説明

藻類破砕装置

【課題】瞬時にかつ確実にアオコなどの原因となっている藻類を破砕することが可能な藻類破砕装置を提供する。
【解決手段】藻類を含む水を水撃ポンプ2に送り、その水撃ポンプ2によって上記藻類に0.4MPa以上の水撃圧を加える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アオコや赤潮などを構成する藻類を破砕して死滅させるための藻類破砕装置に関する。
【背景技術】
【0002】
富栄養化が進行した湖や貯水池では異常繁殖した藻類(植物プランクトン)が水面に浮き上がり水面が緑色に濁った状態となることがある。この状態を形成する藻類の集合体を「アオコ」と呼ぶ。アオコは、湖の美観を損なったり、特有の臭気を放ったりする。また、アオコを構成する一部の藻類には毒性を有するものもある。またアオコが異常に増殖すると、魚介類が一斉に死滅する原因ともなる。
さらに、海水で藻類が異常増殖して海水が変色する赤潮などと呼ばれる現象も、上記アオコと同様な現象である。
【0003】
この異常増殖した藻類の処理方法としては、次のものがある。
(1)最も単純な方法として行われているのが、水と共に回収した藻類を水と分離した後に脱水して処分する脱水ケーキと呼ばれる処理方法である。この処理方法では、処理後の藻類が毒性を含む可能性もあることから産業廃棄物として扱われているので処分には何らかの処理が必要であるが、十分な処理法が確立していない。このため処分できず採取した貯水池内の土中にそのまま埋めているのが現状であって、合理的な方法とは言えないし処理用地も限られている。
【0004】
(2)一般に藻類の処理に有効だと言われている方法として、超音波を用いたキャビテーション効果を利用した処理方法がある。しかし藻類の処理量が膨大であるため、それらを処理するための装置が大掛かりとなるばかりかランニングコストが掛かりすぎ経済的な問題があり実用化されていない。
【0005】
(3)また藻類の破砕手段として高圧の高速流として管路内に設けた金網層を通過させて藻類を断裁するという物理的処理の方法がある。しかし、高圧の高速流とするために大型のポンプを必要とすることから、それを動かすための動力のランニングコストが掛かる。さらに、金網層の編み目の大きさが藻類の細胞規模に比して大き過ぎるため、細胞の破砕までには至らず不十分な処理となっている。
【0006】
(4)薬品の添加による藻類の固定化沈殿処理による方法もある。しかし薬品類の使用により処理後の問題が残る他、分離水の処理にも経費を要する。薬品類の使用は処理物の廃棄、水源の汚染や環境への影響が懸念されるので、基本的には避けなければならない手段である。
ここで、湖などからアオコなどを構成する藻類を回収する方法としては、例えば、水面に桶を浮かべて自然流入した表面水をポンプで吸引するといった方法が有る。しかし、吸引に際して空気を吸い込みポンプが空転するなどの問題があり、積極的に藻類を回収する装置とはなっていない等の問題が残されている。なお、アオコは、水面から所定の深さの間に集中して存在するために、単にホースの端を池などに突っ込んで吸引すれば良いと言うものではない。
【0007】
さらに、細胞の破砕方法としては、特許文献1及び2に記載の方法がある。
特許文献1に記載の方法は、加熱しかつせん断によって細胞壁を破砕しようとするものである。また、特許文献2に記載の方法は、剛性球体を収容した容器内で攪拌羽根によって攪拌することで細胞膜を破砕しようとするものである。
【特許文献1】特開2000−287671号公報
【特許文献2】特開平5−68536号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1の方法では、加熱し且つせん断処理のために大きなエネルギーが必要であるばかりか、せん断処理部を細胞がすり抜けていくおそれがある。
また、特許文献2の方法では、アオコを構成する藻類の破砕としては不十分である。「高圧作用状態から低圧作用状態への瞬時に移行させる」と記載されているが、この技術程度の圧力の移行では、遅すぎて藻類を十分に破砕出来ない。また、処理に155秒と時間が掛かる。また、引用例1と同様に、剛性球体と共に攪拌して破砕しようとしているため、破砕のためのランニングコストが掛かる。
【0009】
このように、藻類の細胞壁の破砕に時間が掛かりすぎたり、十分に破砕するには手間が掛かったり、装置が大型化したりするというような課題がある。
本発明は、上記のような点に着目してなされたもので、短時間でかつ確実にアオコなどの原因となっている藻類を破砕することが可能な藻類破砕装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明のうち請求項1に記載した発明は、藻類を含む水に対して、0.4MPa以上の水撃圧を作用させることで上記藻類の破砕を行うことを特徴とする藻類破砕装置を提供するものである。
次に、請求項2に記載した発明は、藻類を含む水を水撃ポンプに送り、その水撃ポンプによって上記藻類に0.4MPa以上の水撃圧を加えることを特徴とする藻類破砕装置を提供するものである。
次に、請求項3に記載した発明は、請求項2に記載した構成に対し、藻類が発生している水域である藻類発生場所から水と一緒に浮遊している藻類を回収する回収装置と、その回収装置が回収した藻類を含む水を上記水撃ポンプに供給する導水路と、を有することを特徴とするものである。
【0011】
次に、請求項4に記載した発明は、請求項3に記載した構成に対し、上記回収装置は、上記藻類発生場所に浮遊するフロータと、集水口が上記フロータに支持されると共に水面下に配置されて、後述の回収用ポンプ側に延びる吸引経路と、吸引口が上記吸引経路に接続される回収用ポンプと、回収用ポンプから吐出される水を受ける貯水部と、備え、
上記導水路が上記貯水部に接続されることを特徴とするものである。
次に、請求項5に記載した発明は、請求項4に記載した構成に対し、上記藻類発生場所の水面に沿ってフロータを移動させる移動手段を備えることを特徴とするものである。
【0012】
次に、請求項6に記載した発明は、請求項5に記載した構成に対し、上記移動手段は、上記吸引経路から分岐、若しくは上記回収用ポンプの吐出側に接続する管路から分岐するバイパス管と、そのバイパス管の流路の開閉を行う弁とを備え、そのバイパス路の他端部側は、上記フロータに支持されると共に、その他端部開口部が水中に配置されることを特徴とするものである。
次に、請求項7に記載した発明は、請求項6に記載した構成に対し、上記バイパス路は途中で更に複数の分岐支管に分かれ、その複数の分岐支管のうち少なくとも2本の分岐支管の他端開口部の向きを互いに離し且つ同一方向に配置したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、アオコなどの原因となっている藻類を、瞬時に、しかも簡便かつ確実に破砕することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図1は、本実施形態に係る藻類破砕装置の概要構成図である。
(構成)
本実施形態の藻類破砕装置は、図1に示すように、回収装置1と、破砕装置の本体である水撃ポンプ2とから構成される。
上記回収装置1は、貯水池等の藻類発生場所の水面に浮遊する回収装置本体1Aと、浮遊している藻類を水と共に吸い込み搬送する吸引管3と、吸引管3の他端部に接続されて藻類を含む水が供給される電動ポンプや油圧ポンプなどからなる回収用ポンプ4と、貯水部を構成する供給タンク21と、を備える。
【0015】
上記回収装置本体1Aは、水面に浮いて上面が水面より上方に配置される、発泡スチロールからなるフロータ5と、そのフロータ5に支持される空洞体6とを備える。なお、本実施形態では、上記フロータ5を、発泡スチロールからなる平板状の形状の場合を想定して説明するが、これに限定されない。フロータ5は、水面に浮上し浮遊可能なだけの浮力が有れば、平面視で中央部が開口しているなど他の形状でも良いし、例えば浮きなどによって浮力を確保するようにしても良い。
【0016】
上記空洞体6は、フロータ5の下面に配置された箱体であって、側板6aには、アオコを含む水を吸引可能な大きさのスリット7が複数個開口している。図1では、底板6bよりも側板6aの下端部が下方に位置している。これは、底板6bの高さを変更することで、空洞体6内部の容積を変更出来るようにするためである。
上記スリット7の形成位置は、水面から20cmまでの水深の範囲にいずれかに位置するように設定されている。発明者らが確認したところ、異常繁殖したアオコはほぼ、水面〜水深15cmの間に層をなすように浮遊している。
【0017】
空洞体6の底板6bには、吸引管3の一端部が接続され、空洞体6内のアオコを含む水を吸引可能となっている。吸引管3は可撓性を有する管体から構成され、その他端部は、上記回収用ポンプ4の吸引口に接続されている。
ここで、上記フロータ5は、不図示の移動手段で浮遊位置を変更可能となっている。移動手段は、例えばスクリュー及びそのスクリューを回転させるモータなどから構成する。他の好適な移動手段については後述の第2実施形態で説明する。また、別途、ボートなどで回収装置本体1Aを引っ張ってアオコ発生部に配置しても良い。
【0018】
また、上記空洞体6及び吸引管3は吸引経路を構成する。
上記回収用ポンプ4の吐出ポートは、吐出管20を介して供給タンク21に接続され、その供給タンク21に導水管8の一端部が接続され、その導水管8の他端部が水撃ポンプ2の吸引口に接続されている。図2に、水撃ポンプ2の模式図を示す。図2中、符号2aは弁室、符号2bは排水弁、符号2cは揚水弁、符号2dはタンクである。なお、符号2eは圧力計を符号2fは水位計をそれぞれ示しているが、これらは確認のために設けて有るだけで、無くても構わない。
ここで、本実施形態の水撃ポンプ2で水撃圧が0.4MPa以上に設計されている。
なお、水撃ポンプ2の弁室2aに対し3mの高さだけ高い位置に上記供給タンク21を設定すれば、その水のエネルギーだけで0.7MPa以上の水撃圧が発生したことを確認している。
【0019】
(作用効果)
次に、本実施形態の藻類破砕装置の作用効果について説明する。
まず、貯水池などにおける水面上で、アオコが異常繁殖している位置まで回収装置本体1Aを移動させる。場合によっては、その位置に一時的に係留させる。このとき、空洞体6内には、スリット7から水が入り込む。場合によっては、スリット7にシャッタを設けてアオコの発生している位置でのみ開けるようにしても良い。
次に、上記状態で回収用ポンプ4を駆動すると、アオコを含む水がスリット7から空洞体6内に入り込み、続いて、その空洞体6内のアオコを含む水が、吸引管3を介して回収用ポンプ4に吸引されて供給タンク21に貯水され、その供給タンク21から導水管8側に送られる。
【0020】
水撃ポンプ2は、電気や燃料を必要とせず、供給される水のもつエネルギーによって、所定サイクルで排水弁2b及び揚水弁2cが開閉を繰り返す。そして、排水弁2bが開のときに弁室2aから水が排水され、その排水弁2bが閉じるときに水撃現象が発生する。また、水撃現象で弁室2a内の圧力が上昇すると一時的に揚水弁2cが持ち上がって、弁室2a内の水がタンク2dに流れ込む。
【0021】
ここで、水撃ポンプ2は通常、水を揚水するために使用されるが、本発明では、揚水するためでないので、上記タンク2dに接続する揚水管は無くても良い。本発明者らが確認したところ、揚水管を閉塞した状態で作動させ、タンク2d内が、見た目、水で充填された状態となっても水撃ポンプ2は作動していた。もっとも、揚水管を用いて、タンク2d内に順次入ってくる、破砕した藻類を含む水を高所に揚水して処理するようにしても良い。
【0022】
また、図1では排水弁2bからの排水を、貯水池に直接戻すように見えるが、例えばメッシュ状の部材が介挿されて当該メッシュ状部材で破砕した藻類を捕捉して、水だけを貯水池側に戻している。排水は、貯水池に戻さなくても良い。
そして、排水弁2bが閉じるときの水撃作用によって、弁室2a及びその弁室2aに連通する導水管8内に0.4MPa以上の瞬間的な水撃圧が負荷されて弁室2a内及び導水管8内の水に含まれる藻類の細胞が破裂する。なお、タンク2d内の圧力は、揚水管を閉じた状態では、水撃タポンプ2aの作動によって徐々に圧が上昇して行く。
【0023】
ここで、上記水撃圧は、作用時間が0.1sec以下の幅の三角パルス波として作用し、これにより短時間で急激な圧力変動を付与する。なお、実験では、2〜3秒に一回のサイクルで上記水撃が定期的に発生したが、この間隔は水撃ポンプ2の仕様によって異なると思われる。
このように、細胞破砕に、自然エネルギーのみで作動する水撃ポンプ2を使用することで、エネルギーコストが回収用ポンプ4の駆動のみとなり、また瞬間的に高圧となる水撃圧を所定サイクルで連続的に付与することで、確実に藻類の細胞を破砕して死滅させることが出来る。
【0024】
すなわち、水撃ポンプ2の有効なメカニズムは、非圧縮性流体の水を介して高圧の水撃圧が瞬時に、あらゆる方向に伝達されることで、藻類細胞内の浮き袋であるガス胞や細胞に高圧の圧力の作用によって細胞が破砕するためである。この結果、瞬時の高圧に細胞が順応しきれず細胞破砕を引き起こし、水中での急激な圧力の変化が水性生物にとって致命的な損傷を与えるためである。このように藻類の破砕に瞬時の高圧を用いた点が特記できる。一般に藻類などの水性生物は生きていくための餌や養分を水中で確保するために水中を上下左右に移動するが水深方向の上下移動では、水中では水深に比例する静水圧を受けるために体内の圧力が水圧に順応できる機能を有している。そのため時間を掛けて緩やかに加圧した場合ではある程度の高圧にも順応できる能力があり圧力に耐えることができる。従って加圧する場合必要な高圧を瞬時に掛けることが極めて有効である。その為にはパスカルの原理によって示されるように流体中を圧力が伝達することを利用することで、水中の全ての部分に加圧することができ細胞レベルの水性生物の破砕には極めて有効であるといえる。
【0025】
なお、破砕後の細胞は藻類の光合成によって蓄積された糖質を含む多量の成分を含むので、それらのバイオ的な再利用を考えたとき、菌体の培養床としての菌床として利用するなどの方法が考えられる。具体的には破砕細胞に土壌改良のための菌体を培養し、土中に混合することによって土壌を改善することなどの利用がある。
また、藻類の回収については回収層の集水口を水面下に設けたことでポンプによって藻類の存在する水深部分の水を選択的にしかも積極的に回収することができることで藻類の回収能力を飛躍的に向上させることができること、また回収装置本体を自走式にしたことで水域を移動できることから藻類の存在水域への移動が容易で短時間に藻類の回収が可能となり作業の短縮化が図られ極めて経済的な装置といえる。
【0026】
以上のことから、未開発の地域や山奥など電気が無いような地域であっても、アオコを構成する膨大な藻類の破砕が可能となる。
なお、上記水撃圧は、弁室2aだけでなく、それに連通する導水管8内の水に対しても作用するため、実質的には、同じ藻類に対して排水されるまでに複数回水撃圧が掛かることとなる。もっとも1回の水撃圧であっても0.4MPa以上の圧力とすることで確実に破裂させることが出来る。複数回作用することを鑑みると、後述する破砕限界の圧力である、0.3MPaを越える圧力かつ0.4MPa未満の圧力に設定しても良いが、確実に破砕するという観点では0.4MPa以上とすることが好ましい。
【0027】
ここで、上記実施形態では、回収用ポンプ4を使用して藻類を含む水を回収し、回収した水を導水管8に供給しているがこれに限定されない。
従って、例えば図3のように、回収装置1を使用することなく、対象とする貯水池から水を適宜導入できる貯水槽11を配置し、その貯水槽11よりも例えば3m下となるように水撃ポンプ2に配置して、藻類を含む水を水撃ポンプ2に送って藻類の細胞を連続的に破砕させるようにしても良い。この場合には、不図示の網などを使用して、適宜、水面に浮遊しているアオコを貯水槽11側に集めるようにすると良い。
【0028】
「実験」
(1)加圧実験
アオコを含む水をタンク2dに収容して、加圧時間を1secとして各種の圧力で加圧した後に24時間放置してアオコの破砕沈降の状況を実験してみた。アオコを構成する藻類のガス胞が破砕することで沈降すると考えられる。また、細胞破裂でない藻類は24時間の放置の間に再浮上するものと考えられる。
図4に、加える圧力と沈降率との関係をグラフ化したものを示す。
この図4から分かるように、0.3MPaを越える圧力になると沈降が発生し、0.4MPa以上ではほぼ100%以上破砕できることが分かる。すなわち、0.3〜0.4MPaが破砕限界の圧力である。
【0029】
(2)圧力載荷時間
加圧する圧力を0.3MPaと0.4MPaの二種類として、それぞれ圧力載荷時間を5秒、10秒、15秒、60秒、及び600秒とし、24時間放置後の沈降状態を確認した。圧力が0.3PMaでは、載荷時間に関係無くどれも沈降をほとんど確認できなかったが、圧力が0.4MPaでは、載荷時間に関係なく、ほぼ100%の沈降を確認した。
なお、水撃作用では、短時間(0.1秒以下)かつ急激な高圧が作用して、より確実に破砕できていることを確認している。これは水撃ポンプ2から排出された水で破砕沈降の確認をしたものである。なお、水撃圧では急激に高圧を負荷するので、0.4MPaよりも小さな圧力でも確実に沈降させる可能性はある。
【0030】
(3)濃度差
アオコの濃度が10%の場合と50%の場合について、上記(1)の加圧実験を行った。その結果は、圧力が0.4MPaで有れば、濃度に関係なくほぼ100%の破砕沈降率となっていた。すなわち、濃度が違っても沈降する圧力は変化しない。
以上の実験内容から、アオコの濃度に関係なく確実に水に含まれる藻類の細胞をほぼ100%の割合で破砕できることが分かる。
【0031】
(応用例)
次に、上記回収装置本体1Aつまりフロータ5の移動装置の例を説明する。なお上記第1実施形態と同様な部材などについては同一の符号を付して説明する。
なお、本実施形態の藻類破砕装置の基本構成は、上記実施形態と同様である。
ただし、図5に示すように、上記回収用ポンプ4に接続する吐出管20から、送水管を構成するバイパス管10が分岐している。なお、吐出管20におけるバイパス管10の分岐位置より下流側に開閉弁13が介装されている。また、バイパス管10にも破砕処理時は閉じている開閉弁14が介装されている。
【0032】
更に、導水管8にも開閉弁22が設けられている。この弁22は、水撃ポンプ2への供給量を調整するものである。
バイパス管10は、図6及び図7のように、上記吸引管3に沿って上記フロータ5の近くまで延び、さらにいったんフロータ5の上面(水面より上方)に来た後に再度水面下に延びている。そのバイパス管10の他端部の開口の軸は、水平方向の成分を持つように配置されている。本実施形態では、当該他端部の開口の軸ができるだけ水平方向となるように配置されている。
【0033】
本実施形態では、上記バイパス管10は、途中で二つに分岐していて、その2つの分岐支管11毎にそれぞれ電磁弁15が介挿され、その他端部は、左右対称に配置されている。なお、上記電磁弁は、フロータ5の上面に配置されている。上記分岐支管11は3本以上に分岐していても良い。
上記構成の移動手段は、現在のフロータ5の周りにアオコが少なくなったりいなくなったりしたら、上記弁13を閉じた状態で回収用ポンプ4を駆動する。すると、空洞体6及び吸引管3を介して吸引された水が上記バイパス管10に送られ、当該バイパス管10の他端部11aから噴き出される。この水の噴射によってフロータ5、つまり回収装置本体1Aは移動する。
【0034】
また、本実施形態では、左右対をなして分岐支管11を配置し、それぞれに電磁弁15を設けることで、左右の分岐支管11からの噴出量を変えることが可能となり、噴出量を変えることで移動方向を自在に変更することが出来る。また、左右から噴射することで直進性も向上する。
ここで、上記バイパス管10に水を送る場合には、フロータ5の回りにはほとんどアオコが無い状態であるので、アオコによるつまりを心配する必要はない。
また、上記実施形態では、アオコを例として説明しているが、赤潮などの原因となる藻類を対象としても良い。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に基づく第1実施形態に係る装置構成を示す概要図である。
【図2】水撃ポンプの構造を示す一例の図である。
【図3】浮遊する回収装置を使用しない例を示す図である。
【図4】加圧力と沈降率との関係を示す図である。
【図5】本発明に基づく第1実施形態に係る装置構成を示す概要図である。
【図6】本発明に基づく第1実施形態に係る分岐支管の配置例を示す図である。
【図7】本発明に基づく第1実施形態に係る分岐支管の配置例を示す側面図である。
【符号の説明】
【0036】
1 回収装置
2 水撃ポンプ
3 吸引管
4 回収用ポンプ
5 フロータ
6 空洞体
7 スリット(集水口)
10 バイパス管
11 分岐支管
20 吐出管
21 供給タンク(貯水部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
藻類を含む水に対して、0.4MPa以上の水撃圧を作用させることで上記藻類の破砕を行うことを特徴とする藻類破砕装置。
【請求項2】
藻類を含む水を水撃ポンプに送り、その水撃ポンプによって上記藻類に0.4MPa以上の水撃圧を加えることを特徴とする藻類破砕装置。
【請求項3】
藻類が発生している水域である藻類発生場所から水と一緒に浮遊している藻類を回収する回収装置と、その回収装置が回収した藻類を含む水を上記水撃ポンプに供給する導水路と、を有することを特徴とする請求項2に記載した藻類破砕装置。
【請求項4】
上記回収装置は、上記藻類発生場所に浮遊するフロータと、集水口が、上記フロータに支持されると共に水面下に配置される吸引経路と、吸引口が上記吸引経路に接続される回収用ポンプと、回収用ポンプから吐出される水を受ける貯水部と、備え、
上記導水路が上記貯水部に接続されることを特徴とする請求項3に記載した藻類破砕装置。
【請求項5】
上記藻類発生場所の水面に沿ってフロータを移動させる移動手段を備えることを特徴とする請求項4に記載した藻類破砕装置。
【請求項6】
上記移動手段は、上記吸引経路から分岐、若しくは上記回収用ポンプの吐出側に接続する管路から分岐するバイパス管と、そのバイパス管の流路の開閉を行う弁とを備え、そのバイパス路の他端部側は、上記フロータに支持されると共に、その他端部開口部が水中に配置されることを特徴とする請求項5に記載した藻類破砕装置。
【請求項7】
上記バイパス路は途中で更に複数の分岐支管に分かれ、その複数の分岐支管のうち少なくとも2本の分岐支管の他端開口部の向きを互いに離し且つ同一方向に配置したことを特徴とする請求項6に記載した藻類破砕装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−319772(P2007−319772A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−152375(P2006−152375)
【出願日】平成18年5月31日(2006.5.31)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 学校法人日本大学,日本大学生産工学部第38回学術講演会,平成17年12月3日開催
【出願人】(899000057)学校法人日本大学 (650)
【Fターム(参考)】