の薬剤揮散装置1は、螺旋形状のルーバーからなる拡散促進部40を備えることによって、拡散促進部40を抜けて排出された揮散した薬剤を含む空気が渦を作って拡散し、より遠くまで薬剤を拡散させることができるものと思われる。
【0026】
図7は、シロッコカートリッジを用いて、螺旋形状でない水平なルーバーを備える薬剤揮散装置による薬剤の拡散状態を撮影した図である。
図8は、シロッコカートリッジを用いて、螺旋形状のルーバーを備える薬剤揮散装置1による薬剤の拡散状態を撮影した図である。
【0027】
図9、薄型カートリッジを用いて、螺旋形状でない水平なルーバーを備える薬剤揮散装置による薬剤の拡散状態を撮影した図である。
図10は、薄型カートリッジを用いて、螺旋形状のルーバーを備える薬剤揮散装置1による薬剤の拡散状態を撮影した図である。
ここでは、薬剤揮散装置を立てた状態で、照明をうまく利用して煙の流れを撮影している。なお図7〜10は静止画像なので判り難い部分もあるが、動画で見るとルーバーの違いによる差は顕著である。
【0028】
図7では、決まった方向に直線的に薬剤が噴出しているのに対して、図8では、薬剤が周辺に回転しながら満遍なく噴出しており、拡散性が向上していることがわかる。
また図9では薬剤が出ない方向がありむらが大きく使い物にならないのに対して、図10では、図8と同様に、薬剤が周辺に回転しながら満遍なく噴出しており、拡散性が格段に向上していることがわかる。
【0029】
実際に、水平なルーバーを備える10畳の部屋用の薬剤揮散装置と同等の条件で、本実施形態の螺旋形状のルーバーを備える薬剤揮散装置1の拡散性を検証したところ、12畳の部屋においても同等の効用が得られ、水平なルーバーよりも本実施形態の螺旋形状のルーバーを備える薬剤揮散装置の方が拡散効果が高いという結果が得られた。
【0030】
[第1の変形例]
第1の変形例は、通気口11から放出される揮散した薬剤を含む空気が、筐体10の内側から外側に向かって上向きに流れるように、拡散促進部40におけるルーバーを、テーパー101を形成したルーバー100に取り換えたものである。
図11は、第1の変形例における薬剤揮散装置1の通気口11から上の部分を、図4の破線Cにおいて、駆動モータ31の中心を通るように切断し、図5と同様に正面方向から見た図である。なお、図10には薬剤保持部20を取り付けていない。
図11に示すように、ルーバーにテーパー101を形成したことにより、幾分放出される空気が上向きになり、巻き上がりが大きくなるものと思われる。また、薬剤の種類により揮散の程度が違うので、適度に拡散するようにテーパーの幅や角度等を決定してもよい。
【0031】
[第2の変形例]
第2の変形例は、拡散促進部40におけるルーバーを、筐体10の内側から外側に向かって、水平面に対して上向きに傾けたルーバー200に取り換えたものである。
図12は、第2の変形例における薬剤揮散装置1の通気口11から上の部分を、図4の破線Cにおいて、駆動モータ31の中心を通るように切断し、図5と同様に正面方向から見た図である。なお、図12には薬剤保持部20を取り付けていない。
図12に示すように、傾けたルーバー200により、幾分放出される空気が上向きになり、巻き上がりが大きくなるものと思われる。また、薬剤の種類により揮散の程度が違うので、適度に拡散するようにルーバー200の角度等を決定してもよい。
【0032】
[第3の変形例]
第3の変形例は、拡散促進部40におけるルーバーを、筐体10の内側から外側に向かって、水平面に対して上向きに傾け、さらに、テーパー301を形成したルーバー300に取り換えたものである。
図13は、第3の変形例における薬剤揮散装置1の通気口11から上の部分を、図4の破線Cにおいて、駆動モータ31の中心を通るように切断し、図5と同様に正面方向から見た図である。なお、図13には薬剤保持部20を取り付けていない。
図13に示すように、傾けた上に、さらに、テーパー301を形成したルーバー300により、幾分放出される空気が上向きになり、巻き上がりが大きくなるものと思われる。
また、薬剤の種類により揮散の程度が違うので、適度に拡散するようにルーバーの角度やテーパーの幅や角度等を決定してもよい。
【0033】
[第4の変形例]
第4の変形例は、第1の実施形態、及び第1〜3の変形例の各薬剤揮散装置の天井部分に通気孔を形成することで、拡散のスピードをより速めることを可能にするものである。
図14は、天井部分に楕円の孔401〜403を横一列に形成した薬剤揮散装置を、図4と同様に上面方向から見た図である。
図15は、天井部分に丸孔411〜414を中心の周りに形成した薬剤揮散装置を、図4と同様に上面方向から見た図である。
【0034】
図16は、天井部分にハート型の孔421〜424を中心の周りに形成した薬剤揮散装置を、図4と同様に上面方向から見た図である。
ここで、図14〜16中において各孔の下側に位置するプリント400は、商品名や会社のロゴ等を示す、アルファベットなどの文字やマークが印刷されたものであり、この部分に孔は空いていない。
図17は、天井部分に、文字やマークの形に開けられたデザイン孔431を形成した薬剤揮散装置を、図4と同様に上面方向から見た図である。ここでデザイン孔431は、商品名や会社のロゴ等を示すアルファベットなどの文字やマークであることが好ましい。
【0035】
<効力試験>
図18は、効力試験の結果を示す図である。
メトフルトリン100mgを含有した薬剤保持体を含む薬剤保持部を、図18に示すような特徴を持つ、6種類の器具にそれぞれ装着し、それぞれ別個に、密閉した25m2の
部屋(室温25℃)の中央の床に設置する。次に部屋内にアカイエカ雌成虫50匹を放ち、薬剤保持体を含む薬剤保持部を約1,000rpmで回転させ、時間の経過に伴う仰転数を数え、KT50(仰転数が50%となる時間)、及び24時間後における瀕死虫を含む致死虫を計測して、致死率を求めた。なお、比較例1〜3の器具に関しては、それぞれ横方向から見た概略図を示している。
図18によれば、螺旋形状のルーバーを有する実施例1〜3の器具は、比較例1〜3の器具よりも、KT50が平均で61%早い。また、螺旋方向は下方向の方が上方向よりも良く、さらに天井部分に通気孔が有るものの方が無いものよりも良いという結果が得られた。
【0036】
<まとめ>
以上説明したように、本実施形態に係る薬剤揮散装置では、通気口11に設けられた拡散促進部40が、二巻以上の螺旋形状のルーバーからなり、通気口11から放出される揮散した薬剤を含む空気が渦巻き状に放出され、薬剤が周囲に拡散するように形成されているので、常温揮散性の薬剤の拡散性を向上させることができる。また、拡散促進部40におけるルーバーにテーパーを形成とすることで、さらに薬剤の拡散性を向上させることが可能となる。また、拡散促進部40のルーバーを傾けることで、さらに薬剤の拡散性を向上させることが可能となる。このように、本発明によれば、拡散性を向上させた薬剤揮散装置を実現できる。また、効力試験において、ルーバーを右上がり、又は右下がりのいずれかの螺旋形状にしても、水平の場合と較べ高いノックダウン効果が認められた。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の薬剤揮散装置は、蚊などの害虫を駆除又は忌避する殺虫・防虫薬剤を揮散させるために利用可能であり、またこのような薬剤の揮散だけでなく、芳香剤や消臭剤等のあらゆる薬剤の揮散に利用可能である。本発明は、常温揮散性の薬剤の拡散性を向上させることができるので、大変有用である。
【符号の説明】
【0038】
1 薬剤揮散装置
10 筐体
11 通気口
12 ヒンジ
13 フック
20 薬剤保持部
21 薬剤保持体
22 カートリッジ体
30 回転動力部
31 駆動モータ
32 電力部
33 スイッチ
34 パイロットランプ
40 拡散促進部
41 柱
51 ファン
52 モータ軸
100 ルーバー
101 テーパー
200 ルーバー
300 ルーバー
301 テーパー
400 プリント
401〜403 楕円の孔
411〜414 丸孔
421〜424 ハート型の孔
431 デザイン孔
【技術分野】
【0001】
本発明は、蚊などの害虫を駆除又は忌避する殺虫・防虫薬剤を拡散させるための薬剤揮散装置に関し、特に、非加熱タイプの薬剤揮散装置の拡散性を向上させるための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
蚊などの害虫を駆除又は忌避するために、薬剤を部屋全体に揮散、放出させるものとして、蚊取線香、電気蚊取マット、及び液体式電気蚊取があり、これらは主に薬剤を加熱して揮発させる加熱タイプのものである。また、常温で薬剤含浸体にファン等により風をあてて薬剤を揮散させる送風タイプの薬剤揮散装置も、室内用や携帯用として既に実用化されている。
例えば、従来の送風タイプの薬剤揮散装置が、特許文献1〜3に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−44055号公報
【特許文献2】特開2005−102700号公報
【特許文献3】特開2009−124987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
送風タイプの薬剤揮散装置は、加熱タイプのものに較べて消費電力が少なくてすむので、電池による駆動が可能であり、設置場所の制約が少なく利便性が高い。しかしながらその反面、拡散性があまり高いとは言えないので、薬剤を効率よく拡散させるための工夫が望まれる。
【0005】
それ故に、本発明は、拡散性を向上させた薬剤揮散装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、薬剤揮散装置に向けられている。そして上記課題を解決するために、本発明の薬剤揮散装置は、筐体、薬剤保持体、回転動力部、及び拡散促進部を備える。筐体は、側面の略全周に亘り通気口を有する。薬剤保持体は、筐体内に配置され、常温揮散性の薬剤を保持する。回転動力部は、薬剤保持体を回転させて、薬剤保持体から揮散した薬剤を含む空気を、前記通気口から放出させる。拡散促進部は、前記通気口に、筐体の側面を取り巻くように配置された、二巻以上の螺旋形状のルーバーからなる。
【0007】
好ましくは、前記拡散促進部は、前記通気口から放出される前記揮散した薬剤を含む空気が渦巻き状に放出され、薬剤が周囲に拡散するように形成されているとよい。
好ましくは、前記拡散促進部において、前記通気口から放出される前記揮散した薬剤を含む空気が、前記筐体の内側から外側に向かうときにルーバーに添って流れるように、前記拡散促進部におけるルーバーにテーパーが形成されているとよい。
【0008】
好ましくは、前記拡散促進部におけるルーバーが、前記筐体の内側から外側に向かって、水平面に対して上向きに傾いているとよい。
好ましくは、前記拡散促進部におけるルーバーの巻きピッチが7mm以下であり、使用時において、前記通気口に、開口幅が7mmを超える部分が存在しないように、当該ルーバーが配置されているとよい。
好ましくは、前記筐体は、さらに、天井部分に通気孔を有するとよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、薬剤保持体を回転させることによって効率よく揮散した薬剤が、通気口に配置された螺旋形状のルーバーによって、渦を巻くように周囲に拡散していくので、拡散性を向上させた薬剤揮散装置が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施形態に係る薬剤揮散装置の使用時の外観を示す図
【図2】薬剤を取り付けていない状態の薬剤交換時の外観を示す図
【図3】薬剤を取り付けた状態の薬剤交換時の外観を示す図
【図4】図1に示す薬剤揮散装置1を図中Aの上面方向から見た揮散した薬剤の流れの様子を示す図
【図5】図1に示す薬剤揮散装置1を図中Bの正面方向から見た揮散した薬剤の流れの様子を示す図(その1)
【図6】図1に示す薬剤揮散装置1を図中Bの正面方向から見た揮散した薬剤の流れの様子を示す図(その2)
【図7】シロッコカートリッジを用いて、螺旋形状でない水平なルーバーを備える薬剤揮散装置による薬剤の拡散状態を撮影した図
【図8】シロッコカートリッジを用いて、螺旋形状のルーバーを備える薬剤揮散装置1による薬剤の拡散状態を撮影した図
【図9】薄型カートリッジを用いて、螺旋形状でない水平なルーバーを備える薬剤揮散装置による薬剤の拡散状態を撮影した図
【図10】薄型カートリッジを用いて、螺旋形状のルーバーを備える薬剤揮散装置1による薬剤の拡散状態を撮影した図
【図11】第1の変形例における薬剤揮散装置1の通気口11から上の部分を、図4の破線Cにおいて、駆動モータ31の中心を通るように切断し、図5と同様に正面方向から見た図
【図12】第2の変形例における薬剤揮散装置1の通気口11から上の部分を、図4の破線Cにおいて、駆動モータ31の中心を通るように切断し、図5と同様に正面方向から見た図
【図13】第3の変形例における薬剤揮散装置1の通気口11から上の部分を、図4の破線Cにおいて、駆動モータ31の中心を通るように切断し、図5と同様に正面方向から見た図
【図14】天井部分に楕円の孔401〜403を横一列に形成した薬剤揮散装置を、図4と同様に上面方向から見た図
【図15】天井部分に丸孔411〜414を中心の周りに形成した薬剤揮散装置を、図4と同様に上面方向から見た図
【図16】天井部分にハート型の孔421〜424を中心の周りに形成した薬剤揮散装置を、図4と同様に上面方向から見た図
【図17】天井部分に、文字やマークの形に開けられたデザイン孔431を形成した薬剤揮散装置を、図4と同様に上面方向から見た図
【図18】効力試験の結果を示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
[第1の実施形態]
<構成>
図1は、本実施形態に係る薬剤揮散装置の使用時の外観を示す図である。また、図2は、薬剤交換時の外観を示す図であり、薬剤を取り付けていない状態である。また、図3は、薬剤交換時の外観を示す図であり、薬剤を取り付けた状態である。
【0012】
図1〜3に示すように、薬剤揮散装置1は、蚊などの害虫を駆除又は忌避するために、薬剤を部屋全体に揮散、放出させる装置であり、筐体10と、薬剤保持部20と、回転動力部30(31〜34の総称)と、拡散促進部40とを備える。
筐体10は、プラスチック等の樹脂製の専用容器であり、図1における下部に回転動力部30を収納し、上部の側面の略全周に亘り通気口11を有している。
【0013】
薬剤保持部20は、部屋全体に揮散させることにより、蚊などの対象となる昆虫を駆除又は忌避する作用を持ち、かつ常温で気化又は昇華するような常温揮散性の薬剤を保持する、交換用として販売されるカートリッジである。本実施形態では、薬剤保持部20は、メッシュ状の樹脂や繊維等に薬剤を含侵させた略円盤形状の薬剤保持体21と、薬剤保持体21を保持する樹脂製の枠を持つカートリッジ体22とからなる。なお、薬剤保持部20は、網目やスリット等があり通気性を備える樹脂製等のケースに固形の薬剤を収めたものであってもよい。
【0014】
また本実施形態では、図3に示すように、カートリッジ体22の一部がファン51となって一体化しており、薬剤が無くなると薬剤保持体21やカートリッジ体22の枠の部分とともにファン51も交換されることになる。また薬剤保持部20は、その中心が回転動力部30のモータ軸52に勘合するようになっており、これらが勘合し接続されて薬剤保持部20が回転する。また、図3においてカートリッジ体22と一体化したファン51を、上方向から見て右周りに回転させることにより、上から下への方向に向かう風を発生させて薬剤保持体21の中に風を通り抜けさせて薬剤を効率よく揮散させ、通気口11から揮散した薬剤を含む空気を放出させている。
【0015】
なお、ファン51の形状は、図3に示すような形状に限られず、薬剤保持体21に当たるように風を起こすことができるものであれば如何なる形状であってもよい。例えばシロッコカートリッジは、薬剤を保持するドーナツ型の部分から、円周側及び中心側に突き出た短い板が、円周方向に添って並んだシロッコファンを備えている。
また例えばファン51をカートリッジ体22から独立させ、ファン51を薬剤の交換の度に交換しないようにしてもよい。また、ファン51だけが回転しさえすれば風を発生させることができるので、ファン51だけを回転させ、薬剤保持体21とカートリッジ体22の枠の部分を回転させないようにしてもよい。
【0016】
また、カートリッジ体の一部がファンとなっていない軽量タイプの薄型カートリッジを使うこともできる。薄型カートリッジを使った場合には、上下方向に積極的に風を起こすことはできないが、風の抵抗が少なく、かつ軽量であるため消費電力を著しく低く抑えることができ、かつ薄型カートリッジを回転させることによって、薬剤を外気に対して相対的に動かすことで、薬剤を効率よく揮散させることができる。
【0017】
ここで薬剤は、揮散性の殺虫剤、殺ダニ剤、忌避剤(例えば、ディート、ヒノキチオール、カルボン、サフロール、シトロネロール、ケイ皮アルデヒドなどの防虫香料など)、であり、芳香剤、消臭剤などでもよい。また殺虫剤の中では、常温揮散性ピレスロイド系薬剤が好適で、このような薬剤としては、フッ素置換ベンジルアルコールエステル化合物を例示することができる。また薬剤保持体21に保持させる薬剤量は、薬剤の種類、使用期間、使用目的等に応じて適宜決定するとよい。
【0018】
回転動力部30は、モータ軸52に回転力を与える駆動モータ31と、駆動モータ31に電力を供給する電力部32と、電力を供給するしないを切り替えるスイッチ33と、電力を供給しているときに点灯するパイロットランプ34とを含み、電力によりモータ軸52に回転力を与える。
【0019】
また本実施形態では、電力部32は電池により電力を供給しているが、家庭用コンセントに接続して、商用電源から電力を供給してもよいし、あるいはソーラパネルを付けて、太陽光や室内照明等から得られた電力を直接又は一時的に蓄積して供給してもよい。また、例えば圧縮空気等の電力以外の動力を供給し、モータ軸52に回転力を与えても良い。
【0020】
拡散促進部40は、通気口11に、筐体10の側面を取り巻くように配置された、二巻以上の螺旋形状のルーバーからなり、通気口11から放出される揮散した薬剤を含む空気が、回転を伴い渦巻き状に放出され、薬剤が周囲に拡散するように形成されている。また本実施形態では、拡散促進部40を、その外形が略円錐台形状になるように、上方に向かうにつれてルーバーの径をだんだん小さくなるようにして、全体的に見て貝殻をイメージさせる形状とし、これをシェル型と呼んでいる。また本実施形態では、ルーバーを7本の柱41により支え剛性を高めている。
【0021】
なお、拡散促進部40においてルーバーの径を上から下まで略同一径にし、拡散促進部40の全体の形状、あるいは、薬剤揮散装置1を全体的に見て、略円柱形状や略角柱形状になるようにしてもよい。また本実施形態では、標準的な幼児の指が通気口11の隙間に入らないようにするため、拡散促進部40は、その螺旋形状における巻きピッチを7mm以下とし、使用時において、通気口11に開口幅が7mmを超える部分が存在しないように配置している。また、本実施形態では、仮に何かが通気口11の隙間に入って回転する薬剤保持部20に触れたとしても、挿入された物を傷つけることなく薬剤保持部20が容易に停止するように、駆動モータ31の出力を調整している。
【0022】
また本実施形態では、筐体10の下層部分に単三電池を最大6本まで装備できるようにしており、アルカリ単三電池を2本装備した場合には、駆動モータ31がおよそ30日間程度連続で駆動するようにし、アルカリ単三電池を4本装備した場合には、駆動モータ31がおよそ60日間程度連続で駆動するようにし、アルカリ単三電池を6本装備した場合には、駆動モータ31がおよそ90日間程度連続で駆動するように調整している。
【0023】
また、薬剤保持部20の交換の際における利便性を考慮して、拡散促進部40、及びこれより上の部分を比較的容易に開閉できるように、筐体10はヒンジ12とフック13とを備えている。
【0024】
<効果の検証>
図4〜6は、本実施形態の薬剤揮散装置1により揮散した薬剤の流れの様子を示す図である。ここで、図4は、図1に示す薬剤揮散装置1を図中Aの上面方向から見た図、図5、6は、図1に示す薬剤揮散装置1を図中Bの正面方向から見た図である。なお、図5、6において、薬剤保持部20は記載していない。
図4〜6に示す矢印のように、揮散した薬剤を含む空気が通気口11から、回転を伴い渦巻き状に放出され、薬剤が周囲に拡散する。
【0025】
このように、本実施形態の薬剤揮散装置1は、螺旋形状のルーバーからなる拡散促進部40を備えることによって、拡散促進部40を抜けて排出された揮散した薬剤を含む空気が渦を作って拡散し、より遠くまで薬剤を拡散させることができるものと思われる。
【0026】
図7は、シロッコカートリッジを用いて、螺旋形状でない水平なルーバーを備える薬剤揮散装置による薬剤の拡散状態を撮影した図である。
図8は、シロッコカートリッジを用いて、螺旋形状のルーバーを備える薬剤揮散装置1による薬剤の拡散状態を撮影した図である。
【0027】
図9、薄型カートリッジを用いて、螺旋形状でない水平なルーバーを備える薬剤揮散装置による薬剤の拡散状態を撮影した図である。
図10は、薄型カートリッジを用いて、螺旋形状のルーバーを備える薬剤揮散装置1による薬剤の拡散状態を撮影した図である。
ここでは、薬剤揮散装置を立てた状態で、照明をうまく利用して煙の流れを撮影している。なお図7〜10は静止画像なので判り難い部分もあるが、動画で見るとルーバーの違いによる差は顕著である。
【0028】
図7では、決まった方向に直線的に薬剤が噴出しているのに対して、図8では、薬剤が周辺に回転しながら満遍なく噴出しており、拡散性が向上していることがわかる。
また図9では薬剤が出ない方向がありむらが大きく使い物にならないのに対して、図10では、図8と同様に、薬剤が周辺に回転しながら満遍なく噴出しており、拡散性が格段に向上していることがわかる。
【0029】
実際に、水平なルーバーを備える10畳の部屋用の薬剤揮散装置と同等の条件で、本実施形態の螺旋形状のルーバーを備える薬剤揮散装置1の拡散性を検証したところ、12畳の部屋においても同等の効用が得られ、水平なルーバーよりも本実施形態の螺旋形状のルーバーを備える薬剤揮散装置の方が拡散効果が高いという結果が得られた。
【0030】
[第1の変形例]
第1の変形例は、通気口11から放出される揮散した薬剤を含む空気が、筐体10の内側から外側に向かって上向きに流れるように、拡散促進部40におけるルーバーを、テーパー101を形成したルーバー100に取り換えたものである。
図11は、第1の変形例における薬剤揮散装置1の通気口11から上の部分を、図4の破線Cにおいて、駆動モータ31の中心を通るように切断し、図5と同様に正面方向から見た図である。なお、図10には薬剤保持部20を取り付けていない。
図11に示すように、ルーバーにテーパー101を形成したことにより、幾分放出される空気が上向きになり、巻き上がりが大きくなるものと思われる。また、薬剤の種類により揮散の程度が違うので、適度に拡散するようにテーパーの幅や角度等を決定してもよい。
【0031】
[第2の変形例]
第2の変形例は、拡散促進部40におけるルーバーを、筐体10の内側から外側に向かって、水平面に対して上向きに傾けたルーバー200に取り換えたものである。
図12は、第2の変形例における薬剤揮散装置1の通気口11から上の部分を、図4の破線Cにおいて、駆動モータ31の中心を通るように切断し、図5と同様に正面方向から見た図である。なお、図12には薬剤保持部20を取り付けていない。
図12に示すように、傾けたルーバー200により、幾分放出される空気が上向きになり、巻き上がりが大きくなるものと思われる。また、薬剤の種類により揮散の程度が違うので、適度に拡散するようにルーバー200の角度等を決定してもよい。
【0032】
[第3の変形例]
第3の変形例は、拡散促進部40におけるルーバーを、筐体10の内側から外側に向かって、水平面に対して上向きに傾け、さらに、テーパー301を形成したルーバー300に取り換えたものである。
図13は、第3の変形例における薬剤揮散装置1の通気口11から上の部分を、図4の破線Cにおいて、駆動モータ31の中心を通るように切断し、図5と同様に正面方向から見た図である。なお、図13には薬剤保持部20を取り付けていない。
図13に示すように、傾けた上に、さらに、テーパー301を形成したルーバー300により、幾分放出される空気が上向きになり、巻き上がりが大きくなるものと思われる。
また、薬剤の種類により揮散の程度が違うので、適度に拡散するようにルーバーの角度やテーパーの幅や角度等を決定してもよい。
【0033】
[第4の変形例]
第4の変形例は、第1の実施形態、及び第1〜3の変形例の各薬剤揮散装置の天井部分に通気孔を形成することで、拡散のスピードをより速めることを可能にするものである。
図14は、天井部分に楕円の孔401〜403を横一列に形成した薬剤揮散装置を、図4と同様に上面方向から見た図である。
図15は、天井部分に丸孔411〜414を中心の周りに形成した薬剤揮散装置を、図4と同様に上面方向から見た図である。
【0034】
図16は、天井部分にハート型の孔421〜424を中心の周りに形成した薬剤揮散装置を、図4と同様に上面方向から見た図である。
ここで、図14〜16中において各孔の下側に位置するプリント400は、商品名や会社のロゴ等を示す、アルファベットなどの文字やマークが印刷されたものであり、この部分に孔は空いていない。
図17は、天井部分に、文字やマークの形に開けられたデザイン孔431を形成した薬剤揮散装置を、図4と同様に上面方向から見た図である。ここでデザイン孔431は、商品名や会社のロゴ等を示すアルファベットなどの文字やマークであることが好ましい。
【0035】
<効力試験>
図18は、効力試験の結果を示す図である。
メトフルトリン100mgを含有した薬剤保持体を含む薬剤保持部を、図18に示すような特徴を持つ、6種類の器具にそれぞれ装着し、それぞれ別個に、密閉した25m2の
部屋(室温25℃)の中央の床に設置する。次に部屋内にアカイエカ雌成虫50匹を放ち、薬剤保持体を含む薬剤保持部を約1,000rpmで回転させ、時間の経過に伴う仰転数を数え、KT50(仰転数が50%となる時間)、及び24時間後における瀕死虫を含む致死虫を計測して、致死率を求めた。なお、比較例1〜3の器具に関しては、それぞれ横方向から見た概略図を示している。
図18によれば、螺旋形状のルーバーを有する実施例1〜3の器具は、比較例1〜3の器具よりも、KT50が平均で61%早い。また、螺旋方向は下方向の方が上方向よりも良く、さらに天井部分に通気孔が有るものの方が無いものよりも良いという結果が得られた。
【0036】
<まとめ>
以上説明したように、本実施形態に係る薬剤揮散装置では、通気口11に設けられた拡散促進部40が、二巻以上の螺旋形状のルーバーからなり、通気口11から放出される揮散した薬剤を含む空気が渦巻き状に放出され、薬剤が周囲に拡散するように形成されているので、常温揮散性の薬剤の拡散性を向上させることができる。また、拡散促進部40におけるルーバーにテーパーを形成とすることで、さらに薬剤の拡散性を向上させることが可能となる。また、拡散促進部40のルーバーを傾けることで、さらに薬剤の拡散性を向上させることが可能となる。このように、本発明によれば、拡散性を向上させた薬剤揮散装置を実現できる。また、効力試験において、ルーバーを右上がり、又は右下がりのいずれかの螺旋形状にしても、水平の場合と較べ高いノックダウン効果が認められた。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の薬剤揮散装置は、蚊などの害虫を駆除又は忌避する殺虫・防虫薬剤を揮散させるために利用可能であり、またこのような薬剤の揮散だけでなく、芳香剤や消臭剤等のあらゆる薬剤の揮散に利用可能である。本発明は、常温揮散性の薬剤の拡散性を向上させることができるので、大変有用である。
【符号の説明】
【0038】
1 薬剤揮散装置
10 筐体
11 通気口
12 ヒンジ
13 フック
20 薬剤保持部
21 薬剤保持体
22 カートリッジ体
30 回転動力部
31 駆動モータ
32 電力部
33 スイッチ
34 パイロットランプ
40 拡散促進部
41 柱
51 ファン
52 モータ軸
100 ルーバー
101 テーパー
200 ルーバー
300 ルーバー
301 テーパー
400 プリント
401〜403 楕円の孔
411〜414 丸孔
421〜424 ハート型の孔
431 デザイン孔
【特許請求の範囲】
【請求項1】
側面の略全周に亘り通気口を有する筐体と、
筐体内に配置され、常温揮散性の薬剤を保持する薬剤保持体と、
薬剤保持体を回転させて、薬剤保持体から揮散した薬剤を含む空気を、前記通気口から放出させる回転動力部と、
前記通気口に、筐体の側面を取り巻くように配置された、二巻以上の螺旋形状のルーバーからなる拡散促進部とを備えることを特徴とする、薬剤揮散装置。
【請求項2】
前記拡散促進部は、
前記通気口から放出される前記揮散した薬剤を含む空気が渦巻き状に放出され、薬剤が周囲に拡散するように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の薬剤揮散装置。
【請求項3】
前記拡散促進部において、
前記通気口から放出される前記揮散した薬剤を含む空気が、前記筐体の内側から外側に向かうときにルーバーに添って流れるように、前記拡散促進部におけるルーバーにテーパーが形成されていることを特徴とする請求項1に記載の薬剤揮散装置。
【請求項4】
前記拡散促進部におけるルーバーが、前記筐体の内側から外側に向かって、水平面に対して上向きに傾いていることを特徴とする請求項1、及び3の何れか1項に記載の薬剤揮散装置。
【請求項5】
前記拡散促進部におけるルーバーの巻きピッチが7mm以下であり、使用時において、前記通気口に、開口幅が7mmを超える部分が存在しないように、当該ルーバーが配置されていることを特徴とする請求項1に記載の薬剤揮散装置。
【請求項6】
前記筐体は、さらに、
天井部分に通気孔を有することを特徴とする請求項1に記載の薬剤揮散装置。
【請求項1】
側面の略全周に亘り通気口を有する筐体と、
筐体内に配置され、常温揮散性の薬剤を保持する薬剤保持体と、
薬剤保持体を回転させて、薬剤保持体から揮散した薬剤を含む空気を、前記通気口から放出させる回転動力部と、
前記通気口に、筐体の側面を取り巻くように配置された、二巻以上の螺旋形状のルーバーからなる拡散促進部とを備えることを特徴とする、薬剤揮散装置。
【請求項2】
前記拡散促進部は、
前記通気口から放出される前記揮散した薬剤を含む空気が渦巻き状に放出され、薬剤が周囲に拡散するように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の薬剤揮散装置。
【請求項3】
前記拡散促進部において、
前記通気口から放出される前記揮散した薬剤を含む空気が、前記筐体の内側から外側に向かうときにルーバーに添って流れるように、前記拡散促進部におけるルーバーにテーパーが形成されていることを特徴とする請求項1に記載の薬剤揮散装置。
【請求項4】
前記拡散促進部におけるルーバーが、前記筐体の内側から外側に向かって、水平面に対して上向きに傾いていることを特徴とする請求項1、及び3の何れか1項に記載の薬剤揮散装置。
【請求項5】
前記拡散促進部におけるルーバーの巻きピッチが7mm以下であり、使用時において、前記通気口に、開口幅が7mmを超える部分が存在しないように、当該ルーバーが配置されていることを特徴とする請求項1に記載の薬剤揮散装置。
【請求項6】
前記筐体は、さらに、
天井部分に通気孔を有することを特徴とする請求項1に記載の薬剤揮散装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2012−157304(P2012−157304A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−20126(P2011−20126)
【出願日】平成23年2月1日(2011.2.1)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【出願人】(000207584)大日本除蟲菊株式会社 (184)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月1日(2011.2.1)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【出願人】(000207584)大日本除蟲菊株式会社 (184)
【Fターム(参考)】
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