薬品注入装置と共に使用するためのシリンジ
【課題】正確な薬品注入を可能にする、薬品注入装置と
共に使用するためのシリンジを提供する。
【解決手段】シリンジシリンダ用のレシーバと、シリンジプランジャ用の軸方向に変位可能なプランジャレシーバとを有する薬品注入装置と共に使用するためのシリンジにおいて、シリンジシリンダ2が、底部に設けられたアウトレット5を伴った床部3と、内部に設けられた円筒状のプランジャ走行領域11とを有し、頂部に設けられた前記レシーバ内に保持するための手段8を有する、シリンジシリンダ2と、シリンジプランジャ12であって、シリンジプランジャが、周辺でプランジャ走行領域11をシーリングするための辺縁プランジャシール14と、頂部に設けられた上述のプランジャレシーバ内へ挿入するための結合部片18とを有する、シリンジプランジャ12と、前記シリンジシリンダ2と前記シリンジプランジャ12の間での止め手段14とを備える、シリンジ。
共に使用するためのシリンジを提供する。
【解決手段】シリンジシリンダ用のレシーバと、シリンジプランジャ用の軸方向に変位可能なプランジャレシーバとを有する薬品注入装置と共に使用するためのシリンジにおいて、シリンジシリンダ2が、底部に設けられたアウトレット5を伴った床部3と、内部に設けられた円筒状のプランジャ走行領域11とを有し、頂部に設けられた前記レシーバ内に保持するための手段8を有する、シリンジシリンダ2と、シリンジプランジャ12であって、シリンジプランジャが、周辺でプランジャ走行領域11をシーリングするための辺縁プランジャシール14と、頂部に設けられた上述のプランジャレシーバ内へ挿入するための結合部片18とを有する、シリンジプランジャ12と、前記シリンジシリンダ2と前記シリンジプランジャ12の間での止め手段14とを備える、シリンジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は薬品注入装置と共に使用するためのシリンジシリンダおよびシリンジプランジャを備えたシリンジに関し、薬品注入装置はシリンジプランジャ用のレシーバと、シリンジプランジャ用の軸方向に変位可能なプランジャレシーバを有している。
【背景技術】
【0002】
ピペットは、液体を計量し且つ移送するための薬品注入装置である。それらのピペットは、シリンジ中に液体を引き込み、その液体をシリンジから増分的に分注するために、シリンジと共に使用される反復ピペットまたはマルチペットとして設計されていることが多い。反復ピペットは特許文献1および特許文献2から公知である。この場合、シリンジレシーバはピペットハウジングに設けられたU字形の溝であって、側方のハウジング開口を通じて前述のU字型の溝にシリンジフランジを挿入することができる。そのレシーバ内において、シリンジフランジは加圧スプリングにより分注用開口の方向に負荷が加えられている。シリンジプランジャは円筒状の作動区域を有しており、締め付け装置によりその作動区域を収容体内に確保することができる。
【0003】
プランジャ押し戻し装置は、側方のハウジングスリットから突出した収容体のレバーとして設計されている。シリンジフランジのレバーを外す方向に移動させることにより、シリンジからプランジャを引き出すことができる。プランジャ先進装置はシャフトラチェット装置であり、そこではシャフトは収容体に接続されており、ラチェットは前後に動かすことができる駆動レバーにスイベル据え付けされている。駆動レバーをシリンジフランジへ向けて旋回させると、ラチェットは適所でロックされ、シャフトおよび接続されたプランジャを同じ方向に連れ立って移動する。反対の方向に旋回させると、ラチェットが鋸歯状の目立て部から飛び出し、プランジャの位置は変化しない。増分設定装置は回転ノブに結合された舌状部を有しており、その舌状部は回転ノブの位置に依存して多かれ少なかれ前記目立て部をカバーしている。回転ノブを設定することによりラチェット動作の区域を調節することができ、その区域では、ラチェットがシャフトに係合し、プランジャを連れ立って移動する。従って、各薬品注入ステップにおいてシリンジから分注される液体の体積を回転ノブにより調節することができる。
【0004】
シリンジは、若干の遊びを伴ってシリンジ用のレシーバに着座している。その上、プッシャ装置も遊びを有している。その結果として、プランジャは、一定の増分設定において引き出された後、その後のステップでの場合とは異なる距離を動かされる。従って、初回のステップで放出される液体の量は、それ以降の各ステップでの液体放出量とはかなり異なっている。それ故、正確な薬品注入を果たすため、実際には、初回のステップで放出された液体体積は廃棄される。これにより、サンプル液体が浪費されることとなる。
特許文献3および特許文献4はさらに開発された反復ピペットについて開述しており、その反復ピペットはサンプル液体の浪費を低減するための一定ステップ装置を有していて、その一定ステップ装置は、更なるその後のステップに対する設定エレメントの設定状態にかかわらず、一定の値に向けてその放出ステップの程度の大きさを決定する。
【0005】
特許文献5および特許文献6は、容易に軸方向に挿入可能なシリンジまたは個々に取り外し可能なピペットを用いる手動式の作動に一層適したピペットシステムを提示している。このピペットシステムは締結区域およびシリンジプランジャを備えたシリンジならびにピペットを有しており、またピペットハウジング内には締結区域用のレシーバおよびシリンジプランジャ用のプランジャレシーバまたは個々にシリンジプランジャに接続されたプランジャロッドを伴ったレシーバ体を有している。さらに、それらのレシーバ内において締結区域およびシリンジプランジャを可逆的にまたは個々に解放可能に確保するための締結装置、ならびにピペットハウジング内において前記レシーバ体を調節するためのプランジャ設定装置が存在している。締結区域およびシリンジプランジャは、それらのレシーバに設けられた軸方向の開口を通じて、それらの締結位置へ軸方向に押し込むことが可能である。
【0006】
前記締結装置は、締結区域およびシリンジプランジャを締結位置に固定するための、半径方向に進めることが可能な把持装置を有している。その把持装置は、ピペットハウジングにスイベル据え付けされたシリンジ把持レバーおよびレシーバ体にスイベル据え付けされたプランジャ把持レバーを有している。シリンジ把持レバーおよびプランジャ把持レバーは把持アームと作動アームとを伴った2つのアームを用いて設計されており、そこでは、シリンジ把持レバーはそれらの作動アームの内側に設けられた接触ポイントを有していて、その接触ポイントは、それらの作動アームを作動させることによりプランジャ把持レバーの作動アームに対して外側で旋回可能であり、これによりプランジャ把持レバーを作動させる。
【0007】
これにより、シリンジおよびピペットは単なる軸方向の相対運動を通じて相互に接続することが可能であり、それらの作動アームの作動を通じて互いに分離可能であることが達成されている。1つの実施形態によれば、締結区域はシリンジフランジであり、また別の実施形態によれば、そのシリンジプランジャは把持装置を通じて後部で係合するためのプランジャカラーを有している。
【0008】
特許文献5によるピペットの1つの実施形態では、シリンジがたった1つのシングルアクチュエータの作動を通じてピペットから解放可能であるが、それは特許文献7および特許文献8から公知である。
【0009】
Eppendorf AGにより製作されたこの薬品注入システムの商業的実施形態であるMultipette(登録商標)(plus/stream/Xstream)はシリンジCombitips(登録商標)(plus)を含んでおり、そのシリンジは、内部に設けられたプランジャ走行領域を伴ったシリンダおよびそのシリンダの上方の端部に設けられたシリンジフランジを有している。これらのシリンジは種々の異なる充填体積(0.1ml、0.2ml、0.5ml、1ml、2.5ml、5mlおよび10ml)のものが提供されている。さらに、このシステムは、体積が25mlおよび50mlのシリンジCombitips(登録商標)(plus)を含んでいる。これらのシリンジは大きな断面積を有しており、またアダプタを介して反復ピペットに接続可能である。アダプタは、差し込み継ぎ手を介して、大きな直径のシリンジシリンダの上縁に接続される。比較的小さなシリンジのシリンジフランジによれば、アダプタは、頂部に、フランジを伴った比較的小さな直径のスリーブを有している。アダプタはそのシリンジフランジを介して反復ピペットに接続される。
公知の薬品注入システムは、小さな測定誤差での正確な薬品注入を可能にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】ドイツ特許第2926691C2号
【特許文献2】米国特許第4406170号
【特許文献3】欧州特許第0679439B1号
【特許文献4】米国特許第5591408号
【特許文献5】ドイツ特許第4341229C2号
【特許文献6】米国特許第5620660号
【特許文献7】ドイツ特許第102005023203号
【特許文献8】米国特許第2006263261A1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
このような観点に基づき、本発明の目的は、さらに一層正確な薬品注入を可能にする、薬品注入装置と共に使用するためのシリンジを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述の目的は請求項1の特徴を有するシリンジにより解決される。
シリンジシリンダ用のレシーバとシリンジプランジャ用の軸方向に変位可能なプランジャレシーバを有する薬品注入装置と共に使用するための、本発明によるシリンジは、
シリンジシリンダであって、該シリンジシリンダが、
底部に設けられたアウトレットを伴った床部と、
内部に設けられた円筒状のプランジャ走行領域と
を有し、
頂部に設けられた前記レシーバ内に保持するための手段
を有する、シリンジシリンダと、
シリンジプランジャであって、該シリンジプランジャが、
周辺でプランジャ走行領域をシーリングするための辺縁プランジャシールと、
頂部に設けられたプランジャレシーバ内へ挿入するための結合部片と
を有する、シリンジプランジャと、
前記シリンジシリンダと前記シリンジプランジャの間での止め手段であって、前記止め手段が、プランジャシールを伴ったシリンジプランジャが前記床部から特定の距離にまでしか接近することができないような仕方で、床部へ向けてのシリンジプランジャの変位を制限している、止め手段とを
を備える。
【0013】
本発明は、サンプル液体の増分的放出の場合においては、最後の薬品注入ステップでは、従前の放出ステップでの場合よりも幾分多い液体量が放出されるという、本出願人による驚くべき認識に基づいている。さらに、本出願人による総合的な調査は、この増大した量の液体放出が、最後の薬品注入ステップでは、シリンジシリンダの床部が非常に小さな量だけシリンジシリンダの内部へ向けて変形されるという事実によるものである、という驚くべき結果を導いた。本出願人は、この結果が、床部に接近するシリンジプランジャのシーリングリップによりシリンジシリンダが半径方向に広がったためであることを見出した。その結果として、シリンジプランジャがシフトすることによる液体の一般的な移動が、床部がシフトしたことによる液体の非意図的な付加的移動に加えて生じる。本発明によるシリンジは、本シリンジが止め手段を有していることでこの影響を克服しており、前述の止め手段は、プランジャシールを伴ったシリンジプランジャが床部から特定の距離にまでしか接近することができないような仕方で、床部へ向けてのシリンジプランジャの変位を制限する。その距離は、プランジャシールが接近する状況において増大した量の液体の放出をもたらす床部の変形を低減または回避することができるように選択される。その距離は好適には1mm以上である。これにより、最後の放出ステップの薬品注入精度が改善され、従前の薬品注入ステップの薬品注入精度との一層良好なマッチングが得られる。
【0014】
1つの実施形態によれば、プランジャシールの下方のシリンジプランジャは底部プランジャ区域を有しており、この区域が、プランジャシールが床部から特定の距離にまで接近した時点で、シリンジシリンダの底部端部領域に係合する。上述の底部プランジャ区域はプランジャシールの下方のシリンジシリンダの体積をほとんど満たしている。これにより、薬品注入精度を低下させる可能性がある、シリンジプランジャとシリンジ内に取り込まれた液体との間に生じ得るエアポケットをほとんど回避することができる。この下方プランジャ区域は、好適には、エアポケットが可能な限り滅多に生じず、但し、残りの放出中においては創出されたすき間内の流動抵抗が許容範囲内に留まる(そこでは、残りの放出で使用されることとなる力が主観的な視点からして大き過ぎることがない)ような寸法に成される。このため、下方プランジャ区域とシリンジシリンダの下方端部領域との間のすき間の程度は、好適には、十分の数ミリメートルである。
【0015】
シリンジシリンダとシリンジプランジャとの間での止め手段は異なる仕方で設計することができる。1つの実施形態によれば、止め手段はシリンジシリンダの辺縁内側ステップを有しており、この内側ステップは、床部からある距離を隔てて配列されていて、床部へ向けたシリンジプランジャの変位を制限する。これにより、シリンジプランジャの変位は、シーリングリップがシリンジシリンダの内側ステップに係止する仕方で好適に制限される。シリンジプランジャが内側ステップに係止するときには、プランジャシールは、プランジャシールの領域におけるプランジャシールの領域におけるシリンジシリンダの半径方向の広がりが(従来のシリンジの場合と比べて)その内部へ向けた床部の変形(この変形は、存在する場合、最後の薬品注入ステップの薬品注入精度を著しく損なう)を全く生じさせないか、または大幅に低減された変形しかもたらさないような、床部からのある距離を隔てて位置付けられる。
【0016】
内側ステップを伴ったシリンジシリンダは、その内側ステップの下側に、好適には低減された内径の下方端部領域を有している。これは、射出成形を通じてシリンジシリンダを製造することによるものである。シリンジプランジャは、好適には、シリンジプランジャができる限りシリンジシリンダ内へ挿入されたときに、低減された直径の下方プランジャ区域でこの下方端部領域と係合する。
【0017】
1つの実施形態によれば、シリンジシリンダは、少なくとも床部に隣接して設けられ、その床部の外側においてそれの周辺周りで軸方向に延びるリブを有している。軸方向リブは、シリンジプランジャの挿入中におけるシリンジシリンダの半径方向の拡張を妨げ、シリンジシリンダ内への床部の内向きの変形を妨げる。これにより、薬品注入誤差をさらに低減させることができる。別の実施形態によれば、低減された直径の下方端部領域におけるシリンジシリンダは、その外側で軸方向に延びるリブを有している。軸方向リブは、好適には、それらのリブがプランジャ走行領域におけるシリンジシリンダのケーシングの意図された伸長の範囲内に収まるようなサイズに成されるべきである。従って、それらのリブは、その外側に向けて、プランジャ領域におけるシリンジシリンダのケーシングを越えて突出することはない。更なる1つの実施形態によれば、それらの軸方向リブは、シリンジシリンダの周辺にわたって均等に分配されている。
【0018】
さらに、上述の目的は、請求項7の特徴を備えたシリンジにより解決される。
シリンジシリンダ用のレシーバとシリンジプランジャ用の軸方向に変位可能なプランジャレシーバを有する薬品注入装置と共に使用するための、本発明によるシリンジは、
シリンジシリンダであって、該シリンジシリンダが、
底部に設けられたアウトレットを伴った床部と、
前記床部の外側に設けられた、少なくとも外側の端部で少なくとも1mmの高さを有する、半径方向に延びるリブと、
内部に設けられた円筒状のプランジャ走行領域と
を有し、
頂部に設けられた前記レシーバ内に保持するための手段
を有する、シリンジシリンダと、
シリンジプランジャであって、該シリンジプランジャが、
周辺でプランジャ走行領域をシーリングするための辺縁プランジャシールと、
頂部に設けられたプランジャレシーバ内へ挿入するための結合部片と
を有する、シリンジプランジャと
を備えている。
【0019】
本発明によるシリンジの場合、シリンジシリンダ内への床部の変形は、最後の薬品注入ステップ中、床部が半径方向に延びるリブによって補強されていることにより妨げられる。これにより、シリンジプランジャがシフトすることによる液体の移動に加えた、床部の変形による液体の移動が回避される。このシリンジでは、最後の薬品注入ステップの薬品注入精度も改善される。
【0020】
床部に設けられた8個の半径方向に延びるリブを有する、例えば10ml用のシリンジ、ritips(登録商標)professionalが市場から公知である。しかし、これらの半径方向に延びるリブは床部のアウトレットにおいて1ミリメートル未満の最大高さを有しており、それらの高さは半径方向外向きに減少していて、床部の外側周辺ではその値がゼロになっている。これらのリブは明らかに審美的理由で適用されたものである。それらのサイズおよびそれらの形状的進行形態のため、これらの半径方向に延びるリブは、最後の放出ステップ中に生じるシリンジシリンダ内への床部の内向きの変形を低減させるのに適していない。
【0021】
1つの好適な実施形態によれば、請求項1または関連する従属クレームによるシリンジは請求項7の特徴を有している。
別の実施形態によれば、それらのリブは、少なくとも外側の端部において、少なくとも3mmの高さを有しており、より好適には少なくとも5mmの高さを有している。この実施形態の場合、最後の薬品注入ステップ中に生じるシリンジシリンダ内への床部の内向きの変形はさらに低減される。
【0022】
本発明は、半径方向リブが一定の高さを有している実施形態や、半径方向リブの高さが床部からアウトレットへ向けて増加する実施形態を含む。1つの実施形態によれば、半径方向リブの高さはアウトレットへ向けて減少している。これにより、サンプル液体の受け入れ中および放出中にリブが邪魔になることを回避することができる。別の実施形態によれば、半径方向リブは床部にわたり円周方向に均等に分配されている。
別の実施形態によれば、シリンジシリンダは床部を側方に関してオーバーラップする円筒状の伸長部を有しており、半径方向リブがこの伸長部の内側からその内部に向かって放射状に延びている。これにより、その床部はさらに一層強化されている。
【0023】
本発明のすべての変形態様に当てはまる別の実施形態によれば、アウトレットは、床部からその外側に突出した薬品注入チップに配列されている。半径方向リブは、好適には、薬品注入チップに向けて平らに走っている。
【0024】
別の実施形態によれば、シリンジプランジャは底部に設けられた移動チップを有しており、移動チップは、シリンジプランジャがシリンジシリンダにできる限りに押し込まれたときに、上述の薬品注入チップに係合する。このとき、好適には、移動チップと薬品注入チップとの間に小さなすき間が存在する。このすき間は、シリンジプランジャと取り込まれた液体との間に生じるエアクッションを解消する。
【0025】
別の実施形態によれば、床部は下方に先細になる円錐形を成している。この形状は、半径方向リブの高さがアウトレットへ向けて減少していることと相俟って、液体の受け入れ中および分注中に半径方向リブが邪魔になることを防いでいる。
【0026】
別の実施形態によれば、シリンジプランジャはプランジャヘッドを有していて、プランジャヘッドはプッシュロッドを介して結合部片に接続されている。これにより、本シリンジプランジャの材料節減設計が達成されている。別の実施形態によれば、そのプッシュロッドは長手方向に延びる数個の翼状部片を有している。それらの翼状部片は少ない材料使用量での安定したプッシュロッドの製作を助長する。
【0027】
別の実施形態によれば、上述の保持するための手段は、1つの部片としてシリンジシリンダに接続されたフランジ、および/またはフランジを有するシリンジシリンダに接続されたアダプタ、および/またはシリンジシリンダをアダプタに接続するための手段である。上述のアダプタは、好適には、差し込み継ぎ手またはネジ接続によってシリンジシリンダに接続されている。
【0028】
別の実施形態によれば、プランジャシールは、シリンジプランジャの周辺に設けられたシーリングリップである。別の実施形態によれば、シーリングリップは、シリンジプランジャの周辺に向けて急角度で配向されたカラーである。別の実施形態によれば、シーリングリップは床部へ向けて指向されている。
【0029】
本発明によるシリンジは、好適には、10ml、12.5ml、25mlおよび50mlの充填体積で製造される。最後の薬品注入ステップでの薬品注入誤差は、特に、上述の特定された充填体積を有する従来のシリンジが担うこととなる。
【0030】
1つの実施形態によれば、本シリンジシリンダおよび/または本シリンジプランジャは、それぞれ、単一のプラスチック部片から成っている。
本出願において、「頂部に」または「底部に」という指定表現は、シリンジがアウトレットを底部にし、結合部片を頂部にした状態で垂直に保持される薬品注入中におけるシリンジの好適な配列を表す。
次に、添付図面を用いて本発明を一層詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
それらの添付図面は以下のことを示している:
【図1】下方および側方から斜めに見た透視図で表された従来のシリンジ。
【図2】縦方向の断面図で表された、図1の従来のシリンジ。
【図3】シリンジプランジャが挿入されていない場合(破線)およびシリンジプランジャが完全に挿入された場合(実線)における、200倍に拡大された状態での、図1のシリンジシリンダの底部区域であって、床部の変形の程度がレジェンドどおりに灰色の色調で示されている。
【図4】下方および側方から斜めに見た透視図で表された、プランジャのシーリングリップ用の止め手段としてのシリンジシリンダの内側ステップを有する、本発明によるシリンジ。
【図5】縦方向の断面図で表された、図4の本発明によるシリンジ。
【図6】下方および側方から斜めに見た透視図で表された、シリンジシリンダの周辺において軸方向に延びるリブを伴った、プランジャのシーリングリップ用の止め手段としてのシリンジシリンダの内側ステップを有する、本発明によるシリンジ。
【図7】縦方向の断面図で表された、図6の本発明によるシリンジ。
【図8】シリンジプランジャが挿入されていない場合(破線)およびシリンジプランジャが完全に挿入された場合(実線)における、図6のシリンジのシリンジシリンダの底部区域であって、床部の変形の程度がレジェンドどおりに灰色の色調で示されている。
【図9】下方および側方から斜めに見た透視図で表された、床部において半径方向に延びるリブを伴った、本発明によるシリンジ。
【図10】縦方向の断面図で表された、図9の本発明によるシリンジ。
【図11】下方および側方から斜めに見た透視図で表された、シリンジプランジャのシーリングリップ用の止め手段としてのシリンジシリンダの内側ステップと、シリンジシリンダの周辺において軸方向に延びるリブと、軸方向に延びるリブに継続的にシリンジシリンダの床部においてアウトレットまで半径方向に延びるリブとを有する、本発明によるシリンジ。
【図12】縦方向の断面図で表された、図11の本発明によるシリンジ。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下の説明において、異なる例証的実施形態における対応する部材には相互に点で分離された数個の参照数字が与えられていて、その点に先行する数字は一致しており、その点に続く数字は個々の例証的実施形態を指し示している。要約すると、異なる例証的実施形態における対応する部材は、一致番号を伴って、単独でも標識化されている。
【0033】
図1および2によれば、従来のシリンジ1.1はシリンジシリンダ2.1を有しており、そのシリンダは、底部に、下方に先細になる円錐形の床部3.1を有している。床部3.1の最も深いポイントには、下方に突出し、下向きに円錐形を成して先細になる薬品注入チップ4.1が存在している。薬品注入チップ4.1は液体用のアウトレット5.1を有している。
【0034】
シリンジシリンダ2.1は、上方のエッジ6.1に、外側に突出したフランジ7.1を有している。さらに、3つの突起8.1が、上方のエッジ6.1から、フランジ7.1よりもさらに一層外側へ突出している。これらの突起8.1はシリンジシリンダの周辺にわたって均等に分配されている。また、これらの突起8.1は、シリンジシリンダ2.1を薬品注入装置(図示せず)中に保持するためのアダプタ(図示せず)との差し込み継ぎ手を形成している。
【0035】
上方のエッジ6.1は開口9.1を取り囲んでおり、その開口はシリンジプランジャを挿入する役割を果たす。開口9.1に隣接して、シリンジシリンダはその内側に短い挿入用のスロープ10.1を有している。シリンジプランジャ用の走行領域11.1がそれにつながっていて、床部3.1まで延びている。
【0036】
シリンジプランジャ12.1がシリンジシリンダ2.1内に挿入される。シリンジプランジャ12.1は、その底部に、主として円錐形のプランジャヘッド13.1を有している。プランジャヘッド13.1は、それの外側周辺に、V字形の断面形状を有するシーリングリップ14.1を備えている。シーリングリップ14.1は、それの外側の端部を辺縁的にプランジャ走行領域11.1の内側にした状態で、この走行領域11.1に係止する。シーリングリップ14.1は、そのV字形断面を床部3.1へ向けて開いている。
【0037】
その頂部において、プランジャヘッド13.1はプッシュロッド15.1を担持し、そのプッシュロッドはほとんどの部分が4つの薄板状の翼状部片16.1で形成されており、それらの翼状部片は水平断面において横方向に相互に整列している。翼状部片16.1には、その頂部に、円形のディスク17.1が着座している。その上には、軸方向において互いに背後に配列された一連の円形ディスク様突起19.1を有する結合部片18.1が配置されている。結合部片18.1は、薬品注入装置(図示せず)のプランジャレシーバ内へ挿入可能であり、適切な保持手段によりその内部で保持される。
【0038】
さらに、プランジャヘッド13.1は下方に突出し、下方に円錐形を成して先細になった移動チップ20.1を有している。シリンジプランジャ12.1がシリンジシリンダ2.1内へ完全に押し込まれたときに、プランジャヘッドが床部3.1に着座することがないように、かつ、移動チップ20.1が薬品注入チップ4.1に着座することがないように、プランジャヘッド13.1の円錐形の度合いは床部3.1の円錐度に合わせて調節され、移動チップ20.1の円錐形の度合いは薬品注入チップ4.1の円錐度に合わせて調節される。
【0039】
シリンジシリンダ2.1およびシリンジプランジャ12.1は、それぞれ、プラスチックから単一の部片として射出成形され、その際、例えばシリンジシリンダ2.1はポリプロピレンから射出成形され、シリンジプランジャ12.1はポリエチレンから射出成形される。
【0040】
本出願人は、シリンジプランジャ12.1をシリンジシリンダ2.1内へ挿入する際、シリンジシリンダ2.1がシーリングリップ14.1上で半径方向に拡張することを見出した。最後の薬品注入ステップ中に、シーリングリップ14.1を伴ったシリンジプランジャが床部3.1に着座するときには、これは、シリンジの床部3.1がシリンジシリンダ2.1内へ内向きに僅かに変形する状態を引き起こす。
【0041】
この様子が図3に示されている。図3に示されているシリンジシリンダの変形はFEM計算(Finite Element(有限要素)法による計算)に基づいている。これらの計算では、軸方向における床部の最初の位置を基準とした床部の変位のみが観測された。
【0042】
図3は、シリンジプランジャ12.1が挿入されていないときの、変形していない状態のシリンジシリンダ2.1を破線で示している。さらに、シリンジプランジャ12.1が完全に押し込まれた状況におけるシリンジシリンダ2.1が実線で示されている。シリンジの床部3.1はシリンジシリンダ2.1の内側に向かって曲がっているのがこの図から容易に分かる。
図3は、異なる灰色の色調により、床部3.1の変形の程度を示している。
【0043】
図4および5における本発明によるシリンジ1.2は、シリンジシリンダ2.2が、床部3.2からある距離を隔てた位置に、その内方周辺から延びる狭い肩部21.1を有している点において、上で説明されているシリンジとは異なっている。肩部21.1は、下方に円錐状を成し先細になっている。シリンジ1.2のプランジャ走行領域11.2は、肩部21.1の上側に位置付けられる。シリンジシリンダ2.2は、肩部21.1の下側で低減された直径を有する円筒状の底部端部領域22.1を有している。
【0044】
シリンジプランジャ12.2は、円錐形のプランジャヘッド13.2が上側のエッジから突出した円筒状区域23.1を伴って低減された直径を有している点において、上で説明されているシリンジプランジャ12.1とは異なっている。円筒状区域23.1の上方のエッジはV字形のシーリングリップ14.2に接続されており、このリップの形状および寸法はシーリングリップ14.1の場合と同じである。
【0045】
図6および7に示されている設計によれば、シリンジ1.3は、シリンジシリンダ2.3が低減された直径を有する底部端部領域22.2の下方外側に軸方向に延びるリブ24.1を有している点において際立っている。軸方向リブ24.1は、内側ステップ21.2の外側からほとんど床部3.3まで延びている。それらのリブの高さは、リブがシリンジシリンダ2.3のケーシングを超えて突出しないように選択される。おおよそ10個乃至30個の軸方向リブ24.1がシリンジシリンダ2.3の周辺にわたって均等に分配される。
【0046】
シリンジ1.2または1.3のそれぞれ場合では、シリンジプランジャ12.2または12.3のそれぞれがそれぞれシリンジシリンダ2.2または2.3のそれぞれの中に完全に押し込まれたときには、シーリングリップ14.2または14.3のそれぞれは、内側ステップ21.1またはステップ21.2のそれぞれに着座し、床部3.2または3.3のそれぞれへ向けてのシリンジプランジャ12.2または12.3のそれぞれの更なる移動を防止する。プランジャヘッド13.2または13.3のそれぞれは小さなすき間分だけ床部3.2または3.3のそれぞれから距離を隔てており、また、移動チップ20.2または20.3のそれぞれは小さなすき間分だけ薬品注入チップ4.2または4.3のそれぞれから距離を隔てている。従って、シーリングリップ14.2または14.3のそれぞれにより引き起こされる半径方向の変形は、床部3.2または3.3のそれぞれに影響を及ぼさない。シリンジ1.3の場合には、軸方向リブ24.1もシリンジシリンダ2.3の形状を安定化させる一因となっている。
【0047】
図8は、図6および7からのシリンジ1.3のシリンジシリンダ2.3の軸方向変形に関する更なるFEM計算の結果を示している。変形していないシリンジシリンダ2.3が同様に破線で示されている。止め手段まで前方へ押し込まれたシリンジプランジャ12.3により変形されたシリンジシリンダは実線で示されている。このスケールは図3の場合と同じである。シリンジの床部3.3の変形は極めて小さい。これらの灰色の色調は、床部3.3の外側の領域が中央の領域よりも幾分強く変形していることを示している。
【0048】
図9および10は、本発明による別のシリンジ1.4を示している。このシリンジは、シリンジシリンダ2.4のケーシングが床部3.4の上に僅かに突出した伸展部25.1を有しているという点においてのみ、シリンジ1.1とは異なっている。伸展部25.1が存在する領域では、シリンジシリンダ2.4の壁厚が走行領域11.4での場合よりも大きくなっている。
【0049】
さらに、シリンジシリンダ2.4は、床部の底部側に複数(例えば10個乃至30個)の半径方向に延びるリブ26.1を有している。これらの半径方向リブ26.1は最も高い部位が伸展部25.1に隣接している。この高さは少なくとも3mmである。外側の周辺から始まって、リブ26.1の高さは薬品注入チップ4.4まで減少している。
【0050】
これらの半径方向リブ26.1は床部3.4にわたって均等に分配されている。
半径方向リブ26.1は床部3.4の安定化をもたらし、これは、シーリングリップ14.4が床部3.4の内部に着座するときに生じる床部3.4の変形を大幅に低減する。伸展部25.1も床部3.4の変形を低減させる一因となっている。
【0051】
図11および12は本発明による別のシリンジ1.5を示しており、そこでは、シリンジシリンダ2.5は内側ステップ21.3を有していて、シリンジプランジャ12.5はシリンジプランジャ12.2と同様に設計されている。さらに、シリンジシリンダ2.5はその外部に(おおよそ10個乃至30個の)軸方向リブ24.2を有しており、また、床部3.5はその外部に半径方向リブ26.2を有している。軸方向リブ24.2は床部3.5まで延びていて、そこで半径方向リブ26.2にクロスオーバしている。床部3.5の外側周辺では、それらの半径方向リブはシリンジ1.4の場合よりも明らかに高くなっている。
【0052】
シリンジ1.5の場合、床部3.5から離れた場所でのプランジャシール14.5の変位によってと、軸方向リブ24.2および半径方向リブ26.2による床部3.5の安定化によって、床部3.5の変形が低減され、それに付随する薬品注入誤差が回避される。
【技術分野】
【0001】
本発明は薬品注入装置と共に使用するためのシリンジシリンダおよびシリンジプランジャを備えたシリンジに関し、薬品注入装置はシリンジプランジャ用のレシーバと、シリンジプランジャ用の軸方向に変位可能なプランジャレシーバを有している。
【背景技術】
【0002】
ピペットは、液体を計量し且つ移送するための薬品注入装置である。それらのピペットは、シリンジ中に液体を引き込み、その液体をシリンジから増分的に分注するために、シリンジと共に使用される反復ピペットまたはマルチペットとして設計されていることが多い。反復ピペットは特許文献1および特許文献2から公知である。この場合、シリンジレシーバはピペットハウジングに設けられたU字形の溝であって、側方のハウジング開口を通じて前述のU字型の溝にシリンジフランジを挿入することができる。そのレシーバ内において、シリンジフランジは加圧スプリングにより分注用開口の方向に負荷が加えられている。シリンジプランジャは円筒状の作動区域を有しており、締め付け装置によりその作動区域を収容体内に確保することができる。
【0003】
プランジャ押し戻し装置は、側方のハウジングスリットから突出した収容体のレバーとして設計されている。シリンジフランジのレバーを外す方向に移動させることにより、シリンジからプランジャを引き出すことができる。プランジャ先進装置はシャフトラチェット装置であり、そこではシャフトは収容体に接続されており、ラチェットは前後に動かすことができる駆動レバーにスイベル据え付けされている。駆動レバーをシリンジフランジへ向けて旋回させると、ラチェットは適所でロックされ、シャフトおよび接続されたプランジャを同じ方向に連れ立って移動する。反対の方向に旋回させると、ラチェットが鋸歯状の目立て部から飛び出し、プランジャの位置は変化しない。増分設定装置は回転ノブに結合された舌状部を有しており、その舌状部は回転ノブの位置に依存して多かれ少なかれ前記目立て部をカバーしている。回転ノブを設定することによりラチェット動作の区域を調節することができ、その区域では、ラチェットがシャフトに係合し、プランジャを連れ立って移動する。従って、各薬品注入ステップにおいてシリンジから分注される液体の体積を回転ノブにより調節することができる。
【0004】
シリンジは、若干の遊びを伴ってシリンジ用のレシーバに着座している。その上、プッシャ装置も遊びを有している。その結果として、プランジャは、一定の増分設定において引き出された後、その後のステップでの場合とは異なる距離を動かされる。従って、初回のステップで放出される液体の量は、それ以降の各ステップでの液体放出量とはかなり異なっている。それ故、正確な薬品注入を果たすため、実際には、初回のステップで放出された液体体積は廃棄される。これにより、サンプル液体が浪費されることとなる。
特許文献3および特許文献4はさらに開発された反復ピペットについて開述しており、その反復ピペットはサンプル液体の浪費を低減するための一定ステップ装置を有していて、その一定ステップ装置は、更なるその後のステップに対する設定エレメントの設定状態にかかわらず、一定の値に向けてその放出ステップの程度の大きさを決定する。
【0005】
特許文献5および特許文献6は、容易に軸方向に挿入可能なシリンジまたは個々に取り外し可能なピペットを用いる手動式の作動に一層適したピペットシステムを提示している。このピペットシステムは締結区域およびシリンジプランジャを備えたシリンジならびにピペットを有しており、またピペットハウジング内には締結区域用のレシーバおよびシリンジプランジャ用のプランジャレシーバまたは個々にシリンジプランジャに接続されたプランジャロッドを伴ったレシーバ体を有している。さらに、それらのレシーバ内において締結区域およびシリンジプランジャを可逆的にまたは個々に解放可能に確保するための締結装置、ならびにピペットハウジング内において前記レシーバ体を調節するためのプランジャ設定装置が存在している。締結区域およびシリンジプランジャは、それらのレシーバに設けられた軸方向の開口を通じて、それらの締結位置へ軸方向に押し込むことが可能である。
【0006】
前記締結装置は、締結区域およびシリンジプランジャを締結位置に固定するための、半径方向に進めることが可能な把持装置を有している。その把持装置は、ピペットハウジングにスイベル据え付けされたシリンジ把持レバーおよびレシーバ体にスイベル据え付けされたプランジャ把持レバーを有している。シリンジ把持レバーおよびプランジャ把持レバーは把持アームと作動アームとを伴った2つのアームを用いて設計されており、そこでは、シリンジ把持レバーはそれらの作動アームの内側に設けられた接触ポイントを有していて、その接触ポイントは、それらの作動アームを作動させることによりプランジャ把持レバーの作動アームに対して外側で旋回可能であり、これによりプランジャ把持レバーを作動させる。
【0007】
これにより、シリンジおよびピペットは単なる軸方向の相対運動を通じて相互に接続することが可能であり、それらの作動アームの作動を通じて互いに分離可能であることが達成されている。1つの実施形態によれば、締結区域はシリンジフランジであり、また別の実施形態によれば、そのシリンジプランジャは把持装置を通じて後部で係合するためのプランジャカラーを有している。
【0008】
特許文献5によるピペットの1つの実施形態では、シリンジがたった1つのシングルアクチュエータの作動を通じてピペットから解放可能であるが、それは特許文献7および特許文献8から公知である。
【0009】
Eppendorf AGにより製作されたこの薬品注入システムの商業的実施形態であるMultipette(登録商標)(plus/stream/Xstream)はシリンジCombitips(登録商標)(plus)を含んでおり、そのシリンジは、内部に設けられたプランジャ走行領域を伴ったシリンダおよびそのシリンダの上方の端部に設けられたシリンジフランジを有している。これらのシリンジは種々の異なる充填体積(0.1ml、0.2ml、0.5ml、1ml、2.5ml、5mlおよび10ml)のものが提供されている。さらに、このシステムは、体積が25mlおよび50mlのシリンジCombitips(登録商標)(plus)を含んでいる。これらのシリンジは大きな断面積を有しており、またアダプタを介して反復ピペットに接続可能である。アダプタは、差し込み継ぎ手を介して、大きな直径のシリンジシリンダの上縁に接続される。比較的小さなシリンジのシリンジフランジによれば、アダプタは、頂部に、フランジを伴った比較的小さな直径のスリーブを有している。アダプタはそのシリンジフランジを介して反復ピペットに接続される。
公知の薬品注入システムは、小さな測定誤差での正確な薬品注入を可能にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】ドイツ特許第2926691C2号
【特許文献2】米国特許第4406170号
【特許文献3】欧州特許第0679439B1号
【特許文献4】米国特許第5591408号
【特許文献5】ドイツ特許第4341229C2号
【特許文献6】米国特許第5620660号
【特許文献7】ドイツ特許第102005023203号
【特許文献8】米国特許第2006263261A1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
このような観点に基づき、本発明の目的は、さらに一層正確な薬品注入を可能にする、薬品注入装置と共に使用するためのシリンジを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述の目的は請求項1の特徴を有するシリンジにより解決される。
シリンジシリンダ用のレシーバとシリンジプランジャ用の軸方向に変位可能なプランジャレシーバを有する薬品注入装置と共に使用するための、本発明によるシリンジは、
シリンジシリンダであって、該シリンジシリンダが、
底部に設けられたアウトレットを伴った床部と、
内部に設けられた円筒状のプランジャ走行領域と
を有し、
頂部に設けられた前記レシーバ内に保持するための手段
を有する、シリンジシリンダと、
シリンジプランジャであって、該シリンジプランジャが、
周辺でプランジャ走行領域をシーリングするための辺縁プランジャシールと、
頂部に設けられたプランジャレシーバ内へ挿入するための結合部片と
を有する、シリンジプランジャと、
前記シリンジシリンダと前記シリンジプランジャの間での止め手段であって、前記止め手段が、プランジャシールを伴ったシリンジプランジャが前記床部から特定の距離にまでしか接近することができないような仕方で、床部へ向けてのシリンジプランジャの変位を制限している、止め手段とを
を備える。
【0013】
本発明は、サンプル液体の増分的放出の場合においては、最後の薬品注入ステップでは、従前の放出ステップでの場合よりも幾分多い液体量が放出されるという、本出願人による驚くべき認識に基づいている。さらに、本出願人による総合的な調査は、この増大した量の液体放出が、最後の薬品注入ステップでは、シリンジシリンダの床部が非常に小さな量だけシリンジシリンダの内部へ向けて変形されるという事実によるものである、という驚くべき結果を導いた。本出願人は、この結果が、床部に接近するシリンジプランジャのシーリングリップによりシリンジシリンダが半径方向に広がったためであることを見出した。その結果として、シリンジプランジャがシフトすることによる液体の一般的な移動が、床部がシフトしたことによる液体の非意図的な付加的移動に加えて生じる。本発明によるシリンジは、本シリンジが止め手段を有していることでこの影響を克服しており、前述の止め手段は、プランジャシールを伴ったシリンジプランジャが床部から特定の距離にまでしか接近することができないような仕方で、床部へ向けてのシリンジプランジャの変位を制限する。その距離は、プランジャシールが接近する状況において増大した量の液体の放出をもたらす床部の変形を低減または回避することができるように選択される。その距離は好適には1mm以上である。これにより、最後の放出ステップの薬品注入精度が改善され、従前の薬品注入ステップの薬品注入精度との一層良好なマッチングが得られる。
【0014】
1つの実施形態によれば、プランジャシールの下方のシリンジプランジャは底部プランジャ区域を有しており、この区域が、プランジャシールが床部から特定の距離にまで接近した時点で、シリンジシリンダの底部端部領域に係合する。上述の底部プランジャ区域はプランジャシールの下方のシリンジシリンダの体積をほとんど満たしている。これにより、薬品注入精度を低下させる可能性がある、シリンジプランジャとシリンジ内に取り込まれた液体との間に生じ得るエアポケットをほとんど回避することができる。この下方プランジャ区域は、好適には、エアポケットが可能な限り滅多に生じず、但し、残りの放出中においては創出されたすき間内の流動抵抗が許容範囲内に留まる(そこでは、残りの放出で使用されることとなる力が主観的な視点からして大き過ぎることがない)ような寸法に成される。このため、下方プランジャ区域とシリンジシリンダの下方端部領域との間のすき間の程度は、好適には、十分の数ミリメートルである。
【0015】
シリンジシリンダとシリンジプランジャとの間での止め手段は異なる仕方で設計することができる。1つの実施形態によれば、止め手段はシリンジシリンダの辺縁内側ステップを有しており、この内側ステップは、床部からある距離を隔てて配列されていて、床部へ向けたシリンジプランジャの変位を制限する。これにより、シリンジプランジャの変位は、シーリングリップがシリンジシリンダの内側ステップに係止する仕方で好適に制限される。シリンジプランジャが内側ステップに係止するときには、プランジャシールは、プランジャシールの領域におけるプランジャシールの領域におけるシリンジシリンダの半径方向の広がりが(従来のシリンジの場合と比べて)その内部へ向けた床部の変形(この変形は、存在する場合、最後の薬品注入ステップの薬品注入精度を著しく損なう)を全く生じさせないか、または大幅に低減された変形しかもたらさないような、床部からのある距離を隔てて位置付けられる。
【0016】
内側ステップを伴ったシリンジシリンダは、その内側ステップの下側に、好適には低減された内径の下方端部領域を有している。これは、射出成形を通じてシリンジシリンダを製造することによるものである。シリンジプランジャは、好適には、シリンジプランジャができる限りシリンジシリンダ内へ挿入されたときに、低減された直径の下方プランジャ区域でこの下方端部領域と係合する。
【0017】
1つの実施形態によれば、シリンジシリンダは、少なくとも床部に隣接して設けられ、その床部の外側においてそれの周辺周りで軸方向に延びるリブを有している。軸方向リブは、シリンジプランジャの挿入中におけるシリンジシリンダの半径方向の拡張を妨げ、シリンジシリンダ内への床部の内向きの変形を妨げる。これにより、薬品注入誤差をさらに低減させることができる。別の実施形態によれば、低減された直径の下方端部領域におけるシリンジシリンダは、その外側で軸方向に延びるリブを有している。軸方向リブは、好適には、それらのリブがプランジャ走行領域におけるシリンジシリンダのケーシングの意図された伸長の範囲内に収まるようなサイズに成されるべきである。従って、それらのリブは、その外側に向けて、プランジャ領域におけるシリンジシリンダのケーシングを越えて突出することはない。更なる1つの実施形態によれば、それらの軸方向リブは、シリンジシリンダの周辺にわたって均等に分配されている。
【0018】
さらに、上述の目的は、請求項7の特徴を備えたシリンジにより解決される。
シリンジシリンダ用のレシーバとシリンジプランジャ用の軸方向に変位可能なプランジャレシーバを有する薬品注入装置と共に使用するための、本発明によるシリンジは、
シリンジシリンダであって、該シリンジシリンダが、
底部に設けられたアウトレットを伴った床部と、
前記床部の外側に設けられた、少なくとも外側の端部で少なくとも1mmの高さを有する、半径方向に延びるリブと、
内部に設けられた円筒状のプランジャ走行領域と
を有し、
頂部に設けられた前記レシーバ内に保持するための手段
を有する、シリンジシリンダと、
シリンジプランジャであって、該シリンジプランジャが、
周辺でプランジャ走行領域をシーリングするための辺縁プランジャシールと、
頂部に設けられたプランジャレシーバ内へ挿入するための結合部片と
を有する、シリンジプランジャと
を備えている。
【0019】
本発明によるシリンジの場合、シリンジシリンダ内への床部の変形は、最後の薬品注入ステップ中、床部が半径方向に延びるリブによって補強されていることにより妨げられる。これにより、シリンジプランジャがシフトすることによる液体の移動に加えた、床部の変形による液体の移動が回避される。このシリンジでは、最後の薬品注入ステップの薬品注入精度も改善される。
【0020】
床部に設けられた8個の半径方向に延びるリブを有する、例えば10ml用のシリンジ、ritips(登録商標)professionalが市場から公知である。しかし、これらの半径方向に延びるリブは床部のアウトレットにおいて1ミリメートル未満の最大高さを有しており、それらの高さは半径方向外向きに減少していて、床部の外側周辺ではその値がゼロになっている。これらのリブは明らかに審美的理由で適用されたものである。それらのサイズおよびそれらの形状的進行形態のため、これらの半径方向に延びるリブは、最後の放出ステップ中に生じるシリンジシリンダ内への床部の内向きの変形を低減させるのに適していない。
【0021】
1つの好適な実施形態によれば、請求項1または関連する従属クレームによるシリンジは請求項7の特徴を有している。
別の実施形態によれば、それらのリブは、少なくとも外側の端部において、少なくとも3mmの高さを有しており、より好適には少なくとも5mmの高さを有している。この実施形態の場合、最後の薬品注入ステップ中に生じるシリンジシリンダ内への床部の内向きの変形はさらに低減される。
【0022】
本発明は、半径方向リブが一定の高さを有している実施形態や、半径方向リブの高さが床部からアウトレットへ向けて増加する実施形態を含む。1つの実施形態によれば、半径方向リブの高さはアウトレットへ向けて減少している。これにより、サンプル液体の受け入れ中および放出中にリブが邪魔になることを回避することができる。別の実施形態によれば、半径方向リブは床部にわたり円周方向に均等に分配されている。
別の実施形態によれば、シリンジシリンダは床部を側方に関してオーバーラップする円筒状の伸長部を有しており、半径方向リブがこの伸長部の内側からその内部に向かって放射状に延びている。これにより、その床部はさらに一層強化されている。
【0023】
本発明のすべての変形態様に当てはまる別の実施形態によれば、アウトレットは、床部からその外側に突出した薬品注入チップに配列されている。半径方向リブは、好適には、薬品注入チップに向けて平らに走っている。
【0024】
別の実施形態によれば、シリンジプランジャは底部に設けられた移動チップを有しており、移動チップは、シリンジプランジャがシリンジシリンダにできる限りに押し込まれたときに、上述の薬品注入チップに係合する。このとき、好適には、移動チップと薬品注入チップとの間に小さなすき間が存在する。このすき間は、シリンジプランジャと取り込まれた液体との間に生じるエアクッションを解消する。
【0025】
別の実施形態によれば、床部は下方に先細になる円錐形を成している。この形状は、半径方向リブの高さがアウトレットへ向けて減少していることと相俟って、液体の受け入れ中および分注中に半径方向リブが邪魔になることを防いでいる。
【0026】
別の実施形態によれば、シリンジプランジャはプランジャヘッドを有していて、プランジャヘッドはプッシュロッドを介して結合部片に接続されている。これにより、本シリンジプランジャの材料節減設計が達成されている。別の実施形態によれば、そのプッシュロッドは長手方向に延びる数個の翼状部片を有している。それらの翼状部片は少ない材料使用量での安定したプッシュロッドの製作を助長する。
【0027】
別の実施形態によれば、上述の保持するための手段は、1つの部片としてシリンジシリンダに接続されたフランジ、および/またはフランジを有するシリンジシリンダに接続されたアダプタ、および/またはシリンジシリンダをアダプタに接続するための手段である。上述のアダプタは、好適には、差し込み継ぎ手またはネジ接続によってシリンジシリンダに接続されている。
【0028】
別の実施形態によれば、プランジャシールは、シリンジプランジャの周辺に設けられたシーリングリップである。別の実施形態によれば、シーリングリップは、シリンジプランジャの周辺に向けて急角度で配向されたカラーである。別の実施形態によれば、シーリングリップは床部へ向けて指向されている。
【0029】
本発明によるシリンジは、好適には、10ml、12.5ml、25mlおよび50mlの充填体積で製造される。最後の薬品注入ステップでの薬品注入誤差は、特に、上述の特定された充填体積を有する従来のシリンジが担うこととなる。
【0030】
1つの実施形態によれば、本シリンジシリンダおよび/または本シリンジプランジャは、それぞれ、単一のプラスチック部片から成っている。
本出願において、「頂部に」または「底部に」という指定表現は、シリンジがアウトレットを底部にし、結合部片を頂部にした状態で垂直に保持される薬品注入中におけるシリンジの好適な配列を表す。
次に、添付図面を用いて本発明を一層詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
それらの添付図面は以下のことを示している:
【図1】下方および側方から斜めに見た透視図で表された従来のシリンジ。
【図2】縦方向の断面図で表された、図1の従来のシリンジ。
【図3】シリンジプランジャが挿入されていない場合(破線)およびシリンジプランジャが完全に挿入された場合(実線)における、200倍に拡大された状態での、図1のシリンジシリンダの底部区域であって、床部の変形の程度がレジェンドどおりに灰色の色調で示されている。
【図4】下方および側方から斜めに見た透視図で表された、プランジャのシーリングリップ用の止め手段としてのシリンジシリンダの内側ステップを有する、本発明によるシリンジ。
【図5】縦方向の断面図で表された、図4の本発明によるシリンジ。
【図6】下方および側方から斜めに見た透視図で表された、シリンジシリンダの周辺において軸方向に延びるリブを伴った、プランジャのシーリングリップ用の止め手段としてのシリンジシリンダの内側ステップを有する、本発明によるシリンジ。
【図7】縦方向の断面図で表された、図6の本発明によるシリンジ。
【図8】シリンジプランジャが挿入されていない場合(破線)およびシリンジプランジャが完全に挿入された場合(実線)における、図6のシリンジのシリンジシリンダの底部区域であって、床部の変形の程度がレジェンドどおりに灰色の色調で示されている。
【図9】下方および側方から斜めに見た透視図で表された、床部において半径方向に延びるリブを伴った、本発明によるシリンジ。
【図10】縦方向の断面図で表された、図9の本発明によるシリンジ。
【図11】下方および側方から斜めに見た透視図で表された、シリンジプランジャのシーリングリップ用の止め手段としてのシリンジシリンダの内側ステップと、シリンジシリンダの周辺において軸方向に延びるリブと、軸方向に延びるリブに継続的にシリンジシリンダの床部においてアウトレットまで半径方向に延びるリブとを有する、本発明によるシリンジ。
【図12】縦方向の断面図で表された、図11の本発明によるシリンジ。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下の説明において、異なる例証的実施形態における対応する部材には相互に点で分離された数個の参照数字が与えられていて、その点に先行する数字は一致しており、その点に続く数字は個々の例証的実施形態を指し示している。要約すると、異なる例証的実施形態における対応する部材は、一致番号を伴って、単独でも標識化されている。
【0033】
図1および2によれば、従来のシリンジ1.1はシリンジシリンダ2.1を有しており、そのシリンダは、底部に、下方に先細になる円錐形の床部3.1を有している。床部3.1の最も深いポイントには、下方に突出し、下向きに円錐形を成して先細になる薬品注入チップ4.1が存在している。薬品注入チップ4.1は液体用のアウトレット5.1を有している。
【0034】
シリンジシリンダ2.1は、上方のエッジ6.1に、外側に突出したフランジ7.1を有している。さらに、3つの突起8.1が、上方のエッジ6.1から、フランジ7.1よりもさらに一層外側へ突出している。これらの突起8.1はシリンジシリンダの周辺にわたって均等に分配されている。また、これらの突起8.1は、シリンジシリンダ2.1を薬品注入装置(図示せず)中に保持するためのアダプタ(図示せず)との差し込み継ぎ手を形成している。
【0035】
上方のエッジ6.1は開口9.1を取り囲んでおり、その開口はシリンジプランジャを挿入する役割を果たす。開口9.1に隣接して、シリンジシリンダはその内側に短い挿入用のスロープ10.1を有している。シリンジプランジャ用の走行領域11.1がそれにつながっていて、床部3.1まで延びている。
【0036】
シリンジプランジャ12.1がシリンジシリンダ2.1内に挿入される。シリンジプランジャ12.1は、その底部に、主として円錐形のプランジャヘッド13.1を有している。プランジャヘッド13.1は、それの外側周辺に、V字形の断面形状を有するシーリングリップ14.1を備えている。シーリングリップ14.1は、それの外側の端部を辺縁的にプランジャ走行領域11.1の内側にした状態で、この走行領域11.1に係止する。シーリングリップ14.1は、そのV字形断面を床部3.1へ向けて開いている。
【0037】
その頂部において、プランジャヘッド13.1はプッシュロッド15.1を担持し、そのプッシュロッドはほとんどの部分が4つの薄板状の翼状部片16.1で形成されており、それらの翼状部片は水平断面において横方向に相互に整列している。翼状部片16.1には、その頂部に、円形のディスク17.1が着座している。その上には、軸方向において互いに背後に配列された一連の円形ディスク様突起19.1を有する結合部片18.1が配置されている。結合部片18.1は、薬品注入装置(図示せず)のプランジャレシーバ内へ挿入可能であり、適切な保持手段によりその内部で保持される。
【0038】
さらに、プランジャヘッド13.1は下方に突出し、下方に円錐形を成して先細になった移動チップ20.1を有している。シリンジプランジャ12.1がシリンジシリンダ2.1内へ完全に押し込まれたときに、プランジャヘッドが床部3.1に着座することがないように、かつ、移動チップ20.1が薬品注入チップ4.1に着座することがないように、プランジャヘッド13.1の円錐形の度合いは床部3.1の円錐度に合わせて調節され、移動チップ20.1の円錐形の度合いは薬品注入チップ4.1の円錐度に合わせて調節される。
【0039】
シリンジシリンダ2.1およびシリンジプランジャ12.1は、それぞれ、プラスチックから単一の部片として射出成形され、その際、例えばシリンジシリンダ2.1はポリプロピレンから射出成形され、シリンジプランジャ12.1はポリエチレンから射出成形される。
【0040】
本出願人は、シリンジプランジャ12.1をシリンジシリンダ2.1内へ挿入する際、シリンジシリンダ2.1がシーリングリップ14.1上で半径方向に拡張することを見出した。最後の薬品注入ステップ中に、シーリングリップ14.1を伴ったシリンジプランジャが床部3.1に着座するときには、これは、シリンジの床部3.1がシリンジシリンダ2.1内へ内向きに僅かに変形する状態を引き起こす。
【0041】
この様子が図3に示されている。図3に示されているシリンジシリンダの変形はFEM計算(Finite Element(有限要素)法による計算)に基づいている。これらの計算では、軸方向における床部の最初の位置を基準とした床部の変位のみが観測された。
【0042】
図3は、シリンジプランジャ12.1が挿入されていないときの、変形していない状態のシリンジシリンダ2.1を破線で示している。さらに、シリンジプランジャ12.1が完全に押し込まれた状況におけるシリンジシリンダ2.1が実線で示されている。シリンジの床部3.1はシリンジシリンダ2.1の内側に向かって曲がっているのがこの図から容易に分かる。
図3は、異なる灰色の色調により、床部3.1の変形の程度を示している。
【0043】
図4および5における本発明によるシリンジ1.2は、シリンジシリンダ2.2が、床部3.2からある距離を隔てた位置に、その内方周辺から延びる狭い肩部21.1を有している点において、上で説明されているシリンジとは異なっている。肩部21.1は、下方に円錐状を成し先細になっている。シリンジ1.2のプランジャ走行領域11.2は、肩部21.1の上側に位置付けられる。シリンジシリンダ2.2は、肩部21.1の下側で低減された直径を有する円筒状の底部端部領域22.1を有している。
【0044】
シリンジプランジャ12.2は、円錐形のプランジャヘッド13.2が上側のエッジから突出した円筒状区域23.1を伴って低減された直径を有している点において、上で説明されているシリンジプランジャ12.1とは異なっている。円筒状区域23.1の上方のエッジはV字形のシーリングリップ14.2に接続されており、このリップの形状および寸法はシーリングリップ14.1の場合と同じである。
【0045】
図6および7に示されている設計によれば、シリンジ1.3は、シリンジシリンダ2.3が低減された直径を有する底部端部領域22.2の下方外側に軸方向に延びるリブ24.1を有している点において際立っている。軸方向リブ24.1は、内側ステップ21.2の外側からほとんど床部3.3まで延びている。それらのリブの高さは、リブがシリンジシリンダ2.3のケーシングを超えて突出しないように選択される。おおよそ10個乃至30個の軸方向リブ24.1がシリンジシリンダ2.3の周辺にわたって均等に分配される。
【0046】
シリンジ1.2または1.3のそれぞれ場合では、シリンジプランジャ12.2または12.3のそれぞれがそれぞれシリンジシリンダ2.2または2.3のそれぞれの中に完全に押し込まれたときには、シーリングリップ14.2または14.3のそれぞれは、内側ステップ21.1またはステップ21.2のそれぞれに着座し、床部3.2または3.3のそれぞれへ向けてのシリンジプランジャ12.2または12.3のそれぞれの更なる移動を防止する。プランジャヘッド13.2または13.3のそれぞれは小さなすき間分だけ床部3.2または3.3のそれぞれから距離を隔てており、また、移動チップ20.2または20.3のそれぞれは小さなすき間分だけ薬品注入チップ4.2または4.3のそれぞれから距離を隔てている。従って、シーリングリップ14.2または14.3のそれぞれにより引き起こされる半径方向の変形は、床部3.2または3.3のそれぞれに影響を及ぼさない。シリンジ1.3の場合には、軸方向リブ24.1もシリンジシリンダ2.3の形状を安定化させる一因となっている。
【0047】
図8は、図6および7からのシリンジ1.3のシリンジシリンダ2.3の軸方向変形に関する更なるFEM計算の結果を示している。変形していないシリンジシリンダ2.3が同様に破線で示されている。止め手段まで前方へ押し込まれたシリンジプランジャ12.3により変形されたシリンジシリンダは実線で示されている。このスケールは図3の場合と同じである。シリンジの床部3.3の変形は極めて小さい。これらの灰色の色調は、床部3.3の外側の領域が中央の領域よりも幾分強く変形していることを示している。
【0048】
図9および10は、本発明による別のシリンジ1.4を示している。このシリンジは、シリンジシリンダ2.4のケーシングが床部3.4の上に僅かに突出した伸展部25.1を有しているという点においてのみ、シリンジ1.1とは異なっている。伸展部25.1が存在する領域では、シリンジシリンダ2.4の壁厚が走行領域11.4での場合よりも大きくなっている。
【0049】
さらに、シリンジシリンダ2.4は、床部の底部側に複数(例えば10個乃至30個)の半径方向に延びるリブ26.1を有している。これらの半径方向リブ26.1は最も高い部位が伸展部25.1に隣接している。この高さは少なくとも3mmである。外側の周辺から始まって、リブ26.1の高さは薬品注入チップ4.4まで減少している。
【0050】
これらの半径方向リブ26.1は床部3.4にわたって均等に分配されている。
半径方向リブ26.1は床部3.4の安定化をもたらし、これは、シーリングリップ14.4が床部3.4の内部に着座するときに生じる床部3.4の変形を大幅に低減する。伸展部25.1も床部3.4の変形を低減させる一因となっている。
【0051】
図11および12は本発明による別のシリンジ1.5を示しており、そこでは、シリンジシリンダ2.5は内側ステップ21.3を有していて、シリンジプランジャ12.5はシリンジプランジャ12.2と同様に設計されている。さらに、シリンジシリンダ2.5はその外部に(おおよそ10個乃至30個の)軸方向リブ24.2を有しており、また、床部3.5はその外部に半径方向リブ26.2を有している。軸方向リブ24.2は床部3.5まで延びていて、そこで半径方向リブ26.2にクロスオーバしている。床部3.5の外側周辺では、それらの半径方向リブはシリンジ1.4の場合よりも明らかに高くなっている。
【0052】
シリンジ1.5の場合、床部3.5から離れた場所でのプランジャシール14.5の変位によってと、軸方向リブ24.2および半径方向リブ26.2による床部3.5の安定化によって、床部3.5の変形が低減され、それに付随する薬品注入誤差が回避される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンジシリンダ用のレシーバと、シリンジプランジャ用の軸方向に変位可能なプランジャレシーバとを有する薬品注入装置と共に使用するためのシリンジにおいて、該シリンジは、
シリンジシリンダ(2)であって、該シリンジシリンダが、
底部に設けられたアウトレット(5)を伴った床部(3)と、
内部に設けられた円筒状のプランジャ走行領域(11)と
を有し、
頂部に設けられた前記レシーバ内に保持するための手段(8)
を有する、シリンジシリンダ(2)と、
シリンジプランジャ(12)であって、該シリンジプランジャが、
周辺で前記プランジャ走行領域(11)をシーリングするための辺縁プランジャシール(14)と、
頂部に設けられた上記プランジャレシーバ内へ挿入するための結合部片(18)と
を有する、シリンジプランジャ(12)と、
前記シリンジシリンダ(2)と前記シリンジプランジャ(12)の間での止め手段(14、21)であって、該止め手段が、前記プランジャシール(14)を伴った前記シリンジプランジャ(12)が前記床部(3)から特定の距離にまでしか接近することができないような仕方で、前記床部(3)へ向けての前記シリンジプランジャ(12)の変位を制限している、止め手段(14、21);
を備える、シリンジ。
【請求項2】
前記プランジャシール(14)の下側で前記プランジャが下方プランジャ区域(12、23)を有し、該下方プランジャ区域は、前記プランジャシール(14)が前記床部(3)から特定の距離にまで接近したときに、前記シリンジシリンダ(2)の底部端部領域に係合する、請求項1記載のシリンジ。
【請求項3】
前記止め手段(14、21)が、前記床部(3)からある距離を隔てて配列され、これにより前記シリンジプランジャ(12)の前記床部(3)へ向けての移動が制限される、前記シリンジシリンダ(2)の辺縁内側ステップ(21)を有しており、前記内側ステップ(21)の下側で前記シリンジシリンダ(2)が低減された内径の底部端部領域(22)を有している、請求項1または2記載のシリンジ。
【請求項4】
前記プランジャシール(14)の下側で前記シリンジプランジャ(12)が低減された直径の底部プランジャ区域(13、23)を有し、該底部プランジャ区域は、前記プランジャシール(14)が前記床部(3)から特定の距離にまで接近したときに、前記シリンジシリンダ(2)の底部端部領域(22)に係合する、請求項3記載のシリンジ。
【請求項5】
前記シリンジシリンダ(12)が、少なくとも前記床部(3)に隣接して、外側で前記シリンジシリンダの周辺に軸方向に延びるリブ(24)を有している、請求項1から4までのいずれか1項記載のシリンジ。
【請求項6】
前記低減された内径の底部端部領域(22)における前記シリンジシリンダ(2)が外側で軸方向に延びるリブ(24)を有している、請求項3および5記載のシリンジ。
【請求項7】
シリンジシリンダ用のレシーバと、シリンジプランジャ用の軸方向に変位可能なプランジャレシーバとを有する薬品注入装置と共に使用するためのシリンジにおいて、該シリンジは、
シリンジシリンダ(2)であって、該シリンジシリンダが、
底部に設けられたアウトレット(5)を伴った床部(3)と、
床部(3)の外側に設けられた、少なくとも外側の端部で少なくとも1mmのリブ高さを有する、半径方向に延びるリブ(26)と、
内部に設けられた円筒状のプランジャ走行領域(11)と
を有し、
頂部に設けられた上記レシーバ内に保持するための手段(8)
を有する、シリンジシリンダと、
シリンジプランジャ(12)であって、該シリンジプランジャが、
周辺で前記プランジャ走行領域(11)をシーリングするための辺縁プランジャシール(14)と、
頂部に設けられた上記プランジャレシーバ内へ挿入するための結合部片(18)と
を有する、シリンジプランジャ(12)と
を備える、シリンジ。
【請求項8】
請求項7の特徴を備えた、請求項1から6までのいずれか1項記載のシリンジ。
【請求項9】
前記半径方向リブ(26)が少なくとも外側の端部で少なくとも3ミリメートルの高さを有している、請求項7または8記載のシリンジ。
【請求項10】
前記半径方向リブ(26)の高さが前記アウトレット(5)に向かって減少している、請求項7から9までのいずれか1項記載のシリンジ。
【請求項11】
前記床部(3)が円筒状または下方に先細になっている円錐形を成している、請求項1から9までのいずれか1項記載のシリンジ。
【請求項12】
前記アウトレット(5)が前記床部(3)から突出した薬品注入チップ(4)に配置されている、請求項1から10までのいずれか1項記載のシリンジ。
【請求項13】
前記シリンジプランジャ(12)が移動チップ(20)を有し、該移動チップは、前記シリンジプランジャ(12)が可能な限り前記シリンジシリンダ(2)内へ押し入れられたときに、前記薬品注入チップ(4)に係合する、請求項11記載のシリンジ。
【請求項14】
前記シリンジプランジャ(12)がプランジャヘッド(13)を有し、該プランジャヘッドはプッシュロッド(15)を介して前記結合部片(18)に接続されている、請求項1から13までのいずれか1項記載のシリンジ。
【請求項15】
前記プッシュロッド(15)が長手方向に延びる複数の翼状部片(16)を含んでいる、請求項14記載のシリンジ。
【請求項16】
前記保持するための手段(8)が、1つの部片として前記シリンジシリンダ(2)に接続されたフランジ、および/またはフランジを有する前記シリンジシリンダ(2)に接続されたアダプタ、および/または前記シリンジシリンダ(2)をアダプタに接続するための手段である、請求項1から15までのいずれか1項記載のシリンジ。
【請求項17】
前記シリンジシリンダ(2)および/または前記シリンジプランジャ(12)が、それぞれ、プラスチックでできた単一の部片として製作される、請求項1から16までのいずれか1項記載のシリンジ。
【請求項1】
シリンジシリンダ用のレシーバと、シリンジプランジャ用の軸方向に変位可能なプランジャレシーバとを有する薬品注入装置と共に使用するためのシリンジにおいて、該シリンジは、
シリンジシリンダ(2)であって、該シリンジシリンダが、
底部に設けられたアウトレット(5)を伴った床部(3)と、
内部に設けられた円筒状のプランジャ走行領域(11)と
を有し、
頂部に設けられた前記レシーバ内に保持するための手段(8)
を有する、シリンジシリンダ(2)と、
シリンジプランジャ(12)であって、該シリンジプランジャが、
周辺で前記プランジャ走行領域(11)をシーリングするための辺縁プランジャシール(14)と、
頂部に設けられた上記プランジャレシーバ内へ挿入するための結合部片(18)と
を有する、シリンジプランジャ(12)と、
前記シリンジシリンダ(2)と前記シリンジプランジャ(12)の間での止め手段(14、21)であって、該止め手段が、前記プランジャシール(14)を伴った前記シリンジプランジャ(12)が前記床部(3)から特定の距離にまでしか接近することができないような仕方で、前記床部(3)へ向けての前記シリンジプランジャ(12)の変位を制限している、止め手段(14、21);
を備える、シリンジ。
【請求項2】
前記プランジャシール(14)の下側で前記プランジャが下方プランジャ区域(12、23)を有し、該下方プランジャ区域は、前記プランジャシール(14)が前記床部(3)から特定の距離にまで接近したときに、前記シリンジシリンダ(2)の底部端部領域に係合する、請求項1記載のシリンジ。
【請求項3】
前記止め手段(14、21)が、前記床部(3)からある距離を隔てて配列され、これにより前記シリンジプランジャ(12)の前記床部(3)へ向けての移動が制限される、前記シリンジシリンダ(2)の辺縁内側ステップ(21)を有しており、前記内側ステップ(21)の下側で前記シリンジシリンダ(2)が低減された内径の底部端部領域(22)を有している、請求項1または2記載のシリンジ。
【請求項4】
前記プランジャシール(14)の下側で前記シリンジプランジャ(12)が低減された直径の底部プランジャ区域(13、23)を有し、該底部プランジャ区域は、前記プランジャシール(14)が前記床部(3)から特定の距離にまで接近したときに、前記シリンジシリンダ(2)の底部端部領域(22)に係合する、請求項3記載のシリンジ。
【請求項5】
前記シリンジシリンダ(12)が、少なくとも前記床部(3)に隣接して、外側で前記シリンジシリンダの周辺に軸方向に延びるリブ(24)を有している、請求項1から4までのいずれか1項記載のシリンジ。
【請求項6】
前記低減された内径の底部端部領域(22)における前記シリンジシリンダ(2)が外側で軸方向に延びるリブ(24)を有している、請求項3および5記載のシリンジ。
【請求項7】
シリンジシリンダ用のレシーバと、シリンジプランジャ用の軸方向に変位可能なプランジャレシーバとを有する薬品注入装置と共に使用するためのシリンジにおいて、該シリンジは、
シリンジシリンダ(2)であって、該シリンジシリンダが、
底部に設けられたアウトレット(5)を伴った床部(3)と、
床部(3)の外側に設けられた、少なくとも外側の端部で少なくとも1mmのリブ高さを有する、半径方向に延びるリブ(26)と、
内部に設けられた円筒状のプランジャ走行領域(11)と
を有し、
頂部に設けられた上記レシーバ内に保持するための手段(8)
を有する、シリンジシリンダと、
シリンジプランジャ(12)であって、該シリンジプランジャが、
周辺で前記プランジャ走行領域(11)をシーリングするための辺縁プランジャシール(14)と、
頂部に設けられた上記プランジャレシーバ内へ挿入するための結合部片(18)と
を有する、シリンジプランジャ(12)と
を備える、シリンジ。
【請求項8】
請求項7の特徴を備えた、請求項1から6までのいずれか1項記載のシリンジ。
【請求項9】
前記半径方向リブ(26)が少なくとも外側の端部で少なくとも3ミリメートルの高さを有している、請求項7または8記載のシリンジ。
【請求項10】
前記半径方向リブ(26)の高さが前記アウトレット(5)に向かって減少している、請求項7から9までのいずれか1項記載のシリンジ。
【請求項11】
前記床部(3)が円筒状または下方に先細になっている円錐形を成している、請求項1から9までのいずれか1項記載のシリンジ。
【請求項12】
前記アウトレット(5)が前記床部(3)から突出した薬品注入チップ(4)に配置されている、請求項1から10までのいずれか1項記載のシリンジ。
【請求項13】
前記シリンジプランジャ(12)が移動チップ(20)を有し、該移動チップは、前記シリンジプランジャ(12)が可能な限り前記シリンジシリンダ(2)内へ押し入れられたときに、前記薬品注入チップ(4)に係合する、請求項11記載のシリンジ。
【請求項14】
前記シリンジプランジャ(12)がプランジャヘッド(13)を有し、該プランジャヘッドはプッシュロッド(15)を介して前記結合部片(18)に接続されている、請求項1から13までのいずれか1項記載のシリンジ。
【請求項15】
前記プッシュロッド(15)が長手方向に延びる複数の翼状部片(16)を含んでいる、請求項14記載のシリンジ。
【請求項16】
前記保持するための手段(8)が、1つの部片として前記シリンジシリンダ(2)に接続されたフランジ、および/またはフランジを有する前記シリンジシリンダ(2)に接続されたアダプタ、および/または前記シリンジシリンダ(2)をアダプタに接続するための手段である、請求項1から15までのいずれか1項記載のシリンジ。
【請求項17】
前記シリンジシリンダ(2)および/または前記シリンジプランジャ(12)が、それぞれ、プラスチックでできた単一の部片として製作される、請求項1から16までのいずれか1項記載のシリンジ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−45396(P2012−45396A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−186359(P2011−186359)
【出願日】平成23年8月29日(2011.8.29)
【出願人】(505404725)エッペンドルフ アーゲー (16)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月29日(2011.8.29)
【出願人】(505404725)エッペンドルフ アーゲー (16)
【Fターム(参考)】
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