蚊において複製不可能な弱毒化組み換えアルファウイルス属及びそれらの使用
【課題】 本発明は、蚊細胞中で複製することができず、媒介蚊により伝染しない弱毒化組換えアルファウイルスを開示する。
【解決手段】これら弱毒化アルファウイルスの実施例としては、ベネズエラウマ脳炎ウイルス、東部ウマ脳炎ウイルス、西部ウマ脳炎ウイルス又はチクングンヤ熱ウイルスが挙げられるが、これらに限定されない。本発明はまた、このようなアルファウイルスを構築する方法、及び免疫原性組成物として使用する方法を開示する。
【解決手段】これら弱毒化アルファウイルスの実施例としては、ベネズエラウマ脳炎ウイルス、東部ウマ脳炎ウイルス、西部ウマ脳炎ウイルス又はチクングンヤ熱ウイルスが挙げられるが、これらに限定されない。本発明はまた、このようなアルファウイルスを構築する方法、及び免疫原性組成物として使用する方法を開示する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本国際出願は、2008年1月24日に出願され、現在放棄された米国仮特許出願No.61/062、229号の利益を主張し、それらの内容の全ては参照として、本出願に組み込まれる。
連邦政府補助金の説明
本発明は、米国国立衛生研究所(NIH)/米国国立アレルギー・感染症研究所からの補助金1U54AI057156を通じて得られた資金を一部使用してなされた。その結果として、連邦政府は、本発明において一定の権利を有する。
本発明の分野
本発明は、分子生物学、ウイルス学及びアルファウイルス属の免疫学に関する。更に具体的には、本発明は、弱毒化、蚊媒介感染能力を有さない組み換えアルファウイルス属を提供し、このようなアルファウイルス属を作り出す方法、及び免疫原性組成物の分野におけるこれら弱毒化アルファウイルス属の使用を開示する。
【背景技術】
【0002】
関連分野の記述
トガウイルス科におけるアルファウイルス属は、多くの人及び動物の重要な病原体を有している。これらウイルスは、南極区を除いて広く全ての大陸に分布し、公共の健康に対する重要な脅威を示している(非特許文献1、非特許文献2)。自然状態下では、多くのアルファウイルス属は、蚊により感染し、一生の持続感染の原因となる。この持続的感染は、媒介生物である蚊において生物学的機能において殆ど影響を有さない。蚊による吸血の間に感染される脊椎動物において、アルファウイルス属は急性感染の原因となり、高感染価ウイルス血症を特徴とする。この高感染価ウイルス血症は、自然における新しい蚊の感染及び循環を前提条件としている。
【0003】
ベネズエラウマ脳炎ウイルス(VEEV)は、アルファウイルス属の最も病原性の強いウイルスの1つである。それは、南アメリカ、中央アメリカ及び北アメリカにおいて絶え間なく循環しており、人、馬及び他の家畜を含む散発的な異常発生及び動物間の流行病の原因となる。亜種IC VEEVを含むベネズエラ及びコロンビア(1995)におけるつい最近の大きな発生の間に、約100,000の人症例が発生し、300を超える致命となる脳炎の症例が試算された(非特許文献3)。VEEVによる動物間流行病の間、脳炎による馬の死亡率が83%に達し、人における全体の死亡率が低い(<1%)間、見当識障害、運動失調、精神的抑鬱及び痙攣を含む神経性疾患が、感染した個人の14%まで、特に子供に(非特許文献4)見受けられた。VEEVを原因とする人の疾患は、発熱性疾患として特徴付けられる。この発熱性疾患は、悪寒、激しい頭痛、筋肉痛、眠気及び咽頭炎を伴う。若年及び老年者は、極端なリンパの喪失を伴う網内系感染を発症し、次いで脳炎に至る。CNS感染の結果は、急性髄膜炎であり、その急性髄膜炎が神経細胞の死滅を導くことになる(非特許文献5)。神経兆候は、病気の兆候から4−10日以内に現れる。神経兆候としては発作、感覚異常、行動変化及び昏睡が挙げられる。
【0004】
VEEVの異常発生の継続的な脅威にかかわらず、このウイルスに対する安全で、効果的なワクチンが作られてこなかった。VEEVの弱毒化TC−83株は、モルモット心臓細胞(非特許文献6)におけるVEEVの強毒性トリニダードドンキー(TRD)株の連続継代により40年以上前に作成された。現在、TC−83は、未だ実験室研究者及び軍関係者のための利用可能な唯一のワクチンである。8000人以上の人々が予防接種され(非特許文献7、非特許文献8、非特許文献9)、その累積データは、全てのワクチン接種者の略40%が発熱、全身病及び他の副作用を含む野生のVEEVの典型的な幾つかの兆候を有する疾患を発症することを明らかに示している(非特許文献7)。このTC−83株は、脳内及び皮下接種後(非特許文献10)、一般に新生児マウスを殺すが、成体マウスを殺すことはない。従って、ウイルス病原性に関する更なる弱化及び変異株の効果の研究に対する良い出発物質である。
【0005】
VEEVゲノムは、略12キロベース長であり、細胞内m−RNAの構造を模倣している正極性の1本鎖のRNA分子である。そのゲノムRNAは、5’メチルグアニレートキャップ及び3’ポリアデニル化された尾部(非特許文献11)を有し、ゲノムRNAのヌクレオカプシドからの放出後、直ちに宿主細胞機構によりウイルスタンパク質の翻訳をすることを特徴としている。そのゲノムの5’側3分の2が非構造タンパク質(nsPs)に翻訳される。この非構造タンパク質は、ウイルスゲノムの複製とサブゲノムRNAの転写に必要な複製酵素複合体のウイルスの成分を含む。サブゲノムRNAは、そのゲノムの3’側3分の1に対応している。サブゲノムRNAは、サブゲノムプロモータから合成され、ウイルス構造タンパク質に翻訳される。VEEV TC−83株の弱毒化表現型は、その株のTRDゲノム中の2つの変異の結果である。その内の1つはE2糖タンパク質における120位のアミノ酸置換であり、もう1つは5’UTRにおけるヌクレオチド3を変化させたものである(非特許文献12、非特許文献13、非特許文献11、非特許文献14)。従って、アルファウイルスの非常に高い変異率のために、TC−83の病原性の表現型への復帰が、適当な選択状態、例えばインビボでのウイルス継代が生じる場合において大きな懸念を残す。更には、VEEV TC−83は、蚊細胞内で複製が可能であるとともにワクチン接種の後に蚊に感染することが可能であり(非特許文献15)、従って蚊による伝染が可能性として残る。
【0006】
理想的には、生きたアルボウイルスは、媒介節足動物により伝染すべきではない。というのは、保有宿主の間の循環は、増大する病原性を含む予期しない変化を導くからである。復帰しやすい少数の弱毒化変異による野生型ウイルスから作り出された弱毒化株、或は予期しない方法で進化する遺伝的に修飾された株が生物媒介の循環を被る場合、これは特に当てはまる。前者リスクは、テキサスに限定されていた動物間流行病/異常発生の域外であるルイジアナにおいて、1971の間採取された蚊にVEEV TC−83ワクチン株が検出されたことにより強調される(非特許文献15)。
【0007】
アルファウイルス属に対する感染性cDNAの進歩によって、広範にウイルスゲノムを修飾することによりそれらの弱毒化を調査する機会が広がり、野生型である病原性の表現型への復帰を最小化又は排除する手法を広げた。更には、このようなアルファウイルス属のゲノムは、脊椎動物の細胞においてのみ機能し、起源である昆虫では機能しないRNA要素を含むよう設計される。従って、このような広範囲な変異は、蚊の媒介により遺伝子を修飾されたウイルスの感染を妨げることができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Griffin, D.E.2001.Alphaviruses, p.917-962. In Knipe and Howley (ed.), Fields' Virology, Fourth Edition. Lippincott, Willams and Wikins, New York.
【非特許文献2】Strauss, J. H., E. G. Strauss, 1994., Microbiol.Rev. 58; 491-562.
【非特許文献3】Rivas, F. et al., 1997, J infect Dis 175:828-32
【非特許文献4】Johnson, K. and D. Martin. 1974. Adv. Vet. Sci. Comp. Med. 18:79-116.
【非特許文献5】Dal Canto, M. C., and S. G. Rabinowitz, 1981, J Neurol Sci 49: 397-418.
【非特許文献6】Berge, T. O. et al,. 1961, Am. J. Hyg. 73: 209-218.
【非特許文献7】Alevizatos, A. C. et al., 1967, Am J Trop Med Hyg 16: 762-8
【非特許文献8】Burke, D. S. et al., 1977, J Infect Dis 136: 354-9
【非特許文献9】Pittman, P. R. et al., 1996, Vaccine 14: 337-43.
【非特許文献10】Paessler, S. et al., 2003, J Virol 77: 9278-86
【非特許文献11】Kinney, R. M. et al., 1983, Virology 170: 19-30
【非特許文献12】Davis, N. L. et al. 1991, Virology 183: 20-31
【非特許文献13】Kinney, R. M. et al., 1993, J. Virol. 67: 1269-1277
【非特許文献14】White, L. J. et al., 2001, J Virol 75: 3706-18
【非特許文献15】Pedersen, C. E. et al., 1972, Am J Epidemiol 95: 490-6
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
人及び動物の病原体としての重要性、生物兵器としての潜在力、及び弱毒化アルファウイルス属の応用に関する問題にもかかわらず、先行技術は脊椎動物細胞においてのみ複製可能であるアルファウイルス属の弱毒化株を作り出す方法に欠けている。本発明は、この長年のニーズ及び本分野における要望を満たすものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施形態としては、弱毒化組換えアルファウイルスを作る出す方法を提供することである。このような方法としては、非構造タンパク質4(nsP4)コード配列の末端及びサブゲノムRNAの野生型5’UTRの代わりにアルファウイルスのサブゲノムRNAコード配列の開始AUGとの間の脳心筋炎ウイルス(EMCV IRES)の内部リボソーム侵入部位をクローニングする段階を含む。本発明の更なる関連実施形態としては、上記記載された方法により作る出される弱毒化組換えアルファウイルスである。
【0011】
更に、もう一つの本発明の関連実施形態としては、弱毒化組換えアルファウイルスをコードする遺伝子配列を含むベクターと、このベクターを含むとともに発現する宿主細胞を提供することである。もう一つの更なる本発明の実施形態としては、医薬組成物を提供することである。この組成物は、上記記載された弱毒化組換えアルファウイルス及び薬学的許容可能な担体を含む。本発明の関連実施形態としては、免疫原性組成物を提供することである。この免疫原性組成物は、本明細書中で記載される弱毒化組換えアルファウイルスを含む。
【0012】
本発明のもう一つの関連実施形態としては、アルファウイルスへの暴露に起因する感染から被験体を保護する方法を提供することである。このような方法としては、免疫学的に効果的な量の免疫原性組成物を投与する段階を含み、該免疫原性組成物は本明細書中で記載される弱毒化組換えアルファウイルスを含むことから、アルファウイルスへの暴露に起因する感染から個人を保護する段階を含む。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1A】図1A−1Dは、BHK−21細胞中の組換えEMCV IRESをコードするVEEV TC−83由来のウイルスの複製を示している。図1Aは、設計されたウイルスゲノム、感染性センターアッセイ法(Infectious Centre Assay)におけるインビトロ合成RNAの感染力、インビトロ合成RNA1mgをBHK−21細胞中へトランスフェクション後24時間でのウイルス力価、及びトランスフェクション後48時間でのBHK−21細胞における指示ウイルスにより形成されたプラークのサイズの略図である。矢印は機能性サブゲノムプロモータを指す。黒箱は、EMCV IRESを示す。
【図1B】図1A−1Dは、BHK−21細胞中の組換えEMCV IRESをコードするVEEV TC−83由来のウイルスの複製を示している。図1Bは、VEEV TC−83ゲノムのサブゲノムプロモータを含むフラグメント、及びVEEV/mutSG/IRESの対応するフラグメントのアライメントを示している。プロモータの位置は、開放箱により示されている。VEEV TC−83ゲノムにおけるサブゲノムRNAの開始及びEMCV IRESの開始は矢印により示されている。VEEV/mutSG/IRESゲノムに導入された変異は、小文字により示されている。
【図1C】図1A−1Dは、BHK−21細胞中の組換えEMCV IRESをコードするVEEV TC−83由来のウイルスの複製を示している。図1Cは、ウイルスによりBHK−21細胞中に形成され、トランスフェクション後24時間で採取されたプラークを示している。
【図1D】図1A−1Dは、BHK−21細胞中の組換えEMCV IRESをコードするVEEV TC−83由来のウイルスの複製を示している。図1Dは、BHK−21細胞へのインビトロ合成RNA1mgのトランスフェクション後のウイルスの複製を示している。
【図2A】図2A−2Cは、プラーク精製VEEV/mutSG/IRES変異株で見つかった変異を示している。これら変異株は、BHK−21細胞においてより効果的な複製、及びVEEV TC−83及びVEEV/mutSG/IRESの複製の明確な適応変異の効果を示している。図2Aは、VEEV TC−83の公開された配列と比較して、プラーク分離のゲノムにおいて見つかった変異のリストを示している。
【図2B】図2A−2Cは、プラーク精製VEEV/mutSG/IRES変異株で見つかった変異を示している。これら変異株は、BHK−21細胞においてより効果的な複製、及びVEEV TC−83及びVEEV/mutSG/IRESの複製の明確な適応変異の効果を示している。図2Bは、1又は両方の同定された変異を備えるVEEV TC−83及びVEEV/mutSG/IRESゲノム、及び感染性センターアッセイ法におけるインビトロ合成RNAの感染力の略図である。機能的サブゲノムプロモータは矢印により示され、EMCV IRESは黒箱により示されている。
【図2C】図2A−2Cは、プラーク精製VEEV/mutSG/IRES変異株で見つかった変異を示している。これら変異株は、BHK−21細胞においてより効果的な複製、及びVEEV TC−83及びVEEV/mutSG/IRESの複製の明確な適応変異の効果を示している。図2Cは、インビトロ合成RNAウイルスゲノム1mgのトランスフェクション後のBHK−21細胞における設計されたウイルスの複製を示している。
【図3A】図3A−3Bは、大きなプラークの表現型を示すVEEV/mutSG/IRES変異株のnsP2タンパク質において同定された変異を示す。図3Aは、インビトロ合成RNAのトランスフェクション後24時間で採取されたウイルスストックからプラーク精製分離株のゲノム中に同定された変異(原型)、及びベロ細胞において追加的に3回継代されたストックからの分離株のゲノム中に同定された変異(継代)のリストを示している。
【図3B】図3A−3Bは、大きなプラークの表現型を示すVEEV/mutSG/IRES変異株のnsP2タンパク質において同定された変異を示す。図3Bは、VEEV nsP2における決定された変異の位置を示している。アルファウイルスnsP2における現在既知の機能的ドメインの位置が示されている。
【図4A】図4A−4Bは、インビトロ合成組換えウイルスRNAと導入されたBHK−21細胞におけるタンパク質及びRNA合成の分析を示している。細胞は、指示されたRNA4mgでエレクトロポレーションされ、35mm皿に播かれた。図4Aにおいては、トランスフェクション4.5時間で、ウェル中の培地は10%FBS、ActD(1g/ml)及び[3H]ウリジン(20Ci/ml)で補強された1mlaMEMにより置換された。37℃で4時間インキュベーション後、RNAはアガロース電気泳動法により分離、解析された。ウイルスゲノム及びサブゲノムRNAの位置はG及びSGにより個々に示されている。VEEV/IRES特異的サブゲノムRNAは、他のサブゲノムRNA生産ウイルスよりも大きく広がったバンドを形成する。これは、ゲル中で、VEEV/IRES特異的サブゲノムRNAが28SリボソームRNAと共に移動するからである。
【図4B】図4A−4Bは、インビトロ合成組換えウイルスRNAと導入されたBHK−21細胞におけるタンパク質及びRNA合成の分析を示している。細胞は、指示されたRNA4mgでエレクトロポレーションされ、35mm皿に蒔かれた。図4Bにおいては、トランスフェクション後12時間で、タンパク質が[35S]メチオニンで代謝的に標識され、ドデシル硫酸ナトリウム10%ポリアクリルアミドゲルにて解析された。分子量マーカ(kDa)の位置はゲルの左側に示されている。ウイルス構造タンパク質:C、E1及びp62(E2の前駆体)の位置がゲルの右側に示されている。星印は、細胞タンパク質(熱ショックタンパク質)の位置を示し、IRESをコードするウイルスの複製により誘導される。
【図5A】図5A−5Cは、C710細胞における組換え体、EMCV IRES含有VEEV変異株の継代を示す。図5Aはウイルスの略図を示す。矢印は機能的サブゲノムプロモータの位置を示す。黒箱は、EMCV IRESの位置を示す。
【図5B】図5A−5Cは、C710細胞における組換え体、EMCV IRES含有VEEV変異株の継代を示す。図5BはC710細胞における継代後、組換えウイルスの力価を示している。35mm皿中の細胞は、インビトロ合成RNA(P1)を用いてBHK−21細胞のトランスフェクション後24時間で、又はC710細胞の感染後48時間のいずれかで採取したウイルス試料400mlを感染させられた。破線は、検出限界を示している。
【図5C】図5A−5Cは、C710細胞における組換え体、EMCV IRES含有VEEV変異株の継代を示す。図5Cは、プラーク精製されたVEEV/IRESにおいて同定されたIRES含有配列の検出を示し、C710細胞における効率的な複製を示している。残りのEMCV IRES特異的配列は小文字により示されている。
【図6】図6はNIH3T3細胞におけるVEEV/mutSG/IRES/1及びVEEV TC−83の複製を示している。細胞は10PFU/細胞のMOIで感染させた。培地は指し示された時点で置換され、ウイルス力価はBHK−21細胞のプラークアッセイにより測定された。同じ試料は、生物学的アッセイにおけるIFN−a/b放出を測定するために使用された。放出されたIFN−a/bの濃度は、1ml当たりの国際単位(IU)で表されている。
【図7】図7はVEEV TC−83及びVEEV/mutSG/IRES/1ウイルスで感染させたマウスの生存を示している。生後6日目のNIH Swissマウスは、示されているウイルスの106PFUで脳内に接種された。動物は、2ヶ月間監視された。これらの何れの実験においても感染後9日後死亡するものはいなかった。
【図8】図8は、成体マウスのワクチン接種と暴露後の生存率を示している。5週から6週のメスNIH Swissマウスは、106の用量でVEEV株TC−83又は組換えウイルスを用いて皮下に接種された。免疫3週間後、VEEV株3908の104PFUをマウスの皮下に暴露し、死亡率が記録された。
【図9】図9は蚊に感染することができない弱毒化組換えアルファウイルスを作り出す概略方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、アルファウイルスの弱毒化株を開発する新しい戦略を描くものである。これら弱毒化アルファウイルスは脊椎動物細胞においてのみ複製することができる。この表現型は、ウイルス構造タンパク質の翻訳及び最終的には脳心筋炎ウイルス(EMCV IRES)の内部リボソーム侵入部位に依存するウイルス複製を与えることにより達成される。このような組換えウイルスは、新生児のマウスにおいて増殖可能であり、高い弱毒化の表現型を実証したにもかかわらず、VEEV感染に対して免疫防御を誘導した。更に、ホルマリン不活性化ワクチンは、高価であるとともに効果のないものである。これに加えて、これらワクチンは、複合的な連続ワクチン接種を必要とする。その上、VEEV感染に対する唯一利用可能な生弱毒化ワクチンは、ワクチン接種された馬で吸血中の蚊に感染する。明細書中で論じられる本弱毒化アルファウイルスは、不可逆であることから、現在利用可能なワクチンに勝る大きな利点を提供する。更に、遺伝子操作されたアルファウイルスは、蚊細胞で複製することができない。従って、遺伝子操作されたアルファウイルスは、蚊で複製することができないことから、自然界で循環することができない新しい生組換えウイルスを作り出す新規な手法を示唆している。
【0015】
シンドビス・ウイルス及び他のアルファウイルスの感染性cDNAクローンの開発は、ウイルスの生態及び発病機序の異なる側面を研究することを目的とする逆遺伝学実験だけでなく、新規な組換えワクチンの開発のための機会を広げた。組織培養又は鶏胚のいずれかで継代することによるウイルスの弱毒化は、構造及び非構造遺伝子、並びにウイルスゲノムのシス作用エレメントにおける僅かな点突然変異に起因している。例えば、VEEV TC−83ワクチン株は、この株が備える弱毒化を2つの点突然変異だけに起因しており、高い反応原性(reactogenicity)は、高い確率でこの弱毒化の機構の不安定さを反映している。このことは、ワクチン接種者におけるウイルス複製の間に野生株の病原性の表現型への復帰可能性についての懸念を提起している。変異の数は、化学薬品の突然変異によりさらに増加され得るが、この手法でもまた導入された変更を不可逆とすることはできない。RNA+ウイルスの感染性cDNAクローンを用いた遺伝子操作は、ウイルスゲノムのより強力な組換えの大きな可能性を開くとともに、野生型ゲノム配列に復帰不可能である広範な欠損、又は変異株の免疫原生を向上する追加の遺伝子物質を導入する機会を提供する。
【0016】
遺伝子的に変化したアルボウイルスは、蚊の媒介により自然の循環に導入され、蚊の中の場合又はウイルス血症の進行の間の脊椎動物の宿主のいずれかでの長期間の複製の間、更に進化することを示している。1つの実施例としては、馬科の動物において蚊に感染させるに十分なウイルス血症のレベルを生み出すことができるVEEV TC−83の使用である。1971年のテキサスでの異常発生の間ルイジアナで採取された自然に感染した蚊からのTC−83の分離は弱毒化アルファウイルスの伝染の危険を強調した。従って、生ワクチン株の新しい世代を設計することにおいて、高度に弱毒化されただけでなく、脊椎動物起源の細胞においてのみ複製することができるアルボウイルスを作ることが将来に備えることである。これは、ウイルスゲノム中の細胞特異的RNA要素をクローニングすることにより達成され得る。コオロギ麻痺ウイルス(Cricket paralysis virus)IRESと対照的に、EMCV特異的要素は、節足動物細胞において非常に非効率的に機能すると予想された。
【0017】
本発明において、EMCV IRESは、IRES従属ウイルス構造遺伝子の翻訳を構成するためにVEEV TC−83ゲノムにクローン化された。ゲノムの1つは、機能性サブゲノムプロモータおよびサブゲノム RNAの5’UTRにおいてIRESを包含した。このウイルスは、生存能力があるが、サブゲノムRNAを生成するためのその能力は、更なる進化を促進し、この進化は結果として、IRES欠損及び構造タンパク質のCAP依存の標準的な翻訳に対する復帰をもたらす。前者の欠損は、蚊細胞中で複製可能に行われた。サブゲノムプロモータにおける多重突然変異を備える第2の変異株は、CAP依存の翻訳に復帰できなくする事に関して安定した。このような復帰は、IRES欠損だけでなく、我々が13の変異により不活性化にしたサブゲノムポロモータの復帰を要求することから、これら多重突然変異の直接復帰は、おそらく無視してもよいほどの危険を意味する。しかしながら、この変異株は、nsP2遺伝子における追加の適応突然変異を蓄積することにより更なる効果的な複製表現型に進化する興味深い方法を生み出した。これらの変異は、ウイルスRNAの複製、ウイルス構造タンパク質の合成、又は細胞における区画化を変化させることは全くなかった。検出された変異は、ゲノムのパッケージ化の効率を増大させ得る付加シグナルもまた生み出さなかった。従って、その機能の機構は、明らかになっていない。しかしながら、RNA+ウイルスのゲノムのパッケージ化が、複製複合体により強く決定されるとともに、そのゲノムが、機能性nsPsにより粒子形成のための構造タンパク質に提供される必要があることを蓄積公開データは示唆している。本明細書中に記載の作業仮説とは、nsP2のヘリカーゼドメイン(Helicase domain)がヌクレオカプシド中のウイルスのパッケージ化のためのウイルスゲノムの提示部に含まれ得、これにより、同定された変異がこのプロセスの効率に関して正の効果を備えることである。
【0018】
注目すべきは、本発明の目的が、媒介節足動物において複製不可能なVEEV変異株を開発することであるとともに、より安定で、より弱毒化の表現型を明示することであった。IFN−アルファ/ベータ−コンピテント細胞及びIFNシグナル欠損BHK−21細胞の両方における設計VEEV/mutSG/IRES/1変異株の緩慢な増殖、組織培養中のIFN−アルファ/ベータの高いレベルを誘導する能力、脳内接種後でも新生児マウスを殺す能力を大幅に減少したこと、及び蚊細胞中で複製不可能であることは、この変異株がそれら必要条件を満たしていることを提示している。変異株の免疫原性は、異なる動物モデルで更に調査される。その上、他の脳炎アルファウイルス(encephalogenic alphaviruses)は、近年開発された他の方法と組み合わせて適用可能なEMCV IRESに基づく類似の方法を使用することにより弱毒化されると考えられる。
【0019】
手短にいえば、本発明の目的は、弱毒化アルファウイルスの開発であり、脳炎誘発性アルファウイルスに対する新型ワクチンとしての応用である。脳炎誘発性アルファウイルスとしては、VEEV、EEEV及びWEEV並びに人や家畜の病気の原因となるチクングンヤ熱ウイルスのような他のアルファウイルスが挙げられる。このようなアルファウイルスの複製はEMCV IRESに依存しており、EMCV IRESはアルファウイルスを蚊細胞内又は媒介蚊中での複製を不可能にする。更に重要なことには、この表現型は、ウイルスゲノムに導入された大幅な組換えにより復帰しないことである。従って、これら新型変異株は、自然の媒介蚊による伝染の可能性の心配がなく予防接種に用いられる。
【0020】
本発明は、弱毒化、組換えアルファウイルスを作製することに関し、本作製方法は非構造タンパク質4(nsP4)コード配列の末端及び野生型5’UTRの代わりにアルファウイルスのサブゲノムRNAコード配列の開始AUGとの間の脳心筋炎ウイルス(EMCV IRES)の内部リボソーム侵入部位をクローニングする段階を含む。本方法は、サブゲノムRNAにおける野生型5’UTRの集合点突然変異及び欠損によりアルファウイルスのサブゲノムプロモータを不活性化する段階を含む。更に、サブゲノムプロモータの不活性化は、非構造タンパク質4のカルボキシ末端を修飾することができない。加えて、本方法は、更に非構造タンパク質2(nsP2)における適応変異を導入する段階を含み、効果的にウイルスの複製、放出及びウイルス力価を増加させる。非構造タンパク質2における適応変異の実施例としては、Y370をCに、K371をQに、P349をTに、D418をAに、K423をTに、又はこれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。更に、アルファウイルスの実施例としては、ベネズエラウマ脳炎ウイルス(VEEV)、東部ウマ脳炎ウイルス(EEEV)、西部ウマ脳炎ウイルス(WEEV)又はチクングンヤ熱ウイルスが挙げられるが、これらに限定されない。
【0021】
本発明は、また上記記載した方法により作製された弱毒化組換えウイルスに関する。このようなアルファウイルスは、蚊において複製せず、媒介蚊により伝染せず、IFN−アルファ/ベータの高いレベルを誘導可能であり、IFN−アルファ/ベータ細胞中での緩慢な増殖であり、IFNシグナル欠損BHK−21細胞における緩慢な増殖であり又はこれらの組合せとなり得る。
【0022】
本発明は、更に上記記載された弱毒化組換えアルファウイルスをコードするヌクレオチド配列を備えるベクターに関し、該ベクターを包含するとともに発現する宿主細胞に関する。ベクターを構築し、細胞内で発現させることは既知であり、先行技術の標準的な技術である。従って、当該分野の当業者は、当該分野における利用可能な所定の実験及び知識に基づいてこれらベクターを構築することができる。
【0023】
本発明は、更に、上記記載された弱毒化組換えアルファウイルスを含む医薬組成物と、薬学的に許容可能な担体に関する。本発明はまた、本明細書中に記載される弱毒化組換えアルファウイルスを備える免疫原性組成物に関する。
【0024】
本発明は、更にアルファウイルスへの暴露に由来する感染から被験体を保護する方法に関し、該方法は上記記載された免疫原性組成物の免疫学的に効果的な量を投与する段階と、これによりアルファウイルスへの暴露に由来する感染から被験体を保護する段階とを備える。このような方法から利益を得る被験体は人或いは家畜であり得る。
【0025】
本発明は更に、蚊に感染することができない弱毒化組換えアルファウイルスの作製方法に関し、該方法は、脳心筋炎ウイルスの内部リボソーム侵入部位及び3’UTRのまさに上流側に位置するサブゲノム領域の3’末端においてカプシド遺伝子を有するエンベロープ糖タンパク質の下流側カプシド遺伝子と、をクローニングする段階を含み、該カプシドは、CAP非依存的様式で発現されるとともにエンベロープタンパク質遺伝子はCAP依存的様式で翻訳されるが、カプシドタンパク質はIRES依存的様式で翻訳された。
【0026】
明細書中で使用される用語、「a」又は「A」は、1以上を意味する。特許請求の範囲の中で使用される単語「a」又は「A」は、単語「包含する(comprising)」と同時に使用される場合、1又は1を超えることを意味する。明細書中で使用される「もう1つの(another)」又は「他の(other)」は、同じ又は異なる特許請求の範囲の要素又は特許請求の範囲の構成の少なくとも第2の又はそれ以上のものを意味する。
【0027】
明細書中に記載される組成物とは、当該分野での標準的な任意の方法、例えば、皮下に、静脈内に、非経口で、腹腔内に、皮内に、筋肉内に、局所に又は経鼻的に方法により全身的に又は局所的の何れかで独立に投与され得る。明細書中に記載される組成物の投薬量の処方は、従来の毒性のない、生理学的に又は薬学的に許容可能な担体或いは投与の方法に適した賦形剤を備え、投与量は当該分野の当業者によく知られている。
【0028】
明細書中に記載される組成物は、治療効果に関する達成、維持又は改善を行うために1回以上個別に投与される。投薬量或いは組成物の最適な投薬量が1回投与又は複数回投与の何れを含むかを決定することは、当該分野の技術者によく知られている。適切な投薬量は、被験体の健康、アルファウイルスにより引起される免疫応答の誘導及び/又は感染の予防、処方の経路及び使用される投与法に依存する。
【0029】
以下の実施例は本発明の様々な実施形態を例示することを目的としているが、本発明を任意の方法に限定することを意味しない。当業者は、本発明を順応させることによって本発明に記載される物、結果、及び利点と同様に目的を実行し、上記の結果及び利点を得ることを直ちに理解する。特許請求の範囲により決定される本発明の精神の中に含まれる変更及び他の使用は、当業者に思い浮かぶ。
【実施例】
【0030】
[試験1]
細胞培養
BHK−21細胞は、Paul Olivo(Washington University, St. Louis, Mo)により提供され、ベロ細胞(Vero cell)はCharles Rice(Rockefeller University, NY, NY)により提供された。NIH 3T3細胞は、アメリカン・タイプ・ティッシュ・カルチャー・コレクション(Manassas, VA)から取得した。これら細胞株は、10%ウシ胎仔血清(FBS)及びビタミンで補強したアルファ最小必須培地(aMEM)で37℃に維持された。蚊C710細胞はHenry Huang(Washington University, St. Louis, Mo)から取得し、10%熱‐不活性FBS及び10%トリプトースリン酸ブイヨン(TPB)で補強されたDMEMで増殖させた。
【0031】
[試験2]
プラスミド構築
標準的な組換えDNA技術は、全てのプラスミド構築に利用された。地図及び配列は、要求により著者から入手できる。SP6RNAポリメラーゼプロモータの制御下にあるVEEV TC−83ゲノムを有する原型プラスミド、pVEEV TC−83は、文献に記載されている(Petrakova,O. et.al., 2005, J Virol 79:7597−608)。pVEEV/IRESは、EMCVポリタンパク質の最初の4つのコドンを備えるEMCV IRESを包含した。この配列は、5’UTRの末端及び開始AUGの間のVEEVサブゲノムRNAコード配列にクローン化された。pVEEV/mutSG/IRESは、VEEV TC−83ゲノムをコードし、VEEV TC−83ゲノム中のサブゲノムプロモータは、nsP4のカルボキシ末端のアミノ酸配列を修飾しない集合点突然変異により、不活性化された(図1A及び図1B)。このウイルスゲノムは欠損させたサブゲノムRNAの5’UTRを有した。従って、VEEV TC−83の非構造タンパク質及び構造タンパク質が同じゲノムRNAから合成されると期待された。適応変異は、pVEEV/mutSG/IRESをコードするnsP2に、選択された変異株の所望のフラグメントのPCR増幅、次いで原型のゲノムにおける対応するフラグメントの置換により導入された。同様のPCRに基づく技術は、pVEEV/mutSG/IRESのゲノムの3’UTRにおけるSphl領域への異なるフラグメントのクローニング合成に使用された。全てのクローン化されたフラグメントは、レスキューウイルス(rescued virus)での更なる実験前に、配列が決定された。
【0032】
[試験3]
RNA転写
プラスミドはCsCl勾配で遠心分離により精製され、Mlul消化により直線化された。RNAは、キャップアナログ(New England Biolabs)存在下で、SP6 RNA ポリメラーゼ(Ambion)により合成された。転写産物の収率及び完全性は、変性させない条件下での電気泳動により解析された。RNA濃度は、FluorChemイメージャー(Alpha Innotech)で測定され、転写反応は、追加の精製なしにエレクトロポレーションに使用された。
【0033】
[試験4]
RNAトランスフェクション
BHK−21細胞のエレクトロポレーションは、文献(Liljestrom, P.et al., 1991, J.Virol.65:4107−4113)記載の条件で実行された。ウイルスをレスキューするために、1gのインビトロで合成されたウイルスゲノムRNAが細胞中にエレクトロポレーションされ、次いで100mm皿に播かれ、細胞変性効果が確認されるまで、インキュベーションされた。ウイルス力価は、BHK−21細胞の標準的なプラークアッセイを使用して決定された。
【0034】
RNA感染力を評価するために、10倍希釈のエレクトロポレーションされたBHK−21細胞は、サブコンフルエント(subconfluent)の未感作細胞を含む6ウェルCostarプレートに播かれた。37℃、5%CO2インキュベータで1時間インキュベーション後、細胞は3%FBSで補強した0.5%超高純度アガロースを含むMEMの2mlで覆われた。プラークは、37℃、2日インキュベーション後、クリスタルバイオレットで染色され、感染力は導入RNAの1mg当たりのプラーク形成単位(PFU)で決定された。
【0035】
[試験5]
ウイルスゲノムのシークエンシング
大きなプラークは、ウイルスストックの力価を測定する間に無作為に選択された(ニュートラルレッドで染色することなく)。ウイルスは、アガロースプラグからMEMに抽出され、後者の培地の一定分量が使用され、35mm皿のBHK−21細胞に感染させた。広範なCPEの進行の後、ウイルスストックは、さらなる特徴付のために採取され、RNAが、メーカ(Invitrogen)の使用説明書に従って、TRizol試薬により感染細胞から単離された。〜1000ヌクレオチド−長の重複断片は、標準的なRT−PCR技術を使用するために合成され、アガロースゲル電気泳動により精製され、配列が決定された。5’UTRのシークエンシングは、文献(Gorchakov,N.et al., 2004, J Virol 78:61−75)に記載されるFirstChoice RLM−RACE Kit(Ambion)を使用して実行された。
【0036】
[試験6]
ウイルス複製分析
エレクトロポレーションされた細胞の5分の1が、35mm皿に播かれた。図に示される時間で、培地は交換され、ウイルス力価が、BHK−21細胞でのプラークアッセイにより決定された(Lemm, J.A.et al., 1990, J.Virol.64:3001−3011)。その他に、BHK−21、NIH3T3又はC710細胞が35mm皿に播かれ、図に示されるMOIで感染させた。培地は、新しい培地に置き換えられ、採取された試料におけるウイルス力価がBHK−21細胞でのプラークアッセイにより決定された。
【0037】
[試験7]
タンパク質合成の分析
BHK−21細胞は、4mgの指示RNAでエレクトロポレーションされ、エレクトロポレーションされた細胞の5分の1が、6ウェルCostarプレートに播かれた。トランスフェクション後12時間の時点で、タンパク質は、0.1%FBS及び20Ci/mlの[35S]メチオニンを補強したメチオニン欠如DMEM培地の0.8mlで30分間インキュベーションすることにより代謝的に標識された。インキュベーション後、培地に入れられ、遠心分離によりペレット状にされ、100μlの標準タンパク質添加液に溶解された。等量のタンパク質は、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)10%ポリアクリルアミドゲルに投入された。電気泳動後、ゲルは乾燥され、オートラジオグラフされた。
【0038】
[試験8]
RNA分析
ウイルス特異的RNAの合成を解析するために、細胞は、4mgのインビトロ合成ウイルスRNAでエレクトロポレーションされ、エレクトロポレーションされた細胞の5分の1が、同様に35mm皿に播かれた。トランスフェクションの4.5時間後に、ウェル中の培地は、10%FBS、ActD(1μg/ml)及び[3H]ウリジン(20 Ci/ml)を補強したaMEMの1mlで置換した。37℃で4時間インキュベーション後、細胞内全RNAがメーカの手引きに従ってTrizol(Invitrogen)により単離され、ジメチルスルホキシド中のグリオキサールで変性させ、文献に記載の条件(Bredenbeek,P.J.et al., 1993, J.Virol.67:6439−6446)を使用してアガロースゲル電気泳動により解析された。ゲルは、2,5−ジフェニルオキサゾール(PPO)に含侵させ、乾燥され、オートラジオグラフされた。
【0039】
[試験9]
IFN−アルファ/ベータ−アッセイ
培地中のIFN−アルファ/ベータ−の濃度は、文献に記載された生物検定(Trgovcich,J.et al., 1996. Virology 224:73−83)により測定された。簡潔には、L929細胞は、5×104細胞/ウェルの濃度で、96ウェルプレートに100μlの完全培地に播かれ、37℃で6時間インキュベーションされた。感染NIH3T3細胞から採取された培地の試料は、1時間UV光で処理され、L929細胞を備えるウェルに直接、2倍の段階で連続希釈された。37℃で24時間インキュベーション後、2×105PFUの水疱性口内炎ウイルス(VSV)を備える追加の100μlの培地がウェルに添加され、インキュベーションが36−40時間続けられた。細胞はクリスタルバイオレットで染色され、終点はVSV誘導CPEから50%の細胞を保護するのに要求されるIFNa/bの濃度として決定された。結果の正規化のIFN−a/b基準は、ATCCから取得し、放出されたウイルスの力価は、BHK−21細胞でのプラークアッセイにより決定された。
【0040】
[試験10]
蚊でのウイルス複製の評価
インビボによる蚊での複製能力を評価するために、1μl量に約105PFUを使用してネッタイシマカ(Aedes aegypti)(テキサス、ガルベストン由来のコロニー)の蚊の胸腔内接種が使用された。経口の感受性はかなりばらつきがあり、それほど感受性が無い一方(Weaver, S.C.1997.Vector Biology in Viral Pathogenesis, p.329−352.In N. Nathanson(ed.), Viral Pathogenesis.Lippincott−Raven, New York.)、殆どどんな蚊でも、任意のアルファウイルスによる胸腔内感染に高い感受性があることから、経口暴露を超える胸腔内接種を選択した。ガラスピペットを使用する接種に続き、蚊は、27℃で10日間インキュベーションし、20%FBS及びファンギゾンを補強したMEMの1ml中で個別に用量設定した。夫々用量設定した蚊の100μl量を、24ウェル状の単層のベロ細胞に添加し、感染を検出するために細胞変性効果を5日間観察した。アッセイコントロール(Assay control)は、TC−83親ウイルス及びIRES変異株のいずれをも含んだ。
【0041】
[試験11]
免疫化及び毒性VEEVでの抗原投与
生後6日目のNIH Swissマウスは、脳内に、総容量20μlのPBSに約106PFUの用量でVEEV TC−83株又は設計変異株を接種された。感染後、8−10動物の夫々の同齢集団を、処置することなく2ヶ月間維持した。21日間、マウスは、疾病(被毛の乱れ、抑鬱、食欲不振及び/又は痙攣)及び/又は死の兆候を毎日観察された。
【0042】
8週齢メスNIH Swissマウスは、VEEV TC−83又は組換えウイルスを使用してマウス1頭当たり約106PFUの用量でワクチン接種され、次いで高い毒性のVEEV株3908の約104PFUを用いて4週間後皮下に抗原投与された。21日間、マウスは、疾病(被毛の乱れ、抑鬱、食欲不振及び/又は痙攣)及び/又は死の兆候を1日2回観察された。
【0043】
[試験12]
組換えVEEV TC−83を基にしたウイルス
本研究の論理的根拠は、脊椎動物の細胞では効率的な複製が可能であるが、蚊由来の細胞では複製できないアルファウイルスを開発することである。従って、このようなウイルスの複製は、昆虫細胞ではなく脊椎動物でのみ機能するタンパク質又はRNA配列に依存する必要がある。これを達成るために、本発明は、EMCV IRESに依存するアルファウイルスの構造タンパク質の発現を行うための方法を設計した。設計されたIRESは、ポリC配列を含まず、EMCVポリタンパク質の最初の4つのコドンを保持し、これによりVEEV TC−83の構造遺伝子の最も効率的な翻訳を達成した。後者の実験において、これら付加的なアミノ酸は、ウイルスの複製に何の弊害も与えないが、ウイルス構造タンパク質の翻訳に検出可能な良好な効果が得られることが確認された(データを示さず)。
【0044】
コンストラクトの一つにおいて、VEEV/IRES、IRES配列は、完全な5’UTRの下流サブゲノムRNAにクローン化された(図1A)。従って、このゲノムはサブゲノムRNA合成可能であると予測された。もう一つの組換え体、VEEV/mutSG/IRESにおいて、サブゲノムプロモータは、13の同義の点突然変異(図1A及び図1B)により不活性化され、この点突然変異は、活性SG RNAプロモータに復帰することを妨げることが予測された。VEEV構造タンパク質の合成を促進するために、IRES配列がクローン化され、26S 5’UTRを置換した。
【0045】
VEEV/IRES、VEEV/mutSG/IRES及び修飾されていない野生型VEEV TC−83ゲノムRNAは、インビトロで合成され、BHK−21細胞中に導入された。感染中心アッセイにおいて、VEEV/IRES RNAは、TC−83のRNAと同じ感染力を示し、TC−83のプラークの大きさと同様の均一な大きさのプラークを発現させた(図1A及び図1C)。このことは、追加の適応変異が、設計ウイルスの有効な複製に必要でないことを強く示唆した。VEEV/IRESは、109PFU/mlを超える力価で複製したが、最終的な力価及びウイルスの複製率は、VEEV TC−83よりも大幅に緩慢であった(図1D)。BHK−21細胞は、もう一つの組換えウイルスゲノムVEEV/mutSG/IRESを導入された。この組換えウイルスゲノムVEEV/mutSG/IRESは、サブゲノムプロモータを欠損し、非常に非効率な感染性ウイルスを生み出した(図1D)。感染中心アッセイにおいて、このコンストラクトは、大部分はピンの先端ほどのプラークを発生させ、その数を測るのは困難であった。意外にも、このウイルスは、連続継代での更なる進化を示し、より大きなプラークを形成した変異株を速やかに生み出した(図1C及びデータを示さず)。図1Dで示された増殖曲線は、小さいプラーク形成ウイルス及び大きなプラーク形成ウイルスの両方の放出を示している。
【0046】
従って、これら実験の結果は、少なくともVEEV/IRESゲノムとの関連においては、EMCV IRESが、VEEV複製に十分な水準で構造タンパク質を生み出すことができることを示唆した。突然変異させたサブゲノムプロモータを含むコンストラクト、VEEV/mutSG/IRESは、より効率的な複製のために進化することができる複製欠損ウイルスを作り出した。
【0047】
[試験13]
VEEV/mutSG/IRESにおける適応変異の分析
大きなプラーク表現型へのVEEV/mutSG/IRESの進化は、ウイルスゲノムにおける追加の変異の蓄積を示唆した。野生型ゲノム配列への復帰は、導入された多くの点突然変異により不可能な事象となり、従って適応変異の位置を予測することが困難であった。変異を同定するために、エレクトロポレーション後、24時間で採取されたVEEV/mutSG/IRES試料の5つのプラークが、無作為に選択され、2つのプラーク精製された変異株のゲノム全体(3’UTR及び5’UTRを含む)が配列決定された。同定された変異のリストは、図2Aに示されている。これら変異の大部分は、同義であり、既知のシス作用RNA領域の中に含まれていなかった。従って、ウイルス複製についてのそれらの効果は、極めて低いものであった。しかしながら、両方のプラーク分離物のゲノムは、nsP2タンパク質での同じ変異である、Y370からCへの変異を含み、ゲノムの一つは、次にコードするAAを同様に変化させた(K371をQに)。
【0048】
ウイルス複製に与える変異の効果を試験するために、Y370からCへの変異、及びY370からCへの変異とK371からQへの変異の両方は、原型のVEEV/mutSG/IRESコンストラクト(図2B)にクローン化され、そのRNA感染力、ウイルス複製率及びプラークの大きさを、原型のVEEV/mutSG/IRES及び他のコンストラクトのRNA感染力、ウイルス複製率及びプラークの大きさと比較した。同じ変異がVEEV TC−83ゲノムにもクローン化され、この親ウイルスの複製に関する効果を試験した。ゲノム中に1つの変異又は両方の変異の何れかを備えるIRESコードゲノムRNA、VEEV/mutSG/IRES/1及びVEEV/mutSG/IRES/2は、VEEV TC−83 RNAで行った感染中心アッセイでの感染力と同じ感染力を示し、VEEV TC−83のプラークと同じ均一なプラークの大きさを形成するウイルスがレスキューされた(データを示さず)。VEEV/mutSG/IRES/1及びVEEV/mutSG/IRES/2は、また、増殖率において、力強い増加を示したが(図2C及び図1D)、第2の突然変異の効果はほとんど検出されたかった。従って、まとめると、nsP2におけるY370からCへの突然変異は、ウイルス複製に対して非常に良好な効果を示し、第2の突然変異は殆どその効果を改善しなかったことをデータは示した。VEEV TC−83ゲノムへの導入の場合、同様の突然変異は、ウイルス複製率又は最終的な力価に対する効果を全く検出できなかった(図2C)。このことは、複製の増強がVEEV/mutSG/IRESに特異的であったことを示唆している。
【0049】
同定されたAA変更(Y370からC、K371からQ)は、サブゲノムプロモータ欠損、IRES含有ウイルスの効率的な複製をもたらす有力な突然変異のほんの僅かを示しているにすぎない。従って、並列実験において、インビトロ合成RNAのRNAトランスフェクションの24時間後に採取された試料から精製された他の3つのプラークコロニーにおけるヌクレオチド2161〜2959の配列が決定されるとともに、ベロ細胞において追加の3回連続継代後ウイルスストックから分離された5つのプラーク精製変異株のヌクレオチド2161〜2959の配列が決定された。このような継代は、最も効率的な複製ウイルスの選択をもたらすことが予測される。同定された突然変異のリストは、図3Aに示されている。配列決定は、RT−PCR由来DNA断片から直接的に実行された。従って、示された突然変異はプラーク由来ウイルス集団における共通配列を示しており、PCR由来のものではない(図3B)。
【0050】
全ての分離株は、nsP2のRNAヘリカーゼドメインのカルボキシ末端断片に対応する配列決定された断片中に突然変異を含んでいた。全ての変化したアミノ酸は、アミノ酸348−424の間に位置していた。エレクトロポレーション後発生する原型のウイルスストックと継代されたプールの何れにおいても最も一般的な突然変異は、Y370からCへの変異であった。このことは、おそらく複製に対して最も顕著な影響の一つであることを指摘した。従って、この特定の突然変異、VEEV/mutSG/IRES、を備える上記記載された変異株は、次の節で述べる実験に使用された。
【0051】
[試験14]
nsP2 Y370からCへの変異のウイルス複製に与える効果
nsP2関連RNAヘリカーゼのカルボキシ末端断片における適応変異の同定は、予期しない結果であり、VEEV/mutSG/IRES複製における増加に対する明確な説明を全く示さなかった。この突然変異は、おそらくRNA複製、ウイルス構造タンパク質翻訳、ウイルス粒子形成、複製複合体の区画化、等の何れかに対する促進作用を備えることができた。しかしながら、最も予期される効果は、ウイルスRNA合成の増大である。従って、BHK−21細胞は、異なるVEEV変異株のインビトロ合成ゲノムで導入され、エレクトロポレーション後4時間〜4.5時間で新しく合成されたウイルスRNAをActDの存在下[3H]ウリジンで代謝的に標識し、そのRNAをアガロースゲル電気泳動により解析した(図4A)。
【0052】
予想通り、VEEV/IRESは、サブゲノムRNA合成の能力がある。このことは、サブゲノムRNA5’UTRの3’末端に導入したIRESがサブゲノムプロモータ活性を妨げないことを示唆している。naP2における適応変異を有するVEEV/mutSG/IRES及びその変異株は、検出不可能なSG RNAを作り出した。従って、これらゲノムのプロモータ配列に導入された13の変異は、サブゲノムRNAの翻訳を完全に無効にした。意外にも、nsP2における適応変異は、RNAゲノム複製に顕著な効果を示さず、VEEV/mutSG/IRES/1及びVEEV/mutSG/IRES/2ゲノムRNAは、最初に設計したVEEV/mutSG/IRESゲノムと同様の効率で複製した。更には、全ての変異株のゲノムRNA複製は、VEEV TC−83の複製と極めて酷似していた。その上、これら変異の効果は、原型のVEEV TC−83の構成には見つからなかった(VEEV/1及びVEEV/2に対応する行参照)。この発見は、適応が、RNA複製での増加をもたらさないことを強く暗示した。
【0053】
ウイルス構造タンパク質の合成を、エレクトロポレーション後12時間で評価した(図4B)。その時まで、VEEV/IRES及びVEEV/mutSG/IRES特異的カプシド及び他の構造タンパク質は、VEEV TC−83RNAで導入された細胞中よりも〜2倍悪い効率で合成された。この納得のいく僅かな相違は、(VEEV TC−83RNAの力価と比較して)VEEV/IRES及びVEEV/mutSG/IRESウイルス夫々が、4桁及び7桁以上も低い感染力価であることを説明していない。これら感染力価は、トランスフェクションの12時間後に採取された試料から検出された。更に、原型のVEEV/mutSG/IRESゲノムを含むBHK−21細胞中のウイルスタンパク質の合成と比較して、nsP2中に適応変異を有するVEEV/mutSG/IRES/1と、VEEV/mutSG/IRES/2を含むBHK−21細胞中とのウイルスタンパク質の合成の間の差異は、この実験及び他の実験においても検出されなかった。IRES含有ウイルスで感染させた細胞中での標識されたタンパク質の際立ったパターンの特徴は、二つの追加のバンドの存在であり、これらバンドは質量分析計により熱ショックタンパク質Hsp90及びHsp72として同定された。これらタンパク質の誘導の生物学的意義は、未だ明確ではないが、IRESから発現する構造タンパク質を備える細胞中で応力成長に至るウイルス構造タンパク質折り畳みにおいてある異常な部分に原因があると考えられる。
【0054】
追加の実験において、VEEV TC−83、VEEV/mutSG/IRES及びVEEV/mutSG/IRES/1で感染させた細胞中のウイルス糖タンパク質の細胞内分布が評価され、細胞表面上のこれらタンパク質の存在がVEEV特異的抗体で染色されることにより解析された。糖タンパク質の分布における顕著な相違が全く同定されなかった。適応変異はウイルスゲノム中の追加のパッケージング信号の形成の原因となるという可能性が調べられた。変異含有断片(VEEVゲノムのヌクレオチド2533−2950に対応する)が、VEEV/mutSG/IRESゲノムの3’UTRにクローン化され、組換えインビトロ合成RNAが感染中心アッセイで試験された。原型のVEEV/mutSG/IRESのプラークの大きさ又はウイルス力価と比較して、プラークの大きさ又はウイルス力価の増加は、全く検出されなかった。
【0055】
もう一つの変異株において、サブゲノムプロモータ及びVEEV カプシドコード配列は、VEEV/mutSG/IRESゲノムの3’UTRにクローン化され、サブゲノムRNAからの追加のカプシド発現がウイルス複製の効率を増加させるかどうかを試験した。この組換えもウイルス力価に明確な効果を全くもたらさなかった。最後に、VEEV/mutSG/IRESが感染性ウイルスの代わりにゲノムフリーのサブウイルス粒子を生産するかどうかが解析された。VEEV/mutSG/IRESで導入され、代謝的に[35S]で標識化された細胞は、ショ糖密度勾配での超遠心により検出されるサブウイルス粒子を生産しないという、事実に反することが観察された(データを示さず)。従って、まとめると、上記記載した複雑な分析は、原型のVEEV/mutSG/IRESの非常に効率の悪い複製又はIRES含有ウイルスの複製に関するVEEV nsP2中の検出変異の明確な効果に対する明らかな機構的な説明を提示しなかった。しかしながら、本発明の主な目的は、EMCV IRES機能に依存する複製を行うVEEV変異株を開発することであり、VEEV/IRES及びVEEV/mutSG/IRES/1の両方がこの目標を達成したと思われる。
【0056】
[試験15]
蚊細胞及び蚊中でのIRES依存VEEV変異株の複製
アルファウイルスの複製についての蓄積されたデータは、明確に、遺伝的不安定性及び高い進化率を示しており、これらは、特にウイルス複製において悪影響を与える際に、任意の異種遺伝子の欠損をもたらす(Gorchakov,R. et al.,2007,Virology 366:212−25、Thomas,J.M. et al.,2003,J Virol 77:5598−606)。従って、本発明の重大な争点の一つは、設計EMCV IRES挿入が安定であり、蚊細胞中でウイルスの複製を不可能な状態にするかどうかであった。これを試験するために、BHK−21細胞へのインビトロ合成RNAのエレクトロポレーションの24時間後に採取されたVEEV/IRES及びVEEV/mutSG/IRESウイルスをC710蚊細胞に感染させた。VEEV/mutSG/IRESは、nsP2にY370からCへの適応変異を備える上記記載のVEEV/mutSG/IRES/1の代わりに使用され、蚊細胞中での複製を確立する能力に関して、RNAトランスフェクション後放出される変異株のライブラリーの全てを試験した。
【0057】
第1の継代では、C710細胞の感染の48時間後VEEV/IRESの力価は1.5×1010PFU/mlに達し、第2の継代後も同様の力価がストックにおいて検出された(図5A及び5B)。対照的に、VEEV/mutSG/IRESの力価は、第1の継代後では150PFU/mlであり(第1の継代後の力価は、蚊細胞中で新生ウイルスが生産されたというよりも感染に使用した残存ウイルスを反映しているように思われる)、次ぐ第2の継代後では検出限界以下であった(図5A及び5B)。追加実験において、nsP2における適応変異を包含するVEEV/mutSG/IRESのプラーク精製変異株が、C710細胞で継代された。2回の盲目継代(blind passage)後、感染性ウイルスが復帰することは全くなかった。
【0058】
もう一つの実験において、Ae. aegypti蚊は、胸腔内に、約105PFUのVEEV TC−83及びVEEV/mutSG/IRES/1変異株を接種された。IRES変異を接種された17のAe. aegypti蚊において検出可能に1つも複製できない一方、TC−83親株を接種された17の蚊のうち全ての蚊がCPEアッセイにおいて検出可能なレベルで複製し、その力価は、106PFU/蚊を超える平均力価であった。従って、IRES含有VEEV変異株VEEV/mutSG/IRES/1は、インビトロ及びインビボの両方で、蚊細胞中で複製できなかった。
【0059】
蚊細胞中での継代後、サブゲノムRNA変異株を生産することができるVEEV/IRESの高い力価を説明するために、2つの個別のプラークが無作為に選択され、ゲノムのIRES含有断片の配列を決定した。両方の分離株において、IRES配列は、ウイルスゲノム中に存在しておらず、原型のIRESの13及び15残基が確認されるのみであった(図5C)。従って、蚊細胞中でのVEEV/IRES変異株の継代は、IRESマイナス変異株の蓄積を導き、サブゲノムプロモータを欠損させたVEEV/mutSG/IRESは、蚊細胞中で効率的な複製を可能にする変異株を生む出すことはなかった。
【0060】
[試験16]
VEEV/mutSG/IRES/1変異株は弱毒化表現型を示す。
本発明は、蚊由来の細胞及び対応する媒介蚊中での複製不可能であるが、親VEEV TC−83よりも脊椎動物中で弱毒化表現型を示すVEEV変異株の開発を目的とした。VEEV/mutSG/IRES/1変異株の低複製率は、このウイルスがIFNa/b生産及びシグナル伝達を備える脊椎動物細胞中で複製することができないという懸念を引き起こした。しかしながら、これは事実と異なった。図6に示された実験の結果は、VEEV/mutSG/IRES/1がIFN−アルファ/ベータ−分泌及びシグナル伝達において欠損を持たないNIH3T3細胞中で、109PFU/mlを超える力価まで複製することを示した。この複製は、より効率的なIFNa/b誘導を引き起こしたが(図6)、IFN放出は、明確に、既存のウイルス複製を無効にしていなかった。BHK−21細胞で示されるように(図2C)、VEEV/mutSG/IRES/1の複製は、VEEV TC−83の複製よりも効率が悪いが、IRES依存変異がインビボで弱毒化され得ることを示唆した。実際に、生後6日目のマウス脳内に約106PFUを接種後、86%が感染症を切り抜け脳炎の兆候を発症しなかった。対照的に、92%のマウスが、VEEV株TC−83の同じ用量により殺された。まとめると、これらデータは、遺伝子的に改良したIRES依存VEEVが、親VEEV TC−83よりも弱毒化したことを示している。
【0061】
にもかかわらず、VEEV/mutSG/IRES/1変異株は、新生児マウス及び成体マウスの両方で免疫原性を残した。VEEV/mutSG/IRES/1の脳内接種を生き抜いた12頭の生後6日目のマウスの内10頭が、投与5週間後、野生型VEEV株3908の104PFUを用いた皮下への暴露を生き抜いた。対照的に、同じ方法で暴露された偽(PBS)感染マウス12頭は、全て生存できなかった(図7)。VEEV/mutSG/IRES/1は、また成体マウスにおいても免疫原性であった。約106PFUを用いた1回の皮下ワクチン接種は、3週間後、VEEV株3908の104PFU(〜104LD50)での皮下暴露に対してマウスの80%を保護した(図8)。中和抗体価(PRINT80)は、暴露直前にこれら全てのマウスで<1:20で検出できなかった。ここことは、1回のワクチン接種後の不完全な防御は、インビボでのIRES含有ウイルス複製の低いレベルの結果であることを示唆している。従って、弱毒化の高いレベルは、安全性の高い段階を与えるが、反復ワクチン接種が要求されるかもしれない。
【0062】
[試験17]
弱毒化を減じるが蚊の伝染力の欠損を維持する発現戦略
本発明の他の実施形態において、新規な発現戦略が設計され、弱毒化を減じるが蚊の伝染力の欠損を維持することができた。この戦略は、エンベロープ糖タンパク質遺伝子の下流にIRESを配置することを含んだ。このエンベロープ糖タンパク質遺伝子は、3’UTRのまさに上流のサブゲノム領域の3’末端にカプシド遺伝子を備えている(図9)。従って、IRES依存様式で翻訳されるカプシドタンパク質ではなく、CAP依存様式で翻訳されたエンベロープタンパク質遺伝子を備えるサブゲノムメッセージが作られた。BHK及びベロ細胞中のこの新規なIRES変異の複製は、再度効率的であったが、C710蚊細胞中では検出されなかった。20匹のAedes aegypti生体メス蚊の胸腔内接種は、複製の証拠を示さなかった。IRES2型がマウスをワクチン接種するために用いられた場合、10個体の全ては、通常のTC−83により誘導されるよりも約2倍低い平均力価で抗体陽転するとともに、IRES2型により致死的な皮下の暴露から保護された。従って、新規なIRES発現戦略は、より少ない弱毒化をもたらすと思われる一方、蚊機能不全表現型を保持する。
【0063】
【表1】
【0064】
[参考文献]
・Aguilar,P.V.et al.,2007,J Virol 81:3866−76
・Barton,D.J.et al.,1999,J Virol 73:10104−12
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・Rice, C.M. et al., 2006, J.Virol.61:3809−3819
・Russo, A.T. et al., 2006, Structure 14:1449−58
【0065】
本明細書中で言及されている特許文献又は公開文献は、本発明に関連する分野の当業者のレベルを指し示すものである。更に、これら特許文献及び公開文献は、あたかもこれら個々の文献が、具体的に及び個々に参考文献として組み込まれるために示されるように、同様の範囲で明細書中に参考文献として組み込まれる。
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本国際出願は、2008年1月24日に出願され、現在放棄された米国仮特許出願No.61/062、229号の利益を主張し、それらの内容の全ては参照として、本出願に組み込まれる。
連邦政府補助金の説明
本発明は、米国国立衛生研究所(NIH)/米国国立アレルギー・感染症研究所からの補助金1U54AI057156を通じて得られた資金を一部使用してなされた。その結果として、連邦政府は、本発明において一定の権利を有する。
本発明の分野
本発明は、分子生物学、ウイルス学及びアルファウイルス属の免疫学に関する。更に具体的には、本発明は、弱毒化、蚊媒介感染能力を有さない組み換えアルファウイルス属を提供し、このようなアルファウイルス属を作り出す方法、及び免疫原性組成物の分野におけるこれら弱毒化アルファウイルス属の使用を開示する。
【背景技術】
【0002】
関連分野の記述
トガウイルス科におけるアルファウイルス属は、多くの人及び動物の重要な病原体を有している。これらウイルスは、南極区を除いて広く全ての大陸に分布し、公共の健康に対する重要な脅威を示している(非特許文献1、非特許文献2)。自然状態下では、多くのアルファウイルス属は、蚊により感染し、一生の持続感染の原因となる。この持続的感染は、媒介生物である蚊において生物学的機能において殆ど影響を有さない。蚊による吸血の間に感染される脊椎動物において、アルファウイルス属は急性感染の原因となり、高感染価ウイルス血症を特徴とする。この高感染価ウイルス血症は、自然における新しい蚊の感染及び循環を前提条件としている。
【0003】
ベネズエラウマ脳炎ウイルス(VEEV)は、アルファウイルス属の最も病原性の強いウイルスの1つである。それは、南アメリカ、中央アメリカ及び北アメリカにおいて絶え間なく循環しており、人、馬及び他の家畜を含む散発的な異常発生及び動物間の流行病の原因となる。亜種IC VEEVを含むベネズエラ及びコロンビア(1995)におけるつい最近の大きな発生の間に、約100,000の人症例が発生し、300を超える致命となる脳炎の症例が試算された(非特許文献3)。VEEVによる動物間流行病の間、脳炎による馬の死亡率が83%に達し、人における全体の死亡率が低い(<1%)間、見当識障害、運動失調、精神的抑鬱及び痙攣を含む神経性疾患が、感染した個人の14%まで、特に子供に(非特許文献4)見受けられた。VEEVを原因とする人の疾患は、発熱性疾患として特徴付けられる。この発熱性疾患は、悪寒、激しい頭痛、筋肉痛、眠気及び咽頭炎を伴う。若年及び老年者は、極端なリンパの喪失を伴う網内系感染を発症し、次いで脳炎に至る。CNS感染の結果は、急性髄膜炎であり、その急性髄膜炎が神経細胞の死滅を導くことになる(非特許文献5)。神経兆候は、病気の兆候から4−10日以内に現れる。神経兆候としては発作、感覚異常、行動変化及び昏睡が挙げられる。
【0004】
VEEVの異常発生の継続的な脅威にかかわらず、このウイルスに対する安全で、効果的なワクチンが作られてこなかった。VEEVの弱毒化TC−83株は、モルモット心臓細胞(非特許文献6)におけるVEEVの強毒性トリニダードドンキー(TRD)株の連続継代により40年以上前に作成された。現在、TC−83は、未だ実験室研究者及び軍関係者のための利用可能な唯一のワクチンである。8000人以上の人々が予防接種され(非特許文献7、非特許文献8、非特許文献9)、その累積データは、全てのワクチン接種者の略40%が発熱、全身病及び他の副作用を含む野生のVEEVの典型的な幾つかの兆候を有する疾患を発症することを明らかに示している(非特許文献7)。このTC−83株は、脳内及び皮下接種後(非特許文献10)、一般に新生児マウスを殺すが、成体マウスを殺すことはない。従って、ウイルス病原性に関する更なる弱化及び変異株の効果の研究に対する良い出発物質である。
【0005】
VEEVゲノムは、略12キロベース長であり、細胞内m−RNAの構造を模倣している正極性の1本鎖のRNA分子である。そのゲノムRNAは、5’メチルグアニレートキャップ及び3’ポリアデニル化された尾部(非特許文献11)を有し、ゲノムRNAのヌクレオカプシドからの放出後、直ちに宿主細胞機構によりウイルスタンパク質の翻訳をすることを特徴としている。そのゲノムの5’側3分の2が非構造タンパク質(nsPs)に翻訳される。この非構造タンパク質は、ウイルスゲノムの複製とサブゲノムRNAの転写に必要な複製酵素複合体のウイルスの成分を含む。サブゲノムRNAは、そのゲノムの3’側3分の1に対応している。サブゲノムRNAは、サブゲノムプロモータから合成され、ウイルス構造タンパク質に翻訳される。VEEV TC−83株の弱毒化表現型は、その株のTRDゲノム中の2つの変異の結果である。その内の1つはE2糖タンパク質における120位のアミノ酸置換であり、もう1つは5’UTRにおけるヌクレオチド3を変化させたものである(非特許文献12、非特許文献13、非特許文献11、非特許文献14)。従って、アルファウイルスの非常に高い変異率のために、TC−83の病原性の表現型への復帰が、適当な選択状態、例えばインビボでのウイルス継代が生じる場合において大きな懸念を残す。更には、VEEV TC−83は、蚊細胞内で複製が可能であるとともにワクチン接種の後に蚊に感染することが可能であり(非特許文献15)、従って蚊による伝染が可能性として残る。
【0006】
理想的には、生きたアルボウイルスは、媒介節足動物により伝染すべきではない。というのは、保有宿主の間の循環は、増大する病原性を含む予期しない変化を導くからである。復帰しやすい少数の弱毒化変異による野生型ウイルスから作り出された弱毒化株、或は予期しない方法で進化する遺伝的に修飾された株が生物媒介の循環を被る場合、これは特に当てはまる。前者リスクは、テキサスに限定されていた動物間流行病/異常発生の域外であるルイジアナにおいて、1971の間採取された蚊にVEEV TC−83ワクチン株が検出されたことにより強調される(非特許文献15)。
【0007】
アルファウイルス属に対する感染性cDNAの進歩によって、広範にウイルスゲノムを修飾することによりそれらの弱毒化を調査する機会が広がり、野生型である病原性の表現型への復帰を最小化又は排除する手法を広げた。更には、このようなアルファウイルス属のゲノムは、脊椎動物の細胞においてのみ機能し、起源である昆虫では機能しないRNA要素を含むよう設計される。従って、このような広範囲な変異は、蚊の媒介により遺伝子を修飾されたウイルスの感染を妨げることができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Griffin, D.E.2001.Alphaviruses, p.917-962. In Knipe and Howley (ed.), Fields' Virology, Fourth Edition. Lippincott, Willams and Wikins, New York.
【非特許文献2】Strauss, J. H., E. G. Strauss, 1994., Microbiol.Rev. 58; 491-562.
【非特許文献3】Rivas, F. et al., 1997, J infect Dis 175:828-32
【非特許文献4】Johnson, K. and D. Martin. 1974. Adv. Vet. Sci. Comp. Med. 18:79-116.
【非特許文献5】Dal Canto, M. C., and S. G. Rabinowitz, 1981, J Neurol Sci 49: 397-418.
【非特許文献6】Berge, T. O. et al,. 1961, Am. J. Hyg. 73: 209-218.
【非特許文献7】Alevizatos, A. C. et al., 1967, Am J Trop Med Hyg 16: 762-8
【非特許文献8】Burke, D. S. et al., 1977, J Infect Dis 136: 354-9
【非特許文献9】Pittman, P. R. et al., 1996, Vaccine 14: 337-43.
【非特許文献10】Paessler, S. et al., 2003, J Virol 77: 9278-86
【非特許文献11】Kinney, R. M. et al., 1983, Virology 170: 19-30
【非特許文献12】Davis, N. L. et al. 1991, Virology 183: 20-31
【非特許文献13】Kinney, R. M. et al., 1993, J. Virol. 67: 1269-1277
【非特許文献14】White, L. J. et al., 2001, J Virol 75: 3706-18
【非特許文献15】Pedersen, C. E. et al., 1972, Am J Epidemiol 95: 490-6
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
人及び動物の病原体としての重要性、生物兵器としての潜在力、及び弱毒化アルファウイルス属の応用に関する問題にもかかわらず、先行技術は脊椎動物細胞においてのみ複製可能であるアルファウイルス属の弱毒化株を作り出す方法に欠けている。本発明は、この長年のニーズ及び本分野における要望を満たすものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施形態としては、弱毒化組換えアルファウイルスを作る出す方法を提供することである。このような方法としては、非構造タンパク質4(nsP4)コード配列の末端及びサブゲノムRNAの野生型5’UTRの代わりにアルファウイルスのサブゲノムRNAコード配列の開始AUGとの間の脳心筋炎ウイルス(EMCV IRES)の内部リボソーム侵入部位をクローニングする段階を含む。本発明の更なる関連実施形態としては、上記記載された方法により作る出される弱毒化組換えアルファウイルスである。
【0011】
更に、もう一つの本発明の関連実施形態としては、弱毒化組換えアルファウイルスをコードする遺伝子配列を含むベクターと、このベクターを含むとともに発現する宿主細胞を提供することである。もう一つの更なる本発明の実施形態としては、医薬組成物を提供することである。この組成物は、上記記載された弱毒化組換えアルファウイルス及び薬学的許容可能な担体を含む。本発明の関連実施形態としては、免疫原性組成物を提供することである。この免疫原性組成物は、本明細書中で記載される弱毒化組換えアルファウイルスを含む。
【0012】
本発明のもう一つの関連実施形態としては、アルファウイルスへの暴露に起因する感染から被験体を保護する方法を提供することである。このような方法としては、免疫学的に効果的な量の免疫原性組成物を投与する段階を含み、該免疫原性組成物は本明細書中で記載される弱毒化組換えアルファウイルスを含むことから、アルファウイルスへの暴露に起因する感染から個人を保護する段階を含む。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1A】図1A−1Dは、BHK−21細胞中の組換えEMCV IRESをコードするVEEV TC−83由来のウイルスの複製を示している。図1Aは、設計されたウイルスゲノム、感染性センターアッセイ法(Infectious Centre Assay)におけるインビトロ合成RNAの感染力、インビトロ合成RNA1mgをBHK−21細胞中へトランスフェクション後24時間でのウイルス力価、及びトランスフェクション後48時間でのBHK−21細胞における指示ウイルスにより形成されたプラークのサイズの略図である。矢印は機能性サブゲノムプロモータを指す。黒箱は、EMCV IRESを示す。
【図1B】図1A−1Dは、BHK−21細胞中の組換えEMCV IRESをコードするVEEV TC−83由来のウイルスの複製を示している。図1Bは、VEEV TC−83ゲノムのサブゲノムプロモータを含むフラグメント、及びVEEV/mutSG/IRESの対応するフラグメントのアライメントを示している。プロモータの位置は、開放箱により示されている。VEEV TC−83ゲノムにおけるサブゲノムRNAの開始及びEMCV IRESの開始は矢印により示されている。VEEV/mutSG/IRESゲノムに導入された変異は、小文字により示されている。
【図1C】図1A−1Dは、BHK−21細胞中の組換えEMCV IRESをコードするVEEV TC−83由来のウイルスの複製を示している。図1Cは、ウイルスによりBHK−21細胞中に形成され、トランスフェクション後24時間で採取されたプラークを示している。
【図1D】図1A−1Dは、BHK−21細胞中の組換えEMCV IRESをコードするVEEV TC−83由来のウイルスの複製を示している。図1Dは、BHK−21細胞へのインビトロ合成RNA1mgのトランスフェクション後のウイルスの複製を示している。
【図2A】図2A−2Cは、プラーク精製VEEV/mutSG/IRES変異株で見つかった変異を示している。これら変異株は、BHK−21細胞においてより効果的な複製、及びVEEV TC−83及びVEEV/mutSG/IRESの複製の明確な適応変異の効果を示している。図2Aは、VEEV TC−83の公開された配列と比較して、プラーク分離のゲノムにおいて見つかった変異のリストを示している。
【図2B】図2A−2Cは、プラーク精製VEEV/mutSG/IRES変異株で見つかった変異を示している。これら変異株は、BHK−21細胞においてより効果的な複製、及びVEEV TC−83及びVEEV/mutSG/IRESの複製の明確な適応変異の効果を示している。図2Bは、1又は両方の同定された変異を備えるVEEV TC−83及びVEEV/mutSG/IRESゲノム、及び感染性センターアッセイ法におけるインビトロ合成RNAの感染力の略図である。機能的サブゲノムプロモータは矢印により示され、EMCV IRESは黒箱により示されている。
【図2C】図2A−2Cは、プラーク精製VEEV/mutSG/IRES変異株で見つかった変異を示している。これら変異株は、BHK−21細胞においてより効果的な複製、及びVEEV TC−83及びVEEV/mutSG/IRESの複製の明確な適応変異の効果を示している。図2Cは、インビトロ合成RNAウイルスゲノム1mgのトランスフェクション後のBHK−21細胞における設計されたウイルスの複製を示している。
【図3A】図3A−3Bは、大きなプラークの表現型を示すVEEV/mutSG/IRES変異株のnsP2タンパク質において同定された変異を示す。図3Aは、インビトロ合成RNAのトランスフェクション後24時間で採取されたウイルスストックからプラーク精製分離株のゲノム中に同定された変異(原型)、及びベロ細胞において追加的に3回継代されたストックからの分離株のゲノム中に同定された変異(継代)のリストを示している。
【図3B】図3A−3Bは、大きなプラークの表現型を示すVEEV/mutSG/IRES変異株のnsP2タンパク質において同定された変異を示す。図3Bは、VEEV nsP2における決定された変異の位置を示している。アルファウイルスnsP2における現在既知の機能的ドメインの位置が示されている。
【図4A】図4A−4Bは、インビトロ合成組換えウイルスRNAと導入されたBHK−21細胞におけるタンパク質及びRNA合成の分析を示している。細胞は、指示されたRNA4mgでエレクトロポレーションされ、35mm皿に播かれた。図4Aにおいては、トランスフェクション4.5時間で、ウェル中の培地は10%FBS、ActD(1g/ml)及び[3H]ウリジン(20Ci/ml)で補強された1mlaMEMにより置換された。37℃で4時間インキュベーション後、RNAはアガロース電気泳動法により分離、解析された。ウイルスゲノム及びサブゲノムRNAの位置はG及びSGにより個々に示されている。VEEV/IRES特異的サブゲノムRNAは、他のサブゲノムRNA生産ウイルスよりも大きく広がったバンドを形成する。これは、ゲル中で、VEEV/IRES特異的サブゲノムRNAが28SリボソームRNAと共に移動するからである。
【図4B】図4A−4Bは、インビトロ合成組換えウイルスRNAと導入されたBHK−21細胞におけるタンパク質及びRNA合成の分析を示している。細胞は、指示されたRNA4mgでエレクトロポレーションされ、35mm皿に蒔かれた。図4Bにおいては、トランスフェクション後12時間で、タンパク質が[35S]メチオニンで代謝的に標識され、ドデシル硫酸ナトリウム10%ポリアクリルアミドゲルにて解析された。分子量マーカ(kDa)の位置はゲルの左側に示されている。ウイルス構造タンパク質:C、E1及びp62(E2の前駆体)の位置がゲルの右側に示されている。星印は、細胞タンパク質(熱ショックタンパク質)の位置を示し、IRESをコードするウイルスの複製により誘導される。
【図5A】図5A−5Cは、C710細胞における組換え体、EMCV IRES含有VEEV変異株の継代を示す。図5Aはウイルスの略図を示す。矢印は機能的サブゲノムプロモータの位置を示す。黒箱は、EMCV IRESの位置を示す。
【図5B】図5A−5Cは、C710細胞における組換え体、EMCV IRES含有VEEV変異株の継代を示す。図5BはC710細胞における継代後、組換えウイルスの力価を示している。35mm皿中の細胞は、インビトロ合成RNA(P1)を用いてBHK−21細胞のトランスフェクション後24時間で、又はC710細胞の感染後48時間のいずれかで採取したウイルス試料400mlを感染させられた。破線は、検出限界を示している。
【図5C】図5A−5Cは、C710細胞における組換え体、EMCV IRES含有VEEV変異株の継代を示す。図5Cは、プラーク精製されたVEEV/IRESにおいて同定されたIRES含有配列の検出を示し、C710細胞における効率的な複製を示している。残りのEMCV IRES特異的配列は小文字により示されている。
【図6】図6はNIH3T3細胞におけるVEEV/mutSG/IRES/1及びVEEV TC−83の複製を示している。細胞は10PFU/細胞のMOIで感染させた。培地は指し示された時点で置換され、ウイルス力価はBHK−21細胞のプラークアッセイにより測定された。同じ試料は、生物学的アッセイにおけるIFN−a/b放出を測定するために使用された。放出されたIFN−a/bの濃度は、1ml当たりの国際単位(IU)で表されている。
【図7】図7はVEEV TC−83及びVEEV/mutSG/IRES/1ウイルスで感染させたマウスの生存を示している。生後6日目のNIH Swissマウスは、示されているウイルスの106PFUで脳内に接種された。動物は、2ヶ月間監視された。これらの何れの実験においても感染後9日後死亡するものはいなかった。
【図8】図8は、成体マウスのワクチン接種と暴露後の生存率を示している。5週から6週のメスNIH Swissマウスは、106の用量でVEEV株TC−83又は組換えウイルスを用いて皮下に接種された。免疫3週間後、VEEV株3908の104PFUをマウスの皮下に暴露し、死亡率が記録された。
【図9】図9は蚊に感染することができない弱毒化組換えアルファウイルスを作り出す概略方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、アルファウイルスの弱毒化株を開発する新しい戦略を描くものである。これら弱毒化アルファウイルスは脊椎動物細胞においてのみ複製することができる。この表現型は、ウイルス構造タンパク質の翻訳及び最終的には脳心筋炎ウイルス(EMCV IRES)の内部リボソーム侵入部位に依存するウイルス複製を与えることにより達成される。このような組換えウイルスは、新生児のマウスにおいて増殖可能であり、高い弱毒化の表現型を実証したにもかかわらず、VEEV感染に対して免疫防御を誘導した。更に、ホルマリン不活性化ワクチンは、高価であるとともに効果のないものである。これに加えて、これらワクチンは、複合的な連続ワクチン接種を必要とする。その上、VEEV感染に対する唯一利用可能な生弱毒化ワクチンは、ワクチン接種された馬で吸血中の蚊に感染する。明細書中で論じられる本弱毒化アルファウイルスは、不可逆であることから、現在利用可能なワクチンに勝る大きな利点を提供する。更に、遺伝子操作されたアルファウイルスは、蚊細胞で複製することができない。従って、遺伝子操作されたアルファウイルスは、蚊で複製することができないことから、自然界で循環することができない新しい生組換えウイルスを作り出す新規な手法を示唆している。
【0015】
シンドビス・ウイルス及び他のアルファウイルスの感染性cDNAクローンの開発は、ウイルスの生態及び発病機序の異なる側面を研究することを目的とする逆遺伝学実験だけでなく、新規な組換えワクチンの開発のための機会を広げた。組織培養又は鶏胚のいずれかで継代することによるウイルスの弱毒化は、構造及び非構造遺伝子、並びにウイルスゲノムのシス作用エレメントにおける僅かな点突然変異に起因している。例えば、VEEV TC−83ワクチン株は、この株が備える弱毒化を2つの点突然変異だけに起因しており、高い反応原性(reactogenicity)は、高い確率でこの弱毒化の機構の不安定さを反映している。このことは、ワクチン接種者におけるウイルス複製の間に野生株の病原性の表現型への復帰可能性についての懸念を提起している。変異の数は、化学薬品の突然変異によりさらに増加され得るが、この手法でもまた導入された変更を不可逆とすることはできない。RNA+ウイルスの感染性cDNAクローンを用いた遺伝子操作は、ウイルスゲノムのより強力な組換えの大きな可能性を開くとともに、野生型ゲノム配列に復帰不可能である広範な欠損、又は変異株の免疫原生を向上する追加の遺伝子物質を導入する機会を提供する。
【0016】
遺伝子的に変化したアルボウイルスは、蚊の媒介により自然の循環に導入され、蚊の中の場合又はウイルス血症の進行の間の脊椎動物の宿主のいずれかでの長期間の複製の間、更に進化することを示している。1つの実施例としては、馬科の動物において蚊に感染させるに十分なウイルス血症のレベルを生み出すことができるVEEV TC−83の使用である。1971年のテキサスでの異常発生の間ルイジアナで採取された自然に感染した蚊からのTC−83の分離は弱毒化アルファウイルスの伝染の危険を強調した。従って、生ワクチン株の新しい世代を設計することにおいて、高度に弱毒化されただけでなく、脊椎動物起源の細胞においてのみ複製することができるアルボウイルスを作ることが将来に備えることである。これは、ウイルスゲノム中の細胞特異的RNA要素をクローニングすることにより達成され得る。コオロギ麻痺ウイルス(Cricket paralysis virus)IRESと対照的に、EMCV特異的要素は、節足動物細胞において非常に非効率的に機能すると予想された。
【0017】
本発明において、EMCV IRESは、IRES従属ウイルス構造遺伝子の翻訳を構成するためにVEEV TC−83ゲノムにクローン化された。ゲノムの1つは、機能性サブゲノムプロモータおよびサブゲノム RNAの5’UTRにおいてIRESを包含した。このウイルスは、生存能力があるが、サブゲノムRNAを生成するためのその能力は、更なる進化を促進し、この進化は結果として、IRES欠損及び構造タンパク質のCAP依存の標準的な翻訳に対する復帰をもたらす。前者の欠損は、蚊細胞中で複製可能に行われた。サブゲノムプロモータにおける多重突然変異を備える第2の変異株は、CAP依存の翻訳に復帰できなくする事に関して安定した。このような復帰は、IRES欠損だけでなく、我々が13の変異により不活性化にしたサブゲノムポロモータの復帰を要求することから、これら多重突然変異の直接復帰は、おそらく無視してもよいほどの危険を意味する。しかしながら、この変異株は、nsP2遺伝子における追加の適応突然変異を蓄積することにより更なる効果的な複製表現型に進化する興味深い方法を生み出した。これらの変異は、ウイルスRNAの複製、ウイルス構造タンパク質の合成、又は細胞における区画化を変化させることは全くなかった。検出された変異は、ゲノムのパッケージ化の効率を増大させ得る付加シグナルもまた生み出さなかった。従って、その機能の機構は、明らかになっていない。しかしながら、RNA+ウイルスのゲノムのパッケージ化が、複製複合体により強く決定されるとともに、そのゲノムが、機能性nsPsにより粒子形成のための構造タンパク質に提供される必要があることを蓄積公開データは示唆している。本明細書中に記載の作業仮説とは、nsP2のヘリカーゼドメイン(Helicase domain)がヌクレオカプシド中のウイルスのパッケージ化のためのウイルスゲノムの提示部に含まれ得、これにより、同定された変異がこのプロセスの効率に関して正の効果を備えることである。
【0018】
注目すべきは、本発明の目的が、媒介節足動物において複製不可能なVEEV変異株を開発することであるとともに、より安定で、より弱毒化の表現型を明示することであった。IFN−アルファ/ベータ−コンピテント細胞及びIFNシグナル欠損BHK−21細胞の両方における設計VEEV/mutSG/IRES/1変異株の緩慢な増殖、組織培養中のIFN−アルファ/ベータの高いレベルを誘導する能力、脳内接種後でも新生児マウスを殺す能力を大幅に減少したこと、及び蚊細胞中で複製不可能であることは、この変異株がそれら必要条件を満たしていることを提示している。変異株の免疫原性は、異なる動物モデルで更に調査される。その上、他の脳炎アルファウイルス(encephalogenic alphaviruses)は、近年開発された他の方法と組み合わせて適用可能なEMCV IRESに基づく類似の方法を使用することにより弱毒化されると考えられる。
【0019】
手短にいえば、本発明の目的は、弱毒化アルファウイルスの開発であり、脳炎誘発性アルファウイルスに対する新型ワクチンとしての応用である。脳炎誘発性アルファウイルスとしては、VEEV、EEEV及びWEEV並びに人や家畜の病気の原因となるチクングンヤ熱ウイルスのような他のアルファウイルスが挙げられる。このようなアルファウイルスの複製はEMCV IRESに依存しており、EMCV IRESはアルファウイルスを蚊細胞内又は媒介蚊中での複製を不可能にする。更に重要なことには、この表現型は、ウイルスゲノムに導入された大幅な組換えにより復帰しないことである。従って、これら新型変異株は、自然の媒介蚊による伝染の可能性の心配がなく予防接種に用いられる。
【0020】
本発明は、弱毒化、組換えアルファウイルスを作製することに関し、本作製方法は非構造タンパク質4(nsP4)コード配列の末端及び野生型5’UTRの代わりにアルファウイルスのサブゲノムRNAコード配列の開始AUGとの間の脳心筋炎ウイルス(EMCV IRES)の内部リボソーム侵入部位をクローニングする段階を含む。本方法は、サブゲノムRNAにおける野生型5’UTRの集合点突然変異及び欠損によりアルファウイルスのサブゲノムプロモータを不活性化する段階を含む。更に、サブゲノムプロモータの不活性化は、非構造タンパク質4のカルボキシ末端を修飾することができない。加えて、本方法は、更に非構造タンパク質2(nsP2)における適応変異を導入する段階を含み、効果的にウイルスの複製、放出及びウイルス力価を増加させる。非構造タンパク質2における適応変異の実施例としては、Y370をCに、K371をQに、P349をTに、D418をAに、K423をTに、又はこれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。更に、アルファウイルスの実施例としては、ベネズエラウマ脳炎ウイルス(VEEV)、東部ウマ脳炎ウイルス(EEEV)、西部ウマ脳炎ウイルス(WEEV)又はチクングンヤ熱ウイルスが挙げられるが、これらに限定されない。
【0021】
本発明は、また上記記載した方法により作製された弱毒化組換えウイルスに関する。このようなアルファウイルスは、蚊において複製せず、媒介蚊により伝染せず、IFN−アルファ/ベータの高いレベルを誘導可能であり、IFN−アルファ/ベータ細胞中での緩慢な増殖であり、IFNシグナル欠損BHK−21細胞における緩慢な増殖であり又はこれらの組合せとなり得る。
【0022】
本発明は、更に上記記載された弱毒化組換えアルファウイルスをコードするヌクレオチド配列を備えるベクターに関し、該ベクターを包含するとともに発現する宿主細胞に関する。ベクターを構築し、細胞内で発現させることは既知であり、先行技術の標準的な技術である。従って、当該分野の当業者は、当該分野における利用可能な所定の実験及び知識に基づいてこれらベクターを構築することができる。
【0023】
本発明は、更に、上記記載された弱毒化組換えアルファウイルスを含む医薬組成物と、薬学的に許容可能な担体に関する。本発明はまた、本明細書中に記載される弱毒化組換えアルファウイルスを備える免疫原性組成物に関する。
【0024】
本発明は、更にアルファウイルスへの暴露に由来する感染から被験体を保護する方法に関し、該方法は上記記載された免疫原性組成物の免疫学的に効果的な量を投与する段階と、これによりアルファウイルスへの暴露に由来する感染から被験体を保護する段階とを備える。このような方法から利益を得る被験体は人或いは家畜であり得る。
【0025】
本発明は更に、蚊に感染することができない弱毒化組換えアルファウイルスの作製方法に関し、該方法は、脳心筋炎ウイルスの内部リボソーム侵入部位及び3’UTRのまさに上流側に位置するサブゲノム領域の3’末端においてカプシド遺伝子を有するエンベロープ糖タンパク質の下流側カプシド遺伝子と、をクローニングする段階を含み、該カプシドは、CAP非依存的様式で発現されるとともにエンベロープタンパク質遺伝子はCAP依存的様式で翻訳されるが、カプシドタンパク質はIRES依存的様式で翻訳された。
【0026】
明細書中で使用される用語、「a」又は「A」は、1以上を意味する。特許請求の範囲の中で使用される単語「a」又は「A」は、単語「包含する(comprising)」と同時に使用される場合、1又は1を超えることを意味する。明細書中で使用される「もう1つの(another)」又は「他の(other)」は、同じ又は異なる特許請求の範囲の要素又は特許請求の範囲の構成の少なくとも第2の又はそれ以上のものを意味する。
【0027】
明細書中に記載される組成物とは、当該分野での標準的な任意の方法、例えば、皮下に、静脈内に、非経口で、腹腔内に、皮内に、筋肉内に、局所に又は経鼻的に方法により全身的に又は局所的の何れかで独立に投与され得る。明細書中に記載される組成物の投薬量の処方は、従来の毒性のない、生理学的に又は薬学的に許容可能な担体或いは投与の方法に適した賦形剤を備え、投与量は当該分野の当業者によく知られている。
【0028】
明細書中に記載される組成物は、治療効果に関する達成、維持又は改善を行うために1回以上個別に投与される。投薬量或いは組成物の最適な投薬量が1回投与又は複数回投与の何れを含むかを決定することは、当該分野の技術者によく知られている。適切な投薬量は、被験体の健康、アルファウイルスにより引起される免疫応答の誘導及び/又は感染の予防、処方の経路及び使用される投与法に依存する。
【0029】
以下の実施例は本発明の様々な実施形態を例示することを目的としているが、本発明を任意の方法に限定することを意味しない。当業者は、本発明を順応させることによって本発明に記載される物、結果、及び利点と同様に目的を実行し、上記の結果及び利点を得ることを直ちに理解する。特許請求の範囲により決定される本発明の精神の中に含まれる変更及び他の使用は、当業者に思い浮かぶ。
【実施例】
【0030】
[試験1]
細胞培養
BHK−21細胞は、Paul Olivo(Washington University, St. Louis, Mo)により提供され、ベロ細胞(Vero cell)はCharles Rice(Rockefeller University, NY, NY)により提供された。NIH 3T3細胞は、アメリカン・タイプ・ティッシュ・カルチャー・コレクション(Manassas, VA)から取得した。これら細胞株は、10%ウシ胎仔血清(FBS)及びビタミンで補強したアルファ最小必須培地(aMEM)で37℃に維持された。蚊C710細胞はHenry Huang(Washington University, St. Louis, Mo)から取得し、10%熱‐不活性FBS及び10%トリプトースリン酸ブイヨン(TPB)で補強されたDMEMで増殖させた。
【0031】
[試験2]
プラスミド構築
標準的な組換えDNA技術は、全てのプラスミド構築に利用された。地図及び配列は、要求により著者から入手できる。SP6RNAポリメラーゼプロモータの制御下にあるVEEV TC−83ゲノムを有する原型プラスミド、pVEEV TC−83は、文献に記載されている(Petrakova,O. et.al., 2005, J Virol 79:7597−608)。pVEEV/IRESは、EMCVポリタンパク質の最初の4つのコドンを備えるEMCV IRESを包含した。この配列は、5’UTRの末端及び開始AUGの間のVEEVサブゲノムRNAコード配列にクローン化された。pVEEV/mutSG/IRESは、VEEV TC−83ゲノムをコードし、VEEV TC−83ゲノム中のサブゲノムプロモータは、nsP4のカルボキシ末端のアミノ酸配列を修飾しない集合点突然変異により、不活性化された(図1A及び図1B)。このウイルスゲノムは欠損させたサブゲノムRNAの5’UTRを有した。従って、VEEV TC−83の非構造タンパク質及び構造タンパク質が同じゲノムRNAから合成されると期待された。適応変異は、pVEEV/mutSG/IRESをコードするnsP2に、選択された変異株の所望のフラグメントのPCR増幅、次いで原型のゲノムにおける対応するフラグメントの置換により導入された。同様のPCRに基づく技術は、pVEEV/mutSG/IRESのゲノムの3’UTRにおけるSphl領域への異なるフラグメントのクローニング合成に使用された。全てのクローン化されたフラグメントは、レスキューウイルス(rescued virus)での更なる実験前に、配列が決定された。
【0032】
[試験3]
RNA転写
プラスミドはCsCl勾配で遠心分離により精製され、Mlul消化により直線化された。RNAは、キャップアナログ(New England Biolabs)存在下で、SP6 RNA ポリメラーゼ(Ambion)により合成された。転写産物の収率及び完全性は、変性させない条件下での電気泳動により解析された。RNA濃度は、FluorChemイメージャー(Alpha Innotech)で測定され、転写反応は、追加の精製なしにエレクトロポレーションに使用された。
【0033】
[試験4]
RNAトランスフェクション
BHK−21細胞のエレクトロポレーションは、文献(Liljestrom, P.et al., 1991, J.Virol.65:4107−4113)記載の条件で実行された。ウイルスをレスキューするために、1gのインビトロで合成されたウイルスゲノムRNAが細胞中にエレクトロポレーションされ、次いで100mm皿に播かれ、細胞変性効果が確認されるまで、インキュベーションされた。ウイルス力価は、BHK−21細胞の標準的なプラークアッセイを使用して決定された。
【0034】
RNA感染力を評価するために、10倍希釈のエレクトロポレーションされたBHK−21細胞は、サブコンフルエント(subconfluent)の未感作細胞を含む6ウェルCostarプレートに播かれた。37℃、5%CO2インキュベータで1時間インキュベーション後、細胞は3%FBSで補強した0.5%超高純度アガロースを含むMEMの2mlで覆われた。プラークは、37℃、2日インキュベーション後、クリスタルバイオレットで染色され、感染力は導入RNAの1mg当たりのプラーク形成単位(PFU)で決定された。
【0035】
[試験5]
ウイルスゲノムのシークエンシング
大きなプラークは、ウイルスストックの力価を測定する間に無作為に選択された(ニュートラルレッドで染色することなく)。ウイルスは、アガロースプラグからMEMに抽出され、後者の培地の一定分量が使用され、35mm皿のBHK−21細胞に感染させた。広範なCPEの進行の後、ウイルスストックは、さらなる特徴付のために採取され、RNAが、メーカ(Invitrogen)の使用説明書に従って、TRizol試薬により感染細胞から単離された。〜1000ヌクレオチド−長の重複断片は、標準的なRT−PCR技術を使用するために合成され、アガロースゲル電気泳動により精製され、配列が決定された。5’UTRのシークエンシングは、文献(Gorchakov,N.et al., 2004, J Virol 78:61−75)に記載されるFirstChoice RLM−RACE Kit(Ambion)を使用して実行された。
【0036】
[試験6]
ウイルス複製分析
エレクトロポレーションされた細胞の5分の1が、35mm皿に播かれた。図に示される時間で、培地は交換され、ウイルス力価が、BHK−21細胞でのプラークアッセイにより決定された(Lemm, J.A.et al., 1990, J.Virol.64:3001−3011)。その他に、BHK−21、NIH3T3又はC710細胞が35mm皿に播かれ、図に示されるMOIで感染させた。培地は、新しい培地に置き換えられ、採取された試料におけるウイルス力価がBHK−21細胞でのプラークアッセイにより決定された。
【0037】
[試験7]
タンパク質合成の分析
BHK−21細胞は、4mgの指示RNAでエレクトロポレーションされ、エレクトロポレーションされた細胞の5分の1が、6ウェルCostarプレートに播かれた。トランスフェクション後12時間の時点で、タンパク質は、0.1%FBS及び20Ci/mlの[35S]メチオニンを補強したメチオニン欠如DMEM培地の0.8mlで30分間インキュベーションすることにより代謝的に標識された。インキュベーション後、培地に入れられ、遠心分離によりペレット状にされ、100μlの標準タンパク質添加液に溶解された。等量のタンパク質は、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)10%ポリアクリルアミドゲルに投入された。電気泳動後、ゲルは乾燥され、オートラジオグラフされた。
【0038】
[試験8]
RNA分析
ウイルス特異的RNAの合成を解析するために、細胞は、4mgのインビトロ合成ウイルスRNAでエレクトロポレーションされ、エレクトロポレーションされた細胞の5分の1が、同様に35mm皿に播かれた。トランスフェクションの4.5時間後に、ウェル中の培地は、10%FBS、ActD(1μg/ml)及び[3H]ウリジン(20 Ci/ml)を補強したaMEMの1mlで置換した。37℃で4時間インキュベーション後、細胞内全RNAがメーカの手引きに従ってTrizol(Invitrogen)により単離され、ジメチルスルホキシド中のグリオキサールで変性させ、文献に記載の条件(Bredenbeek,P.J.et al., 1993, J.Virol.67:6439−6446)を使用してアガロースゲル電気泳動により解析された。ゲルは、2,5−ジフェニルオキサゾール(PPO)に含侵させ、乾燥され、オートラジオグラフされた。
【0039】
[試験9]
IFN−アルファ/ベータ−アッセイ
培地中のIFN−アルファ/ベータ−の濃度は、文献に記載された生物検定(Trgovcich,J.et al., 1996. Virology 224:73−83)により測定された。簡潔には、L929細胞は、5×104細胞/ウェルの濃度で、96ウェルプレートに100μlの完全培地に播かれ、37℃で6時間インキュベーションされた。感染NIH3T3細胞から採取された培地の試料は、1時間UV光で処理され、L929細胞を備えるウェルに直接、2倍の段階で連続希釈された。37℃で24時間インキュベーション後、2×105PFUの水疱性口内炎ウイルス(VSV)を備える追加の100μlの培地がウェルに添加され、インキュベーションが36−40時間続けられた。細胞はクリスタルバイオレットで染色され、終点はVSV誘導CPEから50%の細胞を保護するのに要求されるIFNa/bの濃度として決定された。結果の正規化のIFN−a/b基準は、ATCCから取得し、放出されたウイルスの力価は、BHK−21細胞でのプラークアッセイにより決定された。
【0040】
[試験10]
蚊でのウイルス複製の評価
インビボによる蚊での複製能力を評価するために、1μl量に約105PFUを使用してネッタイシマカ(Aedes aegypti)(テキサス、ガルベストン由来のコロニー)の蚊の胸腔内接種が使用された。経口の感受性はかなりばらつきがあり、それほど感受性が無い一方(Weaver, S.C.1997.Vector Biology in Viral Pathogenesis, p.329−352.In N. Nathanson(ed.), Viral Pathogenesis.Lippincott−Raven, New York.)、殆どどんな蚊でも、任意のアルファウイルスによる胸腔内感染に高い感受性があることから、経口暴露を超える胸腔内接種を選択した。ガラスピペットを使用する接種に続き、蚊は、27℃で10日間インキュベーションし、20%FBS及びファンギゾンを補強したMEMの1ml中で個別に用量設定した。夫々用量設定した蚊の100μl量を、24ウェル状の単層のベロ細胞に添加し、感染を検出するために細胞変性効果を5日間観察した。アッセイコントロール(Assay control)は、TC−83親ウイルス及びIRES変異株のいずれをも含んだ。
【0041】
[試験11]
免疫化及び毒性VEEVでの抗原投与
生後6日目のNIH Swissマウスは、脳内に、総容量20μlのPBSに約106PFUの用量でVEEV TC−83株又は設計変異株を接種された。感染後、8−10動物の夫々の同齢集団を、処置することなく2ヶ月間維持した。21日間、マウスは、疾病(被毛の乱れ、抑鬱、食欲不振及び/又は痙攣)及び/又は死の兆候を毎日観察された。
【0042】
8週齢メスNIH Swissマウスは、VEEV TC−83又は組換えウイルスを使用してマウス1頭当たり約106PFUの用量でワクチン接種され、次いで高い毒性のVEEV株3908の約104PFUを用いて4週間後皮下に抗原投与された。21日間、マウスは、疾病(被毛の乱れ、抑鬱、食欲不振及び/又は痙攣)及び/又は死の兆候を1日2回観察された。
【0043】
[試験12]
組換えVEEV TC−83を基にしたウイルス
本研究の論理的根拠は、脊椎動物の細胞では効率的な複製が可能であるが、蚊由来の細胞では複製できないアルファウイルスを開発することである。従って、このようなウイルスの複製は、昆虫細胞ではなく脊椎動物でのみ機能するタンパク質又はRNA配列に依存する必要がある。これを達成るために、本発明は、EMCV IRESに依存するアルファウイルスの構造タンパク質の発現を行うための方法を設計した。設計されたIRESは、ポリC配列を含まず、EMCVポリタンパク質の最初の4つのコドンを保持し、これによりVEEV TC−83の構造遺伝子の最も効率的な翻訳を達成した。後者の実験において、これら付加的なアミノ酸は、ウイルスの複製に何の弊害も与えないが、ウイルス構造タンパク質の翻訳に検出可能な良好な効果が得られることが確認された(データを示さず)。
【0044】
コンストラクトの一つにおいて、VEEV/IRES、IRES配列は、完全な5’UTRの下流サブゲノムRNAにクローン化された(図1A)。従って、このゲノムはサブゲノムRNA合成可能であると予測された。もう一つの組換え体、VEEV/mutSG/IRESにおいて、サブゲノムプロモータは、13の同義の点突然変異(図1A及び図1B)により不活性化され、この点突然変異は、活性SG RNAプロモータに復帰することを妨げることが予測された。VEEV構造タンパク質の合成を促進するために、IRES配列がクローン化され、26S 5’UTRを置換した。
【0045】
VEEV/IRES、VEEV/mutSG/IRES及び修飾されていない野生型VEEV TC−83ゲノムRNAは、インビトロで合成され、BHK−21細胞中に導入された。感染中心アッセイにおいて、VEEV/IRES RNAは、TC−83のRNAと同じ感染力を示し、TC−83のプラークの大きさと同様の均一な大きさのプラークを発現させた(図1A及び図1C)。このことは、追加の適応変異が、設計ウイルスの有効な複製に必要でないことを強く示唆した。VEEV/IRESは、109PFU/mlを超える力価で複製したが、最終的な力価及びウイルスの複製率は、VEEV TC−83よりも大幅に緩慢であった(図1D)。BHK−21細胞は、もう一つの組換えウイルスゲノムVEEV/mutSG/IRESを導入された。この組換えウイルスゲノムVEEV/mutSG/IRESは、サブゲノムプロモータを欠損し、非常に非効率な感染性ウイルスを生み出した(図1D)。感染中心アッセイにおいて、このコンストラクトは、大部分はピンの先端ほどのプラークを発生させ、その数を測るのは困難であった。意外にも、このウイルスは、連続継代での更なる進化を示し、より大きなプラークを形成した変異株を速やかに生み出した(図1C及びデータを示さず)。図1Dで示された増殖曲線は、小さいプラーク形成ウイルス及び大きなプラーク形成ウイルスの両方の放出を示している。
【0046】
従って、これら実験の結果は、少なくともVEEV/IRESゲノムとの関連においては、EMCV IRESが、VEEV複製に十分な水準で構造タンパク質を生み出すことができることを示唆した。突然変異させたサブゲノムプロモータを含むコンストラクト、VEEV/mutSG/IRESは、より効率的な複製のために進化することができる複製欠損ウイルスを作り出した。
【0047】
[試験13]
VEEV/mutSG/IRESにおける適応変異の分析
大きなプラーク表現型へのVEEV/mutSG/IRESの進化は、ウイルスゲノムにおける追加の変異の蓄積を示唆した。野生型ゲノム配列への復帰は、導入された多くの点突然変異により不可能な事象となり、従って適応変異の位置を予測することが困難であった。変異を同定するために、エレクトロポレーション後、24時間で採取されたVEEV/mutSG/IRES試料の5つのプラークが、無作為に選択され、2つのプラーク精製された変異株のゲノム全体(3’UTR及び5’UTRを含む)が配列決定された。同定された変異のリストは、図2Aに示されている。これら変異の大部分は、同義であり、既知のシス作用RNA領域の中に含まれていなかった。従って、ウイルス複製についてのそれらの効果は、極めて低いものであった。しかしながら、両方のプラーク分離物のゲノムは、nsP2タンパク質での同じ変異である、Y370からCへの変異を含み、ゲノムの一つは、次にコードするAAを同様に変化させた(K371をQに)。
【0048】
ウイルス複製に与える変異の効果を試験するために、Y370からCへの変異、及びY370からCへの変異とK371からQへの変異の両方は、原型のVEEV/mutSG/IRESコンストラクト(図2B)にクローン化され、そのRNA感染力、ウイルス複製率及びプラークの大きさを、原型のVEEV/mutSG/IRES及び他のコンストラクトのRNA感染力、ウイルス複製率及びプラークの大きさと比較した。同じ変異がVEEV TC−83ゲノムにもクローン化され、この親ウイルスの複製に関する効果を試験した。ゲノム中に1つの変異又は両方の変異の何れかを備えるIRESコードゲノムRNA、VEEV/mutSG/IRES/1及びVEEV/mutSG/IRES/2は、VEEV TC−83 RNAで行った感染中心アッセイでの感染力と同じ感染力を示し、VEEV TC−83のプラークと同じ均一なプラークの大きさを形成するウイルスがレスキューされた(データを示さず)。VEEV/mutSG/IRES/1及びVEEV/mutSG/IRES/2は、また、増殖率において、力強い増加を示したが(図2C及び図1D)、第2の突然変異の効果はほとんど検出されたかった。従って、まとめると、nsP2におけるY370からCへの突然変異は、ウイルス複製に対して非常に良好な効果を示し、第2の突然変異は殆どその効果を改善しなかったことをデータは示した。VEEV TC−83ゲノムへの導入の場合、同様の突然変異は、ウイルス複製率又は最終的な力価に対する効果を全く検出できなかった(図2C)。このことは、複製の増強がVEEV/mutSG/IRESに特異的であったことを示唆している。
【0049】
同定されたAA変更(Y370からC、K371からQ)は、サブゲノムプロモータ欠損、IRES含有ウイルスの効率的な複製をもたらす有力な突然変異のほんの僅かを示しているにすぎない。従って、並列実験において、インビトロ合成RNAのRNAトランスフェクションの24時間後に採取された試料から精製された他の3つのプラークコロニーにおけるヌクレオチド2161〜2959の配列が決定されるとともに、ベロ細胞において追加の3回連続継代後ウイルスストックから分離された5つのプラーク精製変異株のヌクレオチド2161〜2959の配列が決定された。このような継代は、最も効率的な複製ウイルスの選択をもたらすことが予測される。同定された突然変異のリストは、図3Aに示されている。配列決定は、RT−PCR由来DNA断片から直接的に実行された。従って、示された突然変異はプラーク由来ウイルス集団における共通配列を示しており、PCR由来のものではない(図3B)。
【0050】
全ての分離株は、nsP2のRNAヘリカーゼドメインのカルボキシ末端断片に対応する配列決定された断片中に突然変異を含んでいた。全ての変化したアミノ酸は、アミノ酸348−424の間に位置していた。エレクトロポレーション後発生する原型のウイルスストックと継代されたプールの何れにおいても最も一般的な突然変異は、Y370からCへの変異であった。このことは、おそらく複製に対して最も顕著な影響の一つであることを指摘した。従って、この特定の突然変異、VEEV/mutSG/IRES、を備える上記記載された変異株は、次の節で述べる実験に使用された。
【0051】
[試験14]
nsP2 Y370からCへの変異のウイルス複製に与える効果
nsP2関連RNAヘリカーゼのカルボキシ末端断片における適応変異の同定は、予期しない結果であり、VEEV/mutSG/IRES複製における増加に対する明確な説明を全く示さなかった。この突然変異は、おそらくRNA複製、ウイルス構造タンパク質翻訳、ウイルス粒子形成、複製複合体の区画化、等の何れかに対する促進作用を備えることができた。しかしながら、最も予期される効果は、ウイルスRNA合成の増大である。従って、BHK−21細胞は、異なるVEEV変異株のインビトロ合成ゲノムで導入され、エレクトロポレーション後4時間〜4.5時間で新しく合成されたウイルスRNAをActDの存在下[3H]ウリジンで代謝的に標識し、そのRNAをアガロースゲル電気泳動により解析した(図4A)。
【0052】
予想通り、VEEV/IRESは、サブゲノムRNA合成の能力がある。このことは、サブゲノムRNA5’UTRの3’末端に導入したIRESがサブゲノムプロモータ活性を妨げないことを示唆している。naP2における適応変異を有するVEEV/mutSG/IRES及びその変異株は、検出不可能なSG RNAを作り出した。従って、これらゲノムのプロモータ配列に導入された13の変異は、サブゲノムRNAの翻訳を完全に無効にした。意外にも、nsP2における適応変異は、RNAゲノム複製に顕著な効果を示さず、VEEV/mutSG/IRES/1及びVEEV/mutSG/IRES/2ゲノムRNAは、最初に設計したVEEV/mutSG/IRESゲノムと同様の効率で複製した。更には、全ての変異株のゲノムRNA複製は、VEEV TC−83の複製と極めて酷似していた。その上、これら変異の効果は、原型のVEEV TC−83の構成には見つからなかった(VEEV/1及びVEEV/2に対応する行参照)。この発見は、適応が、RNA複製での増加をもたらさないことを強く暗示した。
【0053】
ウイルス構造タンパク質の合成を、エレクトロポレーション後12時間で評価した(図4B)。その時まで、VEEV/IRES及びVEEV/mutSG/IRES特異的カプシド及び他の構造タンパク質は、VEEV TC−83RNAで導入された細胞中よりも〜2倍悪い効率で合成された。この納得のいく僅かな相違は、(VEEV TC−83RNAの力価と比較して)VEEV/IRES及びVEEV/mutSG/IRESウイルス夫々が、4桁及び7桁以上も低い感染力価であることを説明していない。これら感染力価は、トランスフェクションの12時間後に採取された試料から検出された。更に、原型のVEEV/mutSG/IRESゲノムを含むBHK−21細胞中のウイルスタンパク質の合成と比較して、nsP2中に適応変異を有するVEEV/mutSG/IRES/1と、VEEV/mutSG/IRES/2を含むBHK−21細胞中とのウイルスタンパク質の合成の間の差異は、この実験及び他の実験においても検出されなかった。IRES含有ウイルスで感染させた細胞中での標識されたタンパク質の際立ったパターンの特徴は、二つの追加のバンドの存在であり、これらバンドは質量分析計により熱ショックタンパク質Hsp90及びHsp72として同定された。これらタンパク質の誘導の生物学的意義は、未だ明確ではないが、IRESから発現する構造タンパク質を備える細胞中で応力成長に至るウイルス構造タンパク質折り畳みにおいてある異常な部分に原因があると考えられる。
【0054】
追加の実験において、VEEV TC−83、VEEV/mutSG/IRES及びVEEV/mutSG/IRES/1で感染させた細胞中のウイルス糖タンパク質の細胞内分布が評価され、細胞表面上のこれらタンパク質の存在がVEEV特異的抗体で染色されることにより解析された。糖タンパク質の分布における顕著な相違が全く同定されなかった。適応変異はウイルスゲノム中の追加のパッケージング信号の形成の原因となるという可能性が調べられた。変異含有断片(VEEVゲノムのヌクレオチド2533−2950に対応する)が、VEEV/mutSG/IRESゲノムの3’UTRにクローン化され、組換えインビトロ合成RNAが感染中心アッセイで試験された。原型のVEEV/mutSG/IRESのプラークの大きさ又はウイルス力価と比較して、プラークの大きさ又はウイルス力価の増加は、全く検出されなかった。
【0055】
もう一つの変異株において、サブゲノムプロモータ及びVEEV カプシドコード配列は、VEEV/mutSG/IRESゲノムの3’UTRにクローン化され、サブゲノムRNAからの追加のカプシド発現がウイルス複製の効率を増加させるかどうかを試験した。この組換えもウイルス力価に明確な効果を全くもたらさなかった。最後に、VEEV/mutSG/IRESが感染性ウイルスの代わりにゲノムフリーのサブウイルス粒子を生産するかどうかが解析された。VEEV/mutSG/IRESで導入され、代謝的に[35S]で標識化された細胞は、ショ糖密度勾配での超遠心により検出されるサブウイルス粒子を生産しないという、事実に反することが観察された(データを示さず)。従って、まとめると、上記記載した複雑な分析は、原型のVEEV/mutSG/IRESの非常に効率の悪い複製又はIRES含有ウイルスの複製に関するVEEV nsP2中の検出変異の明確な効果に対する明らかな機構的な説明を提示しなかった。しかしながら、本発明の主な目的は、EMCV IRES機能に依存する複製を行うVEEV変異株を開発することであり、VEEV/IRES及びVEEV/mutSG/IRES/1の両方がこの目標を達成したと思われる。
【0056】
[試験15]
蚊細胞及び蚊中でのIRES依存VEEV変異株の複製
アルファウイルスの複製についての蓄積されたデータは、明確に、遺伝的不安定性及び高い進化率を示しており、これらは、特にウイルス複製において悪影響を与える際に、任意の異種遺伝子の欠損をもたらす(Gorchakov,R. et al.,2007,Virology 366:212−25、Thomas,J.M. et al.,2003,J Virol 77:5598−606)。従って、本発明の重大な争点の一つは、設計EMCV IRES挿入が安定であり、蚊細胞中でウイルスの複製を不可能な状態にするかどうかであった。これを試験するために、BHK−21細胞へのインビトロ合成RNAのエレクトロポレーションの24時間後に採取されたVEEV/IRES及びVEEV/mutSG/IRESウイルスをC710蚊細胞に感染させた。VEEV/mutSG/IRESは、nsP2にY370からCへの適応変異を備える上記記載のVEEV/mutSG/IRES/1の代わりに使用され、蚊細胞中での複製を確立する能力に関して、RNAトランスフェクション後放出される変異株のライブラリーの全てを試験した。
【0057】
第1の継代では、C710細胞の感染の48時間後VEEV/IRESの力価は1.5×1010PFU/mlに達し、第2の継代後も同様の力価がストックにおいて検出された(図5A及び5B)。対照的に、VEEV/mutSG/IRESの力価は、第1の継代後では150PFU/mlであり(第1の継代後の力価は、蚊細胞中で新生ウイルスが生産されたというよりも感染に使用した残存ウイルスを反映しているように思われる)、次ぐ第2の継代後では検出限界以下であった(図5A及び5B)。追加実験において、nsP2における適応変異を包含するVEEV/mutSG/IRESのプラーク精製変異株が、C710細胞で継代された。2回の盲目継代(blind passage)後、感染性ウイルスが復帰することは全くなかった。
【0058】
もう一つの実験において、Ae. aegypti蚊は、胸腔内に、約105PFUのVEEV TC−83及びVEEV/mutSG/IRES/1変異株を接種された。IRES変異を接種された17のAe. aegypti蚊において検出可能に1つも複製できない一方、TC−83親株を接種された17の蚊のうち全ての蚊がCPEアッセイにおいて検出可能なレベルで複製し、その力価は、106PFU/蚊を超える平均力価であった。従って、IRES含有VEEV変異株VEEV/mutSG/IRES/1は、インビトロ及びインビボの両方で、蚊細胞中で複製できなかった。
【0059】
蚊細胞中での継代後、サブゲノムRNA変異株を生産することができるVEEV/IRESの高い力価を説明するために、2つの個別のプラークが無作為に選択され、ゲノムのIRES含有断片の配列を決定した。両方の分離株において、IRES配列は、ウイルスゲノム中に存在しておらず、原型のIRESの13及び15残基が確認されるのみであった(図5C)。従って、蚊細胞中でのVEEV/IRES変異株の継代は、IRESマイナス変異株の蓄積を導き、サブゲノムプロモータを欠損させたVEEV/mutSG/IRESは、蚊細胞中で効率的な複製を可能にする変異株を生む出すことはなかった。
【0060】
[試験16]
VEEV/mutSG/IRES/1変異株は弱毒化表現型を示す。
本発明は、蚊由来の細胞及び対応する媒介蚊中での複製不可能であるが、親VEEV TC−83よりも脊椎動物中で弱毒化表現型を示すVEEV変異株の開発を目的とした。VEEV/mutSG/IRES/1変異株の低複製率は、このウイルスがIFNa/b生産及びシグナル伝達を備える脊椎動物細胞中で複製することができないという懸念を引き起こした。しかしながら、これは事実と異なった。図6に示された実験の結果は、VEEV/mutSG/IRES/1がIFN−アルファ/ベータ−分泌及びシグナル伝達において欠損を持たないNIH3T3細胞中で、109PFU/mlを超える力価まで複製することを示した。この複製は、より効率的なIFNa/b誘導を引き起こしたが(図6)、IFN放出は、明確に、既存のウイルス複製を無効にしていなかった。BHK−21細胞で示されるように(図2C)、VEEV/mutSG/IRES/1の複製は、VEEV TC−83の複製よりも効率が悪いが、IRES依存変異がインビボで弱毒化され得ることを示唆した。実際に、生後6日目のマウス脳内に約106PFUを接種後、86%が感染症を切り抜け脳炎の兆候を発症しなかった。対照的に、92%のマウスが、VEEV株TC−83の同じ用量により殺された。まとめると、これらデータは、遺伝子的に改良したIRES依存VEEVが、親VEEV TC−83よりも弱毒化したことを示している。
【0061】
にもかかわらず、VEEV/mutSG/IRES/1変異株は、新生児マウス及び成体マウスの両方で免疫原性を残した。VEEV/mutSG/IRES/1の脳内接種を生き抜いた12頭の生後6日目のマウスの内10頭が、投与5週間後、野生型VEEV株3908の104PFUを用いた皮下への暴露を生き抜いた。対照的に、同じ方法で暴露された偽(PBS)感染マウス12頭は、全て生存できなかった(図7)。VEEV/mutSG/IRES/1は、また成体マウスにおいても免疫原性であった。約106PFUを用いた1回の皮下ワクチン接種は、3週間後、VEEV株3908の104PFU(〜104LD50)での皮下暴露に対してマウスの80%を保護した(図8)。中和抗体価(PRINT80)は、暴露直前にこれら全てのマウスで<1:20で検出できなかった。ここことは、1回のワクチン接種後の不完全な防御は、インビボでのIRES含有ウイルス複製の低いレベルの結果であることを示唆している。従って、弱毒化の高いレベルは、安全性の高い段階を与えるが、反復ワクチン接種が要求されるかもしれない。
【0062】
[試験17]
弱毒化を減じるが蚊の伝染力の欠損を維持する発現戦略
本発明の他の実施形態において、新規な発現戦略が設計され、弱毒化を減じるが蚊の伝染力の欠損を維持することができた。この戦略は、エンベロープ糖タンパク質遺伝子の下流にIRESを配置することを含んだ。このエンベロープ糖タンパク質遺伝子は、3’UTRのまさに上流のサブゲノム領域の3’末端にカプシド遺伝子を備えている(図9)。従って、IRES依存様式で翻訳されるカプシドタンパク質ではなく、CAP依存様式で翻訳されたエンベロープタンパク質遺伝子を備えるサブゲノムメッセージが作られた。BHK及びベロ細胞中のこの新規なIRES変異の複製は、再度効率的であったが、C710蚊細胞中では検出されなかった。20匹のAedes aegypti生体メス蚊の胸腔内接種は、複製の証拠を示さなかった。IRES2型がマウスをワクチン接種するために用いられた場合、10個体の全ては、通常のTC−83により誘導されるよりも約2倍低い平均力価で抗体陽転するとともに、IRES2型により致死的な皮下の暴露から保護された。従って、新規なIRES発現戦略は、より少ない弱毒化をもたらすと思われる一方、蚊機能不全表現型を保持する。
【0063】
【表1】
【0064】
[参考文献]
・Aguilar,P.V.et al.,2007,J Virol 81:3866−76
・Barton,D.J.et al.,1999,J Virol 73:10104−12
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・Davis,N.L.et al.,1989, Virology 171:189−204
・Garmashova,N.et al.,2007.J Virol 81:13552−65
・Garmashova,N.et al.,2006.J Virol 80:5686−96
・Garmashova,N.et al.,2007.J Virol 81:2472−84
・Hart,M.K.et al.,2000, Vaccine 18:3067−75
・Jan,E., and P.Sarnow.2002, J Mol Biol 324:889−902
・Kuhn,R.J.et al.,1996,J Virol 70:7900−9
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・Morrill,J.C.et al., 1991, Vaccine 9:35−41
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・Nugent, C.L. et al. J Virol 73:427−35
・Pugachev,K.V. et al., 2000, J Virol 74:10811−5
・Rice, C.M. et al., 2006, J.Virol.61:3809−3819
・Russo, A.T. et al., 2006, Structure 14:1449−58
【0065】
本明細書中で言及されている特許文献又は公開文献は、本発明に関連する分野の当業者のレベルを指し示すものである。更に、これら特許文献及び公開文献は、あたかもこれら個々の文献が、具体的に及び個々に参考文献として組み込まれるために示されるように、同様の範囲で明細書中に参考文献として組み込まれる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弱毒化、組換えアルファウイルスを作製する方法であって、
該方法は、
非構造タンパク質4(nsP4)コード配列の末端及びサブゲノムRNAの野生型5’UTRの代わりにアルファウイルスのサブゲノムRNAコード配列の開始AUGとの間の脳心筋炎ウイルス(EMCV IRES)の内部リボソーム侵入部位をクローニングする段階を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記サブゲノムRNAにおける前記野生型5’UTRの集合点突然変異及び欠損により前記アルファウイルスのサブゲノムプロモータを不活性化する段階を更に含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記サブゲノムプロモータの前記不活性化は、非構造タンパク質4のカルボキシ末端を修飾しないことを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記方法は、
ウイルスの複製、放出及びウイルス力価を増加させるのに効果的な非構造タンパク質2(nsP2)における適応変異を導入する段階をさらに含むことを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項5】
前記適応変異は、Y370をCに、K371をQに、P349をTに、D418をAに、K423をTに、又はこれらの組合せであることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記アルファウイルスがチクングンヤ熱ウイルスであることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記アルファウイルスが東部ウマ脳炎ウイルスであることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記アルファウイルスがベネズエラウマ脳炎ウイルスであることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記アルファウイルスが西部ウマ脳炎ウイルスであることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項10】
請求項1記載の方法により作製されることを特徴とする弱毒化組換えアルファウイルス。
【請求項11】
前記アルファウイルスが蚊において複製不可能であり、媒介蚊により伝染不可能であり、IFN−アルファ/ベータの高いレベルを誘導可能であり、IFN−アルファ/ベータ細胞中での緩慢な増殖であり、IFNシグナル伝達欠損BHK−21細胞における緩慢な増殖であり又はこれらの組合せであることを特徴とする請求項10記載の弱毒化組換えアルファウイルス。
【請求項12】
請求項10に記載の弱毒化組換えアルファウイルスをコードするヌクレオチド配列を含むことを特徴とするベクター。
【請求項13】
請求項12に記載のベクターを包含するとともに発現することを特徴とする宿主細胞。
【請求項14】
請求項10に記載の弱毒化組換えアルファウイルス及び薬学的に許容可能な担体を備えることを特徴とする医薬組成物。
【請求項15】
請求項10に記載の弱毒化組換えアルファウイルスを含むことを特徴とする免疫原性組成物。
【請求項16】
アルファウイルスへの暴露に起因する感染から被験体を保護する方法であって、
該方法は、
請求項15に記載された免疫原性組成物の免疫学的に効果的な量を投与する段階を備え、これによりアルファウイルスへの暴露に由来する感染から被験体を保護することを特徴とする方法。
【請求項17】
前記被験体が人又は家畜であることを特徴とする請求項16記載の方法
【請求項18】
蚊に感染することができない弱毒化組換えアルファウイルスを作製する方法であって、
該方法は、脳心筋炎ウイルスの内部リボソーム侵入部位及び3’UTRのまさに上流側に位置するサブゲノム領域の3’末端においてカプシド遺伝子を有するエンベロープ糖タンパク質の下流側カプシド遺伝子と、をクローニングする段階を含み、
前記カプシドは、CAP非依存的様式で発現されるとともにエンベロープタンパク質遺伝子はCAP依存的様式で翻訳されるが、カプシドタンパク質はIRES依存的様式で翻訳されことを特徴とする方法。
【請求項1】
弱毒化、組換えアルファウイルスを作製する方法であって、
該方法は、
非構造タンパク質4(nsP4)コード配列の末端及びサブゲノムRNAの野生型5’UTRの代わりにアルファウイルスのサブゲノムRNAコード配列の開始AUGとの間の脳心筋炎ウイルス(EMCV IRES)の内部リボソーム侵入部位をクローニングする段階を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記サブゲノムRNAにおける前記野生型5’UTRの集合点突然変異及び欠損により前記アルファウイルスのサブゲノムプロモータを不活性化する段階を更に含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記サブゲノムプロモータの前記不活性化は、非構造タンパク質4のカルボキシ末端を修飾しないことを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記方法は、
ウイルスの複製、放出及びウイルス力価を増加させるのに効果的な非構造タンパク質2(nsP2)における適応変異を導入する段階をさらに含むことを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項5】
前記適応変異は、Y370をCに、K371をQに、P349をTに、D418をAに、K423をTに、又はこれらの組合せであることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記アルファウイルスがチクングンヤ熱ウイルスであることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記アルファウイルスが東部ウマ脳炎ウイルスであることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記アルファウイルスがベネズエラウマ脳炎ウイルスであることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記アルファウイルスが西部ウマ脳炎ウイルスであることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項10】
請求項1記載の方法により作製されることを特徴とする弱毒化組換えアルファウイルス。
【請求項11】
前記アルファウイルスが蚊において複製不可能であり、媒介蚊により伝染不可能であり、IFN−アルファ/ベータの高いレベルを誘導可能であり、IFN−アルファ/ベータ細胞中での緩慢な増殖であり、IFNシグナル伝達欠損BHK−21細胞における緩慢な増殖であり又はこれらの組合せであることを特徴とする請求項10記載の弱毒化組換えアルファウイルス。
【請求項12】
請求項10に記載の弱毒化組換えアルファウイルスをコードするヌクレオチド配列を含むことを特徴とするベクター。
【請求項13】
請求項12に記載のベクターを包含するとともに発現することを特徴とする宿主細胞。
【請求項14】
請求項10に記載の弱毒化組換えアルファウイルス及び薬学的に許容可能な担体を備えることを特徴とする医薬組成物。
【請求項15】
請求項10に記載の弱毒化組換えアルファウイルスを含むことを特徴とする免疫原性組成物。
【請求項16】
アルファウイルスへの暴露に起因する感染から被験体を保護する方法であって、
該方法は、
請求項15に記載された免疫原性組成物の免疫学的に効果的な量を投与する段階を備え、これによりアルファウイルスへの暴露に由来する感染から被験体を保護することを特徴とする方法。
【請求項17】
前記被験体が人又は家畜であることを特徴とする請求項16記載の方法
【請求項18】
蚊に感染することができない弱毒化組換えアルファウイルスを作製する方法であって、
該方法は、脳心筋炎ウイルスの内部リボソーム侵入部位及び3’UTRのまさに上流側に位置するサブゲノム領域の3’末端においてカプシド遺伝子を有するエンベロープ糖タンパク質の下流側カプシド遺伝子と、をクローニングする段階を含み、
前記カプシドは、CAP非依存的様式で発現されるとともにエンベロープタンパク質遺伝子はCAP依存的様式で翻訳されるが、カプシドタンパク質はIRES依存的様式で翻訳されことを特徴とする方法。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公表番号】特表2011−523347(P2011−523347A)
【公表日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−544350(P2010−544350)
【出願日】平成21年1月23日(2009.1.23)
【国際出願番号】PCT/US2009/000458
【国際公開番号】WO2009/131604
【国際公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(507053954)ザ・ボード・オブ・リージェンツ・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・テキサス・システム (5)
【氏名又は名称原語表記】THE BOARD OF REGENTS OF THE UNIVERSITY OF TEXAS SYSTEM
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年1月23日(2009.1.23)
【国際出願番号】PCT/US2009/000458
【国際公開番号】WO2009/131604
【国際公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(507053954)ザ・ボード・オブ・リージェンツ・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・テキサス・システム (5)
【氏名又は名称原語表記】THE BOARD OF REGENTS OF THE UNIVERSITY OF TEXAS SYSTEM
【Fターム(参考)】
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