説明

藻類培養装置

【課題】藻類培養液への排ガス中に含まれる炭酸ガスの効率的な溶解方法と、養液の効率的な供給方法による培養方法と培養装置の提供。
【解決手段】藻類培養装置での排ガスを利用した炭酸ガス溶解液の製造に、気液混合器4〜6を使用し、炭酸ガスを優先的に培養液に溶解吸収させ、吐出されたガスをガス収集容器2に回収し、再度ガス収集容器内のガスを別の気液混合器を通して、培養液に優先的に炭酸ガスを溶解吸収させ、吐出ガスを別のガス収集容器に回収する方法を繰り返すことで排ガス中の炭酸ガスを培養液に優先的に溶解吸収させ、また、養液タンク26の養液供給を給液ポンプ21で行い、排ガス供給配管27の開閉バルブ7と気液混合器用の溶液循環用ポンプ及び給液ポンプは培養液内に設置したpHセンサー30、電導度センサー31とつながるシーケンサー29で制御して、所定範囲内のpH値と養液濃度を維持する藻類の培養装置と培養方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は藻類培養液への排ガス中に含まれる炭酸ガスの効率的な溶解方法と養液の効率的な供給方法による培養方法と培養装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
培養槽内の藻類に排ガス中に含まれる炭酸ガスを吸収させる方法として、培養槽とは別の容器に炭酸ガスを高濃度に含む排ガスを入れ、ポンプで培養液を前記容器内にあるスプレーノズルに供給し噴霧させ、炭酸ガスを溶解させた培養液を製造し、培養槽に戻す培養装置(例えば、実用新案1参照。)や、培養槽内に排ガスを通気して、炭酸ガスを培養液に溶解し、藻に吸収させる方法が提案されている。(例えば、特許文献1参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】 特許 第2827106号公報
【実用新案1】
実用新案 第2540403号公報
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、実用新案1のスプレーノズルによる培養液噴霧では排ガス中の炭酸ガスをすべて培養液に溶解させることは難しく、炭酸ガスが排ガスとして排出される。また、スプレーノズルで培養液を噴霧するため、スプレーノズルの詰まり等の問題が発生する。また、特許文献1の排ガスを培養液へ通気する方法では炭酸ガスが培養液の通過中に全量吸収されず排ガス中に残ったまま排出される。
【0006】
そこで本発明は、脱硝処理及び脱硫処理された炭酸ガスと窒素ガスが主成分の排ガス中に含まれる炭酸ガスの培養液への溶解を効率的に行うことと、炭酸ガスの溶解量を調整することによる培養液のpH値の調整と培養液中の養液濃度の調整を効率的に行う藻類培養装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記目的を達成するため、排ガスを培養槽内でアスピレータやマイクロバブル発生用ノズル等の気液混合せん断方法による気液混合器に通すことにより、水に対する溶解度が窒素ガスより高い炭酸ガスを優先的に溶解液に溶解吸収させ、気液混合器の吐出口より吐出されたガスをガス収集容器に回収し、再度ガス収集容器内のガスを別の気液混合器を通して、培養液に優先的に炭酸ガスを溶解吸収させ、そこから吐出されたガスを別のガス収集容器に回収する方法を繰り返すことで排ガス中の炭酸ガスを培養液に優先的に溶解吸収させ、最後は気液混合器より吐出した主成分が窒素ガスの排ガスをそのまま培養槽外に排出させる。排ガス供給配管の開閉バルブと気液混合器用の培養液循環用ポンプ及び養液供給タンクの給液ポンプはシーケンサーで制御するものとし、培養液内には、シーケンサーに接続したpHセンサー、電導度センサーを設置する。ガス収集容器の構造は底部分のみが開放され、上部及び周辺部からはガスが流出しないような構造とする。
【0008】
藻類は生育により培養液中の溶存炭酸ガスや養液成分を吸収し、培養液のpH値は上昇し、EC値は低下する。pHセンサーによりpH値が一定値より上昇したことを検知するとシーケンサーの制御により排ガス供給配管の開閉バルブが開き高濃度の炭酸ガスを含んだ排ガスが供給され、気液混合器用の培養液循環用ポンプが作動し、気液混合器で炭酸ガスが優先的に培養液に溶解吸収される。逆にpH値が一定値より低下すると排ガス供給配管の開閉バルブが閉じ排ガスの供給停止と培養液循環用ポンプが停止する設計である。また、電導度センサーによりEC値が一定値より低下したことを検知するとシーケンサーの制御により養液供給タンクの給液ポンプが作動し供給配管の供給口より養液が供給され、EC値が一定値より上昇すると給液ポンプが停止する設計となっており、所定範囲内のpH値と養液濃度を維持することができるようになっている。
【発明の効果】
【0009】
以上の説明から明らかなように本発明にあっては次に列挙する効果が得られる。
【0010】
気液混合器とガス収集容器とシーケンサーとpHセンサーを使用することにより藻類培養槽のpH値の調整と排ガスの供給を自動化することができる。
【0011】
気液混合器とガス収集容器を繰り返し連続使用することで、供給した排ガス中の炭酸ガスを培養液に優先的に溶解吸収させることができ、スプレーノズルで培養液を噴霧する方法や培養槽内に排ガスを通気する方法より、最後に排出するガスの炭酸ガス濃度を減少させることができる。
【0012】
給液ポンプ付きの養液供給タンクとシーケンサーと電導度センサーを使用することにより藻類培養槽の養液の濃度調整を自動化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】藻類培養装置全体図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の形態を図1に基づいて説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0015】
図1において、1は藻類培養槽であり、藻類培養槽1内にガス収集容器−A 2、ガス収集容器−B 3とアスピレータ(気液混合器)−C 4、アスピレータ(気液混合器)−D 5、アスピレータ(気液混合器)−E 6を設置する。開閉バルブ7付きの排ガス供給配管8をアスピレータ(気液混合器)−C 4のガス吸気口9に接続し、アスピレータ(気液混合器)−C 4の吐出口10は培養液11に吐出されたガスがガス収集容器−A 2内の上部の気層部12に溜まる位置に設置し、アスピレータ(気液混合器)−D 5のガス吸気口13をその溜まった気層部12のガスを吸気する位置に設置する。アスピレータ(気液混合器)−D 5の吐出口14は培養液11に吐出されたガスがガス収集容器−B 3内の上部の気層部15に溜まる位置に設置し、アスピレータ(気液混合器)−E 6のガス吸気口16をその溜まった気層部15のガスを吸気する位置に設置する。アスピレータ(気液混合器)−E 6の吐出口17は培養液11中で吐出したガスが培養槽1から出て行く位置に設置する。アスピレータ(気液混合器)−C 4の吸液口18、アスピレータ(気液混合器)−D5の吸液口19、アスピレータ(気液混合器)−E 6の吸液口20は培養液循環用ポンプ21の吐液配管22と接続する。培養液循環用ポンプ21の吸液配管23の吸液口24と給液ポンプ25付きの養液供給タンク26からの供給配管27の供給口28を培養液11内に設置する。排ガス供給配管8の開閉バルブ7と培養液循環用ポンプ21及び養液供給タンク26の給液ポンプ25はシーケンサー29で制御するものとし、培養液11内には、シーケンサー29に接続したpHセンサー30、電導度センサー31を設置する。ガス収集容器−A 2、ガス収集容器−B 3の構造は底部分のみが開放され、上部及び周辺部からはガスが流出しないような構造とする。
【0016】
藻類は生育により培養液中の溶存炭酸ガスや養液成分を吸収し、培養液のpH値は上昇し、EC値は低下する。pHセンサー30によりpH値が一定値より上昇したことを検知するとシーケンサー29の制御により排ガス供給配管8の開閉バルブ7が開き排ガスが供給され、アスピレータ(気液混合器)−C 4のガス吸気口9に供給され、培養液循環用ポンプ21が作動し、アスピレータ(気液混合器)−C 4、アスピレータ(気液混合器)−D 5、アスピレータ(気液混合器)−E 6より、炭酸ガスが優先的に溶解吸収された培養液が吐出され、培養液11内に分散し、pH値が一定値より低下すると排ガス供給配管8の開閉バルブ7を閉じ排ガスの供給停止と培養液循環用ポンプ21が停止する。また、電導度センサー31によりEC値が一定値より低下したことを検知するとシーケンサー29の制御により養液供給タンク26の給液ポンプ25が作動し供給配管27の供給口28より養液が供給され、EC値が一定値より上昇すると給液ポンプ25が停止する。
【0017】
本藻類培養装置全体図では省略したが、養液及び炭酸ガス溶解培養液の分散のための培養液の撹拌機や、太陽光、蛍光灯、LED等の光源の照射設備、加温器等を設置し、培養条件を制御することができ、また、藻類の取り出し用バルブを培養槽の下部に取り付け、藻類を取り出すことができる。
【符号の説明】
【0018】
1 藻類培養槽
2 ガス収集容器−A
3 ガス収集容器−B
4 アスピレータ(気液混合器)−C
5 アスピレータ(気液混合器)−D
6 アスピレータ(気液混合器)−E
7 排ガス供給配管の開閉バルブ
8 排ガス供給配管
9 アスピレータ(気液混合器)−Cのガス吸気口
10 アスピレータ(気液混合器)−Cの吐出口
11 培養液
12 ガス収集容器−A内の上部の気層部
13 アスピレータ(気液混合器)−Dのガス吸気口
14 アスピレータ(気液混合器)−Dの吐出口
15 ガス収集容器−B内の上部の気層部
16 アスピレータ(気液混合器)−Eのガス吸気口
17 アスピレータ(気液混合器)−Eの吐出口
18 アスピレータ(気液混合器)−Cの吸液口
19 アスピレータ(気液混合器)−Dの吸液口
20 アスピレータ(気液混合器)−Eの吸液口
21 培養液循環用ポンプ
22 培養液循環用ポンプの吐液配管
23 培養液循環用ポンプの吸液配管
24 培養液循環用ポンプの吸液配管の吸液口
25 養液供給タンクの給液ポンプ
26 養液供給タンク
27 供給配管
28 供給配管の供給口
29 シーケンサー
30 pHセンサー
31 電導度センサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
藻類培養装置での排ガスを利用した炭酸ガス溶解液の製造に、脱硝処理及び脱硫処理された炭酸ガスと窒素ガスが主成分の排ガスを培養槽内でアスピレータやマイクロバブル発生用ノズル等の気液混合せん断方法による気液混合器に通し、水に対する溶解度が窒素ガスより高い炭酸ガスを優先的に培養液に溶解吸収させ、気液混合器の吐出口より吐出されたガスをガス収集容器に回収し、再度ガス収集容器内のガスを別の気液混合器を通して、培養液に優先的に炭酸ガスを溶解吸収させ、そこから吐出されたガスを別のガス収集容器に回収する方法を繰り返すことで排ガス中の炭酸ガスを培養液に優先的に溶解吸収させ、最後は気液混合器より吐出した主成分が窒素ガスの排ガスをそのまま培養槽外に排出させ、また、養液タンクの養液供給を給液ポンプで行い、その排ガス供給配管の開閉バルブと気液混合器用の培養液循環用ポンプ及び給液ポンプはシーケンサーで制御するものとし、培養液内には、シーケンサーにつながれたpHセンサー、電導度センサーを設置し、ガス収集容器の構造は底部分のみが開放され、上部及び周辺部からはガスが流出しないような構造としたことを特徴とする藻類培養装置。
【請求項2】
pHセンサーによりpH値が一定値より上昇したことを検知するとシーケンサーの制御により排ガス供給配管の開閉バルブが開き排ガスが供給され、気液混合器用の培養液循環用ポンプが作動し、気液混合器で炭酸ガスが優先的に培養液に溶解吸収される。逆にpH値が一定値より低下すると排ガス供給配管の開閉バルブが閉じ排ガスの供給停止と培養液循環用ポンプが停止する設計であり、また、電導度センサーによりEC値が一定値より低下したことを検知するとシーケンサーの制御により養液供給タンクの給液ポンプが作動し供給配管の供給口より養液が供給され、EC値が一定値より上昇すると給液ポンプが停止する設計となっており、所定範囲内のpH値と養液濃度を維持することができることを特徴とする請求項1記載の藻類培養装置の藻類培養方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−105627(P2012−105627A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−271969(P2010−271969)
【出願日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(591107034)日本液炭株式会社 (17)
【Fターム(参考)】