説明

薬効浸出粒、およびその製造方法

【課題】 連通状多孔質とした外殻部からなる素焼き粒体の内部に機能性物質を効率的に封入可能とし、水面や水中に浮遊可能としたり、または、水槽などの床上に沈降状に散布したりすることが可能な素焼き粒体技術を提供する。
【解決手段】 内部に中空部3を確保した適宜立体形状で、その一部または全部を、ナノサイズの無数の微孔からなる連通状多孔質とした外殻部からなる素焼き粒体であって、該外殻部適所の注入孔30から該中空部3に、該外殻部の無数の微孔を通じて浸漬した液8中か、または、所定気体中かの少なくとも何れか一方の流体中に所望する有効成分を放出可能な機能性薬剤4を装填した上、同注入孔30は、不溶性素材5で充填されてなるものとした薬効浸出粒1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、連通状多孔質の粒体の内部に流体をゆっくりと浸透可能として、内容要素が浸透液や浸透気体などに反応し、所望の有効成分を外部に放散可能とする技術に関するものであり、こうした連通状多孔質の粒体を製造、利用する分野は勿論のこと、その輸送、保管、組み立ておよび利用に必要となる設備、器具類を提供、販売する分野から、それら資材や機械装置、部品類に必要となる素材、例えば、木材、石材、各種繊維類、プラスチック、各種金属材料等を提供する分野、それらに組み込まれる電子部品やそれらを集積した制御関連機器の分野、各種計測器の分野、当該設備、器具を動かす動力機械の分野、そのエネルギーとなる電力やエネルギー源である電気、オイルの分野といった一般的に産業機械と総称されている分野、更には、それら設備、器具類を試験、研究したり、それらの展示、販売、輸出入に係わる分野、将又、それらの使用の結果やそれを造るための設備、器具類の運転に伴って発生するゴミ屑の回収、運搬等に係わる分野、それらゴミ屑を効率的に再利用するリサイクル分野などの外、現時点で想定できない新たな分野までと、関連しない技術分野はない程である。
【背景技術】
【0002】
(着目点)
観賞魚を飼育する水槽は通常、新しい水槽を新設した場合や、十分に洗浄して新しい水を入れ替えた場合であっても、摂氏20度前後の水温で4日ないし5日程度経つと徐々に藻類が発生し始めるものであり、特に直射日光が差し込む場所では藻類の光合成が、さらに促進されて急速に増殖してしまうことから、一般的な観賞魚の愛好者は、常に日光の当たらない暗い場所に水槽を設置して飼育しなければならないという欠点があり、しかも水槽の水の入れ替えや洗浄を高い頻度で行う必要があって愛好者の労力負担は、かなり大きなものとなっていた。
【0003】
(従来の技術)
こうした状況を憂慮し、例えば、下記の特許文献1(1)に提案されているものに代表されるように、ゲルマニウム化合物1ないし100ppmおよび除草剤0.001ないし0.2ppmを含有する抗藻類組成物を水棲動物育成用水に添加し、毒性を呈さない低濃度の除草剤類の使用で、水棲動物育成用水中で繁殖する藻類の発生または発育を抑制または防止し、水棲動物に対する毒性もなく安全に使用できるようにしたものや、同特許文献1(2)に見られるような、二酸化炭素を収容する二酸化炭素収容体に供給装置を連結し、この供給装置から水槽内の水に二酸化炭素を供給拡散してなる観賞用水槽装置において、該二酸化炭素収容体にタンニンを主成分とする水溶性物質を天然ゼオライトに吸着させた消臭剤を混入剤として混入してなる観賞用水槽装置などが散見される。
【0004】
しかし、前者特許文献1(1)に示されているような水槽に直接、抗藻類組成物を添加する薬品類や、特許文献1(2)の水槽のエアフィルター、またはエア供給路に消臭あるいは水質向上効果を有する混合剤を収容したものなどは、何れも藻類の抑制効果の即効性に秀れるという特徴を有してはいるが、その効果は約3週間程度で失われてしまい、それ以降は、普段と変わらなくなって藻類の発生を来たし始めるという欠点があり、利用者は1ヶ月に1回を目安に水槽の水を替え、3ヶ月から6ヶ月に一度は水槽および各部品類を大掃除しなければならないこととなって、厄介な水槽清掃の頻度を大幅に削減することには繋がらなかった。
【0005】
また、水槽中に投入した抗藻類組成物の抗藻類効果を長期的に持続可能とし得るものとして、例えば、特許文献1(3)のような、セラミック球状殻の内部に球状空間を有し、その球状空間内に液体、ガス体及び高温で液体又は気体となる固体からなる群から選ばれたものが充填されたものや、後者特許文献1(4)に見られるような、抗菌性物質や水中生物付着防止剤、香料、農薬などの水溶性や揮発性の高い機能性物質を包接するとともに、タンパク質や多糖、合成樹脂などの高分子材料で外被した無機多孔質微粒子などが散見される。
【0006】
しかしながら、これら特許文献1(3)や特許文献1(4)のような、セラミックス球状殻内の中空部分内に、機能性物質を封入する粒状体は何れも、封入された機能性物質が、外部に溶出または拡散する速度を遅延可能とするものであるが、機能性物質をセラミックス球状殻内に注入する技術が全く不明であり、また、水中に投入した場合に、比重が軽く水中に浮遊してしまいことが懸念されるものであり、しかも従前までは、粒状体の水中浮遊や沈降の性質を適切に設定可能とする技術については、未だ開発されていなかったというのが現状である。
【特許文献1】(1)特開平7−75788号公報 (2)特開平7−203805号公報 (3)特開平10−182264号公報 (4)特開平7−173452号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
(問題意識)
上述したとおり、従前までに提案のある各種薬品類や水槽装置などは、何れも藻類の発生防止および生育抑制の効果に即効性を有しているが、その効果に持続性が無く、水槽の清掃頻度を大幅に削減することはできないという致命的な欠点があり、1ヶ月を超えても藻類の発生を阻止できるような藻類抑制技術については未だ存在しないという状況にある。
【0008】
また、こうした藻類の発生を長期的に抑制可能とするものとして、セラミックス粒状体内の中空部に、藻類抑制剤などの機能性物質を封入した粒状体が、既に提案されているが、実際にセラミックス粒状体内に機能性物質を封入加工する技術や、水面や水中に浮遊可能としたり、または、水槽の床上に沈降可能とするような技術などは、未だ開発されていなかったというのが実情であった。
【0009】
(発明の目的)
そこで、この発明は、連通状多孔質とした外殻部からなる素焼き粒体の内部に機能性物質を効率的に封入可能とし、水面や水中に浮遊可能としたり、または、水槽などの床上に沈降状に散布したりすることが可能な薬効粒体技術の開発はできないものかとの判断から、逸速くその開発、研究に着手し、長期に渡る試行錯誤と幾多の試作、実験とを繰り返してきた結果、今回、遂に新規な構造の藻類抑制粒、およびその新規な製造方法を実現化することに成功したものであり、以下では、図面に示すこの発明を代表する実施例と共に、その構成を詳述することとする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(発明の構成)
図面に示すこの発明を代表する実施例からも明確に理解されるように、この発明の藻類抑制粒は、基本的に次のような構成から成り立っている。
即ち、内部に所定の中空部を確保した適宜立体形状で、その一部または全部を、ナノサイズの無数の微孔からなる連通状多孔質とした外殻部からなる素焼き粒体であって、該外殻部適所に設けた注入孔からは、その成分の一部か全部かの何れか一方が浸透液に反応すると、所望する有効成分を、当該外殻部の連通状多孔質とした微孔を通じて浸漬液中か、または、所定気体中かの少なくとも何れか一方の流体中に放出可能とする機能性薬剤の所定量を当該中空部に装填した上、同注入孔は、不溶性素材で充填および/または隠蔽されてなるものとした構成を要旨とする薬効浸出粒である。
【0011】
これを換言して示すと、内部に所定の中空部を確保した適宜立体形状で、その一部または全部を、ナノサイズの無数の微孔からなる連通状多孔質とした外殻部からなる素焼き粒体であって、該外殻部適所に設けた注入孔からは、その成分の一部か全部かの何れか一方が浸透液に反応すると、所望する有効成分を、当該外殻部の連通状多孔質とした微孔を通じて周囲液中か、または、周囲気体中かの少なくとも何れか一方の流体中に放出可能とする機能性薬剤の所定量を当該中空部に充填した上、同注入孔は、不溶性素材で充填および/または隠蔽され、当該中空部内に封入状とした機能性薬剤の所定有効成分は、外殻部の微孔だけを通じてその外部に放出可能と規制してなるものとした構成からなる薬効浸出粒ということができる。
【0012】
(関連する発明)
上記した薬効浸出粒に関連し、この発明には、以下のとおりの構成からなる薬効浸出粒の製造方法も包含している。
即ち、所定容量の中空部を象った消失模型の周りを焼成用素材で覆い尽くして適宜立体形状の外殻部に形成した上、適切な温度に加熱する過程で当該消失模型を消失させて中空部となし、且つ当該焼成用素材を焼成、硬化させてなる連通状多孔質の外殻部とした素焼き粒体を形成した後、該素焼き粒体外殻部適所を穿孔して前記中空部に繋がる注入孔を形成すると共に、該注入孔を通じて当該中空部内に機能性薬剤の所定量を充填した上、同注入孔には不溶性素材を充填および/または隠蔽して機能性薬剤を封入状にしてしまうようにした、この発明の基本をなす前記薬効浸出粒の製造方法である。
【0013】
この製造方法を、表現を変えて示すと、焼成用素材を適宜立体形状に成型し、焼成して連通状多孔質の素焼き粒体としてから、該素焼き粒体にボーリング加工して注入孔に繋がる所定深さの中空部を穿設した後、該中空部に注入孔を通じて機能性薬剤の所定量を充填した上、該注入孔に不溶性素材を充填および/または隠蔽して機能性薬剤を封入状にしてしまうようにした、この発明の基本をなす前記薬効浸出粒の製造方法となる。
【発明の効果】
【0014】
以上のとおり、この発明の薬効浸出粒によれば、従前までのものとは違い、上記したとおりの固有の特徴ある構成から、機能性薬剤を収容した素焼き粒体の一部または全部が、ナノサイズの無数の微孔からなる連通状多孔質の外殻部からなり、水中に投入されると、該外殻部に浸透する水などの液体中に、該機能性薬剤の有効成分がゆっくりと放散されるものとなり、機能性薬剤の即効性と、長期的に持続する効果との双方を発生可能とするものとなり、しかも注入孔は、不溶性素材で充填および/または隠蔽されたものとし、機能性薬剤の溶損や漏出などを確実に阻止するものとなって安定した品質を長期に渡って保つことができるという秀れた特徴が得られるものである。
【0015】
加えて、中空部内に充填された機能性薬剤の所定量が、素焼き粒体、注入孔に充填および/または隠蔽した不溶性素材、ならびに機能性薬剤の総合比重を1に等しくするよう調整した重量に設定されてなるものは、当該薬効浸出粒を水中に投入した場合に、水中に浮遊するものとすることができ、また、中空部内に充填された機能性薬剤の所定量は、素焼き粒体、注入孔に充填および/または隠蔽した不溶性素材、ならびに機能性薬剤の総合比重を1超過、20未満とするよう調整した重量に設定されてなるものは、当該薬効浸出粒を水槽水中に投入した場合に、水槽床まで沈降してしまうものとすることができ、さらにまた、中空部内に充填された機能性薬剤の所定量が、素焼き粒体、注入孔に充填および/または隠蔽した不溶性素材、ならびに機能性薬剤の総合比重を0.1以上、1未満とするよう調整した重量に設定されてなるものは、当該薬効浸出粒を水に投入した場合に、水面に一部を浮上した状態で浮遊するものとなり、様々な用途に応じて比重を調整したものとすることができるという秀れた利点を有するものとなる。
【0016】
また、素焼き粒体は、その外径が2cmか、または4cmかの何れか一方の球形状とし、機能性薬剤が、何れも連通状多孔質外殻部のナノサイズの微孔を通過不能なサイズの粉体か、あるいは粒体かの何れか一方からなる、活性ゼオライト50ないし40%、ポリ塩化アルミニウム10ないし5%、活性炭粉末0.1%、銀3ないし5%、銅5ないし10%、亜鉛30ないし35%、硫黄0.1ないし0.05%を混合した藻類抑制薬剤であって、外径が2cmの素焼き粒体には該藻類抑制薬剤の2gを充填し、外径4cmの素焼き粒体には該藻類抑制薬剤の4gを充填してなる藻類抑制粒とし、中空部内に充填された該藻類抑制薬剤の各粉体間、粒体間の隙間にも素焼き粒体外の流体が浸透可能にされたものは、水中に投入すると藻類抑制薬剤の有効成分を長期に渡って持続的に水中に放出するものとなり、藻類の発生を長期間に渡り防止可能とし、水槽の洗浄や水の交換の頻度を大幅に削減することができ、しかも水槽の大きさや水量に応じて粒径や個数を自由に選択、調節することができるという利点を有する。
【0017】
そして、素焼き粒体の外径が2cmか、または4cmかの何れか一方の球形状とし、機能性薬剤が、2gか、または4gかの何れか一方のワックスに、水に不溶な香料を0.1ないし2%添加した芳香薬剤であって、外径が2cmの素焼き粒体には該芳香薬剤の2gを充填し、外径4cmの素焼き粒体には該芳香薬剤の4gを充填してなるものとし、中空部内に充填された芳香薬剤が、該ワックスにて殆ど隙間無く密に充填されてなる芳香粒としたものは、水中に投入すると素焼き粒体に浸透した水が、ワックスに混在する芳香薬剤の成分を溶出し、素焼き粒体の連通状多孔質外殻部のナノサイズの微孔を通じて直接か、または、水面かの少なくとも何れか一方を介して蒸散し、長期間に渡って芳香を発するものとなるという秀れた特徴を発揮できる。
【0018】
さらに、機能性薬剤が、2gか、または4gかの何れか一方のワックスに、水に不溶な香料を0.1ないし2%添加した芳香薬剤であって、素焼き粒体中空部に対し、同芳香薬剤のワックス成分および香料を熔融、液状化されたものの所定量が該中空部内に充填された上、塊状に硬化されてなる芳香粒としたものは、ワックスが硬化した状態の芳香薬剤を収容したものに比較して、中空部に芳香薬剤のワックス成分および香料を容易に隙間無く、隅々まで密に充填することができ、生産効率を高めることができると共に、中空部に浸漬する水量を大幅に削減して、簡単に薬効浸出粒全体の比重を軽くして水に浮くよう設定することができる。
【0019】
注入孔に充填および/または隠蔽する不溶性素材が、素焼き粒体よりも比重の大きな材質からなるものとした薬効浸出粒は、水中に投入した場合に発生する浮力と、重力との作用を受けて必ず、不溶性素材が充填および/または隠蔽する注入孔がわが鉛直下方に向くよう、自動的に姿勢制御されるものとなり、無数の微孔から機能性薬剤の有効成分を放出可能とする素焼き粒体の連通状多孔質外殻部を上方に向け、同外殻部が下向きの場合に比較して、有効成分の放出効率を大幅に向上可能することができる。
【0020】
そして、この発明の薬効浸出粒の製造方法によれば、消失模型を利用して素焼き粒体の焼成工程中に、焼成用素材内に中空部を自動的に形成可能としたものは、中空部を加工する工程が不溶となり、製造工数を大幅に削減し、効率的且つ低廉に大量生産可能とすることができるものとなり、また、素焼き粒体にボーリング加工して注入孔に繋がる所定深さの中空部を穿設するように設定した製造は、成型工程を簡素化して生産効率を大幅に向上し、大量且つ低廉にて製造できるという秀れた効果を奏するものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
上記したとおりの構成からなるこの発明の実施に際し、その最良もしくは望ましい形態について説明を加えることにする。
素焼き粒体は、薬効浸出粒の本体外殻部が水に不溶性であり、十分な強度を有するものとし、その一部または全部をナノサイズの無数の微孔を有した連通状多孔質のものとし、その内部に所定の中空部を確保可能とする機能を果たすものであって、該中空部に装填した機能性薬剤の有効成分を当該外殻部の連通状多孔質とした微孔を通じて浸漬液中か、または、所定気体中かの少なくとも何れか一方の流体中に放出可能とするものとしなければならず、後述する実施例に示すように、それ自体の外径が2cmか、または4cmかの何れか一方とするよう、陶磁器用の粘土か、または、ガラスかの何れか一方の焼成用素材が成型、焼成されてなるものとするのが望ましく、その立体形状は、球形の外、卵形、円柱形、立方体形、直方体形、円錐形、多角錐形やそれ以外の多面体形、そろばんの珠形、不定形の小石形、人形、動物形、植物形、乗り物形、建築物形など様々な立体形状に設定されたものとすることができ、さらに、外殻部に着色や染色などを施したものとすることが可能である。
【0022】
中空部は、素焼き粒体の内部に形成されて所定量の機能性薬剤を漏出不能であって、有効成分を連通状多孔質とした外殻部の無数の微孔を通じて浸漬液中か、または、所定気体中かの少なくとも何れか一方の流体中に放出可能とするよう、密閉状に収納可能とする機能を果たし、その一部には、外殻部適所に設けた注入孔が連通状となるよう形成されたものとしなければならず、後述する実施例に示すように、素焼き粒体の内部に、外殻部の一部に開口した注入孔に繋がる、所定容量の空間部分として形成されたものとすることができる外、該素焼き粒体にボーリング加工して所定深さの有底穴状に形成したものとすることなどが可能であり、その形状は、特に限定されることはなく、所定量の機能性薬剤を充填可能とする容量を確保できればよく、その容量は、機能性薬剤の充填量に応じて適宜設定可能であり、例えば、投入対象となる水槽の容量に応じて、水量が10Lの場合には、その全量が2g、また、水量が20Lの場合には、4gが収容できる内部容積とするよう設定されたものとすることが可能である。
【0023】
注入孔は、所定量の機能性薬剤を中空部に充填する場合に、同機能性薬剤の注ぎ入れ作業を可能とする機能を果たすものであり、自動機械や人手などによる作業にて、所定量の機能性薬剤を効率的且つ容易に充填可能な形状、寸法に設定されたものとしなければならず、例えば、後述する実施例に示すように、筒状内周壁形に形成されたものとするのが望ましく、または漏斗状内周壁形に形成されたものとすることが可能である。
【0024】
機能性薬剤は、中空部に充填され、注入孔を不溶性素材で充填および/または隠蔽された場合には、中空部から漏出せず、しかも、連通状多孔質外殻部のナノサイズの無数の微孔から中空部内に浸透した液体や気体などと接触すると、長期間に渡って所望の有効成分を放出する機能を果たすものであり、様々な薬剤類や香料類などとすることが可能であり、後述する実施例に示すように、活性ゼオライト50ないし40%、ポリ塩化アルミニウム10ないし5%、活性炭粉末0.1%、銀3ないし5%、銅5ないし10%、亜鉛30ないし35%、硫黄0.1ないし0.05%を混合した藻類抑制薬剤としたり、または、2gか、または4gかの何れか一方のワックスに、水に不溶な香料を0.1ないし2%添加した芳香薬剤としたりすることができる。
【0025】
また、当該機能性薬剤は、その使用目的に応じて適宜、中空部内に充填する所定量を素焼き粒体、注入孔に充填および/または隠蔽した不溶性素材、ならびに機能性薬剤の総合比重が1に等しくするよう調整された重量に設定したものとすることができる外、同総合比重を1超過、20未満とするよう調整した重量に設定されてなるものとしたり、あるいは、同総合比重を0.1以上、1未満とするよう調整した重量に設定されてなるものとしたりすることが可能である。
該総合比重を20超過、および0.1未満に設定するよう、機能性薬剤の成分を選択、調整するのは技術的に非常に困難であり、しかも実用上の利点に乏しいことから、その範囲を排除したものとするのが望ましい。
【0026】
藻類抑制薬剤は、水槽やタンクなどの貯水や、水路や管路などの流水など様々な水中に発生する藻類の発生や増殖を防止可能とする薬剤であって、利用目的に応じて無害なものとするよう適宜選択、調整されたものとしなければならず、例えば、硫酸バンド、酸化亜鉛、Agゼオライト、酸化銅、カチオン、ヨウ素、マグネシウム、鉄、カルシウム、活性ゼオライト、ポリ塩化アルミニウム、活性炭粉末、銀、銅、亜鉛、硫黄などの不純物の吸着、ゴミのブロック化、臭いの吸収、抗菌、殺菌、亜硝酸窒素の除去など、様々な作用を発揮する素材、薬剤類を単独か、または、適宜割合で混合したものなどとし、中空部内に充填された該藻類抑制薬剤の各粉体間、粒体間に隙間があって、素焼き粒体外の流体が中空部内に浸透可能にされたものとすることができる。
また、吸水性ポリマー、CMC(カルボキシメチルセルロース)、酢酸ビニール、凝集剤などを混在状とし、浸漬液が吸収された状態で重量および比重を調整可能とするようしたものとすることが可能である。
【0027】
芳香薬剤は、融点の高い油脂状の物質であって、高級脂肪酸や中性脂肪などのワックスに、水に不溶な香料を適量添加したものであり、香料は、各種液体や空気などに接触して芳香を放ち、且つ水に不溶なものとしなければならず、各種天然香料や合成香料とすることができ、植物から抽出した精油および/または樹脂とすることが可能であり、後述する実施例に示すように、2gまたは4g何れか一方のワックスに、水に不溶な香料を0.1ないし2%添加してなるものとし、当該素焼き粒体中空部に対し、同芳香薬剤のワックス成分および香料を熔融、液状化されたものの所定量を、その内部に殆ど隙間無く充填するようにした、塊状に硬化してなるものとすることができる。
【0028】
不溶性素材は、注入孔から機能性薬剤が漏出しないよう密閉可能とすると共に、注入孔を通じて中空部内に液体や気体などが流出入しないよう密閉可能とする機能を果たし、注入孔に充填および隠蔽するか、または、充填あるいは隠蔽するかの何れか一方を可能とするものとしなければならず、不溶性素材を注入孔に詰めたり、不溶性素材製のシールや塗膜層などを注入孔に設けたり、または、その両方に依るものとしたりすることが可能であって、より具体的には、接着剤や塗料被膜、樹脂製粘着シール、または、それらの組み合わせなどとすることができる。
また、後述する実施例に示すように、注入孔に充填および/または隠蔽する不溶性素材を、素焼き粒体よりも比重の大きな材質からなるものとされたものとすることができ、さらにまた、該不溶性素材を、素焼き粒体よりも比重の小さな材質からなるものとすることが可能である。
【0029】
薬効浸出粒の製造方法は、藻類抑制粒や芳香粒などの薬効浸出粒を効率的に大量生産可能とするものであり、例えば、消失模型を利用して注入孔および中空部を有する素焼き粒体を簡単に成型、および焼成可能とするようにした製造方法や、焼成済みの素焼き粒体にボーリング加工して注入孔に繋がる所定深さの中空部を穿設するようにした製造方法とすることができ、機能性薬剤を中空部に充填する工程では、熔融、液状化された機能性薬剤を中空部に充填することが可能であり、また、注入孔に不溶性素材を充填および/または隠蔽する工程では、注入孔に接着剤を充填、硬化させてしまったり、注入孔に露出する機能性薬剤表面に樹脂製塗料を塗布、乾燥して塗料被膜を形成するようにしたり、あるいは、注入孔に樹脂製粘着シールを貼着したり、もしくは、それらを前後して組み合わせるよう注入孔に不溶性素材を充填および/または隠蔽するなど、各種設定によるものとすることができる。
【0030】
消失模型は、焼成加工前の焼成用素材を適宜立体形状に成型する段階で、焼成用素材製粒体内に、所定の中空部を形成可能とするものであり、しかも粒体の焼成工程中に消失してしまうという機能を果たすものであって、粒体成型の圧力に耐え得る強度と、素焼き粒体を焼成する温度で容易に消失する融点とを有するものとしなければならず、後述する実施例に示すように、素焼き粒体の焼成温度で、融解、蒸発してしまう発泡合成樹脂製や蝋製のものなどとすることができる。
以下では、図面に示すこの発明を代表する実施例と共に、その構造について詳述することとする。
【実施例1】
【0031】
図1の消失模型を内蔵した焼成前粒体の断面図、図2の消失模型を内蔵した焼成前粒体の平面図、図3の素焼き粒体の断面図、図4の藻類抑制薬剤を充填した素焼き粒体の断面図、および、図5の藻類抑制粒の断面図に示す事例は、中空部3を確保した適宜立体形状の、連通状多孔質とした外殻部からなる素焼き粒体2であって、該外殻部適所の注入孔30から該中空部3に、該外殻部の無数の微孔を通じて浸漬した液8中か、または、所定気体中かの少なくとも何れか一方の流体中に所望する有効成分を放出可能な機能性薬剤4を装填した上、同注入孔30は、不溶性素材5で充填されてなるものとした、この発明の藻類抑制粒1である薬効浸出粒における代表的な一実施例を示すものである。
以下では、この発明の薬効浸出粒の製造方法の一例に従い、順次該藻類抑制粒1の構造を示していくこととする。
【0032】
この発明の藻類抑制粒1は、図1ないし図5からも明確に把握できるとおりの工程で製造されたものであり、図1および図2中に示すように、発泡合成樹脂製であって、後述する中空部3の内径に一致する12mmの球形部分と、同じく後述する機能性薬剤4としての藻類抑制薬剤40の充填用となる注入口30の直径10mm、深さ5mmに一致する円柱部分とに相当する形状に加工した消失模型6の外周に、焼成用素材である陶磁器用の白磁土か、または、ガラス用の長石を一体化して直径20mmの球形状をなすものに成型した後、白磁土の場合には摂氏1200度ないし摂氏1000度、長石の場合は、摂氏1100度ないし摂氏1070度に加熱、焼成すると共に、該消失模型6が消失されたものとして素焼き粒体2を製造する。
【0033】
図3および図4中に示すように、該素焼き粒体2内の消失模型6(図1および図2中に示す)が消失して形成された中空部3内には、活性ゼオライト50ないし40%、ポリ塩化アルミニウム10ないし5%、活性炭粉末0.1%、銀3ないし5%、銅5ないし10%、亜鉛30ないし35%、硫黄0.1ないし0.05%の何れも粉末状を混合したものであって、その全量が2gに調整された藻類抑制薬剤40が、注入孔30を通じて充填されたものとする。
該図4(ないし図6)中に示した機能性薬剤4としての藻類抑制薬剤40は、複数種類の薬剤が混在している状態を明確化する目的から、各種素材が混在する状態を円形粒状や各多角形粒状に図案化してなるものとして示しているが、実際の形状とは異なるものである。
【0034】
図5中に示すように、藻類抑制薬剤40が充填済みの素焼き粒体2の注入孔30部分には、不溶性素材5としての耐水性であって毒性の無い接着剤50を充填し、硬化して密閉状に維持可能となるようにすると共に、該接着剤50の比重を、素焼き粒体2の比重よりも大きく設定してなるものとしている上、藻類抑制薬剤40の重量2gは、該素焼き粒体2、注入孔30に充填した接着剤50、ならびに藻類抑制薬剤40の総合比重を1超過、20未満とするよう調整した重量に設定してあり、該中空部3内の藻類抑制薬剤40は、各種薬剤の粒子間に、水や空気が十分に流通可能な程度の隙間が確保された状態に充填するようにしてある。
【0035】
該藻類抑制薬剤40の充填重量は、該素焼き粒体2、注入孔30に充填した接着剤50、ならびに藻類抑制薬剤40の総合比重を1に等しくするよう調整した重量のものや、または、同総合比重を0.1以上、1未満とするよう調整した重量となるように設定したものとすることができ、さらにまた、該接着剤50の比重は、素焼き粒体2の比重よりも小さく設定したものとすることができる。
【実施例2】
【0036】
図10のボーリング穴に芳香薬剤を充填した素焼き粒体の断面図、および、図11の使用状態にある芳香粒の断面図に示すこの事例は、球形状の素焼き粒体2の中空部3内に、ワックスに水に不溶な香料を0.1ないし2%添加した機能性薬剤4である芳香薬剤41の適量を充填し、注入孔30に露出する芳香薬剤41に不溶性素材である樹脂塗料被膜51を形成してなる芳香粒1とした、この発明の薬効浸出粒における他の実施例を示すものである。
以下では、この発明の薬効浸出粒の製造方法の他の一例に従って、芳香粒1について示していくこととする。
【0037】
焼成用素材である陶磁器用の白磁土か、または、ガラス用の長石かの何れか一方を一体化して直径40mmの球形塊とし、白磁土の場合には摂氏1200度ないし摂氏1000度、長石の場合は、摂氏1100度ないし摂氏1070度に加熱、焼成して素焼き粒体2を製造した上、同素焼き粒体2の中心を僅かに通過するよう、直径4ないし5mmのドリルを用いた所定深さのボーリング加工を行い、有底筒状の注入孔30および中空部3を穿設してから、図10に示すよう該中空部3には、4gの植物油製のワックスに、水に不溶な精油などの香料を0.1ないし2%添加(0.04g)した機能性薬剤4である芳香薬剤41を加熱溶解し、攪拌混合した全量をスポイト(図示せず)に吸引し、注入孔30より充填したものとする。
【0038】
該芳香薬剤41が、中空部3内に充填されたまま自然冷却、硬化した後、注入孔30より露出状となっている芳香薬剤41表面に、図11中に示すように、合成樹脂製の塗料を塗布、乾燥して樹脂塗料被膜51を形成し、液密状に隠蔽されたものとし、該芳香薬剤41の重量は、素焼き粒体2、樹脂塗料被膜51、ならびに芳香薬剤41の総合比重を0.1以上、1未満とするよう調整した重量のものとし、且つ芳香薬剤41の比重が、素焼き粒体2の比重と等しいか、または、芳香薬剤41の比重が、素焼き粒体2の比重よりも僅かに大きいかの何れか一方を選択し、しかも樹脂塗料被膜51の比重が、素焼き粒体2の比重よりも大きい値のものとなるようにしてある。
【0039】
(実施例1の作用)
以上のとおり、実施例1の構成からなるこの発明の藻類抑制粒1は、新しく設置した水槽か、または、洗浄直後の水槽に、水10Lにつき1固の割合で投入して利用するものであり、図6の使用状態にある藻類抑制粒の断面図に示すように、水中に没した各藻類抑制粒1は、同図6中の求心方向の波型実線矢印に示すように、素焼き粒体2の接着剤50の充填部分を除いた、連通状多孔質外殻部のナノサイズの無数の微孔を通じて、中空部3内まで浸透すると共に、同中空部3内の藻類抑制薬剤40に接触してマイナスイオンを発生するものとなり、このマイナスイオンを伴った水が、同図6中の遠心方向の波型実線矢印に示すように、該外殻部の無数の微孔を通過して水槽内に放出されるものとなる。
【0040】
この藻類抑制薬剤40に接触した水は、各種薬剤が発生したマイナスイオンを伴って水槽内に流出し、同藻類抑制薬剤40に含まれる活性ゼオライトが水中のアンモニアなどの不純物を吸着し、ポリ塩化アルミニウムが水中に漂う観賞魚用の餌や食べ残しなどの塵や、魚の細かな糞などのゴミをブロック化して、利用者の手によるスポイトなどを利用した塵埃除去を容易なものとし、活性炭素粉末が水に含まれる悪臭成分を除去し、銀や銅が抗菌、除菌するものとなり、硫黄が、窒素やリンを浄化し、水のPHを7.5ないし8.0に留め、水の悪臭発生を抑えると共に、魚の糞などの汚れに起因する亜硝酸濃度を低く抑制し、水槽ガラス内壁のヌメリの発生を防止した上、1ヶ月以上に渡って水槽水の透明性が非常に高い状態に維持され、使用開始当初の水質と殆ど差のない清浄状態に保たれるものとなる。
【0041】
図7の比重の異なる素焼き粒体を投入した水槽中の断面図中に示すように、この藻類抑制薬剤40の充填重量が、当該素焼き粒体2、注入孔30に充填した接着剤50、ならびに藻類抑制薬剤40の総合比重を0.1以上、1未満とするよう調整した重量の藻類抑制粒1(図7中のA)は、水槽7水8面に浮上するものとなり、また、同総合比重を1に等しくするよう調整した重量の藻類抑制粒1(図7中のB)は、水槽7水8中に浮遊するものとなり、また、同総合比重を1超過、20未満とするよう調整した重量の藻類抑制粒1(図7中のC)は、水槽7床70上に沈降するものとなる。
【0042】
そして、図8の水面に浮遊する藻類抑制粒の断面図に示すように、この藻類抑制薬剤40の充填重量が、当該素焼き粒体2、注入孔30に充填した接着剤50、ならびに藻類抑制薬剤40の総合比重を0.1以上、1未満とするよう調整した重量によるものとし、且つ、接着剤50の比重を素焼き粒体2の比重より大きい値となるようにしたものは、水8に投入した場合に、当該接着剤50が充填された注入孔30の部分が自動的に下向きとなり、該接着剤50とは反対がわの外殻部が上向きとなって水8面に浮上するものとなり、外殻部から浸透した水8が中空部3内の藻類抑制薬剤40に反応し、同図8中の波型実線矢印に示すように、藻類の発生を抑制可能な有効成分を水8中および水分と共に蒸散して空気中に放出可能とするものになる。
【0043】
また、図示していないが、この藻類抑制薬剤40の充填重量が、当該素焼き粒体2、注入孔30に充填した接着剤50、ならびに藻類抑制薬剤40の総合比重を0.1以上、1未満とするよう調整した重量のもので、且つ、接着剤50の比重を素焼き粒体2の比重より小さい値となるようにしたものの場合には、水8に投入した場合、藻類抑制粒1は、その一部を水面に浮上するように浮遊するものとなり、しかも該接着剤50を充填するようにした注入孔30の部分が自動的に上向きとなって水8面に露出し、同接着剤50とは反対がわの外殻部が下向きとなって水8中に常に浸漬された状態となり、藻類の発生を抑制可能な有効成分が水8中に更に効率的に放出可能なものとなる。
【0044】
さらに、図9の水槽床上に沈降した藻類抑制粒の断面図に示すように、該藻類抑制薬剤40の充填重量が、当該素焼き粒体2、注入孔30に充填した接着剤50、ならびに同藻類抑制薬剤40の総合比重を1超過、20未満とするよう調整した重量で、且つ、接着剤50の比重を素焼き粒体2の比重より大きくなるよう設定したものは、水8に投入した場合、該接着剤50とは反対がわの外殻部が自動的に上向きとなって沈降し、当該注入孔30に充填してある接着剤50部分が下向きとなって水槽7床70上に接地するものとなり、外殻部から浸透した水8が、中空部3内の藻類抑制薬剤40に反応し、同図9中の波型実線矢印に示すように、藻類の発生を抑制可能な有効成分を水8中に放出するものとなる。
【0045】
(実施例2の作用)
この発明の実施例2に示した芳香粒1は、その中空部3内に充填された芳香薬剤41の重量が、素焼き粒体2、樹脂塗料被膜51、ならびに芳香薬剤41の総合比重を0.1以上、1未満とするようにした重量に調整してあり、図12の小鉢の水に浮遊する芳香粒の断面図に示すように、小鉢9の水8に複数個を投入すると、水8面に浮上して浮遊するものとなり、各外殻部より浸透した水8が、同図11および図12中の波型実線矢印に示すように、中空部3内の芳香薬剤41に反応し、水8面に露出する各外殻部、および水8面より蒸散する水分と共に、芳香成分を空気中に放出するものとなる。
【0046】
また、図13の水面に浮遊する芳香粒の断面図に示すように、該芳香粒1は、ボーリング穴からなる中空部3および注入孔30に充填した芳香薬剤41の比重が、当該素焼き粒体2の比重と等しいか、または、この芳香薬剤41の比重が、該素焼き粒体2の比重よりも僅かに大きいかの何れか一方を選択し、且つ樹脂塗料被膜51の比重が、素焼き粒体2の比重よりも大きい値のものとなるよう設定してあり、水8に投入されると自動的に、樹脂塗料被膜51の塗布された部分が下向きの姿勢となって、外殻部を必ず水8面に浮上するものとなり、より効率的な芳香がなされるものとなる。
【0047】
(実施例1の効果)
以上のような構成からなる実施例1の藻類抑制粒1は、前記したこの発明の効果の項で記載の特徴に加え、その全体の総合比重が1未満で、しかも接着剤50の比重を素焼き粒体2の比重より大きい値となるよう設定したものは、図8中に示すように、水8や藻類抑制薬剤40の有効成分を透過しない接着剤50部分が自動的に下向きの姿勢となり、外殻部を水8面に浮上するものとなって、水質の改善に留まらず、水8面に近接する水槽7(図7に示す)内壁や、水8面付近の空気などの除菌、浄化効果も得られるものとすることができる。
【0048】
また、図9中に示すように、藻類抑制粒1の全体の総合比重を1超過となるよう設定し、接着剤50の比重を素焼き粒体2の比重より大きい値となるようにしたものとでは、水槽7水8中に投入すると、水槽7床70上まで沈降して接着剤50部分が自然に接地してしまうものとなり、水8や藻類抑制薬剤40の有効成分を透過する外殻部が、必ず上がわを向いた姿勢となり、より効果的な水質浄化作用を得ることができる上、付近を観賞魚(図示せず)が勢いよく通過した場合などにも、転がり移動を抑制することとなって沈降位置に留まるものとなり、複数個を長期に渡って水槽7床70上に均質に分布するよう配置することができ、水槽7内の水8質を、より均質に浄化できるという実益が得られるものとなる。
【0049】
(実施例2の効果)
以上のような構成からなる実施例2の芳香粒1も、やはり前記この発明の効果の項で記載したとおりの特徴に加え、その全体の総合比重が1未満で、しかも充填した芳香薬剤41の比重が、素焼き粒体2の比重と等しいか、または、芳香薬剤41の比重が、素焼き粒体2の比重よりも僅かに大きいかの何れか一方の値のものが選択されていて、且つ樹脂塗料被膜51の比重が、素焼き粒体2の比重よりも大きい値のものに設定されており、図13中に示すように、水8に投入されると、自動的に樹脂塗料被膜51の塗布部分が下向きとなり、外殻部を水8面に浮上するよう浮遊するものとなって、図12中に示してあるように、小鉢9の水8に複数個を浮遊させて芳香作用を得るようにする場合に、水面に浮き上がる全ての芳香粒1,1,……が、外殻部を水面に露出して均一の外観を呈するものとなり、インテリアとしての美感を一段と高める効果を奏するものとなる。
【0050】
(結 び)
叙述の如く、この発明の薬効浸出粒、およびその製造方法は、その新規な構成によって所期の目的を遍く達成可能とするものであり、しかも製造も容易で、従前からのセラミックス製の多孔質粒体技術に比較し、生産効率を大幅に高め、低廉化して遥かに経済的に大量生産可能とすることができる上、様々な用途に応じて水に投入した粒体の浮遊や沈降などを適切且つ自動的に制御可能として、様々な分野でより高い効果を発揮できるものとなることから、これまで水槽の維持、管理に細心の注意と多大な労苦とを払ってきた観賞魚の愛好家、およびペットショップ業界はもとよりのこと、多孔質粒体を利用した水質浄化剤や芳香剤などの開発に着手したものの、効率的な生産が困難なために経済的な生産を断念せざるを得なかったアクアリウム業界や観賞魚業界、および芳香剤業界などにおいても高く評価され、広範に渡って利用、普及していくものになると予想される。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図面は、この発明の薬効浸出粒、およびその製造方法の技術的思想を具現化した代表的な幾つかの実施例を示すものである。
【図1】消失模型を内蔵した焼成前の粒体を示す断面図である。
【図2】消失模型を内蔵した焼成前の粒体を示す平面図である。
【図3】素焼き粒体を示す断面図である。
【図4】藻類抑制薬剤を充填した素焼き粒体を示す断面図である。
【図5】藻類抑制粒を示す断面図である。
【図6】使用状態の藻類抑制粒を示す断面図である。
【図7】比重の異なる素焼き粒体を投入した水槽中を示す断面図である。
【図8】水面に浮遊する藻類抑制粒を示す断面図である。
【図9】水槽床上に沈降した藻類抑制粒を示す断面図である。
【図10】ボーリング穴に芳香薬剤を充填した素焼き粒体を示す断面図である。
【図11】使用状態にある芳香粒を示す断面図である。
【図12】小鉢の水に浮遊する芳香粒を示す断面図である。
【図13】水面に浮遊する芳香粒を示す断面図である。
【符号の説明】
【0052】
1 薬効浸出粒(藻類抑制粒、芳香粒)
2 素焼き粒体(外殻部)
3 中空部
30 同 注入孔
4 機能性薬剤
40 同 藻類抑制薬剤
41 同 芳香薬剤
5 不溶性素材
50 同 接着剤
51 同 樹脂塗料被膜
6 消失模型
7 水槽
70 同 床
8 水(浸漬液)
9 小鉢

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に所定の中空部を確保した適宜立体形状で、その一部または全部を、ナノサイズの無数の微孔からなる連通状多孔質とした外殻部からなる素焼き粒体であって、該外殻部適所に設けた注入孔からは、その成分の一部か全部かの何れか一方が浸透液に反応すると、所望する有効成分を、当該外殻部の連通状多孔質とした微孔を通じて浸漬液中か、または、所定気体中かの少なくとも何れか一方の流体中に放出可能とする機能性薬剤の所定量を当該中空部に装填した上、同注入孔は、不溶性素材で充填および/または隠蔽されてなるものとしたことを特徴とする薬効浸出粒。
【請求項2】
内部に所定の中空部を確保した適宜立体形状で、その一部または全部を、ナノサイズの無数の微孔からなる連通状多孔質とした外殻部からなる素焼き粒体であって、該外殻部適所に設けた注入孔からは、その成分の一部か全部かの何れか一方が浸透液に反応すると、所望する有効成分を、当該外殻部の連通状多孔質とした微孔を通じて周囲液中か、または、周囲気体中かの少なくとも何れか一方の流体中に放出可能とする機能性薬剤の所定量を当該中空部に充填した上、同注入孔は、不溶性素材で充填および/または隠蔽され、当該中空部内に封入状とした機能性薬剤の所定有効成分は、外殻部の微孔だけを通じてその外部に放出可能と規制してなるものとしたことを特徴とする薬効浸出粒。
【請求項3】
中空部内に充填する機能性薬剤の所定量が、素焼き粒体、注入孔に充填および/または隠蔽した不溶性素材、ならびに機能性薬剤の総合比重を1に等しくするよう調整した重量に設定されてなるものとした、請求項1または2何れか一方記載の薬効浸出粒。
【請求項4】
中空部内に充填する機能性薬剤の所定量が、素焼き粒体、注入孔に充填および/または隠蔽した不溶性素材、ならびに機能性薬剤の総合比重を1超過、20未満とするよう調整した重量に設定されてなるものとした、請求項1または2何れか一方記載の薬効浸出粒。
【請求項5】
中空部内に充填する機能性薬剤の所定量が、素焼き粒体、注入孔に充填および/または隠蔽した不溶性素材、ならびに機能性薬剤の総合比重を0.1以上、1未満とするよう調整した重量に設定されてなるものとした、請求項1または2何れか一方記載の薬効浸出粒。
【請求項6】
素焼き粒体は、その外径が2cmまたは4cm何れか一方のサイズの球形状とし、機能性薬剤が、何れも連通状多孔質外殻部のナノサイズの微孔を通過不能なサイズの粉体または粒体何れか一方からなる、活性ゼオライト50ないし40%、ポリ塩化アルミニウム10ないし5%、活性炭粉末0.1%、銀3ないし5%、銅5ないし10%、亜鉛30ないし35%、硫黄0.1ないし0.05%を混合した藻類抑制薬剤であって、外径が2cmの素焼き粒体には該藻類抑制薬剤の2gを、また外径4cmの素焼き粒体には該藻類抑制薬剤の4gを夫々充填するようにした藻類抑制粒とし、中空部内に充填した該藻類抑制薬剤の各粉体間または各粒体間何れの隙間にも、素焼き粒体外の流体が浸透可能に形成されてなるものとした、請求項1ないし5何れか一項記載の薬効浸出粒。
【請求項7】
素焼き粒体は、その外径が2cmまたは4cm何れか一方のサイズの球形状とし、機能性薬剤が、2gまたは4g何れか一方の重量としたワックスに、水に不溶な香料を0.1ないし2%添加した芳香薬剤であって、外径が2cmの素焼き粒体には該芳香薬剤の2gを、また外径4cmの素焼き粒体には該芳香薬剤の4gを夫々充填してなるものとし、中空部内に充填する芳香薬剤は、該ワックスによって殆ど隙間無く密に充填されてなる芳香粒としてなるものとした、請求項1ないし5何れか一項記載の薬効浸出粒。
【請求項8】
機能性薬剤が、2gまたは4g何れか一方のサイズのワックスに、水に不溶な香料を0.1ないし2%添加した芳香薬剤であって、素焼き粒体中空部に対し、同芳香薬剤のワックス成分および香料を熔融、液状化したものの所定量を充填した上、塊状に硬化した芳香粒としてなるものとした、請求項7記載の薬効浸出粒。
【請求項9】
注入孔に充填および/または隠蔽する不溶性素材が、素焼き粒体よりも比重の大きな材質からなるものとした、請求項1ないし5何れか一項記載の薬効浸出粒。
【請求項10】
所定容量の中空部を象った消失模型の周りを焼成用素材で覆い尽くして適宜立体形状の外殻部に形成した上、適切な温度に加熱する過程で当該消失模型を消失させて中空部となし、且つ当該焼成用素材を焼成、硬化させてなる連通状多孔質の外殻部とした素焼き粒体を形成した後、該素焼き粒体外殻部適所を穿孔して前記中空部に繋がる注入孔を形成すると共に、該注入孔を通じて当該中空部内に機能性薬剤の所定量を充填した上、同注入孔には不溶性素材を充填および/または隠蔽して機能性薬剤を封入状にしてしまうようにした、請求項1ないし9何れか一項記載の薬効浸出粒の製造方法。
【請求項11】
焼成用素材を適宜立体形状に成型し、焼成して連通状多孔質の素焼き粒体としてから、該素焼き粒体にボーリング加工して注入孔に繋がる所定深さの中空部を穿設した後、該中空部に注入孔を通じて機能性薬剤の所定量を充填した上、該注入孔に不溶性素材を充填および/または隠蔽して機能性薬剤を封入状にしてしまうようにした、請求項1ないし9何れか一項記載の薬効浸出粒の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2010−116449(P2010−116449A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−289301(P2008−289301)
【出願日】平成20年11月11日(2008.11.11)
【出願人】(399003237)株式会社 キナン (3)
【出願人】(504262269)有限会社 ワーコム農業研究所 (2)
【出願人】(598110828)有限会社 やまがたスリートップ (4)
【Fターム(参考)】