蛍光体層の温度測定方法、光源装置及びプロジェクター
【課題】光照射位置での蛍光体層の温度を実測しなくても、この温度を高い精度で推定することができる蛍光体層の温度測定方法を提供することを目的とする。
【解決手段】励起光で照射された蛍光体層32の被照射領域を、該励起光が照射される該蛍光体層32の光照射位置Sに対して相対的に移動させ、該光照射位置Sとは異なる測定位置A1で、前記被照射領域の温度を検出し、検出された前記被照射領域の温度に基づいて、前記光照射位置Sでの蛍光体層32の温度を推定する。
【解決手段】励起光で照射された蛍光体層32の被照射領域を、該励起光が照射される該蛍光体層32の光照射位置Sに対して相対的に移動させ、該光照射位置Sとは異なる測定位置A1で、前記被照射領域の温度を検出し、検出された前記被照射領域の温度に基づいて、前記光照射位置Sでの蛍光体層32の温度を推定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光体層の温度測定方法、光源装置及びプロジェクターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
プロジェクターに用いるための光源装置としては、従来、高圧水銀ランプが主流であったが、近年、励起光(青色光)を射出する固体発光素子(励起光源)と、該励起光を吸収して所定の波長帯域光に変換する蛍光体層を組み合わせた光源装置が用いられるようになっている(例えば、特許文献1参照。)。この光源装置は、高圧水銀ランプに比べて長寿命であり、また、水銀を含まないため、環境への影響が少ないというメリットがある。
【0003】
ところで、このように励起光源と蛍光体層とを組み合わせた光源装置では、励起光の射出光を集光して蛍光体層に照射する。ここで、蛍光体層に照射された励起光の一部は蛍光に変換されて射出されるが、蛍光に変換されなかった励起光のエネルギーの一部は熱エネルギーとなって蛍光体層を発熱させる。このため、励起光の集光スポットに対応する領域(光照射位置)においては、蛍光体層が非常に高温になり、これによって蛍光体層に含まれる有機バインダー(シリコーン等)が変質して蛍光体層が短寿命となったり、光照射位置の温度が異常上昇して装置が故障したりする等の問題が生じている。
【0004】
そこで、このような蛍光体層の温度上昇が抑えられるようにした光源装置として、回転駆動される回転基板上に蛍光体層を設け、蛍光体層の励起光が照射された被照射領域が光照射位置に対して相対的に移動するようにした光源装置が提案されている。このような光源装置では、光照射位置で蛍光体層が発熱しても、発熱した被照射領域が直ぐに光照射位置から外れ、次に光照射位置に戻るまでの間、周囲の空気によって冷却される。このため、一箇所に励起光が連続的に照射されるのに比べて、光照射位置での蛍光体層の温度上昇を抑えることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−327361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述のように回転基板上に蛍光体層を設けた光源装置は、回転による冷却効果によって、光照射位置での蛍光体層の温度上昇がある程度軽減されるものの、やはり依然として光照射位置での蛍光体層は高温になる。
【0007】
これに対して、この光照射位置での蛍光体層の温度が高い精度で測定できれば、その温度に基づいて励起光源の出射光量をコントロールすることによって、蛍光体層の劣化を低減できるということが期待される。あるいは、光照射位置での蛍光体層の温度の異常上昇時に励起光源からの光射出をシャットダウンすることによって、光源装置の故障を回避することができるものと期待される。
【0008】
しかし、光源装置では、蛍光体層の光照射位置の直上に光学ピックアップ光学系等が配置されるため、これら光学系が邪魔をして、放射温度計のような温度測定装置を光照射位置の直上に配置することは難しい。特に、蛍光の出射側と同じ側から励起光を入射させる反射型の回転蛍光板の場合には、その光照射位置の直上にピックアップ光学系の他、励起光を入射させるための光学部材も配置されるため、温度測定装置の配置スペースを確保するのは非常に困難である。
【0009】
このように、これまでは光照射位置での蛍光体層の温度を測定するのが困難であるために、光照射位置での蛍光体層の温度に基づいた励起光量の制御を行うことができず、蛍光体層の劣化や光源装置の故障を十分に防止することができなかったのが実情である。
【0010】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、光照射位置での蛍光体層の温度を実測しなくとも、この温度を高い精度で推定することができる蛍光体層の温度測定方法を提供することを目的とする。また、光照射位置での蛍光体層の推定温度に基づいて、該光照射位置での蛍光体層の温度が許容温度を超えないように制御することが可能な光源装置を提供することを目的とする。また、光源装置の交換頻度が少なくて済み、メンテナンスコストを抑えることができるプロジェクターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の蛍光体層の温度測定方法は、励起光で照射された蛍光体層の被照射領域を、該励起光が照射される該蛍光体層の光照射位置に対して相対的に移動させ、該光照射位置とは異なる第1の測定位置で、前記被照射領域の温度を検出する第1工程と、前記第1工程で検出された前記被照射領域の温度に基づいて、前記光照射位置での蛍光体層の温度を推定する第2工程と、を有することを特徴とする。
【0012】
励起光が照射された被照射領域の温度は、励起光が照射される位置(蛍光体層における励起光の光軸上の位置:光照射位置)での蛍光体層の温度を反映する。
本発明の蛍光体層の温度測定方法によれば、光照射位置とは異なる位置で被照射領域の温度を検出し、これに基づいて光照射位置での蛍光体層の温度を推定する。そのため、光照射位置での蛍光体層の温度を実測しなくとも、光照射位置での蛍光体層の温度を高い精度で把握することが可能となる。
【0013】
本発明においては、前記第1工程において、前記被照射領域の移動経路上であって、前記光照射位置と異なり、かつ前記測定位置とも異なる第2の測定位置において、前記蛍光体層の温度を検出し、前記第2工程において、前記第1の測定位置で検出された温度と前記第2の測定位置で検出された温度とに基づいて、前記光照射位置での蛍光体層の温度を推定することが好ましい。
【0014】
この構成によれば、光照射位置での蛍光体層の温度を実測しなくとも、光照射位置での蛍光体層の温度をより高い精度で推定することが可能となる。
【0015】
本発明においては、前記蛍光体層は、回転駆動される回転基板上に設けられ、前記被照射領域が前記回転基板の回転軸の回りに円を描くように移動することが好ましい。
【0016】
この構成によれば、光照射位置で蛍光体層が発熱しても、発熱した部分が直ぐに光照射位置から外れ、再び光照射位置に戻るまでの間、周囲の空気によって冷却される。そのため、一箇所に励起光が連続的に照射されるものに比べて、光照射位置での蛍光体層の温度上昇を抑えることができる。また、回転基板が回転する際に生じる風によって、蛍光体層を効率良く冷却することが可能となる。
【0017】
本発明においては、下記式を用いて、前記光照射位置での蛍光体層の温度を推定することが好ましい。
dx=d0e−ktx
d0:前記光照射位置での前記蛍光体層の温度
dx:前記光照射位置とは異なる測定位置での前記蛍光体層の温度
tx:前記励起光で照射された前記蛍光体層の被照射領域が、前記光照射位置から前記測定位置に到るまでの移動時間
k :減衰係数
e :自然対数の底
【0018】
この構成によれば、光照射位置での蛍光体層の温度を、さらに高い精度で推定することが可能となる。
【0019】
本発明の光源装置は、励起光を射出する励起光源と、前記励起光を受けて蛍光を放射するとともに、前記励起光が照射された被照射領域が、前記励起光が照射される光照射位置に対して相対的に移動可能な蛍光体層と、前記光照射位置とは異なる第1の測定位置に設けられた温度検出部と、前記温度検出部で検出された前記被照射領域の温度に基づいて前記励起光の強度を制御する制御部と、を有することを特徴とする。
【0020】
本発明の光源装置によれば、光照射位置とは異なる位置で被照射領域の温度を実測するため、温度測定装置を光照射位置の直上に配置する必要がない。このため、温度測定装置と、光照射位置の直上に配置された光学系(ピックアップ光学系等)とが互いに邪魔し合うことがなく、各部の配置スペースを容易に確保することが可能である。さらに、光照射位置とは異なる位置で測定した被照射領域の温度に基づいて励起光の強度が制御されるため、熱による蛍光体層の劣化が低減される。また、光照射位置の過熱による光源装置の故障が起こりにくい。
【0021】
本発明においては、前記温度検出部で検出された前記被照射領域の温度に基づいて、前記光照射位置での蛍光体層の推定温度を演算する演算部をさらに備え、前記制御部は、前記推定温度に基づいて前記励起光の強度を制御することが好ましい。
【0022】
この構成によれば、前記温度検出部及び前記演算部によって、光照射位置での蛍光体層の温度を高い精度で推定することができる。そのため、光照射位置での蛍光体層の温度が所望の温度範囲となるように、前記励起光の強度を精度良く制御することが可能となる。
【0023】
本発明においては、前記制御部は、予め記憶された設定温度と、前記推定温度とを比較し、前記推定温度が前記設定温度以上である場合に、前記励起光源への駆動電流の供給を遮断することが好ましい。
【0024】
この構成によれば、光照射位置での蛍光体層の推定温度が設定温度以上となったときに、励起光源への電流供給が遮断されるため、光照射位置での温度が設定温度を超えるのを確実に抑止することが可能である。
【0025】
本発明においては、前記制御部は、予め記憶された設定温度と、前記推定温度とを比較し、前記推定温度が前記設定温度以上である場合に、前記励起光源への駆動電流の供給量を低減することが好ましい。
【0026】
この構成によれば、励起光源への駆動電流の供給を連続して行いながら、光照射位置での蛍光体層の温度が設定温度を超えるのを確実に抑止することが可能である。したがって、この光源装置は、高い稼動率を得ることができる。
【0027】
本発明の光源装置は、励起光を射出する励起光源と、前記励起光を受けて蛍光を放射するとともに、前記励起光が照射された被照射領域が、前記励起光が照射される光照射位置に対して相対的に移動可能な蛍光体層と、前記光照射位置とは異なる第1の測定位置に設けられた温度検出部と、前記温度検出部で検出された前記被照射領域の温度に基づいて、前記被照射領域の前記光照射位置に対する移動速度を制御する制御部と、を有することを特徴とする
【0028】
本発明の光源装置によれば、光照射位置での蛍光体層の推定温度が設定温度以上となったときに、前記被照射領域の前記光照射位置に対する移動速度が上がり、蛍光体層周囲の風量が増加する。その結果、蛍光体層が効率良く冷却され、光照射位置での蛍光体層の温度が設定温度以上となるのを確実に抑止することができる。
【0029】
本発明においては、前記温度検出部で検出された前記被照射領域の温度に基づいて、前記光照射位置での蛍光体層の推定温度を演算する演算部をさらに備え、前記制御部は、前記推定温度に基づいて、前記被照射領域の前記光照射位置に対する移動速度を制御することが好ましい。
【0030】
この構成によれば、前記温度検出部及び前記演算部によって、光照射位置での蛍光体層の温度を高い精度で推定することができる。そのため、光照射位置での蛍光体層の温度が所望の温度範囲となるように、前記被照射領域の前記光照射位置に対する移動速度を精度良く制御することが可能となる。
【0031】
本発明においては、前記温度検出部として、放射温度計を用い、前記温度検出部を、前記被照射領域の移動経路の直上に配置することが好ましい。
【0032】
この構成によれば、温度測定装置を、光照射位置の直上に配置された光学系(ピックアップ光学系等)と接触させることなく配置することが可能となる。
【0033】
本発明のプロジェクターは、本発明の光源装置と、前記光源装置から射出された光を画像情報に応じて変調する光変調装置と、前記光変調装置からの変調光を投写画像として投写する投写光学系と、を備えることを特徴とする。
【0034】
このため、本発明のプロジェクターによれば、光源装置が長寿命で故障し難いため、光源装置の交換頻度が少なくて済み、メンテナンスに要するコストを抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】実施形態1のプロジェクターの光学系を示す模式図である。
【図2】実施形態1の光源装置が備える励起光源の正面図である。
【図3】実施形態1の光源装置が備える回転蛍光板の斜視図である。
【図4】実施形態1の光源装置が備える蛍光体層の発光強度スペクトルを示すグラフである。
【図5】実施形態1の蛍光体層の温度測定方法を説明するための模式図である。
【図6】実施形態1の光源装置において、温度検出部の配置位置を示す模式図である。
【図7】蛍光体層における被照射領域の経時的な温度変化を示すグラフである。
【図8】実施形態1の光源装置が備える励起光源駆動系の作動の流れを示すフローチャートである。
【図9】実施形態2の蛍光体層の温度測定方法を説明するための模式図である。
【図10】実施形態2の光源装置において、温度検出装置の配置位置を示す模式図である。
【図11】蛍光体層における被照射領域の経時的な温度変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。かかる実施の形態は、本発明の一態様を示すものであり、この発明を限定するものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、実際の構造における縮尺や数等が異なっている。
【0037】
<実施形態1>
本発明の蛍光体層の温度測定方法、光源装置及びプロジェクターの実施形態1について説明する。
【0038】
(プロジェクターの構成)
まず、実施形態1の温度測定方法及び光源装置が適用されるプロジェクターの一例について説明する。
【0039】
図1は、実施形態1のプロジェクターの光学系を示す模式図である。
図1に示すように、プロジェクター1000は、光源装置100と、色分離導光光学系200と、光変調装置としての液晶光変調装置400R、液晶光変調装置400G、液晶光変調装置400Bと、クロスダイクロイックプリズム500と、投写光学系600と、を具備しており、光源装置100が実施形態1の光源装置によって構成されている。
【0040】
光源装置100は、励起光源10、コリメーターレンズアレイ13、第1集光レンズ20、第1平行化レンズ21、ダイクロイックミラー22、ピックアップ光学系(集光手段)40、回転蛍光板30、第2集光レンズ50、ロッドインテグレーター60、第2平行化レンズ70及び励起光源駆動系80を備えている。励起光源10から射出される励起光の光路上には、コリメーターレンズアレイ13、第1集光レンズ20、第1平行化レンズ21、ダイクロイックミラー22、ピックアップ光学系(集光手段)40、回転蛍光板30がこの順に配置され、回転蛍光板30から射出される蛍光の光路上には、ピックアップ光学系40、ダイクロイックミラー22、第2集光レンズ50、ロッドインテグレーター60、第2平行化レンズ70がこの順に配置されている。
【0041】
図2は、励起光源10の正面図である。
図2に示すように、励起光源10は、基台11上にレーザー光源12が5個×5個の正方形状に2次元配列(合計25個)で並べられているレーザー光源アレイである。
【0042】
励起光源10は、後述する回転蛍光板30が備える蛍光物質を励起させる励起光として、青色(発光強度のピーク:450nm付近)のレーザ光を射出する。
なお、励起光源10は、後述する蛍光物質を励起させることができる波長の光であれば、450nm以外のピーク波長を有する色光を射出する励起光源であっても構わない。
【0043】
本明細書において、蛍光体層32上において蛍光体層32と励起光の光軸とが交わる位置を「光照射位置S」と言う。光照射位置Sにおいて蛍光体層32に励起光が照射される。また、特定の時刻に蛍光体層32の励起光が照射された領域を「被照射領域T」という。後で説明するように、被照射領域Tは光照射位置Sに対して相対的に移動する。
【0044】
励起光源駆動系80は、励起光源10に駆動電流を供給する。本実施形態では、この励起光源駆動系80が、光照射位置Sにおける蛍光体層32の温度を推定し、この推定温度d0が設定温度以上である場合に励起光源10への電流供給をOFFに切り替える過昇温防止機構を備えている点に特徴がある。この励起光源駆動系80の構成については、後に詳述する。
【0045】
コリメーターレンズアレイ13は、各レーザー光源12に対応して設けられた複数のマイクロレンズ130が5個×5個の2次元配列(合計25個)で並べられて構成されている。このコリメーターレンズアレイ13は、各マイクロレンズ130が、それぞれ、各レーザー光源12から射出される各レーザー光の光線軸上となるように配置され、各レーザー光を平行化する。
【0046】
第1集光レンズ20は、例えば凸レンズからなる。第1集光レンズ20は、コリメーターレンズアレイ13から入射する複数のレーザー光(励起光)の光線軸上に配置され、この励起光を収束する。
【0047】
第1平行化レンズ21は、例えば両凹レンズからなる。第1平行化レンズ21は、第1集光レンズ20と、第1集光レンズ20における焦点位置との間に配置され、第1集光レンズ20から入射する励起光を平行化する。
【0048】
ダイクロイックミラー22は、その表面が、励起光源10の発光面及び蛍光体層32の表面に対して約45°の角度をなすように、これら各面と対峙して配置されている。ダイクロイックミラー22は、第1平行化レンズ21から入射する励起光(青色光成分)を90°折り曲げてピックアップ光学系40側に反射するとともに、後述するピックアップ光学系40から入射する赤色光成分及び緑色光成分を透過させる。
【0049】
ピックアップ光学系40は、ダイクロイックミラー22と回転蛍光板30との間の光の光路上に配置されている。ピックアップ光学系40は、回転蛍光板30からの光の広がりを抑える第1レンズ41と、第1レンズ41から入射される光を平行化する第2レンズ42とを含んで構成されている。第1レンズ41は、例えば、回転蛍光板30側が平面状、これと反対側が凸の曲面状をなす平凸レンズからなり、第2レンズ42は、例えば凸レンズからなる。ピックアップ光学系40は、回転蛍光板30からの光を略平行化した状態でダイクロイックプリズム22に入射させる。また、ピックアップ光学系40の第1レンズ41及び第2レンズ42は、ダイクロイックミラー22から入射する励起光を集光する機能を兼ねており、この励起光を集光させた状態で回転蛍光板30に入射させる。
【0050】
図3は、回転蛍光板30の斜視図である。
回転蛍光板30はいわゆる反射型の回転蛍光板である。回転蛍光板30は、図1及び図3に示すように、モーター(回転駆動機構)33により回転駆動される回転板31の上に、回転板31の回転軸Oの回りに蛍光体層32が形成されてなる。蛍光体層32は図示しない蛍光体粒子とバインダーを含む。
【0051】
この回転蛍光板30には、第1レンズ41及び第2レンズ42によって集光された励起光(青色光)が、蛍光体層32の表面から入射する。また、回転蛍光板30は、励起光が入射する側と同じ側に向けて、蛍光体層32が発した赤色光及び緑色光(蛍光)を射出する。また、この回転蛍光板30では、回転板31を回転軸Oの回りに回転させるため、被照射領域Tが回転軸Oの回りに円を描くように光照射位置Sに対して相対的に移動する。以下では、この被照射領域Tの移動経路を、「蛍光軌跡r」と言う。
【0052】
回転蛍光板30は、使用時において7500rpmで回転する。詳しい説明は省略するが、回転蛍光板30の直径は50mmであり、光照射位置Sが回転蛍光板30の回転中心から約22.5mm離れた場所に位置するように構成されている。つまり、回転蛍光板30は、被照射領域Tが約18m/秒の速度で回転軸Oの回りに円を描くように移動する。
【0053】
回転板31は、蛍光体層32が発する蛍光を反射する材料よりなる。なお、本実施形態では回転板31として円板を用いているが、その形状は円板に限られない。回転板31の材料としては、例えば、Al等の熱伝導率の高い金属材料等を用いることができる。
【0054】
蛍光体層32は、蛍光を発する蛍光体粒子を有しており、励起光(青色光)を吸収し、概ね490〜750nm(発光強度のピーク:570nm、図4参照)の蛍光に変換する機能を有する。この蛍光には、緑色光(波長530nm付近)及び赤色光(波長630nm付近)が含まれる。
【0055】
蛍光体粒子は、図1に示す励起光源10から射出される励起光を吸収し、蛍光を発する粒子状の蛍光物質である。例えば、蛍光体粒子には、波長が約450nmの青色光によって励起されて蛍光を発する物質が含まれており、励起光の一部を、赤色の波長帯域から緑色の波長帯域まで含む光に変換して射出する。
【0056】
蛍光体粒子としては、通常知られたYAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)系蛍光体層を用いることができる。例えば、平均粒径が10μmの(Y,Gd)3(Al,Ga)5O12:Ceで示される組成のYAG系蛍光体層を用いることができる。なお、蛍光体粒子の形成材料は、1種であっても良く、2種以上の形成材料を用いて形成されている粒子を混合したものを蛍光体粒子として用いることとしても良い。
【0057】
図1に示すように、回転蛍光板30から射出された光は、前述のピックアップ光学系40で平行化され、ダイクロイックミラー22に入射する。
【0058】
ダイクロイックミラー22は、ピックアップ光学系40から入射する光のうち、励起光(青色光)を反射して除去し、緑色光及び赤色光を透過させる。なお、ダイクロイックミラー22には、ピックアップ光学系40からの光が入射する入射面と反対側の表面に、図示しない他の光源装置から射出された青色光が入射し、ピックアップ光学系40からの光の光線軸と平行な方向に反射される。
【0059】
第2集光レンズ50は、例えば凸レンズからなる。第2集光レンズ50は、ダイクロイックミラー22から入射する光の光線軸上に配置され、この光を集光する。
【0060】
第2集光レンズ50を透過した光は、ロッドインテグレーター60の一端側に入射する。ロッドインタグレーター60は、光路方向に延在する角柱状の光学部材であり、内部を透過する光に多重反射を生じさせることにより、第2集光レンズ50を透過した光を混合し、輝度分布を均一化するものである。ロッドインテグレーター60の光路方向に直交する断面形状は、液晶光変調装置400R、液晶光変調装置400G、液晶光変調装置400Bの画像形成領域の外形形状と略相似形となっている。
【0061】
ロッドインテグレーター60の他端側から射出された光は、第2平行化レンズ70により平行化され、光源装置100から射出される。
【0062】
色分離導光光学系200は、ダイクロイックミラー210、ダイクロイックミラー220、反射ミラー230、反射ミラー240、反射ミラー250及びリレーレンズ260を備えている。色分離導光光学系200は、光源装置100からの光を赤色光、緑色光及び青色光に分離し、赤色光、緑色光及び青色光のそれぞれの色光を照明対象となる液晶光変調装置400R、液晶光変調装置400G、液晶光変調装置400Bに導光する機能を有する。
【0063】
ダイクロイックミラー210、ダイクロイックミラー220は、基板上に、所定の波長領域の光を反射して、他の波長領域の光を透過させる波長選択透過膜が形成されたミラーである。具体的には、ダイクロイックミラー210は、青色光成分を透過させ、赤色光成分及び緑色光成分を反射する。ダイクロイックミラー220は、緑色光成分を反射して、赤色光成分を透過させる。
【0064】
反射ミラー230、反射ミラー240、反射ミラー250は、入射した光を反射するミラーである。具体的には、反射ミラー230は、ダイクロイックミラー210を透過した青色光成分を反射する。反射ミラー240、反射ミラー250は、ダイクロイックミラー220を透過した赤色光成分を反射する。
【0065】
ダイクロイックミラー210を透過した青色光は、反射ミラー230で反射され、青色光用の液晶光変調装置400Bの画像形成領域に入射する。ダイクロイックミラー210で反射された緑色光は、ダイクロイックミラー220でさらに反射され、緑色光用の液晶光変調装置400Gの画像形成領域に入射する。ダイクロイックミラー220を透過した赤色光は、入射側の反射ミラー240、リレーレンズ260、射出側の反射ミラー250を経て赤色光用の液晶光変調装置400Rの画像形成領域に入射する。
【0066】
液晶光変調装置400R、液晶光変調装置400G、液晶光変調装置400Bは、通常知られたものを用いることができ、例えば、液晶素子410と液晶素子410を挟持する偏光素子420、430とを有した、透過型の液晶ライトバルブ等の光変調装置により構成される。偏光素子420、430は、例えば透過軸が互いに直交する構成(クロスニコル配置)となっている。
【0067】
液晶光変調装置400R、液晶光変調装置400G、液晶光変調装置400Bは、入射された色光を画像情報に応じて変調してカラー画像を形成するものであり、光源装置100の照明対象となる。これら液晶光変調装置400R、液晶光変調装置400G及び液晶光変調装置400Bによって、入射された各色光の光変調が行われる。
【0068】
例えば、液晶光変調装置400R、液晶光変調装置400G、液晶光変調装置400Bは、一対の透明基板に液晶を密閉封入した透過型の液晶光変調装置であり、ポリシリコンTFTをスイッチング素子として、与えられた画像情報に応じて、入射側偏光板420から射出された1種類の直線偏光の偏光方向を変調する。
【0069】
クロスダイクロイックプリズム500は、射出側偏光板430から射出された色光毎に変調された光学像を合成してカラー画像を形成する光学素子である。このクロスダイクロイックプリズム500は、4つの直角プリズムを貼り合せた平面視略正方形状をなしている。直角プリズムを貼り合せた略X字状の界面には、誘電体多層膜が形成されている。略X字状の一方の界面に形成された誘電体多層膜は、赤色光を反射するものであり、他方の界面に形成された誘電体多層膜は、青色光を反射するものである。これらの誘電体多層膜によって赤色光及び青色光は曲折され、緑色光の進行方向が揃えられることにより、3つの色光が合成される。
【0070】
クロスダイクロイックプリズム500から射出されたカラー画像は、投写光学系600によって拡大投写され、スクリーンSCR上で画像を形成する。
【0071】
(蛍光体層の温度測定方法、及び、励起光源駆動系)
次に、実施形態1の蛍光体層の温度測定方法、及び、この蛍光体層の温度測定方法を適用した励起光源駆動系(実施形態1の光源装置が備える励起光源駆動系)について説明する。
図5は、実施形態1の蛍光体層の温度測定方法を説明するための模式図、図6は、実施形態1の光源装置において、温度検出装置の配置位置を示す模式図、図7は、被照射領域Tの経時的な温度変化を示すグラフ、図8は、実施形態1の光源装置が備える励起光源駆動系の作動の流れを示すフローチャートである。
【0072】
まず、実施形態1の蛍光体層の温度測定方法について、回転蛍光板30の光照射位置Sの温度を推定する場合を例にして説明する。
【0073】
この実施形態の蛍光体層の温度測定方法は、励起光源10から励起光を射出させつつ回転蛍光板30を回転させることによって、被照射領域Tを光照射位置Sに対して相対的に移動させ、測定位置A1で被照射領域Tの温度dxを検出する第1工程を有する。さらに、この測定位置A1において検出された被照射領域Tの温度d1に基づいて光照射位置Sでの蛍光体層32の温度を推定する第2工程を有する。ここで測定位置A1は、蛍光軌跡r上の光照射位置S以外の領域に設定される位置であり、本実施形態では1箇所とする。
【0074】
光照射位置Sでの蛍光体層の温度は、例えば次のようにして推定することができる。
すなわち、光照射位置Sにおいて蛍光体層32に励起光が照射されると、励起光の一部は、前述の波長帯域の蛍光に変換されて蛍光体層32から射出される。一方、蛍光に変換されなかった励起光のエネルギーの一部は、熱エネルギーとなって蛍光体層32を発熱させる。そして、図5に示すように、蛍光体層32の発熱部分(被照射領域T)は、回転蛍光板30の回転によって、回転軸Oの回りに円を描くように光照射位置Sに対して相対的に移動する。図5では、被照射領域Tと測定位置A1とを識別しやすいように、被照射領域Tが蛍光軌跡r上の光照射位置Sと測定位置A1との間に位置している状態を示している。
【0075】
ここで、時刻t0(t0=0)において、光照射位置Sにて被照射領域Tに励起光が照射されるとする。図7に示すように、光照射位置Sに対して相対的に移動する被照射領域Tの温度は時間と共に低下する。この温度変化は、一般的に式(1)で表される。
dx=d0e−ktx・・・(1)
d0:光照射位置Sでの蛍光体層32の温度
dx:測定位置A1で検出された蛍光体層32(被照射領域T)の温度
tx:被照射領域Tが光照射位置Sから測定位置A1に到るまでの移動時間
k :減衰係数
e :自然対数の底
【0076】
このうち、減衰係数kが一定の既知の値であると仮定すれば、測定位置A1での蛍光体層32の温度dxを検出することにより、この検出温度dxと移動時間txに基づき、前記式(1)によって、光照射位置Sでの蛍光体層32の温度d0を算出することが可能である。
【0077】
このように算出された温度d0は、光照射位置Sでの蛍光体層32の実際の温度と近似もしくは一致しており、これによって、光照射位置Sでの蛍光体層32の温度を高い精度で推定することが可能となる。
【0078】
次に、実施形態1の光源装置が備える励起光源駆動系80について説明する。
図1に示すように、この励起光源駆動系80は、温度測定装置81と、制御部82と、LDドライバー(駆動電流供給部)83とを備えており、このうち温度測定装置81と制御部82とが、光照射位置Sでの蛍光体層32の推定温度d0に基づいて、励起光源10への電流供給のON/OFFを切り替える過昇温防止機構を構成する。
【0079】
以下、各部の構成について説明する。
【0080】
温度測定装置81は、実施形態1の蛍光体層の温度測定方法を用いて、光照射位置Sでの蛍光体層32の推定温度d0を得るものであり、温度検出部811と演算部812とを有している。
【0081】
温度検出部811は、測定位置A1での被照射領域Tの温度dxを検出し、この検出温度dxを演算部812に出力する。
【0082】
温度検出部811としては、特に限定されないが、放射温度計を用いるのが好ましい。放射温度計は、物体から放射される赤外線や可視光線の強度を測定して、物体の温度を測定する温度計であり、蛍光体層32に接触することなく、非接触で短時間に温度dxを測定できるという利点がある。
【0083】
温度検出部811として放射温度計を用いる場合には、図6に示すように、温度検出部811は、測定位置A1の直上に、その測定視野範囲に測定位置A1が含まれるように配置される。温度検出部811が、このように配置されることにより、光照射位置Sの直上に配設すべき光学系(ピックアップ光学系40)と温度検出部811とを接触させることなく、両者を並列して配置できるという効果が得られる。
【0084】
なお、本実施形態では、被照射領域Tが光照射位置Sから回転軸Oの回りに約90°回転移動した位置を測定位置A1としているが、これに限るものではない。例えば光照射位置Sから120°回転移動した位置、もしくは、180°回転移動した位置等としても構わない。ただし、光照射位置Sでの蛍光体層32の推定温度と実際の温度との誤差を小さくする点からは、ピックアップ光学系40と温度検出部811とが接触しない範囲で、光照射位置Sからできるだけ近い領域を測定位置A1とするのが好ましい。回転蛍光板30の回転数、周囲温度、風量状態等による減衰係数kへの影響が小さく抑えられるからである。
【0085】
演算部812は、温度検出部811から入力された検出温度dxに基づいて、光照射位置Sでの蛍光体層32の温度d0を推定する。本実施形態では、演算部812のメモリに、減衰係数k及び移動時間txが予め記憶されており、演算部812は、これら各値k、txと、温度検出部811から入力された検出温度dxに基づいて、前記式(1)によって光照射位置Sでの蛍光体層32の推定温度d0を演算する。演算によって得られた推定温度d0は制御部82に出力される。
【0086】
制御部82は、演算部812から入力された推定温度d0が、制御部82のメモリに予め記憶された設定温度dmax以上であるか否かを判断し、推定温度d0が設定温度dmax以上である場合にLDドライバー83にシャットダウン信号を出力する。ここで、設定温度dmaxは、光照射位置Sでの蛍光体層32の許容温度の上限であり、目的に応じて適宜設定される。例えば、蛍光体層32に含まれるシリコーンの熱分解を抑える目的の場合には、シリコーンの分解温度(140℃)付近に設定される。
【0087】
なお、減衰係数k及び移動時間tx、設定温度dmaxは、図示しない操作部の操作によって、演算部812及び制御部82にそれぞれ入力される。
【0088】
LDドライバー83は、励起光源10に駆動電流を供給する。本実施形態では、LDドライバー83は、制御部82からシャットダウン信号を受信すると、駆動電流の供給を停止し、シャットダウン信号が解除されると駆動電流の供給を再開するように構成されている。
【0089】
次に、この励起光源駆動系80の作動について、図8を参照しながら説明する。
まず、LDドライバー83からの駆動電流の供給をONにする(ステップS1)。これにより、励起光源10から励起光が射出され、蛍光体層32の光照射位置Sに対応する部分(被照射領域T)に励起光が照射され、当該部分が発熱する。光照射位置Sで発熱した部分(被照射領域T)は、回転蛍光板30の回転によって、回転軸Oの回りに円を描くように光照射位置Sに対して相対的に移動する。そして、被照射領域Tは測定位置A1を通過して光照射位置Sに戻るというサイクルを繰り返す。
【0090】
ここで、測定位置A1での被照射領域Tの温度dxは、温度検出部811によって検出され(ステップS2、第1工程)、演算部812に出力される。演算部812は、温度検出部811から検出温度dxが入力されると、この検出温度dxに基づいて前記式(1)によって光照射位置Sでの蛍光体層32の推定温度d0を演算する(ステップS3、第2工程)。演算によって得られた推定温度d0は制御部82に出力される。制御部82は、演算部812から推定温度d0が入力されると、これが設定温度dmax以上であるか否かを判断し(ステップS4)、推定温度d0が設定温度dmax以上である場合にはLDドライバー83にシャットダウン信号を出力する(ステップS5)。LDドライバー83は、制御部82からシャットダウン信号が入力されると、駆動電流の供給をOFFに切り替える(ステップS6)。これにより、励起光源10からの励起光の射出が停止する。
【0091】
このように構成された励起光源駆動系80は、温度測定装置81によって光照射位置Sでの蛍光体層32の実際の温度に近似もしくは一致した推定温度d0を得ることができる。そして、制御部82は、推定された温度d0が設定温度dmax以上であるときに励起光源10への電流供給をOFFに切り替える。このため、光照射位置Sでの蛍光体層32の温度が設定温度dmaxを超えるのを確実に抑止することが可能である。
【0092】
したがって、このような励起光源駆動系80を備える光源装置100は、熱による蛍光体層32の劣化が低減される。また、光照射位置Sの過熱による光源装置100の故障が起こりにくい。
【0093】
このため、このような光源装置100を備えるプロジェクター1000は、光源装置100が長寿命であるため、光源装置100の交換頻度が少なくて済み、メンテナンスコストを抑えることが可能である。
【0094】
また、実施形態1の蛍光体層の温度測定方法では、光照射位置Sにおける蛍光体層32の温度ではなく、蛍光軌跡rのうち光照射位置Sとは異なる測定位置A1における被照射領域Tの温度を実測するため、温度測定装置81を光照射位置Sの直上に配置する必要がない。このため、このような温度測定方法を用いる光源装置100及びプロジェクター1000では、温度測定装置81と、光照射位置Sの直上に配置された光学系(ピックアップ光学系40等)とが互いに邪魔し合うことがなく、各部の配置スペースを容易に確保することが可能となる。
【0095】
<実施形態2>
次に、本発明の蛍光体層の温度測定方法、光源装置及びプロジェクターの実施形態2について説明する。
なお、実施形態2においては、前記実施形態1との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0096】
実施形態2のプロジェクター及び光源装置は、励起光源駆動系80で用いる蛍光体層の温度測定方法が異なる以外は、前記実施形態1と同様の構成とされている。
【0097】
以下、この蛍光体層の温度測定方法(実施形態2の温度測定方法)と、この温度測定方法を適用した励起光源駆動系80について説明する。
【0098】
図9は、実施形態2の蛍光体層の温度測定方法を説明するための模式図、図10は、実施形態2の光源装置において、温度検出装置の配置位置を示す模式図、図11は、蛍光体層における被照射領域Tの経時的な温度変化を示すグラフである。
【0099】
まず、実施形態2の蛍光体層の温度測定方法について、回転蛍光板30の光照射位置Sの温度を推定する場合を例にして説明する。
【0100】
図9は、被照射領域Tが光照射位置Sに対して相対的に移動し、第2測定位置A2に位置している状態を示している。この実施形態の蛍光体層の温度測定方法は、励起光源10から励起光を射出させつつ回転蛍光板30を回転させることによって、被照射領域Tを光照射位置Sに対して相対的に移動させ、被照射領域Tが第2測定位置A2に移動したとき、第2測定位置A2における蛍光体層32すなわち被照射領域Tの温度d2を検出する。さらに、温度d2を検出すると同時に、被照射領域Tの軌跡の上であって、光照射位置Sとは異なり且つ第2測定位置A2とも異なる第1測定位置A1における蛍光体層32の温度d1を検出する。以上の工程が第1工程に相当する。さらに、温度d1と温度d2とに基づいて光照射位置Sでの蛍光体層32の温度d0を推定する第2工程を有する。
【0101】
以下の説明では、第1測定位置A1と第2測定位置A2のうち、被照射領域Tの光照射位置Sからの移動距離が短い方を「第1測定位置A1」と呼び、被照射領域Tの光照射位置Sからの移動距離が長い方を「第2測定位置A2」と呼ぶ。また、被照射領域Tが光照射位置Sから第1測定位置A1まで移動するために要する時間を所要時間t1とし、被照射領域Tが光照射位置Sから第2測定位置A2まで移動するために要する時間を所要時間t2とする。
【0102】
光照射位置Sでの蛍光体層32の温度は、例えば次のようにして推定することができる。
すなわち、前述のように光照射位置Sで励起光が照射された被照射領域Tの経時的な温度変化は、前記一般式(1)で表される。したがって、図9に示すように、蛍光軌跡r上に、2箇所の測定位置(第1測定位置A1、第2測定位置A2)を設定し、第1測定位置A1における蛍光体層32の温度d1と第2測定位置A2における蛍光体層32の温度d2とを検出すれば、温度d1と温度d2と所要時間t1と所要時間t2を前記一般式(1)に代入することによって下記式(2)、式(3)を得ることができる。この2式の変数は減衰係数kと推定温度d0の2つであるため、この2式を解くことにより、これらの値k、d0を求めることができる(図11参照)。
d1=d0e−kt1・・・(2)
d2=d0e−kt2・・・(3)
d0:光照射位置Sでの蛍光体層32の温度
d1:第1測定位置A1での蛍光体層32の温度
d2:第2測定位置A2での蛍光体層32の温度
t1:被照射領域Tが光照射位置Sから第1測定位置A1に到るまでの移動時間
t2:被照射領域Tが光照射位置Sから第2測定位置A2に到るまでの移動時間
k :減衰係数
e :自然対数の底
【0103】
この実施形態2の蛍光体層の温度測定方法では、第1測定位置A1における蛍光体層32の温度d1と第2測定位置A2における蛍光体層32の温度d2とに基づいて、減衰係数kと光照射位置Sでの蛍光体層32の温度d0を算出するため、回転蛍光板の回転数、周囲温度、風量状態等、実際の条件に即した減衰係数kを得ることができ、これによって光照射位置Sでの蛍光体層32の実際の温度により近似した推定温度d0を得ることが可能である。
【0104】
次に、実施形態2の光源装置が備える励起光源駆動系81について説明する。
この励起光源駆動系80は、温度測定装置81と、制御部82と、LDドライバー83とを備えており、このうち温度測定装置81と制御部82とが、光照射位置Sでの蛍光体層32の推定温度d0に基づいて、励起光源10への電流供給のON/OFFを切り替える過昇温防止機構を構成する。以下、各部の構成について説明する。
【0105】
温度測定装置81は、実施形態2の蛍光体層の温度測定方法を用いて、光照射位置Sでの蛍光体層32の温度を推定するものであり、第1温度検出部813及び第2温度検出部814と、演算部812とを備える。
各温度検出部813、814としては、それぞれ、前記実施形態1と同様の理由から放射温度計を用いるのが好ましい。
【0106】
図10に示すように、温度検出部813、温度検出部814として放射温度計を用いる場合には、温度検出部813は、温度検出部813の測定視野範囲に第1測定位置A1が含まれるように第1測定位置A1の直上に配置され、温度検出部814は、温度検出部814の測定視野範囲に第2測定位置A2が含まれるように第2測定位置A2の直上に配置される。温度検出部813、温度検出部814が、このように配設されることにより、光照射位置Sの直上に配設すべき光学系(ピックアップ光学系40)が温度検出部813および温度検出部814のいずれとも接触させることなく、両者を並列して配置できるという効果が得られる。
【0107】
なお、本実施形態では、被照射領域Tが光照射位置Sから回転軸Oの回りに約90°回転移動した位置を第1測定位置A1とし、被照射領域Tが光照射位置Sから回転軸Oの回りに約180°回転移動した位置を第2測定位置A2としているが、これに限るものではない。ただし、光照射位置Sでの蛍光体層32の推定温度d0と実際の温度との誤差を小さくする点からは、ピックアップ光学系40と各温度検出部813、814とが接触しない範囲で、光照射位置Sからできるだけ近い領域を第1測定位置A1とするのが好ましく、第1測定位置A1からできるだけ遠い領域を第2測定位置A2とするのが好ましい。これにより、演算部82において、回転蛍光板30の回転数、周囲温度、風量状態等に即した減衰係数kが得られ、光照射位置Sでの蛍光体層32の実際の温度により近い推定温度d0を得ることができるからである。
【0108】
演算部812は、各温度検出部813、814から入力された検出温度d1、d2に基づいて、光照射位置Sでの蛍光体層32の温度d0を推定し、この推定温度d0を制御部82に出力する。本実施形態では、演算部812のメモリに、移動時間t1、t2が予め記憶されており、演算部812は、これら各値t1、t2と、各温度検出部813、814から入力された各検出温度d1、d2を前記一般式(1)に代入し、得られた前記式(3)(4)によって光照射位置Sでの蛍光体層32の温度d0を演算する。演算によって得られた温度の値は、推定温度d0として制御部82に出力される。
【0109】
制御部82及びLDドライバー83の構成は前記実施形態1と同様である。
すなわち、制御部82は、演算部812から推定温度d0が入力されると、これが設定温度dmax以上であるか否かを判断し、推定温度d0が設定温度dmax以上である場合にはLDドライバー83にシャットダウン信号を出力する。LDドライバー83は、制御部82からシャットダウン信号が入力されると、駆動電流の供給をOFFに切り替える。これにより、励起光源10からの励起光の射出が停止する。
【0110】
実施形態2においても、前記実施形態1と同様の効果を得ることができる。
また、実施形態2の励起光源駆動系80では、特に、光照射位置Sでの蛍光体層32の実際の温度により近似もしくは一致した推定温度d0を得ることができるため、光照射位置Sでの蛍光体層32の温度が設定温度dmax以上となるのを、より確実に抑止することが可能である。
【0111】
したがって、この励起光源駆動系80を備える光源装置100は、熱による蛍光体層32の劣化が低減される。また、光照射位置Sの過熱による光源装置100の故障が起こりにくい。
【0112】
このため、このような光源装置100を備えるプロジェクター1000は、光源装置100が長寿命であるため、光源装置100の交換頻度が少なくて済み、メンテナンスコストを抑えることが可能である。
【0113】
<実施形態3>
実施形態2では、第1測定位置A1における蛍光体層32の温度d1を検出すると同時に第2測定位置A2における蛍光体層32の温度d2を検出していたが、実施形態3では、被照射領域Tが光照射位置Sから第1測定位置A1へ移動したときに、第1測定位置A1において被照射領域Tの温度d1を検出し、被照射領域Tがさらに第2測定位置A2へ移動したときに、第2測定位置A2において被照射領域Tの温度d2を検出してもよい。この場合も実施形態2と同様、被照射領域Tが光照射位置Sから第1測定位置A1まで移動するために要する時間を所要時間t1とし、被照射領域Tが光照射位置Sから第2測定位置A2まで移動するために要する時間を所要時間t2とする。その他の構成は実施形態2と同様であるため、説明を省略する。
【0114】
実施形態2においては、第1測定位置A1における蛍光体層32の温度d1と第2測定位置A2における蛍光体層32の温度d2とを同時に検出するため、第1測定位置A1における被検出物は第2測定位置A2における被検出物とは異なるものである。つまり、第1測定位置A1における被検出物は、第2測定位置A2における被検出物すなわち被照射領域Tが光照射位置Sにおいて励起光が照射されてから所定の時間(t2−t1)経過した後に、光照射位置Sにおいて励起光が照射された領域である。光照射位置Sにおける蛍光体層32の温度は一定とは限らない。そのため、光照射位置Sにおいて蛍光体層32に励起光が照射された時刻を図11に示したt0とすれば、第1測定位置A1における被検出物の時刻t0での温度が被照射領域Tの時刻t0での温度とは異なる場合がある。
【0115】
これに対して、実施形態3においては、被照射領域Tが第1測定位置A1に移動したときに被照射領域Tの温度d1を検出し、被照射領域Tがさらに第2測定位置A2に移動したときに被照射領域Tの温度d2を検出するため、実施形態2において得られる効果の他に、非常に高い精度で光照射位置Sの温度d0を推定することができるという効果が得られる。
【0116】
以上、本発明を上記の実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。その趣旨を逸脱しない範囲において種々の様態において実施することが可能である。
【0117】
(変形例1)
前記実施形態2および実施形態3の光源装置100では、温度測定装置81が、蛍光軌跡rの2箇所の領域について温度を検出し、これに基づいて光照射位置Sでの蛍光体層32の温度を推定するように構成されているが、温度を検出する領域は2箇所に限るものではなく、3箇所以上であっても構わない。例えば、3箇所以上の測定位置のうち、任意の2箇所の検出温度に基づいて光照射位置Sでの蛍光体層32の温度を算出し、他の2箇所の検出温度に基づいて算出された光照射位置Sでの蛍光体層32の温度との平均値をとれば、光照射位置Sでの実際の温度にさらに近似した推定温度d0を得ることができる。この推定温度d0に基づいて励起光源への電流供給のON/OFFを切り替えることにより、光照射位置Sでの過剰な温度上昇をより確実に抑えることが可能となる。
【0118】
(変形例2)
前記指数関数は、理想的な状態での関係式であるため、実際の温度変化とは異なる場合がある。特に、ピックアップ光学系40の各レンズ41、42が風の流れを阻害したりすると、前記指数関数から求められた計算値と光照射位置Sでの実測値との差が比較的大きいこともあり得る。そのような場合には、上記の各実施例や変形例において、求められた計算値に適宜補正を加えたり、式を変形したりして光照射位置Sでの蛍光体層の温度d0を求めるようにしても構わない。
【0119】
(変形例3)
前記各実施形態あるいは前記各変形例では、制御部82は、光照射位置Sでの推定温度d0が設定温度dmax以上となったときに、駆動電流の供給がOFFとなるようにLDドライバー83を制御している。しかし、前記各実施形態あるいは前記各変形例において、駆動電流の供給量が低減(セーブ運転モード)するようにLDドライバー83を制御するものであっても良い。これにより、励起光源10への電流供給を連続して行いつつ、光照射位置Sでの過剰な温度上昇を抑えることが可能となる。
【0120】
(変形例4)
前記各実施形態あるいは前記各変形例において、制御部82は、光照射位置Sでの推定温度d0が設定温度dmax以上となったときに、回転板31の回転数が上がるようにモーターを制御するものであっても良い。回転板31の回転数が上がると周囲の風量が増大するため、励起光が照射された部分が効率良く冷却され、光照射位置Sでの蛍光体層32の温度上昇を抑えることが可能となる。
【0121】
(変形例5)
前記各実施形態あるいは前記各変形例の光源装置100は、回転蛍光板30の回転板31として反射型基板を用い、蛍光体層32に対して、蛍光の出射側と同じ側から励起光を入射する反射型であった。しかし、前記各実施形態あるいは前記各変形例において、回転板31として励起光を透過させる透過型基板を用いてもよい。この場合、蛍光体層に対して、蛍光の出射側と反対側(回転板31側)から励起光を入射させる構成であり、励起光を集光させる集光手段を省略しても構わない。透過型の場合にも、反射型の場合と同様の作用・効果を得ることが可能である。
【0122】
(変形例6)
前記各実施形態あるいは前記各変形例の光源装置100は、蛍光体層32の被照射領域Tが回転軸Oの回りに円を描くように光照射位置Sに対して相対的に移動するように構成されているが、被照射領域Tの移動方法はこれに限るものではない。例えば被照射領域Tが光照射位置Sに対して往復移動するように構成されていても構わない。この場合にも、被照射領域Tを、光照射位置Sに対して相対的に移動させ、光照射位置Sとは異なる位置で、前記被照射領域Tの温度を検出する(第1工程)。その後、第1工程で検出された前記被照射領域Tの温度に基づいて、光照射位置Sでの蛍光体層の温度を推定する(第2工程)。そして、推定した光照射位置Sでの蛍光体層の温度に応じて、励起光の強度を制御すればよい。あるいは、推定した光照射位置Sでの蛍光体層の温度に応じて、被照射領域Tの光照射位置Sに対する移動速度を制御してもよい。
【0123】
本発明においては、温度検出部によって被照射領域Tの温度を検出する。しかし、温度検出部として放射温度計を用いる場合、実際には温度検出部は被照射領域Tから放射される赤外線を検出し、検出された赤外線の強度を温度に換算している。したがって、本発明において、物体の温度を測定するということは、物体から放射される赤外線の強度を測定するということと実質的に等価である。すなわち、被照射領域Tの温度に基づいて光照射位置Sでの蛍光体層の温度を推定する、ということは、被照射領域Tから放射される赤外線の強度に基づいて、光照射位置Sでの蛍光体層から放射される赤外線の強度を推定する、ということと実質的に等価である。そこで、必ずしも赤外線の強度を温度に換算する必要は無く、被照射領域Tから放射される赤外線の強度に基づいて、光照射位置Sでの蛍光体層から放射される赤外線の強度を推定してもよい。この場合、放射赤外線強度と温度との間の既知の関係を用いて式(1)を適宜補正すればよい。
【0124】
また、前記各実施形態では、本発明の蛍光体層の温度検出方法をプロジェクター1000に搭載された光源装置100に適用しているが、製造工程において電子機器に搭載する前の光源装置や設計段階での光源装置に適用しても構わない。
【0125】
また、本発明は、次のような変形も可能である。
本実施形態のプロジェクター1000では、液晶光変調装置として3つの液晶光変調装置を用いたが、これに限らない。1つ、2つ又は4つの液晶光変調装置を用いたプロジェクターにも適用可能である。
【0126】
また、本実施形態のプロジェクター1000では、透過型のプロジェクターを用いたが、これに限らない。例えば、反射型のプロジェクターを用いてもよい。ここで、「透過型」とは、透過型の液晶表示装置等のように光変調手段としての光変調装置が光を透過するタイプであることを意味している。「反射型」とは、反射型の液晶表示装置等のように光変調手段としての光変調装置が光を反射するタイプであることを意味している。反射型のプロジェクターに本発明を適用した場合にも、透過型プロジェクターと同様の効果を奏することができる。
【0127】
本発明は、投写画像を観察する側から投写するフロント投写型プロジェクターに適用する場合にも、投写画像を観察する側とは反対側から投写するリア投写型プロジェクターに適用する場合にも、適用することができる。
【0128】
上記各実施形態においては、本発明の照明装置をプロジェクターに適用した例について説明したが、これに限らない。例えば、本発明の照明装置を他の光学機器(例えば、光ディスク装置、自動車のヘッドランプ、照明機器等)に適用することも可能である。
【符号の説明】
【0129】
10…励起光源、30…回転蛍光板、31…回転板、32…蛍光体層、33…モーター(回転駆動機構)、40…ピックアップ光学系(集光手段)、80…励起光源駆動系、81…温度測定装置、811…温度検出部、812…演算部、82…制御部、83…LDドライバー(駆動電流供給部)、100…光源装置、400R,400G,400B…液晶光変調装置(光変調装置)、600…投写光学系、1000…プロジェクター、A1…測定位置、A2…測定位置、S…光照射位置、T…被照射領域
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光体層の温度測定方法、光源装置及びプロジェクターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
プロジェクターに用いるための光源装置としては、従来、高圧水銀ランプが主流であったが、近年、励起光(青色光)を射出する固体発光素子(励起光源)と、該励起光を吸収して所定の波長帯域光に変換する蛍光体層を組み合わせた光源装置が用いられるようになっている(例えば、特許文献1参照。)。この光源装置は、高圧水銀ランプに比べて長寿命であり、また、水銀を含まないため、環境への影響が少ないというメリットがある。
【0003】
ところで、このように励起光源と蛍光体層とを組み合わせた光源装置では、励起光の射出光を集光して蛍光体層に照射する。ここで、蛍光体層に照射された励起光の一部は蛍光に変換されて射出されるが、蛍光に変換されなかった励起光のエネルギーの一部は熱エネルギーとなって蛍光体層を発熱させる。このため、励起光の集光スポットに対応する領域(光照射位置)においては、蛍光体層が非常に高温になり、これによって蛍光体層に含まれる有機バインダー(シリコーン等)が変質して蛍光体層が短寿命となったり、光照射位置の温度が異常上昇して装置が故障したりする等の問題が生じている。
【0004】
そこで、このような蛍光体層の温度上昇が抑えられるようにした光源装置として、回転駆動される回転基板上に蛍光体層を設け、蛍光体層の励起光が照射された被照射領域が光照射位置に対して相対的に移動するようにした光源装置が提案されている。このような光源装置では、光照射位置で蛍光体層が発熱しても、発熱した被照射領域が直ぐに光照射位置から外れ、次に光照射位置に戻るまでの間、周囲の空気によって冷却される。このため、一箇所に励起光が連続的に照射されるのに比べて、光照射位置での蛍光体層の温度上昇を抑えることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−327361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述のように回転基板上に蛍光体層を設けた光源装置は、回転による冷却効果によって、光照射位置での蛍光体層の温度上昇がある程度軽減されるものの、やはり依然として光照射位置での蛍光体層は高温になる。
【0007】
これに対して、この光照射位置での蛍光体層の温度が高い精度で測定できれば、その温度に基づいて励起光源の出射光量をコントロールすることによって、蛍光体層の劣化を低減できるということが期待される。あるいは、光照射位置での蛍光体層の温度の異常上昇時に励起光源からの光射出をシャットダウンすることによって、光源装置の故障を回避することができるものと期待される。
【0008】
しかし、光源装置では、蛍光体層の光照射位置の直上に光学ピックアップ光学系等が配置されるため、これら光学系が邪魔をして、放射温度計のような温度測定装置を光照射位置の直上に配置することは難しい。特に、蛍光の出射側と同じ側から励起光を入射させる反射型の回転蛍光板の場合には、その光照射位置の直上にピックアップ光学系の他、励起光を入射させるための光学部材も配置されるため、温度測定装置の配置スペースを確保するのは非常に困難である。
【0009】
このように、これまでは光照射位置での蛍光体層の温度を測定するのが困難であるために、光照射位置での蛍光体層の温度に基づいた励起光量の制御を行うことができず、蛍光体層の劣化や光源装置の故障を十分に防止することができなかったのが実情である。
【0010】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、光照射位置での蛍光体層の温度を実測しなくとも、この温度を高い精度で推定することができる蛍光体層の温度測定方法を提供することを目的とする。また、光照射位置での蛍光体層の推定温度に基づいて、該光照射位置での蛍光体層の温度が許容温度を超えないように制御することが可能な光源装置を提供することを目的とする。また、光源装置の交換頻度が少なくて済み、メンテナンスコストを抑えることができるプロジェクターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の蛍光体層の温度測定方法は、励起光で照射された蛍光体層の被照射領域を、該励起光が照射される該蛍光体層の光照射位置に対して相対的に移動させ、該光照射位置とは異なる第1の測定位置で、前記被照射領域の温度を検出する第1工程と、前記第1工程で検出された前記被照射領域の温度に基づいて、前記光照射位置での蛍光体層の温度を推定する第2工程と、を有することを特徴とする。
【0012】
励起光が照射された被照射領域の温度は、励起光が照射される位置(蛍光体層における励起光の光軸上の位置:光照射位置)での蛍光体層の温度を反映する。
本発明の蛍光体層の温度測定方法によれば、光照射位置とは異なる位置で被照射領域の温度を検出し、これに基づいて光照射位置での蛍光体層の温度を推定する。そのため、光照射位置での蛍光体層の温度を実測しなくとも、光照射位置での蛍光体層の温度を高い精度で把握することが可能となる。
【0013】
本発明においては、前記第1工程において、前記被照射領域の移動経路上であって、前記光照射位置と異なり、かつ前記測定位置とも異なる第2の測定位置において、前記蛍光体層の温度を検出し、前記第2工程において、前記第1の測定位置で検出された温度と前記第2の測定位置で検出された温度とに基づいて、前記光照射位置での蛍光体層の温度を推定することが好ましい。
【0014】
この構成によれば、光照射位置での蛍光体層の温度を実測しなくとも、光照射位置での蛍光体層の温度をより高い精度で推定することが可能となる。
【0015】
本発明においては、前記蛍光体層は、回転駆動される回転基板上に設けられ、前記被照射領域が前記回転基板の回転軸の回りに円を描くように移動することが好ましい。
【0016】
この構成によれば、光照射位置で蛍光体層が発熱しても、発熱した部分が直ぐに光照射位置から外れ、再び光照射位置に戻るまでの間、周囲の空気によって冷却される。そのため、一箇所に励起光が連続的に照射されるものに比べて、光照射位置での蛍光体層の温度上昇を抑えることができる。また、回転基板が回転する際に生じる風によって、蛍光体層を効率良く冷却することが可能となる。
【0017】
本発明においては、下記式を用いて、前記光照射位置での蛍光体層の温度を推定することが好ましい。
dx=d0e−ktx
d0:前記光照射位置での前記蛍光体層の温度
dx:前記光照射位置とは異なる測定位置での前記蛍光体層の温度
tx:前記励起光で照射された前記蛍光体層の被照射領域が、前記光照射位置から前記測定位置に到るまでの移動時間
k :減衰係数
e :自然対数の底
【0018】
この構成によれば、光照射位置での蛍光体層の温度を、さらに高い精度で推定することが可能となる。
【0019】
本発明の光源装置は、励起光を射出する励起光源と、前記励起光を受けて蛍光を放射するとともに、前記励起光が照射された被照射領域が、前記励起光が照射される光照射位置に対して相対的に移動可能な蛍光体層と、前記光照射位置とは異なる第1の測定位置に設けられた温度検出部と、前記温度検出部で検出された前記被照射領域の温度に基づいて前記励起光の強度を制御する制御部と、を有することを特徴とする。
【0020】
本発明の光源装置によれば、光照射位置とは異なる位置で被照射領域の温度を実測するため、温度測定装置を光照射位置の直上に配置する必要がない。このため、温度測定装置と、光照射位置の直上に配置された光学系(ピックアップ光学系等)とが互いに邪魔し合うことがなく、各部の配置スペースを容易に確保することが可能である。さらに、光照射位置とは異なる位置で測定した被照射領域の温度に基づいて励起光の強度が制御されるため、熱による蛍光体層の劣化が低減される。また、光照射位置の過熱による光源装置の故障が起こりにくい。
【0021】
本発明においては、前記温度検出部で検出された前記被照射領域の温度に基づいて、前記光照射位置での蛍光体層の推定温度を演算する演算部をさらに備え、前記制御部は、前記推定温度に基づいて前記励起光の強度を制御することが好ましい。
【0022】
この構成によれば、前記温度検出部及び前記演算部によって、光照射位置での蛍光体層の温度を高い精度で推定することができる。そのため、光照射位置での蛍光体層の温度が所望の温度範囲となるように、前記励起光の強度を精度良く制御することが可能となる。
【0023】
本発明においては、前記制御部は、予め記憶された設定温度と、前記推定温度とを比較し、前記推定温度が前記設定温度以上である場合に、前記励起光源への駆動電流の供給を遮断することが好ましい。
【0024】
この構成によれば、光照射位置での蛍光体層の推定温度が設定温度以上となったときに、励起光源への電流供給が遮断されるため、光照射位置での温度が設定温度を超えるのを確実に抑止することが可能である。
【0025】
本発明においては、前記制御部は、予め記憶された設定温度と、前記推定温度とを比較し、前記推定温度が前記設定温度以上である場合に、前記励起光源への駆動電流の供給量を低減することが好ましい。
【0026】
この構成によれば、励起光源への駆動電流の供給を連続して行いながら、光照射位置での蛍光体層の温度が設定温度を超えるのを確実に抑止することが可能である。したがって、この光源装置は、高い稼動率を得ることができる。
【0027】
本発明の光源装置は、励起光を射出する励起光源と、前記励起光を受けて蛍光を放射するとともに、前記励起光が照射された被照射領域が、前記励起光が照射される光照射位置に対して相対的に移動可能な蛍光体層と、前記光照射位置とは異なる第1の測定位置に設けられた温度検出部と、前記温度検出部で検出された前記被照射領域の温度に基づいて、前記被照射領域の前記光照射位置に対する移動速度を制御する制御部と、を有することを特徴とする
【0028】
本発明の光源装置によれば、光照射位置での蛍光体層の推定温度が設定温度以上となったときに、前記被照射領域の前記光照射位置に対する移動速度が上がり、蛍光体層周囲の風量が増加する。その結果、蛍光体層が効率良く冷却され、光照射位置での蛍光体層の温度が設定温度以上となるのを確実に抑止することができる。
【0029】
本発明においては、前記温度検出部で検出された前記被照射領域の温度に基づいて、前記光照射位置での蛍光体層の推定温度を演算する演算部をさらに備え、前記制御部は、前記推定温度に基づいて、前記被照射領域の前記光照射位置に対する移動速度を制御することが好ましい。
【0030】
この構成によれば、前記温度検出部及び前記演算部によって、光照射位置での蛍光体層の温度を高い精度で推定することができる。そのため、光照射位置での蛍光体層の温度が所望の温度範囲となるように、前記被照射領域の前記光照射位置に対する移動速度を精度良く制御することが可能となる。
【0031】
本発明においては、前記温度検出部として、放射温度計を用い、前記温度検出部を、前記被照射領域の移動経路の直上に配置することが好ましい。
【0032】
この構成によれば、温度測定装置を、光照射位置の直上に配置された光学系(ピックアップ光学系等)と接触させることなく配置することが可能となる。
【0033】
本発明のプロジェクターは、本発明の光源装置と、前記光源装置から射出された光を画像情報に応じて変調する光変調装置と、前記光変調装置からの変調光を投写画像として投写する投写光学系と、を備えることを特徴とする。
【0034】
このため、本発明のプロジェクターによれば、光源装置が長寿命で故障し難いため、光源装置の交換頻度が少なくて済み、メンテナンスに要するコストを抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】実施形態1のプロジェクターの光学系を示す模式図である。
【図2】実施形態1の光源装置が備える励起光源の正面図である。
【図3】実施形態1の光源装置が備える回転蛍光板の斜視図である。
【図4】実施形態1の光源装置が備える蛍光体層の発光強度スペクトルを示すグラフである。
【図5】実施形態1の蛍光体層の温度測定方法を説明するための模式図である。
【図6】実施形態1の光源装置において、温度検出部の配置位置を示す模式図である。
【図7】蛍光体層における被照射領域の経時的な温度変化を示すグラフである。
【図8】実施形態1の光源装置が備える励起光源駆動系の作動の流れを示すフローチャートである。
【図9】実施形態2の蛍光体層の温度測定方法を説明するための模式図である。
【図10】実施形態2の光源装置において、温度検出装置の配置位置を示す模式図である。
【図11】蛍光体層における被照射領域の経時的な温度変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。かかる実施の形態は、本発明の一態様を示すものであり、この発明を限定するものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、実際の構造における縮尺や数等が異なっている。
【0037】
<実施形態1>
本発明の蛍光体層の温度測定方法、光源装置及びプロジェクターの実施形態1について説明する。
【0038】
(プロジェクターの構成)
まず、実施形態1の温度測定方法及び光源装置が適用されるプロジェクターの一例について説明する。
【0039】
図1は、実施形態1のプロジェクターの光学系を示す模式図である。
図1に示すように、プロジェクター1000は、光源装置100と、色分離導光光学系200と、光変調装置としての液晶光変調装置400R、液晶光変調装置400G、液晶光変調装置400Bと、クロスダイクロイックプリズム500と、投写光学系600と、を具備しており、光源装置100が実施形態1の光源装置によって構成されている。
【0040】
光源装置100は、励起光源10、コリメーターレンズアレイ13、第1集光レンズ20、第1平行化レンズ21、ダイクロイックミラー22、ピックアップ光学系(集光手段)40、回転蛍光板30、第2集光レンズ50、ロッドインテグレーター60、第2平行化レンズ70及び励起光源駆動系80を備えている。励起光源10から射出される励起光の光路上には、コリメーターレンズアレイ13、第1集光レンズ20、第1平行化レンズ21、ダイクロイックミラー22、ピックアップ光学系(集光手段)40、回転蛍光板30がこの順に配置され、回転蛍光板30から射出される蛍光の光路上には、ピックアップ光学系40、ダイクロイックミラー22、第2集光レンズ50、ロッドインテグレーター60、第2平行化レンズ70がこの順に配置されている。
【0041】
図2は、励起光源10の正面図である。
図2に示すように、励起光源10は、基台11上にレーザー光源12が5個×5個の正方形状に2次元配列(合計25個)で並べられているレーザー光源アレイである。
【0042】
励起光源10は、後述する回転蛍光板30が備える蛍光物質を励起させる励起光として、青色(発光強度のピーク:450nm付近)のレーザ光を射出する。
なお、励起光源10は、後述する蛍光物質を励起させることができる波長の光であれば、450nm以外のピーク波長を有する色光を射出する励起光源であっても構わない。
【0043】
本明細書において、蛍光体層32上において蛍光体層32と励起光の光軸とが交わる位置を「光照射位置S」と言う。光照射位置Sにおいて蛍光体層32に励起光が照射される。また、特定の時刻に蛍光体層32の励起光が照射された領域を「被照射領域T」という。後で説明するように、被照射領域Tは光照射位置Sに対して相対的に移動する。
【0044】
励起光源駆動系80は、励起光源10に駆動電流を供給する。本実施形態では、この励起光源駆動系80が、光照射位置Sにおける蛍光体層32の温度を推定し、この推定温度d0が設定温度以上である場合に励起光源10への電流供給をOFFに切り替える過昇温防止機構を備えている点に特徴がある。この励起光源駆動系80の構成については、後に詳述する。
【0045】
コリメーターレンズアレイ13は、各レーザー光源12に対応して設けられた複数のマイクロレンズ130が5個×5個の2次元配列(合計25個)で並べられて構成されている。このコリメーターレンズアレイ13は、各マイクロレンズ130が、それぞれ、各レーザー光源12から射出される各レーザー光の光線軸上となるように配置され、各レーザー光を平行化する。
【0046】
第1集光レンズ20は、例えば凸レンズからなる。第1集光レンズ20は、コリメーターレンズアレイ13から入射する複数のレーザー光(励起光)の光線軸上に配置され、この励起光を収束する。
【0047】
第1平行化レンズ21は、例えば両凹レンズからなる。第1平行化レンズ21は、第1集光レンズ20と、第1集光レンズ20における焦点位置との間に配置され、第1集光レンズ20から入射する励起光を平行化する。
【0048】
ダイクロイックミラー22は、その表面が、励起光源10の発光面及び蛍光体層32の表面に対して約45°の角度をなすように、これら各面と対峙して配置されている。ダイクロイックミラー22は、第1平行化レンズ21から入射する励起光(青色光成分)を90°折り曲げてピックアップ光学系40側に反射するとともに、後述するピックアップ光学系40から入射する赤色光成分及び緑色光成分を透過させる。
【0049】
ピックアップ光学系40は、ダイクロイックミラー22と回転蛍光板30との間の光の光路上に配置されている。ピックアップ光学系40は、回転蛍光板30からの光の広がりを抑える第1レンズ41と、第1レンズ41から入射される光を平行化する第2レンズ42とを含んで構成されている。第1レンズ41は、例えば、回転蛍光板30側が平面状、これと反対側が凸の曲面状をなす平凸レンズからなり、第2レンズ42は、例えば凸レンズからなる。ピックアップ光学系40は、回転蛍光板30からの光を略平行化した状態でダイクロイックプリズム22に入射させる。また、ピックアップ光学系40の第1レンズ41及び第2レンズ42は、ダイクロイックミラー22から入射する励起光を集光する機能を兼ねており、この励起光を集光させた状態で回転蛍光板30に入射させる。
【0050】
図3は、回転蛍光板30の斜視図である。
回転蛍光板30はいわゆる反射型の回転蛍光板である。回転蛍光板30は、図1及び図3に示すように、モーター(回転駆動機構)33により回転駆動される回転板31の上に、回転板31の回転軸Oの回りに蛍光体層32が形成されてなる。蛍光体層32は図示しない蛍光体粒子とバインダーを含む。
【0051】
この回転蛍光板30には、第1レンズ41及び第2レンズ42によって集光された励起光(青色光)が、蛍光体層32の表面から入射する。また、回転蛍光板30は、励起光が入射する側と同じ側に向けて、蛍光体層32が発した赤色光及び緑色光(蛍光)を射出する。また、この回転蛍光板30では、回転板31を回転軸Oの回りに回転させるため、被照射領域Tが回転軸Oの回りに円を描くように光照射位置Sに対して相対的に移動する。以下では、この被照射領域Tの移動経路を、「蛍光軌跡r」と言う。
【0052】
回転蛍光板30は、使用時において7500rpmで回転する。詳しい説明は省略するが、回転蛍光板30の直径は50mmであり、光照射位置Sが回転蛍光板30の回転中心から約22.5mm離れた場所に位置するように構成されている。つまり、回転蛍光板30は、被照射領域Tが約18m/秒の速度で回転軸Oの回りに円を描くように移動する。
【0053】
回転板31は、蛍光体層32が発する蛍光を反射する材料よりなる。なお、本実施形態では回転板31として円板を用いているが、その形状は円板に限られない。回転板31の材料としては、例えば、Al等の熱伝導率の高い金属材料等を用いることができる。
【0054】
蛍光体層32は、蛍光を発する蛍光体粒子を有しており、励起光(青色光)を吸収し、概ね490〜750nm(発光強度のピーク:570nm、図4参照)の蛍光に変換する機能を有する。この蛍光には、緑色光(波長530nm付近)及び赤色光(波長630nm付近)が含まれる。
【0055】
蛍光体粒子は、図1に示す励起光源10から射出される励起光を吸収し、蛍光を発する粒子状の蛍光物質である。例えば、蛍光体粒子には、波長が約450nmの青色光によって励起されて蛍光を発する物質が含まれており、励起光の一部を、赤色の波長帯域から緑色の波長帯域まで含む光に変換して射出する。
【0056】
蛍光体粒子としては、通常知られたYAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)系蛍光体層を用いることができる。例えば、平均粒径が10μmの(Y,Gd)3(Al,Ga)5O12:Ceで示される組成のYAG系蛍光体層を用いることができる。なお、蛍光体粒子の形成材料は、1種であっても良く、2種以上の形成材料を用いて形成されている粒子を混合したものを蛍光体粒子として用いることとしても良い。
【0057】
図1に示すように、回転蛍光板30から射出された光は、前述のピックアップ光学系40で平行化され、ダイクロイックミラー22に入射する。
【0058】
ダイクロイックミラー22は、ピックアップ光学系40から入射する光のうち、励起光(青色光)を反射して除去し、緑色光及び赤色光を透過させる。なお、ダイクロイックミラー22には、ピックアップ光学系40からの光が入射する入射面と反対側の表面に、図示しない他の光源装置から射出された青色光が入射し、ピックアップ光学系40からの光の光線軸と平行な方向に反射される。
【0059】
第2集光レンズ50は、例えば凸レンズからなる。第2集光レンズ50は、ダイクロイックミラー22から入射する光の光線軸上に配置され、この光を集光する。
【0060】
第2集光レンズ50を透過した光は、ロッドインテグレーター60の一端側に入射する。ロッドインタグレーター60は、光路方向に延在する角柱状の光学部材であり、内部を透過する光に多重反射を生じさせることにより、第2集光レンズ50を透過した光を混合し、輝度分布を均一化するものである。ロッドインテグレーター60の光路方向に直交する断面形状は、液晶光変調装置400R、液晶光変調装置400G、液晶光変調装置400Bの画像形成領域の外形形状と略相似形となっている。
【0061】
ロッドインテグレーター60の他端側から射出された光は、第2平行化レンズ70により平行化され、光源装置100から射出される。
【0062】
色分離導光光学系200は、ダイクロイックミラー210、ダイクロイックミラー220、反射ミラー230、反射ミラー240、反射ミラー250及びリレーレンズ260を備えている。色分離導光光学系200は、光源装置100からの光を赤色光、緑色光及び青色光に分離し、赤色光、緑色光及び青色光のそれぞれの色光を照明対象となる液晶光変調装置400R、液晶光変調装置400G、液晶光変調装置400Bに導光する機能を有する。
【0063】
ダイクロイックミラー210、ダイクロイックミラー220は、基板上に、所定の波長領域の光を反射して、他の波長領域の光を透過させる波長選択透過膜が形成されたミラーである。具体的には、ダイクロイックミラー210は、青色光成分を透過させ、赤色光成分及び緑色光成分を反射する。ダイクロイックミラー220は、緑色光成分を反射して、赤色光成分を透過させる。
【0064】
反射ミラー230、反射ミラー240、反射ミラー250は、入射した光を反射するミラーである。具体的には、反射ミラー230は、ダイクロイックミラー210を透過した青色光成分を反射する。反射ミラー240、反射ミラー250は、ダイクロイックミラー220を透過した赤色光成分を反射する。
【0065】
ダイクロイックミラー210を透過した青色光は、反射ミラー230で反射され、青色光用の液晶光変調装置400Bの画像形成領域に入射する。ダイクロイックミラー210で反射された緑色光は、ダイクロイックミラー220でさらに反射され、緑色光用の液晶光変調装置400Gの画像形成領域に入射する。ダイクロイックミラー220を透過した赤色光は、入射側の反射ミラー240、リレーレンズ260、射出側の反射ミラー250を経て赤色光用の液晶光変調装置400Rの画像形成領域に入射する。
【0066】
液晶光変調装置400R、液晶光変調装置400G、液晶光変調装置400Bは、通常知られたものを用いることができ、例えば、液晶素子410と液晶素子410を挟持する偏光素子420、430とを有した、透過型の液晶ライトバルブ等の光変調装置により構成される。偏光素子420、430は、例えば透過軸が互いに直交する構成(クロスニコル配置)となっている。
【0067】
液晶光変調装置400R、液晶光変調装置400G、液晶光変調装置400Bは、入射された色光を画像情報に応じて変調してカラー画像を形成するものであり、光源装置100の照明対象となる。これら液晶光変調装置400R、液晶光変調装置400G及び液晶光変調装置400Bによって、入射された各色光の光変調が行われる。
【0068】
例えば、液晶光変調装置400R、液晶光変調装置400G、液晶光変調装置400Bは、一対の透明基板に液晶を密閉封入した透過型の液晶光変調装置であり、ポリシリコンTFTをスイッチング素子として、与えられた画像情報に応じて、入射側偏光板420から射出された1種類の直線偏光の偏光方向を変調する。
【0069】
クロスダイクロイックプリズム500は、射出側偏光板430から射出された色光毎に変調された光学像を合成してカラー画像を形成する光学素子である。このクロスダイクロイックプリズム500は、4つの直角プリズムを貼り合せた平面視略正方形状をなしている。直角プリズムを貼り合せた略X字状の界面には、誘電体多層膜が形成されている。略X字状の一方の界面に形成された誘電体多層膜は、赤色光を反射するものであり、他方の界面に形成された誘電体多層膜は、青色光を反射するものである。これらの誘電体多層膜によって赤色光及び青色光は曲折され、緑色光の進行方向が揃えられることにより、3つの色光が合成される。
【0070】
クロスダイクロイックプリズム500から射出されたカラー画像は、投写光学系600によって拡大投写され、スクリーンSCR上で画像を形成する。
【0071】
(蛍光体層の温度測定方法、及び、励起光源駆動系)
次に、実施形態1の蛍光体層の温度測定方法、及び、この蛍光体層の温度測定方法を適用した励起光源駆動系(実施形態1の光源装置が備える励起光源駆動系)について説明する。
図5は、実施形態1の蛍光体層の温度測定方法を説明するための模式図、図6は、実施形態1の光源装置において、温度検出装置の配置位置を示す模式図、図7は、被照射領域Tの経時的な温度変化を示すグラフ、図8は、実施形態1の光源装置が備える励起光源駆動系の作動の流れを示すフローチャートである。
【0072】
まず、実施形態1の蛍光体層の温度測定方法について、回転蛍光板30の光照射位置Sの温度を推定する場合を例にして説明する。
【0073】
この実施形態の蛍光体層の温度測定方法は、励起光源10から励起光を射出させつつ回転蛍光板30を回転させることによって、被照射領域Tを光照射位置Sに対して相対的に移動させ、測定位置A1で被照射領域Tの温度dxを検出する第1工程を有する。さらに、この測定位置A1において検出された被照射領域Tの温度d1に基づいて光照射位置Sでの蛍光体層32の温度を推定する第2工程を有する。ここで測定位置A1は、蛍光軌跡r上の光照射位置S以外の領域に設定される位置であり、本実施形態では1箇所とする。
【0074】
光照射位置Sでの蛍光体層の温度は、例えば次のようにして推定することができる。
すなわち、光照射位置Sにおいて蛍光体層32に励起光が照射されると、励起光の一部は、前述の波長帯域の蛍光に変換されて蛍光体層32から射出される。一方、蛍光に変換されなかった励起光のエネルギーの一部は、熱エネルギーとなって蛍光体層32を発熱させる。そして、図5に示すように、蛍光体層32の発熱部分(被照射領域T)は、回転蛍光板30の回転によって、回転軸Oの回りに円を描くように光照射位置Sに対して相対的に移動する。図5では、被照射領域Tと測定位置A1とを識別しやすいように、被照射領域Tが蛍光軌跡r上の光照射位置Sと測定位置A1との間に位置している状態を示している。
【0075】
ここで、時刻t0(t0=0)において、光照射位置Sにて被照射領域Tに励起光が照射されるとする。図7に示すように、光照射位置Sに対して相対的に移動する被照射領域Tの温度は時間と共に低下する。この温度変化は、一般的に式(1)で表される。
dx=d0e−ktx・・・(1)
d0:光照射位置Sでの蛍光体層32の温度
dx:測定位置A1で検出された蛍光体層32(被照射領域T)の温度
tx:被照射領域Tが光照射位置Sから測定位置A1に到るまでの移動時間
k :減衰係数
e :自然対数の底
【0076】
このうち、減衰係数kが一定の既知の値であると仮定すれば、測定位置A1での蛍光体層32の温度dxを検出することにより、この検出温度dxと移動時間txに基づき、前記式(1)によって、光照射位置Sでの蛍光体層32の温度d0を算出することが可能である。
【0077】
このように算出された温度d0は、光照射位置Sでの蛍光体層32の実際の温度と近似もしくは一致しており、これによって、光照射位置Sでの蛍光体層32の温度を高い精度で推定することが可能となる。
【0078】
次に、実施形態1の光源装置が備える励起光源駆動系80について説明する。
図1に示すように、この励起光源駆動系80は、温度測定装置81と、制御部82と、LDドライバー(駆動電流供給部)83とを備えており、このうち温度測定装置81と制御部82とが、光照射位置Sでの蛍光体層32の推定温度d0に基づいて、励起光源10への電流供給のON/OFFを切り替える過昇温防止機構を構成する。
【0079】
以下、各部の構成について説明する。
【0080】
温度測定装置81は、実施形態1の蛍光体層の温度測定方法を用いて、光照射位置Sでの蛍光体層32の推定温度d0を得るものであり、温度検出部811と演算部812とを有している。
【0081】
温度検出部811は、測定位置A1での被照射領域Tの温度dxを検出し、この検出温度dxを演算部812に出力する。
【0082】
温度検出部811としては、特に限定されないが、放射温度計を用いるのが好ましい。放射温度計は、物体から放射される赤外線や可視光線の強度を測定して、物体の温度を測定する温度計であり、蛍光体層32に接触することなく、非接触で短時間に温度dxを測定できるという利点がある。
【0083】
温度検出部811として放射温度計を用いる場合には、図6に示すように、温度検出部811は、測定位置A1の直上に、その測定視野範囲に測定位置A1が含まれるように配置される。温度検出部811が、このように配置されることにより、光照射位置Sの直上に配設すべき光学系(ピックアップ光学系40)と温度検出部811とを接触させることなく、両者を並列して配置できるという効果が得られる。
【0084】
なお、本実施形態では、被照射領域Tが光照射位置Sから回転軸Oの回りに約90°回転移動した位置を測定位置A1としているが、これに限るものではない。例えば光照射位置Sから120°回転移動した位置、もしくは、180°回転移動した位置等としても構わない。ただし、光照射位置Sでの蛍光体層32の推定温度と実際の温度との誤差を小さくする点からは、ピックアップ光学系40と温度検出部811とが接触しない範囲で、光照射位置Sからできるだけ近い領域を測定位置A1とするのが好ましい。回転蛍光板30の回転数、周囲温度、風量状態等による減衰係数kへの影響が小さく抑えられるからである。
【0085】
演算部812は、温度検出部811から入力された検出温度dxに基づいて、光照射位置Sでの蛍光体層32の温度d0を推定する。本実施形態では、演算部812のメモリに、減衰係数k及び移動時間txが予め記憶されており、演算部812は、これら各値k、txと、温度検出部811から入力された検出温度dxに基づいて、前記式(1)によって光照射位置Sでの蛍光体層32の推定温度d0を演算する。演算によって得られた推定温度d0は制御部82に出力される。
【0086】
制御部82は、演算部812から入力された推定温度d0が、制御部82のメモリに予め記憶された設定温度dmax以上であるか否かを判断し、推定温度d0が設定温度dmax以上である場合にLDドライバー83にシャットダウン信号を出力する。ここで、設定温度dmaxは、光照射位置Sでの蛍光体層32の許容温度の上限であり、目的に応じて適宜設定される。例えば、蛍光体層32に含まれるシリコーンの熱分解を抑える目的の場合には、シリコーンの分解温度(140℃)付近に設定される。
【0087】
なお、減衰係数k及び移動時間tx、設定温度dmaxは、図示しない操作部の操作によって、演算部812及び制御部82にそれぞれ入力される。
【0088】
LDドライバー83は、励起光源10に駆動電流を供給する。本実施形態では、LDドライバー83は、制御部82からシャットダウン信号を受信すると、駆動電流の供給を停止し、シャットダウン信号が解除されると駆動電流の供給を再開するように構成されている。
【0089】
次に、この励起光源駆動系80の作動について、図8を参照しながら説明する。
まず、LDドライバー83からの駆動電流の供給をONにする(ステップS1)。これにより、励起光源10から励起光が射出され、蛍光体層32の光照射位置Sに対応する部分(被照射領域T)に励起光が照射され、当該部分が発熱する。光照射位置Sで発熱した部分(被照射領域T)は、回転蛍光板30の回転によって、回転軸Oの回りに円を描くように光照射位置Sに対して相対的に移動する。そして、被照射領域Tは測定位置A1を通過して光照射位置Sに戻るというサイクルを繰り返す。
【0090】
ここで、測定位置A1での被照射領域Tの温度dxは、温度検出部811によって検出され(ステップS2、第1工程)、演算部812に出力される。演算部812は、温度検出部811から検出温度dxが入力されると、この検出温度dxに基づいて前記式(1)によって光照射位置Sでの蛍光体層32の推定温度d0を演算する(ステップS3、第2工程)。演算によって得られた推定温度d0は制御部82に出力される。制御部82は、演算部812から推定温度d0が入力されると、これが設定温度dmax以上であるか否かを判断し(ステップS4)、推定温度d0が設定温度dmax以上である場合にはLDドライバー83にシャットダウン信号を出力する(ステップS5)。LDドライバー83は、制御部82からシャットダウン信号が入力されると、駆動電流の供給をOFFに切り替える(ステップS6)。これにより、励起光源10からの励起光の射出が停止する。
【0091】
このように構成された励起光源駆動系80は、温度測定装置81によって光照射位置Sでの蛍光体層32の実際の温度に近似もしくは一致した推定温度d0を得ることができる。そして、制御部82は、推定された温度d0が設定温度dmax以上であるときに励起光源10への電流供給をOFFに切り替える。このため、光照射位置Sでの蛍光体層32の温度が設定温度dmaxを超えるのを確実に抑止することが可能である。
【0092】
したがって、このような励起光源駆動系80を備える光源装置100は、熱による蛍光体層32の劣化が低減される。また、光照射位置Sの過熱による光源装置100の故障が起こりにくい。
【0093】
このため、このような光源装置100を備えるプロジェクター1000は、光源装置100が長寿命であるため、光源装置100の交換頻度が少なくて済み、メンテナンスコストを抑えることが可能である。
【0094】
また、実施形態1の蛍光体層の温度測定方法では、光照射位置Sにおける蛍光体層32の温度ではなく、蛍光軌跡rのうち光照射位置Sとは異なる測定位置A1における被照射領域Tの温度を実測するため、温度測定装置81を光照射位置Sの直上に配置する必要がない。このため、このような温度測定方法を用いる光源装置100及びプロジェクター1000では、温度測定装置81と、光照射位置Sの直上に配置された光学系(ピックアップ光学系40等)とが互いに邪魔し合うことがなく、各部の配置スペースを容易に確保することが可能となる。
【0095】
<実施形態2>
次に、本発明の蛍光体層の温度測定方法、光源装置及びプロジェクターの実施形態2について説明する。
なお、実施形態2においては、前記実施形態1との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0096】
実施形態2のプロジェクター及び光源装置は、励起光源駆動系80で用いる蛍光体層の温度測定方法が異なる以外は、前記実施形態1と同様の構成とされている。
【0097】
以下、この蛍光体層の温度測定方法(実施形態2の温度測定方法)と、この温度測定方法を適用した励起光源駆動系80について説明する。
【0098】
図9は、実施形態2の蛍光体層の温度測定方法を説明するための模式図、図10は、実施形態2の光源装置において、温度検出装置の配置位置を示す模式図、図11は、蛍光体層における被照射領域Tの経時的な温度変化を示すグラフである。
【0099】
まず、実施形態2の蛍光体層の温度測定方法について、回転蛍光板30の光照射位置Sの温度を推定する場合を例にして説明する。
【0100】
図9は、被照射領域Tが光照射位置Sに対して相対的に移動し、第2測定位置A2に位置している状態を示している。この実施形態の蛍光体層の温度測定方法は、励起光源10から励起光を射出させつつ回転蛍光板30を回転させることによって、被照射領域Tを光照射位置Sに対して相対的に移動させ、被照射領域Tが第2測定位置A2に移動したとき、第2測定位置A2における蛍光体層32すなわち被照射領域Tの温度d2を検出する。さらに、温度d2を検出すると同時に、被照射領域Tの軌跡の上であって、光照射位置Sとは異なり且つ第2測定位置A2とも異なる第1測定位置A1における蛍光体層32の温度d1を検出する。以上の工程が第1工程に相当する。さらに、温度d1と温度d2とに基づいて光照射位置Sでの蛍光体層32の温度d0を推定する第2工程を有する。
【0101】
以下の説明では、第1測定位置A1と第2測定位置A2のうち、被照射領域Tの光照射位置Sからの移動距離が短い方を「第1測定位置A1」と呼び、被照射領域Tの光照射位置Sからの移動距離が長い方を「第2測定位置A2」と呼ぶ。また、被照射領域Tが光照射位置Sから第1測定位置A1まで移動するために要する時間を所要時間t1とし、被照射領域Tが光照射位置Sから第2測定位置A2まで移動するために要する時間を所要時間t2とする。
【0102】
光照射位置Sでの蛍光体層32の温度は、例えば次のようにして推定することができる。
すなわち、前述のように光照射位置Sで励起光が照射された被照射領域Tの経時的な温度変化は、前記一般式(1)で表される。したがって、図9に示すように、蛍光軌跡r上に、2箇所の測定位置(第1測定位置A1、第2測定位置A2)を設定し、第1測定位置A1における蛍光体層32の温度d1と第2測定位置A2における蛍光体層32の温度d2とを検出すれば、温度d1と温度d2と所要時間t1と所要時間t2を前記一般式(1)に代入することによって下記式(2)、式(3)を得ることができる。この2式の変数は減衰係数kと推定温度d0の2つであるため、この2式を解くことにより、これらの値k、d0を求めることができる(図11参照)。
d1=d0e−kt1・・・(2)
d2=d0e−kt2・・・(3)
d0:光照射位置Sでの蛍光体層32の温度
d1:第1測定位置A1での蛍光体層32の温度
d2:第2測定位置A2での蛍光体層32の温度
t1:被照射領域Tが光照射位置Sから第1測定位置A1に到るまでの移動時間
t2:被照射領域Tが光照射位置Sから第2測定位置A2に到るまでの移動時間
k :減衰係数
e :自然対数の底
【0103】
この実施形態2の蛍光体層の温度測定方法では、第1測定位置A1における蛍光体層32の温度d1と第2測定位置A2における蛍光体層32の温度d2とに基づいて、減衰係数kと光照射位置Sでの蛍光体層32の温度d0を算出するため、回転蛍光板の回転数、周囲温度、風量状態等、実際の条件に即した減衰係数kを得ることができ、これによって光照射位置Sでの蛍光体層32の実際の温度により近似した推定温度d0を得ることが可能である。
【0104】
次に、実施形態2の光源装置が備える励起光源駆動系81について説明する。
この励起光源駆動系80は、温度測定装置81と、制御部82と、LDドライバー83とを備えており、このうち温度測定装置81と制御部82とが、光照射位置Sでの蛍光体層32の推定温度d0に基づいて、励起光源10への電流供給のON/OFFを切り替える過昇温防止機構を構成する。以下、各部の構成について説明する。
【0105】
温度測定装置81は、実施形態2の蛍光体層の温度測定方法を用いて、光照射位置Sでの蛍光体層32の温度を推定するものであり、第1温度検出部813及び第2温度検出部814と、演算部812とを備える。
各温度検出部813、814としては、それぞれ、前記実施形態1と同様の理由から放射温度計を用いるのが好ましい。
【0106】
図10に示すように、温度検出部813、温度検出部814として放射温度計を用いる場合には、温度検出部813は、温度検出部813の測定視野範囲に第1測定位置A1が含まれるように第1測定位置A1の直上に配置され、温度検出部814は、温度検出部814の測定視野範囲に第2測定位置A2が含まれるように第2測定位置A2の直上に配置される。温度検出部813、温度検出部814が、このように配設されることにより、光照射位置Sの直上に配設すべき光学系(ピックアップ光学系40)が温度検出部813および温度検出部814のいずれとも接触させることなく、両者を並列して配置できるという効果が得られる。
【0107】
なお、本実施形態では、被照射領域Tが光照射位置Sから回転軸Oの回りに約90°回転移動した位置を第1測定位置A1とし、被照射領域Tが光照射位置Sから回転軸Oの回りに約180°回転移動した位置を第2測定位置A2としているが、これに限るものではない。ただし、光照射位置Sでの蛍光体層32の推定温度d0と実際の温度との誤差を小さくする点からは、ピックアップ光学系40と各温度検出部813、814とが接触しない範囲で、光照射位置Sからできるだけ近い領域を第1測定位置A1とするのが好ましく、第1測定位置A1からできるだけ遠い領域を第2測定位置A2とするのが好ましい。これにより、演算部82において、回転蛍光板30の回転数、周囲温度、風量状態等に即した減衰係数kが得られ、光照射位置Sでの蛍光体層32の実際の温度により近い推定温度d0を得ることができるからである。
【0108】
演算部812は、各温度検出部813、814から入力された検出温度d1、d2に基づいて、光照射位置Sでの蛍光体層32の温度d0を推定し、この推定温度d0を制御部82に出力する。本実施形態では、演算部812のメモリに、移動時間t1、t2が予め記憶されており、演算部812は、これら各値t1、t2と、各温度検出部813、814から入力された各検出温度d1、d2を前記一般式(1)に代入し、得られた前記式(3)(4)によって光照射位置Sでの蛍光体層32の温度d0を演算する。演算によって得られた温度の値は、推定温度d0として制御部82に出力される。
【0109】
制御部82及びLDドライバー83の構成は前記実施形態1と同様である。
すなわち、制御部82は、演算部812から推定温度d0が入力されると、これが設定温度dmax以上であるか否かを判断し、推定温度d0が設定温度dmax以上である場合にはLDドライバー83にシャットダウン信号を出力する。LDドライバー83は、制御部82からシャットダウン信号が入力されると、駆動電流の供給をOFFに切り替える。これにより、励起光源10からの励起光の射出が停止する。
【0110】
実施形態2においても、前記実施形態1と同様の効果を得ることができる。
また、実施形態2の励起光源駆動系80では、特に、光照射位置Sでの蛍光体層32の実際の温度により近似もしくは一致した推定温度d0を得ることができるため、光照射位置Sでの蛍光体層32の温度が設定温度dmax以上となるのを、より確実に抑止することが可能である。
【0111】
したがって、この励起光源駆動系80を備える光源装置100は、熱による蛍光体層32の劣化が低減される。また、光照射位置Sの過熱による光源装置100の故障が起こりにくい。
【0112】
このため、このような光源装置100を備えるプロジェクター1000は、光源装置100が長寿命であるため、光源装置100の交換頻度が少なくて済み、メンテナンスコストを抑えることが可能である。
【0113】
<実施形態3>
実施形態2では、第1測定位置A1における蛍光体層32の温度d1を検出すると同時に第2測定位置A2における蛍光体層32の温度d2を検出していたが、実施形態3では、被照射領域Tが光照射位置Sから第1測定位置A1へ移動したときに、第1測定位置A1において被照射領域Tの温度d1を検出し、被照射領域Tがさらに第2測定位置A2へ移動したときに、第2測定位置A2において被照射領域Tの温度d2を検出してもよい。この場合も実施形態2と同様、被照射領域Tが光照射位置Sから第1測定位置A1まで移動するために要する時間を所要時間t1とし、被照射領域Tが光照射位置Sから第2測定位置A2まで移動するために要する時間を所要時間t2とする。その他の構成は実施形態2と同様であるため、説明を省略する。
【0114】
実施形態2においては、第1測定位置A1における蛍光体層32の温度d1と第2測定位置A2における蛍光体層32の温度d2とを同時に検出するため、第1測定位置A1における被検出物は第2測定位置A2における被検出物とは異なるものである。つまり、第1測定位置A1における被検出物は、第2測定位置A2における被検出物すなわち被照射領域Tが光照射位置Sにおいて励起光が照射されてから所定の時間(t2−t1)経過した後に、光照射位置Sにおいて励起光が照射された領域である。光照射位置Sにおける蛍光体層32の温度は一定とは限らない。そのため、光照射位置Sにおいて蛍光体層32に励起光が照射された時刻を図11に示したt0とすれば、第1測定位置A1における被検出物の時刻t0での温度が被照射領域Tの時刻t0での温度とは異なる場合がある。
【0115】
これに対して、実施形態3においては、被照射領域Tが第1測定位置A1に移動したときに被照射領域Tの温度d1を検出し、被照射領域Tがさらに第2測定位置A2に移動したときに被照射領域Tの温度d2を検出するため、実施形態2において得られる効果の他に、非常に高い精度で光照射位置Sの温度d0を推定することができるという効果が得られる。
【0116】
以上、本発明を上記の実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。その趣旨を逸脱しない範囲において種々の様態において実施することが可能である。
【0117】
(変形例1)
前記実施形態2および実施形態3の光源装置100では、温度測定装置81が、蛍光軌跡rの2箇所の領域について温度を検出し、これに基づいて光照射位置Sでの蛍光体層32の温度を推定するように構成されているが、温度を検出する領域は2箇所に限るものではなく、3箇所以上であっても構わない。例えば、3箇所以上の測定位置のうち、任意の2箇所の検出温度に基づいて光照射位置Sでの蛍光体層32の温度を算出し、他の2箇所の検出温度に基づいて算出された光照射位置Sでの蛍光体層32の温度との平均値をとれば、光照射位置Sでの実際の温度にさらに近似した推定温度d0を得ることができる。この推定温度d0に基づいて励起光源への電流供給のON/OFFを切り替えることにより、光照射位置Sでの過剰な温度上昇をより確実に抑えることが可能となる。
【0118】
(変形例2)
前記指数関数は、理想的な状態での関係式であるため、実際の温度変化とは異なる場合がある。特に、ピックアップ光学系40の各レンズ41、42が風の流れを阻害したりすると、前記指数関数から求められた計算値と光照射位置Sでの実測値との差が比較的大きいこともあり得る。そのような場合には、上記の各実施例や変形例において、求められた計算値に適宜補正を加えたり、式を変形したりして光照射位置Sでの蛍光体層の温度d0を求めるようにしても構わない。
【0119】
(変形例3)
前記各実施形態あるいは前記各変形例では、制御部82は、光照射位置Sでの推定温度d0が設定温度dmax以上となったときに、駆動電流の供給がOFFとなるようにLDドライバー83を制御している。しかし、前記各実施形態あるいは前記各変形例において、駆動電流の供給量が低減(セーブ運転モード)するようにLDドライバー83を制御するものであっても良い。これにより、励起光源10への電流供給を連続して行いつつ、光照射位置Sでの過剰な温度上昇を抑えることが可能となる。
【0120】
(変形例4)
前記各実施形態あるいは前記各変形例において、制御部82は、光照射位置Sでの推定温度d0が設定温度dmax以上となったときに、回転板31の回転数が上がるようにモーターを制御するものであっても良い。回転板31の回転数が上がると周囲の風量が増大するため、励起光が照射された部分が効率良く冷却され、光照射位置Sでの蛍光体層32の温度上昇を抑えることが可能となる。
【0121】
(変形例5)
前記各実施形態あるいは前記各変形例の光源装置100は、回転蛍光板30の回転板31として反射型基板を用い、蛍光体層32に対して、蛍光の出射側と同じ側から励起光を入射する反射型であった。しかし、前記各実施形態あるいは前記各変形例において、回転板31として励起光を透過させる透過型基板を用いてもよい。この場合、蛍光体層に対して、蛍光の出射側と反対側(回転板31側)から励起光を入射させる構成であり、励起光を集光させる集光手段を省略しても構わない。透過型の場合にも、反射型の場合と同様の作用・効果を得ることが可能である。
【0122】
(変形例6)
前記各実施形態あるいは前記各変形例の光源装置100は、蛍光体層32の被照射領域Tが回転軸Oの回りに円を描くように光照射位置Sに対して相対的に移動するように構成されているが、被照射領域Tの移動方法はこれに限るものではない。例えば被照射領域Tが光照射位置Sに対して往復移動するように構成されていても構わない。この場合にも、被照射領域Tを、光照射位置Sに対して相対的に移動させ、光照射位置Sとは異なる位置で、前記被照射領域Tの温度を検出する(第1工程)。その後、第1工程で検出された前記被照射領域Tの温度に基づいて、光照射位置Sでの蛍光体層の温度を推定する(第2工程)。そして、推定した光照射位置Sでの蛍光体層の温度に応じて、励起光の強度を制御すればよい。あるいは、推定した光照射位置Sでの蛍光体層の温度に応じて、被照射領域Tの光照射位置Sに対する移動速度を制御してもよい。
【0123】
本発明においては、温度検出部によって被照射領域Tの温度を検出する。しかし、温度検出部として放射温度計を用いる場合、実際には温度検出部は被照射領域Tから放射される赤外線を検出し、検出された赤外線の強度を温度に換算している。したがって、本発明において、物体の温度を測定するということは、物体から放射される赤外線の強度を測定するということと実質的に等価である。すなわち、被照射領域Tの温度に基づいて光照射位置Sでの蛍光体層の温度を推定する、ということは、被照射領域Tから放射される赤外線の強度に基づいて、光照射位置Sでの蛍光体層から放射される赤外線の強度を推定する、ということと実質的に等価である。そこで、必ずしも赤外線の強度を温度に換算する必要は無く、被照射領域Tから放射される赤外線の強度に基づいて、光照射位置Sでの蛍光体層から放射される赤外線の強度を推定してもよい。この場合、放射赤外線強度と温度との間の既知の関係を用いて式(1)を適宜補正すればよい。
【0124】
また、前記各実施形態では、本発明の蛍光体層の温度検出方法をプロジェクター1000に搭載された光源装置100に適用しているが、製造工程において電子機器に搭載する前の光源装置や設計段階での光源装置に適用しても構わない。
【0125】
また、本発明は、次のような変形も可能である。
本実施形態のプロジェクター1000では、液晶光変調装置として3つの液晶光変調装置を用いたが、これに限らない。1つ、2つ又は4つの液晶光変調装置を用いたプロジェクターにも適用可能である。
【0126】
また、本実施形態のプロジェクター1000では、透過型のプロジェクターを用いたが、これに限らない。例えば、反射型のプロジェクターを用いてもよい。ここで、「透過型」とは、透過型の液晶表示装置等のように光変調手段としての光変調装置が光を透過するタイプであることを意味している。「反射型」とは、反射型の液晶表示装置等のように光変調手段としての光変調装置が光を反射するタイプであることを意味している。反射型のプロジェクターに本発明を適用した場合にも、透過型プロジェクターと同様の効果を奏することができる。
【0127】
本発明は、投写画像を観察する側から投写するフロント投写型プロジェクターに適用する場合にも、投写画像を観察する側とは反対側から投写するリア投写型プロジェクターに適用する場合にも、適用することができる。
【0128】
上記各実施形態においては、本発明の照明装置をプロジェクターに適用した例について説明したが、これに限らない。例えば、本発明の照明装置を他の光学機器(例えば、光ディスク装置、自動車のヘッドランプ、照明機器等)に適用することも可能である。
【符号の説明】
【0129】
10…励起光源、30…回転蛍光板、31…回転板、32…蛍光体層、33…モーター(回転駆動機構)、40…ピックアップ光学系(集光手段)、80…励起光源駆動系、81…温度測定装置、811…温度検出部、812…演算部、82…制御部、83…LDドライバー(駆動電流供給部)、100…光源装置、400R,400G,400B…液晶光変調装置(光変調装置)、600…投写光学系、1000…プロジェクター、A1…測定位置、A2…測定位置、S…光照射位置、T…被照射領域
【特許請求の範囲】
【請求項1】
励起光で照射された蛍光体層の被照射領域を、該励起光が照射される該蛍光体層の光照射位置に対して相対的に移動させ、該光照射位置とは異なる第1の測定位置で、前記被照射領域の温度を検出する第1工程と、
前記第1工程で検出された前記被照射領域の温度に基づいて、前記光照射位置での蛍光体層の温度を推定する第2工程と、を有することを特徴とする蛍光体層の温度測定方法。
【請求項2】
前記第1工程において、前記被照射領域の移動経路上であって、前記光照射位置と異なり、かつ前記測定位置とも異なる第2の測定位置において、前記蛍光体層の温度を検出し、
前記第2工程において、前記第1の測定位置で検出された温度と前記第2の測定位置で検出された温度とに基づいて、前記光照射位置での蛍光体層の温度を推定することを特徴とする請求項1に記載の蛍光体層の温度測定方法。
【請求項3】
前記蛍光体層は、回転駆動される回転基板上に設けられ、前記被照射領域が前記回転基板の回転軸の回りに円を描くように移動することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の蛍光体層の温度測定方法。
【請求項4】
下記式を用いて、前記光照射位置での蛍光体層の温度を推定することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の蛍光体層の温度測定方法。
dx=d0e−ktx
d0:前記光照射位置での前記蛍光体層の温度
dx:前記光照射位置とは異なる測定位置での前記蛍光体層の温度
tx:前記励起光で照射された前記蛍光体層の被照射領域が、前記光照射位置から前記測定位置に到るまでの移動時間
k :減衰係数
e :自然対数の底
【請求項5】
励起光を射出する励起光源と、
前記励起光を受けて蛍光を放射するとともに、前記励起光が照射された被照射領域が、前記励起光が照射される光照射位置に対して相対的に移動可能な蛍光体層と、
前記光照射位置とは異なる第1の測定位置に設けられた温度検出部と、
前記温度検出部で検出された前記被照射領域の温度に基づいて前記励起光の強度を制御する制御部と、を有することを特徴とする光源装置。
【請求項6】
前記温度検出部で検出された前記被照射領域の温度に基づいて、前記光照射位置での蛍光体層の推定温度を演算する演算部をさらに備え、
前記制御部は、前記推定温度に基づいて前記励起光の強度を制御することを特徴とする請求項5に記載の光源装置。
【請求項7】
前記制御部は、予め記憶された設定温度と、前記推定温度とを比較し、前記推定温度が前記設定温度以上である場合に、前記励起光源への駆動電流の供給を遮断することを特徴とする請求項6に記載の光源装置。
【請求項8】
前記制御部は、予め記憶された設定温度と、前記推定温度とを比較し、前記推定温度が前記設定温度以上である場合に、前記励起光源への駆動電流の供給量を低減することを特徴とする請求項6に記載の光源装置。
【請求項9】
励起光を射出する励起光源と、
前記励起光を受けて蛍光を放射するとともに、前記励起光が照射された被照射領域が、前記励起光が照射される光照射位置に対して相対的に移動可能な蛍光体層と、
前記光照射位置とは異なる第1の測定位置に設けられた温度検出部と、
前記温度検出部で検出された前記被照射領域の温度に基づいて、前記被照射領域の前記光照射位置に対する移動速度を制御する制御部と、を有することを特徴とする光源装置。
【請求項10】
前記温度検出部で検出された前記被照射領域の温度に基づいて、前記光照射位置での蛍光体層の推定温度を演算する演算部をさらに備え、
前記制御部は、前記推定温度に基づいて、前記被照射領域の前記光照射位置に対する移動速度を制御することを特徴とする請求項9に記載の光源装置。
【請求項11】
前記温度検出部として、放射温度計を用い、前記温度検出部を、前記被照射領域の移動経路の直上に配置することを特徴とする請求項5〜請求項10のいずれかに記載の光源装置。
【請求項12】
請求項5〜請求項11のいずれかに記載の光源装置と、前記光源装置から射出された光を画像情報に応じて変調する光変調装置と、前記光変調装置からの変調光を投写画像として投写する投写光学系と、を備えることを特徴とするプロジェクター。
【請求項1】
励起光で照射された蛍光体層の被照射領域を、該励起光が照射される該蛍光体層の光照射位置に対して相対的に移動させ、該光照射位置とは異なる第1の測定位置で、前記被照射領域の温度を検出する第1工程と、
前記第1工程で検出された前記被照射領域の温度に基づいて、前記光照射位置での蛍光体層の温度を推定する第2工程と、を有することを特徴とする蛍光体層の温度測定方法。
【請求項2】
前記第1工程において、前記被照射領域の移動経路上であって、前記光照射位置と異なり、かつ前記測定位置とも異なる第2の測定位置において、前記蛍光体層の温度を検出し、
前記第2工程において、前記第1の測定位置で検出された温度と前記第2の測定位置で検出された温度とに基づいて、前記光照射位置での蛍光体層の温度を推定することを特徴とする請求項1に記載の蛍光体層の温度測定方法。
【請求項3】
前記蛍光体層は、回転駆動される回転基板上に設けられ、前記被照射領域が前記回転基板の回転軸の回りに円を描くように移動することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の蛍光体層の温度測定方法。
【請求項4】
下記式を用いて、前記光照射位置での蛍光体層の温度を推定することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の蛍光体層の温度測定方法。
dx=d0e−ktx
d0:前記光照射位置での前記蛍光体層の温度
dx:前記光照射位置とは異なる測定位置での前記蛍光体層の温度
tx:前記励起光で照射された前記蛍光体層の被照射領域が、前記光照射位置から前記測定位置に到るまでの移動時間
k :減衰係数
e :自然対数の底
【請求項5】
励起光を射出する励起光源と、
前記励起光を受けて蛍光を放射するとともに、前記励起光が照射された被照射領域が、前記励起光が照射される光照射位置に対して相対的に移動可能な蛍光体層と、
前記光照射位置とは異なる第1の測定位置に設けられた温度検出部と、
前記温度検出部で検出された前記被照射領域の温度に基づいて前記励起光の強度を制御する制御部と、を有することを特徴とする光源装置。
【請求項6】
前記温度検出部で検出された前記被照射領域の温度に基づいて、前記光照射位置での蛍光体層の推定温度を演算する演算部をさらに備え、
前記制御部は、前記推定温度に基づいて前記励起光の強度を制御することを特徴とする請求項5に記載の光源装置。
【請求項7】
前記制御部は、予め記憶された設定温度と、前記推定温度とを比較し、前記推定温度が前記設定温度以上である場合に、前記励起光源への駆動電流の供給を遮断することを特徴とする請求項6に記載の光源装置。
【請求項8】
前記制御部は、予め記憶された設定温度と、前記推定温度とを比較し、前記推定温度が前記設定温度以上である場合に、前記励起光源への駆動電流の供給量を低減することを特徴とする請求項6に記載の光源装置。
【請求項9】
励起光を射出する励起光源と、
前記励起光を受けて蛍光を放射するとともに、前記励起光が照射された被照射領域が、前記励起光が照射される光照射位置に対して相対的に移動可能な蛍光体層と、
前記光照射位置とは異なる第1の測定位置に設けられた温度検出部と、
前記温度検出部で検出された前記被照射領域の温度に基づいて、前記被照射領域の前記光照射位置に対する移動速度を制御する制御部と、を有することを特徴とする光源装置。
【請求項10】
前記温度検出部で検出された前記被照射領域の温度に基づいて、前記光照射位置での蛍光体層の推定温度を演算する演算部をさらに備え、
前記制御部は、前記推定温度に基づいて、前記被照射領域の前記光照射位置に対する移動速度を制御することを特徴とする請求項9に記載の光源装置。
【請求項11】
前記温度検出部として、放射温度計を用い、前記温度検出部を、前記被照射領域の移動経路の直上に配置することを特徴とする請求項5〜請求項10のいずれかに記載の光源装置。
【請求項12】
請求項5〜請求項11のいずれかに記載の光源装置と、前記光源装置から射出された光を画像情報に応じて変調する光変調装置と、前記光変調装置からの変調光を投写画像として投写する投写光学系と、を備えることを特徴とするプロジェクター。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−25248(P2013−25248A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−162095(P2011−162095)
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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