説明

蛍光体及びそれを用いたプラズマディスプレイパネル

【課題】 従来の蛍光体に比べて、高輝度、短残光、かつ真空紫外線劣化耐性など優れた性能特性をもつ蛍光体及びそれを用いたプラズマディスプレイパネルを提供する。
【解決手段】 真空紫外線により励起されて可視光を放出する蛍光体であって、当該蛍光体の母体材料が(YxGd1-x)BO3(0.40≦x≦0.90)であり、賦活剤がEu(ユーロピウム)であり、及び共賦活剤がV(バナジウム)又はP(リン)であり、かつ当該共賦活剤をEuに対し1%〜15%含有することを特徴とする蛍光体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空紫外線励起発光素子としての蛍光体及びそれを用いたプラズマディスプレイパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
蛍光体は、励起線(紫外線、可視光、赤外線、熱線、電子線、X線および放射線等)を照射することにより、当該励起線のエネルギーを光(紫外線、可視光および赤外線等)に変換する材料として一般に使用されている。当該蛍光体を用いたデバイスとしては、蛍光ランプ、電子管、冷陰極ディスプレイ、蛍光表示管、プラズマディスプレイパネル(Plasma Display Panel:以下において、「PDP」ともいう。)、エレクトロルミネッセンスパネル、シンチレーション検出器、X線イメージインテンシファイア、熱蛍光線量計およびイメージングプレート等が挙げられる(例えば、非特許文献1参照。)。これらのデバイスは、いずれも、電気エネルギーを前記励起線のエネルギーに変換し、さらに、前記励起線のエネルギーを前記光に変換するデバイスである。このようなデバイスと、電子回路または機器部品(照明器具、コンピュータ、キーボード、蛍光体を用いていない電子機器等)とを組み合わせた電子機器は、照明装置や表示装置等として広く用いられている。
【0003】
近年、Ar,Xe,He,Ne,Xe−Ne等の希ガスをガラスなどの外囲器に封入し、その希ガスの放電によって放射される真空紫外線により外囲器内部又は外部の蛍光膜を励起して発光させる真空紫外線励起発光素子の開発が盛んに行われており、その一例として、プラズマディスプレイパネルが知られている。
【0004】
プラズマディスプレイパネルは、電極を備えた2枚のガラス基板と、基板間に設けられた隔壁によって形成される多数の微小放電空間(以下、セルという。)とを有している。このセルの内壁には、蛍光体層が設けられ、Xe,Ne等を主成分とする放電ガスが封入されている。電極間に電圧を印加して基板上に規則正しく配置されたセルを選択的に放電させると、放電ガスに起因する真空紫外線が発生し、これにより蛍光体が励起されて可視光を発光する仕組みとなっている。即ち、上記セルに電極から電気エネルギーを印加すると、セル内に希ガス放電を生じさせ、真空紫外線が放射される。この真空紫外線により蛍光体が励起され可視光を発し、これにより画像が表示されることとなる。
【0005】
フルカラーのプラズマディスプレイパネルには赤(R)、緑(G)、青(B)の各色を発光する蛍光体層が備えられ、この蛍光体層を構成する蛍光体はPDPの放電セル内で発生する真空紫外線により励起され、各色の可視光を生成する。この場合において、赤色蛍光体として(Y,Gd)BO3:Eu、青色蛍光体としてBaMgAl1017:Eu、緑色蛍光体としてZn2SiO4:Mn等が広く使用されている(非特許文献1)。
【0006】
近年、プラズマディスプレイの開発において残光で課題のあった緑色蛍光体の残光時間が短縮されてきており、RGBのバランスの中で赤色蛍光体の短残光化が望まれている。しかも、パネル輝度向上の一手段として挙げられている高周波駆動の場合には短残光化が必須となる。従来、蛍光体は母体材料に発光中心金属としての賦活剤、例えば、Euを分散した材料が用いられており、プラズマディスプレイに用いられる赤色用蛍光体として(Y,Gd)BO3:Eu、Y23:Eu、(Y,Gd)(P,V)O4:Euのいずれかが用いられる例が種々開示されてはいるが、短残光化に対する賦活剤や共賦活剤の効果等に関する開示は無い。
【0007】
一方、蛍光体は、プラズマディスプレイパネルの一構成要素として組み込まれた場合に、放電セル内で惹起される放電現象に供され、その現象が起こるごとに種々のイオンや電子の衝突を受ける。その結果、当該蛍光体は経時的に劣化して発光輝度が次第に低下し、製造初期の機能を十分に発揮できなくなるという問題が知られている。
【0008】
当該問題に関しては、スパッタリングにより蛍光体膜の表面に金属酸化物の被膜を形成して蛍光体膜の劣化を防止する技術が知られている(特許文献1参照。)。しかしながら、特許文献2に開示された技術では、確かに、金属酸化物の被膜が蛍光体膜の経時的な劣化を防止するのに有効に機能してはいるが、蛍光体膜の表面にスパッタリング処理を施すという表面処理の工程が設けられているためその表面処理の工程に手間・時間がかかり、更に当該表面処理だけでは真空紫外線の吸収により蛍光体の輝度が劣化する可能性があることが知られている。
【0009】
また、蛍光体粒子表面の賦活剤濃度を内部より小さくする濃度分布規定により、真空紫外線あるいはイオン衝撃による劣化耐性を改善する技術が特許文献2に開示されているが、共賦活剤の効果については開示例は無い。
【特許文献1】特開2001−303036号公報
【特許文献2】特開2004−91622号公報
【非特許文献1】工業調査会発行、「電子材料誌」1997年12月号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、上記のような蛍光体の輝度、残光に関する問題、及び真空紫外線照射時のプラズマ等による劣化に関する問題に鑑みて、本発明の目的は、従来の蛍光体に比べて、高輝度、短残光、かつ真空紫外線劣化耐性など優れた性能特性をもつ蛍光体を提供することであり、又、それを用いたプラズマディスプレイパネルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の上記目的は、以下の構成によって達成された。
【0012】
(1)
真空紫外線により励起されて可視光を放出する蛍光体であって、当該蛍光体の母体材料が(YxGd1-x)BO3(0.40≦x≦0.90)であり、賦活剤がEu(ユーロピウム)であり、及び共賦活剤がV(バナジウム)又はP(リン)であり、かつ当該共賦活剤をEuに対し1%〜15%含有することを特徴とする蛍光体。
【0013】
(2)
蛍光体における前記賦活剤及び共賦活剤の含有濃度が当該蛍光体の内部と表面で相違し、内部より表面における濃度が小さいことを特徴とする前記(1)に記載の蛍光体。
【0014】
(3)
真空紫外線により励起されて発光する蛍光体層を有するプラズマディスプレイパネルにおいて、該蛍光体層が、蛍光体として、前記(1)又は(2)に記載の蛍光体を含有することを特徴とするプラズマディスプレイパネル。
【発明の効果】
【0015】
本発明の構成により、従来の蛍光体に比べて、高輝度、短残光、且つ、真空紫外線劣化耐性など優れた性能特性をもつ蛍光体を提供すること及びそれを用いたプラズマディスプレイパネルを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明及び構成要素について説明する。
【0017】
(蛍光体)
本発明の蛍光体は、赤色蛍光体の母体材料が(YxGd1-x)BO3(0.40≦x≦0.90)であり、賦活剤がEuであり、及び共賦活剤がV(バナジウム)又はP(リン)であり、かつ当該共賦活剤をEuに対し1%〜15%含有することを特徴とする。また、蛍光体における前記賦活剤及び共賦活剤の含有濃度が当該蛍光体の内部と表面で相違し、内部より表面における濃度が小さいことを特徴とする。
【0018】
本発明に係る共賦活剤または共賦活剤と賦活剤を内部濃度より表面濃度を小さくする方法としては、後述する液相法において、前駆体コア粒子を形成した後に更に共賦活剤または共賦活剤・賦活剤の濃度をコア粒子より減少させた成分溶液を供給することでシエルを形成した前駆体粒子を形成し、これを焼成することで本発明の蛍光体粒子を得ることができる。さらに、大きく濃度差をつける場合などにおいては、濃度分布を制御するために焼成条件を変えて複数回に分けて焼成し、少なくとも最後の焼成時には、焼成温度を下げ、時間を短くすることで表面濃度を下げるなどの工夫により濃度分布を制御できる。
【0019】
本発明の蛍光体は固相法、気相法、もしくは液相法で前駆体を得、焼成により蛍光体を得ることができるが、本発明の効果を高く実現するものとして液相法が好ましい。液相法を用いることでより高い精度で賦活剤、共賦活剤がの濃度コントロールできることに加え、母体成分を含めた均一製が非常に高いことによるものである。また液相法としては特に限定はないが蛍光体の種類・用途に応じて共沈法を用いでもよくゾルーゲル法、反応晶析法を用いてもよい。好ましくは共沈法、反応晶析法である
なお、本発明に係るプラズマディスプレイパネルには、上記の本発明の赤色蛍光体の他に、下記の蛍光体を併用することが出来る。
【0020】
赤色蛍光体としては、例えば、(Y1-xEux)23(0.025≦x≦0.060),(Y1-xEux)BO3(0.025≦x≦0.060),Y2SiO4Eu,(Y,Gd,Eu)BO3,Y(P,V)O4:Eu,GdBO3:Eu,ScBO3:Eu、一般式Lm23:R(Lmは、Gd,Y,La,Luのうち少なくとも1種であり、RはEu,Tb,Pr,Dy,Tm,Ce,Ybのうち少なくとも1種である。)で表される群から選ばれた少なくとも1種を挙げることができる。
【0021】
緑色蛍光体としては、例えば、Zn2SiO4:0.7〜7Mn,BaMgAl1219:Mn,BaAl1219:Mn,YBO3:Tb,(Ba,Sr,Mg)O・5Al23:Mn,BaMgAl1626:Eu,Mn、一般式(1−a)(bMO・6Al23)・a(MMg1-cMncAl1017)(Mは、Ba,Srのうち少なくとも1種であり、a,b,cは、それぞれ0.05≦a≦1.0,0.64≦b≦0.86,0.05≦c≦1.0,0.05≦a・c≦0.3の条件を満たす数)のMn賦活アルミン酸塩、一般式(MxCeyTbz)PO4(Mは、La,Y,Cdのうち少なくとも1種であり、x,y,zはそれぞれ0.50≦x≦0.90,0≦y≦0.3,0.04≦z≦0.16)の群から選ばれた少なくとも1種を挙げることができる。
【0022】
青色蛍光体としては、例えば、BaMgAl1423:Eu,Ba1−xEuxAl1017(0.045≦x≦0.25),Ba1-x-ySrxEuyMgAl1017(0.1≦x+y≦0.6),3(Ba,Mg)O・8Al23:Eu,CaWO4:Pb,Y2SiO5:Ce,YPVO4の群から選ばれた少なくとも1種を挙げることができる。
【0023】
また、mM1O・nM2O・(M32-2XPxAlx)O4(M1は、Ca,Sr,Baのうち少なくとも1種であり、M2は、Mg,Znのうち少なくとも1種であり、M3は、Si,Geのうち少なくとも1種であり、m,n,xはそれぞれ、0.5≦m≦3.5,0.5≦n≦2.5,0<x≦0.2)で表される化合物と、賦活剤として挙げられるCe,Pr,Nd,Pm,Sm,Eu,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Mnからなる群から選ばれた少なくとも1種とを挙げることができる。
【0024】
(蛍光体の一般的製造方法)
次に、蛍光体の一般的製造方法について説明する。
【0025】
蛍光体は、(A)無機蛍光体の構成金属元素を含む溶液を混合して無機蛍光体の前駆体を形成する前駆体形成工程と、(B)前駆体形成工程の後に当該前駆体形成工程により得られた前駆体を乾燥する乾燥工程と、(C)乾燥工程の後に乾燥済みの前駆体を焼成して無機蛍光体を形成する無機蛍光体形成工程と、(D)無機蛍光体形成工程の後に当該無機蛍光体形成工程で得られた無機蛍光体を溶剤(バインダ樹脂を含む。)中に分散させて蛍光体ペーストを調製する蛍光体ペースト調製工程と、を含む製造方法により得られる。
【0026】
以下に、蛍光体の製造方法を構成する各工程について説明する。
【0027】
〔A:前駆体形成工程〕
前駆体形成工程では、液相法(「液相合成法」ともいう。)により前駆体を形成させる。ここで、液相法とは、液体の存在下又は液中で蛍光体前駆体を作製することにより蛍光体を得る方法である。液相法では、蛍光体原料を液相中で反応させるので、反応は蛍光体を構成する元素イオン間で行われ、化学量論的に高純度な蛍光体が得やすく、表面にクラックの少ない均一な組成からなる結晶性の高い蛍光体粒子を得ることができる。そのため、焼成時の酸化耐性が向上し、結合剤燃焼時の気泡の混入、ピンホール・クラックの発生等、外圧の影響を抑制することができる。また、固相間反応と粉砕工程とを繰り返し行いながら蛍光体を製造する固相法と比して、粉砕工程を行わずとも微少な粒径の粒子を得ることができ、粉砕時にかかる応力による結晶中の格子欠陥を防ぎ、発光効率の低下を防止することができる。
【0028】
本発明において、液相法として特に限定はないが、蛍光体の種類・用途に応じて従来公知の共沈法やゾルゲル法、反応晶析法を用いてもよく、好ましくは共沈法や反応晶析法を用いることであるが、特に好ましくは反応晶析法を用いることである。
【0029】
共沈法とは、共沈現象を利用して、蛍光体の原料となる元素を含む溶液を混合し、さらに沈殿剤を添加することによって、蛍光体前駆体の母核の周囲に賦活剤となる金属元素等を析出させた状態で、蛍光体前駆体を合成する方法をいう。ここで、共沈現象とは、溶液から沈殿を生じさせたとき、その状況では十分な溶解度があり、沈殿しないはずのイオンが沈殿に伴われる現象をいう。蛍光体の製造においては、蛍光体前駆体の母核の周囲に、賦活剤を構成する金属元素などが析出する現象を指している。本発明における共沈法では、2種類以上の蛍光体原料溶液を 溶媒中に液中添加することが好ましく、より微小で粒度分布の狭い蛍光体を製造することができる。このとき、蛍光体の種類や所望の性能を得るために添加速度や添加位置、攪拌条件、pHなどの諸物性値を調整することが好ましい。
【0030】
反応晶析法とは、晶析現象を利用して、液相中又は気相中で蛍光体の原料となる元素を含む原料溶液又は原料ガスを混合することにより蛍光体前駆体を作製する方法であるが、本発明における反応晶析法は液相中での反応であり、液相中での原料溶液の反応である。晶析現象とは、冷却、蒸発、pH調節、濃縮等による物理的または化学的な環境の変化、或は化学反応によって混合系の状態に変化を生じる場合等に液相中から固相が析出する現象を指している。したがって、本発明における反応晶析法による蛍光体前駆体の製造方法は、前述したような晶析現象発生の誘因となりえる物理的、化学的操作による製造方法を意味するものである。
【0031】
なお、反応晶析法を適用する際の溶媒は反応原料が溶解すれば何を用いてもよいが、過飽和度制御のしやすさの観点から水が好ましい。複数の反応原料を用いる場合は、原料の添加順序は同時でも異なっていてもよく、活性によって適切な順序を適宜組み立てることができる。
【0032】
また、反応晶析法を用いて前駆体を作製する際のいずれの工程においても、反応原料の添加速度、攪拌速度、反応中の温度、pH等の諸物性値を制御するのが好ましく、反応中に超音波を照射してもよい。また、粒径制御のために保護コロイドや界面活性剤等を添加してもよい。さらに、原料を添加し終えたら、必要に応じて溶液を濃縮又は熟成のうちのどちらか一方、あるいは両方行うことも好ましい態様の一つである。
【0033】
なお、保護コロイドを用いて蛍光体前駆体形成を行う場合、保護コロイドは、原料溶液の一つ以上に添加させることができる。また、原料溶液の全てに添加させてもよい。保護コロイドの存在下で、前駆体を形成することにより、前駆体同士が凝集するのを防ぎ、前駆体を十分小さくすることができる。それにより、焼成後の蛍光体をより微粒子で、粒径分布が狭く、発光特性を良好にするなど、蛍光体の種々の特性を向上することができる。なお、保護コロイドの存在下で反応を行う場合には、前駆体の粒径分布の制御や副塩等の不純物排除に十分配慮することが必要である。
【0034】
そのような保護コロイドとしては、天然、人工を問わず各種高分子化合物を使用することができるが、特にタンパク質が好ましい。その際、保護コロイドの平均分子量は10,000以上が好ましく、10,000以上300,000以下がより好ましく、特に10,000以上30,000以下が好ましい。
【0035】
タンパク質としては、例えば、ゼラチン、水溶性タンパク質、水溶性糖タンパク質が上げられる。具体的には、アルブミン、卵白アルブミン、カゼイン、大豆タンパク、合成タンパク質、遺伝子工学的に合成されたタンパク質等がある。中でも、ゼラチンを特に好ましく使用できる。
【0036】
ゼラチンとしては、例えば、石灰処理ゼラチン、酸処理ゼラチンを挙げることができ、これらを併用してもよい。更に、これらのゼラチンの加水分解物、これらのゼラチンの酵素分解物を用いてもよい。
【0037】
また、前記保護コロイドは、単一の組成である必要はなく、各種バインダーを混合してもよい。具体的には、例えば、上記ゼラチンと他の高分子とのグラフトポリマーを用いることができる。
【0038】
上記の共沈法、反応晶析法、ゾルゲル法いずれの液相合成法を利用する場合であっても、前駆体形成工程において、各液を均一に混合することが望ましい。各液の混合方法は特に限定されるものではないが、例えば、攪拌による混合方法は、混合状態等を制御しやすく、低コストであるので好ましい。また、混合方法としてはバッチ式、連続式、外部循環混合等どのような方法でもよい。
【0039】
各液を均一に混合しながら前駆体を形成することにより、反応時のケイ酸亜鉛系蛍光体を構成する各イオンの分散が極めて良好になり、組成の均一な蛍光体を得ることができる。
【0040】
このようにして得られた蛍光体前駆体は、本発明の蛍光体の中間生成物であり、この蛍光体前駆体を後述するような所定の温度に従って焼成することにより蛍光体が得られる。
【0041】
なお、前駆体形成工程終了後、脱塩工程を行い、前駆体から副塩などの不純物を取り除くことが好ましい。脱塩工程としては、各種膜分離法、凝集沈降法、電気透析法、イオン交換樹脂を用いた方法、ヌーデル水洗法などを適用することができる。
【0042】
脱塩工程終了後、濾過、蒸発乾固、遠心分離等の方法で固液分離して前駆体を回収する。
【0043】
〔B:乾燥工程〕
その後、回収された前駆体について乾燥工程を行うと好ましい。
【0044】
乾燥温度としては20〜300℃の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは90〜200℃である。乾燥する方法としては、エバポレーションや、顆粒化しながら乾燥させるスプレードライを挙げることができる。
【0045】
〔C:蛍光体形成工程〕
蛍光体形成工程では、上記蛍光体形成工程により得た蛍光体前駆体を焼成処理することにより蛍光体を形成させる。
【0046】
蛍光体前駆体を焼成する際には、焼成温度は1000〜1700℃の範囲で行い、焼成時間は蛍光体の種類に合わせ、最も性能が高くなるように適宜調整する。また、焼成雰囲気は必要に応じて、不活性雰囲気(N2ガス雰囲気、不活性ガス雰囲気)、大気雰囲気(若しくは酸素雰囲気)、還元雰囲気のいずれか一つあるいはこれらを組み合わせたものなど用いることができ、適宜選択することができる。例えば、前駆体を所定のガス雰囲気中、前記の温度の間で0.5〜40時間で1回焼成するという方法は好ましい態様である。また、焼成装置については特に限定がなく、現在知られているあらゆる装置を使用することができる。例えば箱型炉、坩堝炉、円柱管型、ボート型、ロータリーキルン等が好ましく用いられる。
【0047】
また、焼成時に必要に応じて焼結防止剤を添加してもよい。焼結防止剤を添加する場合は、蛍光体前駆体形成時にスラリーとして添加することができる。また、粉状のものを乾燥済前駆体と混合して焼成してもよい。
【0048】
焼結防止剤は特に限定されるものではなく、蛍光体の種類、焼成条件によって適宜選択される。例えば、蛍光体の焼成温度域によって800℃以下での焼成にはTiO2等の金属酸化物が、1000℃以下での焼成にはSiO2が、1700℃以下での焼成にはAl23が、それぞれ好ましく使用される。
【0049】
このように、液相法を経て作製した蛍光体粒子、特に反応晶析法を用いて作製した蛍光体粒子では、晶析中に保護コロイドや吸着物質を注意深く共存させることで、針状、円柱状、棒状、6角円柱状及び卵型状のような異方性の高い長径短径比が1.5より大きい粒子を形成することができ、蛍光体の結晶構造に応じて平滑な結晶面に囲まれたさまざまな多面体粒子を形成することができる。多面体粒子には、6面体・8面体・14面体等さまざま存在するが、その結晶構造は反応晶析法の晶析条件・吸着物質等で決定される。これは、多面体粒子が公知の球状の蛍光体とは、全く異なる平滑な結晶面で成り立っていることからも理解される。
【0050】
また、この場合において、多面体粒子だけでなく、平板状粒子を形成することも可能である。平板状の形状には、円盤、楕円、多角形、多角形の一部又は全部の角が欠けているもの、多角形の一部又は全ての角に微粒子がエピクキシャル成長したもの等さまざまな形状が含まれる。この中でも、4角形平板・6角形平板からなる蛍光体は高輝度であり、好ましく用いられる。
【0051】
また、本発明の蛍光体粒子は、同一の形状をもって蛍光体を構成しているため、蛍光体粒子及びその粒子からなる蛍光体は高輝度であり、特に蛍光体層を形成したときに従来の蛍光体に比較して高い発光輝度を示すことができる。
【0052】
前記のような蛍光体粒子は蛍光体中に50%以上含有される場合に優れた性能を発揮し、より好ましくは70%以上含有される場合であり、更に好ましくは80%以上含有される場合である。また、粒子径については最短径が、0.5μm以下であることが好ましく、粒径分布は平均粒径の50%以内に80%以上の粒子が存在することが好ましい。なお、平均粒径とは、例えば球状、棒状、あるいは平板状の粒子の場合には粒子の体積と同等な球を考えたときの直径を示すものであるが、このような粒径分布を示す蛍光体粒子では、蛍光体層を形成したときの輝度を著しく上昇させることができる。
【0053】
これは、板状の蛍光体粒子では板径と板厚の比が大きい、いわゆる扁平な粒子ではプラズマディスプレイを形成させた場合に、蛍光膜として隔壁や底部への被覆率が高くなるため、蛍光体層の紫外線吸収量を増大させることができるからであるが、これは、波長が143nm、173nmの紫外線は、CRTに用いられている電子線とは異なり、放電空間のごく表面にある蛍光体の最表面から0.1μm以下の層にしか侵入することができないため、蛍光体層の充填率や被覆率を高めれば、紫外線がより多く表面から吸収することができるからである。また、蛍光体自身が可視光の反射膜として作用しており、蛍光体の充填率を高めることにより反射強度の向上も同時に計ることができる。この効果は、全色の蛍光体層に板状の蛍光体粒子を用いることにより顕著に得ることが可能である。
【0054】
なお、この場合において、板厚が薄すぎたり、板径が小さすぎると、蛍光体粒子が凝集するため、かえって輝度を低下させてしまう。実際には板厚0.1〜0.3μm、板径0.3〜0.6μmに設定するのが好ましい。
【0055】
このようにして焼成工程を終了させた後、得られた焼成物に水洗、乾燥、篩い分け等の処理を施してもよい。
【0056】
〔D:蛍光体ペースト調製工程〕
蛍光体ペースト調製工程では、焼成工程により得られた焼成物である蛍光体を分散処理することにより蛍光体ペーストを調製する。
【0057】
蛍光体ペーストの調製は、蛍光体ペーストを構成する必須構成成分である蛍光体を結合樹脂が含有されている溶剤に下記の混練機を用いて混練させることにより行われる。この際、必要に応じて添加剤を添加させてもよい。その結果、蛍光体が結合樹脂及び溶剤に分散された蛍光体ペーストを得ることができるとともに、蛍光体ペーストは成型加工に好適な可塑性を有し、又は塗布に適した流動性、例えば5〜5000ポイズを有するペースト状の組成物に調整させることができる。
【0058】
混練機としては、例えば、例えば、図1に示すようなダブルジェット式反応装置1や、高速攪拌型のインペラー型の分散機、コロイドミル、ローラーミル、ボールミル、振動ボールミル、アトライタミル、遊星ボールミル、サンドミル等の媒体メディアを装置内で運動させてその衝突及び剪断力の両方により微粒化するもの、カッターミル、ハンマーミル、ジェットミル等の乾式型の分散機、超音波分散機、高圧ホモジナイザー等が挙げられる。なお、図1に示すダブルジェット式反応装置1では、2種類以上の液体を同時に等速添加し、分散することができるものであり、液体を混合させる反応容器2と、反応容器2の内部を攪拌する攪拌翼3とが備えられており、この反応容器2の底部には、反応容器2の内部と連通可能な2本のパイプ4,5が取設されている。各パイプ4,5には、ノズル6,7が設けられているとともに、各パイプ4,5の他端は図示しないタンクに接続されており、各タンクに、図示しないポンプが接続されて反応容器2の内部に液体の同時等速流入を可能にさせている。
【0059】
なお、前述したような方法で調製された可塑性を有する本発明の蛍光体ペーストは、カレンダーロールや押出成形機等の各種の成形装置によって所定の形状、例えばシート状、フィルム状等に成形することができる。
【0060】
(プラズマディスプレイパネル)
次に、図2を参照しながら本発明に係るプラズマディスプレイパネルについて説明する。なお、プラズマディスプレイパネルには、電極の構造及び動作モードから大別すると、直流電圧を印加する「DC型」と交流電圧を印加する「AC型」とがあるが、図2にはAC型プラズマディスプレイパネルの概略構成の一例を示した。
【0061】
プラズマディスプレイパネル(PDP)は、表示側に配置される前面板10FPと前面板10FPに対向する背面板20BPとを備えている。前面板10FPは、可視光を透過する性質を具備し、その基板上に各種の情報表示を行うものである。当該前面板10FPはプラズマディスプレイパネルの表示画面として機能するものであり、ソーダライムガラス(青板ガラス)等の可視光を透過する材料で構成されている。前面板10FPの厚さは1〜8mmの範囲であることが好ましく、2mmの範囲であることが更に好ましい。
【0062】
前面板10FPには表示電極11、誘電体層12、保護層13等が設けられている。
【0063】
表示電極11は前面板10FPの背面板20BPと対向する面に複数設けられており、各表示電極11は規則正しく配置されている。表示電極11は、幅広の帯状に形成された透明電極11aと、同じく帯状に形成されたバス電極11bとを備えており、透明電極11a上にバス電極11bが積層された構造を有している。バス電極11bはその幅が透明電極11aよりも狭く形成されている。表示電極11については、2つの表示電極11,11で組が構成されており、各表示電極11は所定の放電ギャップがあけられた状態で対向配置されている。
【0064】
透明電極11aとしてはネサ膜等の透明電極を使用することができ、そのシート抵抗が100Ω以下であることが好ましい。透明電極11aは10〜200μmの範囲の幅を有しているのが好ましい。
【0065】
バス電極11bは抵抗を下げるためのものであり、Cr/Cu/Crのスパッタリング等により形成されている。バス電極11bは5〜50μmの範囲の幅を有しているのが好ましい。
【0066】
誘電体層12は前面板10FPの表示電極11が配された表面全体を覆っている。誘電体層12は低融点ガラス等の誘電物質から形成されている。誘電体層12は20〜30μmの範囲の厚さを有しているのが好ましい。誘電体層12の表面は保護層13により全体的に覆われている。保護層13としてはMgO膜を使用することができる。保護層13は0.5〜50μmの範囲の厚さを有しているのが好ましい。
【0067】
背面板20BPにはアドレス電極21、誘電体層22、隔壁30、蛍光体膜35R,35G,35B等が設けられている。背面板20BPは、前面板10FPと同様に、ソーダライムガラス等で構成されている。背面板20BPの厚さは1〜8mmの範囲であることが好ましく、2mm程度であることが更に好ましい。
【0068】
アドレス電極21は、背面板20BP上で前面板10FPと対向する面上に複数設けられている。アドレス電極21も、透明電極11aやバス電極11bと同様に帯状に形成されている。アドレス電極21は、表示電極11と直交した状態で複数設けられており、各アドレス電極21が互いに平行に等間隔をあけて配置されている。
【0069】
アドレス電極21はAg厚膜電極等の金属電極で構成されている。アドレス電極21の幅は100〜200μmの範囲であることが好ましい。
【0070】
誘電体層22は、背面板20BPのアドレス電極21が配された表面全体を覆っている。誘電体層22は低融点ガラス等の誘電物質から形成されている。誘電体層22は厚さが20〜30μmの範囲であることが好ましい。
【0071】
誘電体層22上のアドレス電極21の両側方には、長尺に形成された隔壁30が配されている。隔壁30は背面板20BP側から前面板10FP側に立設されており、表示電極11と直交している。隔壁30は低融点ガラス等の誘電物質から形成されている。隔壁30の幅は10〜500μmの範囲であることが好ましく、100μm程度であることがより好ましい。隔壁30の高さ(厚み)は、通常、10〜100μmの範囲であり、50μm程度であることが好ましい。
【0072】
上記隔壁30は、背面板20BPと前面板10FPとの間をストライプ状に区画した複数の微少放電空間31(以下「放電セル31」という。)を形成しており、各放電セル31の内側には、Ar、Xe、He、Ne、Xe−Ne等の希ガスを主体とする放電ガスが封入されている。
【0073】
放電セル31には、赤(R)、緑(G)、青(B)のいずれかに発光する蛍光体から構成された蛍光体層35R、35G、35Bのいずれかが規則正しい順序で設けられている。1つの放電セル31内には、平面視において表示電極11とアドレス電極21が交差する点が多数存在するようになっており、これら1つ1つの交点を最小の発光単位として、左右方向に連続するR、G、Bの3つの発光単位により1画素を構成している。各蛍光体層35R、35G、35Bの厚さは特に限定されないが、5〜50μmの範囲であることが好ましい。
【0074】
蛍光体層35G、35R、35Bは本発明に係る上記蛍光体ペーストから構成されており、その形成に当たっては、当該蛍光体ペーストを、放電セル31の側面と底面とに塗布するか又は放電セル31の内部に充填してその後乾燥及び焼成することにより、放電セル31の側面と底面とに蛍光体層35G、35R、,35Bを形成することができる。
【0075】
なお、蛍光体ペーストを放電セル31(31R、31G、31B)に塗布又は充填する際には、スクリーン印刷法、フォトリソグラフィー法、フォトレジストフィルム法、インクジェット法等種々の方法を適用することができる。例えばスクリーン印刷法によって蛍光体ペーストをガラス基板の表面に所定のパターンに印刷し、形成された塗布膜を乾燥させることにより、本発明の蛍光体ペーストによるパターン層を形成することができる。このスクリーン印刷法は、蛍光体やガラスフリットが無機物質として含有されている組成物において特に有用な塗布法である。また、印刷形成された塗布膜の乾燥条件としては、例えば、加熱温度を60〜100℃とし、加熱時間を5〜30分とするのがよい。また、乾燥後におけるパターン層の厚さは例えば5〜200μmとされる。
【0076】
また、インクジェット法は、隔壁30のピッチが狭く、放電セル31が微細に形成されている場合であっても、隔壁30間に低コストで容易に精度良く均一に蛍光体ペーストを塗布又は充填できるので、特に好ましい。
【0077】
このようにして、所定の形状に成形された蛍光体ペースト又は当該蛍光体ペーストにより形成されたパターン層は、焼成されることによりバインダ樹脂、残留溶剤、有機系添加物等の有機物質が熱分解されて除去される。
【0078】
なお、バインダ樹脂として含有されている乳酸系(共)重合体は400℃〜600℃の温度で完全に熱分解されるため、焼成温度が比較的低い温度であっても得られる蛍光体層35R、35G、35B中にバインダ樹脂に由来する有機物質が残留することがない。また、焼成時の発熱量を少なくさせることができ、蛍光体膜35R、35G、35Bにバインダ樹脂の発熱による欠陥を生じさせることもない。
【0079】
そして上記構成を具備するプラズマディスプレイパネル(PDP)においては、表示の際に、アドレス電極21と、1組の表示電極11、11のうちいずれか一方の表示電極11との間で、選択的にトリガー放電を行わせることにより、表示を行う放電セル31が選択される。その後、選択された放電セル31内において、1組の表示電極11、11間でサステイン放電を行わせることにより、放電ガスに起因する紫外線が生じ、蛍光体膜35R、35G、35Bから可視光が発生するようになっている。
【実施例】
【0080】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが本発明はこれらに限定されない。
【0081】
実施例1
《蛍光体の作製》
<本発明蛍光体1〜6(液相法)と比較蛍光体7、8(液相法)の作製>
水1000mlをA液とした。水500mlにイットリウムのイオン濃度が0.4659mol/l、ガドリニウムのオン濃度が0.2716mol/l、賦活剤ユーロピウムのイオン濃度が0.0388mol/l、共賦活剤(表1に示す種類)を濃度が表1に示す割合となるように硝酸イットリウム六水和物、硝酸ガドリニウム、硝酸ユーロピウム六水和物、表1化合物を溶解しB液とした。水500mlにホウ素のイオン濃度が0.7763mol/lとなるようにホウ酸を溶解しC液とした。
【0082】
図1に示す蛍光体の前駆体の製造装置1であるダブルジェット反応晶析装置(反応容器)に溶液A(図中2)を入れ温度を60℃に保ち、攪拌翼3を用いて攪拌を行った。その状態で同じく40℃に保った溶液B(図中4)、溶液C(図中5)を溶液Aの入った反応容器下部ノズル6及び6′より100ml/minの速度で等速添加を行った。添加後10分間熟成を行い、前駆体Aを得た。
【0083】
その後前駆体を限外濾過装置(限外濾過膜:日東電工製NTU−3150)により電気伝導度が30ms/cmになるまで洗浄した。洗浄後の前駆体Aを水1000mlに添加し、これを図1の反応容器に入れ、60℃に保ちながら攪拌翼を用いて均一に分散するまで攪拌を行い分散液A’とした。
【0084】
その状態で同じく40℃に保たれた、水500mlにイットリウムのイオン濃度、ガドリニウムのイオン濃度、ユーロピウムのイオン濃度、共賦活剤のイオン濃度が表1記載濃度に成る様に硝酸イットリウム、硝酸ガドリニウム、表1記載共賦活剤を溶解したB‘液と水500mlにホウ素のイオン濃度が表1記載濃度になるようにホウ酸を溶解したC’液を分散液A‘の入った反応容器下部の添加ノズルより50ml/分の速度で等速添加を行った。添加後10分間熟成を行い前駆体B’を得た。その後前駆体B‘を濾過乾燥して、乾燥前駆体B’を得た。
【0085】
これを1400℃で酸化雰囲気下(大気中)で2時間焼成し本発明蛍光体1〜6、比較蛍光体7,8を得た。
【0086】
<本発明の蛍光体9〜12(固相法)、比較蛍光体13(固相法)の作製>
原料として酸化イットリウム(Y23)と酸化ガドリニウム(Gd23)と酸化ユーロピウム(Eu23)とホウ酸(H3BO3)、表1に示す共賦活剤化合物をモル比で0.6:0.3:0.1:1.0:表2記載となるように配合し、適量のフラックスと共にボールミルで混合し、1,400℃、酸化雰囲気条件下で3時間焼成を行った。合成された蛍光体にさらに母体材料の原料である酸化イットリウム、酸化ガドリニウム、ホウ酸を更に混合した後、表2記載量比の酸化ユーロピウムと表2共賦活剤を表2記載比率で添加しボールミルで混合後、1300℃で1.5時間大気中で焼成を行い本発明蛍光体9〜12、比較蛍光体13を得た。
【0087】
<比較蛍光体14(従来固相法)の作製>
原料として酸化イットリウム(Y23)と酸化ガドリニウム(Gd23)と酸化ユーロピウム(Eu23)とホウ酸(H3BO3)、をモル比で0.6:0.3:0.1:1.0となるように配合し、適量のフラックスと共にボールミルで混合し、1,400℃、酸化雰囲気条件下で2時間焼成し比較蛍光体14を得た。
《蛍光体の評価》
<蛍光体中の賦活剤及び共賦活剤の濃度分布の測定>
日東電工(株)製X線光電子分光分析装置(XPS)を用いてArイオンでエッチングを行いながら図3,4に示す深さまでの賦活剤(ユーロピウム)及び共賦活剤の分析を行い、原子比(Atomic%)で表した。結果を図3(ユーロピウム)、図4(共賦活剤)に示す。横軸は表面からの深さ(nm)、縦軸は賦活剤(ユーロピウム)の原子比、共賦活剤(V又はP)の原子比を示す。表1には粒子全体平均の共賦活剤/Eu比と表面から10nmの共賦活剤/Eu比を示した。
【0088】
<輝度評価>
上記で得た蛍光体(比率35%)とエチルセルロース樹脂および溶剤からなるペーストを作製した。ペーストには塗布できるように溶剤により粘度を調整した。
【0089】
このペーストを用いてスクリーン印刷方によりPDP用ガラス基板上に厚膜印刷し、500℃で30分間大気中で焼成(ベーク)して蛍光体層を得た。
【0090】
この蛍光体層の真空紫外線蛍光評価を下記に行い、蛍光体7(比較1)の輝度を100%としたときの相対輝度を表1、2に表した。
【0091】
輝度測定は光源として146nmのエキシマランプ(ウシオ電機)を使用し、真空チャンバー内にサンプルをセットし、真空度1.33×10Paにて一定距離から照射し励起発光を輝度計で測定した。
【0092】
<真空紫外線劣化測定>
ペーストベークして得た蛍光体膜に146nmの真空紫外線(エキシマランプ:ウシオ電機)を200時間照射した後の輝度を測定し結果を表1、2に示した。維持率は下記の式から求めた。
【0093】
輝度維持率(%)=(200時間後の輝度)/(ベーク後の輝度)×100
<残光評価>
蛍光体の初期粉体状態の残光時間を蛍光寿命測定器(Photon technology international社製)を用いて測定した。残光時間は遮断した後の発光強度が、遮断直前の発光強度の1/10になるまでの時間とし、蛍光体7(比較1)を100とした時の相対残光時間を表1、2に示した。
【0094】
【表1】

【0095】
【表2】

【0096】
表1から分かるように本発明に係る共賦活剤を添加することにより残光時間が短縮することが判明した。しかも、輝度、真空紫外腺劣化耐性についても優れている。更には、図2、図3とから分かるように賦活剤、共賦活剤濃度が蛍光体内部に向かって増加する本発明請求項2に係る発明の態様では、残光時間が大幅に改善されることに加えて輝度、真空紫外線による劣化が改善することが判明した。また、表1、表2の比較から分かるように本発明に望ましい液相法で作製された蛍光体においては本発明の効果に優れていることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明で使用したダブルジェット反応装置の概略構成図
【図2】本発明に係るプラズマディスプレイパネル一例を示した斜視図
【図3】蛍光体中の賦活剤(Eu)の濃度分布の測定結果
【図4】蛍光体中の共賦活剤の濃度分布の測定結果
【符号の説明】
【0098】
1R ダブルジェット式反応装置
PDP プラズマディスプレイパネル
10FP 前面板
20BP 背面板
30 隔壁
31(31R,31B,35G) 放電セル
35(35R,35B,35G) 蛍光体膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空紫外線により励起されて可視光を放出する蛍光体であって、当該蛍光体の母体材料が(YxGd1-x)BO3(0.40≦x≦0.90)であり、賦活剤がEu(ユーロピウム)であり、及び共賦活剤がV(バナジウム)又はP(リン)であり、かつ当該共賦活剤をEuに対し1%〜15%含有することを特徴とする蛍光体。
【請求項2】
蛍光体における前記賦活剤及び共賦活剤の含有濃度が当該蛍光体の内部と表面で相違し、内部より表面における濃度が小さいことを特徴とする請求項1に記載の蛍光体。
【請求項3】
真空紫外線により励起されて発光する蛍光体層を有するプラズマディスプレイパネルにおいて、該蛍光体層が、蛍光体として、請求項1又は2に記載の蛍光体を含有することを特徴とするプラズマディスプレイパネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−45961(P2007−45961A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−232914(P2005−232914)
【出願日】平成17年8月11日(2005.8.11)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】