説明

蛍光灯およびバックライトユニット

【課題】管電流を増加させても輝度の飽和が起こり難い蛍光灯およびバックライトユニットを提供する。

【解決手段】本発明の蛍光灯は、ガラスバルブと、ガラスバルブの両端に対向配置された電極と、ガラスバルブの内面側に塗布された蛍光体とを有し、ガラスバルブ内部に水銀と希ガスが封入された蛍光灯において、希ガスはアルゴンガスとクリプトンガスで構成され、クリプトンガスの比率が10〜40%であること。また、希ガスは80〜100Torrの圧力で封入されていることを特徴とする。また、本発明のバックライトユニットは、前記蛍光灯を光源として備えていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デイスプレイの液晶表示装置に適用される蛍光灯およびバックライトユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的にテレビ、パソコン等に用いられるディスプレイの液晶表示装置には、冷陰極蛍光管である蛍光灯を使用したバックライト光源が知られている。蛍光灯は、ガラスバルブとリード線と電極ヘッドとを備えた構成とされている。電極ヘッドはカップ状に形成され、電極ヘッドの外端部はリード線と接続されている。このリード線を介して電極ヘッドに電圧が印加される。これにより、電子が電極ヘッドから放出される。放出された電子は、ガラスバルブ内に封入されている水銀と衝突して紫外線を放出する。紫外線はガラスバルブ内面に形成される蛍光体によって、可視光に変換され、外部に照射される光源となる。さらにガラスバルブ内には水銀の他にアルゴン等が混合された希ガスが封入されている。
【0003】
また、蛍光灯の始動時に赤外光が放出され、赤外線システムを備えた機器に誤動作が生じる場合がある。
【0004】
この対策として、封入ガスがアルゴンガスとネオンガスに0.5%のクリプトンガスで構成された蛍光ランプおよび液晶バックライト装置が従来技術として知られている(例えば、特許文献1参照)。これにより、赤外線の放射を大幅に減らすことができ、赤外線リモコンの誤動作防止を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−329042号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、蛍光灯(冷陰極蛍光管)はコストダウン等により、ディスプレイ装置に使用される本数を低減することが要望されている。これにより、蛍光灯1本当たりの輝度を更に向上させる必要がある。
【0007】
しかしながら、従来技術は、蛍光灯の本数低減に対し、赤外線の放射量を抑制するが、バックライトの輝度を上げるためには、管電流を増加させ必要がある。この管電流増加により、蛍光灯の輝度が飽和するという課題がある。
【0008】
また、投入電力に対し、するバックライトユニットの発光効率が低下するという課題がある。
【0009】
従って、本発明は、上述した課題を解決するためになされたたものであり、管電流を増加させても輝度の飽和が起こり難い蛍光灯およびバックライトユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の課題を解決するために、本発明は、以下に掲げる構成とした。
本発明の蛍光灯は、ガラスバルブと、ガラスバルブの両端に対向配置された電極と、ガラスバルブの内面側に塗布された蛍光体とを有し、ガラスバルブ内部に水銀と希ガスが封入された蛍光灯において、希ガスはアルゴンガスとクリプトンガスで構成され、クリプトンガスの比率が10〜40%であることを特徴とする。
また、希ガスは80〜100Torrの圧力で封入されていることを特徴とする。
また、本発明のバックライトユニットは、前記蛍光灯を光源として備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、アルゴンガスとクリプトンガスの希ガスを用いているので、管電流を増加させても輝度の飽和が起こり難い蛍光灯を提供することができる効果を奏する。
また、管壁温度の低い蛍光灯を使用するので、発光効率のよいバックライトユニットを提供することができる効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施例1に係る蛍光灯の断面図である。
【図2】本発明の実施例1に係る蛍光灯の輝度と管電流の関係を示すグラフである。
【図3】本発明の実施例1に係る蛍光灯の温度と管電流の関係を示すグラフである。
【図4】本発明の実施例1に係るバックライトユニットの平面図と断面図である。
【図5】本発明の実施例1に係るバックライトユニットの輝度と管電流の関係を示すグラフである。
【図6】本発明の実施例1に係るバックライトユニットの電圧と管長の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。以下の図面の記載において、同一または類似の部分には同一または類似の符号で表している。但し、図面は模式的なものであり、寸法関係の比率等は現実のものとは異なる。したがって、具体的な寸法等は以下の説明を照らし合わせて判断するべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【実施例1】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施例1の係る蛍光灯1を説明する。図1は、本発明の実施例1に係る蛍光灯1の断面図である。
【0015】
まず、図1に示すように、蛍光灯1は、ガラスバルブ2と、一対のリード線3と、一対の電極4と、蛍光体5とで構成され、希ガス6と水銀7が封入されている。
【0016】
ガラスバルブ2は、内部を封止するものであり、材質はガラスからなり、円筒状に形成されている。例えば、約3.0mmの外径、および、約2.4mmの内径、および、約400mmの長さを有する。ガラスバルブ2の両端部は、リード線3を突出させて塞がれている。これにより、封止空間8が、ガラスバルブ2の内部に形成される。封止空間8には、アルゴン等の希ガス6と、水銀7とが封入されている。
【0017】
リード線3は、外部の電源と電極4とを接続するためのものである。リード線3は、半田付けが容易なニッケルと、封止されるガラス材料と良好に封着できるタングステンの複合材からなり、ガラスバルブ2に封着されている。リード線3の内端部は、封止空間8まで延び、溶接等で電極4に接合されている。
【0018】
電極4は、封止空間8に電子を放出するものである。電極4は、金属であり、ニッケルからなり、円筒状に形成されている。電極4の長さ方向の内端部は、開口されている。一方、電極4の長さ方向の外端部は、閉口されている。すなわち、電極4は、カップ状に形成されている。電極4は、約2.2mmの外径、約1.7mmの内径、および、約12mmの長さを有する。電極4の外端部(閉口部)は、抵抗溶接によってリード線3の内端部と接合されている。これにより、電極4は、リード線3を介して、外部と接続される。
【0019】
蛍光体5は、封止空間8で発光された紫外線を可視光に変換するものであり、ガラスバルブ2の内周面に形成されている。蛍光体5は、ガラスバルブ2の長さ方向の中央部に形成されている。
【0020】
希ガス6は、アルゴンガスとクリプトンガスの2種類で構成させている。例えば、封入ガス圧力は100Torr、封入ガスの比率はクリプトン20%、アルゴンガス80%である。
【0021】
次に、上述した実施例1に係る蛍光灯1の動作を説明する。
【0022】
まず、電圧が、外部電源から蛍光灯1の両端のリード線3とリード線3との間に印加される。これにより、電界が、各リード線3と接続されている封止空間8の電極4と電極4との間に形成される。この結果、電子が、蛍光灯1の電極4から放出される。例えば、使用管電流は16mArmsである。
【0023】
電子は、電界によって加速されて、封止空間8の内部を進行する。そして、電子は、封止空間8の内部に封入されている水銀7と衝突する。これにより、紫外線が照射される。紫外線は、蛍光体5によって可視光に変換された後、外部へ照射される。
【0024】
また、電極4から放出された電子は、水銀のみならず、封止空間8に封入された希ガス6にも衝突する。希ガス6は、イオン化されて、電極4をスパッタする。これにより、電極4からニッケル原子(電極構成原子)が飛び出し、電極4が消耗し、蛍光灯の寿命が低下する。
【0025】
次に、図2と図3に示すグラフについて説明する。図2は、本発明の実施例1に係る蛍光灯1の輝度と管電流の関係を示すグフである。
【0026】
グラフにおいて、Ar/Krはアルゴンガス(Ar)が80%とクリプトンガス(Kr)20%で構成されている本発明の実施例1に係る蛍光灯であり、Ar/Neはアルゴンガス(Ar)が7%とネオンガス(Ne)93%、で構成されている従来品の蛍光灯である。ここでは、封入ガス圧力において、本発明品は100Torr、従来品は40Torrである。この両者を蛍光灯単体において、輝度と管電流の特性の関係を比較したものである。管電流Il(mArms)を増加させると、従来品の蛍光灯であるAr/Neでは、相対輝度(%)の飽和が発生していることが分かる。しかし、Ar/Krでは輝度の飽和が起こり難いことが分かる。また、輝度飽和を解決する手段として、封入ガス圧力を低くすることが考えられるが、この低ガス圧力により電極部の管壁温度の上昇や蛍光灯の短寿命の懸念がある。
【0027】
ここでは、封入ガス組成をアルゴンガスとクリプトンガスの2種類のみにすることで、従来品の蛍光灯であるAr/Neよりも、蛍光体5を励起する水銀輝線(254nm)の強度が増加するためである。また、従来技術例のようにアルゴンガスとネオンガスに0.5%のクリプトンガスで構成された蛍光灯の電流と輝度の関係はAr/Neと同等である。これはクリプトン比率が低いためである。
【0028】
また、図3は、本発明の実施例1に係る蛍光灯1の温度と管電流の関係を示すグラフである。詳細には、蛍光灯単体のガラスバルブ2における電極4の周囲温度である管壁温度T(℃)と管電流Il(mArms)の特性の関係を示すグラフである。アルゴン(Ar)/クリプトン(Kr)は、アルゴン(Ar)/ネオン(Ne)に比較して、管壁温度が低いことが分かる。
【0029】
また、従来の液晶テレビおよび液晶モニター用蛍光灯は、点灯開始電圧の抑制、電極スパッタの抑制、製品寿命の確保、輝度飽和御の抑制、など種々の要求を満たすために、封入ガス圧力を30Torr〜60Torr程度に設定するのが一般的であった。本発明では、封入ガス圧力を80Torr〜100Torrとしている。このことにより、蛍光灯寿命を低下させるスパッタの発生は、従来品の蛍光灯よりも起こり難くなる。これは封入ガス圧力が高いほど顕著になる。
【0030】
以上により、蛍光灯1は、アルゴンガスとクリプトンガスの2種類の希ガスで構成されているので、管電流を増加することによって、輝度が飽和せず、高輝度化された高輝度蛍光灯が可能となる。また、管電流を増加しても、管壁温度の上昇を抑えることができ、電極のスパッタを抑えることが可能である。これにより、蛍光灯の寿命を向上することができる。また、クリプトンガスにより、アルゴンガスの発する赤外線IRを抑制することができる。
【0031】
次に、図面を参照して本発明の実施例1の係るバックライトユニット11を説明する。図4は、本発明の実施例1に係るバックライトユニット11の平面図と断面図である。
【0032】
図4に示すように、バックライトユニット11は、両側面に各1本の前述の蛍光灯1を対向配置させたエッジライト方式のバックライトユニットである。部品としては、導光板12と、拡散シート13と、反射シート14と、プレート15と、リフレクター16と、ゴムホルダー17とで構成されている。
【0033】
導光板12は、蛍光灯1の光を液晶パネル裏面全体へ伝えるものである。蛍光灯1から出た光は、導光板12の側部から入射し、表面反射を繰り返して、導光板12の面積全体に広がる。例えば、厚さが4.0mm、19インチ相当面積のアクリル樹脂でできている。導光板12の耐熱温度は80℃である。このため、蛍光灯1の管壁温度が低い方が望ましい。また、蛍光灯1の直径は導光板12よりも小さくするのが、導光板12への入射効率の上からもよい。
【0034】
拡散シート13は、導光板12の表面に使用される光学シートである。輝度ムラを抑えるために、光を散乱・拡散させている。例えば、プラスチックの半透明シートでできている。
【0035】
反射シート14は、導光板12と組み合わせて、裏面に使用され、導光板12の内部を表面反射する光を一方方向である導光板12の表面へ光を出すものである。例えば、白色のシートを接着したものであり、光源の近傍でも遠く離れても反射光として、導光板12の全体が均一に光るように工夫されている。
【0036】
プレート15は、バックライトユニットを載置しているものである。例えば、アクリル製の基台である。
【0037】
リフレクター16は、蛍光灯1を覆うようにした反射板であり、蛍光灯1の光を導光板12の側部へ導いている。例えば、金属製で、断面形状がコの字形状をしている。
【0038】
ゴムホルダー17は、蛍光灯1の両端部に接合しおり、蛍光灯1を保護し、リフレクター16に位置決め固定させる機能を有している。例えば、難燃性のシリコンゴム製で、耐熱温度は200℃である。
【0039】
次に、図5は、本発明の実施例1に係るバックライトユニットの輝度と管電流の関係を示す実験データグラフである。詳細には、バックライトユニットにおいて、輝度は相対輝度(%)であり、管電流はIl(mArms)である。アルゴン(Ar)/クリプトン(Kr)はアルゴン(Ar)/ネオン(Ne)に比較して、10%程度、輝度が向上していることが分かる。
【0040】
従来品の蛍光灯では高輝度化にするためには、蛍光灯本数を増やし(例えば両側面に各2本)、導光板を厚く(例えば6.0mm)する必要があり、エッジライト方式のバックライトユニットでは、低コスト化、薄型化が困難である。また、蛍光灯はリフレクター内に設置されているので、熱がこもり易く温度上昇が早い。これにより、管電流を増加しても、有る程度で輝度が飽和してしまう状態であった。
【0041】
また、図6は、本発明の実施例1に係るバックライトユニットの電圧Vsと管長lの関係を示すグラフである。詳細には、バックライトユニットにおいて、電圧Vsは点灯開始電圧(Vms)であり、管長lは蛍光灯長(mm)である。管長600mm(モニタサイズ26インチ)時は電圧1200Vmsで、400mm(モニタサイズ19インチ)時は電圧800Vmsである。これにより、管電流を増加させる必要がある蛍光灯1であるが、管長600mm以下であれば、従来のインバータが使用できることが分かる。例えば、管長lが400mmであれば、電圧Vsは800Vmsで使用できる。
【0042】
封入ガス圧力において、高圧ガスを使用することにより、蛍光灯単体状態での点灯開始電圧は、従来品の蛍光灯よりも増加する。液晶モジュール側インバータの設計変更が必要となってくるが、エッジライト方式と組み合わせることで解決される。エッジライト方式バックライトユニットでは蛍光灯1の周囲をリフレクター16で覆っているため、蛍光灯単体状態と比較して、近接する導体への電流リークが大きくなり、蛍光灯の点灯が容易になる。これにより、蛍光灯始動時に必要な電力が減少するため、エッジライト方式では高輝度仕様蛍光灯であっても、従来蛍光灯用のインバータが使用可能となる。
【0043】
電流リークは、蛍光灯本体や蛍光灯点灯用インバータの高圧配線とそれらの周囲の導体(金属製リフレクターなど)との間には空間があり、直流に対しては絶縁されているが、蛍光灯は高電圧・高周波の交流で点灯されているため、放電路が常にGNDに近い状態にあるので、単体状態に比較し、放電が起こりやすく周囲の導体へ電流が漏れるように流れてしまう現象である。この現象を利用して、本発明の蛍光灯1の点灯開始電圧を下げることができ、従来のインバータを使用することが可能である。
【0044】
次に、上述の実施例1に係るバックライトユニット11の効果を説明する。
【0045】
本発明の実施例1に係るバックライトユニット11は、アルゴン(Ar)/クリプトン(Kr)の希ガスを用いた蛍光灯を備えている。これにより、蛍光灯の高輝度化と、バックライトユニット自体の高輝度化が可能である。
【0046】
また、高輝度蛍光灯の使用により、バックライトユニットに使用する蛍光灯数を削減することが可能である。また、管壁温度の温度上昇を抑えることができ、導光板厚さを削減することが可能である。すなわち、エッジライト方式バックライトユニットの低コスト化と小型軽量化が可能である。
【0047】
上述のように、本発明の実施の形態を記載したが、この開示の一部をなす記述及び図面はこの発明を限定するものであると理解するべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかになるはずである。
【0048】
上述の例では、拡散シートを使用する構成したが、輝度により拡散シートを省略したバックライトユニットとしてもよい。
【0049】
また、リフレクターは断面形状をコの字形状としたが、U字形状であってもよい。
【符号の説明】
【0050】
1、蛍光灯
2、ガラスバルブ
3、リード線
4、電極
5、蛍光体
6、希ガス(アルゴンガス、クリプトンガス)
7、水銀
8、封止空間
11、バックライトユニット
12、導光板
13、拡散シート
14、反射シート
15、プレート
16、リフレクター
17、ゴムホルダー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスバルブと、前記ガラスバルブの両端に対向配置された電極と、前記ガラスバルブの内面側に塗布された蛍光体とを有し、前記ガラスバルブ内部に水銀と希ガスが封入された蛍光灯において、前記希ガスはアルゴンガスとクリプトンガスで構成され、クリプトンガスの比率が10〜40%であることを特徴とする蛍光灯。
【請求項2】
前記希ガスは80〜100Torrの圧力で封入されていることを特徴とする請求項1に記載の蛍光灯。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の蛍光灯を光源として備えていることを特徴とするバックライトユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−212538(P2012−212538A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−76820(P2011−76820)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000106276)サンケン電気株式会社 (982)
【Fターム(参考)】