説明

蛍光ベースのピペット器具

【要約書】
近位端(277)と遠位端の間に延伸する細長い本体を備える、改良されたピペット先端(276)が提供される。本体は、一般に遠位端から近位端(277)に向かって延出する流体経路を提供するように構成および配置された、複数の薄膜層(たとえば154、156、102、158、202)を備える。改良されたピペット先端(276)が、詮索領域を備え、その中で流体経路に沿って流れる流体を詮索する。1つの動作可能な詮索装置が、全体的に(100)で示され、ストークスシフトから生じる放射線の検出を可能にするように構成された構造を含む。任意で、センサ構成要素が、電気に基づいた詮索のために、その中の流体に接触するための、流体経路に配置された1つまたは複数の電極(たとえば248、250)を備えることができる。ピペット先端(276)が、粒子を数え、サンプルの完全性を確認し(たとえば泡がないこと)、サンプルの流量を監視し、他の用途の中でも、とりわけ、取り込まれた体積を確認することに対して実施できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(優先権の主張)本出願は、2007年11月27日に出願の米国仮特許出願第61/004,630号の「Fluorescence−based pipette instrument」に関する出願日の利点を主張し、その内容全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0002】
本出願は、以後に、または同時に光学的および/または電気的にサンプルを詮索(interrogation)する目的で、バルク流体(bulk fluid)容器から流体サンプルを抽出する装置に関する。
【背景技術】
【0003】
流体の体積の精密な測定および送達に使用される手持ち式ピペットは、今日の科学者に利用可能な、一般的であり広範囲に使用される実験用器具である。生物学的および化学的な液体のサンプルの、少ない体積での流体の取扱いを必要とする多くの手順は、適切で一貫した実験的処理を確実にするために、その使用の容易性、精密性、および繰り返し性に依存する。市販のピペットは、固定された、および調整可能な様々な体積で入手可能である。大掛かりな、高処理量の試験に使用される場合、市販されるピペットは、多くの場合、多チャネルであり、ボタンを一度押すだけで、同時に12の異なるサンプルまで精密な流体測定が可能になる。一般的なピペット器具は、特定の流体の体積を使い捨て可能なピペット先端に付勢し、またはそこから押し出すために必要な圧力を生成するために、容積式システム(たとえば手動プランジャシステム、または電子ポンプ)に依存する。サンプルが排出された後に、ピペット先端が廃棄される。最新技術のピペット器具は、1ml未満の流体の体積を正確に測定することが可能であり、体積の制御および流体の測定用のサーボポンプを使用する。統合された電子制御を備えるデジタルディスプレイにより、オペレータのピペット器具を使用する容易さが向上する。
【0004】
実験室では、ピペットは、一般にウエットベンチ環境に置かれ、流体の混合からサンプルの分離および調製の範囲にわたる無数の流体測定用途に使用される。実験細胞生物学では、ピペットは、培養中の細胞の少量体積の懸濁液を分離するために日常的に使用される。最も一般的な手順のうちの1つでは、精密に測定された体積中の細胞の少量の部分を(顕微鏡観測の下で)手作業で数えることにより、使用者が、培養中の細胞の体積全体に対する個体数および細胞生死の評価を行うことができるようになる。残念なことに、この手法を用いて顕微鏡下で細胞を数えることは、非常に時間および資源を費やし、計数の精度は、所与の体積中で使用者が実際に数えようとする細胞の数に完全に依存する。
【0005】
2つの電導性流体の容器の間の小さな孔を通って流れる粒子によって生じるインピーダンスの偏りを測定することによる、粒子検出における先駆的な業績が、W.H,Coulterの米国特許第2,656,508号に開示されている。現在、その発明者の名は、粒子が孔の一部分を塞ぐときに、電気的なインピーダンスにおける変化を生じる原理と結びつけられている。彼の特許が公開されてから、Coulterの原理の下で動作する感知装置を開発および改良するために、かなりの努力が傾けられてきた。関連する米国特許には、Fisherの第5,376,878号、Gascoyne等の第6,703,819号、Krulevitch等の第6,437,551号、Mehtaの第6,426,615号、Frazier等の第6,169,394号、Weigl等の第6,454,945号および第6,488,896号、Holl等の第6,656,431号、およびBlomberg等の第6,794,877号が含まれる。上記に参照した文献の全ては、技術および様々なセンサ装置の開示に関して、その全体が、本明細書に明記されたごとく、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0006】
いくつかの粒子が、加えられた励起周波数とは異なる周波数で放射線を出す能力は、一般にストークスシフトとして知られている。そのような現象の詮索に関連する構造を開示する最近の米国特許には、第7,450,238号、第7,444,053号、第7,420,674号、第7,416,700号、第7,312,867号、第7,300,800号、および第7,221,455号が含まれる。上記に参照した文献の全ては、関連する技術および様々なセンサ装置の開示に関して、その全体が、本明細書に明記されたごとく、参照によって本明細書に組み込まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
流体サンプルを抽出するために、バルク流体の非常に精密な量を測定し、単位体積当たりの粒子数など、そのようなサンプルの1つまたは複数の特徴を決定するために、そのサンプルを(光学的および/または電気的に)詮索することが可能な、精密な流体の詮索装置を提供することが改良となる。装置が、低価格の、一回限りの使用の、頑丈な、かつ使い捨て可能な装置として実施されることが、さらなる利点になる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、流体サンプル内に同伴された粒子を詮索するための装置および方法を提供する。特定の現在のところ好ましい実施形態は、そのようなサンプルを流体のバルク容器から抽出することができる。現在のところ好ましい実施形態は、単位体積当たりの粒子数などの流体サンプルの1つまたは複数の部分にいくつかの試験を行うように動作可能であり、かつ/またはその他の機能の中でも、とりわけ、サンプルまたはその一部分の体積的な大きさ(volumetric size)または流量を確認することができる。試験または詮索は、放射線検出および電気的な特徴の評価のうちの1つまたは両方を包含することができる。
【0009】
現在のところ好ましい実施形態は、近位端と遠位端との間に延伸する細長い本体を有し、流体経路が縁位端から近位端に向かって延出する本体を通る、ピペット先端を形成する。好ましい実施形態は、詮索領域を通過する、励起または刺激された対象となる粒子から放出された放射線の検出を可能にするように構成されている。一般には、詮索領域は、粒子をほぼ一列の移動に付勢するように構成された構造の付近に配置される。任意で、特定の実施形態は、流体経路に沿って流れる流体を電気的に詮索することができる。望ましくは、動作可能なセンサ構成要素の実施形態は、体積的な粒子数を決定するように構成および配置される。場合によっては、センサ構成要素は、流体経路に沿った1つまたは複数の特定の位置に流体の境界縁の存在を検出するように構成および配置することができる。そのような装置では、センサ構成要素は、流体経路に沿った流体流量の決定を可能にするように構成および配置できる。
【0010】
そのような場合に、本体は、流体経路の少なくとも一部分を提供するように構成および配置された複数の層を備えるように構成される。そのようないくつかの場合には、実現可能なセンサ構成要素は、第1および第2の隣接する層の間に保持された第1の電導性トレースの一部分によって形成できる。第1のセンサ構成要素は、流体経路に沿って流れる流体に接触するように配置された第1のトレースの第1の延伸によって形成できる。さらに、第2の電導性トレースは、隣接する層の間に保持することができ、第2のトレースの少なくとも1つの延伸が第2のセンサ構成要素として流体経路に沿って流れる流体に接触するように配置される。場合によっては、第1のセンサ構成要素および第2のセンサ構成要素は、流体経路に沿って離隔され、同じ層の間に保持される。他の場合には、第1のセンサ構成要素および第2のセンサ構成要素は、流体経路に沿って離隔され、異なる層の間に保持される。そのような複数のセンサ構成要素は、必要に応じて複数の所望の位置に設けることができる。
【0011】
特定の実施形態では、流体経路の一部分は、別個の点の間の既知の体積を取り囲む一本の管腔によって画定される。さらに、センサ構成要素は、その既知の体積に一致するサンプルの体積を構成するある量の流体が、ピペット先端を通って移動するのを示すために効果的な、そのような別個の点に配置できる。その間に既知の体積を有する流体チャネルに沿って離隔されたセンサ構成要素の間での、流体フロント(fluid front)に関する移動時間が、詮索されたサンプルの体積的な流量を決定するために使用できる。
【0012】
本発明の特定の原理に従って構成されたピペット先端は、ピペット先端の近位端と連結するように構成および配置されたピペットと結びついて利点をもたらすために使用することができる。望ましくは、先端をピペットに接続することは、領域への励起放射線の適用、および領域からの放出放射線の検出を可能にし、かつ流体経路の近位部分に吸引力の適用を可能にするように、詮索領域を適応させるために効果的である。さらに、場合によっては、センサ構成要素を電気的な詮索装置とともに回路内に配置することは、先端とピペットとを連結する動作に関して望ましい。
【0013】
いくつかの実施形態は、先端がピペット内に装着された場合に、ピペット先端の検出を可能にするようになされた構造を備えることができる。異なるピペット先端が、たとえば、トリガとして使用することができる直接の電気接続で配置された電気的な接触パッドピンの間、または異なる接触パッドの間に生じた異なる抵抗値などの、異なる検出可能な識別性を有するように構成することができ、それはたとえば、得られた先端の識別性に依存した特定の試験を行うために使用することができる。
【0014】
本発明の特定の原理に従って構成されたピペット先端を、詮索装置によって先端の詮索領域を通過する粒子の詮索するための定位置にピペット先端を配置し、吸引力供給源と連通する先端を通る流体経路の近位端を配置するために効果的な、協働的に構成されたピペットに連結することによって、1つの装置が使用できる。次いで、サンプルをピペット先端に引き入れるのに効果的な流体推進圧力が加えられる。サンプルの少なくとも一部分が、流体経路に沿って流れ、センサ構成要素を通過して流れる時に詮索される。センサ構成要素によって収集されたデータは、ピペットと関連付けられたディスプレイ・スクリーンに示すことができ、かつ/またはさらなる分析または蓄積のために、コンピュータもしくはその他のデータ収集装置に転送できる。流体サンプルの分析の完了に続いて、使用されたピペット先端が廃棄される。
【0015】
吸引力を適用する好ましい方法は、過剰な吸引圧力を生成し、次いでそれが、i)サンプルをピペット先端に引き込むように動作可能な第1の吸引圧力と、ii)それに続く、時間による所望の吸引圧力プロファイルとを適用するのに効果的なピペットと関連付けられた構造によって下方調整できることを包含する。
【0016】
本発明のこれらの特徴、利点、および代替の態様は、以下の詳細な説明を添付の図面とともに読んで考察すれば、当業者には明らかになるであろう。
図面では、本発明を実施するための最良の形態であると現在見なされるものを示す。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の動作の一般的な原理を示す第1の実施形態からの概略断面図である。
【図1A】周波数に対する放射線波長を示すプロットである。
【図2】詮索プラットフォームの特定の構造と関連付けることができる、実現可能な配管装置の特定の詳細を示す正断面図である。
【図3】図2に示される配管装置の上面図である。
【図4】詮索プラットフォームの特定の構造と関連付けられた、別の実現可能な配管装置の特定の詳細を示す正断面図である。
【図5】動作可能な詮索プラットフォームの特定の構造のための現在のところ好ましい装置の正面図である。
【図6】ピペット先端を通って流れる流体に同伴された粒子を詮索し、そのような特定の粒子の蛍光を検出可能にするように構成された、組み立てられたピペット先端の斜視図である。
【図7】上部の2つの層が除去された、図6のピペット先端の上面図である。
【図8】図6のピペット先端の斜視図の組立体分解上面図である。
【図9】図8のピペット先端の斜視図の組立体分解底面図である。
【図10】本発明の特定の原理に従って構成された装置を通る断面図である。
【図11】図6に示された先端などのピペット先端とともに使用するための詮索プラットフォームとして構成されたピペットの斜視図である。
【図12】図11に示されたピペットの先端インタフェース部分の部分断面の拡大側面図である。
【図13】ピペット先端用の詮索構成要素の装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の様々な要素が符号を与えられ、当業者が本発明を作製および使用することを可能にする様に本発明が論じられる図面に参照を行う。以下の説明は、本発明の原理を例示するに過ぎず、別紙の特許請求の範囲を狭めるものとして見なすべきではないことを理解されたい。
【0019】
本開示に一般的に用いられるように、また文脈で特に明白でない限り、用語「流体」は、液体のみ、混合物内の1つまたは複数の液体、その中に同伴または懸濁された1つまたは複数の液体および粒子を含むことができる。ある場合には、流体は、電解質の特性を有する。バルク流体容器は、単に本装置の実施形態によって詮索される少なくとも1つの流体サンプルを形成するのに十分な量の流体を保持する様に大きさを決められた容器である。
【0020】
用語「粒子」およびその変種は、生きた、または死んだ生物学的な細胞および分子を非排他的に含む物質の小さな片を包含することが意図される。文脈で特別に明らかでない限り、「圧力」および「吸引力」は、一般に局所的な大気圧に対して測定されることが意図される。
【0021】
「制御された放射線詮索領域」は、制御の少なくとも1つの制御の動作可能な測定が、領域内の対象となる粒子の移動に対して行われることを意味する。制御の動作可能なレベルは、制御された放射線詮索領域を通って移動する対象となる個々の粒子を識別または定量化するのに効果的な、放出された放射線を検出可能にするのに十分な配置に粒子を物理的に編成する。そのような制御は、複数の対象となる粒子を含む試験管の中に当てられた励起放射線の場合に生じるような、制御されない放射線と正反対である。そのような場合、粒子から放出されたストークス偏移放射線が検出される可能性があるが、制御されていないものであり、個々の対象となる粒子を識別または定量化することができない。試験管内に少なくともいくつかの対象となる粒子があるという限られた情報しか、抽出することができない。
【0022】
オリフィスは、概して、粒子がピペット先端の部分を通って移動するとき、対象となる粒子を望ましくコンパクトな断面に編成または配置するのに効果的な、任意の種類のくびれ構造を包含するように画定することができる。現在のところ好ましい実施形態では、オリフィスは、基本的にプレートを貫通する穴である。望ましくは、対象となる粒子は、オリフィスの構造によって少なくともほぼ一列の順で移動するように付勢される。
【0023】
本発明の特定の実施形態で使用される構造の一般化された動作可能な装置を示す概略図が図1に100で全体的に示される。図示されるように、実施形態100は、放射線源104と放射線検出器106との間に配置された、102で全体的に示された、不透明の部材を備える。場合によっては、不透明の部材102は、層102が詮索領域に関連付けられているので、詮索層として参照がなされる。少なくとも1つのオリフィス108が、全体的に110で示された第1の側と、全体的に112で示された第2の側との間の流体経路を提供するために、不透明の部材102内に配置される。オリフィス108は、貫通軸線114を有するものとして特徴付けることができ、それに沿って流体がそれぞれ不透明の部材102の第1及び第2の側面110、112の間に流れることができる。
【0024】
不透明な部材の厚さT1、およびオリフィスの特徴的な大きさD1は、不透明な部材を通る粒子の一列の移動を促進し、実質的にオリフィスの内側に1つの粒子のみを一度に有するために、一般に、対象となる粒子の大きさに従って大きさを決められる。装置が血液細胞を詮索するために使用される場合、不透明な部材の厚さは、一般的に約10ミクロンと約300ミクロンの間の範囲にあることができ、約125ミクロンの厚さが現在のところ好ましい。オリフィスの直径、またはその他の特徴的な大きさは、約5ミクロンと200ミクロンの間の範囲にあることができ、約50ミクロンの直径が現在のところ好ましい。
【0025】
動作可能な不透明の部材102は、部分的には、供給源104によって放出され、放射線検出器106によって受け取られ、かつ検出される第1の放射線118(または場合によっては、励起放射線)の量を低減するように機能することができる。第1の放射線118は、方向を有するベクトルとして示される。望ましくは、実質的に全ての第1の放射線118が、放射線検出器106によって検出されるのを防止される。いずれの場合にも、動作可能な実施形態は、第1の放射線118による検出器106の飽和を阻止するように構成される。図1に示される装置に示されるように、第1の放射線118は、オリフィス108を単に通過して、放射線検出器106によって受け取ることができる。したがって、下記にさらに詳細に述べるように、特定の実施形態は、検出器106によって受け取られる放射線を制御するための方策として、1つまたは複数の選択的な放射線フィルタを使用することができ、あるいは別法として検出器106に対して角度を付けて第1の放射線118を放出することができる。
【0026】
図1に示される不透明の部材102は、第1の側110に配置された第1の被覆124を保持するコア要素122、および第2の側112に配置された第2の被覆126を備える。代替のコア要素は、単一の側に被覆を有するコア要素から形成できる。図示された被覆124、126は、コア要素122を通る励起放射線の透過に対する遮蔽を協調的に形成する。当然ではあるが、それ自体が、放射線の透過に対して固有に阻止する性質のある露出したコア要素を別法として使用することも、企図の範囲内にある。1つの現在のところ好ましいコアは、フィルムを通ってほんのわずかな光しか透過しない、不透明のポリアミドフィルムを備えるので、金属化またはその他の遮蔽要素が全く必要ない。しかし、特定の実施形態は、第1の放射線118に対して実質的に透明である詮索層102も有することができる。
【0027】
微小粒子を検出する際に使用するための実現可能なコア122は、約0.127mm(0.005インチ)の厚さを有するPETなどの、薄いポリマフィルムから形成できる。そのようなポリマ材料は、実質的に放射線に対して透過性があるので、被覆124および126のうちのいずれか一方または両方などの1つまたは複数の被覆が、必要であれば、そのようなコア材料に適用できる。実現可能な被覆には、スパッタリング、蒸着、またはその他のよく知られた技術によるなどの薄い層として適用できる、金属または合金が含まれる。理想的には、そのような層は、1つの動作可能な実施形態では、たとえば約1μmの第1の放射線の波長の少なくとも約2倍の厚さである必要がある。その結果生じる金属化されたフィルムは、オリフィスによって中断される場所を除いて、基本的に放射線の透過に対して影響を受けにくい。アルミニウムは、被覆124および/または126として、コア122に適用するのに適した1つの金属である。
【0028】
装置100は、複数の粒子130を付勢し、オリフィス108を通して実質的に一列にするように構成される。粒子130は、一般に粒子がオリフィス108に接近し、そこを通過し、そこから離れる時に、励起領域を通過する。注目すべきこととして、粒子を担う流体の流れは、オリフィス108を通る両方向のものであることができる。励起領域は、一般に、オリフィス108によって画定された貫通チャネルを含む。励起領域は、粒子がその中に存在し、第1の放射線と接触することができる体積を包含する、下方の雲(cloud)134によって示される体積も含むことができる。励起領域は、同様に粒子がその中に存在し、第1の放射線と接触することができる体積を包含する、上方の雲136によって示される体積をさらに含むことができる。
【0029】
ある場合には、たとえば複数のオリフィスがある場合には、用語「領域」は、複数のそのように分布した領域を含むことができる。すなわち、複数の流体的に平行な領域内で詮索を行うことは、企図の範囲内にある。しかし、用語「領域」の適切な意味は、文脈で推論可能であると考えられる。励起領域では、粒子の上に当たる第1の放射線108は、いくつかの粒子を蛍光させ、(ストークスシフトを生じ)、それによって第1の放射線108と比較して異なる波長で、実質的に全ての3つの従座標方向に放射線を放出する。次いで、これらのいくつかの粒子によって放出された蛍光放射線は、放射線検出器106によって検出される。
【0030】
この開示では、用語「波長」は、一般的に、必ずしも単一の特定の波長のみを指して用いられるのではなく、特徴的または代表的な波長の周囲に群をなす一定の範囲の波長を包含することができることに留意されたい。図1Aを参照すると、第1の放射線118の特徴的な波長F1(たとえば励起波長)が、2つの波長間の差別化を可能にするために、蛍光の特徴的な波長F2(たとえば放出波長)と十分に異なっている。さらに、特定の実施形態では、そのような特徴的な波長の間の差、またはストークスシフトの差は、可能にするために望ましくは十分に異なり、選択的パス・フィルタを通って検出器に達する蛍光を透過可能にしながら、検出器に向かう第1の放射線の透過を遮断するために効果的な、放射線源104と検出器106の間の選択的パス・フィルタ要素を含む。
【0031】
図1を再び参照すると、実施形態100は、基本的に不透明な部材によって2つの部分に分割される適切な大きさにされた容器内に配置可能である。オリフィス108を通る流体(および流体に同伴する粒子)の流れは、2つの分割された部分の圧力差によって制御される。しかし、一般に、そのような実施形態が可能にするよりも、オリフィス108の付近の粒子の流体経路により多くの制御を行うことが望ましい。たとえば、オリフィス108の入口または出口の付近に配置された粒子の固まりは、第1の放射線118から対象となる粒子を蛍光が起こらない程度に遮蔽する可能性があり、それによって数え違いを生じ、またはそのような遮蔽された対象となる粒子の検出が阻止される。
【0032】
全体的に140で示され、図2に表される、多層の実施形態は、粒子がオリフィス108の付近に固まり、それに続いて対象となる粒子の検出がなくなることを阻止するように構成された配管装置を提供する。多層の組立体140は、オリフィス108の上流および下流に隣接するチャネル部分での流体の流れに実質的に垂直な方向に、オリフィス108を通って流体の流れを付勢するように構成されている。そのような流体の流れは、配管装置140の厚さ方向に粒子が積み重なるのを阻止し、それによって対象となる粒子が検出されない可能性を低下させる。
【0033】
配管装置140は、粒子を有する流体の流れを供給チャンバ142から、不透明な部材102内のオリフィス108を通り、排水チャンバ144に向かって流すために効果的であるチャネルシステムを形成するように構成および配置された5つの層を含む。望ましくは、流体案内チャネル146および148の深さは、粒子がオリフィス108付近に「積み重なる」のを阻止するために、粒子150の大きさにほぼ従って大きさを決められる。流体は、チャンバ142と144との間、または不透明の部材102に配置されたオリフィス108の両端に圧力差を加えることにより装置140において移動できる。たとえば、正の圧力を供給チャンバ142に加えることができる。あるいは、負の圧力を排水チャンバ144に加えることができる。ある場合には、正および負の両方の圧力を加えることができる。1つまたは複数のポンプなどの代替の流体移動要素が、不透明の部材102を通る粒子の移動を制御するために使用できる。
【0034】
供給チャンバ142および排水チャンバ144の両方は、大気へ開放しているように示されているが、一方または両方が、多層要素104を含む配管装置内に流体サンプルを実質的に収容するように配置されることが企図の範囲内にある。注目すべきこととして、上から下への流体の流れが図2に示されるが、流体の流れは、オリフィス108を通って両方向に確立されうる。1つの逆の流れの構成では、供給チャンバ142および排水チャンバ144の位置は、それらの示された位置から単に逆にされる。代替の逆の流れの配置では、放射線源104および検出器106の位置は、示された位置から逆にされる。
【0035】
図2および図3に示される多層の配管装置140は、上部キャップ層154、上部チャネル層156、不透明の部材102、底部チャネル層158、および底部キャップ層160を含む。そのような層は、たとえばダイカットなどで打ち抜き加工し、あるいはレーザもしくはウォータージェット、または微細加工、エッチングなどの他の機械加工技術を使用することによって製造できる。血液細胞を詮索するために使用される現在のところ好ましい実施形態140では、一般に様々な層のいくつかが、薄いポリマ層から作製され、次いでそれらは多層の組立体を形成するために、互いに接着される。望ましくは、少なくとも1つのチャネル層156、158の厚さは、詮索領域を通る粒子の一列の移動を促進するために、対象となる粒子の特徴的な大きさとほぼ同じになっている。血液細胞を詮索するために用いられる現在のところ好ましい装置のそのような層の実現可能な厚さは、一般に約10ミクロンと約300ミクロンとの間の範囲にある。
【0036】
いずれの場合にも、底部層160の少なくとも一部分は、底部窓162を形成するようになされ、それを通って励起放射線118を励起領域に透過することができる。同様にして、上部層154は、窓164を形成する部分を含み、それを通して蛍光を透過することができる。したがって、組立体140は、その厚さを放射線が通過可能にする窓を形成するように配置される。そのような窓は、窓部分162、164を含み、チャネル146および148のいくつかの部分は、オリフィス108の付近、およびオリフィス108自体に配置される。したがって、放射線は、オリフィス108の付近で組立体140の厚さを通して送出することができる。
【0037】
図4に示され、全体的に170で示される配管装置は、切り開かれた流体流れチャネル174を保持する上部層172を備える。底部キャップ層176は、同様に切り開かれたチャネル178を備える。不透明の部材102は、チャネル174と178との間の流体連通のためのオリフィス108を配置するようになされる。底部層176は、オリフィス108と関連付けられた励起領域を通過する粒子の励起を第1の放射線118によって可能にするための適切なスペクトルで放射線の透過を可能にする材料から形成される。上部層172は、放射線検出器に向けた蛍光180の透過を可能にするための適切なスペクトルで放射線を透過可能にする材料から形成される。上部層172は、第1の放射線118の透過を阻止するようにもなされうる。また、流体および粒子の流れは、例示されたものとは反対の方向になることができる。
【0038】
図4に示されるように、装置170などの配管装置は、場合によっては、光ファイバケーブル182によって、放射線源および/または放射線検出器と連結または関連付けることができる。光ファイバケーブル182は、配管装置170を通って透過される蛍光のかなりの部分を捕らえるのに効果的なレンズとして動作するように配置できる。あるいは、光ファイバ要素は、励起領域から所望の距離で、供給源または検出器の配置を可能にするために、励起領域に向かって、またはそこから放射線を単純に送ることができる。
【0039】
蛍光は、タグを付けられ、励起された対象となる粒子から実質的に全ての方向に伝搬するので、第1の放射線118は、そのような領域の直下からのみの代わりに、1つの側から励起領域に送出することができる。次に、図5を参照すると、場合によっては、オリフィス108の軸線114に対して鋭角AIで第1の放射線118を加えることが好ましい。そのような場合には、不透明の部材102は、実質的に、第1の放射線118が放射線検出器に直接的に透過するのを阻止するように動作可能なフィルタとして機能することもできる。図示されるように、放射線ベクトル118は、放射線検出器106によって検出されずにオリフィス108を通過し、またはそこに部分的に入るように向けることができる。しかし、タグを付けられた粒子150が励起領域(図示されるようなオリフィス108などの)にある場合、生じる蛍光180は、放射線検出器106によってなお検出できる。実現可能な角度AIは、0度と90度との間にあることができるが、AIの角度が約15度と75度との間にあることが現在のところ好ましい。
【0040】
放射線源104は、白色光源などの、幅広いスペクトルの放射線放出器から形成できる。そのような場合には、対象となる粒子と関連する特定の蛍光剤を励起するために必要な特徴的な値を包含する狭い帯域でのみ、放射線を通過または透過するようになされたプレフィルタ188を含むことが一般的に好ましい。一般的には、放射線検出器が望ましくない飽和を生じ、それに続いて対象となる粒子が検出不能になる可能性を低下させるために、励起波長の外側にある、適用された放射線118の量を限定することは、良い考えである。
【0041】
血液細胞を詮索するようになされた1つの実施形態では、赤色ダイオードレーザを使用し、約642nmより短い波長を有する第1の光の放射線を通過させるショートパスフィルタ(ダイオードレーザの後の)を含むことが現在のところ好ましい。特定の選択された蛍光ピークに一致するピークを有する帯域通過フィルタを(光検出器の前に)備えることも現在のところ好ましい。660、694、725、および775ナノメートルに特徴的な蛍光ピークを有する市販の染料を入手することができる。長い通過フィルタも、光検出器の前に帯域フィルタの代わりにしばしば用いられる。ピペット先端「キャップ層」および「基材」は、従来の励起および放出フィルタを補助し、またはそれらに求められるものを排除するために、光学フィルタとして機能するように設計することもできる。この開示において、「ポストフィルタ」は、「放出フィルタ」としてより従来のように呼ばれることができる。
【0042】
図5を続けて参照すると、場合によっては、蛍光180の特徴的な波長の外側の放射線の透過を阻止するポストフィルタ190を備えることが好ましい。そのような配置は、背景のノイズを低減し、励起領域内の対象となる粒子の存在を示す誤った読み取り値を防止するのを助ける。また、強力な信号を得るのを助けるために、レンズ192などの光学的な機能強化が、蛍光180を集め、そのような放射線を放射線検出器106に向かって送出するために具備できる。例示されたレンズ192は、非球面集光レンズ(または二重レンズ)として特徴付けることができ、一般的にオリフィス108の内側に配置された点に焦点を合わせるように配置される。
【0043】
本発明の特定の原理に従って構成された装置は、たとえばインピーダンスに基づいた粒子の詮索のための、装置内の導管を通って流れる流体と接触するために、様々なパターンで様々な場所に配置される電極などの1つまたは複数のセンサ構成要素を備えることができ、または備えることができないことが企図の範囲内にある。そのような詮索構造の選択された動作可能な配置が、2007年に5月4日に出願の「THIN FILM PARTICLE SENSOR」という名称の米国特許出願第11/800,167号に開示され、その内容全体は、それが本明細書に明記されたごとく組み込まれる。
【0044】
図6乃至図9は、本発明の特定の原理に従って構成された現在のところ好ましい実施形態の構造の詳細を示す。この実施形態は、全体的に200で示すピペット先端であり、一度使用した後に使い捨て可能であるが、場合によっては、先端200は二度以上使用可能である。ピペット先端200は、射出成形された基材202に保持された複数の薄いポリマフィルム層から形成される。図7では、さらに明瞭にするために、上部キャップ層154および上部チャネル層156が省略されている。
【0045】
図6を参照すると、先端200をピペット内に装着するのを補助するために効果的な、全体的に206で示すグリップ領域を形成するために、側方に突出するウイング構造を設けることができる。図示されるように、グリップ領域206の近位端は、ピペットの受け入れソケットの内側で、先端200の一貫して着座した係合を促進するために、挿入深さを制限するために効果的である、全体的に208で示すショルダ部を形成するように構成できる。
【0046】
本発明の特定の原理による装置を構成するように動作可能な特定の構成要素が入手可能である。たとえば、1つの動作可能な放射線源104は、カリフォルニア州95035、Milpitasの1537 Centre Point Driveに営業所を有するBlue Sky Research社から部品番号VPSL−0639−035−x−5−Bで入手可能な赤色ダイオードレーザを備える。フィルタ要素188、190は、バーモント州05301 Brattleboroの21 Omega Dr.Delta Campusに営業所を有するOmega Optical社から入手可能である。好ましいフィルタには、部品番号660NB5(帯域通過フィルタ)および640ASP (ショートパスフィルタ)が含まれる。動作可能な放射線検出器は、部品番号H5784−01でニュージャージー州08807、Bridgewaterの360 Foothill Rd.に営業所を有するHamamatsu Corporation社から入手可能な光電子倍増管を備える。Molecular Probes(Invitrogen社www.probes.invitrogen.comの一部門)は、本発明に従って構成された実施形態を使用して詮索するための特定の対象となる粒子にタグを付けるのに使用するために適した、複数の染料を供給する。特に、AlexaFluor647、AlexaFluor700、およびAPC−AlexaFluor750は、血液細胞の詮索に用途がある。これらの染料は、フローサイトメトリの用途にも一般的に使用され、固有の励起および放出の特性を有する。各染料は、異なる細胞のタイプにラベルを付け、またはタグを付けるために抗体に容易に結合させることができる。
【0047】
図示されたピペット先端200は、インピーダンスまたは蛍光、あるいは両方を組み合わせて使用して粒子を詮索するように動作可能である。図示された不透明の部材102(その代わりに詮索層または詮索シートと呼ばれることもある)は、詮索回路と接続するようになされた電気的な接触パッド214(図7を参照されたい)と電気的に接続する電極センサ構成要素212を形成するように構成される、たとえば210で示される電導性トレースを保持する。そのような詮索回路は、たとえば、現在のところ好ましいピペット、または詮索装置の一部分として含まれうる。
【0048】
図7および図8に全体的に218で示される接触パッドは、インディアナ州47151−1147、New Albany、のSAMTEC USA、P.O.Box 1147、に営業所を有し、www.samtec.comのウェブサイトを有するSamtec社から入手可能な部品番号SEI−110−02などの市販の10ピン・端部コネクタと接合するように構成される。端部コネクタは、従来の様式で装置の電気的な詮索装置とともに回路内に配置できる。その他の実現可能なコネクタには、タッチダウンプローブ(touch−down probe)、および当分野で知られたその他の電導性の接触形成プローブ(contact−forming probe)が含まれる。注目すべきこととして、接触パッド214は、詮索層102などの詮索層の片側または両側に設けることができる。
【0049】
一般に、用語「流体」は、この開示では、流体内に同伴される粒子を包含するように用いられる。場合によっては、流体は電解質であることができる。図8および図9を参照すると、流体は、一般に流体出口または通気口222に加えられる吸引力によって、入力リザーバ220に引き込まれる。底部チャネルシート158に形成された、リザーバ220およびオプションの流体チャネル224に沿った流体の流れの方向が、矢印226で示される。流体チャネル224は、望ましくは、ピペット先端へのサンプルの流体の流入を視覚化するのを促進し、露出した接着剤への生物学的なサンプルの露出を(可能な範囲に)制限するために含まれる。流体の流れは、流体バイア(via)227、オプションのフィルタ要素228、および流体バイア229を通り、層156内のチャネル231の遠位端230へ横断して続く。チャネル231内の流体の流れの方向が、矢印232で示される。
【0050】
チャネル231を流れる流体は、第1の駆動電極233および第1の詮索電極234を連続して濡らす。詮索シート102内のオリフィス108を横断して通過した後に、流体は、底部チャネルシート158内に配置されたチャネル236内の指示された方向235に沿って流れ、第2の詮索電極238および第2の駆動電極240を連続して濡らす。
【0051】
チャネル236の遠位端242で、流体は、第1の電極248および第2の電極250を連続して濡らす。電極248および250は、装置200の遠位端から近位に延出する流体導管に沿って既知の場所に流体フロントの存在を示すために、協調的に構成される。図示されるように、電極248および250は、(基本的に基材202に配置された流体チャネル252への入口で)既知の位置に流体の先縁部が到達したことを示すことができる。たとえば、電極248と250との間のインピーダンスは、開放回路の状態からの変化を検出するように監視できる。流体の境界が第2の電極250を濡らす時、開放回路の値から不連続性を示す、監視された信号は、そのような流体が装置200に取り込まれ続けるとき、流体を詮索するためにデータを記録または処理し始めるように、トリガ信号として使用できる。そのような電極の間のインピーダンス信号は、先端部または後端部の流体境界縁を検出するように監視できる。刺激電極248の近接性により、測定電極250で使用可能な電気信号は、サンプル内の気泡の存在を検出するための試験時間の間、監視できる。後端部の境界信号が存在しないことは、他の用途の中でも、とりわけ、流体サンプル内に泡がないことを確認するために使用できる。
【0052】
流体サンプルの詮索は、たとえば既知の体積の流体の詮索が完了したことを判定するために監視された、それに続くトリガ信号によって終了できる。図示された装置200では、既知の体積(電極250の下流、矢印251で示される)が、基材のチャネル252に入った後に、関連する流体フロントが確認電極254を濡らし、試験体積の完了を信号で知らせる(図9を参照されたい)。体積確認流体バイア256は、所望の既知の体積が装置200に取り込まれた場合に、チャネル252内の流体が確認電極254を濡らすことを可能にするように底部チャネルシート158を通って延出することに留意されたい。トリガ信号は、限定的でない例として、電極254と電極248または250との間のインピーダンスを監視することによって得ることができる。過剰な量の取り込まれた流体が、貯蔵チャンバ255に収容される。
【0053】
図示された電極254からのトリガ信号は、装置200を通って完全に取り込まれた流体によってピペットまたは他の詮索装置が汚染される可能性を阻止するために、通気口222に加えられた吸引力を終了するために使用できる。同様に、またはその代わりに、貯蔵チャンバ255からの出口などの、装置200内の所望の位置を超えて流体がさらに流れるのを阻止するために配置された、流体阻止バリアまたは膜(図示されない)を提供することが企図の範囲内にある。実現可能なそのようなバリアは、空気の分子を通過可能にするが、取り込まれた流体をピペットまたは他の詮索装置に引き込むことを阻止するために、取り込まれた流体の通過を阻止する。
【0054】
確認信号を提供する構造は、ピペット内にピペット先端200を適切に装着したことを確認するために装置200に含むことができる。たとえば、電気接触パッド#1と電気接触パッド#4との間の電気導通信号が、所望のフィードバックを提供することができる。図9に示されるように、電導性トレース258は、電気接触パッド#1と電気接触パッド#10の間を電気的に接続する。したがって、先端200をピペット内に適切に挿入すると、そのような接触パッドの間に所望の確認フィードバック信号(導通チェック)を生成することができる。
【0055】
次に、図9を参照すると、いくつかのピペット先端200は、装着されたピペット先端をピペットから除去するのを促進するようになされた構造を含むことができる。図示されたランプ260は、全体的に261で示す作用するリア表面を提供し、それに対して先端抽出構造が係合して、先端をピペットから除去することができる。
【0056】
図10は、ストークスシフトを生じる粒子を詮索するために、全体的に264で示す実現可能な装置を示す。放射線詮索装置264は、基材268に保持された薄膜組立体266を備える。現在のところ好ましい基材268は、ポリカーボネート材料から射出成形されるが、他の材料も実現可能である。基材268は、望ましくは、材料の取扱いを促進するために、組立体264に十分な剛性を示す。
【0057】
図10に示されるように、窓265が、オリフィス108と関連付けられた詮索領域に配置された粒子の上に放射線118を当てるための放射線ビーム(たとえばレーザビーム)の透過を促進するために設けることができる。図示された窓265は、基材268の底部に開放するソケットとして形成され、オリフィス108の付近で基材の厚さを低下させる。別の実施形態では(図示されない)、薄膜窓カバーは、基材の厚さを貫通して延出するソケットとして構成される窓265の上に設けることができる。
【0058】
図10に示される薄膜組立体266は、上部キャップシート154、上部チャネルシート156、不透明な部材102、および底部チャネルシート158を備える。望ましくは、上部チャネルシート156および底部チャネルシート158は、流体案内チャネル231および流体案内チャネル236が、孔108付近で対象となる粒子が固まるのを防止するように大きさを決められるような厚さを有する、実質的に平坦な材料のシートから形成される。そのような(ページ内に図示されたような)チャネルの幅は、そのように固まるのを阻止するようにも寸法を決めることができる。ここでも同様に、流れ226および232の方向は、代替の実現可能な装置での例示の方向とは逆にすることができることに留意されたい。
【0059】
既知の多層構造技術を使用して互いに接着された薄いポリマ膜の積み重なったシートから図10の組立体266などの薄膜組立体を製造することが現在のところ好ましい。組立体を通る流体の流れのためのチャネルは、微細加工技術、レーザまたは水切断、打ち抜き加工などによって形成できる。レーザドリル作業によって詮索孔108を形成することが現在のところ好ましい。特定の層が、予め塗布された接着剤を保持することができ、または接着剤は1つまたは複数の層の間に塗布できる。図7の導電性トレース210などの複数の構成要素部品は、シート(一般には薄膜)が積み重ねの位置合わせで組み立てられる場合に、複数の組立体266を一群で形成するように、シートの領域の上に分布されうる。望ましくは、隣接するシートと適切な位置合わせで積み重なるのを促進するために、アライメント構造が個々のシートに設けられる。次いで、複数の個々の組立体を、群の組立体から分離することができる。
【0060】
血液細胞の詮索と関連して用いられる例示のセンサ組立体266では、ポリアミドまたはマイラフィルムから作製された層を使用することが現在のところ好ましい。ポリアミド層に関する実現可能な厚さの範囲は、約0.1ミクロンから約500ミクロンであると考えられている。現在のところ好ましいポリアミドキャップ層154は、厚さが約52ミクロンである。詮索層102をポリアミドからも作製することが現在のところ好ましい。しかし、より安価な、ポリエステルフィルムまたはカプトンなどの代替材料も実現可能である。チャネル層156、158に関する約125ミクロンのフィルム厚が、血液細胞を詮索するために用いられるセンサにおいて実現可能であることが判明している。望ましくは、スペーサ層の厚さは、詮索される主要な粒子の粒子サイズとほぼ同じになっている。実現可能な範囲は、約1粒子サイズから約15倍の粒子サイズ内であると現在考えられているが、より大きな範囲も実現可能である。
【0061】
図10の放射線詮索組立体264は、放射線詮索領域で対象となる粒子270に当たるように送出されたレーザなどの放射線源104を備える。ストークスシフト変化での励起粒子によって放出された放射線180は、フォトダイオードなどの放射線検出器106によって検出できる。ワイヤ272は、従来の様式で詮索回路の適切な電気装置に接続される。望ましくは、レンズ192などの光促進素子が、検出器106によって検出するための蛍光180を収集し、焦点を合わせるために配置される。放出フィルタ192および/またはプレフィルタ273(または励起放射線フィルタ)などの1つまたは複数のフィルタを、放射線詮索組立体内に備えることができる。適切なポストフィルタによって、励起放射線118は、放射線検出器106を飽和させることなく、孔108を通って直接的に(図示された作用角度A1に対して)送出できる。
【0062】
図11は、詮索プラットフォームとして構成された、全体的に278で示す、ピペット内に装着された、粒子詮索ピペット先端276を示す。近位端277は、一般に、滑り嵌めによってピペットの遠位端内に装着される。ピペット278は、電気的な詮索、放射線詮索、または両方を使用して、電解質流体内に一般的に保持される粒子を詮索するように構成することができる。望ましくは、詮索ピペット278は、試験用の状態を開始または停止するなどの、特定の試験結果、および/またはステータスを示すことができる、スクリーン280などの表示装置を備える。表示は、ヒストグラム、数値、円グラフ、棒グラフなどの形で提示できる。望ましくは、ピペット278は、詮索データを蓄積および/またはさらなる処理のためにアップロード可能にするためにコンピュータと接続するように構成される。使用者は、ハンドル282を把持し、バルク容器からサンプルを抽出するために親指でプランジャ284を押し下げることができる。
【0063】
図12は、先端290などのピペット先端内の粒子を詮索するために配置された実現可能なピペット288の特定の構造を示す。ピペット288は、蛍光および/または電気的なインピーダンスを使用して詮索を行うようになされる。流体は、管腔292を通る、ピペット288によって加えられる減圧または吸引によって先端290に取り込まれる。Oリング294は、通気口222と連通可能にするために先端290と管腔292の間に密封された接合を形成する。端部コネクタ296が、望ましくは、1つまたは複数の接触パッド214が装着されたピペット先端にある場合に、そのような接触パッドと接触することによってピペット先端に保持されたセンサ構成要素と電気的な詮索回路(望ましくはピペット内に保持された)を連結するために、特定のピペット288内に含まれる。
【0064】
詮索構造は、代替の様式で配置でき、たとえば、光ファイバケーブルを、より遠隔の供給源104から詮索領域に向かって放射線を透過するために組み込むことができる。そのような装置は、より細い形状因子を提供するために、ピペット288の遠位部分を構築可能にすることができる。同様に、そのようなケーブルは、詮索領域から遠位に配置された放射線検出器106に放射線を透過するために、代替の装置内に使用できる。
【0065】
図13は、全体的に300で示す、代替の放射線詮索装置を提供するピペット先端の部分的に組み立てられた断片を示す。放射線詮索装置300は、ピペット先端が係合する場所に向かって延出するファイバの短いセグメントを有する、「ピグテール」ダイオードレーザ104(望ましくはピペットに収容された)を含む。使い捨て可能なピペット先端は、ピペット先端が装着された場合にピペット内でファイバに「バット接続(butt couples)」する、それ自体のファイバ302(またはライトパイプ)を有する。使い捨て可能なピペット先端内のファイバ302は、薄片層の間に挟持される。
【0066】
ピペット先端内のファイバ302(またはライトパイプ)は、レーザ光を検出オリフィス108の付近に直接的に送達し、基本的にオリフィス108内での流体の流れの方向を横断して、オリフィス108を横切ってまっすぐに光る。粒子(または細胞)は、検出オリフィス108内に(またはそこから)移動する時、この光経路を通って流れる。励起放射線118は詮索層102に実質的に平行な方向に放出されるので、横断方向に配置された検出器106がそのような放射線の経路から外れている。したがって、層102は、励起放射線に対して完全に透過性のある材料から形成することもできる。ストークスシフトを生じる粒子から(全ての方向に)放出された放射線は、検出器106によって検出される。ここでも同様に、レンズ192および/またはフィルタ190が、必要に応じて備えられうる。
【0067】
本発明の特定の原理に従って構成された装置は、1つまたは複数の粒子を詮索するための方法で使用できる。1つのそのような方法で装置を使用するために、使用者は、放射線詮索領域内でストークスシフトを生じる粒子によって放出された放出放射線の検出を可能にするために、装置の放射線詮索領域を通って流れる流体に同伴された粒子を、実質的に一列の移動に向けて付勢するように構成された装置を提供される。使用者は、流体のバルク容器から流体サンプルを抽出するために装置を使用する。次いで、第1の特徴的な波長を含む励起放射線は、流体サンプルの一部分がそれを通って流れるとき、放射線詮索領域内へと当たる。粒子についての情報を得るために効果的な、ストークスシフトを生じる粒子からの放出放射線に対応する第2の特徴的な波長を有する放射線が検出される。
【0068】
装置の1つの用途では、ピペット先端276が、ピペット278の遠位端に挿入されて、通気口228用の気密シールを形成し、使い捨て可能な蛍光感知ピペット先端とピペット光学素子との間に必要な整列を確立する。次に、プランジャ284が、分析されるサンプルの過剰な体積をバルク流体容器から引き上げるために押し下げられる。このサンプルは、一般的に分析の前に入力リザーバ220に貯蔵されるが、同時に分析することも可能である。次いで、プランジャ284が解放され、かつ/または第2のボタンまたは他の制御が作動されて、細胞の計数または詮索が開始される。蛍光検出領域を通って細胞を引くために、制御された真空プロファイルが、望ましくセンサ/ピペット先端276に加えられる。単一または複数のカラー蛍光検出方法を組み込むことができる。蛍光性の粒子が検出され、数えられる。一般に、固定された体積の流体が詮索される。これは、光学的に、または複数の電極および電気的なインピーダンスを使用して行われる。これによって、体積的な細胞の計数を行うことが可能になる。分析的な結果が、一般にヒストグラムまたは散布図の形で小さなスクリーン280に表示できる。最後に、ピペット先端が廃棄される。
【0069】
吸引力を適用する好ましい方法は、過剰な吸引圧力を生成し、次いでそれが、i)サンプルをピペット先端に引き込むように動作可能な第1の吸引圧力と、ii)ピペット先端のセンサ部分を通る所望の流体の流れを生じるための、それに続く経時の所望の吸引圧力プロファイルとを適用するのに効果的なピペットと関連付けられた構造によって下方調整できることを包含する。
【0070】
本発明の特定の原理に従って構築された実施形態は、粒子を数え、サンプルの完全性を確認し(たとえば泡がないこと)、サンプルの流量を評価または監視し、取り込まれた体積を確認し、既知の体積の懸濁液内の個々の細胞の生存度を決定し、蛍光の染料(すなわち抗体結合の染料)によって染色された特定の細胞を識別/検出し、他の用途の中でも、とりわけ、既知の体積の懸濁液内の蛍光の分析物または分子の存在を決定することに使用できる。
【0071】
本発明が特に特定の例示された実施形態を参照して説明されてきたが、それらは本発明の範囲を限定する意図はない。本発明は、その趣旨または基本的な特徴から逸脱することなく、その他の特定の形式で実施できる。非限定的な実施例に関しては、層は平坦でない形状を有することができ、ピペット先端の長さの一部分に沿ってのみ延出できる。説明された実施形態は、例示としてしか見なされず、限定的であるとは見なされない。したがって、本発明の範囲は、前述の説明によってではなく、添付の特許請求の範囲によって示される。特許請求の範囲の等価の意味および範囲内にある全ての変更は、その範囲内に包含される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピペットとともに使用されることのできる形式のピペット先端であって、前記ピペット先端の遠位端から近位端に向かって延伸する導管内に流体サンプルを取り込むことによって、流体の容器から前記流体サンプルを抽出するための、ピペット先端において、改良部は、
前記導管と関連付けられ、前記導管に取り込まれた流体内に同伴された1つまたは複数の対象となる粒子によって放出されたストークスシフト放射線の検出を可能にするのに効果的な、制御された放射線詮索領域を提供するように構成および配置された流体案内構造を備えた、改良部。
【請求項2】
請求項1に記載の改良部において、前記流体案内構造は、前記放射線詮索領域に近位に配置されたオリフィスを備え、それを通して移動するために、前記オリフィスは、対象となる粒子を少なくともほぼ一列にするように構成された、改良部。
【請求項3】
請求項1に記載の改良部において、前記流体案内構造は、励起放射線に対して実質的に不透明なバリアを備えた、改良部。
【請求項4】
請求項3に記載の改良部において、前記バリアを通って移動させるために、対象となる粒子の移動を実質的に一列にするように構成されたオリフィスをさらに備えた、改良部。
【請求項5】
請求項1に記載の改良部において、前記ピペット先端は、複数の積み重ねられた薄膜層を有し、前記導管の一部分は、少なくとも1つの薄膜層に形成されたチャネルによって画定された、改良部。
【請求項6】
請求項5に記載の改良部において、前記層のうちの1つと関連付けられた構造は、励起放射線が通る透過に対して少なくとも実質的に不透明なバリアを形成する、改良部。
【請求項7】
請求項6に記載の改良部において、オリフィスと関連付けられた放射線詮索領域に配置された粒子の上にそのような放射線を当てるための励起放射線の透過を促進するように構成された窓をさらに備えた、改良部。
【請求項8】
請求項7に記載の改良部において、前記窓が、前記積み重ねられた薄膜層がその上に保持される、基材内の低減された厚さの領域を備えた、改良部。
【請求項9】
請求項1に記載の改良部において、前記導管に沿って流れる流体の電気的な詮索を可能にするように配置された第1の電気的な詮索構成要素をさらに備えた、改良部。
【請求項10】
請求項9に記載の改良部において、前記第1の電気的な詮索構成要素は、前記導管に沿った特定の位置で流体境界縁の到着を検出可能にするように構成された、改良部。
【請求項11】
請求項9に記載の改良部において、前記第1の電気的な詮索構成要素は、前記流体経路に沿った流体流量の評価を可能にするために、第2の電気的な詮索構成要素と協調して構成および配置された、改良部。
【請求項12】
請求項9に記載の改良部において、前記第1の電気的な詮索構成要素は、詮索領域を通る既知の体積の流体の通過の確認を可能にするために、第2の電気的な詮索構成要素と協調して構成および配置された、改良部。
【請求項13】
請求項9に記載の改良部において、前記第1の電気的な詮索構成要素は、前記ピペット先端に取り込まれる流体内に同伴された、1つまたは複数の対象となる粒子に関する体積的な粒子数の決定を可能にするために、1つまたは複数の他の電気的な詮索構成要素と協調して構成および配置された、改良部。
【請求項14】
請求項1に記載の改良部において、
前記ピペット先端が長手軸線に沿って細長くなり、
前記導管と関連付けられた通気口は、全体的に前記長手軸線に対して横断する垂直の向きを有した表面を通って接続されるように配置された、改良部。
【請求項15】
請求項1に記載の改良部において、前記ピペット先端を形成する層の間に挟持され、放射線を前記制御された放射線詮索領域に向かって送るように構成および配置された放射線伝導要素をさらに備えた、改良部。
【請求項16】
請求項15に記載の改良部において、前記詮索層内の詮索オリフィスを通る流体の流れの方向に実質的に横断する方向に、放射線が前記ケーブルの終端部から放出されるように、前記放射線伝導要素は、前記ピペット先端の詮索層に平行に配置された光ファイバケーブルを備えた、改良部。
【請求項17】
請求項1に記載の改良部において、
前記ピペット先端の前記近位端と連結するように構成および配置されたピペットであって、
吸引力を前記導管の近位部分に適用可能にし、
供給源からの放射線が、前記放射線詮索領域を通って流れる流体内に同伴された粒子に当たることができるように、放射線の供給源に対して前記放射線詮索領域を向けるのに効果的な、ピペットをさらに備えた、改良部。
【請求項18】
請求項17に記載の改良部において、前記ピペットは、放射線源および協調的に配置された放射線検出器を備えた、改良部。
【請求項19】
近位端と遠位端との間に延伸する細長い本体と、
流体が中を流れることができる管腔であって、前記管腔が前記本体の前記遠位端から前記近位端に向かって延伸し、前記管腔のくびれが、そこを通って流れる流体内に同伴された粒子を、実質的に一列の移動になるように構成および配置された管腔と、
前記くびれと動作可能な関係で配置された放射線詮索領域と、
前記放射線詮索領域内でストークスシフトを生じる粒子から、前記本体の外側に配置された放射線検出器に向けた放出放射線の透過を可能にするように構成された窓と、
励起放射線が、前記放射線詮索領域内にある粒子に当たるのを可能にするように構成された放射線透過構造とを備えた、装置。
【請求項20】
1つまたは複数の粒子を詮索する方法であって、
放射線詮索領域内でストークスシフトを生じる粒子によって放出された放出放射線の検出を可能にするために、装置の前記放射線詮索領域を通って流れる流体内に同伴された粒子を実質的に一列に移動させるようにする構造にされた使い捨て可能な装置を提供するステップと、
流体のバルク容器から流体サンプルを抽出するために前記装置を使用するステップと、
第1の特徴的な波長を含む励起放射線を、前記流体サンプルの一部分がそれを通って流れるとき、前記放射線詮索領域内へと当てるステップと、
前記粒子についての情報を得るために効果的な前記放出放射線に対応する第2の特徴的な波長を有する放射線を検出するステップとを備えた、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図1A】
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【公表番号】特表2011−505009(P2011−505009A)
【公表日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−535971(P2010−535971)
【出願日】平成20年11月21日(2008.11.21)
【国際出願番号】PCT/US2008/013003
【国際公開番号】WO2009/070246
【国際公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(510086338)イーアイ・スペクトラ・エルエルシー (4)
【Fターム(参考)】