説明

薬液計量装置及び薬液計量システム

【課題】計量された薬液の供給量を均一に保ち配置レイアウトの制限がない薬液計量装置を提供する。
【解決手段】規定量の薬液を計量する計量槽1と、規定量を超えたオーバーフロー薬液を収容するオーバーフロー槽2と、計量槽1に規定量の薬液を供給した際に、仮想線で示される薬液の水面に当たる位置に一端12aが配置され他端12bがオーバーフロー槽2に連通され、オーバーフロー薬液を計量槽1からオーバーフロー槽2に移送するオーバーフロー管12とを有する薬液計量装置10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬液計量装置及び薬液計量システムに関する。
【背景技術】
【0002】
フレキシブル基板(以下「FPC」ともいう。)等を製造する際に、薬液処理を必要とする製造工程において、数種類の薬液を混ぜ合わせたものが使用されている。これらの薬液は、事前にある比率で各原液を混ぜ合わせて調製されている。一般にこれらの薬液の調製作業は建浴と呼ばれている。製品の品質の安定を図るためには、建浴作業において、これらの計量された薬液の供給量を毎回均一に保つ必要がある。
【0003】
上述の課題を解決する手段としていくつかの技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、特許文献1に係る発明にあっては、原液タンクから薬液計量装置に薬液を供給して計量する際に、オーバーフローした薬液は、高低差を利用して原液タンクに戻す必要があった。そのため、薬液計量装置、原液タンク及び建浴槽のレイアウトが制限されていた。また計量槽を原液タンクより高い位置に配置するため、計量槽に溜まった薬液の目視観察が困難になるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−197484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、計量された薬液の供給量を均一に保ち、配置レイアウトの制限がない薬液計量装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様は、規定量の薬液を計量する計量槽と、規定量を超えたオーバーフロー薬液を収容するオーバーフロー槽と、計量槽に規定量の薬液を供給した際に、薬液の水面に当たる位置に一端が配置され他端がオーバーフロー槽に連通され、オーバーフロー薬液を計量槽からオーバーフロー槽に移送するオーバーフロー管とを有する薬液計量装置を要旨とする。
【0007】
本発明の第2の態様は、薬液計量装置と、演算制御部とを備える薬液計量システムを要旨とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、計量された薬液の供給量を均一に保ち、配置レイアウトの制限がない薬液計量装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施形態にかかる薬液計量装置の概略図である。
【図2】実施形態にかかる薬液計量装置の使用状態の概略図(その1)である。
【図3】実施形態にかかる薬液計量装置の使用状態の概略図(その2)である。
【図4】実施形態にかかる薬液計量装置の使用状態の概略図(その3)である。
【図5】実施形態にかかる薬液計量システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、実施形態を挙げて本発明の説明を行うが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。尚、図中同一の機能又は類似の機能を有するものについては、同一又は類似の符号を付して説明を省略する。
【0011】
[薬液計量システム]
図5に示す、本発明の実施形態にかかる薬液計量システム100は、薬液計量装置10と、演算制御部23とを備える。薬液計量装置10は、薬液供給管11を介して原液タンク40に接続され、薬液排出管14を介して建浴タンク41に接続されている。
【0012】
薬液計量装置10は、図1に示すように、規定量の薬液を計量する計量槽1と、規定量を超えたオーバーフロー薬液を収容するオーバーフロー槽2と、計量槽1に規定量の薬液を供給した際に、仮想線で示される基準線(薬液の水面上限)Xに当たる位置に一端12aが配置され他端12bがオーバーフロー槽2に連通され、オーバーフロー薬液を計量槽1からオーバーフロー槽2に移送するオーバーフロー管12とを有する。
【0013】
薬液計量装置10は、計量槽1に取り付けられ計量された薬液を供給する薬液排出管14と、一端が薬液排出管14に連通され他端がオーバーフロー槽2に連通されたオーバーフロー薬液移送管13と、薬液排出管14とオーバーフロー薬液移送管13の連通部より、薬液の流れ方向下流に配置された薬液供給バルブ22と、オーバーフロー薬液移送管13の一端と他端の間に配置された薬液移送バルブ21とをさらに有する。
【0014】
計量槽1とオーバーフロー槽2は、内壁3aを隔てて一体に形成された計量マス部3として構成されている。設備の小型化を図ることで、薬液の原液タンク40と建浴タンク41の位置関係に制限なく自由にレイアウト可能とするためである。
【0015】
また、オーバーフロー管12は、計量槽1内に配置される一端12aを備える本体12aと、オーバーフロー槽2内に配置される他端12bを備える枝管12bとを有し、L字状に形成されている。本体12aは、固定式でも構わないが、規定量に応じて一端12aの位置調整ができるように伸縮自在にしてもよい。
【0016】
規定量の薬液Lが計量槽1に充填されたか否かの判断は、図1の仮想先で示される基準線Xに薬液がきたか否かを、計量槽1に取り付けたセンサーを用いて確認することができる。また、オーバーフロー管12を伝わって薬液がオーバーフロー槽2に移動したことを、オーバーフロー槽2に取り付けたセンサーで確認することによってもよい。
【0017】
オーバーフロー槽2内には、仮想線で示されるオーバーフロー薬液Lの基準線(上限水面)Yの位置に水位感知部30aが取り付けられたレベルセンサー30をさらに有することが好ましい。
【0018】
演算制御部51は、薬液供給バルブ22の開閉により建浴タンク41への薬液の供給を制御する薬液供給バルブ制御手段512と、薬液移送バルブ21の開閉によりオーバーフロー槽2からオーバーフロー管12を介して計量槽1への薬液の移送を制御する薬液移送バルブ制御手段513と、計量槽1内の薬液量を確認する薬液量確認手段514と、オーバーフロー槽2内のオーバーフロー薬液量を確認するオーバーフロー薬液量確認手段515とを有する。またオーバーフロー管12の本体12aを上下動させ本体12aの一端12aの位置を制御するオーバーフロー管制御手段511を有してもよい。演算制御部51としては、CPU等の通常のコンピュータシステムで用いられる演算装置やPLC(プログラマブルコントローラ)等で構成すればよい。
【0019】
薬液計量システム100は、図5に示すように、さらに、薬液の供給量や薬液の特性等の情報を入力するための入力装置52と、原液タンク40から計量槽1に薬液が供給されたか、または建浴タンクに計量槽1から薬液が供給されたかの薬液の供給状態等を出力するための出力装置53と、供給結果やオーバーフロー槽2中のオーバーフロー薬液L量等を表示するための表示装置54と、建浴工程における薬液等に関する種々の情報、例えば薬液の調製に必要な原液の組成、オーバーフロー槽に残った薬液量等の情報を記憶するための記憶装置55とを有する。
【0020】
入力装置52としては、例えばキーボード、マウス等のポインティングデバイス又はTP(タッチパネル)が挙げられる。出力装置53としては、例えばプリンタ等が挙げられる。表示装置54としては、例えば液晶ディスプレイ、モニタ等の画像表示装置等が挙げられる。記憶装置55としてはROM、RAM、磁気ディスクなどの記憶装置が使用可能である。
【0021】
[薬液計量方法]
図1〜図5を参照しつつ薬液計量方法について説明する。
【0022】
(イ)まず、ステップS101において計量する薬液量及び薬液情報を図5の入力装置52を用いて入力する。オーバーフロー管12の一端12aが、計量する薬液量に適した位置にあるか否か判断し、適宜、高さ調整を行う。また薬液移送バルブ21、薬液供給バルブ22が閉まっていることを確認する。なお、図1では計量する薬液量に適した基準線Xに一端12aがあるので高さ調整は不要である。
【0023】
(ロ)ステップS103において、ポンプ(図示省略)を稼動させて原液タンク40から薬液供給管11を介して薬液計量装置10の計量槽1に薬液を供給する。その際、図2に示すように、基準線Xを超える規定量以上のオーバーフロー薬液Lは、オーバーフロー管12の一端1aから他端1bを介してオーバーフロー槽2に移送される。その後、規定量の薬液Lが計量槽1に充填されたか、薬液量確認手段514を作動させ確認する。計量槽1に規定量の薬液Lが充填されるまで、原液タンク40から計量槽1に薬液の供給を行う。
【0024】
(ハ)ステップS105において規定量の薬液が計量槽1に充填されたか確認する。充填された場合は、ステップS108において図3に示すように、薬液移送バルブ21を閉じたまま、薬液供給バルブ22を開放して、計量槽1から計量された規定量の薬液Lを建浴タンク41に供給する。
【0025】
(ニ)ステップS110においてオーバーフロー薬液量確認手段515を作動させオーバーフロー槽2にオーバーフロー薬液Lがあるか判断を行う。オーバーフロー槽2にオーバーフロー薬液Lがある場合は、薬液供給バルブ22を閉め、薬液移送バルブ21を開放する。そして図4に示すように、オーバーフロー薬液Lをオーバーフロー槽2から原液タンク40へ移送する。
【0026】
(ホ)ステップS112において薬液を計量する必要があるか否か判断する。計量の必要がない場合は、計量を終了させる。計量の必要がある場合は、ステップS101〜ステップS110の工程を繰り返す。
【0027】
従来の計量マス方式の薬液計量装置は、原液タンクから薬液計量装置に薬液を供給して計量する際に、オーバーフローした薬液は、高低差を利用して原液タンクに戻す必要があった。しかし、実施形態に係る薬液計量システム100は、オーバーフロー薬液Lをオーバーフロー槽2に移送した後、薬液移送バルブ21、薬液供給バルブ22を制御することにより、計量槽1にオーバーフロー薬液Lを戻すことができる。そのため、薬液計量装置と原液タンクの間に高低差を設けなければならないという制限がなくなることで、薬液計量装置、原液タンク及び建浴槽のレイアウトが自由になる。また計量槽1を原液タンクより高い位置に配置する必要がないため、計量槽に溜まった薬液の目視観察が容易になる。さらに原液タンクへの液戻し用の配管も不要となる。
【0028】
なお、実施形態に係る薬液計量システム100は、計量マス方式を取っていることからダイヤフラム式定量ポンプ方式で生じる不具合は生じない。即ち、過酸化水素水等の薬液自身が発泡する薬液では、配管中で分解・発泡し補給配管中にエアが溜まるという問題や、硫酸等の比重及び粘度が高い薬液では、定量ポンプの設定ストロークに応じた吐出量が定まらないため、供給時間の長短によって供給量にバラツキが出るという問題は生じない。
【0029】
(その他の実施形態)
上記のように、本発明は実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0030】
例えば、実施形態において説明した構成を一部に含む半導体装置も同様に製造することができる。実施形態においては一組の原液タンク40及び薬液計量装置10を建浴タンク41に接続する薬液計量システム100を説明した。しかし、それに限定されることなく、1組の原液タンク40及び薬液計量装置10を複数用意し、それらを建浴タンク41に接続する構成としてもよい。
【0031】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0032】
1…計量槽
2…オーバーフロー槽
11…薬液供給管
14…薬液排出管
12…オーバーフロー管
13…オーバーフロー薬液移送管
21…薬液移送バルブ
22…薬液供給バルブ
30…レベルセンサー
40…原液タンク
41…建浴タンク
51…演算制御部
52…入力装置
53…出力装置
54…表示装置
55…記憶装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
規定量の薬液を計量する計量槽と、
規定量を超えたオーバーフロー薬液を収容するオーバーフロー槽と、
前記計量槽に規定量の前記薬液を供給した際に、前記薬液の水面に当たる位置に一端が配置され他端がオーバーフロー槽に連通され、前記オーバーフロー薬液を前記計量槽からオーバーフロー槽に移送するオーバーフロー管
とを有することを特徴とする薬液計量装置。
【請求項2】
計量された前記薬液を供給する前記計量槽に取り付けられ薬液供給管と、
一端が前記薬液供給管に連通され他端が前記オーバーフロー槽に連通されたオーバーフロー薬液移送管と、
前記薬液供給管と前記オーバーフロー薬液移送管の連通部より、前記薬液の流れ方向下流に配置された薬液供給バルブと、
前記オーバーフロー薬液移送管の前記一端と前記他端の間に配置された薬液移送バルブとをさらに有し、
前記薬液移送バルブを閉じたまま、薬液供給バルブを開くことで、前記計量槽から計量された規定量の薬液が供給され、
前記薬液供給バルブを閉じたまま、前記薬液移送バルブを開くことで、前記オーバーフロー槽から前記計量槽にオーバーフロー薬液が移送されることを特徴とする請求項1記載の薬液計量装置。
【請求項3】
前記計量槽と前記オーバーフロー槽は、内壁を隔てて一体に形成された計量マス部であることを特徴とする請求項1又は2記載の薬液計量装置。
【請求項4】
前記オーバーフロー管は、計量槽内に配置される前記一端を備え規定量に応じて伸縮自在に調整可能である本体と、前記オーバーフロー槽内に配置される前記他端を備える枝管とを有するL字状であることを特徴とする請求項1又は2に記載の薬液計量装置。
【請求項5】
前記オーバーフロー槽内に、オーバーフローした薬液の水面の上限の位置にセンサー部が取り付けられたレベルセンサーをさらに有することを特徴とする請求項1又は2記載の薬液計量装置。
【請求項6】
請求項2〜5のいずれか1項に記載の薬液計量装置と、
演算制御部
とを備えることを特徴とする薬液計量システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−61425(P2012−61425A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−207784(P2010−207784)
【出願日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】