説明

薬液揮散装置

【課題】薬液容器を手指で掴んで収納ケースから取り出すことができるようにしながら、収納ケースの大型化を抑制することができる薬液揮散装置を提供する。
【解決手段】ケース底部に形成してある開口部5を通して薬液容器Aを収納可能な収納ケース1と、収納ケース1に収納した薬液容器Aを上下方向に脱着可能なホルダー2と、ホルダー2に装着された薬液容器Aが、薬液を揮散可能な薬液揮散位置と当該薬液容器Aの下部が開口部5から下方に突出する突出位置とに亘って移動するように、ホルダー2を昇降操作可能な操作具3とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケース底部に形成してある開口部を通して薬液容器を収納可能な収納ケースと、前記収納ケースに収納した薬液容器を上下方向に脱着可能なホルダーとを有する薬液揮散装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記薬液揮散装置は、殺虫成分や芳香成分などを含む薬液を揮散させるにあたって、薬液容器を見栄え良く収納できるように収納ケースを有している。
また、収納ケースを薬液容器と一体に移動できるように、かつ、薬液容器を収納ケースから取り出せるように、収納ケースに収納した薬液容器を上下方向に脱着可能なホルダーを有している。
従来の上記薬液揮散装置では、薬液容器を手指で掴んで収納ケースから取り出せるように、ホルダーに装着された薬液容器の外周側と収納ケースの内周側との間に手指を入り込ませることができる大きな隙間を形成してある。
つまり、開口部を通して薬液容器の外周側と収納ケースの内周側との間の隙間に手指を入り込ませ、その手指で薬液容器を掴んで開口部から引き出す操作により、収納ケースから取り出すことができるように構成してある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平5−13177号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このため、収納ケースが大型化して、薬液揮散装置の設置にも大きな設置空間が必要となるおそれがある。
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであって、薬液容器を手指で掴んで収納ケースから取り出すことができるようにしながら、収納ケースの大型化を抑制することができる薬液揮散装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による薬液揮散装置の第1特徴構成は、ケース底部に形成してある開口部を通して薬液容器を収納可能な収納ケースと、前記収納ケースに収納した薬液容器を上下方向に脱着可能なホルダーと、前記ホルダーに装着された薬液容器が、薬液を揮散可能な薬液揮散位置と当該薬液容器の下部が前記開口部から下方に突出する容器交換位置とに亘って移動するように、前記ホルダーを昇降操作可能な操作具とを有する点にある。
【0006】
本構成の薬液揮散装置は、前記ホルダーに装着された薬液容器が、薬液を揮散可能な薬液揮散位置と当該薬液容器の下部が前記開口部から下方に突出する容器交換位置とに亘って移動するように、前記ホルダーを昇降操作可能な操作具を有する。
このため、薬液容器を収納ケースから取り出す際には、薬液容器が容器交換位置に移動するように操作具でホルダーを下降操作すれば、薬液容器の外周側と収納ケースの内周側との間に手指を入り込ませることなく、薬液容器の開口部から下方に突出している部分を手指で掴んで、その薬液容器を収納ケースから取り出すことができる。
したがって、本構成の薬液揮散装置であれば、薬液容器の外周側と収納ケースの内周側との間に手指を入り込ませることができる隙間を形成することなく、薬液容器を手指で掴んで収納ケースから取り出すことができるので、収納ケースの大型化を抑制することができる。
【0007】
本発明の第2特徴構成は、前記操作具の回転操作により前記ホルダーが昇降するように、前記操作具と前記ホルダーとを連係するクランク機構を有する点にある。
【0008】
本構成であれば、操作具の回転操作により、薬液容器を薬液揮散位置と容器交換位置とに亘って移動させることができる。
【0009】
本発明の第3特徴構成は、前記収納ケースの内部に加熱具を備えるとともに、前記薬液容器が容器内の薬液を吸液して容器外部に導出する吸液芯を備え、前記操作具の操作により、前記吸液芯を前記加熱具に対して近接・離間可能に構成してある点にある。
【0010】
本構成であれば、薬液揮散位置に移動させた薬液容器の吸液芯を加熱具で加熱して薬液を積極的に揮散させることができる。
また、操作具によるホルダーの昇降操作で吸液芯を加熱具に対して近接・離間させて、加熱具による吸液芯の加熱面積を変更し、薬液の揮散量を調節することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】薬液揮散装置の内部を示す正面図である。
【図2】薬液揮散装置の内部を示す側面図である。
【図3】薬液揮散装置の分解斜視図である。
【図4】薬液揮散装置の内部構造を示す分解斜視図である。
【図5】薬液容器を通常揮散位置に移動させたときの薬液揮散装置の内部を示し、(a)は正面図、(b)は縦断面図である。
【図6】薬液容器を少量揮散位置に移動させたときの薬液揮散装置の内部を示し、(a)は正面図、(b)は縦断面図である。
【図7】薬液容器を容器交換位置に移動させたときの薬液揮散装置の内部を示し、(a)は正面図、(b)は縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1〜図4は、本発明による樹脂製の薬液揮散装置を示す。
薬液揮散装置は、薬液容器Aを収納可能な前後方向で二つ割の収納ケース1と、後述する収納ケース2を昇降操作可能な操作具としてのダイヤル3とを有する。
【0013】
ダイヤル3は、収納ケース1に形成したダイヤル3の外径と略同じ径の円形ダイヤル孔3aに挿通されて、収納ケース1の内面と後述するデテント部材4との間に横軸芯Xの周りで回転操作自在に支持され、薬液容器Aの現在の移動位置を表示する三角マーク3bが設けられている。
【0014】
収納ケース1は、薬液容器Aを挿抜自在な開口部5をケース底部に形成してあり、外部空気をケース横側方からケース内部に取り込むための空気取込口1aと、殺虫成分や芳香成分などを含む薬液が揮散された空気をケース上方からケース外部に放出させる空気放出口1bと、薬液容器Aの薬液残量をケース外部の横側方から確認可能な左右一対の残量確認窓1cとを備えている。
【0015】
薬液容器Aは、図4に示すように、有底円筒状の容器本体6aと、円筒状の容器口部6bと、容器口部6bに装着された円筒状の中栓6cと、容器内の薬液を吸液して中栓6cの内側を通して容器外部に導出する円柱状の吸液芯6dとを同芯状に備え、開口部5を通して収納ケース1の内部に収納される。
【0016】
薬液揮散装置の内部には、薬液容器Aが挿入される円筒部7を備えた樹脂製中ケース8と、収納ケース1に収納した薬液容器Aを保持するホルダー2と、ダイヤル3の回転操作によりホルダー2が昇降するように、ダイヤル3とホルダー2とを連係するクランク機構9と、ダイヤル3を所望の回転位置に保持するデテント機構10と、吸液芯6dを外周側から加熱して薬液を揮散させる電気式の加熱具11とを有する。
【0017】
加熱具11は、吸液芯6dを外周側から囲む金属製の帯状加熱部材11aと、発熱体11bとを備え、加熱部材11aの両端部を発熱体11bに接続して環状に形成して、中ケース8の上端部に固定してある。
【0018】
円筒部7には、収納ケース1の底部がビス止めされるボス7aと、円筒部7の内部に連通するトンネル状の通路12を形成する下向きU字状の通路壁7bと、収納ケース1の内周面との接当により、中ケース8を位置決めする位置決めピン7cとが一体形成されている。
【0019】
通路壁7bは、残量確認窓1cをその周縁に沿って収納ケース1の内側から囲むように、円筒部7の左右両側に形成され、収納ケース1と中ケース8との間の空間に連通する複数の貫通孔7dを通路壁上部に形成して、加熱具11による空気の加熱に伴う対流を促進できるように構成してある。
【0020】
薬液容器Aは、開口部5を通して収納ケース1に収納するに伴って、円筒部7に挿入される。
ホルダー2は、円筒部7に挿入された薬液容器Aの容器口部6bを保持する円筒状の保持部材2aと、クランク機構9を構成するスライド板2bとを一体に備えている。
【0021】
保持部材2aは、容器口部6bに形成した雄ねじ部6eに対して上下方向に係合する雌ねじ状の突条部(図示せず)を内周側に備え、薬液容器Aを保持部材2aに対して正逆に回転させることにより薬液容器Aを上下方向に脱着可能に保持する。
【0022】
クランク機構9は、ホルダー2と一体に備えたスライド板2bと、スライド板2bの移動方向を上下方向に規制するガイド部13と、スライド板2bの上部に一体形成した昇降ピン14と、ダイヤル3の内側に一体形成した揺動ピン15と、昇降ピン14及び揺動ピン15の夫々に対して相対揺動自在に連結されたクランクアーム16とを備えている。
【0023】
ガイド部13は、保持部材2aとスライド板2bとを連結している連結部2cの左右両側に摺接して、スライド板2bの移動方向を上下方向に規制する左右一対のガイド板8a(図3,図4参照)と、スライド板2bの左右両側に摺接して、スライド板2bの移動方向を上下方向に規制するガイド枠8bとの二つを中ケース8に一体形成して設けられている。
【0024】
デテント機構10は、ダイヤル3の外周側に一体形成した環状の鍔部材17と、ガイド枠8bの左右両側に一体形成した帯板状のデテント部材4とを設けて構成されている。
そして、周方向で複数の切欠き部17aを鍔部材17に形成するとともに、切欠き部17aに係脱自在に係入する凸曲部4aをデテント部材4に形成して、ダイヤル3の回転操作に伴って鍔部材17のいずれかの切欠き部17aに凸曲部4aが係入することにより、ダイヤル3をその回転位置に保持する。
【0025】
したがって、ダイヤル3の回転操作により揺動ピン15を揺動させると、クランクアーム16によりスライド板2bと共にホルダー2が昇降操作され、ホルダー2に装着された薬液容器Aが、図5,図6に示すように薬液を揮散可能な薬液揮散位置と、図7に示すように当該薬液容器Aの下部が収納ケース1の開口部5から下方に突出する容器交換位置とに亘って移動する。
また、このダイヤル3の回転操作による薬液容器Aの移動に伴って、吸液芯6dが加熱具11の加熱部材11aに対して近接・離間するように移動する。
【0026】
本構成では、ダイヤル3を半回転させることにより、クランク機構9によってホルダー2を最上位置と最下位置とに昇降移動させることができ、さらに、ダイヤル3とホルダー2とをクランクアーム16によって連結してあるので、ダイヤル3の回転操作に対してホルダー2をガタ付き無く昇降移動させることができ、軽快な操作性を実現することができる。また、ダイヤル3の回転方向は左右のいずれでもよいので、利便性を向上させることができる。
【0027】
薬液揮散位置としては、図5に示すように薬液の揮散量が多い通常揮散位置と、図6に示すように薬液の揮散量が通常揮散位置におけるよりも少ない少量揮散位置とが設定されている。
図5に示すようにダイヤル3の三角マーク3bが上向きの通常揮散位置では、吸液芯6dの先端部が加熱部材11aの内側を突き抜ける位置に薬液容器Aが保持されて、吸液芯6dの加熱面積が広くなり、薬液の揮散量が多くなる。
図6に示すようにダイヤル3の三角マーク3bが横向きの少量揮散位置では、吸液芯6dの先端部が加熱部材11aの内側に停止する位置に薬液容器Aが保持されて、吸液芯6dの加熱面積が狭くなり、薬液の揮散量が少なくなる。
【0028】
図7に示すようにダイヤル3の三角マーク3bが下向きの容器交換位置では、薬液容器Aの下部が収納ケース1の開口部5から下方に突出するように当該薬液容器Aが保持され、薬液容器Aの開口部5から突出している部分A1を手指で掴んで、容器口部6bを保持部材2aに対して係合解除側に回転させることにより、開口部5を通して収納ケース1から取り出すことができる。
【0029】
また、薬液容器Aをホルダー2に装着するときは、ホルダー2を容器交換位置に対応する位置に保持した状態で薬液容器Aを開口部5を通して収納ケース1内に挿入し、薬液容器Aの開口部5から下方に突出している部分A1を手指で掴んで、その容器口部6bを保持部材2aに対して係合側に回転させることにより装着することができる。
【0030】
〔その他の実施形態〕
1.本発明による薬液揮散装置は、開口部を通して薬液容器を強制的に引き出すことにより、薬液容器との係合が解除されるホルダーを有していてもよい。
2.本発明による薬液揮散装置は、薬液を加熱具で加熱することなく、常温で薬液を揮散させるものであってもよい。
3.本発明による薬液揮散装置は、操作具としての操作レバーの揺動操作でホルダーを昇降操作可能に設けてあってもよい。
4.本発明による薬液揮散装置は、殺虫成分を含む薬液を揮散させるものでも、芳香成分を含む薬液を揮散させるものでも、空気の消毒,殺菌又は脱臭成分を含む薬液を揮散させるものでもよい。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明による薬液揮散装置は、各種成分を含む薬液を揮散させるために利用することができる。
【符号の説明】
【0032】
1 収納ケース
2 ホルダー
3 操作具
5 開口部
6d 吸液芯
9 クランク機構
11 加熱具
A 薬液容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース底部に形成してある開口部を通して薬液容器を収納可能な収納ケースと、
前記収納ケースに収納した薬液容器を上下方向に脱着可能なホルダーと、
前記ホルダーに装着された薬液容器が、薬液を揮散可能な薬液揮散位置と当該薬液容器の下部が前記開口部から下方に突出する容器交換位置とに亘って移動するように、前記ホルダーを昇降操作可能な操作具とを有する薬液揮散装置。
【請求項2】
前記操作具の回転操作により前記ホルダーが昇降するように、前記操作具と前記ホルダーとを連係するクランク機構を有する請求項1記載の薬液揮散装置。
【請求項3】
前記収納ケースの内部に加熱具を備えるとともに、前記薬液容器が容器内の薬液を吸液して容器外部に導出する吸液芯を備え、
前記操作具の操作により、前記吸液芯を前記加熱具に対して近接・離間可能に構成してある請求項1又は2記載の薬液揮散装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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