説明

蛍光測定装置

【課題】微量の液状サンプルを再現性よく、かつ簡便に保持し、精度の良い蛍光測定が可能な蛍光測定装置を実現する。
【解決手段】蛍光キューブを用いた落射照明光学系の対物レンズの励起光集光位置に配置する液状サンプルを、第1の構成では光軸に垂直に貫通する穴を有するサンプル保持プレートの当該穴に保持することによって、第2の構成では水溶液サンプルをサンプル保持プレート上の親水性の円形領域に親和力により保持し前記円形領域の周囲を撥水性とすることにより水溶液サンプルを親水性の円形領域内に束縛することによって、第3の構成では液状サンプル滴を飛行させることによって達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微量の液状サンプルの蛍光を測定する蛍光測定装置に関するものであって、特に測定時のサンプル保持方法に関するものである
【背景技術】
【0002】
マイクロリットルオーダーの液状サンプルの蛍光を測定することは、蛍光標識された核酸など物質の量が僅少に制約される場合に有用性が高い。
【0003】
従来技術に、サンプルは相対的に動作可能で実質的に平行な2つの表面のアンビルの間に表面張力によって保持し、光路は2つの表面のそれぞれの濡れたエリアの間に確立された蛍光測定装置が、特表2008−530554号公報に開示されている。
【0004】
しかしながらこの方法では、以下のような問題点がある。第1に、サンプルを保持する2つのアンビルは、開閉動作が必要なため複雑かつ精密な構造を必要とする。第2に、測定に際してはアンビルの開閉動作のほかに、2つのアンビルのクリーニングが必要であるが、微細で複雑な構造のクリーニングは容易でなく、手数を要するうえ残渣が残りやすい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2008−530554号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
解決しようとする課題は、微量の液状サンプルを再現性よく、かつ簡便に保持し、もって精度の良い蛍光測定が可能な蛍光測定装置を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本発明の手段は、蛍光キューブを用いた落射照明光学系の対物レンズの励起光集光位置に配置する液状サンプルを、第1の構成では光軸に垂直に貫通する穴を有するサンプル保持プレートの当該穴に保持することによって、第2の構成では水溶液サンプルをサンプル保持プレート上の親水性の円形領域に親和力により保持し前記円形領域の周囲を撥水性とすることにより水溶液サンプルを親水性の円形領域内に束縛することによって、第3の構成では液状サンプル滴を飛行させることによって達成される。
【発明の効果】
【0008】
本発明の蛍光測定装置は、第1の構成ではサンプル保持プレートの貫通穴にピペットで液状サンプルを注入して測定を行なった後該穴周辺にクリーニング液を流して拭き取ることによって、第2の構成ではサンプル保持プレート上の親水性の円形領域にピペットで水溶液サンプルを滴下して測定を行った後該円形領域を水拭きすることによって、第3の構成ではピペットで液状サンプルを滴下して測定を行った後落下したサンプルをまとめて回収することによって測定作業が完了するため、いずれの場合も簡易な構造でかつ操作が簡略な蛍光測定装置が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】蛍光測定装置の全体を示した説明図である。(実施例1)
【図2】蛍光測定装置のサンプル保持プレートを示した説明図である。(実施例1)
【図3】蛍光測定装置のサンプル保持プレートを示した説明図である。(実施例2)
【図4】蛍光測定装置のサンプル保持プレートを示した説明図である。(実施例3)
【図5】蛍光測定装置の全体を示した説明図である。(実施例4)
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
第1の形態は、蛍光キューブを用いた落射照明光学系の対物レンズの励起光集光位置に、光軸に垂直に貫通する穴を有するサンプル保持プレートの当該穴が一致するようにサンプル保持プレートを配置してなる。
【0011】
第2の形態は、蛍光キューブを用いた落射照明光学系の対物レンズの励起光集光位置に、サンプル保持プレート上の親水性の円形領域が一致するようにサンプル保持プレートを配置してなる。
【0012】
第3の形態は、蛍光キューブを用いた落射照明光学系の対物レンズの励起光集光位置を、ピペットから鉛直に滴下した液状サンプルが通過するように、前記落射照明光学系を水平に傾けて配置し、励起光集光位置の真上にピペットを固定する手段を設けてなる。
【実施例1】
【0013】
図1は、本発明装置の第1の形態の実施例を示す。1は励起光源、2は蛍光検出用基本光学系で蛍光キューブと呼ばれる。蛍光キューブ2は、励起波長を選択的に透過する狭帯域干渉フィルタである励起フィルタ3と、励起波長を反射し蛍光波長を透過するダイクロイックビームスプリッタ4と、蛍光波長を透過して励起波長を反射する干渉フィルタである吸収フィルタ5を組み合わせ一体化したものである。ただし本発明においては一体化されていることは必要要件ではないので、個別に設置する場合も含めてこれらの組合せを蛍光キューブと称する。励起光源から出射した励起光6は、励起フィルタ3で波長純化し、ダイクロイックビームスプリッタ4で反射し、対物レンズ7により励起光集光位置に集光する。励起光集光位置にはサンプル保持プレート8に保持されたサンプルを配置する。励起光を吸収したサンプルが発光する蛍光9は、対物レンズ7でコリメートし、ダイクロイックビームスプリッタ4を透過して集光レンズ10により光検出器11で受光する。光検出器11はモノクロメータを含む分光検出器とすれば分光蛍光測定装置とすることができる。以上のような光学系は、落射照明光学系として周知のものである。なお12は、サンプルを透過した励起光を示す。
【0014】
本発明は基本的に落射照明光学系を用いるが、その特徴は前記サンプル保持プレート部分にあるので、要部を拡大した図2を用いて詳述する。図2において、(a)はサンプル保持プレート8の斜視図で照射する励起光の光軸に平行に貫通する穴13を有する。(b)はその断面を示し、14は液状サンプルである。液状サンプル14は、定量をピペットで穴13に滴下すると穴内面に濡れて、表面張力により一定の形状で保持される。この穴13が前記対物レンズ7の励起光集光位置に一致するようにサンプル保持プレートを配置するので、励起光が液状サンプル14を集中的に照射し蛍光が発生する。一般に、発生する蛍光の性状はサンプルの形状が変われば変動するが、上記の通り一定形状が得られるため測定のバラツキは小さく再現性のよい測定が可能である。穴13の形状は平行である必要はなく、例えば(c)に示すように励起光のプロファイルに沿ったテーパー穴にすると液状サンプル14を効率的に励起することができる等の付加効果が得られる。保持し得るサンプルの量はプレートの厚さと穴径でコントロールすることができ、およそ穴の容積と同量のサンプルが保持できる。1マイクロリットルの液状サンプルは厚さ1.5mm、穴直径1mm程度が適当である。なお1枚のサンプル保持プレート8に2個以上の穴を設けることも可能で、その場合は全ての穴が励起光集光位置に位置決めできる手段を要するが、その機構は多種かつ容易であるため省略する。
【0015】
本実施例において、液状サンプルを供給する方法については上記に述べたが、測定後のクリーニングはサンプルを拭き取った後サンプルに応じたクリーニング液で穴13およびその周囲を清拭する。構造がシンプルなためサンプルの供給もクリーニングも簡単かつ確実に行うことができる。

【実施例2】
【0016】
図3は、本発明装置の第2の形態の実施例を示す。サンプル保持プレート部分以外は第1の形態の実施例と同じであるので全体図は省略し、要部を拡大したものを示している。図3において、(a)はサンプル保持プレート15の斜視図で円形領域16を親水性に、その周囲を撥水性にする。(b)はその断面を示し、17は水溶液サンプルである。円形領域16は親水性のため水溶液に対して濡れ性がよく、周囲が撥水性のためサンプルの底面積は円形領域に拘束され、定量のサンプルをピペットで滴下すると表面張力により一定の形状で保持される。この円形領域16が前記対物レンズ7の励起光集光位置に一致するようにサンプル保持プレートを配置するので、励起光が水溶液サンプル17を集中的に照射し蛍光が発生する。保持し得るサンプルの量は円形領域の面積でコントロールすることができる。なお1枚のサンプル保持プレート15に2個以上の円形領域を設けることも可能でることは実施例1の場合と同様である。サンプル形状が一定のため測定のバラツキが小さいのも同様である。
【0017】
本実施例において、液状サンプルを供給する方法については上記に述べたが、測定後のクリーニングはサンプルを拭き取った後サンプルに応じたクリーニング液で円形領域16の周囲を清拭する。構造がシンプルなためサンプルの供給もクリーニングも簡単かつ確実に行うことができる。
【実施例3】
【0018】
図4は、本発明装置の第2の形態の別の実施例を示す。本例の場合もサンプル保持プレート18部分以外は第1の形態の実施例と基本的に同じであるが、天地を反転しサンプル保持プレート18の下方から励起光を照射、蛍光検出を行う。図において19は水溶液サンプルである。本例においてはサンプル保持プレート18は励起光および蛍光に対して透明性が必要で、ガラス、石英ガラス、透明アクリル樹脂等を用いることができる。本例の長所はサンプル保持プレート18が最上部に位置するため、装置の上面からのサンプル供給、クリーニングが行い易い。
【実施例4】
【0019】
図5は、本発明装置の第3の形態の実施例を示す。本例の場合もサンプルが介在する部分以外は第1の形態の実施例と基本的に同じであるが、光学系を横転して配置する。すなわち水平に励起光を照射、蛍光検出を行う。本例の場合ピペットから滴下した液状サンプルは前記対物レンズ7の励起光集光位置を通って落下させる。すなわち落下運動をするサンプル液滴が励起光集光位置を通過する際に発する蛍光を検出する。本例の場合、測定中にサンプルを保持手段そのものを要せず、落下したサンプルを溜めて回収する容器19のみを要する。ただしサンプル液滴を正確に励起光集光位置を通過させるために、ピペットを位置決めするためのガイド20を備える。
【0020】
本実施例においてはサンプル保持部分がないのでクリーニングの必要性がない。

【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明は、微量の液状サンプルの蛍光測定が必要な遺伝子解析等のバイオ分野やウイルス検出等の医療分野に利用可能である。

【符号の説明】
【0022】
1 励起光源
2 蛍光キューブ
3 励起フィルタ
4 ダイクロイックビームスプリッタ
5 吸収フィルタ
6 励起光
7 対物レンズ
8 サンプル保持プレート
9 蛍光
10 集光レンズ
11 光検出器
12 サンプルを透過した励起光
13 穴
14 液状サンプル
15 サンプル保持プレート
16 親水性円形領域
17 水溶液サンプル
18 サンプル保持プレート
19 水溶液サンプル
20 サンプル回収容器
21 ピペット位置決めガイド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛍光キューブを用いた落射照明光学系の対物レンズの励起光集光位置に配置される液状サンプルを、光軸に平行に貫通する穴を有するサンプル保持プレートの当該穴に保持することを特徴とする蛍光測定装置。
【請求項2】
蛍光キューブを用いた落射照明光学系の対物レンズの励起光集光位置に配置される水溶液サンプルを、サンプル保持プレート上の親水性の円形領域に親和力により保持し、前記円形領域の周囲を撥水性とすることにより水溶液サンプルを親水性の円形領域内に拘束することを特徴とする蛍光測定装置。
【請求項3】
蛍光キューブを用いた落射照明光学系の対物レンズの励起光集光位置に、液状サンプル滴を飛行させることを特徴とする蛍光測定装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−190713(P2010−190713A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−35045(P2009−35045)
【出願日】平成21年2月18日(2009.2.18)
【出願人】(300074101)株式会社イマック (27)
【Fターム(参考)】