説明

蛍光ランプ

【課題】長期間にわたり飛散防止機能を維持できる蛍光ランプを提供する。
【解決手段】本発明の第1の蛍光ランプは、蛍光管と、前記蛍光管を覆う樹脂膜とを含み、前記樹脂膜は、紫外線吸収剤と、光安定剤と、酸化防止剤とを含む樹脂から形成されている。また、本発明の第2の蛍光ランプは、蛍光管と、前記蛍光管の内面に形成された紫外線吸収層とを含み、前記紫外線吸収層は、無機粒子からなる紫外線吸収材料を含み、前記紫外線吸収層の厚さが、2μm以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛散防止機能を有する蛍光ランプに関するもので、蛍光ランプから放射される紫外線を吸収させることで、飛散防止膜の経時変化を低減させるものである。
【背景技術】
【0002】
飛散防止機能を有する蛍光ランプとしては、直管形蛍光ランプ等の各種蛍光ランプにおいて、落下時の破損防止、破損時におけるガラス破片の飛散防止あるいは半導体加工用クリーンボックス照明用等のために、バルブ外面を熱収縮性樹脂膜で被覆したものが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。この熱収縮性樹脂膜を用いた飛散防止機能を有する蛍光ランプは、管軸方向の引張り強度を調整し、ランプの破損防止に一定の効果が認められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平1−159959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、環境性や効率向上の要請に伴い、蛍光ランプの電力増加や定格寿命の増加が図られ、飛散防止機能を有する蛍光ランプにおいても長期間にわたって、飛散防止機能を維持する必要が生じてきた。しかし、従来の熱収縮性樹脂膜を用いた飛散防止機能を有する蛍光ランプを長期間使用すると、太陽光からの紫外線や、蛍光ランプ自身や他の蛍光ランプから放射される紫外線によって、熱収縮性樹脂膜の加水分解等による機械的強度の低下が生じる問題があった。このため、蛍光ランプの寿命末期までの長期間にわたり飛散防止機能を維持させることが難しかった。
【0005】
本発明は上記問題点を解決したもので、長期間にわたり飛散防止機能を維持できる蛍光ランプを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の蛍光ランプは、蛍光管と、前記蛍光管を覆う樹脂膜とを含む飛散防止機能を有する蛍光ランプであって、前記樹脂膜は、紫外線吸収剤と、光安定剤と、酸化防止剤とを含む樹脂から形成されていることを特徴する。
【0007】
また、本発明の第2の蛍光ランプは、蛍光管と、前記蛍光管の内面に形成された紫外線吸収層とを含む蛍光ランプであって、前記紫外線吸収層は、無機粒子からなる紫外線吸収材料を含み、前記紫外線吸収層の厚さが、2μm以上であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、長期間にわたり飛散防止機能を維持できる蛍光ランプを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、従来の熱収縮チューブを用いた蛍光ランプの耐飛散防止試験の結果を示す図である。
【図2】図2は、本発明の蛍光ランプの一例を示す一部断面図である。
【図3】図3は、実施例1で用いた熱収縮チューブの光透過特性の測定結果を示す図である。
【図4】図4は、比較例1で用いた熱収縮チューブの光透過特性の測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明者らは、飛散防止機能を有する熱収縮チューブを用いて、種々の管壁負荷の違う蛍光ランプについて、点灯後ある一定時間ごとに後述する日本電球工業会規格の耐飛散防止試験を行った。具体的には、種々の管壁負荷の違うほぼ長さの同じ三波長形の飛散防止機能を有する蛍光ランプ(相関色温度:5000K)として、下記(1)〜(4)の蛍光ランプを準備し、各蛍光ランプをポリエチレンテレフタレート樹脂製の100μm膜厚の熱収縮チューブで被膜形成した後、耐飛散防止試験を行った。その結果を図1に示す。
【0011】
(1)FLR40S/EX−N/M/36(管径:3.25cm、長さ119.8cm、投入電力36W、管壁負荷:29.4mW/cm2
(2)FL40SS/EX−N/37(管径:2.8cm、長さ119.8cm、投入電力37W、管壁負荷:35.1mW/cm2
(3)FHF32EX−N(管径:2.55cm、長さ119.8cm、投入電力45W、管壁負荷:46.9mW/cm2
(4)FHF63EXN−G(管径:2.55cm、長さ117.8cm、投入電力63W、管壁負荷:66.8mW/cm2
【0012】
図1では、耐飛散防止試験の合格を黒丸印で示し、不合格を×印で示した。図1から、管壁負荷によって耐飛散防止試験の結果に違いが生じることが分かる。ところで、飛散防止機能を有する熱収縮チューブの材料樹脂として用いられているポリエチレンテレフタレート樹脂等のポリエステル樹脂は、紫外線を照射されると分解されることはよく知られている。図1から明らかなように、管壁負荷と点灯時間のある範囲(管壁負荷と点灯時間が反比例関係)にある蛍光ランプが耐飛散防止試験に合格している。即ち、紫外線によるポリエステル樹脂の分解は、紫外線量密度と時間との積により決定される単位面積あたりの紫外線総量が一定の値を超えると生じると考えられる。また、熱収縮チューブの膜厚と耐飛散防止試験に合格する点灯時間は比例し、膜厚を厚くすれば耐飛散防止試験に合格する点灯時間は延びた。従って、熱収縮チューブの膜厚は、定格点灯時間又は管壁負荷に合わせて大きくする必要がある。
【0013】
本発明は上記観点からなされたものであり、以下本発明を詳細に説明する。
【0014】
本発明の第1の蛍光ランプは、蛍光管と、上記蛍光管を覆う樹脂膜とを備え、上記樹脂膜は、紫外線吸収剤と、光安定剤と、酸化防止剤とを含む樹脂から形成されている。
【0015】
上記樹脂膜を、紫外線吸収剤と、光安定剤と、酸化防止剤とを含む樹脂で形成することにより、樹脂膜の劣化を抑制し、長期間にわたり飛散防止機能を維持できる蛍光ランプを提供できる。
【0016】
上記樹脂膜は、熱収縮性樹脂膜であることが好ましく、上記樹脂は、ポリエステル樹脂であることが好ましい。これにより樹脂膜の機械的強度を向上できる。
【0017】
また、上記樹脂膜の膜厚は、下記下限値と下記上限値の範囲内に設定するのが好ましい。即ち、上記樹脂膜の膜厚の下限値をD1(μm)、上記樹脂膜の膜厚の上限値をD2(μm)、上記蛍光ランプの定格寿命をA(時間)、上記蛍光ランプの管壁負荷をB(mW/cm2)とした時に、D1=C×A×Bで、C=6.4×10-5〜1.2×10-4で表され、D2=150μmであり、D1が50μm未満の場合は、上記樹脂膜の膜厚の下限値を50μmとすることが好ましい。上記下限値を50μmとしたのは、これよりも下限値が小さいと熱収縮中に樹脂の一様性がなくなり、膜が切れるおそれがあるからである。また、上限値を150μmとしたのは、これよりも上限値が大きいと作業性が著しく悪化するためである。上記係数Cの決定根拠については後述する。
【0018】
上記蛍光管の内面には、紫外線吸収層がさらに形成されていることが好ましい。紫外線吸収層を蛍光体の内面に形成することにより、紫外線をさらに吸収でき、樹脂膜の劣化をさらに抑制でき、より長期間にわたり飛散防止効果を維持できる蛍光ランプを提供できる。
【0019】
上記紫外線吸収層は、無機粒子からなる紫外線吸収材料を含み、上記紫外線吸収層の厚さは2μm以上であることが好ましい。これにより充分な紫外線吸収効果を発揮できる。紫外線吸収層の厚さの上限は特に限定されないが、通常5μm以下である。
【0020】
また、本発明の第2の蛍光ランプは、蛍光管と、上記蛍光管の内面に形成された紫外線吸収層とを備え、上記紫外線吸収層は、無機粒子からなる紫外線吸収材料を含み、上記紫外線吸収層の厚さが、2μm以上である。
【0021】
蛍光管の内面に紫外線吸収層を形成することのみによっても、樹脂膜の劣化を抑制し、長期間にわたり飛散防止機能を維持できる蛍光ランプを提供できる。紫外線吸収層の厚さの上限は特に限定されないが、前述と同様に通常5μm以下である。
【0022】
次に、本発明の蛍光ランプを図面に基づき説明する。図2は、本発明の蛍光ランプの一例を示す一部断面図である。図2では、図面の煩雑化を避けるため、断面の一部にハッチングを付けていない。図2において、本発明の蛍光ランプ10は、ガラス管等から形成された蛍光管11と、蛍光管11の外面を覆う樹脂膜12とを備えている。また。蛍光管11の内面には、紫外線吸収層13と蛍光体層14とを備えている。また、蛍光管11の両端の内側には、フィラメント電極15が備えられ、蛍光管11の両端の外側には、口金16が備えられている。さらに、蛍光管11内には、アルゴン等の不活性ガスと水銀が封入されている。
【0023】
樹脂膜12は熱収縮性樹脂膜で形成され、樹脂膜12を形成する樹脂としては、例えば、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート共重合体、ポリエチレン/ネオペンチルテレフタレート共重合体等のポリエステル樹脂が使用できる。これらは、一種のみを単独で使用しても、2種以上を混合して使用してもよい。
【0024】
樹脂膜12を形成する樹脂には、紫外線吸収剤と、光安定剤と、酸化防止剤とがを含まれている。
【0025】
上記紫外線吸収剤としては、樹脂との相溶性が高い有機材料を用いることが好ましい。紫外線吸収剤として使用できる有機材料としては、例えば、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、トリアジン系化合物等を用いることができ、特にベンゾトリアゾール系化合物は紫外線吸収能力が高いため最も好ましい。これらの有機材料は、それぞれ単独又は混合して使用することができる。
【0026】
上記ベンゾトリアゾール系化合物としては、例えば、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール等を使用できる。上記ベンゾフェノン系化合物としては、例えば、(2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン等を使用できる。上記トリアジン系化合物としては、例えば、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5〔(ヘキシル)オキシ〕−フェノール等を使用できる。
【0027】
上記光安定剤としては、例えば、ヒンダードアミン系光安定剤であるビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケート、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)等が使用できる。
【0028】
上記酸化防止剤としては、3,9−Bis[2−〔3−(3−tert−butyl−4−hydroxy−5−methylphenyl)propionyloxy〕−1,1−dimethylethyl]−2,4,8,10−tetraoxaspiro[5・5]undecane、Pentaerythrityl tetrakis(3−laurylthiopropionate)等を使用できる。
【0029】
樹脂膜12の膜厚は、下記下限値と下記上限値の範囲内に設定されている。即ち、樹脂膜12の膜厚の下限値をD1(μm)、樹脂膜12の膜厚の上限値をD2(μm)、蛍光ランプ10の定格寿命をA(時間)、蛍光ランプ10の管壁負荷をB(mW/cm2)とした時に、D1=C×A×Bで、C=6.4×10-5〜1.2×10-4で表され、D2=150μmであり、D1が50μm未満の場合は、樹脂膜12の膜厚の下限値が50μmと設定される。
【0030】
紫外線吸収層13は、無機粒子からなる紫外線吸収材料を含み、紫外線吸収層13の厚さは2〜5μmに設定されている。紫外線吸収材料として使用できる無機粒子としては、例えば、酸化亜鉛(ZnO)、酸化チタン(TiO2)、酸化セリウム(CeO2)等を挙げることができ、特にZnOは紫外線吸収能力が高いため最も好ましい。紫外線吸収材料は、これらの無機粒子を単独又は混合して使用することができる。これらの無機粒子の粒径としては、10〜100nmであることが好ましい。この範囲内であれば、波長375nmに代表される近紫外線まで吸収することができるからである。
【0031】
また、紫外線吸収層13には、紫外線を吸収しない無機粒子を含むことができる。紫外線を吸収しない無機粒子としては、酸化アルミニウム(Al23)、二酸化珪素(SiO2)が挙げられる。紫外線吸収層13がこれらの無機粒子を含むことにより、紫外線吸収層13に蛍光体の保護膜としての機能を付与できる。紫外線吸収層13が紫外線を吸収しない無機粒子を含む場合は、紫外線を吸収する無機粒子のみを含む場合に比べて、紫外線吸収層13の厚さを厚くすることが好ましい。また、紫外線吸収層13とは別に、紫外線を吸収しない無機粒子のみからなる保護膜を別に形成してもよい。
【0032】
以上、図2では直管形蛍光ランプを用いて説明したが、蛍光管が丸形や四角状であり、電極を備えた端部同士を口金で跨いで連結した環形蛍光ランプ;直管状のバルブを複数本ブリッジ状に接続して端部で保持した、いわゆる直管形のツイン形蛍光ランプ;丸形や四角状のバルブを複数本ブリッジ状に接続して形成した、いわゆるツイン形状の環形蛍光ランプ等にも本発明は適用可能である。
【実施例】
【0033】
以下、本発明を実施例に基づき説明する。但し、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0034】
(実施例1)
先ず、下記のとおり、管径25.5mm、長さ1178mmの定格63Wの直管形蛍光ランプ(以下、FHF63形直管タイプと記す。)を作製した。
【0035】
<保護膜液の調製>
平均粒径50nmの酸化アルミニウム微粒子60gに、pH5の酢酸水溶液260gを加えて、攪拌装置を用いて攪拌することにより、保護膜液を調製した。
【0036】
<蛍光体塗布液の調製>
蛍光体塗布液の材料として以下のものを準備した。
(1)溶媒:蒸留水1700g
(2)蛍光体:赤色蛍光体としてユーロピウム付活酸化イットリウム蛍光体(Y23:Eu3+、以下「YOX」という。)350g、緑色蛍光体としてセリウムテルビウム付活燐酸ストロンチウム蛍光体(LaPO4:Ce3+,Tb3+、以下「LAP」という。)350g、及び青色蛍光体としてユーロピウム付活アルミン酸バリウム・マグネシウム蛍光体(BaMgAl1017:Eu2+、以下「BAM」という。)300g
(3)増粘剤:重量平均分子量が約100万のポリエチレンオキシド15g
(4)結着剤:平均粒径が50nmのアルミナ15g
【0037】
次に、攪拌装置を用いて蒸留水にポリエチレンオキシドを溶解させた後、蛍光体、アルミナをこの順に添加して攪拌することにより、蛍光体塗布液を調製した。
【0038】
<直管形蛍光ランプの作製>
上記保護膜液と上記蛍光体塗布液とを用いてFHF63形直管タイプの蛍光ランプを次のようにして作製した。先ず、鉛直方向が長手方向になるように設置したソーダガラス製の直管状のガラス管の中に、上記保護膜液を上部から流し込み、自然流下させてガラス管の内側に保護膜液を付着させた。その後、付着した保護膜液を約60℃の温風にて4分間乾燥してガラス管の内面に保護膜を形成した。このときの保護膜の膜厚は2μmであった。
【0039】
次に、保護膜を形成したガラス管の中に、上記蛍光体塗布液を上部から流し込み、自然流下させて保護膜の上に蛍光体塗布液を付着させた。その後、付着した蛍光体塗布液を約60℃の温風にて約10分乾燥して保護膜の上に蛍光体層を積層した。その後、ガラス管全体をガス炉に入れて、空気中において約550℃の温度にて約3分間加熱し、保護膜と蛍光体層とをガラス管に焼付けて固着させた。保護膜の設計厚さは2μmとし、蛍光体層の設計厚さは20μmとした。続いて、ガラス管の両端部に、フィラメント電極を装着した排気管付きガラスを融着し、排気管からガラス管内部の空気をロータリーポンプにて真空排気した。最後に、水銀とアルゴンガスとを封入し、口金を取り付けて蛍光ランプを作製した。
【0040】
続いて、上記蛍光ランプに飛散防止機能付き熱収縮チューブをかぶせ、温度150〜170℃の加熱炉の中を約2分間通過させて収縮させ、口金からはみ出した部分を切り取り、本実施例の蛍光ランプを得た。上記飛散防止機能付き熱収縮チューブとしては、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤が添加されたポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂から形成された郡是高分子工業社製の熱収縮チューブ(商品名:コパロンPETチューブ PTNA、膜厚:100μm)を用いた。
【0041】
(実施例2)
実施例1で用いた保護膜液に代えて、下記の紫外線吸収層形成用塗布液を用い、実施例1で用いた熱収縮チューブに代えて、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤が添加されていないPET樹脂から形成された帝人化成社製の熱収縮チューブ(商品名:テレチューブ、膜厚:100μm)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、本実施例の蛍光ランプを作製した。
【0042】
<紫外線吸収層形成用塗布液の調製>
紫外線吸収材料である、平均粒径30nmの酸化亜鉛微粒子30gに、脱イオン水250gを加えて、攪拌装置を用いて攪拌することにより、紫外線吸収層形成用塗布液を調製した。
【0043】
(実施例3)
実施例1で用いた保護膜液に代えて、実施例2で用いた紫外線吸収層形成用塗布液を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、本実施例の蛍光ランプを作製した。
【0044】
(比較例1)
実施例1で用いた熱収縮チューブに代えて、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤が添加されていないPET樹脂から形成された帝人化成社製の熱収縮チューブ(商品名:テレチューブ、膜厚:100μm)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、本比較例の蛍光ランプを作製した。
【0045】
(実施例4)
下記蛍光体塗布液を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、本実施例の蛍光ランプを作製した。本実施例の蛍光ランプは、紫外線照射の加速試験用の紫外線放射蛍光ランプである。
【0046】
(1)溶媒:蒸留水1200g
(2)蛍光体:紫外線放射蛍光体としてユーロピウム付活硼酸ストロンチウム蛍光体(SrB43:Eu2+、以下「BLK」という。)400g
(3)増粘剤:重量平均分子量が約100万のポリエチレンオキシド15g
(4)結着剤:平均粒径が50nmのアルミナ15g
【0047】
次に、攪拌装置を用いて蒸留水にポリエチレンオキシドを溶解させた後、蛍光体、アルミナをこの順に添加して攪拌することにより、BLK蛍光体塗布液を調製した。
【0048】
(比較例2)
実施例4で用いた熱収縮チューブに代えて、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤が添加されていない帝人化成社製の熱収縮チューブ(商品名:テレチューブ、膜厚:100μm)を用いたこと以外は、実施例4と同様にして、本比較例の蛍光ランプを作製した。
【0049】
次に、上記実施例及び上記比較例の蛍光ランプを用いた耐飛散防止試験方法、各特性の測定方法及び耐飛散性の加速試験方法を説明する。
【0050】
<耐飛散防止試験方法>
各蛍光ランプの飛散防止機能の評価は、下記2つの評価試験を行い、両評価試験とも合格したものを、耐飛散防止試験の合格とした。
【0051】
第1の評価試験は、日本電球工業会規格の飛散防止形蛍光ランプ JEL 218の耐飛散性試験に準拠して行った。耐飛散性試験の合格基準は、床面から高さ3mの位置に水平に保持した蛍光ランプを床面に自然落下させ、落下した蛍光ランプのほぼ中心から蛍光ランプの長さ+1m(本実施例の蛍光ランプでは約220cm)を半径とする円外にガラス片が飛散しないことである。
【0052】
第2の評価試験は、日本電球工業会規格の飛散防止膜強度試験に準拠して行った。飛散防止膜強度試験の合格基準は、長さ1mの糸に吊り下げた質量200gの鋼球を鉛直とのなす角度が30°の方向に糸を張った状態で静止させ、糸の支点の鉛直下方約1mの位置に保持したランプに、鋼球の静止を解除し重力の作用によって蛍光ランプの円周上の中心に衝突させて、蛍光ランプの飛散防止膜が破断しないことである。
【0053】
<発光スペクトル及び光強度の測定方法>
各蛍光ランプの紫外線領域から可視光領域までの発光スペクトル及び光強度は、瞬間マルチ測光システム「MCPD−3000」(大塚電子社製)を用いて測定した。また、その光の強度の校正は紫外線強度計「UM−10」(ミノルタ社製)を使用して行った。
【0054】
<飛散防止膜の光透過特性の測定方法>
各蛍光ランプの紫外線領域から可視光領域までの飛散防止膜の光透過特性は、分光光度計「U−4100」(日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて測定した。
【0055】
<相関色温度の測定方法>
相関色温度は、日本工業規格の光源の分布温度及び色温度・相関色温度の測定方法(JIS Z 8725)に準拠して測定した。
【0056】
<紫外線放射蛍光ランプを用いた耐飛散性の加速試験方法>
飛散防止機能を有する熱収縮チューブは、紫外線領域によって光劣化が生じるので、通常のFHF63形直管タイプの蛍光ランプにおけるEX−N色の入力電力63Wでのランプ管表面における単位面積あたりの紫外域放射強度(200〜380nm領域)は、0.31(μW/cm2)であり、一方、紫外線放射蛍光ランプ(入力電力63W)の上記単位面積あたりの紫外域放射強度は、13.8μW/cm2であるので、紫外線放射蛍光ランプを用いることにより紫外線照射の加速試験を行うことができ、その加速係数としては45.4倍となる。また、比較例1の蛍光ランプにおける点灯時間としての0時間、2000時間、3000時間での耐飛散防止試験の結果と、紫外線放射蛍光ランプによる加速試験における点灯時間としての0時間、2000時間、3000時間相当での耐飛散防止試験の結果とは、一致した。この加速試験方法を用いて、実施例4及び比較例2の蛍光ランプについて、点灯時間18000時間相当の耐飛散防止試験の評価を実施した。
【0057】
(比較例3)
熱収縮チューブを使用せず、赤色蛍光体(YOX)、緑色蛍光体(LAP)及び青色蛍光体(BAM)の組成比を変化させた以外は、実施例1と同様にして、相関色温度3000K、3500K、4200K、5000K、6700Kのそれぞれの蛍光ランプを作製した。
【0058】
〔本発明の蛍光ランプと従来の蛍光ランプとの比較〕
図3、図4に実施例1、比較例1の蛍光ランプ〔投入電力:63W一定、管壁負荷:66.8mW/cm2、熱収縮チューブの膜厚:100μm〕の各点灯時間(0、2300、6000、9000時間)でのそれぞれの熱収縮チューブの光透過特性の測定結果を示す。測定対象の熱収縮チューブは、測定時に蛍光ランプから剥がして光透過特性を測定した。
【0059】
図3から分かるように、実施例1では、PET樹脂に紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤を添加した熱収縮チューブを用いているので、9000時間まで380nmまでの紫外線の吸収係数が200cm-1と高い値を示し、380nmまでの紫外線が充分に吸収されるので、熱収縮チューブが殆ど劣化しなかった。また、この傾向は18000時間まで同じであった。このためにPET樹脂の分解が発生せず、10000時間まで耐飛散防止試験の結果が合格であった。
【0060】
一方、図4から分かるように、比較例1では、PET樹脂に紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤を添加していない熱収縮チューブを用いているので、近紫外線領域の光が透過し、さらに、時間と共に、PET樹脂の結合が切れて吸収係数の低下を示した。また、比較例1では現実に蛍光ランプ自体が透明であったものが褪色した。また、図1に示したように、この63W点灯(管壁負荷:66.8mW/cm2)であれば、100μmのPET樹脂製の熱収縮チューブでは2000時間しか飛散防止機能が維持できず、FHF63形直管タイプの蛍光ランプの定格寿命の18000時間に達しなかった。
【0061】
〔蛍光ランプの相関色温度と紫外線放射との関係〕
比較例3で作製した各種相関色温度の蛍光ランプの紫外線量を測定し、その結果を表1に示す。
【0062】
【表1】

【0063】
表1から、相関色温度が上がるほど紫外域放射照度が減少することが分かる。これは、相対色温度を高くするには青色蛍光体の量を増加させる必要があり、青色蛍光体が蛍光ランプの近紫外線領域の光を吸収して発光するためであると考えられる。また、管壁負荷が同じであっても相関色温度の違いで紫外線放射量が違う。このため、飛散防止機能を有する熱収縮チューブの耐飛散防止試験に合格できる点灯時間に差異が生じると考えられる。
【0064】
次に、実施例1〜3、比較例1の蛍光ランプを、入力電力63W一定で点灯し、9000時間、10000時間における耐飛散防止試験を行った。また、加速試験用の実施例4及び比較例2の紫外線放射蛍光ランプを用いて18000時間相当の耐飛散防止試験を行った。また、実施例1〜3及び比較例1の蛍光ランプの10000時間の時点の褪色の有無と、実施例4及び比較例2の蛍光ランプの18000時間相当での褪色の有無とを観察した。以上の結果を表2に示す。表2では、耐飛散防止試験の合格をA、不合格をBと表示した。
【0065】
【表2】

【0066】
表2から明らかなように、熱収縮チューブのPET樹脂に紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤を添加した蛍光ランプでは、飛散防止機能は18000時間まで維持できた。紫外線を吸収する紫外線吸収層を形成した実施例2の蛍光ランプでも飛散防止機能は9000時間まで維持できた。一方、熱収縮チューブの褪色は、紫外線吸収層を形成した蛍光ランプでは認められなかった
【0067】
以上の結果から、飛散防止機能は、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤を添加した樹脂を使用した蛍光ランプにおいて維持可能であることが分かる。紫外線吸収層を形成した蛍光ランプでは、紫外線吸収層の厚さが2μm以上の場合に、蛍光ランプからの紫外線を遮断して飛散防止機能を維持できた。長期間にわたっての飛散防止効果を生じさせるためには、紫外線吸収層の厚さを厚くする必要があった。さらに、蛍光ランプからの紫外線の遮断を行うと熱収縮チューブの褪色防止効果があった。
【0068】
以上の結果から、PET樹脂及び飽和エステル樹脂における蛍光ランプから放射される紫外線による光劣化、特に耐飛散防止試験の結果を考慮すると、飛散防止効果を有効に作用させるための飛散防止膜の膜厚は、紫外線量(管壁負荷に比例)と紫外線被爆総量(点灯時間に比例)とに比例すると考えられる。
【0069】
これらの結果から、飛散防止機能を有する熱収縮チューブに紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤等を添加したPET樹脂の場合、膜厚100μm、定格寿命18000時間、管壁負荷66.8mW/cm2から、膜厚(D)は、定格寿命(A)(18000時間)と管壁負荷(B)(67mW/cm2)の積に比例すると考えられ、また光色の違いによる紫外線放射量の違いを考慮すると、
膜厚(D)=比例定数(C)×定格寿命(A)×管壁負荷(B)
と表現でき、EX−N色で膜厚100μmであったので、
100μm=C×18000時間×67mW/cm2
なので、C=8.3×10-5(μm/時間/mW/cm2)となり、
光色を考慮すると、EX−D色であれば、EX−N色に対する相対比77、EX−L色の場合143となるので、
比例定数Cは、6.4×10-5〜1.2×10-4となる。
【0070】
以上より、樹脂膜の膜厚の下限値をD1(μm)、樹脂膜の膜厚の上限値をD2(μm)、蛍光ランプの定格寿命をA(時間)、蛍光ランプの管壁負荷をB(mW/cm2)とした時に、
D1=C×A×Bで、C=6.4×10-5〜1.2×10-4で表され、D2=150μmであり、D1が50μm未満の場合は、樹脂膜の膜厚の下限値を50μmとすることが好ましいことが分かる。
【0071】
本実施例では紫外線吸収材料として、平均粒径30nmの酸化亜鉛微粒子を用いたが、10〜100nm程度の平均粒径であれば、同じ膜厚の場合には同様に紫外線吸収効果を有した。また、紫外線吸収材料として酸化亜鉛を用いたが、酸化チタン、酸化セリウムでも同様の紫外線吸収効果があった。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明によれば、長期間にわたり飛散防止機能を維持できる蛍光ランプを提供でき、その工業的価値は大である。
【符号の説明】
【0073】
10 蛍光ランプ
11 蛍光管
12 樹脂膜
13 紫外線吸収層
14 蛍光体層
15 フィラメント電極
16 口金

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛍光管と、前記蛍光管を覆う樹脂膜とを含む飛散防止機能を有する蛍光ランプであって、
前記樹脂膜は、紫外線吸収剤と、光安定剤と、酸化防止剤とを含む樹脂から形成されていることを特徴する蛍光ランプ。
【請求項2】
前記樹脂膜が、熱収縮性樹脂膜である請求項1に記載の蛍光ランプ。
【請求項3】
前記樹脂が、ポリエステル樹脂である請求項1に記載の蛍光ランプ。
【請求項4】
前記樹脂膜の膜厚の下限値をD1(μm)、前記樹脂膜の膜厚の上限値をD2(μm)、前記蛍光ランプの定格寿命をA(時間)、前記蛍光ランプの管壁負荷をB(mW/cm2)とした時に、
D1=C×A×Bで、C=6.4×10-5〜1.2×10-4で表され、D2=150μmであり、
D1が50μm未満の場合は、前記樹脂膜の膜厚の下限値を50μmとする請求項1に記載の蛍光ランプ。
【請求項5】
前記蛍光管の内面に、紫外線吸収層がさらに形成されている請求項1〜4のいずれか1項に記載の蛍光ランプ。
【請求項6】
前記紫外線吸収層は、無機粒子からなる紫外線吸収材料を含み、前記紫外線吸収層の厚さが、2μm以上である請求項5に記載の蛍光ランプ。
【請求項7】
蛍光管と、前記蛍光管の内面に形成された紫外線吸収層とを含む蛍光ランプであって、
前記紫外線吸収層は、無機粒子からなる紫外線吸収材料を含み、
前記紫外線吸収層の厚さが、2μm以上であることを特徴とする蛍光ランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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