説明

蛍光ランプ

【課題】発光光束の低下を抑制することができる蛍光ランプを提供する。
【解決手段】蛍光ランプ100は、電子と衝突することで紫外線を発する水銀が気密封止されたガラス管1と、ガラス管1の内側に形成され、紫外線が当たることで可視光を放出する蛍光体7と、蛍光体7に積層して形成され、ガラス管1に気密封止した水銀と蛍光体7との接触を防止する接触防止膜8とを有することで、蛍光体7と水銀との化学反応を抑制し、蛍光ランプ100の発光光束の低下を抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光ランプに関する。
【背景技術】
【0002】
蛍光灯のガラス管内部には水銀が封止されている。この水銀はガラス管の一端より放出された電子と衝突することで紫外線を発する。ガラス管内面には蛍光体が塗布されており、これに紫外線が当たることで蛍光灯は可視光を放出する。特許文献1には、ガラス管と蛍光体の結着力を向上させることで、長期に渡って安定した輝度が得られる蛍光ランプが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−206045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
蛍光ランプは時間の経過とともに発光光束(luminous flux)が低下する。その理由に、蛍光体が水銀と化学反応して劣化することが挙げられる。特に、緑色発光の蛍光ランプは、蛍光体として、水銀との反応性の高いZnSiO:Mn(Mnは付活剤)を使用しており、他の色の蛍光ランプと比べ点灯寿命が短くなる傾向にある。
【0005】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであり、発光光束の低下を抑制することができる蛍光ランプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の蛍光ランプは、
電子と衝突することで紫外線を発する水銀が気密封止されたガラス管と、
前記ガラス管の内面に形成され、紫外線が当たることで可視光を放出する蛍光体と、
前記蛍光体に積層して形成され、前記水銀と前記蛍光体との接触を防止する接触防止膜と、
を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
蛍光体と水銀との化学反応を抑制することで、発光光束の低下を抑制することができる蛍光ランプを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施の形態に係る蛍光ランプの要部縦断面図である。
【図2】実施の形態に係る蛍光ランプの横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本実施の形態に係る蛍光ランプ100は、図1に示すように、直管形のガラス管1を有する熱陰極蛍光ランプである。ガラス管1の内面には、紫外線を可視光に変換するための蛍光体7が塗布されており、その蛍光体7の上にはさらに接触防止膜8が塗布されている。接触防止膜8は、ガラス管1に気密封止された水銀と蛍光体7との接触を防止することで、蛍光体7と水銀との化学反応を抑制する。以下、蛍光ランプ100について図面を参照しながら説明する。
【0010】
蛍光ランプ100は、図1に示すように、放電ガス6が封入されたガラス管1と、口金2と、口金ピン3と、電極4と、フィラメント5と、蛍光体7と、接触防止膜8と、保護膜9から構成される。
【0011】
ガラス管1は直管形のガラス管であり、その両端には口金2が設けられている。ガラス管1の断面は、図2に示すように、円形であり、その管径は例えば10mm以上38mm以下である。
【0012】
口金2は、例えばアルミニウムから構成される有底の円筒体である。口金2からは、一対の口金ピン3が突出している。この口金ピン3には、電極4が電気的に接続されている。
【0013】
電極4は、蛍光ランプ100の両端部に配置されており、その先端にはフィラメント5が設けられている。口金ピン3に電圧が加わるとフィラメント5に電流が流れる。
【0014】
フィラメント5はコイル状の金属線であり、その表面には酸化バリウム(BaO)、酸化ストロンチウム(SrO)、または、酸化カルシウム(CaO)等から構成される電子放射性物質が塗られている。フィラメント5は、通電により熱せられると、表面の電子放射性物質から電子を放出する。
【0015】
放電ガス6は希ガスと水銀蒸気から構成され、ガラス管1に気密封止されている。希ガスはガラス管1の内部の圧力を調整するためのものであり、アルゴンやネオン等の混合ガスから構成される。水銀蒸気は蛍光体7を励起するための紫外線を得るためのものであり、フィラメント5より放出された電子と衝突することで紫外線を放出する。
【0016】
蛍光体7は、水銀より放出された紫外線を可視光に変換するためのものである。緑色発光の蛍光体の場合、ZnSiO:Mn(Mnは付活剤)等が含まれる。蛍光体7はガラス管1の内面に塗布されており、塗布される量は、例えば、単位面積当たり3mg/cm〜7mg/cmである。
【0017】
接触防止膜8は、酸化マグネシウム(MgO)等で構成される。接触防止膜8は蛍光体7に積層するように塗布されており、塗布される量は、例えば、単位面積当たり0.1mg/cm〜1.9mg/cmである。接触防止膜8は蛍光体7とガラス管1に内部の水銀との直接の接触を防止することで、水銀と蛍光体7の化学反応を抑制する。
【0018】
保護膜9は、酸化マグネシウム(MgO)等で構成される。保護膜9は、蛍光体7とガラス管1との間に塗布されており、塗布される量は、例えば、単位面積当たり0.1mg/cm〜1.9mg/cmである。保護膜9は、ガラス管1に含まれるナトリウムが時間経過とともに溶け出し、蛍光体7と反応することを防止する。保護膜9により、蛍光体7の劣化が防止され、蛍光ランプ100の発光光束の低下が抑制される。また、保護膜9は、蛍光体7を透過して到達した一部の紫外線を反射して蛍光体7に戻ことで、蛍光ランプ100の光束値を向上させる。
【0019】
以上、蛍光ランプ100の構成について説明したが、次に、蛍光ランプ100の動作について説明する。
【0020】
電極4に電圧が加わると、電極4の間に放電が生じる。ガラス管1に気密封止された水銀は、放電により紫外線を放射する。放射された紫外線は、接触防止膜8を通過して蛍光体7に照射される。蛍光体7は紫外線により励起され可視光を発する。また、一部の紫外線は、蛍光体7を通過して保護膜9に到達する。紫外線は保護膜9で反射され、再び蛍光体7に戻される。蛍光体7は、接触防止膜8側、保護膜9側の両面より照射された紫外線を可視光に変換し、外部に放出する。
【0021】
本実施の形態によれば、蛍光体7に積層された接触防止膜8により、蛍光体7とガラス管1に気密封止された水銀との直接の接触を防止できる。その結果、蛍光体7の劣化が防止され、蛍光ランプ100の発光光束の低下を抑制することができる。
【0022】
また、蛍光体7と水銀の化学反応が抑制されることで、水銀消費量が軽減される。その結果、蛍光ランプ100の点灯寿命を長くすることができる。
【0023】
また、蛍光体7と水銀の化学反応が抑制されることで、水銀が蛍光体7に吸着することで起こるランプ変色(着色)を防止できる。
【0024】
本実施の形態によれば、ガラス管1と蛍光体7との間に形成された保護膜9により、ガラス管1に含まれるナトリウムが時間経過とともに溶け出し、蛍光体7と反応することを防止できる。その結果、蛍光体7の劣化を防止でき、発光光束の低下を抑制できる。
【0025】
また、保護膜9が、蛍光体7を透過して到達した紫外線を反射して蛍光体7に戻すことにより、紫外線を余すところ無く蛍光体7に照射することができる。その結果、蛍光ランプ100の発光効率を高めることができる。
【0026】
蛍光体7は、赤色発光蛍光体、緑色発光蛍光体、または、青色発光蛍光体であってもよい。また、各色の蛍光体を少なくとも1つ含有する三波長蛍光体であってもよい。
【0027】
赤色発光蛍光体には、例えば、Y:Eu、YS:Eu、SrS:Eu、CaS:Eu、CaAlSiN:Eu、または、LaS:Eu等が含まれていてもよい。また、これらを混合したものが含まれていてもよい。
【0028】
また、緑色発光蛍光体には、例えば、LaPO:Ce,Tb、BaMgAl1017:Eu,Mn、(MgCaSrBa)Si:Eu、BaSiO:Eu、CeMgAl11O19:Tb、LaPO:Tb、(Ce,Gd)MgB10:Tb、または、ZnSiO:Mn等が含まれていてもよい。また、これらを混合したものが含まれていてもよい。
【0029】
さらに、青色蛍光発光体には、例えば、BaMgAl1627:Eu、ZnS:Ag、(Ba,Sr)MgAl1017:Eu,Mn、または、(Ba,Sr,Ca,Mg)10(POl2:Eu等が含まれていてもよい。また、これらを混合したものが含まれていてもよい。
【0030】
接触防止膜8や保護膜9には、酸化イットリウム(Y)、酸化ランタン(La)、酸化アルミニウム(Al)、酸化マグネシウム(MgO)、二酸化ケイ素(SiO)、二酸化セリウム(CeO)、一酸化チタン(TiO)、二酸化チタン(TiO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ビスマス(Bi)、酸化銅(CuO)、酸化ガドリニウム(Gd)、酸化クロム(Cr)、酸化ニッケル(NiO)、酸化サマリウム(Sm)、五酸化ニオブ(Nb)、または、二酸化ジルコニウム(ZrO)等が含まれていてもよい。また、これらを混合したものが含まれていてもよい。
【0031】
また、接触防止膜8や保護膜9には、フッ化カルシウム(CaF)、フッ化マグネシウム(MgF)、フッ化ストロンチウム(SrF)、フッ化バリウム(BaF)、フッ化セリウム(CeF)、フッ化ネオジウム(NdF)、または、永晶石(NaAlF)等が含まれていてもよい。また、これらを混合したものが含まれていてもよい。さらに、接触防止膜8や保護膜9には、酸化物とフッ化物を混合したものが含まれていてもよい。
【0032】
接触防止膜8の厚みは、0.05μm以上3μm以下、好ましくは0.1μm以上2μm以下が望ましい。接触防止膜8の厚みが3μmよりも厚い場合には、接触防止膜8に紫外線が吸収されて蛍光体7に届く紫外線が減少する可能性があるからである。また、接触防止膜8の厚みが0.05μmよりも薄い場合には、水銀の蛍光体7への接触防止が困難になるからである。
【0033】
保護膜9の厚みは、0.05μm以上3μm以下、好ましくは0.1μm以上2μm以下が望ましい。保護膜9の厚みが3μmよりも厚い場合には、発光光束が低下する可能性があるからである。また、保護膜9の厚みが0.05μmよりも薄い場合には、蛍光体7とガラス管1の接触防止が困難になるからである。
【0034】
ガラス管1の形状は直管形に限られない。ガラス管1の形状は、U字形、W字形、環形、渦巻形、その他、電球形蛍光ランプに使用されるガラス管のように複数箇所曲げられた形状になっていてもよい。
【0035】
放電ガス6に含まれる希ガスは、アルゴンやネオンとの混合ガスに限られない。希ガスとしては、クリプトンを単独で若しくはアルゴン及びネオンに混合されていてもよい。放電ガス6には、その他の不活性ガスが混合されていてもよい。
【0036】
蛍光ランプ100は、熱陰極蛍光ランプの他、液晶モニタのバックライト等として使用される冷陰極蛍光ランプであってもよい。このとき、ガラス管1の管径は例えば1.8mm以上5.0mm以下であってもよい。
【0037】
上記の実施形態の一部または全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0038】
(付記1) 電子と衝突することで紫外線を発する水銀が気密封止されたガラス管と、
前記ガラス管の内側に形成され、紫外線が当たることで可視光を放出する蛍光体と、
前記蛍光体に積層して形成され、前記水銀と前記蛍光体との接触を防止する接触防止膜と、
を有することを特徴とする蛍光ランプ。
【0039】
(付記2) 前記蛍光体と前記ガラス管の内壁との間に形成され、前記蛍光体と前記ガラス管との接触を防止する保護膜、
をさらに有することを特徴とする付記1に記載の蛍光ランプ。
【0040】
(付記3) 前記接触防止膜および/または前記保護膜には酸化物および/またはフッ化物が含まれている、
ことを特徴とする付記1または2に記載の蛍光ランプ。
【0041】
(付記4) 前記酸化物には、酸化イットリウム、酸化ランタン、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、二酸化ケイ素、二酸化セリウム、一酸化チタン、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ビスマス、酸化銅、酸化ガドリニウム、酸化クロム、酸化ニッケル、酸化サマリウム、五酸化ニオブ、二酸化ジルコニウムが一種以上含まれる、
ことを特徴とする付記3に記載の蛍光ランプ。
【0042】
(付記5) 前記フッ化物には、フッ化カルシウム、フッ化マグネシウム、フッ化ストロンチウム、フッ化バリウム、フッ化セリウム、フッ化ネオジウム、永晶石が一種以上含まれる、
ことを特徴とする付記3に記載の蛍光ランプ。
【0043】
(付記6)前記蛍光体は、緑色発光の蛍光体である、
ことを特徴とする付記1乃至5のいずれかに記載の蛍光ランプ。
【0044】
(付記7)前記蛍光体には、ZnSiOが含まれる、
ことを特徴とする付記6に記載の蛍光ランプ。
【0045】
(付記8)前記接触防止膜は、前記ガラス管内壁1cmあたり0.1mgから1.9mgの重量となるように形成される、
ことを特徴とする付記1乃至7のいずれかに記載の蛍光ランプ。
【符号の説明】
【0046】
1 ガラス管
2 口金
3 口金ピン
4 電極
5 フィラメント
6 放電ガス
7 蛍光体
8 接触防止膜
9 保護膜
100 蛍光ランプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子と衝突することで紫外線を発する水銀が気密封止されたガラス管と、
前記ガラス管の内側に形成され、紫外線が当たることで可視光を放出する蛍光体と、
前記蛍光体に積層して形成され、前記水銀と前記蛍光体との接触を防止する接触防止膜と、
を有することを特徴とする蛍光ランプ。
【請求項2】
前記蛍光体と前記ガラス管の内壁との間に形成され、前記蛍光体と前記ガラス管との接触を防止する保護膜、
をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の蛍光ランプ。
【請求項3】
前記接触防止膜および/または前記保護膜には酸化物および/またはフッ化物が含まれている、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の蛍光ランプ。
【請求項4】
前記酸化物には、酸化イットリウム、酸化ランタン、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、二酸化ケイ素、二酸化セリウム、一酸化チタン、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ビスマス、酸化銅、酸化ガドリニウム、酸化クロム、酸化ニッケル、酸化サマリウム、五酸化ニオブ、二酸化ジルコニウムが一種以上含まれる、
ことを特徴とする請求項3に記載の蛍光ランプ。
【請求項5】
前記フッ化物には、フッ化カルシウム、フッ化マグネシウム、フッ化ストロンチウム、フッ化バリウム、フッ化セリウム、フッ化ネオジウム、永晶石が一種以上含まれる、
ことを特徴とする請求項3に記載の蛍光ランプ。
【請求項6】
前記蛍光体は、緑色発光の蛍光体である、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の蛍光ランプ。
【請求項7】
前記蛍光体には、ZnSiOが含まれる
ことを特徴とする請求項6に記載の蛍光ランプ。
【請求項8】
前記接触防止膜は、前記ガラス管内壁1cmあたり0.1mgから1.9mgの重量となるように形成される、
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の蛍光ランプ。

【図1】
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【図2】
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