説明

薬学的調製物およびそれらの領域的投与のための方法

【課題】骨盤部位、腹膜部位のような腔内へ、または目的の器官への直接的な薬物の領域的送達のための、処方物を開発することを課題とする。
【解決手段】領域的送達は薬物の快適さおよびバイオアベイラビリティーを増加させ、処置されるべき部位における迅速かつ相対的に高い血中レベルを、全身送達後の有効性に必要とされる高レベルによる副作用が実質的にない状態で生じる。上記課題は、好ましい実施態様において、これらの処方物がマイクロまたはナノ粒子の薬物からなり、この粒子は薬物単体で、または賦形剤もしくはポリマー性キャリアとの組み合わせによって形成され得ることで解決された。賦形剤またはポリマーは、放出速度を操作し、そして発症部位への付着を増加させるために用いられ得る。薬物処方物は、乾燥粉末、液体懸濁物もしくは分散物として、または局所軟膏、クリーム、ローション、フォームもしくは坐剤として適用され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬学的調製物に関し、特に、様々な状態、特に女性生殖系の局部疾患(例えば、身体のこの部位に存在する、骨盤、子宮、頸部および膣疾患)を処置するために有効な量で、目的の生殖器に、局所的、局部的、骨盤内(intrapelvically)、腹腔内または直接導入され得る薬学的処方物に関する。
【背景技術】
【0002】
経口または全身投与の伝統的な方法による女性生殖疾患の処置が、薬物バイオアベイラビリティー問題、および薬物の全身循環への不必要な吸収に由来する随伴性副作用の合併症と関連することが、長い間知られている。例えば、正常な消化管活動は、経口投与された活性成分を破壊して、有効な薬物送達投薬量を減少させ得るか、あるいは薬学的調製物は、肝臓の通過によるかもしくは全身循環によって変化され得るか、または目的の領域で適切なレベルを達成し得ない。これらの所望でない作用を相殺するために、活性成分の投薬量を増加する必要があり、これはしばしば、所望でない副作用を生じる。
【0003】
ダナゾール(17αエテニルテストステロンのイソキサゾロ誘導体(アンドロゲンホルモン))は、一般に、子宮内膜症の処置のために、1日に800mgまでの範囲で、女性に投与される。高用量では、有害な副作用が見られ、この副作用には以下が挙げられ得る:体重増加、変声、顔および胸の毛の発達、性欲の減少、座瘡、および中枢神経系(「CNS」)症状(例えば、抑うつ、不安、疲労、悪心および下痢)ならびに処置を受けている間の妊娠の阻害。例えば、Spooner、Classification of Side Effects to Danazol Therapy, Winthrop Laboratories, Surrey, Englandを参照のこと。
【0004】
それゆえ、このような欠点を回避する医薬品の投与のための新しい系および方法を提供することが非常に望ましい。Mizutaniら(非特許文献1)は、100mg坐薬の手段による経膣へのダナゾール投与を記載しており、そして400mg投薬量の経口投与の結果を比較した。経膣投与後、有意でない血清レベルで、高い濃度が、卵巣、子宮および血清に存在したが、視床下部−下垂体−卵巣軸に対する影響がないことに注目した。Mizutaniらは、Igarashi(非特許文献2)による報告の後に、彼らの研究を行った。これによると、シリコン膣リングでのダナゾール投与が、子宮の子宮内膜症組織を減少させ、そして処置された女性の妊娠発生を統計学的に有意な程度まで増加させた。しかし、両方の治療法に対する当面の弱点は、膣リングおよび他のデバイスのような処方および送達プラットフォームは、特に、すでに子宮内膜症に関連した痙攣および痛みに苦しむ女性にとっては不満足であることである。使用される投薬量もまた、非常に高く、かつ非常に不定なものであり、そして潜在的に負かつ蓄積性蓄積効果を有し得た。
【0005】
Igarashiの移植物、および子宮内膜症処置のダナゾール局所放出のための他の提案されたダナゾール処方物(ここで、効果は処置されるべき組織へのダナゾールの直接投与によって達成される)は、Igarashiへの米国特許第4,997,653号およびEPA 0 501 056(米国特許の第2欄、第24〜29行)に記載されている。
【0006】
多くの他の薬物送達システムが利用可能であるが、この目的のためには開発されていない。実施例は、Zaffaroniへの米国特許第3,921,636号を含み、これは、デバイスへの水の拡散および全身または局所効果のために放出されるべき薬物の溶解の機能としての、水溶性物質の制御された持続性の放出のための薬物送達リザーバを記載している(第10欄、第46行)。Takeda Chemical IndustriesによるEPA 0 556 135は、粘膜部位(例えば、口または膣)を介した、タンパク質またはペプチドの全身送達のための調製物を記載している。ここで送達は、シチジンヌクレオチド誘導体の封入によって促進される。Universidade de Santiago de CompostelaによるWO 96 37232は、水溶性正荷電アミノポリサッカライドおよび負荷電リン脂質(これらは薬物の局所または経粘膜投与に有用である)のイオン性複合体形成により形成されたマトリックス内の、ナノ粒子、エマルジョンまたはナノカプセルの複合体を記載している。Edko Tradingによる特許文献1は、抗真菌薬物の経膣投与のための軟膏またはクリームを記載している。Nanosystemsへの米国特許第5,510,118号は、薬物(例えば、ダナゾール)のナノ粒子単独からなる粉体の調製を記載しており、これは非常に可溶性であり、そしてそれゆえ、注射による全身投与に有利である。
【0007】
それ故、本発明の目的は、高い患者コンプライアンスおよび快適さを有する、生殖器障害を処置するのに有効である処方物を提供することである。
【0008】
本発明のさらなる目的は、低い全身濃度でかつほとんど調和した副作用がない、罹患した部位での薬物の非常に迅速な取り込みを提供する処方物および投与法を提供することである。
【0009】
本発明のさらに別の目的は、制御された放出デバイスで投与された薬物と比較して、目的の生殖器に、局所的、局部的、骨盤内、腹腔内または直接投与される処方物における、薬物の非常に増強されたバイオアベイラビリティーを提供することである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第95 07071号パンフレット
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Mizutaniら、Fertility and Sterility 63, 1184−1189 (1995)
【非特許文献2】Igarashi, Asia−Oceania J. Obstet. Gynaecol. 16(1), 1−12 (1990)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
有効投薬量が全身投与された場合に得られる全身薬物レベルよりも低い全身薬物レベルを有する、局所効果を生じるための、目的の器官への、骨盤内、腹腔内または直接の、局所的または局部的薬物送達のための処方物を開発した。好ましい実施態様において、薬物は、女性生殖系のような部位に投与され、増加した快適さ、増加したバイオアベイラビリティー、迅速さ、および副作用を引き起こし得る薬物の全身レベルを生じることなしに処置されるべき部位での相対的に高い血液レベルを提供する。好ましい処方物は、薬物マイクロまたはナノ粒子からなり、これは薬物単独かまたは賦形剤もしくはポリマー性キャリアと組み合わせて形成され得る。賦形剤またはポリマーは、罹患した部位への薬物の放出速度を操作し、そして罹患した部位への薬物の接着を増加させるために用いられ得る。薬物処方物は、乾燥粉体、液体懸濁物もしくは分散物、ヒドロゲル懸濁物もしくは分散物、スポンジとして、または局所軟膏、クリーム、ローション、フォームもしくは坐薬として適用され得る。
【0013】
特定のダナゾール処方物が記載される。ラット研究は、子宮内膜症に罹患した組織への、ほとんど検出不可能な血清薬物レベルでのダナゾールの迅速な取り込みを示す。
【0014】
本発明は、例えば以下を提供する。
(項目1)局部的または領域的局所投与を必要とする患者の部位における症状の軽減を提供するのに有効な量の、局部的または領域的局所投与に適切である、マイクロまたはナノ粒子状薬物処方物。
(項目2)前記部位が女性生殖器である、項目1に記載の処方物。
(項目3)前記患者が生殖器に位置する障害を有する、項目2に記載の処方物。
(項目4)前記処方物が薬物粒子を含有する、項目1に記載の処方物。
(項目5)前記薬物が子宮内膜症の処置のためのものである、項目3に記載の処方物。
(項目6)前記マイクロまたはナノ粒子が粘膜組織に付着する、項目1に記載の処方物。
(項目7)前記マイクロまたはナノ粒子が、処置されるべき部位における薬物吸収率を変化させるポリマーを含有する、項目1に記載の処方物。
(項目8)目的の生殖器に、経膣、腹腔内、または直接投与され得る、項目1に記載の処方物。
(項目9)前記薬物がダナゾールであり、前記処方物が経膣投与を必要とする患者における経膣投与に適切であり、そして子宮内膜症の処置に有効な投薬量である、項目8に記載の処方物。
(項目10)前記薬物が、投与される患者の部位における癌の処置に有効な投薬量の抗癌剤、細胞治療的薬物または抗増殖的薬物である、項目1に記載の処方物。
(項目11)前記薬物が性器ヘルペスおよび性器パピローマウイルス感染から選択されるウイルス感染の処置に有効な抗ウイルス剤である、項目1に記載の処方物。
(項目12)前記薬物が膣真菌感染の処置に有効な抗真菌剤である、項目1に記載の処方物。
(項目13)前記薬物が膣および子宮内膜細菌感染の処置に有効な抗微生物剤である、項目1に記載の処方物。
(項目14)前記薬物が内分泌状態の処置に適切なステロイドまたはステロイド様生成物である、項目1に記載の処方物。
(項目15)前記薬物が、閉経、不妊症、避妊、不正子宮出血、月経困難症、腺筋症、または介助生殖技術の処置に有効である、項目14に記載の処方物。
(項目16)患者を処置する方法であって、局部的または領域的局所投与を必要とする患者の部位における症状の軽減を提供するのに有効な量の局部的または領域的局所投与に適切な、マイクロまたはナノ粒子薬物処方物の有効量を患者に投与する工程を包含する、方法。
(項目17)前記部位が女性生殖器である、項目17に記載の方法。
(項目18)前記患者が生殖器に位置する障害を有する、項目17に記載の方法。
(項目19)前記薬物が子宮内膜症の処置のためのものであり、そして前記患者が子宮内膜症を有する、項目18に記載の方法。
(項目20)目的の生殖器に、経膣、腹腔内、または直接投与され得る、項目17に記載の方法。
(項目21)前記薬物がダナゾールであり、そして前記処方物が経膣投与を必要とする患者において子宮内膜症の処置に有効な投薬量で経膣投与される、項目16に記載の方法。
(項目22)前記薬物が、投与される患者の部位における癌の処置に有効な投薬量の抗癌剤、細胞治療的薬物または抗増殖的薬物である、項目16に記載の方法。
(項目23)前記薬物が性器ヘルペスおよび性器パピローマウイルス感染から選択されるウイルス感染の処置に有効な抗ウイルス剤である、項目16に記載の方法。
(項目24)前記薬物が膣真菌感染の処置に有効な抗真菌剤である、項目16に記載の方法。
(項目25)前記薬物が膣および子宮内膜細菌感染の処置に有効な抗微生物剤である、項目16に記載の方法。
(項目26)前記薬物が内分泌状態の処置に適切なステロイドまたはステロイド様生成物である、項目16に記載の方法。
(項目27)前記薬物が、閉経、不妊症、避妊、不正子宮出血、月経困難症、腺筋症、または介助生殖技術の処置に有効である、項目26に記載の方法。
(項目28)子宮内膜症を処置するための方法であって、女性生殖路の粘膜に、血流中への迅速な取り込みを促進する形態でダナゾールを投与する工程を包含する、方法。
(項目29)前記ダナゾールがフォーム、錠剤、およびクリームからなる群から選択される形態である、項目28に記載の方法。
(項目30)前記ダナゾールが子宮への適用に適切な形態である、項目28に記載の方法。
(項目31)女性生殖路の粘膜に適用した場合に血流中への迅速な取り込みを促進する形態でダナゾールを含有する、子宮内膜症を処置する組成物。
(項目32)前記ダナゾールがフォーム、錠剤、およびクリームからなる群から選択される形態である、項目31に記載の組成物。
(項目33)前記ダナゾールが子宮への適用に適切な形態である、項目32に記載の組成物。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(発明の詳細な説明)
組成物およびそれらを投与する方法は、従来の薬物投与技術に比べて、増加したバイオアベイラビリティーおよび快適さを伴う顕著に減少した副作用を提供し、そして、経口および非経口投与の必要性、複合体および高価な生体適合性ポリマー材料の使用、ならびに潜在的に感染性の外来物体(例えば、子宮内避妊器具、膣リング、および坐薬)の体内への挿入およびそこでの維持を回避する。
【0016】
I.処方物
処方物を、罹患した組織において最大取り込みを提供するように設計する。この処方物は、処置されるべき部位を通じて迅速に散布され、薬物の全身血液レベルをほとんど上昇させない。処方物は、薬物のみからなり得るか、または賦形剤もしくはポリマー性材料と組み合わせられ得る。
【0017】
A.薬物
用語「薬物」は、粒子状処方物で投与され得る任意の薬学的活性物質を意味し得、これは所望の効果を達成する。薬物は、合成もしくは天然有機化合物、タンパク質もしくはペプチド、オリゴヌクレオチドもしくはヌクレオチド、またはポリサッカライドもしくは糖であり得る。薬物は任意の多様な活性を有し得、これは阻害性または刺激性のものであり得、例えば、抗菌活性、抗ウイルス活性、抗真菌活性、ステロイド活性、細胞毒性もしくは抗増殖活性、抗炎症活性、鎮痛性もしくは麻酔性活性であり得るか、または対照もしくは他の診断剤として有用なものであり得る。各クラス内の薬物および種のクラスの説明は、Martindale, The Extra Pharmacopoeia, 第31版, The Pharmaceutical Press, London (1996)およびgoodmanおよびGilman, The Pharmacological Basis of Therapeutics, 第9版, McGraw−Hill Publishing company (1996)に見出され得る。
【0018】
ステロイド活性を有する化合物の例としては、プロゲスチン、エストロゲン、抗エストロゲンおよび抗プロゲスチンが挙げられる。
【0019】
好ましい実施態様において、薬物は、マイクロまたはナノ粒子処方物中のダナゾールまたはゲストリノンである。これは、薬物の粉砕もしくは薬物溶液の(例えば、溶媒抽出液体への)微粒化、または他の標準的技術によって達成され得る。ダナゾールまたはゲストリノンは、シクロデキストリン(例えば、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(HPB))との複合体として存在し得る。
【0020】
別の好ましい実施態様において、薬物はポリサッカライド、好ましくは硫酸化ポリサッカライドである。適切な硫酸化ポリサッカライドの例としては、カラゲナン、硫酸デキストラン、ヘパリン、およびフコイジンが挙げられる。
【0021】
B.賦形剤またはキャリア
薬物物質は、例えば、任意の医薬品調製物中の分散した粒子またはマイクロ粒子の形態、および/または軟膏、ゲル、ペースト、ローション、スポンジ、もしくはスプレーのようなキャリア中に懸濁されたかまたは溶解された形態をとり得るような様式で、吸着されるかもしくは吸収されるか、接着されるかまたは分散されるかもしくは懸濁される粒子性の材料を伴う任意の物理学的形態に関連し得る。
【0022】
標準的な賦形剤には、以下が挙げられる:ゼラチン、カゼイン、レシチン、アカシアガム、コレステロール、トラガント、ステアリン酸、塩化ベンザルコニウム、ステアリン酸カルシウム、グリセリルモノステアリン酸塩、セトステアリン酸アルコール、セトマクロゴール乳化ワックス、ソルビタンエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンひまし油誘導体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンステアリン酸塩、コロイド性二酸化ケイ素、リン酸塩、ドデシル硫酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、非結晶性セルロース、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、トリエタノールアミン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、糖類およびデンプン。
【0023】
C.ポリマー性材料
好ましい実施態様において、薬物は、ポリマー性材料で形成されるマイクロ粒子またはナノ粒子上または内部に存在する。音波発生気体、放射活性材料(これらは、それ自体が治療剤でもあり得る)、およびMRIまたはPETによる検出のための磁性材料を含む、診断薬剤のようなさらなる材料は、必要に応じて粒子中に含まれ得る。
【0024】
種々のポリマーが、粘膜表面に対する付着性を増加させるため、ポリマーマトリックスからの薬物の拡散速度および/もしくはポリマーについて加水分解または酵素的分解による分解の速度ならびに/またはpH変化の関数としての放出を制御するため、ならびに粒子の大きさに比例して薬物の表面積を増加させるために、用いられ得る。
【0025】
ポリマーは天然または合成であり得、そして生分解性または非生分解性であり得る。高分子量の薬物は、拡散によって部分的に送達され得るが、大部分は、ポリマー系の分解によって送達され得る。この理由について、生分解性ポリマー、生体腐食性ヒドロゲル、およびタンパク質送達系が、高分子量の薬物が送達される場合に特に好ましい。
【0026】
ポリマーは、天然または合成ポリマーであり得るが、合成ポリマーは、分解および放出プロフィールのより良好な特徴に起因して好ましい。ポリマーは、所望される放出期間(一般的に、少なくとも即時放出から12ヶ月にわたる放出の範囲)に基づいて選択されるが、より長い期間が所望され得る。いくつかの場合では、直線的な放出が最も有用であり得るが、他の場合においては、パルス放出または「大量放出」がより効果的な結果を提供し得る。ポリマーは、ヒドロゲル(代表的には、約90重量%まで水分を吸収する)の形態にあり得、そして必要に応じて多価イオンまたはポリマーで架橋され得る。
【0027】
代表的な天然のポリマーには、ゼイン、改変ゼイン、カゼイン、ゼラチン、グルテン、血清アルブミン、およびコラーゲンのようなタンパク質、セルロース、デキストラン、およびポリヒアルロン酸のような多糖類が挙げられる。
【0028】
代表的な合成ポリマーには、以下が挙げられる:ポリホスファゼン、ポリ(ビニルアルコール)、ポリアミド、ポリカルボネート、ポリアクリレート、ポリアルキレン、ポリアクリルアミド、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンオキシド、ポリアルキレンテレフタレート、ポリビニルエーテル、ポリビニルエステル、ハロゲン化ポリビニル、ポリビニルピロリドン、ポリグリコリド、ポリシロキサン、ポリウレタン、およびそれらのコポリマー。
【0029】
適切なポリアクリレートの例として以下が挙げられる:ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(ブチルメタクリレート)、ポリ(イソブチルメタクリレート)、ポリ(ヘキシルメタクリレート)、ポリ(イソデシルメタクリレート)、ポリ(ラウリルメタクリレート)、ポリ(フェニルメタクリレート)、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(イソプロピルアクリレート)、ポリ(イソブチルアクリレート)、およびポリ(オクタデシルアクリレート)。
【0030】
合成的に改変された天然のポリマーには、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、セルロースエーテル、セルロースエステル、およびニトロセルロースのようなセルロース誘導体が挙げられる。適切なセルロース誘導体の例としては、以下が挙げられる:メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、カルボキシメチルセルロース、三酢酸セルロースおよび硫酸セルロースナトリウム塩。
【0031】
上記のポリマーの各々は、例えば、Sigma Chemical Co., St. Louis, MO., Polysciences, Warrenton, PA, Aldrich Chemical Co., Milwaukee, WI, Fluka, Ronkonkoma, NY, およびBioRad, Richmond, CAのような市販の供給源から得られ得るか、または標準的な技術を用いてこれらの供給元から得られるモノマーから合成され得る。上記のこれらのポリマーは、以下により詳細に議論されるように、生物分解性、非生物分解性、および生体付着性ポリマーとして別々に特徴づけられ得る。
【0032】
1.生物分解性ポリマー
代表的な合成の分解性ポリマーとしては、ポリラクチド、ポリグリコリドおよびそのコポリマー、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(酪酸)、ポリ(吉草酸)、ポリ(ラクチド−コ−カプロラクトン)、ポリ無水物、ポリオルトエステル、ならびにそのブレンドおよびコポリマーのようなポリヒドロキシ酸が挙げられる。
【0033】
代表的な天然の生物分解性ポリマーは、アルギン酸塩、デキストラン、セルロース、コラーゲン、およびその化学的誘導体のような多糖類(例えば、化学基(アルキル、アルキレン)の置換、付加、水素化、酸化、および当業者によって日常的になされる他の改変)ならびにアルブミン、ゼインのようなタンパク質、ならびにそのコポリマーおよびブレンド、合成ポリマー単独またはその組合せが挙げられる。一般的に、これらの物質は、インビボでの酵素的加水分解または水への曝露、表面または大量の腐食のいずれかによって分解する。
【0034】
2.非生物分解性ポリマー
非生物分解性ポリマーの例として、エチレン酢酸ビニル、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルフェノール、ならびにそのコポリマーおよびブレンドが挙げられる。
【0035】
3.生体付着性ポリマー
親水性ポリマーおよびヒドロゲルは、生体付着性特性を有する傾向がある。カルボキシル基を含む親水性ポリマー(例えば、ポリ[アクリル酸])は、最良の生体付着性特性を示す傾向がある。最高濃度のカルボキシル基を有するポリマーは、軟組織上での生体付着性が所望される場合、好ましい。種々のセルロース誘導体(例えば、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロースおよびメチルセルロース)はまた、生体付着性特性を有する。これらの生体付着性物質のいくつかは、水溶性であるが、他はヒドロゲルである。
【0036】
迅速に生体腐食性(bioerodible)であるポリマー(例えば、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)、ポリ無水物、およびポリオルトエステルであり、そのカルボキシル基が、それらの潤滑な表面が腐食するように外表面に曝露される)もまた、生体付着性薬剤送達系のために用いられ得る。さらに、不安定な結合を含むポリマー(例えば、ポリ無水物およびポリエステル)は、その加水分解反応に関して周知である。それらの加水分解速度は、一般的に、ポリマー骨格の単純な変更によって改変され得る。分解性について、これらの物質はまた、それらの外表面のカルボキシル基を曝露しており、従って、生体付着性薬剤送達系のためにもまた使用され得る。
【0037】
D.ヒドロゲルマトリックス
別の好ましい実施態様において、薬物は、ヒドロゲルマトリックス中のマイクロパーティクルまたはナノパーティクルの分散物として存在する。ヒドロゲルマトリックスは、特にヒドロゲルが組織表面に付着する場合、長期間にわたり粒子を特定の部位に残存させるために用いられ得る。薬剤の局所的送達を提供するためのヒドロゲルの使用は、例えば、米国特許第5,410,016号(Hubbellら)に記載される。
【0038】
ヒドロゲルマトリックス中に取り込まれる粒子は、薬物単独で形成され得るか、または上記の賦形剤および/またはポリマーを含み得る。薬物はまた、マトリックスに対する分散物または溶液として添加され得る。薬物は、粒子、ヒドロゲルまたは両方の溶解によって粒子から放出され得る。適切なヒドロゲルは、上記のように、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリレート、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(酢酸ビニル)、ならびにそのコポリマーおよびブレンドのような合成ポリマー、ならびにセルロースおよびアルギネートのような天然のポリマーから形成され得る。例示的な材料として、SEPTRAFILMTM(改変ヒアルロン酸ナトリウム/カルボキシメチルセルロース、Genzyme Pharmaceuticals)およびINTERCEEDTM(酸化再生セルロース、Johnson & Johnson Medical, Inc.)が挙げられる。
II.投与方法
処方物は、好ましくは、局部的に(例えば、卵巣および子宮の疾患の処置のために膣に)、処置されるべき領域内に投与される。本明細書中に記載されるように、「局部的に」とは、一般的には、膣および/もしくは子宮の粘膜または内膜表面への、または膣もしくは子宮の特定の部分への局所的な適用を意味し得る。本明細書中に記載されるように、「領域的に」とは、子宮、卵管、腹腔、骨盤窩(cul−de−sac)、卵巣、会陰、腹部(abdominal);直腸膣領域および男性の対応する領域および(膀胱、尿路、および直腸を含む)尿生殖路を含む、生殖器官およびその周辺をいう。本明細書中で記載されるように、「全身的に」とは、循環系、および上記の部位の外部の領域をいう。
【0039】
本明細書中に記載の経膣投与された薬学的調製物は、女性の生殖系の特定の疾患を処置するにおいて(例えば、子宮内膜症の処置のためのダナゾールの投与、および尿失禁のような他の障害を処置するにおいて)特に有効である。これは、ダナゾール処方物を、他の送達様式(例えば経口送達)より少ない用量で局所的に投与するために望ましい。経皮投与は、通常、経口投与の4分の1で同様の効力があることが認められる。この例において、なお低い用量(約1〜2mg/日で送達されるリング(ring))に減らすことが可能である。このような用量の投与は、所望でない経口投薬に関連する副作用(例えば、男性型多毛症および他のアンドロゲン性副作用)を回避するために、無視できるかまたは比較的低いダナゾールの血清レベルを確実にする。
【実施例】
【0040】
以下の非限定的な例は、より完全に本発明を実証する。
【0041】

実施例1:ゲル産物の調製
薬物物質である、微粉化ダナゾール(DMF−Drug Master File Certificationで認可)は、Cipla Pharmaceuticalsにより製造され、そしてByron Chemical Companyから購買した。UV吸収は、この薬物物質を米国薬局方Danazolと同一であると同定した。個々の不純物が0.5%より多くならず、そして全不純物が1.0%より多くならないことを記載した。乾燥規準のアッセイは、乾燥規準で97%w/wから102%w/wの間であった。90%以上の粒子が直径5ミクロン未満であり、残りの粒子は直径5〜15ミクロンの間であった。
【0042】
微粉化されたダナゾールを、50μl中1mgの用量を送達するために、10ml容量(2.16g/mlのゼリー密度を用いた重量に基づく)にして、市販調製品のKY Jelly(これは、ポリマーヒドロキシエチルセルロースで構成されている)中で均質混合した。ゲルは一貫して平滑であり、均一に白色であり、そして流動性であった。粒子サイズ測定を、Coulter H4mD粒子サイズ分析機を用いて行い、そして以下であることを記載した:
【0043】
【化1】

実施例2:ラットへのダナゾールマイクロ粒子状処方物の投与
成熟雌性Sprague−Dawleyラットを実験に用いた。1mgのマイクロ粒子状ダナゾールを50μlの容量で膣円蓋に送達させ、そしてその動物を以下に記す時間で屠殺した。子宮および卵巣を別々にホモジナイズし、そして脱血した。全ての組織および生物学的サンプルを処理した。ダナゾールを抽出し、そしてHPLC方法論によりアッセイした。
【0044】
ダナゾール臨床アッセイ
ダナゾールを、血清および組織から、ヘキサン/クロロホルム 80/20で抽出した。組織について、各1mLアリコートのホモジネートをとった。抽出したダナゾールを、水/アセトニトリル移動相中で再構成し、そしてBeckman Ultrasphere5ミクロン、4.6mm×15cmの逆相カラム(C−18RP)を、全てのHPLC分析に使用した。ダナゾール回収研究を、ダナゾール薬物製品を用いて実施した。回収率を、抽出されたシグナルを抽出していないシグナルと比較することにより決定した。75%と84%との間の回収率が、この抽出方法に関して得られた。
【0045】
研究結果
組織および血清のレベルを以下の表1にまとめる:
【0046】
【表1】

この研究の結果によって、使用した処方物が、ダナゾールの子宮への優先的な吸収をもたらしたことが実証される。
【0047】
上記の実施例では、ダナゾール濃度を1mg/300gラットで投与した。Mizutamiによる研究では、ダナゾール濃度は、100mg/50kg女性で投与されていた。これらの濃度は、ほぼ等価である。これらのデータによって、Mizutamiによって使用された坐剤が、上記の実施例におけるマイクロ粒子によって提供されるダナゾールの子宮濃度よりも10倍高いダナゾールの子宮濃度をもたらしたことが実証される。このような局所的高濃度は、薬物の局所送達において有意な変化をもたらし得、そして生殖器官に対する影響(例えば、ホルモンステロイド応答性における変化および蓄積効果(depot effect))をもたらし得る。
【0048】
Igarashiは、シリコーンに含まれる膣リングを投与した。この型の薬物送達デバイスは、定常様式で薬物を放出し、それにより薬物の連続流入をもたらし、そしておそらく蓄積効果をもたらす。Igarashiは、ダナゾールは膣リングを介して投与された2つの例を開示する。両方の例において、ダナゾールの子宮濃度は、上記実施例における子宮濃度よりも100倍高かった。
【0049】

実施例3:子宮内膜症の霊長類モデルにおける研究のためのプロトコル
マイクロ粒子処方物は、送達される用量における顕著な減少をさせ、より低い組織濃度で目的の器官への生体利用能を増大させる。
【0050】
サルでのプロトコル:
サル研究は、局所的に送達されるダナゾールの全身レベルもまた評価しつつ、子宮内膜症の動物モデルにおけるマイクロ粒子処方物の効力を実証する。子宮内膜症のサルモデルを使用して、効力および安全性を実証する。サルを用いることの理論的根拠は、特定のサルが、ヒト疾患に決定的に類似している、子宮内膜症を天然に発症するという知見にある。さらに、サルは、ヒト雌性生殖系の研究に、 Danazol TVDTのような膣製品を試験するために、解剖学的および生理学的の両方で、良いモデルである。この研究は、ヒトの子宮内膜症を処置するのに必要とされる用量を同定する際に補佐となり、そしてさらに、ダナゾールが減少された全身レベルで子宮内膜症の処置のために膣に送達され得るという予備証拠を確証する。マイクロ粒子ダナゾールは、ポリ(ビニルピロリドン)の存在下で処方される。3つの用量のDanazol TVDTを、下記に記載するように、子宮内膜症を有するサルにおいて研究し、そして経口送達されたダナゾールと比較する。この研究は、9週間の、並行の、ランダム化された研究であり、毎日200mgで投与された経口ダナゾールの効果と、Danazol TVDTの3つの用量:10mg/日(経口用量の20分の1)、25mg/日(経口用量の10分の1)、および50mg/日(経口用量の4分の1)の効果とを比較する。結果は、マイクロ粒子ダナゾールの局所送達が効力および低全身レベルをもたらすことを実証する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロまたはナノ粒子状薬物。

【公開番号】特開2010−138196(P2010−138196A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−52254(P2010−52254)
【出願日】平成22年3月9日(2010.3.9)
【分割の表示】特願平10−532060の分割
【原出願日】平成10年1月23日(1998.1.23)
【出願人】(306005011)フェムファーマ ホールディング カンパニー, インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】