説明

蛍光ランプ

【課題】ガラスバルブ内に封入する不活性ガスの封入ガス圧が低圧であっても光条を生じることなくランプ効率の高効率化、高輝度化及び漏れ電流の低減化を実現した蛍光ランプを提供する。
【解決手段】蛍光ランプ1のガラスバルブ3内に、クリプトンとアルゴンとネオン、又は、クリプトンとネオンで構成された不活性ガス6を混合比率(クリプトン/アルゴン/ネオン)が0.5〜10%/〜10%/80〜99.5%となる範囲で封入し、ガラスバルブ3内における不活性ガス6の封入ガス圧を10〜39Torrの範囲とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置等のバックライト装置用の光源として用いられる蛍光ランプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
蛍光ランプは、内面に蛍光体が一様に塗布されたガラスバルブ内に、一対の電極が対向して配置されると共に適量の水銀と不活性ガスが数十Torrの圧力で封入された構造を有している。
【0003】
従来、この種の蛍光ランプについて具体的な技術内容を記載したものとしては、例えば、下記に示すものが開示されている。
【0004】
それは、蛍光ランプのガラスバルブ内に封入する不活性ガスをネオンとクリプトン、又は、ネオンとクリプトンとアルゴンで構成し、ネオンとクリプトンの混合比率(ネオン/クリプトン)を95モル%/5モル%、又は、ネオンとクリプトンとアルゴンの混合比率(ネオン/クリプトン/アルゴン)を95モル%/1モル%以上3モル%以下/残部)、又は、ネオンとアルゴンとクリプトンの混合比率(ネオン/アルゴン/クリプトン)を90モル%以上94.5モル%以下/5モル%以下/残部)とし、不活性ガスの封入ガス圧を40Torr〜60Torrとしている。
【0005】
これにより、ランプ効率及び始動電圧(特に、低温における始動電圧)について、ネオンとアルゴンを主体とする不活性ガスを封入した蛍光ランプよりも改善された冷陰極蛍光ランプが実現できたとされている(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
また、蛍光ランプのガラスバルブ内に封入する不活性ガスをアルゴンとネオンとクリプトン、又は、アルゴンとネオンとキセノンで構成し、不活性ガス中のクリプトン又はキセノンの初期混合量を2〜10%としたものもある。
【0007】
このように、アルゴンとネオンの混合ガスに、クリプトンかキセノンの何れかを添加することにより、特に寒冷環境下における蛍光ランプの放電開始時の赤外線放射量を低減して、赤外線リモコンで操作される機器の誤動作を防止するものである(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3914217号
【特許文献2】特開2007−329042号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、冷陰極蛍光ランプは、更なるランプ効率の向上を図るために不活性ガスの封入ガス圧を40Torr未満にすることが検討されており、これによりランプ効率の高効率化と高輝度化が期待されている。
【0010】
また、冷陰極蛍光ランプ駆動用のインバータにおいては、漏れ電流低減のために現状実現されている35KHzの駆動周波数を、35KHz未満の周波数に下げることにより更なる漏れ電流の低減を図ることが検討されている。
【0011】
その場合、上述のいずれの蛍光ランプにおいても、封入ガス圧が40Torr未満の冷陰極蛍光ランプを25KHz未満の周波数で駆動すると、調光時の低電流駆動において、ストライエーション現象とも呼ばれる光条現象が発生してガラスバルブ内の一部或いは全体に亘って複数の縞状の明部と暗部が生じ、液晶表示装置のバックライト装置に組み込むと液晶表示画面にちらつきを生じることになる。
【0012】
この光条現象は、低温環境、低電流駆動、低封入ガス圧、低周波駆動により発生しやすく、そのために、ランプ効率の高効率化及び漏れ電流の低減にはおのずから限界がある。
【0013】
そこで、本発明は上記問題に鑑みて創案なされたもので、その目的とするところは、ガラスバルブ内の不活性ガスの封入ガス圧が40Torr未満の低圧であっても、25KHz未満の駆動周波数における調光時の低電流駆動によっても光条現象が発生することのない、ランプ効率の高効率化と高輝度化を実現した蛍光ランプ(冷陰極蛍光ランプ)を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1に記載された発明は、一対の電極が対向配置されたガラスバルブ内に、水銀と所定の不活性ガスが封入されてなる蛍光ランプにおいて、前記不活性ガスはクリプトンとアルゴンとネオン、又は、クリプトンとネオンで構成され、前記不活性ガス中における前記クリプトン、アルゴン及びネオンの混合比率(クリプトン/アルゴン/ネオン)は、0.5〜10%/〜10%/80〜99.5%(残部)であり、前記不活性ガスの封入ガス圧は10〜39Torrであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の蛍光ランプは、ガラスバルブ内にクリプトンとアルゴンとネオン、又は、クリプトンとネオンで構成された不活性ガスの混合比率(クリプトン/アルゴン/ネオン)が0.5〜10%/〜10%/80〜99.5%となる範囲で封入し、ガラスバルブ内における不活性ガスの封入ガス圧を10〜39Torrの範囲とした。
【0016】
その結果、ガラスバルブ内に封入する不活性ガスの封入ガス圧が低圧であっても光条を生じることなくランプ効率の高効率化、高輝度化及び漏れ電流の低減化を図った蛍光ランプを実現することができた。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係わる蛍光ランプの構成を模式的に示した説明図である。
【図2】同じく、本発明に係わる蛍光ランプの構成を模式的に示した説明図である。
【図3】比較例の蛍光ランプの構成を模式的に示した説明図である。
【図4】蛍光ランプのガラスバルブ内の封入ガス圧と、そのときに光条を生じない駆動周波数の最低値との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、この発明の好適な実施形態を図1〜図4を参照しながら、詳細に説明する(同一部分については同じ符号を付す)。尚、以下に述べる実施形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの実施形態に限られるものではない。
【0019】
図1及び図2は、本発明に係わる冷陰極蛍光ランプ(以下:蛍光ランプと略称する)の構成を模式的に示した説明図である。
【0020】
蛍光ランプ1は、両端が気密に封止され、内面に蛍光体2が一様に塗布されたガラスバルブ3の気密内部に、両端部に対向して配置された一対の電極4と、水銀5と、気密封入された不活性ガス6を有する構成となっている。これは、蛍光ランプの構成として一般的に知られたものである。
【0021】
本発明は蛍光ランプの上記構成を基本構成として、光条現象の発生を防止しつつランプ効率の高効率化、高輝度化及び漏れ電流の低減化を実現するための最適な構成要件を、試作・検証・評価を行いながら求めていった。
【0022】
つまり、蛍光ランプ1のランプ効率の高効率化、高輝度化及び漏れ電流の低減化を狙ってガラスバルブ3内に封入する不活性ガス6の封入ガス圧を40Torr未満の低圧に設定し、その設定条件下において該蛍光ランプ1を35KHz以下の低周波で駆動しても調光時の低周波低電流駆動でも光条現象が発生することがないような最適構成要件を見出すものである。
【0023】
具体的には、蛍光ランプ1のガラスバルブ3内に封入する不活性ガスの種類及び混合比率を最適なものとすることにより、ランプ効率の高効率化、高輝度化及び漏れ電流の低減化を実現した。
【0024】
この場合、不活性ガス6は2種類又は3種類のガスで構成し、2種類の場合は図1のようにクリプトン6bとネオン6dで構成し、3種類の場合は図2のようにクリプトン6bとネオン6dにアルゴン6cを加えた構成とした。
【0025】
この不活性ガスの構成は、上記参考文献1、2にも開示されているが、発明者はこの不活性ガスの構成において不活性ガスの封入ガス圧を40Torr未満に設定し、そのときに、蛍光ランプ1を35KHz以下の低周波で駆動しても調光時の低周波低電流駆動でも光条現象が発生することがないような不活性ガスの最適な混合比率を、試作・検証・評価を繰り返しながら求めた。
【0026】
その結果の一部を図4のグラフに示している。図4は横軸を蛍光ランプのガラスバルブに封入された不活性ガスの封入ガス圧を示し、縦軸は蛍光ランプの駆動周波数を示している。
【0027】
試作品の蛍光ランプは、比較例及び実施例共にガラスバルブの外径が4.0mm(内径が3.3mm)で長さが1033mmであり、比較例の蛍光ランプ10は図3に示すように、不活性ガスをアルゴン6cとネオン6dで構成し、その混合比率(アルゴン/ネオン)を5%/95%としたものである。一方、実施例の蛍光ランプ1は図2に示すように、不活性ガスをクリプトン6bとアルゴン6cとネオン6dで構成し、その混合比率(クリプトン/アルゴン/ネオン)を1%/5%/94%としたものである。
【0028】
そして、比較例と実施例の夫々において、各封入ガス圧に対して蛍光ランプの駆動周波数を0Hzから上げていって光条が発生しなくなったときの駆動周波数を求め、その結果をグラフ上にプロットしたものである。
【0029】
図4のグラフから分かるように、封入ガス圧が20Torr〜35Torrの範囲において、実施例は比較例に対していずれの封入ガス圧においても光条が発生しなくなる駆動周波数の値が低くなっている。その結果、実施例のガラスバルブの封入ガス圧が比較例のガラスバルブの封入ガス圧に対して低圧であっても、光条を発生することなくランプ効率の高効率化、高輝度化及び漏れ電流の低減化を図ることができる。
【0030】
また、蛍光ランプの駆動周波数を0Hzから上げていって光条が発生しなくなった周波数から、例えば100KHzまでの周波数の範囲を実際の駆動周波数とすると、実施例は比較例に対してその間の駆動周波数の範囲が広くなる。つまり、比較例に対して実施例の方が使用する駆動周波数の周波数範囲を広く設定することができる。
【0031】
このように、蛍光ランプの試作・検証・評価を繰り返すことにより、アルゴンとネオンで構成された不活性ガスを封入したガラスバルブを有する比較例の蛍光ランプよりも、比較例を構成するアルゴンとネオンにクリプトンを添加した実施例の蛍光ランプのほうが、光条を発生することなくランプ効率の高効率化、高輝度化及び漏れ電流の低減化を図ることができることが実証できた。
【0032】
このような試作・検証データを含め、試作・検証・評価に基づいて得られた結果より、本発明の蛍光ランプの最適構成要件は、ガラスバルブ内に封止される不活性ガスをクリプトンとアルゴンとネオン、又は、クリプトンとネオンで構成し、不活性ガスの混合比率(クリプトン/アルゴン/ネオン)を0.5〜10%/〜10%/80〜99.5%(残部)とすると共に、不活性ガスの封止ガス圧を10〜39Torrの範囲とすることが好ましいことが分かった。
【0033】
これにより、40Torr未満の低封止ガス圧においても低電流駆動時に光条が発生することなく、従来よりもランプ効率の高効率化、高輝度化及び漏れ電流の低減化を図った蛍光ランプが実現する。
【符号の説明】
【0034】
1… 蛍光ランプ(冷陰極蛍光ランプ)
2… 蛍光体
3… ガラスバルブ
4… 電極
5… 水銀
6… 不活性ガス
6b… クリプトン
6c… アルゴン
6d・・ ネオン
10… 蛍光ランプ(冷陰極蛍光ランプ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の電極が対向配置されたガラスバルブ内に、水銀と所定の不活性ガスが封入されてなる蛍光ランプにおいて、前記不活性ガスはクリプトンとアルゴンとネオン、又は、クリプトンとネオンで構成され、前記不活性ガス中における前記クリプトン、アルゴン及びネオンの混合比率(クリプトン/アルゴン/ネオン)は、0.5〜10%/〜10%/80〜99.5%(残部)であり、前記不活性ガスの封入ガス圧は10〜39Torrであることを特徴とする蛍光ランプ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−59666(P2012−59666A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−204438(P2010−204438)
【出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】