説明

薬物送達ビヒクルおよびその使用

本発明は、新規な薬物送達ビヒクル、その生成法および使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コレステロールおよびスフィンゴミエリンを含む新規な薬物送達ビヒクル、それらを製造し使用する方法に関し、特に、増殖性疾患、免疫疾患、伝染病、血管疾患、リウマチ病、および炎症性疾患を治療するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、ほとんどの薬物は自由型で患者に投与されているが、この自由型とは溶液状であり、ビヒクルに結合せず、または組み込まれていないことを意味する。用語「自由型」は、さらに、所与の薬物の化学的誘導体および薬物によって形成され得る様々な付加塩を含む。しかし、その自由型での薬物投与と比較した場合、送達ビヒクルへの薬物の取付けまたは薬物の組込みによって利点がもたらされることが分かっていた。そのようなビヒクルへ組込み、または取付けを行うことによって、所与の薬物の全体的効力に作用する要因のいくつかに有利な作用を及ぼすことができる。こうした要因には、組織特異的分配、当該特定組織中または疾患部位への特に優先的な蓄積、特定の細胞型を薬物の標的にすること、血液成分の相互作用の低減、および循環時間の延長が含まれる。様々な薬物送達ビヒクルの適合性と比較した場合、上記要因は重要であるが、そのような送達ビヒクル間だけでなく、ビヒクルからの薬物の放出特性などの要因もその効力に重要なものになる。そのような薬物送達ビヒクルに結合させ、または組み込んだ場合、これらの要因の全ては所与の薬効の改善の可能性にある程度貢献するであろうが、新規な送達ビヒクルを求めての最終的な試験は、その「自由型」薬物や別のビヒクルと比較したときの疾患動物モデルまたは患者における効力である。
【0003】
近年注目を浴びている薬物送達ビヒクルの一つの型は、リポソーム製剤である。一般に、用語「リポソーム」は、内部に水性物を封入し、形成された脂質膜数に応じて、単層または多層の脂質構造体という。典型的には、リポソームは薬物を搭載することができ、すなわち薬物をリポソーム内部にカプセル化し、かつ/または薬物をリポソームに取り付け、あるいは脂質二重層中に組み込むことができる。リポソーム製剤を含むそのような薬物は、自由型薬物と比較して効力が増大することが分かっている。例えば、ビンカアルカロイドビンクリスチンを含むリポソーム製剤は、自由型ビンクリスチンと比較した場合、白血病細胞に対する効力が上昇し、全体的な毒性が減少することが示されている(Mayer et al. (1993) Cancer Chemo. Pharmacol. 33: 17-24(非特許文献1))。リポソームは、ほぼどんな脂質からでも形成することができるので、多様な種々のリポソーム製剤が、当技術分野で知られている。しかし、所与の疾患への薬効に対する個々の脂質が有する作用だけでなく、2種以上の異なる脂質のどのモル比が脂質組成物に効力の改善をもたらすのかはほとんど分かっていない。
【0004】
例えば、EP0555333B1(特許文献1)は、コレステロールの含有量が高いリポソームについて記載している。このリポソームは、コレステロールおよびリン脂質をコレステロール:リン脂質=0.8:1.2の割合で含んでいる。こうした小胞は、抗原応答を引き出すための抗原の送達に適していることが教示され、すなわちワクチンとしての使用が開示されている。
【0005】
US5,543,152(特許文献2)、US5,471,516(特許文献3)、およびUS5,814,335(特許文献4)は、薬物を送達するためのスフィンゴミエリン(SM)およびコレステロール(CH)を含むリポソーム製剤、特に30〜75mol%のスフィンゴミエリンと25〜50mol%のコレステロールを含むリポソームの使用を教示し、このリポソームはスフィンゴソームと呼ばれている。これらのリポソームでは、SMの代わりに、例えば、ジステアロイル‐ホスファチジルコリン(DSPC)を含むリポソームと比べた場合、酸安定性が上昇することが教示されている。例えば、Mayer et al., Biochem. Biophys. Acta 1025: 143-151 (1990)(非特許文献2)に記載されているようなpH勾配依存性カプセル化手順によって、それぞれの薬物がリポソーム中に搭載される場合、酸に対するこの安定性の上昇は利点である。この手順では、リポソーム内部をpH4付近に酸性化する必要がある。さらに、DSPCで製剤化したビンクリスチンと比較した場合、スフィンゴソーム(SM/CH55/45mol%)で製剤化したビンクリスチンの循環時間が延長され、マウス腫瘍モデルで効力が改善したことが開示されている。
【非特許文献1】Mayer et al. (1993) Cancer Chemo. Pharmacol. 33: 17-24
【非特許文献2】Mayer et al., Biochem. Biophys. Acta 1025:143-151 (1990)
【特許文献1】EP0555333B1
【特許文献2】US5,543,152
【特許文献3】US5,471,516
【特許文献4】US5,814,335
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
今回、驚くべきことに、従来技術で開示されている濃度よりも極めて低い濃度のSMおよび高濃度のCHを使用して、疾患治療、特に腫瘍治療で効力が増大したリポソームを生成できることが本発明者らによって見出された。
【課題を解決するための手段】
【0007】
従って、本発明は、リポソームの全モル脂質組成物に対して、CHおよびSMが、それぞれ、モル比で約30〜約60mol%および約5〜約20mol%存在するリポソームを提供する。60mol%を超える濃度では、規則的な脂質二重層構造の形成が制限されることが判明しており、従ってCHの含有量60%が本発明のリポソームの上限である。他方で、コレステロール濃度を30mol%未満に下げると、循環からのリポソームの排出速度が増加すると思われ、それによってリポソーム中に含まれている薬物の生物学的半減期が減少する。同時に、治療的施用での、特に腫瘍治療でのリポソームの効力が減少する。
【0008】
同様に、動物腫瘍モデルにおいて、SMを20mol%超、例えば30mol%に増加させると、ドキソルビシンの効力は減少し、一方SMを5%未満に減らし、またはSMを完全に除去すると、カプセル化したドキソルビシンの循環時間は劇的に減少し、次いで効力も減少する。すなわち、本発明は一つには、リポソームの様々な構成の変化が薬効に及ぼす作用を徹底的に分析し、従来技術のリポソームと比較した場合、コレステロールの含有量が高いリポソームで、SM含有量をかなり減少させることによって、薬物送達および治療効力が改善し安定したリポソーム構造を示すリポソームが得られるという驚くべき発見を通してなされた。
【0009】
好ましい実施形態では、リポソームの全モル脂質組成物に対して、SMがモル比で約8〜約19mol%存在し、より好ましくは約10〜約18mol%、さらにいっそう好ましくは約12〜約16mol%、最も好ましくは約13〜約15mol%存在する。
【0010】
さらに好ましい実施形態では、リポソームの全モル脂質組成物に対して、CHがモル比で約35〜約58mol%存在し、より好ましくは約40〜56mol%、さらにいっそう好ましくは約45〜約54mol%、最も好ましくは約48〜約52mol%存在する。
【0011】
特定の好ましい実施形態では、全モル脂質組成物に対して、リポソームはCHおよびSMをモル比でそれぞれ、約35〜約58mol%および約5〜20mol%含み、好ましくは約40〜約58mol%および約8〜約19mol%、より好ましくは、それぞれ、約45〜約54mol%および約10〜約18mol%、最も好ましくは、それぞれ、約48〜約52mol%および約12〜約16mol%含む。
【0012】
脂質残部、すなわちSMでもCHでもないが、添加して100mol%にするのに必要な脂質の量は、どんな脂質から構成されていてもよい。ここでおよび本発明全体にわたって使用する用語「脂質」は、脂肪特性または脂肪様特性を有するどんな物質をもさす。一般に、脂質は、伸長した無極性残基(X)と、通常、水溶性極性親水性残基(Y)を含み、この脂質は以下の基本式によって特徴付けることができる。
X‐Y
【0013】
式中、nは0以上である。n=0の脂質は「無極性脂質」と称し、n≧1の脂質は「極性脂質」と称する。本発明のリポソームの脂質残部を構成できる脂質は、グリセリド、グリセロリン脂質、グリセロホスフィノ脂質、グリセロホスホノ脂質、スルホ脂質、スフィンゴ脂質、リン脂質、イソプレノリド、ステロイド、ステアリン、ステロール、および脂質を含む炭水化物からなる群から選択されることが好ましい。
【0014】
これらの脂質の中で、脂質残部は一種または複数のリン脂質を含むのが好ましい。そのリン脂質は、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルセリン(PS)、およびホスファチジルエタノールアミン(PE)からなる群から選択されるのが好ましい。さらにより好ましい実施形態では、本発明のリポソームの脂質は、SM、CH、およびリン脂質のみからなる。この場合は、SMおよび/またはCHは、上記のその好ましい濃度範囲で、および特に好ましい濃度範囲で存在してよい。
【0015】
驚くべきことに本発明者らは、リポソームの血清滞留時間をさらに延長することによって、第3の脂質成分であるPEが本発明のリポソームの効力に対して正の作用を発揮することを示すこともできた。従って別の実施形態では、本発明のリポソームは、PEを含み、好ましい実施形態では、リポソームの全モル脂質組成物に対して、PEはモル比で約5〜約25mol%存在し、好ましくは約10〜約20mol%、より好ましくは約12〜約18mol%、最も好ましくは約14〜約16mol%存在する。同時に、SMおよび/またはCHが、上記のその好ましい濃度範囲で、および特に好ましい濃度範囲でリポソーム中に含まれ、脂質残部が先に定義した任意の脂質から構成されている場合に、これらの割合のPEが存在するのが好ましい。しかし、特に好ましい実施形態では、脂質残部はリン脂質から選択される。
【0016】
本発明のリポソーム中に含まれていてよい別の成分はPCである。好ましい実施形態では、リポソームの全モル脂質組成物に対して、PCは約15〜約40mol%を構成する。本発明のリポソームは、約20〜約35mol%のPCを含むのがより好ましい。
【0017】
特定の好ましい実施形態では、リポソームはSM、CH、PE、およびPCからなり、SM、CH、およびPEは上記のその好ましい濃度範囲で、および特に好ましい濃度範囲で存在し、100mol%にするための脂質残部はPCから構成される。
【0018】
本発明のリポソームの直径は、10〜1000nmであってよい。しかし、好ましい実施形態では、リポソームの直径は50〜200nmであり、80〜150nmがより好ましい。例えば、既知の孔径の篩またはメッシュを通しリポソーム組成物を押し出すことによって、リポソームの直径を達成することができる。径を制御するこの方法や別の方法は、当技術分野で周知であり、例えば、Mayhew et al. (1984) Biochim. Biophys. Acta 775:169-174またはOlson et al. (1979) Biochim. Biophys.Acta 557:9-23に記載されている。
【0019】
SMは、類似する親水性頭基を有する脂質の総称である。しかし、この頭基に多くの異なる無極性残基を取り付けることができる。すなわち、様々な天然源から単離したSMは、取り付けられた無極性残基の長さおよび化学構造が実質的に異なり、通常は異なるSMの混合物である。ある種のSMが、特定の優れた効力をもたらすことが本発明者らによって観察されており、従って本発明のリポソーム中に使用されているSMは、乳由来SM、卵黄由来SM、脳由来SM、および合成SMからなる群から選択することが好ましい。好ましい実施形態では、そのSMを含む合成SMはジステアロイル‐SMである。
【0020】
SMと同様に、PEは、ホスファチジルエタノールアミン頭基を有する脂質の総称である。本発明のリポソーム中に組み込んだ場合、ある種のPEは他のものよりも優れた効力をもたらすこともまた本発明者らによって観察されており、従って好ましい実施形態では、PEは、卵由来PE、心臓由来PE、肝臓由来PE、植物由来PE、細菌由来PE、および合成PE、特に1,2‐ジアシル‐sn‐グリセロ‐3‐PE、1‐アシル‐2‐アシル‐sn‐グリセロ‐3‐PEおよび/または1,2‐ジラウロイル‐sn‐グリセロ‐3‐PE(DLPE)からなる群から選択される。
【0021】
別の実施形態では、本発明のリポソーム膜を構成する成分のいずれかを別の化学部分に取り付けることができる。用語、化学部分は特に限定されない。しかし、好ましい実施形態では、化学部分は以下により詳細に記載するような標的部分、または安定化部分である。本発明の意味内での安定化部分は、ひとたび投与されたならばリポソームの循環時間を延長する。特定の好ましい安定化部分は、ガングリオシドGM1、ホスファチジルイノシトール、またはPEGであり、特定の好ましいPEGの分子量は、約1,000〜約10,000g/molであり、約5,000g/molがより好ましい。
【0022】
好ましい実施形態では、化学部分、特に安定化部分は、リポソーム膜を構成する分子の少量にのみ取り付けられる。リポソーム膜の成分の約1〜約20mol%が、取り付けられた化学部分を有することが好ましく、約3〜約10mol%がより好ましく、約5mol%がさらにいっそう好ましい。
【0023】
化学部分、特に安定化部分を取り付けるための好ましいリポソーム成分は、脂質成分である。様々な化学部分を様々な脂質成分に取り付けることができるが、化学部分は本発明のリポソーム内に含まれている一種または複数のリン脂質に取り付けることが好ましい。さらに好ましい実施形態では、一種または複数の化学部分をPEに取り付ける。特に、例えばPEGのような安定化薬剤を使用する場合、取付けにはPEを使用する。
【0024】
安定化部分の取付けに加えて、本発明のリポソームの脂質二重層を安定させるために、界面活性剤、タンパク質およびペプチドをリポソームに組み込むことができる。二重層安定化成分として使用することができる界面活性剤には、これだけには限らないが、Triton X‐100、デオキシコラート、オクチルグルコシド、リゾホスファチジルコリンが含まれる。二重層安定化成分として使用することができるタンパク質には、これだけには限らないが、グリコホリンやチトクロム酸化酵素が含まれる。好ましい実施形態では、リポソームは0.05〜15mol%の安定化薬剤を含むことができる。
【0025】
本発明のリポソームは、ある種の腫瘍細胞に結合する特定の優先性は示さないと思われる。幾つかの施用例では、例えば、細胞傷害性薬物を腫瘍細胞に優先的に送達するのが望ましい腫瘍の治療では、主として体内の特異的部位をリポソームの標的にすることができる本発明のリポソーム標的化手段によって、リポソーム薬物製剤の全身毒性を低減することができ、あるいは別法として同程度の毒性でより多量の薬物を投与できるようになる。従って、本発明のリポソームの別の実施形態では、標的部分を前記リポソームに取り付ける。先に述べたように、化学部分に関して、原理上、標的部分はリポソームのどの成分にも取り付けることができる。標的部分は:a)リポソームの脂質成分の1つに取り付ける、b)本発明のリポソーム膜に組み込むことができる膜タンパク質に取り付ける、あるいはc)それ自体をその脂質層に挿入し、または組込むことができる、ことが好ましい。
【0026】
本説明全体にわたって使用されている用語「取り付ける」は、それぞれ、化学部分、特に標的部分とリポソームの別の成分との間の、直接的もしくは間接的な共有もしくは非共有結合および接続をさす。先に定義した取付けを可能にする多様な化学基は、例えば、ビオチン‐ストレプトアビジン、アミノ反応基(例えば、カルボジイミド、ヒドロキシルメチルホスフィン、イミドエステル、N‐ヒドロキシスクシンイミドエステル、イソチオシアネート、イソシアネート)、スルフヒドリル反応基(例えば、マレイミド、ハロアセチル、ピリジルジスルフィド、アジリジン)、カルボキシル反応分子(例えば、カルボジイミド、カルボジイミダゾール、ジアゾアルカン)、ヒドロキシル反応基(例えば、カルボニルジイミダゾール、アルキルハロゲン、イソシアネート)を含め、当技術分野で知られており、適宜当業者が容易に選択することができる。
【0027】
好ましい実施形態では、標的部分は、ペプチドもしくはタンパク質、特に抗体もしくはその断片、一本鎖抗体もしくはその断片、受容体リガンドもしくはその断片、炭水化物、およびリガンドからなる群から選択される。
【0028】
より詳細には、標的部分は、天然もしくは合成の受容体結合ペプチド、特にRGD含有ペプチドなどのインテグリン結合ペプチド;増殖因子、特にVEGF、EGF、PDGF、TGFα、TGFβ、KGF、SDGF、FGF、IGF、HGF、NGF、BDNF、ニューロトロフィン、BMF、ボンベシン、M‐CSF、GM‐CSF、トロンボポエチン、エリスロポエチン、SCF、SDGF、オンコスタチン、PDEGF、エンドセリン;サイトカイン、特にIL‐1、IL‐2、IL‐3、IL‐4、IL‐5、IL‐6、IL‐7、IL‐8、IL‐9、IL‐10、IL‐12、IL‐13、IL‐14、IL‐15、インターフェロンα、β、もしくはγ;TNFα、TNFβなどの腫瘍壊死因子;ケモカイン、特にランテス、MCAF、MIP‐1αもしくはβ、NAP、β‐トロンボグロブリン;ペプチドホルモン、例えば、SRH、SIHSTH、MRH、MSH、PRH、PIH、プロラクチン、LH‐RH、FSH‐RH、LH/ICSH、FSH、TRH、TSH、CRH、ACTH、アジオテンシン、キニーネ、ヒスタミン;ステロイドホルモン、特にエストロゲン、ゲスターゲン、アンドロゲン、糖質コルチコイド;鉱質コルチコイド;またはそれらの相同物もしくは類似物;ビタミン、特に葉酸;接着分子、特にルイスX、S‐ルイスX、LFA‐1、MAC‐1、VLA‐4、PECAM、ビトロネクチン、GMP‐140、ICAM‐1、VCAM‐1、フィブロネクチン、ラミニン、B7、CD28、CD40、CD40L、およびセレクチン;ウイルスコートタンパク質;単糖類、特にグルコース、マンノース;ならびにオリゴ糖、特にMan2、Man3、Man4、Man5、Man6、Man7、Man8、もしくはMan9、ルイスY、シアリルルイスY、ならびにレクチンからなる群から選択することができる。
【0029】
好ましい実施形態では、標的部分がスペーサーに取り付けられる。本説明全体にわたって使用される用語「スペーサー」は、それがリポソーム成分に取り付けられたときでさえ、標的部分のより優れた接近性(accessibility)を付与するのに役立つ化学部分をさす。リポソーム成分は、例えば、そうでない場合、標的部分の各標的構造への結合を立体的に妨害するであろう本発明の脂質である。この意味内でのスペーサーの直線的伸長は少なくとも0.5nmであり、スペーサーの直線的伸長は1〜10nmが好ましく、2〜5nmがさらにいっそう好ましい。スペーサーは、直鎖もしくは分枝の、飽和もしくは不飽和糖鎖であることが好ましい。糖鎖は、単量体構成単位の多量体反復を含むのが好ましい。それぞれの単量体構成単位の長さに応じて、単量体構成単位の2〜10個の多量体反復が好ましい。好ましい実施形態では、スペーサーは親水性である。スペーサーは、一末端への標的部分の取付けを可能にする官能基、および他方の末端にリポソーム成分、例えば、本発明の脂質へのスペーサーの取付けを可能にする別の官能基を含むことができる。
【0030】
好ましいスペーサーは、二機能性分子、特に、約1〜40個の反復単位を好ましくは含む二機能性ポリエチレンもしくはポリプロピレングリコール誘導体であり、天然および/または合成アミノ酸を含むオリゴペプチドである。このオリゴペプチドは、好ましくは1〜40個の、好ましくは2〜20個の、より好ましくは2〜10個のアミノ酸含む。スペーサーの特定の好ましい構成単位は、8‐アミノ‐3,6‐ジオキサオクタン酸(8-amino-3,6-dioxaoctanoic acid)(doo)であり、1〜10個のdoo反復単位を含むスペーサーが好ましい。2〜5個のdoo単位を含むスペーサーがさらにより好ましく、3個のdoo単位を含むスペーサーが最も好ましい。リポソームと関連して、スペーサーには最適な長さがあり、それは2〜5nmであることが本発明者らによって発見されている。一方で、長さが0.5nm未満のスペーサーでは、ほとんどの場合、リポソーム表面から標的部分が取り付けられている場所までの距離が十分ではなく、効率的な相互作用、すなわち、標的部分とそのそれぞれの標的、例えば、腫瘍細胞などとの結合が行われない。他方で、10nmを超える長さのスペーサーは、「緩み」が増大し、これも標的部分とその標的の間の相互作用に有害である。従って、好ましい実施形態では、スペーサーの長さは1〜10nmであり、2.5〜5nmが好ましい。
【0031】
本発明のリポソームの好ましい実施形態では、標的部分は、脂質、好ましくはリン脂質、例えば、PE、PC、PSなどに取り付けられ、標的部分の取付けに使用される脂質は、N‐カプロイルアミン(caproylamine)‐PE、N‐ドデカニルアミン(dodecanylamine)‐PE、ホファチジルチオエタノール(phophatidylthioethanol)、N‐[4‐(p‐マレイミドメチル(maleimidomethyl))シクロヘキサン(cyclohexane)‐カルボキシアミド(carboxamide)‐PE(N‐MCC‐PE)、N‐[4‐(p‐マレイミドフェニル(maleimidophenyl))ブチルアミド(butyramide)]‐PE(N‐MPB)、N‐[3‐(2‐ピリジルジチオ(pyridyldithio))プロピオネート(propionate)]‐PE(N‐PDP)、N‐スクシニル(succinyl)‐PE、N‐グルタリル(glutaryl)‐PE、N‐ドデカニル(dodecanyl)‐PE、N‐ビオチニル(biotinyl)‐PE、N‐ビオチニル(biotinyl)‐cap‐PE、ホスファチジル(phosphatidyl)‐(エチレングリコール(ehtylene glycol))、PE‐ポリエチレングリコール(polyethylene glycol)(PEG)‐カルボン酸(carboxylic acid)、PE‐PEG‐マレイミド(maleimide)、PE‐PEG‐PDP、PE‐PEG‐アミン(amine)、PE‐PEG‐ビオチン(biotin)、PE‐PEG‐HNS、ジパルミトイル(dipalmitoyl)‐グリセロスクシニル(glycerosuccinyl)‐リジン(lysine)、α‐メトキシ(methoxy)‐ω‐(1,2‐ジオクタデセノイルオキシグリセリル(dioctadecenoyloxy glyceryl))(DO)、α‐メトキシ(methoxy)‐ω‐(1,2‐ジテトラデセノイルオキシグリセリル(ditetradecenoyloxy glyceryl))(DT)からなる群から選択されるのが好ましい。
【0032】
上述の主成分および多くの実施形態での本発明のリポソーム膜を構成する唯一の成分は脂質である。しかし、本発明のある態様では、リポソーム膜は、脂質層中に挿入し/組み込むことができる成分をさらに含むことができる。そのような成分の例には、一個もしくは複数の膜貫通ドメイン、GPI‐アンカー、リポペプチドや糖脂質などの他の両親媒性分子、あるいは一種もしくは複数の脂肪酸、脂質、または他の疎水性部分に接合しまたは融合された分子を含め、親水性部分を有するタンパク質がある。そのような分子は、例えば、リポソームに標的化能力を付与することができ、すなわち、そのような分子は標的部分であってよく、または酵素機能を有していてもよい。
【0033】
先に述べたように、本発明のリポソームは、自由型薬物と比較した場合、循環中での薬物の存在を長びかせ、放出特性、すなわちリポソームから循環への薬物の放出に優れ、血液成分への結合性が低く、かつ、例えばリポソームの生成中に直面する高低のpH条件に対して安定性が良好であると思われる優れた薬物用ビヒクルである。この点で、腫瘍の増殖阻害で判断したマウス腫瘍モデルにおいて、従来技術のリポソーム薬物製剤の循環中の安定性が、本発明のAVE95‐dox製剤よりもはるかに効力が低いことは興味深く留意され、例えば、Doxil(登録商標)(Ortho Biotech Products, L.P.の商標)は、50%値、すなわち投与した当初薬物のわずか50%が循環中で検出され得る時点、が6時間を超えるのに対して、本発明のAVE95‐dox製剤の50%値は約30分にすぎない。本発明のリポソームは、優れた送達ビヒクルなので、好ましい態様では、本発明のリポソームは少なくとも一種の薬物および/または少なくとも一種の診断薬を含む。本発明の意味内での薬物は、投与によって治療効果を発揮するあらゆる化合物である。
【0034】
薬物または診断薬は、リポソーム内部に含め、または親油性薬物の場合には脂質二重層内もしくは層間に含めることもまた、特に好ましい。リポソームに所与の薬物または診断薬を「搭載」するために、従来技術の様々な方法を利用することができる。その最も単純な形では、リポソーム形成中に薬物および/または診断薬を脂質成分と混合する。他の受動的な搭載方法には、脱水‐再含水法(Kirby & Gregoriadis (1984) Biotechnology 2:979)、逆相蒸発法(Szoka & Papahadjopoulos (1978) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 75:4194-)、または界面活性剤枯渇法(Milsmann et al. (1978) Biochim. Biophys. Acta 512:147-155)が含まれる。しかし、これらの技術は、搭載中しばしば、かなりの量の薬物の損失を招き、これは薬物が高価な場合には特に欠点である。
【0035】
薬物および/または診断薬をカプセル化するための他の方法には、いわゆる「遠隔搭載」または「能動的搭載」が含まれ、その際、プリフォームしたリポソームの外部と内部間の勾配、例えば、pH勾配または塩勾配に基づいて、薬物および/または診断薬を勾配に従ってリポソーム中に輸送する(参照、例えば、Cheung et al. (1998) Biochim. Biophys. Acta 1414:205-216;Cullis et al. (1991) Trends Biotechnol. 9:268-272;Mayer et al. (1986) Chem. Phys. Lipids 40:333-345)。
【0036】
前記の受動的および能動的搭載技術ならびに当技術分野で周知の他の方法も全て、限定されることなく当業者は使用することができる。所与のどんな薬物または診断薬についても、最も効率的な搭載方法は、十分に確立された手順により常法の実験によって決定することができる。通常調整される変数は、pH、温度、塩の種類、塩濃度、緩衝液の種類などである。
【0037】
好ましい実施形態では、薬物および/または診断薬は、遠隔搭載によってリポソーム中に搭載する。この方法により搭載しようとする物質の損失が非常に少なくなるからである。好ましい実施形態では、搭載にはpH勾配を使用する。搭載しようとする物質に応じて、通常、リポソーム内部をその外部に対して酸性化する。内部をpH1〜6にした後、薬物または診断薬を搭載するのが好ましい。
【0038】
好ましい実施形態では、薬物は、鎮痛薬、抗リウマチ薬、駆虫薬、抗アレルギー薬、抗貧血薬、抗不整脈薬、抗生物質、血管新生阻害薬、抗感染薬、抗痴呆薬(向知性薬)、抗糖尿病薬、解毒薬、制吐薬、抗眩暈薬、抗てんかん薬、止血薬、抗高浸透圧薬、抗低浸透圧薬、抗凝血剤、抗真菌剤、鎮咳薬、抗ウイルス剤、β‐受容体およびカルシウムチャンネル拮抗薬、気管支溶解剤および喘息薬、ケモカイン、サイトカイン、分裂促進因子、細胞分裂停止薬物、細胞傷害性薬剤、およびそれらのプロドラッグ、皮膚薬、催眠薬および鎮静薬、免疫抑制剤、免疫賦活薬、ペプチドもしくはタンパク質薬物、特にホルモン、生理学的もしくは薬理学的分裂促進因子阻害薬、ケモカイン、サイトカイン、あるいはそのそれぞれのプロドラッグからなる群から選択される。もちろん本発明のリポソームは同時に一種を超える薬物を含むことも想定されている。
【0039】
既に述べたように、その循環時間および放出特性のため、本発明のリポソームは細胞増殖を阻害する必要がある増殖性疾患の治療に特に適しており、従って、リポソームはいかなる細胞分裂停止薬物または細胞傷害性薬物を含んでもよいが、既知の細胞分裂停止薬物および細胞傷害性薬物からは、以下のものが特に好ましい:アルキル化物質、抗代謝産物、抗生物質、エポシロン、核内受容体作用薬および拮抗薬、抗アンドロゲン、抗エストロゲン、白金化合物、ホルモンおよび抗ホルモン薬、インターフェロン、細胞周期依存性タンパク質キナーゼ(CDK)阻害薬、シクロオキシゲナーゼおよび/またはリポキシゲナーゼ阻害薬、生体脂肪酸;プロスタノイド、ロイコトリエンを含む脂肪酸誘導体;タンパク質キナーゼ阻害薬、タンパク質ホスファターゼ阻害薬、脂質キナーゼ阻害薬、白金配位錯体、エチレンイメン、メチルメラミン、トラジン、ビンカアルカロイド、ピリミジン類似体、プリン類似体、アルキルスルホネート、葉酸類似体、アントラセンジオン、置換尿素、メチルヒドラジン誘導体、特にアセジアスルホン、アクラルビシン、アンバゾン、アミノグルテチミド、L‐アスパラギナーゼ、アザチオプリン、ブレオマイシン、ブスルファン、カルシウムホリネート、カルボプラチン、カルペシタビン、カルムスチン、セレコキシブ、クロラムブシル、シス‐プラチン、クラドリビン、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン、ダクチノマイシンダプソン、ダウノルビシン、ジブロムプロプアミジン、ジエチルスチルベストロール、ドセタキセル、ドキソルビシン、エンジイン、エピルビシン、エポチロンB、エポチロンD、エストラムシンホスフェート、エストロゲン、エチニールエストラジオール、エトポシド、フラボピリドール、フロクスウリジン、フルダラビン、フルオロウラシル、フルオキシメステロン、フルタミドホスフェストロール、フラゾリドン、ゲムシタビン、ゴナドトロピン放出ホルモン類似体、ヘキサメチルメラミン、ヒドロキシカルバミド、ヒドロキシメチルニトロフラントイン、カプロン酸ヒドロキシプロゲステロン、ヒドロキシウレア、イダルビシン、イドクスウリジン、イホスファミド、インターフェロンα、イリノテカン、ロイプロリド、ロムスチン、ルルトテカン、マフェナイドスルフェートオールアミド、メクロレタミン、メドロキシプロゲステロンアセテート、酢酸メゲストロール、メルファラン、メパクリン、メルカプトプリン、メトトレキサート、メトロニダゾール、マイトマイシンC、ミトポドジド、ミトタン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、ナリジクス酸、ニフラテル、ニフロキサジド 、ニフララジン、ニフルティモックス、ニムスチン、ニノルアゾール、ニトロフラントイン、ナイトロジェンマスタード、オレオムシン、オキソリン酸、ペンタミジン、ペントスタチン、フェナゾピリジン、フタリルスルファチアゾール、ピポブロマン、プレドニムスチン、プレドニゾン、プロイッシン、プロカルバジン、ピリメタミン、ラルチトレキセド、ラパマイシン、ロフェコキシブ、ロシグリタゾン、サラゾスルファピリジン、スクリフラビニウムクロリド、セムスチンストレプトゾシン、スルファカルバミド、スルフアセタミド、スルファクロピリダジン、スルファジアジン、スルファジクラミド、スルファジメトキシン、スルファエチドール、スルファフラゾール、スルファグアニジン、スルファグアノール、スルファメチゾール、スルファメトキサゾール、コトリモキサゾール、スルファメトキシジアジン、スルファメトキシピリダジン、スルファモキソール、スルファニルアミド、スルファペリン、スルファフェナゾール、スルファチアゾール、スルフィソミジン、スタウロスポリン、タモキシフェン、タキソール、テニポシド、テルチポシド、テストラクトン、テストステロンプロピオネート、チオグアニン、チオテパ、チニダゾール、トポテカン、トリアジクォン、トレオサルファン、トリメトプリム、トロホスファミド、UCN‐01、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビンブラスチン、ビノレルビン、ゾルビシン、あるいはそのそれぞれの誘導体もしくは類似体。次に、癌を治療するために上記の薬物の数種を同時に投与し、従って、一種を超える細胞分裂停止薬物および/または細胞傷害性薬物を本発明のリポソーム中に含めることも想定されている。
【0040】
別の態様では、本発明のリポソームは、抗血管原性薬物、例えば、フマギリン類似体、サリドマイド、2‐メソキシエストラジオール、タンパク質チロシンキナーゼ阻害薬などを含むことができる。そのような薬物は、内皮細胞の活性化および/または増殖が関与する疾病の治療に好ましい。しかし、内皮細胞の活性化および/または増殖が関与する疾病の治療には、細胞分裂停止薬物または細胞傷害性薬物、特に、好ましい細胞分裂停止薬物または細胞傷害性薬物として上に示した薬物を使用することも可能である。
【0041】
用語「免疫抑制剤」は、免疫応答活性を低下させる物質および抗炎症作用を有する物質を含み、好ましい例はグルココルチコイド、特にベクロメタゾン、ベタメタゾン、クロコルトロン、クロプレドノール、コルチゾン、デキサメタゾン、フルドロコルチゾン、フルドロキシコルチド、フルメタソン、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、フルオコルトロン、フルオロメトロン、フルプレドニデンアセテート、ヒドロコルチゾン、パラメタソン、プレドニゾロン、プレドニゾン、プレドニリデン、プレグネノロン、トリアムシノロンもしくはトリアムシノロンアセトニド、シクロスポリン、特にシクロスポリンA、ミコフェノール酸モフェチル、タクロリムス、ラパマイシン、FK506、シクロヘキシミド‐N‐(エタン酸エチル)、アザチオプリン、ガンシクロビル、抗リンパ球グロブリン、アスコマイシン,ミリオシン、MAPキナーゼの薬理学的阻害薬(特に、VX‐745などのp38阻害薬)、カスパーゼ阻害薬、マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害薬、および/またはメトトレキサートである。
【0042】
用語「免疫賦活薬」は、免疫応答の媒介に直接的または間接的に関与する細胞の機能に作用し、その作用が免疫応答につながる物質全てを包含する。これらの細胞は、例えば、マクロファージ、ランゲルハンス細胞および他の樹状細胞、リンパ球、未定細胞だけでなく、線維芽細胞、ケラチノサイト、メラニン細胞など、それ自体免疫系に属さないが皮膚免疫疾患に関与する細胞を含むが、特にランゲルハンス細胞である。免疫応答強度は、例えば、生成された(インターフェロン‐γなどの)サイトカイン量、(MHCIIやCD86などの)樹状細胞の活性マーカーの検出、皮膚中の活性化CD8陽性T細胞数を通して決定することができる。本発明を目的とした免疫賦活薬は、特に、例えば、エキナセアパリダやエキナセアプルプレアから得られる植物免疫賦活薬;例えば、インターロイキン、インターフェロン、コロニー刺激因子などのサイトカイン;および後述物を模倣する細菌構成成分もしくは細菌分子である[細菌DNA;CpG配列を有する非メチル化オリゴデオキシヌクレオチド;細菌細胞壁成分もしくは細胞外被成分、特に、モノホスホリル脂質A、ムラミルジペプチド(N‐アセチルムラミル‐L‐アラニル‐D‐イソグルタミン)および/またはPamCys3などのリポ多糖やその由来分子、;破傷風トキソイド、ポリ‐L‐アルギニン、MHCIIペプチドなどの他の分子]。
【0043】
用語「抗生物質」は、例えば、以下を包含する:ペニシリン、セファロスポリン、テトラサイクリン、アミノグリコシド、マクロライド抗生物質、リンコサミド、ジャイレース阻害薬、スルホンアミド、トリメトプリム、ポリペプチド抗生物質、ニトロイミダゾール誘導体、アンフェニコール、特にアクチノマイシン、アラメチシン、アレキシジン、6‐アミノペニシラン酸、アモキシシリン、アンフォテリシン、アンピシリン、アニソマイシン、アンチアモエビン、アンチマイシン、アフィジコリン、アジダンフェニコール、アジドシリン、バシトラシン、ベクロメタゾン、ベンザチン、ベンジルペニシリン、ブレオマイシン、ブレオマイシン硫酸塩、カルシウムイオノフォアA23187、カプレオマイシン、カルベニシリン、セフアセトリル、セファクロル、セファマンドールナフェート、セファゾリン、セファレキシン、セファログリシン、セファロリジン、セファロチン、セファピリン、セファゾリン、セホペラゾン、セフトリアキソン、セフロキシム、セファレキシン、セファログリシン、セファロチン、セファピリン、セルレニン、クロラムフェニコール、クロルテトラサイクリン、クロラムフェニコールジアセテート、シクラシリン、クリンダマイシン、クロルマジノンアセテート、クロルフェニラミン、クロモマイシンA3、シンナリジン、シプロフロキサシン、クロトリマゾール、クロキサシリン、コリスチンメタンスルホネート、シクロセリン、デアセチルアニソマイシン、デメクロサイクリン、4,4’‐ジアミノジフェニルスルホン、ジアベリジン、ジクロキサシリン、ジヒドロストレプトマイシン、ジピリダモール、ドキソルビシン、ドキシサイクリン、エピシリン、エリスロマイシン、エリスロマイシンストラート、エチルコハク酸エリスロマイシン、ステアリン酸エリスロマイシン、エタンブトール、フルクロキサシリン、フルオシノロンアセトニド、5‐フルオロシトシン、フィリピン、ホルマイシン、フマルアミドマイシン、フラルタドン、フシジン酸、ジェネティシン、ゲンタマイシン、ゲンタマイシン硫酸塩、グリオトキシン、グラミシジン、グリセオフルビン、ヘルボル酸、ヘモリシン、ヘタシリン、カスガマイシン、カナマイシン(A)、ラサロシド、リンコマイシン、マグネシジン、メルファラン、メタサイクリン、メチシリン、メビノリン、ミカマイシン、ミトラマイシン、ミトラマイシンA、ミスラマイシン複合体、マイトマイシン、ミノサイクリン、ミコフェノール酸、ミキソチアゾール、ナタマイシン、ナフシリン、ネオマイシン、ネオマイシン硫酸塩、5‐ニトロ‐2‐フルアルデヒドセミカルバゾン、ノボビオシン、ニスタチン、オレアンドマイシン、オレアンドマイシンリン酸塩、オキサシヒン、オキシテトラサイクリン、パロモマイシン、ペニシリン、ペシロシン、フェネチシリン、フェノキシメチルペニシリン、フェニルアミノサリチラート、フレオマイシン、ピバンピシリン、ポリミキシンB、プロピシリン、ピューロマイシン、ピューロマイシンアミノヌクレオシド、ピューロマイシンアミノヌクレオシド5’‐モノホスフェート、ピリジノールカルバメート、ロリテトラサイクリン、リファンピシン、リファマイシンB、リファマイシンSV、スペクチノマイシン、スピラマイシン、ストレプトマイシン、ストレプトマイシン硫酸塩、スルファベンズアミド、スルファジメトキシン、スルファメチゾール、スルファメトキサゾール、テトラサイクリン、チアンフェニコール、トブラマイシン、トロレアンドマイシン、ツニカルニシン、ツニカマイシンA1同族体、ツニカマイシンA2同族体、バリノマイシン、バンコマイシン、ビノマイシンA1、バージニアマイシンM1、バイオマイシン、および/またはキシロスタシン。
【0044】
用語「抗感染薬」は、例えば、抗真菌剤、駆虫効果のある薬剤、ウイルス増殖阻止剤を包含し、特にアンフォテリシン、ビホナゾール、ブクロサミド、キノリン硫酸塩、クロルミダゾール、クロルフェネシン、クロルキナルドール、クロダントイン、クロキシキン、シクロピロックスオラミン、塩化デカリニウム、ジマゾール、フェンチクロル、フルシトシン、グリセオフルビン、ケトコナゾール、ミコナゾール、ナタマイシン、スルベンチン、チオコナゾール、トイナフテート、抗レトロウイルス剤、および/またはヘルペス治療剤を包含する。
【0045】
用語「抗アレルギー薬」は、例えば、グロブリン、コルチコイド、もしくは抗ヒスタミンのクラスに由来する物質を包含し、特にベクロメタゾンおよびその誘導体、ベタメタゾンコルチゾンおよびその誘導体、デキサメタゾンおよびその誘導体、バミピンアセテート、ブクリジン、クレマスチン、クレミゾール、クロモグリク酸、シプロヘプタジン、吉草酸ジフルコルトロン、ジメトチアジン、ジフェンヒドラミン、ジフェニルピラリン、エフェドリン、フルオシノロン、ヒスタピロジン、イソチペンジル、メトジラジン、オキソメマジン、パラメタソン、プレドニリデン、テオフィリン、および/またはトルプロパミントリトカリンを包含する。
【0046】
用語「分裂促進因子」、「ケモカイン」、「サイトカイン」は、例えば、インターフェロン‐α、インターフェロン‐β、インターフェロン‐γ、インターロイキン‐1、インターロイキン‐2、インターロイキン‐7、インターロイキン‐10、インターロイキン‐12、インターロイキン‐18、GM‐CSF、MIP‐1‐α/β、ランテス、EGF、塩基性または酸性FGF、PDGF、IGF、VEGF、TGF‐βおよび/またはTNF‐αを包含する。
【0047】
用語「皮膚薬」は、例えば、皮膚疾患を治療するためのシェールオイルスルホネート、タールおよびタール誘導体、収斂薬、制汗薬、ざ瘡治療剤、乾癬薬、脂漏治療剤および/または酵素調製物を包含する。
【0048】
本発明のリポソームは、有利な放出パターンを示すので、特定の組織に診断薬を送達するためにこれらを使用することもできる。これは、標的部分に関連して特に好ましく、この標的部分はある組織または疾患部位に本発明のリポソームを優先的に局在化させる。好ましい実施形態では、診断薬は、高電子密度分子、常磁性分子、超常磁性分子、放射性分子、非放射性同位元素、および蛍光分子からなる群から選択される。
【0049】
用語「マーカー」は、化学部分をさし、この化学部分は、蛍光測定、核磁気共鳴、コンピュータ断層撮影、またはシンチグラムを含む分析法によって直接的にまたは間接的に検出することができ、それだけには限らないが、高電子密度分子、常磁性分子、超常磁性分子;例えば、13N、15O、18F、51Gr、54Fe、60Co,67Ga、75Se、99mTc、111In、112mAg、113mIn、123I、133Xe、148Au、35S、33P、32P、11Cなどの放射性分子;例えば、Hや13Cを含む非放射性同位元素;蛍光分子または蛍光や光などを発する分子、例えば、緑色蛍光タンパク質、ルシフェラーゼ、様々な蛍光色素を含み、それらの全ては、当業者によく知られている。
【0050】
リポソームは、好ましくは、膜中に、あるいはリポソーム中に含まれた安定剤、保護剤、金属イオンキレート剤、緩衝液、および/または添加剤の内部に、様々な追加物質を含むことができる。
【0051】
本発明のリポソームは安定構造であり、周囲の薬物または緩衝液を除去するために、生成後に、例えばろ過することができる。薬物および/または診断薬を含有した、あるいは含有しない、純粋なリポソームを使用できるが、その安定性のため、容易な貯蔵を促進するためにリポソームから全ての液体を除去することもできる。従って、本発明のリポソームは、乾燥形で、好ましくは凍結乾燥形で供給することができる。次いで、これらのリポソームは、使用時に水または緩衝液を添加後、容易に再含水させることができる。
【0052】
本発明の別の態様は、本発明のリポソームを生成する方法であり、その場合、SM、CH、および残りの脂質または他の成分を混合する。残りの脂質は、PEおよび/またはPCから選択することが好ましい。最初に薬物または診断薬を脂質に混合しない場合は、第2のステップで薬物および/または診断薬をリポソーム中に搭載する。「遠隔搭載」が、物質、好ましくは薬物および/または診断薬をリポソームに導入する好ましい方式であるので、好ましい実施形態では、本発明の方法は、好ましくはpH勾配を使用する遠隔搭載ステップを含んでよい。
【0053】
本発明の別の態様は、本発明のリポソームまたは本発明の方法に従って生成されたリポソームを含み、さらに、安定剤、保護剤、金属イオンキレート剤、緩衝液、および/または添加剤を含む医薬組成物である。
【0054】
別の態様は、本発明のリポソームまたは本発明の方法に従って生成されたリポソームを含み、さらに安定剤、保護剤、金属イオンキレート剤、緩衝液、および/または添加剤を含む診断組成物である。
【0055】
本発明のリポソーム、本発明の医薬組成物、または本発明の診断組成物は、安定剤を含むことが好ましく、この安定剤はα‐トコフェロール、ビタミンE、あるいは炭水化物、特にグルコース、ソルビトール、スクロース、マルトース、トレハロース、ラクトース、セルビオース、ラフィノース、マルトトリオース、またはデキストランからなる群から選択される。
【0056】
本明細書に開示したリポソームおよびリポソーム組成物は、増殖性疾患、免疫疾患、特に自己免疫疾患、伝染病、血管疾患、リウマチ病、特に骨関節炎もしくはリューマチ性関節炎、炎症性疾患、あるいはそれだけには限らないが、物理的損傷脳梗塞または出血を含む、脈管構造への障害もしくはその透過性の上昇に関連付けられるあらゆる疾患もしくは状態を治療する薬物を生成するための、本発明の特定の優れた送達ビヒクルあるいは医薬組成物である。本発明のリポソーム中に含まれる薬物および/または診断薬は、自由型薬物または診断薬を通常投与する量と同じくらいの量でまたは同一量で患者に投与することができる。適当な用量および投与スキームは、例えば、Berger et al. "Das RoteBuch" (1997) Publisher Ecomed Landsberg Lechを含む様々な情報源から知られている。例えば、ドキソルビシンは、典型的には、3〜4週間毎に1日当たり45〜75mg/mで、または毎週10〜20mg/mの範囲で投与する。しかし、観察される毒性の程度に基づいて、リポソーム中に含まれているそれぞれの薬物の用量または投与頻度を増大し、または低減することも主治医の能力内にある。
【0057】
リポソームまたは医薬組成物は、筋肉内、静脈内、鼻腔内、腹腔内、皮内、または皮下を含む様々な方式によって投与することができる。化合物を疾患部位に直接注射することもできる。
【0058】
本発明者らが実施したさらなる実験では、リポソームおよび医薬組成物は腫瘍の治療に優れた効力を有することが示され、従って好ましい実施形態では、増殖性疾患は胃腸路癌もしくは結腸直腸路癌、肝臓癌、膵臓癌、腎臓癌、膀胱癌、前立腺癌、子宮内膜癌、卵巣癌、精巣癌、黒色腫、口腔粘膜異形成、浸潤性口腔癌、小細胞肺癌および非小細胞肺癌、ホルモン依存性乳癌、非依存性乳癌、移行細胞癌および扁平上皮細胞癌、神経芽細胞腫を含む神経系悪性腫瘍、グリア細胞腫、星細胞腫、骨肉腫、柔組織肉腫、血管腫、内分泌腫瘍、白血病を含む血液異常増殖、リンパ腫、他の骨髄増殖性疾患およびリンパ球増殖性疾患、上皮内癌、過形成病変、腺腫、線維腫、組織球増殖症、慢性炎症性増殖性疾患、血管増殖性疾患、ならびにウイルス誘発増殖性疾患からなる群から選択される。
【0059】
同様に、本発明の別の態様は、増殖性疾患、免疫疾患、伝染病、血管疾患、リウマチ病、および炎症性疾患の群から選択される疾患を診断するための本発明の診断組成物の使用にも関与する。
【0060】
以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態を実証するために含まれている。以下の実施例に開示した技術は、本発明の実施にあたって首尾よく機能することが本発明者らによって発見された技術を表し、従ってその実施に好ましい方式とみなし得ることを当業者には理解されたい。しかし、本開示に照らして、添付の特許請求の範囲に記載した本発明の趣旨と範囲を逸脱せずに、開示した具体的実施形態では多くの変形を行うことができることを当業者は理解すべきものとする。引用した参照文献は全て、参照により本明細書に組み込む。
図面の説明
図1:AVE9の低温電子顕微鏡写真。
図2:様々なAVE製剤とヒト血漿の相互作用。画分4=リポソーム画分、画分11=主タンパク質画分。
図3:ローダミン標識リポソームを使用しフローサイトメトリーによって分析した、AVE9およびAVE3の、様々な腫瘍細胞系への結合。
図4:Doxilと比較して、自由型ドキソルビシン、およびAVE9もしくはAVE95中にカプセル化したドキソルビシンの薬物動態学。
図5:未カプセル化ドキソルビシンと比較した、AVE9またはAVE95中にカプセル化したドキソルビシンの抗腫瘍効果。C26担腫瘍マウスに4mg/kg体重のドキソルビシンを3度(1、3、および6日目)注入した。
図6:AVE95‐doxとPEG化リポソーム(Doxil)の抗腫瘍効果の比較。C26担腫瘍マウスに4mg/kg体重のドキソルビシンを3度(1、3、および6日目)注入した。
図7:AVE95‐dox、ならびにドキソルビシンを封入して含み、30mol%のSM、50mol%のコレステロール、および20mol%のPC(30/50‐dox)から構成されたリポソームの抗腫瘍効果。C26担腫瘍マウスに4mg/kg体重のドキソルビシンを3度(1、3、および6日目)注入した。
図8:自由型ミトキサントロン、およびAVE95中にカプセル化したミトキサントロンの薬物動態学。
図9:用量4mg/kg体重のミトキサントロンを1、3、6日目に注射使用した、C26大腸癌腫におけるAVE95‐ミトキサントロンの抗腫瘍効果。
【実施例】
【0061】
実施例1:AVE9は長時間循環式リポソームである
本発明者らは、胸腺欠損nu/nuマウス(Harlan、「ヌードマウス」)で様々なリポソーム製剤を薬物動態学的挙動について分析した:AVE3(33.3mol%のコレステロール、DLPE、DOPS)高負帯電リポソーム、AVE5(33.3mol%のコレステロール、DLPE、DOPG)高負帯電リポソーム、AVE7(35mol%のコレステロール、15.4mol%の卵PC、14.7mol%のDLPE、16.7mol%のDOPS、18.2mol%の乳SM)、AVE9(35mol%のコレステロール、32,1mol%のPOPC、14,7mol%のDLPE、18.2mol%の乳SM)、AVE11(35mol%のコレステロール、28,8mol%のPOPC、14,7mol%のDLPE、3,4mol%のDOPS、18.2mol%の乳SM)、AVE14(33.3mol%のコレステロール、33.3mol%の卵PC、33.3mol%のDLPE)。
【0062】
脂質は全て、Avanti Polar Lipids(USA)から購入し、さらに精製することなく使用した。リポソームは、乾燥脂質フィルムから含水によって調製した。この目的のために、脂質をクロロホルムまたはクロロホルム/メタノール(1:1)に溶解し、示した割合で混合した。薬物動態を研究するために、トリチウム標識コレステリルオレオイルエーテル(10μCi/μmol脂質)を加えた。ロータリーエバポレーターを使用して脂質を乾燥させ、残留溶媒を高真空除去した。次いで、脂質フィルムに10mMのTris‐HCl pH7.4を含水させて最終脂質濃度10μmol/mlにした。50nm膜に通してリポソームを21回押し出した。調製したリポソームは全て、平均径が80〜110nmであった。平均ゼータ電位は、AVE3が−67mV、AVE5が−43mV、AVE7が−49mV、AVE9が−8mV、およびAVE14が−12mVであった。
【0063】
リポソーム(PBS中1μmolの脂質)をヌードマウスの尾静脈に静注した。様々な時点で血液試料を採取し、シンチレーションカウンティングによって放射能を分析した。腫瘍および臓器蓄積を分析するために、確立された皮下マウスC26大腸癌を有するヌードマウスにリポソームを注射した。この研究によって、AVE3、AVE5、およびAVE7が循環から急速に排出されることが示された(50%値、<5分)。AVE9(50%値、約70〜80分)、AVE11(50%値、約10分)、およびAVE14(50%値、約30分)では長い循環時間が観察された。すなわち、AVE9脂質組成物に基づくリポソームは、血流中の循環が非常に長かった。これは、注射後6時間目に測定された臓器分布によっても反映された。AVE3、AVE5、およびAVE7では、高い肝臓での取込み(40〜60%)および低い腫瘍での蓄積(<0.5%初期用量)が示されたが、特にAVE9では低い肝臓での取込み(約10〜20%)および高い腫瘍での蓄積(2〜4%)が示された。これらの結果は、コレステロール、ホスファチジルコリン、スフィンゴミエリン、およびホスファチジルエタノールアミンから構成されるAVE9リポソームが、好都合な生体内反応速度(in vivo kinetics)を有することを示している。
【0064】
実施例2:空のAVE9リポソームの低温電子顕微鏡検査
5μLのリポソーム調製物を使用し、500メッシュの銅グリッドをコートした。上清除去後、−170℃のエタン中で試料を凍結させた。液体窒素で冷却したグリッドホルダーにグリッドを移し、電子顕微鏡で検査した。
【0065】
AVE9リポソームは、径が50〜200nmで、わずかに卵円であり主として単層構造をしていた(図1)。
【0066】
実施例3:空のAVE9リポソームの安定性
実施例1に記載したようにAVE9リポソームの調製後、リポソームを4〜8℃で貯蔵し、120日間、毎週、光子相関分光法(PCS)によって粒径を分析した。この期間にわたって粒径の増大は観察されず、AVE9リポソームが貯蔵条件下で安定していることが示された。
【0067】
実施例4:AVE9リポソームは、血漿タンパク質に結合せず、結合してもほんのわずかである。
AVE9リポソームの血漿タンパク質への相互作用は、リポソームをヒト血漿と共に37℃で1時間インキュベートすることによって分析した。続いて、セファロース4Bカラムでのサイズ排除クロマトグラフィーによって、リポソームを血漿タンパク質から分離した。トリチウム標識リポソームを使用する初期実験では、リポソームは画分4、5に溶出され、タンパク質は主ピークを画分9〜12に溶出しながら画分6〜20に溶出されることが実証された。これらの実験に、本発明者らは比較用にAVE3、AVE5、AVE14(実施例1を参照)を含めた。サイズ排除クロマトグラフィーによって、血漿と共にインキュベートしたリポソームを分離した後、画分4(リポソーム画分)または画分11(主タンパク質画分)に存在するタンパク質をトリクロル酢酸で沈殿させ、還元条件下で等量をSDS‐PAGEによって分離し、続いて銀染色によってタンパク質を可視化した。高負電荷AVE3およびAVE5リポソームで多数の血漿タンパク質の結合が観察された。それに反して、AVE9だけでなくAV14でも血漿タンパク質の結合は見られず、または週結合が見られただけであった(図2)。元の試料中の血漿タンパク質の存在は、画分11に等量のタンパク質(主としてアルブミン)が存在することによって確認された。これらの結果は、AVE9が、試験管内(in vitro)生理学的条件下では血漿タンパク質と相互に作用しない、または毎週しか作用しないことを実証している。
【0068】
実施例5:AVE9リポソームは、補体因子と相互に作用しない
AVE9リポソームと補体因子の相互作用は、溶血性補体アッセイ(プレートに感作ヒツジ赤血球をアガロースで固定)を使用し分析した。AVE3をこれらの実験に加えた。リポソームが強力な血漿タンパク質結合を示したからである。この目的のために、濃度が0,5〜16nmolの脂質のリポソームをヒト血清と共にインキュベートした。濃度2〜16nmolのAVE3は、補体媒介性溶解が阻害されたことによって示されるように、強力な補体因子結合を示した。それに反して、施用した脂質濃度ではAVE9は補体因子に結合せず、さらにAVE9は血漿タンパク質と相互に作用せず、または弱い作用しか示さないことが証明された。
【0069】
実施例6:AVE9リポソームの細胞結合特性
AVE9リポソームと様々な腫瘍細胞系(ヒト黒色腫細胞系MeWo、B254、およびMSM、ヒト肺癌細胞系A549、ラット膠芽腫細胞系C6)との結合特性は、脂質二重層中に0,3mol%のRh‐DPPEを含むローダミン標識リポソームによって分析した。リポソームを実施例1に記載した通りに調製した。AVE9リポソームの結合と、高負電荷リポソームの結合を比較するために、AVE3リポソームを含めた。腫瘍細胞をリポソーム(100nmolの脂質)と共に4℃で30分間インキュベートし、続いてフローサイトメトリーによって細胞結合活性を分析した。試験した全ての細胞系は、AVE9とほんのわずかに結合(リポソームを用いないでインキュベートした細胞と比較して約2〜3倍の蛍光が増加)しただけであったが、AVE3リポソームはほとんどの細胞系に強力に結合(>10倍の蛍光の増加)した(図3)。
【0070】
実施例7:AVE9リポソームの薬物動態へのコレステロールの影響
様々な濃度のコレステロールが薬物動態に及ぼす作用を10〜50mol%のコレステロールを含むリポソームについて分析した。この目的のために、AVE9製剤に基づくが種々の濃度のコレステロールを含む以下のリポソームを調製した:AVE9(35mol%のコレステロール、32,1mol%のPOPC、14.7mol%のDLPE、18.2mol%のウシ乳SM)、AVE91(10mol%のコレステロール、44,4mol%のPOPC、20,4mol%のDLPE、25,2mol%のウシ乳SM)、AVE92(20mol%のコレステロール、39,5mol%のPOPC、18,1mol%のDLPE、22,2mol%のウシ乳SM)、AVE93(30mol%のコレステロール、34,6mol%のPOPC、15,8mol%のDLPE、19,6mol%のウシ乳SM)、AVE94(40mol%のコレステロール、29,6mol%のPOPC、13,6mol%のDLPE、16,8mol%のウシ乳SM)、およびAVE95(50mol%のコレステロール、24,7mol%のPOPC、11,3mol%のDLPE、14,0mol%のウシ乳SM)。薬物動態を研究するために、トリチウム標識コレステリルオレオイルエーテル(10μCi/μmol、脂質)を脂質二重層中に組み込んだ。実施例1に記載したように、リポソームは、10mMのTris‐HCl pH7.4を含水させることによって乾燥脂質フィルムから調製した。リポソームは全て、−8〜−3mVの範囲というほぼ同じゼータ電位であった。粒径は、AVE91が70nm、AVE95が105nmの範囲にあり、コレステロール濃度を上げると粒径もわずかに増大することが示唆された。
【0071】
リポソーム(PBS中1μmolの脂質)をヌードマウスの尾静脈に静注した。様々な時点で血液試料を採取し、シンチレーションによって放射能を分析した。薬物動態学的挙動の分析によって、循環時間が長い(50%値、70〜100分)20〜50%のコレステロールを含む製剤よりも、10mol%のコレステロールを含むリポソームが循環からの排出が極めて急速(50%値、約25分)であることが実証された。試験した全ての製剤の臓器分布について、有意差は見られなかった。
【0072】
実施例8:AVE9リポソームの薬物動態へのスピンゴミエリンおよびホスファチジルエタノールアミンの影響
AVE9(実施例1を参照)と比較して、異なる濃度のスフィンゴミエリンを含むAVE9製剤またはホスファチジルエタノールアミンを含まないAVE9製剤の薬物動態学を分析した。以下の製剤を試験した:AVE9‐0SM(35mol%のコレステロール、50,3mol%のPOPC、14,7mol%のDLPE)、AVE9‐5SM(35mol%のコレステロール、45,3mol%のPOPC、14,7mol%のDLPE、5mol%の乳SM)、AVE9‐30SM(35mol%のコレステロール、20,3mol%、POPC、14,7mol%のDLPE、30mol%の乳SM)、AVE9‐0PE(35mol%のコレステロール、46,8mol%のPOPC、18.2mol%の乳SM)。実施例1に記載したように、リポソームを調製し、薬物動態特性について分析した。
【0073】
薬物動態学的挙動の分析によって、AVE9、および5mol%のSMを含むAVE9(50%値=70〜80分)と比較して、30mol%のSMを含むリポソームは、血清滞留時間(50%値=19分)が減少することが実証された。SM(AVE9‐0SM)を含まないリポソームも血清滞留時間が減少した(50%値=32分)。PEを含まないAVE9も血清滞留時間が減少した(50%値=60分)。従って、これらの実験から薬物動態は、最適SM濃度が5〜20mol%であるSM濃度の影響を強く受けることが示唆された。
【0074】
実施例9:AVE9リポソームの薬物動態へのPEG化の影響
AVE9および実施例3に記載した他の製剤と比較して、AVE9の薬物動態に働くPEG化の影響をAVE9‐5%PEG5000(33,2mol%のコレステロール、30,5mol%のPOPC、14mol%のDLPE、17,3mol%のウシ乳SM、5mol%のDPPE‐PEG5000)およびAVE9‐0SM/5%PEG5000(33,2mol%のコレステロール、47,8mol%のPOPC、14mol%のDLPE、5mol%のDPPE‐PEG5000)について分析した。実施例1に記載したように、リポソームを調製し、薬物動態特性について分析した。
【0075】
薬物動態学的挙動の分析から、AVE9リポソームのPEG化によって、循環時間はさらに延長(AVE9の75分と比較してPEG化したAVE9の50%値は320分)することが実証された。スフィンゴミエリンを含まないPEG化AVE9リポソーム(AVE9‐0SM/5%PEG5000)の循環時間は減少(50%値43分)した。これらの知見から、スフィンゴミエリンは薬物動態に強く作用し、薬物動態特性に関してスフィンゴミエリンをPEG化に代わる物として考慮できることが示唆された。
【0076】
実施例10:AVE9およびAVE95中へのドキソルビシンのカプセル化
ドキソルビシンをAVE9またはAVE95リポソーム中にカプセル化した(実施例1および7を参照)。この目的のために、脂質フィルムに300mMのクエン酸緩衝液pH4.0を含水させた。押出し後、外部水溶液のpHをNaOHでpH7.4に調整した。リポソームを60℃に加熱し、ドキソルビシンを含むPBSを加え、15分間インキュベートした。これらの実験では、薬物:脂質=1:5(w/w)の割合を常法に従って使用した。未カプセル化ドキソルビシンは、ビバスピンカラムを使用し限外濾過によって除去した。カプセル化効率は、逆相HPLC分析によって定量した。この手法によって、約70〜90%のドキソルビシンを常法に従ってカプセル化することができるであろう。AVE9およびAVE95(脂質組成物について実施例1および7を参照)については、脂質に対する薬物の示した割合ではカプセル化効率に差は観察されず、コレステロールの濃度はカプセル化効率に影響しないことが示された。ドキソルビシンを含むAVE9またはAVE95の粒径は、空のリポソームと比較して約10nm増大した。しかし、PCSによって測定すると平均径は120nm未満であった。低温電子顕微鏡によって、径が70〜150nmであり円構造または卵円構造の主として単層粒子が確認された。6ヵ月の期間に及ぶ4〜8℃での貯蔵で、AVE9‐doxおよびAVE95‐doxの粒径は、わずか10nm増大した。これらの貯蔵条件下、7週間に及ぶ期間に、本発明者らはカプセル化薬物のほんの少しの放出(<5%)を確認しただけであった。
【0077】
実施例11:AVE9‐ドキソルビシンリポソームの薬物動態
AVE9‐doxおよびAVE95‐doxをヌードマウスの尾静脈に静注し、ドキソルビシンの血中濃度を様々な時点でHPLCによって測定した。この実験では、本発明者らは、未カプセル化ドキソルビシン、およびPEG化「ステルスリポソーム」中にカプセル化したドキソルビシン(Doxil(登録商標))を含めた。AVE9‐doxと比較して、AVE95‐doxは、ドキソルビシンの血清滞留時間が長かった(AVE9‐doxでは50%値が11分であるのに対し、AVE95‐doxでは23分)。未カプセル化doxは、循環から急速に排出された(50%値=<3分)。それに反して、Doxil(登録商標)の注射後、50%を超える初期ドキソルビシンが6時間後血中に存在した(図4)。自由型ドキソルビシンと比較して、AVE95‐doxは、肺、心臓、腎臓で薬物の蓄積が減少した。自由型ドキソルビシンと比較してAVE95‐doxを施用後、肝臓および脾臓のドキソルビシン濃度は3倍に増加した。さらに、AVE95‐doxおよび自由型ドキソルビシンをC26担腫瘍マウス中に注射すると、AVE95‐doxでは腫瘍組織中のドキソルビシンの蓄積が増加した(6時間後に約2〜3倍)。これらのデータは、様々な臓器および腫瘍の低温断面の蛍光顕微鏡によって確認できるであろう。
【0078】
実施例12:AVE9およびAVE95‐ドキソルビシンリポソームの薬動力学
さらに研究するために、C26マウス大腸癌モデルで薬力学的実験を実施した。この目的のために、腫瘍細胞をヌードマウスに皮下注射した。腫瘍の大きさが約50〜100mmに達した後、1、3、6日目に4mg/kg体重の用量のドキソルビシンを注射し、担腫瘍マウスをドキソルビシン搭載リポソームで処理した。
【0079】
第1の実験では、AVE9‐doxおよびAVE95‐dox(実施例10を参照)を未カプセル化ドキソルビシンと比較した。この実験では、AVE9‐doxまたは自由型ドキソルビシンにより処理した動物と比較して、AVE95‐doxで処理した動物において腫瘍増殖の減少および生存期間の延長が本発明者らによって認められた。未処理対照動物と比較して、全ての動物で腫瘍増殖が減少した(図5)。12日目に自由型ドキソルビシンおよびAVE95‐doxの差は統計上有意(p=0.05)になった。これは、平均生存時間によっても反映され、その時間はAVE95‐dox処理動物で20日、AVE9‐dox処理動物で16日、ドキソルビシン処理動物で14日、および未処理動物で12日であった。
【0080】
第2の実験では、C26担腫瘍マウスに4または8mg/kg体重で投与した場合について、自由型ドキソルビシンとAVE95‐doxとを比較した。この2種類の濃度では、自由型ドキソルビシンでは腫瘍増殖の差は観察されなかった。それに反して、4mg/mlのAVE95‐doxと比較して、8mg/kgのAVE95‐doxを使用すると腫瘍増殖はさらに減少した。
【0081】
しかし、8mg/mlでは、自由型ドキソルビシンおよびカプセル化したドキソルビシンの両方で死亡率の上昇が観察された。
【0082】
第3の実験では、C26腫瘍を治療するために、4mg/kgの用量を施用し、AVE95‐doxとDoxil(登録商標)を比較した。Doxilと比較して、AVE95‐doxの投与によって腫瘍増殖が統計学的に減少し(p<0.05)、生存期間が延長された(図6)。
【0083】
最終組の実験では、AVE95‐doxリポソームを様々な濃度のスフィンゴミエリンを含むAVE95ベース製剤と比較した。第一に、スフィンゴミエリンをホスファチジルコリンに代えた同じ製剤(AVE95‐0SM‐dox)とAVE95‐doxを比較した。スフィンゴミエリンを除去したことにより、自由型ドキソルビシンで見られた効力まで、効力は大幅に減少した。第二に、50mol%のコレステロール、30mol%のスフィンゴミエリン、および20mol%のホスファチジルコリンからなるリポソームとAVE95‐doxを比較した。すなわち、この製剤は、同じコレステロール濃度ではあるが、スフィンゴミエリンの量がAVE95リポソームの量の約2倍含まれていた。わずか14mol%のスフィンゴミエリンを含むAVE95と比較して、30mol%のスフィンゴミエリンを含むリポソームで、抗腫瘍活性の減少が観察され、AVE95が高SM濃度のリポソームよりも優れていることが証明された(図7)。
【0084】
実施例13:ミトキサントロンをAVE9リポソームにカプセル化
遠隔搭載(Mayer et al. (1986) Chem. Phys. Lipids 40:333-345)によって、ミトキサントロン(MXR)をAVE9またはAVE95リポソーム中にカプセル化した(実施例1および7を参照)。この目的のために、脂質フィルムに300mMのクエン酸緩衝液pH4.0を再含水させた。押出し後、外部水溶液のpHを2NのNaOHによってpH7.4に調整した。リポソームを55℃に加熱し、ミトキサントロンを含むPBSを加え、15分間インキュベートした。これらの実験では、薬物:脂質=1:10(w/w)の割合を常法に従って使用した。未カプセル化ミトキサントロンは、ビバスピンカラムを使用し限外濾過によって除去した。カプセル化効率は、逆相HPLC分析によって測定した。この手法によって、約75〜85%のミトキサントロンを常法に従ってカプセル化することができるであろう。AVE9およびAVE95については、カプセル化効率の差は観察されなかった。AVE95‐MXRは、8℃での貯蔵に安定しており、4週間にわたってほんのわずかの薬物が漏出しただけであった。
【0085】
実施例14:薬物動態 AVE95‐カプセル化ミトキサントロン
AVE95‐MXRリポソームをヌードマウスの尾静脈に静注し、ミトキサントロンの血中濃度を様々な時点でHPLCによって測定した。この実験では、本発明者らは、未カプセル化ミトキサントロンを含めた。循環から急速に排出された未カプセル化ミトキサントロン(50%値=<3分)と比較して、AVE95‐MXRは、ミトキサントロンの血清滞留時間を延長した(50%値=110分)(図8)。自由型ミトキサントロンと比較して、注射から6時間後、AVE95‐MXRによって肺、心臓、腎臓で薬物の蓄積が減少した。肝臓および脾臓のミトキサントロン濃度は、自由型ミトキサントロンと類似した。
【0086】
実施例15:薬理 AVE95‐カプセル化ミトキサントロン
AVE95‐MRXの効力をC26マウス大腸癌モデルで分析した。この目的のために、腫瘍細胞をヌードマウスに皮下注射した。腫瘍の大きさが約50〜100mmに達した後、0、2、5日目にミトキサントロン用量1.5mg/mlまたは4mg/kg体重を注射し、ミトキサントロン搭載リポソームで担腫瘍マウスを処理した。未カプセル化ミトキサントロンをこれらの実験に加えた。用量4mg/kgのミトキサントロンによって、自由型ミトキサントロンおよびカプセル化ミトキサントロンでは強力な腫瘍増殖阻害が観察された。しかし、自由型ミトキサントロンと比較して、AVE95‐カプセル化ミトキサントロンはこの用量で腫瘍増殖がさらに減少した(図9)。自由型ミトキサントロンと比較したこの効力の改善は、1.5mg/ml濃度のミトキサントロンでも観察された。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】AVE9の低温電子顕微鏡写真を示す図である。
【図2】様々なAVE製剤とヒト血漿の相互作用を示す図である。
【図3】ローダミン標識リポソームを使用しフローサイトメトリーによって分析した、AVE9およびAVE3の、様々な腫瘍細胞系への結合を示すグラフである。
【図4】Doxilと比較して、自由型ドキソルビシン、およびAVE9もしくはAVE95中にカプセル化したドキソルビシンの薬物動態学を示すグラフである。
【図5】未カプセル化ドキソルビシンと比較した、AVE9またはAVE95中にカプセル化したドキソルビシンの抗腫瘍効果を示すグラフである。
【図6】AVE95‐doxとPEG化リポソーム(Doxil)の抗腫瘍効果の比較を示すグラフである。
【図7】AVE95‐dox、ならびにドキソルビシンを封入して含み、30mol%のSM、50mol%のコレステロール、および20mol%のPC(30/50‐dox)から構成されたリポソームの抗腫瘍効果を示すグラフである。
【図8】自由型ミトキサントロン、およびAVE95中にカプセル化したミトキサントロンの薬物動態学を示すグラフである。
【図9】用量4mg/kg体重のミトキサントロンを1、3、6日目に注射使用した、C26大腸癌腫におけるAVE95‐ミトキサントロンの抗腫瘍効果を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リポソームの全モル脂質組成物に対して、コレステロール(CH)およびスフィンゴミエリン(SM)が、それぞれ、モル比で30〜60mol%および5〜20mol%存在するリポソーム。
【請求項2】
リポソームの全モル脂質組成物に対して、SMがモル比で10〜18mol%存在し、特に12〜16mol%存在する、請求項1に記載のリポソーム。
【請求項3】
リポソームの全モル脂質組成物に対して、CHがモル比で40〜56mol%存在し、特に48〜52mol%存在する、請求項1または2に記載のリポソーム。
【請求項4】
リポソームの残りの脂質が、グリセリド、グリセロリン脂質、グリセロホスフィノ脂質、グリセロホスホノ脂質、スルホ脂質、スフィンゴ脂質、リン脂質、イソプレノリド、ステロイド、ステアリン、ステロール、および脂質を含む炭水化物からなる群から選択される、請求項1〜3の一項に記載のリポソーム。
【請求項5】
前記リン脂質が、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルセリン(PS)、およびホスファチジルエタノールアミン(PE)からなる群から選択される、請求項4に記載のリポソーム。
【請求項6】
リポソームの全モル脂質組成物に対して、前記PEがモル比で5〜25mol%存在する、請求項5に記載のリポソーム。
【請求項7】
リポソームの全モル脂質組成物に対して、前記PCがモル比で15〜40mol%存在する、請求項5または6に記載のリポソーム。
【請求項8】
リポソームの直径が50〜200nmであり、好ましくは80〜150nmである、請求項1〜7の一項に記載のリポソーム。
【請求項9】
前記SMが、乳由来SM、卵黄由来SM、脳由来SM、および合成SMからなる群から選択される、請求項1〜8の一項に記載のリポソーム。
【請求項10】
前記PEが、卵由来PE、心臓由来PE、肝臓由来PE、植物由来PE、細菌由来PE、および合成PE、特に1,2‐ジアシル‐sn‐グリセロ‐3‐PE、1‐アシル‐2‐アシル‐sn‐グリセロ‐3‐PE、または1,2‐ジラウロイル‐sn‐グリセロ‐3‐PE(DLPE)からなる群から選択される、請求項1〜9の一項に記載のリポソーム。
【請求項11】
標的部分がリポソームに取り付けられる、請求項1〜10の一項に記載のリポソーム。
【請求項12】
前記標的部分が、ペプチドもしくはタンパク質、特に抗体もしくはその断片、一本鎖抗体もしくはその断片、受容体リガンドもしくはその断片、炭水化物、およびリガンドからなる群から選択される、請求項11に記載のリポソーム。
【請求項13】
前記標的部分が、天然もしくは合成の受容体結合ペプチド、特にRGD含有ペプチドなどのインテグリン結合ペプチド;増殖因子、特にVEGF、EGF、PDGF、TGFα、TGFβ、KGF、SDGF、FGF、IGF、HGF、NGF、BDNF、ニューロトロフィン、BMF、ボンベシン、M‐CSF、GM‐CSF、トロンボポエチン、エリスロポエチン、SCF、SDGF、オンコスタチン、PDEGF、エンドセリン;サイトカイン、特にIL‐1、IL‐2、IL‐3、IL‐4、IL‐5、IL‐6、IL‐7、IL‐8、IL‐9、IL‐10、IL‐12、IL‐13、IL‐14、IL‐15、インターフェロンα、β、もしくはγ;TNFα、TNFβなどの腫瘍壊死因子;ケモカイン、特にランテス、MCAF、MIP‐1αもしくはβ、NAP、β‐トロンボグロブリン;ペプチドホルモン例えばSRH、SIH、STH、MRH、MSH、PRH、PIH、プロラクチン、LH‐RH、FSH‐RH、LH/ICSH、FSH、TRH、TSH、CRH、ACTH、アジオテンシン、キニーネ、ヒスタミン;ステロイドホルモン、特にエストロゲン、ゲスターゲン、アンドロゲン、糖質コルチコイド;鉱質コルチコイド;またはそれらの相同物もしくは類似物;ビタミン、特に葉酸;接着分子、特にルイスX、S‐ルイスX、LFA‐1、MAC‐1、VLA‐4、PECAM、ビトロネクチン、GMP‐140、ICAM‐1、VCAM‐1、フィブロネクチン、ラミニン、B7、CD28、CD40、CD40L、およびセレクチン;ウイルスコートタンパク質;単糖類、特にグルコース、マンノース;ならびにオリゴ糖、特にMan2、Man3、Man4、Man5、Man6、Man7、Man8、もしくはMan9、ルイスY、シアリルルイスY、レクチンからなる群から選択される、請求項11の一項に記載のリポソーム。
【請求項14】
前記標的部分がスペーサーに取り付けられる、請求項11〜13の一項に記載のリポソーム。
【請求項15】
前記スペーサーの長さが1〜10nmであり、好ましくは2.5〜5nmである、請求項14に記載のリポソーム。
【請求項16】
前記標的部分が脂質に取り付けられる、請求項11〜15の一項に記載のリポソーム。
【請求項17】
前記脂質が、N‐カプロイルアミン‐PE、N‐ドデカニルアミン‐PE、ホスファチジルチオエタノール、N‐[4‐(p‐マレイミドメチル)シクロヘキサン‐カルボキシアミド‐PE(N‐MCC‐PE)、N‐[4‐(p‐マレイミドフェニル)ブチルアミド]‐PE(N‐MPB‐PE)、N‐[3‐(2‐ピリジルジチオ)プロピオネート]‐PE、(N‐PDP‐PE)、N‐スクシニル‐PE、N‐グルタリル‐PE、N‐ドデカニル‐PE、N‐ビオチニル‐PE、N‐ビオチニル‐Cap‐PE、ホスファチジル‐(エチレングリコール)、PE‐ポリエチレングリコール(PEG)‐カルボン酸、PE‐PEG‐マレイミド、PE‐PEG‐PDP、PE‐PEG‐アミン、PE‐PEG‐ビオチン、PE‐PEG‐HNS、ジパルミトイル‐グリセロスクシニル‐リジン.α‐メトキシ‐ω‐(1,2‐ジオクタデセノイルオキシグリセリル)(DO)、およびα‐メトキシ‐ω‐(1,2‐ジテトラデセノイルオキシグリセリル)(DT)からなる群から選択される、請求項16に記載のリポソーム。
【請求項18】
リポソーム中に一種もしくは複数の薬物および/または診断薬が含まれる、請求項1〜17の一項に記載のリポソーム。
【請求項19】
前記薬物が、鎮痛薬、抗リウマチ薬、駆虫薬、抗アレルギー薬、抗貧血薬、抗不整脈薬、抗生物質、抗感染薬、抗痴呆薬(向知性薬)、抗糖尿病薬、解毒薬、制吐薬、抗眩暈薬、抗てんかん薬、止血薬、抗高浸透圧薬、抗低浸透圧薬、抗凝血剤、抗真菌剤、鎮咳薬、抗ウイルス剤、β‐受容体およびカルシウムチャンネル拮抗薬、気管支溶解剤および喘息薬、ケモカイン、サイトカイン、分裂促進因子、細胞分裂停止薬物、細胞傷害性薬剤、およびそのプロドラッグ、皮膚薬、催眠薬および鎮静薬、免疫抑制剤、免疫賦活薬、ペプチドもしくはタンパク質薬物、特にホルモン、および生理学的もしくは薬理学的分裂促進因子阻害薬、ケモカイン、またはサイトカイン、あるいはそのそれぞれのプロドラッグからなる群から選択される、請求項18に記載のリポソーム。
【請求項20】
前記細胞分裂停止薬物および細胞傷害性薬物が、アルキル化物質、抗代謝産物、抗生物質、エポシロン、核内受容体作用薬および拮抗薬、抗アンドロゲン、抗エストロゲン、白金化合物、ホルモンおよび抗ホルモン薬、インターフェロン、細胞周期依存性タンパク質キナーゼ(CDK)阻害薬、シクロオキシゲナーゼおよび/またはリポキシゲナーゼ阻害薬、生体脂肪酸;プロスタノイド、ロイコトリエンを含む脂肪酸誘導体;タンパク質キナーゼ阻害薬、タンパク質ホスファターゼ阻害薬、脂質キナーゼ阻害薬、白金配位錯体、エチレンイメン、メチルメラミン、トラジン、ビンカアルカロイド、ピリミジン類似体、プリン類似体、アルキルスルホネート、葉酸類似体、アントラセンジオン、置換尿素、メチルヒドラジン誘導体、特にアセジアスルホン、アクラルビシン、アンバゾン、アミノグルテチミド、L‐アスパラギナーゼ、アザチオプリン、ブレオマイシン、ブスルファン、カルシウムホリネート、カルボプラチン、カルペシタビン、カルムスチン、セレコキシブ、クロラムブシル、シス‐プラチン、クラドリビン、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン、ダクチノマイシンダプソン、ダウノルビシン、ジブロムプロプアミジン、ジエチルスチルベストロール、ドセタキセル、ドキソルビシン、エンジイン、エピルビシン、エポチロンB、エポチロンD、エストラムシンホスフェート、エストロゲン、エチニールエストラジオール、エトポシド、フラボピリドール、フロクスウリジン、フルダラビン、フルオロウラシル、フルオキシメステロン、フルタミドホスフェストロール、フラゾリドン、ゲムシタビン、ゴナドトロピン放出ホルモン類似体、ヘキサメチルメラミン、ヒドロキシカルバミド、ヒドロキシメチルニトロフラントイン、カプロン酸ヒドロキシプロゲステロン、ヒドロキシウレア、イダルビシン、イドクスウリジン、イホスファミド、インターフェロンα、イリノテカン、ロイプロリド、ロムスチン、ルルトテカン、マフェナイドスルフェートオールアミド、メクロレタミン、メドロキシプロゲステロンアセテート、酢酸メゲストロール、メルファラン、メパクリン、メルカプトプリン、メトトレキサート、メトロニダゾール、マイトマイシンC、ミトポドジド、ミトタン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、ナリジクス酸、ニフラテル、ニフロキサジド 、ニフララジン、ニフルティモックス、ニムスチン、ニノルアゾール、ニトロフラントイン、ナイトロジェンマスタード、オレオムシン、オキソリン酸、ペンタミジン、ペントスタチン、フェナゾピリジン、フタリルスルファチアゾール、ピポブロマン、プレドニムスチン、プレドニゾン、プロイッシン、プロカルバジン、ピリメタミン、ラルチトレキセド、ラパマイシン、ロフェコキシブ、ロシグリタゾン、サラゾスルファピリジン、スクリフラビニウムクロリド、セムスチンストレプトゾシン、スルファカルバミド、スルファセタミド、スルファクロピリダジン、スルファジアジン、スルファジクラミド、スルファジメトキシン、スルファエチドール、スルファフラゾール、スルファグアニジン、スルファグアノール、スルファメチゾール、スルファメトキサゾール、コトリモキサゾール、スルファメトキシジアジン、スルファメトキシピリダジン、スルファモキソール、スルファニルアミド、スルファペリン、スルファフェナゾール、スルファチアゾール、スルフィソミジン、スタウロスポリン、タモキシフェン、タキソール、テニポシド、テルチポシド、テストラクトン、テストステロンプロピオネート、チオグアニン、チオテパ、チニダゾール、トポテカン、トリアジクォン、トレオサルファン、トリメトプリム、トロホスファミド、UCN‐01、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビンブラスチン、ビノレルビン、ゾルビシン、あるいはそのそれぞれの誘導体もしくは類似体からなる群から選択される、請求項19に記載のリポソーム。
【請求項21】
前記診断薬が、高電子密度分子、常磁性分子、超常磁性分子、放射性分子、非放射性同位元素、および蛍光分子からなる群から選択される、請求項18に記載のリポソーム。
【請求項22】
リポソーム中に安定剤、保護剤、金属イオンキレート剤、緩衝液、および/または添加剤が含まれる、請求項1〜21の一項に記載のリポソーム。
【請求項23】
乾燥、好ましくは凍結乾燥されている、請求項1〜22の一項に記載のリポソーム。
【請求項24】
SM、CH、および残りの脂質が混合される、請求項1〜23の一項に記載のリポソームを生成する方法。
【請求項25】
残りの脂質がPEおよびPCから選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
さらに、安定剤、保護剤、金属イオンキレート剤、緩衝液、および/または添加剤が含まれる、請求項1〜23の一項に記載のリポソーム、あるいは請求項24に記載の方法に従って生成されたリポソームを含む医薬組成物。
【請求項27】
さらに、安定剤、保護剤、金属イオンキレート剤、緩衝液、および/または添加剤が含まれる、請求項1〜23の一項に記載のリポソーム、あるいは請求項24に記載の方法に従って生成されたリポソームを含む診断組成物。
【請求項28】
前記安定剤が、α‐トコフェロール、ビタミンE、あるいは炭水化物、特にグルコース、ソルビトール、スクロース、マルトース、トレハロース、ラクトース、セルビオース、ラフィノース、マルトトリオース、またはデキストランからなる群から選択される、請求項22または23に記載のリポソーム、請求項25に記載の医薬組成物、あるいは請求項27に記載の診断組成物。
【請求項29】
増殖性疾患、自己免疫疾患、伝染病、心血管疾患、リウマチ病、炎症性疾患、あるいは脈管構造への障害もしくはその透過性の上昇、または内皮細胞の活性化に関連付けられるあらゆる疾患もしくは状態の治療用薬物を生成するための、請求項1〜23の一項に記載のリポソーム、あるいは請求項26または28に記載の医薬組成物の使用。
【請求項30】
増殖性疾患が、胃腸路癌もしくは結腸直腸路癌、肝臓癌、膵臓癌、腎臓癌、膀胱癌、前立腺癌、子宮内膜癌、卵巣癌、精巣癌、黒色腫、口腔粘膜異形成、浸潤性口腔癌、小細胞肺癌および非小細胞肺癌、ホルモン依存性乳癌、非依存性乳癌、移行細胞癌および扁平上皮細胞癌、神経芽細胞腫を含む神経系悪性腫瘍、グリア細胞腫、星細胞腫、骨肉腫、柔組織肉腫、血管腫、内分泌腫瘍、白血病を含む血液異常増殖、リンパ腫、他の骨髄増殖性疾患およびリンパ球増殖性疾患、上皮内癌、過形成病変、腺腫、線維腫、組織球増殖症、慢性炎症性増殖性疾患、血管増殖性疾患、ならびにウイルス誘発増殖性疾患からなる群から選択される、請求項29の使用。
【請求項31】
増殖性疾患、自己免疫疾患、伝染病、心血管疾患、リウマチ病、および炎症性疾患の群から選択される疾患を診断するための請求項27に記載の診断組成物の使用。


【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−513122(P2007−513122A)
【公表日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−541920(P2006−541920)
【出願日】平成16年12月6日(2004.12.6)
【国際出願番号】PCT/EP2004/013861
【国際公開番号】WO2005/053642
【国際公開日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(501023476)
【住所又は居所原語表記】Kogle Alle 6,DK−2970 Horsholm DENMARK
【Fターム(参考)】