説明

蛍光測定装置

【課題】サチュレーションレベルから蛍光波長ピークを予測することで、測定レンジを拡大し、測定時間の高効率化を図る。
【解決手段】試料セル8に照射する励起光を発生する光源2と、光源2が発生した励起光の分光波長を移動しながら蛍光測定対象の試料に励起光を照射する励起光分光器24と、励起光を照射された試料から発せられる蛍光を検知して蛍光信号を出力する蛍光信号分光器25と、励起光分光器24の出力である励起光信号と、蛍光信号分光器25の出力である蛍光信号の両信号から蛍光波長データを演算して蛍光波形を測定する蛍光データ処理部14とを有しており、蛍光データ処理部14は、蛍光信号が予め設定された測定レンジを越えた場合には、測定レンジを越えた部分が欠落した測定された蛍光波形から蛍光波長ピークを推定する蛍光波長ピーク推定部31を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光測定装置に関し、特に、測定レンジの変更が可能な蛍光測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
蛍光分光光度計は、光(励起光)が照射された測定しようとする試料から発せられる光(蛍光)の光強度(蛍光強度)を測定するものである。
【0003】
蛍光強度の測定には、励起光波長を固定して蛍光強度を蛍光波長側に測定する蛍光スペクトル方式、蛍光波長を固定して励起光強度を蛍光波長側に測定する励起スペクトル方式、励起光波長と蛍光波長を一定の波長差で同時に、かつ同じ速度で波長移動させ、観測される蛍光強度を励起光波長または蛍光波長に対して測定する同期スペクトル方式がある。蛍光は発光現象であり、蛍光光量は、試料濃度、励起光量に比例するため、蛍光の測定系には広域測定レンジが要求される。測定者は測定を行う際に各条件、例えば励起光波長範囲、蛍光波長範囲、蛍光検知器の感度の設定を行う。
【0004】
測定結果は、データ処理部により蛍光強度を演算し表示装置部に表示する。時々、試料濃度や測定条件により、この蛍光波長ピークが測定レンジを越えている(サチュレーション)場合がある。蛍光波長ピークが測定レンジを越えており、蛍光波形のピークトップが潰れているときにサチュレーションと考える。測定レンジを超えた場合、測定レンジを変更するには再測定を行う必要がある。再測定を行う際には、測定者が蛍光強度を推定し最適と考えられる濃度希釈及び感度を再選択する。
【0005】
蛍光強度の予測は経験則に基づいて行われ、測定には長時間を要していた。
測定レンジ拡大を可能とする蛍光測定装置としては、例えば、特許文献1に光量可変可能な蛍光測定装置が記載されている。特許文献1の発明の目的はクロストークの発生を抑制するとなっているが、同時に測定レンジ拡大を可能としている。
【0006】
蛍光の強度は測定しようとする試料の濃度と励起光の強度に比例する。特許文献1の発明では、光源の光量を可変にすることで、蛍光の強度を可変にし、測定レンジ拡大を可能にしている。光源の光量を多くすることで、蛍光強度の小さい試料に対しては測定レンジの拡大は可能である。一方、光源の光量を少なくすることで、蛍光強度の大きい試料に対しては測定レンジの拡大は可能であるが、拡大可能な測定レンジは限られている。
【0007】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、蛍光強度の大きい試料に対して測定レンジの拡大が可能で、測定レンジに限界のない蛍光測定装置及び蛍光測定方法を提供することが出来る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−24604号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
蛍光は発光現象であり、試料濃度、励起光量に比例するため測定系は広域測定レンジが要求される。しかし、蛍光光度計は測定レンジが限られており、測定レンジ外の測定が困難であった。また、サチュレーションを起こした試料において再測定を行う際、測定者が蛍光波長ピークを予測するのに経験則が必要であり測定に時間を有していた。
【0010】
本発明の目的は、サチュレーションレベルから蛍光波長ピークを予測することで、測定レンジを拡大し、測定時間の高効率化を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の蛍光測定装置は、蛍光測定対象の試料に照射する励起光を発生する光源と、前記光源が発生した励起光の分光波長を移動しながら前記蛍光測定対象の試料に励起光を照射する励起光分光器と、前記励起光を照射された試料から発せられる蛍光を検知して蛍光信号を出力する蛍光信号分光器と、前記励起光分光器の出力である励起光信号と、前記蛍光信号分光器の出力である蛍光信号の両信号から蛍光波長データを演算して蛍光波形を測定する蛍光データ処理部とを有しており、前記蛍光データ処理部は、前記蛍光信号が予め設定された測定レンジを越えた場合には、前記測定レンジを越えた部分が欠落した前記測定された蛍光波形から蛍光波長ピークを推定する蛍光波長ピーク推定部を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、蛍光波長ピークを予測し提示することで、測定レンジを拡大し、測定の高効率化を可能とした蛍光測定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明の実施例1の蛍光測定装置の構成図である。
【図2】図2は、本発明の蛍光測定装置の測定に関するフローチャートである。
【図3】図3は、本発明の実施例1の蛍光測定装置の測定に係る計算を説明するための蛍光波形(サチュレーション)である。
【図4】図4は、本発明の実施例1の蛍光測定装置の測定に係る計算を説明するための蛍光波形(相似)である。
【図5】図5は、本発明の実施例2の蛍光測定装置の構成図である。
【図6】図6は、本発明の実施例3の蛍光測定装置の構成図である。
【図7】図7は、本発明の実施例4の蛍光測定装置の構成図である。
【図8】図8は、本発明の実施例5の蛍光測定装置の構成図である。
【図9】図9は、本発明の実施例6の蛍光測定装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明を実施するための各実施形態は以下の通りである。
【0015】
本発明の一実施形態である蛍光測定装置は、蛍光測定対象の試料に照射する励起光を発生する光源と、前記光源が発生した励起光の分光波長を移動しながら前記蛍光測定対象の試料に励起光を照射する励起光分光器と、前記励起光を照射された試料から発せられる蛍光を検知して蛍光信号を出力する蛍光信号分光器と、前記励起光分光器の出力である励起光信号と、前記蛍光信号分光器の出力である蛍光信号の両信号から蛍光波長データを演算して蛍光波形を測定する蛍光データ処理部とを有しており、前記蛍光データ処理部は、前記蛍光信号が予め設定された測定レンジを越えた場合には、前記測定レンジを越えた部分が欠落した前記測定された蛍光波形から蛍光波長ピークを推定する蛍光波長ピーク推定部を備えていることを特徴とする特徴とする。
本発明の上記実施形態によれば、一部が欠落した蛍光波形から蛍光波長ピークを推定することができ、再設定に必要な情報を得て最適な測定条件を導き出すことができる。
【0016】
また、本発明の一実施形態である蛍光測定装置は、データ保存部に保存された蛍光波長ピークが測定レンジ内にある蛍光波形を参照し、蛍光波長と発光強度の比率に基づいて、前記測定レンジを越えた部分が欠落した前記測定された蛍光波形から蛍光波長ピークを推定することを特徴とする。
本発明の上記実施形態によれば、予め測定された完全な蛍光波形のデータに基づいて、蛍光波長と発光強度の比率に基づいて演算により迅速に蛍光波長ピークを推定することができる。
【0017】
また、本発明の一実施形態である蛍光測定装置は、データ保存部に保存された蛍光波長ピークが測定レンジ内にある蛍光波形を参照し、参照する蛍光波形データとの曲線の適合度を判定するカーブフィッティング技術を用いて、前記測定レンジを越えた部分が欠落した前記測定された蛍光波形から蛍光波長ピークを推定することを特徴とする。
本発明の上記実施形態によれば、予め測定された完全な蛍光波形のデータに基づいて、カーブフィッティング技術を用いて、正確に蛍光波長ピークを推定することができる。
【0018】
また、本発明の一実施形態である蛍光測定装置は、蛍光データ処理部は蛍光波長ピーク推定部と測定レンジ拡大部とを備えており、前記蛍光波長ピーク推定部は、前記蛍光信号が予め設定された測定レンジを越えた場合には、前記測定レンジを越えた部分が欠落した前記測定された蛍光波形から蛍光波長ピークを推定し、前記測定レンジ拡大部は、前記推定された蛍光波長ピークに基づいて、測定レンジを拡大する測定条件の再設定を行うことを特徴とする。
本発明の上記実施形態によれば、蛍光波長ピーク推定部が測定レンジを越えた部分が欠落した蛍光波形から蛍光波長ピークを推定し、測定レンジ拡大部が推定された蛍光波長ピークに基づいて、自動的に測定レンジを拡大した再測定を行うことができる。
【0019】
また、本発明の一実施形態である蛍光測定装置は、測定レンジ拡大部が測定レンジを拡大する測定条件の再設定を行う際に、励起光スリット駆動モータと蛍光スリット駆動モータを制御するモータ駆動回路を制御して、励起光スリットと蛍光スリットのスリット間隔が狭くなるように測定条件の再設定を行うことを特徴とする。
本発明の上記実施形態によれば、蛍光測定装置が備えている励起光駆動モータと蛍光スリット駆動モータ、及び、これらを駆動するモータ駆動回路を用いて、自動的に、測定レンジを拡大した再測定を行うことができる。
【0020】
また、本発明の一実施形態である蛍光測定装置は、測定レンジ拡大部が測定レンジを拡大する測定条件の再設定を行う際に、蛍光検知器感度可変電源を制御して、蛍光検知器の感度が小さくなるように測定条件の再設定を行うことを特徴とする。
本発明の上記実施形態によれば、蛍光測定装置が備えている蛍光信号分光器の蛍光検知器の感度を変更する蛍光検知器感度可変電源を用いて、自動的に、測定レンジを拡大した再測定を行うことができる。
【0021】
また、本発明の一実施形態である蛍光測定装置は、測定レンジ拡大部が測定レンジを拡大する測定条件の再設定を行う際に、蛍光信号増幅度可変回路を制御して、前記蛍光信号検知器増幅器の増幅度を下げるように測定条件の再設定を行うことを特徴とする。
本発明の上記実施形態によれば、蛍光測定装置が備えている蛍光信号分光器の蛍光検知器の出力を増幅する蛍光信号検知器増幅器と蛍光信号検知器増幅器を用いて、自動的に、測定レンジを拡大した再測定を行うことができる。
【0022】
また、本発明の一実施形態である蛍光測定装置は、蛍光データ処理部が蛍光波長ピーク推定部と測定レンジ拡大指示部とを備えており、前記測定レンジ拡大指示部は前記推定された蛍光波長ピークに基づいて、測定レンジを拡大する再設定に必要な情報を前記データ表示装置に表示することを特徴とする。
本発明の上記実施形態によれば、データ表示装置に表示された再設定に必要な情報を測定者が確認して、測定レンジを拡大する再測定の設定を迅速に行うことができる。
【0023】
また、本発明の一実施形態である蛍光測定装置は、測定レンジ拡大指示部が、測定レンジを越えないように薄く設定した算出した試料濃度をデータ表示装置に表示することを特徴とする。
本発明の上記実施形態によれば、データ表示装置に表示された再設定に必要な試料濃度を測定者が確認して、測定レンジを拡大する試料濃度の再設定を迅速に行うことができる。
【0024】
また、本発明の一実施形態である蛍光測定装置は、蛍光信号が予め設定された測定レンジを越えないように励起光強度を弱く設定した光量を算出し、前記算出した光量を前記データ表示装置に表示することを特徴とする。
本発明の上記実施形態によれば、データ表示装置に表示された再設定に必要な励起光の光量を測定者が確認して、測定レンジを拡大する光量の再設定を迅速に行うことができる。
【0025】
また、本発明の一実施形態である蛍光測定装置は、蛍光波長ピークを含む全蛍光波形を推定し、データ表示装置の表示範囲を変更して、前記推定された蛍光波長ピークを含む全蛍光波形を前記データ表示装置に表示することを特徴とする。
本発明の上記実施形態によれば、測定レンジを越えた部分が欠落した測定された蛍光波形に基づいて、データ表示装置の表示範囲内に蛍光波長ピークを含む推定された蛍光波形の全体を表示することができる。
【実施例1】
【0026】
図1は、本発明の実施例1の蛍光測定装置の構成図である。図1において、光源電源1を備えた光源2からの光は、励起光スリット3を通り励起光回折格子4に照射される。励起光スリット3は励起光スリット駆動モータ17により駆動される。励起光分光器4は励起光波長駆動モータ18により駆動され、分光波長を移動することができる。
【0027】
また、励起光スリット駆動モータ17及び励起光波長駆動モータ18はモータ駆動回路16により駆動される。このモータ駆動回路16は、蛍光データ処理部14により波長移動回転速度と波長移動量が指定され、指定された波長移動回転速度と波長移動量となるように励起光スリット駆動モータ17及び励起光波長駆動モータ18を駆動する。
【0028】
励起回折格子4から分光された光がビームスプリッタ5に照射され、ビームスプリッタ5を通した光は、励起光として励起光検知器6及び試料セル7に照射される。励起光検知器6からの信号は、励起光信号アナログデジタル変換器(以下ADC)7によりデジタル値に変換する。励起光信号ADC7からの励起光データは、励起光量をモニタする励起光データとして蛍光データ処理部14へ入力される。
【0029】
励起光が照射された試料セル8により発せられる蛍光は、蛍光スリット9を通して、蛍光回折格子10に照射される。蛍光スリット9は蛍光スリット駆動モータ19により駆動される。蛍光回折格子10は蛍光波長駆動モータ20により駆動され、分光波長を変えることができる。また、蛍光波長駆動モータ20はモータ駆動回路16により駆動される。このモータ駆動回路16は、蛍光データ処理部14により波長移動回転速度と波長移動量が指定され、指定された回転速度と回転角度となるように蛍光スリット駆動モータ19及び蛍光波長駆動モータ20を駆動する。
【0030】
蛍光回折格子10により分光した蛍光は蛍光検知器11に照射される。蛍光検知器11の受信感度は蛍光検知器高圧可変電源22により可変可能である。蛍光検知器11からの蛍光検知信号は、蛍光信号検知器AMP12により増幅される。この蛍光信号検知器AMP12の増幅度は、蛍光信号増幅度可変回路23により可変可能である。蛍光信号検知器AMP12からの信号は蛍光信号ADC13によりデジタル値に変換する。
【0031】
蛍光信号ADC13からのデータは試料からの蛍光量をモニタする蛍光データとして蛍光データ処理部14が読み取る。励起信号ADC7と 蛍光信号ADC13からのデータを蛍光データ処理部14で処理し、表示装置15及びパーソナルコンピュータ21(以下PC)に表示する。
【0032】
蛍光データ処理部14は、サチュレーションレベルを超えた蛍光波形データより蛍光波形ピークを推測する演算処理を行う蛍光波長ピーク推定部31を備えている。
【0033】
図2は、本発明の蛍光測定装置の測定に関するフローチャートである。測定者は測定を行う際に、励起光波長範囲、蛍光波長範囲、蛍光検知器の感度、蛍光検知器用AMPの初期設定を行い、試料濃度を任意の希釈にする。
【0034】
測定する試料の蛍光強度は、試料濃度により可変可能である。蛍光検知器の受信感度及び蛍光検知器用AMPの増幅度を変えることによって測定レンジを変えることが出来るが、最大の測定レンジは限られている。上記初期設定終了後、蛍光波長の測定を行う(図2のステップ2)。
【0035】
蛍光波長の測定結果を、データ処理部で演算し蛍光波形を表示装置に表示する(図2のステップ3)。
表示装置に表示した蛍光波形が測定レンジ内(図2のステップ4)であれば測定終了(図2のステップ5)となるが、サチュレーションを起こしている場合(図2のステップ6)は再測定を行う。測定レンジ内であっても蛍光波長ピークが小さい場合や、ノイズが大きい場合など蛍光波長ピークが確認出来ない場合も再測定となる。
【0036】
再測定を行う際、測定者は本発明である蛍光波長ピーク予測のデータ処理を行うか選択する。データ処理を選択した場合、データ処理にて蛍光波形ピーク予測を行う(図2のステップ7)。
【0037】
サチュレーションを起こした蛍光波形データS1を蛍光データ処理部14の蛍光波長ピーク推定部31に取り込む(図2のステップ8)。取り込んだ蛍光波形データS1より予測した蛍光波長ピークP1を演算し算出する(図2のステップ9)。P1を算出する際には、蛍光波形データS2を使用する(図2のステップ8)。蛍光波形データS2はあらかじめデータ保存部に保存しておくか、測定データを用いる。
【0038】
これらの算出した蛍光波長ピークP1をデータ表示装置15に表示し、測定者が確認する。測定者は蛍光波長ピークP1を参考にして試料濃度、光検知器の感度及び蛍光検知器用AMPの増幅度を蛍光波長ピークが最適な測定レンジに入るように再設定(図2のステップ11)を行い再度測定することが可能である。
【0039】
ここで、測定値の予測方法の例を以下に示す。
図3はサチュレーションを起こしたデータを示している。図4は蛍光波形と相似関係にあるグラフである。図3において、X2が蛍光強度の値が測定レンジを超えているため測定が不可能な範囲、Y2が測定できた蛍光強度の最大値を示す。
【0040】
一方、図4の蛍光波形と相似関係にある蛍光波長ピークP1を含むグラフにおいて、グラフの曲線上の1点を選択すると、その点における蛍光強度の値Y1と、その選択した1点と同じ大きさの他の1点との間隔の値X1と、を決定することができる。グラフの曲線上の選択する1点の位置を変更すると、選択した点における蛍光強度の値Y1と、その選択した1点と同じ大きさの他の1点との間隔の値X1とが変化する。
【0041】
まず、図3の測定レンジを超えてデータが欠落した蛍光波形から、測定不可能範囲X2及び最大値Y2を決定する。次に、図4の相似関係にある蛍光波長ピークP1を含むグラフから、図4のグラフ上の選択する点の位置を変更しながら、X2、Y2の比率(X2/Y2)に一致する比率を有する、つまり、X1/Y1=X2/Y2の関係を有する、座標X1、Y1を検出する。
【0042】
検出した座標のY1の値から、Y1、Y1PEAKの比率(Y1PEAK/Y1)を算出する。
図3のグラフと図4のグラフは相似関係であるため、Y1、Y1PEAKの比率(Y1PEAK/Y1)とY2、Y2PEAKの比率(Y1PEAK/Y1)は同様になる。したがって、
Y2PEAK =Y2×Y1PEAK/Y1
の式が成り立ち、サチュレーションを起こしたデータのピーク値Y2PEAKを求めることができる。
【0043】
上記実施例1の手法により、予め測定された完全な蛍光波形のデータに基づいて、測定レンジを越えた部分が欠落した蛍光波形から、蛍光波長と発光強度の比率に基づいた演算により、迅速に、蛍光波長ピークを推定することができる。
【0044】
なお、上記実施例1では、蛍光波長と発光強度の比率に基づいた演算により、蛍光波長ピークを推定する手法について説明したが、上記手法に代えて、例えば、参照する蛍光波形データとの曲線の適合度を判定する周知のカーブフィッティング技術を用いて、前記測定レンジを越えた部分が欠落した前記測定された蛍光波形から蛍光波長ピークを推定することができる。上記のカーブフィッティング技術を用いることにより、図3のグラフと図4のグラフは相似関係にある図面の適合度を判定して、正確に、蛍光波長ピークを推定することができる。
【実施例2】
【0045】
上記実施例1において、例えば、算出した蛍光波長ピークP1(Y2PEAK)から最適な測定条件(試料濃度、光検知器の感度及び蛍光検知器用AMPの増幅度、光源光量)を算出してもよい。算出することで、測定者が再測定をする際、設定に要する時間が短縮し、経験の少ない測定者でも容易に再測定することが可能になる。最適な測定条件の算出はデータ処理部にて行うこととする。算出した測定条件より測定条件設定自動化での再測定も可能である。
【0046】
図5は、本発明の実施例2の蛍光測定装置の構成図である。 図1の実施例1の蛍光測定装置と同様に、光源電源1を備えた光源2からの光は、励起光スリット3を通り励起光回折格子4に照射される。励起光スリット3は励起光スリット駆動モータ17により駆動される。励起光分光器4は励起光波長駆動モータ18により駆動され、分光波長を移動することができる。
【0047】
また、励起光スリット駆動モータ17及び励起光波長駆動モータ18はモータ駆動回路16により駆動される。このモータ駆動回路16は、蛍光データ処理部14により波長移動回転速度と波長移動量が指定され、指定された波長移動回転速度と波長移動量となるように励起光スリット駆動モータ17及び励起光波長駆動モータ18を駆動する。
【0048】
また、励起回折格子4から分光された光がビームスプリッタ5に照射され、ビームスプリッタ5を通した光は、励起光として励起光検知器6及び試料セル7に照射される。励起光検知器6からの信号は、励起光信号アナログデジタル変換器(以下ADC)7によりデジタル値に変換する。励起光信号ADC7からの励起光データは、励起光量をモニタする励起光データとして蛍光データ処理部14へ入力される。
【0049】
また、励起光が照射された試料セル7により発せられる蛍光は、蛍光スリット9を通して、蛍光回折格子10に照射される。蛍光スリット9は蛍光スリット駆動モータ19により駆動される。蛍光回折格子10は蛍光波長駆動モータ20により駆動され、分光波長を変えることができる。また、蛍光波長駆動モータ20はモータ駆動回路16により駆動される。このモータ駆動回路16は、蛍光データ処理部14により波長移動回転速度と波長移動量が指定され、指定された回転速度と回転角度となるように蛍光スリット駆動モータ19及び蛍光波長駆動モータ20を駆動する。
【0050】
また、蛍光回折格子10により分光した蛍光は蛍光検知器11に照射される。蛍光検知器11の受信感度は蛍光検知器高圧可変電源22により可変可能である。蛍光検知器11からの蛍光検知信号は、蛍光信号検知器AMP12により増幅される。この蛍光信号検知器AMP12の増幅度は、蛍光信号増幅度可変回路23により可変可能である。蛍光信号検知器AMP12からの信号は蛍光信号ADC13によりデジタル値に変換する。
【0051】
また、蛍光信号ADC13からのデータは試料からの蛍光量をモニタする蛍光データとして蛍光データ処理部14が読み取る。励起信号ADC7と 蛍光信号ADC13からのデータを蛍光データ処理部14で処理し、表示装置15及びパーソナルコンピュータ21(以下PC)に表示する。
【0052】
図5の実施例2の蛍光測定装置では、蛍光データ処理部14は、サチュレーションレベルを超えた蛍光波形データより蛍光波形ピークを推測する演算処理を行う蛍光波長ピーク推定部31のみならず、測定レンジ拡大部32を備えている。測定レンジ拡大部32は、蛍光波長ピーク推定部31が推定した蛍光波長ピークに基づいて、自動的に測定レンジを拡大する測定条件の再設定を行うことを特徴とする。
【0053】
測定条件の再設定を行う場合は、蛍光波長ピーク推定部31が推定した蛍光波長ピークP1(Y2PEAK)が、再設定後は、図3の測定レンジY2内に収まるように、即ち、Y2PEAK<Y2となるように測定条件の再設定を行う。
【0054】
本発明の実施例2の蛍光測定装置では、蛍光波長ピーク推定部31が測定レンジを越えた部分が欠落した蛍光波形から蛍光波長ピークを推定し、測定レンジ拡大部32が推定された蛍光波長ピークに基づいて、自動的に測定レンジを拡大した再設定を行い、再設定され測定条件で自動的に測定を行うことができる。
【0055】
図5に記載された実施例2の蛍光測定装置では、測定レンジ拡大部32は、測定レンジを拡大した再設定を行うために、励起光スリット駆動モータ17と蛍光スリット駆動モータ19を制御するモータ駆動回路16を制御して、励起光スリット3と蛍光スリット8のスリット間隔が狭くなるように測定条件の再設定を行う。
【0056】
本発明の蛍光測定装置では、励起光分光器24は励起光スリット3を開閉する励起光スリット駆動モータ17を備え、蛍光信号分光器25は蛍光スリット8を開閉する蛍光スリット駆動モータ20、及び、これらを制御するモータ駆動回路16を備えているので、実施例2の蛍光測定装置は、測定レンジ拡大部32からの推定された蛍光波長ピークに基づいた制御信号により励起光スリット3と蛍光スリット8のスリット間隔が狭くなるように制御して、自動的に測定レンジを拡大した再測定を行うことができる。
【0057】
測定条件の再設定を行う場合は、蛍光波長ピーク推定部31が推定した蛍光波長ピークP1(Y2PEAK)が、再設定後は、図3の測定レンジY2内に収まるように、即ち、Y2PEAK<Y2となるように、測定レンジを越えた部分が欠落したときのスリット幅をW2とすると、再設定時のスリット幅Wresetを、Wreset=W2×Y2/Y2PEAKとなるように制御すれば良い。
【実施例3】
【0058】
図6は、本発明の実施例3の蛍光測定装置の構成図である。実施例3の蛍光測定装置の基本構成は、図5に示された実施例2の蛍光測定装置と同様であるため、同様な構成については説明を省略する。
【0059】
図6の本発明の実施例3の蛍光測定装置では、測定レンジ拡大部32は、測定レンジを拡大した再設定を行うために、蛍光検知器感度可変電源22を制御して、蛍光検知器11の感度が小さくなるように測定条件の再設定を行う
【0060】
本発明の蛍光測定装置は、蛍光信号分光器25の蛍光検知器11の感度を変更する蛍光検知器感度可変電源22を備えているので、実施例3の蛍光測定装置は、測定レンジ拡大部32からの推定された蛍光波長ピークに基づいた制御信号により蛍光検知器感度可変電源22を制御して、蛍光検知器11の感度が小さくなるように制御して、自動的に測定レンジを拡大した再測定を行うことができる。
【0061】
測定条件の再設定を行う場合は、蛍光波長ピーク推定部31が推定した蛍光波長ピークP1(Y2PEAK)が、再設定後は、図3の測定レンジY2内に収まるように、即ち、Y2PEAK<Y2となるように、測定レンジを越えた部分が欠落したときの蛍光検知器11の感度を感度2とすると、再設定時の感度resetを、感度reset=感度2×Y2/Y2PEAKとなるように、蛍光検知器感度可変電源22を制御して蛍光検知器11の感度が小さくなるように設定すれば良い。
【実施例4】
【0062】
図7は、本発明の実施例4の蛍光測定装置の構成図である。実施例4の蛍光測定装置の基本構成は、図5に示された実施例2の蛍光測定装置と同様であるため、同様な構成については説明を省略する。
【0063】
図7の本発明の実施例4の蛍光測定装置では、測定レンジ拡大部32は、測定レンジを拡大した再設定を行うために、蛍光信号増幅度可変回路23を制御して、蛍光信号検知器増幅器12の増幅度を下げるように測定条件の再設定を行う
【0064】
本発明の蛍光測定装置は、蛍光信号分光器25の蛍光検知器11の出力を増幅する蛍光信号検知器AMP12と蛍光信号検知器AMP12の増幅度を可変にする蛍光信号増幅度可変回路23を備えているので、実施例4の蛍光測定装置は、測定レンジ拡大部32からの推定された蛍光波長ピークに基づいた制御信号により蛍光信号検知器増幅器12の増幅度を下げるように制御して、自動的に測定レンジを拡大した再測定を行うことができる。
【0065】
測定条件の再設定を行う場合は、蛍光波長ピーク推定部31が推定した蛍光波長ピークP1(Y2PEAK)が、再設定後は、図3の測定レンジY2内に収まるように、即ち、Y2PEAK<Y2となるように、測定レンジを越えた部分が欠落したときの蛍光信号検知器増幅器12の増幅度を増幅度2とすると、再設定時の増幅度resetを、増幅度reset=増幅度2×Y2/Y2PEAKとなるように、蛍光信号増幅度可変回路23を制御して蛍光信号検知器増幅器12の増幅度が小さくなるように設定すれば良い。
【実施例5】
【0066】
図8は、本発明の実施例5の蛍光測定装置の構成図である。実施例5の蛍光測定装置の基本構成は、図5に示された実施例2の蛍光測定装置と同様であるため、同様な構成については説明を省略する。
【0067】
本発明の実施例5の蛍光測定装置では、蛍光データ処理部14は、サチュレーションレベルを超えた蛍光波形データより蛍光波形ピークを推測する演算処理を行う蛍光波長ピーク推定部31と、測定レンジ拡大指示部33を備えている。
【0068】
上記実施例2〜5の測定レンジ拡大部32が、蛍光波長ピーク推定部31が推定した蛍光波長ピークに基づいて、自動的に測定レンジを拡大する測定条件の再設定を行うのに対して、実施例5の蛍光測定装置の測定レンジ拡大指示部33は、直接再設定の制御を行うのではなく、蛍光波長ピーク推定部31により推測された蛍光波形ピークに基づいて、再設定のために必要な情報である再設定値34を算出して、再設定値34をデータ表示装置15に表示するための指示信号を出力する。
【0069】
本発明の実施例5の蛍光測定装置では、データ表示装置15に表示された再設定に必要な情報である再設定値34を測定者が確認して、測定レンジを拡大する再測定の設定を迅速に行うことができる。
【0070】
データ表示装置15に表示する測定条件の再設定値を算出する場合は、蛍光波長ピーク推定部31が推定した蛍光波長ピークP1(Y2PEAK)が、再設定後は、図3の測定レンジY2内に収まるように、即ち、Y2PEAK<Y2となるように、再設定値を算出する。
【0071】
測定レンジを拡大する再測定の設定値としては、例えば、試料セル8内の試料濃度を選択することができる。実施例5の蛍光測定装置の測定レンジ拡大指示部33は、蛍光波長ピーク推定部31により推測された蛍光波形ピークに基づいて、蛍光信号が予め設定された測定レンジを越えないように薄く設定した試料濃度を算出し、算出した試料濃度をデータ表示装置15に表示する。
【0072】
試料セル8内の試料濃度の再設定値を算出する際は、蛍光波長ピーク推定部31が推定した蛍光波長ピークP1(Y2PEAK)が、再設定後は、図3の測定レンジY2内に収まるように、即ち、Y2PEAK<Y2となるように、測定レンジを越えた部分が欠落したときの試料濃度を試料濃度2とすると、データ表示装置に表示する再設定時の試料濃度displayを、試料濃度display=試料濃度2×Y2/Y2PEAKとなるように算出し、算出された試料濃度display をデータ表示装置15に表示するように設定すれば良い。
【0073】
本発明の実施例5の蛍光測定装置では、データ表示装置15に表示された再設定に必要な試料濃度を測定者が確認して、測定レンジを拡大するように試料セル8内の試料濃度の再設定を迅速に行うことができる。
【0074】
測定レンジを拡大する再測定の設定値として、光源2が発光する励起光の光量を選択することもできる。実施例5の蛍光測定装置の測定レンジ拡大指示部33は、蛍光波長ピーク推定部31により推測された蛍光波形ピークに基づいて、蛍光信号が予め設定された測定レンジを越えないように励起光強度を設定した光量を算出し、算出した光量をデータ表示装置15に表示する。
【0075】
光源2が発光する励起光の光量の再設定値を算出する際は、蛍光波長ピーク推定部31が推定した蛍光波長ピークP1(Y2PEAK)が、再設定後は、図3の測定レンジY2内に収まるように、即ち、Y2PEAK<Y2となるように、測定レンジを越えた部分が欠落したときの励起光の光量を光量2とすると、データ表示装置に表示する再設定時の光量desplayを、光量desplay=光量2×Y2/Y2PEAKとなるように算出し、算出された光量desplay をデータ表示装置15に表示するように設定すれば良い。
【0076】
本発明の実施例5の蛍光測定装置では、データ表示装置15に表示された再設定に必要な光源2に光量を測定者が確認して、電源2の光量を変化させることにより、測定レンジを拡大する再測定の設定を迅速に行うことができる。
【実施例6】
【0077】
図9は、本発明の実施例6の蛍光測定装置の構成図である。
実施例6において、例えば、算出した蛍光波長ピークP1から推定の蛍光波形を算出してもよい。蛍光波形を算出することで再測定を行わずに蛍光波形を確認することが可能である。蛍光波形の算出はデータ処理部にて行うこととする。
【0078】
算出した蛍光波長ピークP1から推定の蛍光波形を算出して、データ表示装置15に表示しようとする場合に、図3に示されるように、測定レンジを越えた部分が欠落した測定レンジ内の実線部分を表示する表示範囲のままでは、推定された蛍光波長ピークP1(Y2PEAK)を含む全蛍光波形を表示画面上に表示できない場合が発生する。
【0079】
図9において、蛍光波長ピーク推定部31が推定した蛍光波長ピークP1に基づいて、測定レンジ拡大指示部33は、データ表示装置15の画面の表示範囲の変更指示を出力する。データ表示装置15は、測定レンジ拡大指示部33からの指示により画面の表示範囲を変更し、表示画面内に必要な波長範囲と必要な発光強度が表示できるように表示範囲を設定して、蛍光波長ピークP1を含む蛍光波形全体をデータ表示装置15に表示する。
【0080】
本発明の実施例6の蛍光測定装置では、測定レンジを越えた部分が欠落した測定された蛍光波形に基づいて、データ表示装置の表示範囲内に蛍光波長ピークを含む推定された完全な形の蛍光波形の全体を表示することができる。
【0081】
なお、上記の実施例6では、特に、推定された蛍光波長ピークを含む推定された完全な形の蛍光波形の全体をデータ表示装置15に表示する例について説明したが、上述の各実施例において、測定レンジ拡大を行う再設定を行って、蛍光波長ピークを含むれた完全な形の蛍光波形の全体のデータが得られた場合にも、再測定による蛍光波長ピークを含むれた完全な形の蛍光波形の全体をデータ表示装置15に表示する場合にも、同様に、測定レンジ拡大指示部33からの指示により画面の表示範囲を変更し、表示画面内に必要な波長範囲と必要な発光強度が表示できるように表示範囲を設定して、蛍光波長ピークP1を含む蛍光波形全体がデータ表示装置15に表示できるように設定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明の蛍光測定装置は、例えば、カラー表示ディスプレイの蛍光体の蛍光分析などに用いられるほか、広範囲な分野の蛍光測定装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0083】
1 光源電源
2 光源
3 励起光スリット
4 励起光回折格子
5 ビームスプリッタ
6 励起光検知器
7 励起光信号アナログデジタル変換器(ADC)
8 試料セル
9 蛍光スリット
10 蛍光回折格子
11 蛍光検知器
12 蛍光信号検知器増幅器(AMP)
13 蛍光信号アナログデジタル変換器(ADC)
14 蛍光データ処理部
15 データ表示装置
16 モータ駆動回路
17 励起光スリット駆動モータ
18 励起光波長駆動モータ
19 蛍光スリット駆動モータ
20 蛍光波長駆動モータ
21 パーソナルコンピュータ(PC)
22 蛍光検知器感度可変電源
23 蛍光信号増幅度可変回路
24 励起光分光器
25 蛍光信号分光器
31 蛍光波長ピーク推定部
32 測定レンジ拡大部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛍光測定対象の試料に照射する励起光を発生する光源と、前記光源が発生した励起光の分光波長を移動しながら前記蛍光測定対象の試料に励起光を照射する励起光分光器と、前記励起光を照射された試料から発せられる蛍光を検知して蛍光信号を出力する蛍光信号分光器と、前記励起光分光器の出力である励起光信号と、前記蛍光信号分光器の出力である蛍光信号の両信号から蛍光波長データを演算して蛍光波形を測定する蛍光データ処理部とを有する蛍光測定装置において、
前記蛍光データ処理部は、前記蛍光信号が予め設定された測定レンジを越えた場合には、前記測定レンジを越えた部分が欠落した前記測定された蛍光波形から蛍光波長ピークを推定する蛍光波長ピーク推定部を備えていることを特徴とする特徴とする蛍光測定装置。
【請求項2】
請求項1記載の蛍光測定装置において、
測定された蛍光波形データを保存するデータ保存部を備えており、
前記蛍光波長ピーク推定部は、前記蛍光信号が予め設定された測定レンジを越えた場合には、データ保存部に保存された蛍光波長ピークが測定レンジ内にある蛍光波形を参照し、蛍光波長と発光強度の比率に基づいて、前記測定レンジを越えた部分が欠落した前記測定された蛍光波形から蛍光波長ピークを推定することを特徴とする蛍光測定装置。
【請求項3】
請求項1記載の蛍光測定装置において、
測定された蛍光波形データを保存するデータ保存部を備えており、
前記蛍光波長ピーク推定部は、前記蛍光信号が予め設定された測定レンジを越えた場合には、データ保存部に保存された蛍光波長ピークが測定レンジ内にある蛍光波形を参照し、参照する蛍光波形データとの曲線の適合度を判定するカーブフィッティング技術を用いて、前記測定レンジを越えた部分が欠落した前記測定された蛍光波形から蛍光波長ピークを推定することを特徴とする蛍光測定装置。
【請求項4】
蛍光測定対象の試料に照射する励起光を発生する光源と、前記光源が発生した励起光の分光波長を移動しながら前記蛍光測定対象の試料に励起光を照射する励起光分光器と、前記励起光を照射された試料から発せられる蛍光を検知して蛍光信号を出力する蛍光信号分光器と、前記励起光分光器の出力である励起光信号と、前記蛍光信号分光器の出力である蛍光信号の両信号から蛍光波長データを演算して蛍光波形を測定する蛍光データ処理部とを有する蛍光測定装置において、
前記蛍光データ処理部は、蛍光波長ピーク推定部と測定レンジ拡大部とを備えており、
前記蛍光波長ピーク推定部は、前記蛍光信号が予め設定された測定レンジを越えた場合には、前記測定レンジを越えた部分が欠落した前記測定された蛍光波形から蛍光波長ピークを推定し、
前記測定レンジ拡大部は、前記推定された蛍光波長ピークに基づいて、測定レンジを拡大する測定条件の再設定を行うことを特徴とする特徴とする蛍光測定装置。
【請求項5】
請求項4記載の蛍光測定装置において、
前記励起光分光器は励起光スリットを開閉する励起光駆動モータを備え、前記蛍光信号分光器は蛍光スリットを開閉する蛍光スリット駆動モータを備えており、
前記測定レンジ拡大部は、測定レンジを拡大する測定条件の再設定を行う際に、前記励起光スリット駆動モータと前記蛍光スリット駆動モータを制御するモータ駆動回路を制御して、前記励起光スリットと前記蛍光スリットのスリット間隔が狭くなるように測定条件の再設定を行うことを特徴とする蛍光測定装置。
【請求項6】
請求項4記載の蛍光測定装置において、
前記蛍光信号分光器の蛍光検知器の感度を変更する蛍光検知器感度可変電源を備えており、
前記測定レンジ拡大部は、測定レンジを拡大する測定条件の再設定を行う際に、前記蛍光検知器感度可変電源を制御して、前記蛍光検知器の感度が小さくなるように測定条件の再設定を行うことを特徴とする蛍光測定装置。
【請求項7】
請求項4記載の蛍光測定装置において、
前記蛍光信号分光器の蛍光検知器の出力を増幅する蛍光信号検知器増幅器と前記蛍光信号検知器増幅器の増幅度を可変にする蛍光信号増幅度可変回路を備えており、
前記測定レンジ拡大部は、測定レンジを拡大する測定条件の再設定を行う際に、前記蛍光信号増幅度可変回路を制御して、前記蛍光信号検知器増幅器の増幅度を下げるように測定条件の再設定を行うことを特徴とする蛍光測定装置。
【請求項8】
蛍光測定対象の試料に照射する励起光を発生する光源と、前記光源が発生した励起光の分光波長を移動しながら前記蛍光測定対象の試料に励起光を照射する励起光分光器と、前記励起光を照射された試料から発せられる蛍光を検知して蛍光信号を出力する蛍光信号分光器と、前記励起光分光器の出力である励起光信号と、前記蛍光信号分光器の出力である蛍光信号の両信号から蛍光波長データを演算して蛍光波形を測定する蛍光データ処理部と、前記蛍光波長データを表示するデータ表示装置とを有する蛍光測定装置において、
蛍光データ処理部は、蛍光波長ピーク推定部と測定レンジ拡大指示部とを備えており、
前記蛍光波長ピーク推定部は、前記蛍光信号が予め設定された測定レンジを越えた場合には、前記測定レンジを越えた部分が欠落した前記測定された蛍光波形から蛍光波長ピークを推定し、
前記測定レンジ拡大指示部は前記推定された蛍光波長ピークに基づいて、測定レンジを拡大する再設定に必要な情報を前記データ表示装置に表示することを特徴とする特徴とする蛍光測定装置。
【請求項9】
請求項8に記載の蛍光測定装置において、
前記測定レンジ拡大指示部は、測定レンジを拡大する測定条件の再設定を行う際に、前記推定された蛍光波長ピークに基づいて、前記蛍光信号が予め設定された測定レンジを越えないように薄く設定した試料濃度を算出し、前記算出した試料濃度を前記データ表示装置に表示することを特徴とする特徴とする蛍光測定装置。
【請求項10】
請求項8に記載の蛍光測定装置において、
蛍光測定対象の試料に照射する励起光を発生する光量可変な光源を備えており、
前記測定レンジ拡大指示部は、測定レンジを拡大する測定条件の再設定を行う際に、前記推定された蛍光波長ピークに基づいて、前記蛍光信号が予め設定された測定レンジを越えないように励起光強度を弱く設定した光量を算出し、前記算出した光量を前記データ表示装置に表示することを特徴とする蛍光測定装置。
【請求項11】
請求項1ないし請求項10のいずれかに記載の蛍光測定装置において、
表示画面の表示範囲が可変のデータ表示装置を備えており、
前記データ処理部は、前記蛍光波長ピーク推定部が推定した蛍光波長ピークと、前記測定レンジを越えた部分が欠落した前記測定された蛍光波形とに基づいて、前記蛍光波長ピークを含む全蛍光波形を推定し、
前記データ表示装置の表示範囲を変更して、前記推定された蛍光波長ピークを含む全蛍光波形を前記データ表示装置に表示することを特徴とする蛍光測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−243459(P2010−243459A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−95514(P2009−95514)
【出願日】平成21年4月10日(2009.4.10)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】