説明

蛍光発色性固形状接着剤

【課題】本発明の目的は、塗着部分の視認性に優れた蛍光色の固形状接着剤を提供すること、及び視認性に優れ、かつ塗着後空気に触れると、塗着部分の色が薄くなる若しくは消える固形状接着剤を提供することにある。
【解決手段】(1)ゲル形成物質としての炭素原子8〜36個を有する脂肪族カルボン酸塩、(2)20〜25質量%の水溶性又は水分散性の接着成分、(3)0.05質量%〜0.3質量%の水溶性蛍光色素、(4)グリコール系溶剤、及び(5)水、を含有することを特徴とする蛍光発色性固形状接着剤。この蛍光性固形状接着剤は、塗着対象物が暗い色の場合や、暗い場所での塗着作業の場合であっても視認性に優れ、又上記蛍光色素の含有量が少量の場合、視認性に優れかつ塗着後数分の経過で塗着部分の色が薄くなる若しくは消えるという効果を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着部材が円柱状や角柱状に形成されてなる、いわゆるスティック糊に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、消色糊、すなわち、上記糊を紙に塗着した時は、糊の塗着部分が有色であるが、時間の経過後、糊の塗着部分の色が消えることを特徴とする糊が存在する(特許文献1及び2)。これらの糊は、pH指示薬フェノールフタレイン及びアルカリ成分を含有しており、フェノールフタレインが、一定のアルカリ濃度(pH)以上で発色し、これより弱いアルカリ性、中性、酸性側で色が消える性質に着目したものである。従って上記糊を紙に塗着した時は、糊の塗着部分が有色であるので、上記塗着部分が、はっきり視認できるが、時間の経過後、空気との中和反応により、糊の塗着部分の色が消える。これらの糊は、糊の視認性のために糊の塗りむらを防いだり、塗り落とし又は紙面からのはみ出しを防止することを可能とし、また時間の経過後、塗着部分の色が消えることによって、塗着部分の美観に優れる。
ところが、フェノールフタレインは、pHの変化に敏感に反応するので、初期の発色状態を維持することが難しく、保管中に色が消えてしまうことがあった。
これを解決するために、発色性色素としてカルボキシチモールフタレイン及びブロモカルボキシチモールフタレインを使用することによって、発色状態の維持が容易な固形糊がある(特許文献3)。
しかし、それらの色は、あまり鮮やかでなく、特に塗着する対象物が暗い色の場合や暗い場所での塗着作業の場合には、塗着部分の視認性がよくなかった。
【0003】
【特許文献1】米国特許第5567753号明細書
【特許文献2】米国特許第4954544号明細書
【特許文献3】特開平11―148057
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明は、塗着する対象物が暗い色の場合や暗い場所での塗着作業の場合でも塗着部分の視認性に優れた蛍光色の固形糊を提供することを目的とする。本発明は又、視認性に優れ、かつ塗着後、空気に触れると、数分の経過で色が薄くなる若しくは消えることを特徴とする固形糊を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するために本発明者らが鋭意検討を行った結果、(1)ゲル形成物質としての炭素原子8〜36個を有する脂肪族カルボン酸塩、(2)20〜25質量%の水溶性又は水分散性の接着成分、(3)0.05質量%〜0.3質量%の水溶性蛍光色素、
(4)グリコール系溶剤、及び(5)水を含有することにより、蛍光発色性を有し、塗着する対象物が暗い色の場合や暗い場所での塗着作業の場合でも塗着部分の視認性に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。さらに、上記蛍光色素の含有量を一定の少量にする場合、視認性に優れ、かつ塗着後、空気に触れると、主に水の蒸発と空気中の炭酸ガスとの中和反応によるpHの低下により、数分の経過で塗着部分の色が薄くなる若しくは消えることを見出し、本発明を完成するに至った。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、糊を塗着する対象物が暗い色の場合や、暗い場所での塗着作業の場合であっても、塗着部分の視認性に優れる固形状接着剤、さらに、本発明の蛍光色素の含有量を一定の少量にする場合には、塗着後数分で、塗着部分の色が薄くなる若しくは消えることにより、糊しろの美観にも優れた固形状接着剤を得ることができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明でゲル形成物質として使用する炭素原子8〜36個を有する脂肪族カルボン酸の塩としては、分枝を有する又は分枝を有しない、炭素原子数が8〜36個の脂肪族カルボン酸のアルカリ金属塩及び/又はアンモニウム塩が好ましい。特に炭素原子数が12〜18個の脂肪族カルボン酸塩が好ましい。この脂肪族カルボン酸塩を構成する脂肪族カルボン酸としては、例えば、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸及びメリシン酸を挙げることができる。
また、脂肪族カルボン酸のアルカリ金属塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩やアンモニウム塩を用いることができ、特にミリスチン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム又はこれらの混合物が好ましい。
この脂肪族カルボン酸塩の使用量は、本発明の固形状接着剤全質量に対し、6〜9質量%とするのが好ましく、より好ましくは7〜8質量%である。
水溶性又は水分散性の接着成分としては、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどのセルロース誘導体、酢酸ビニル共重合体、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸とビニルピロリドンとの共重合体、ニカワ、アラビアゴム、水溶性澱粉、澱粉誘導体などの一種又は二種以上の混合物があげられる。これらの接着成分としては、平均重合度が100〜3000のものが好ましく、より好ましくは100〜1500の天然又は合成樹脂である。これらのうち、ポリビニルピロリドンが好ましい。
接着成分の使用量は、本発明の固形状接着剤全質量に対し、20〜25質量%とするのが好ましく、より好ましくは22〜24質量%である。
【0008】
水溶性蛍光色素としては、例えば、C.I.ベーシックレッド1、C.I.ベーシックレッド2、C.I.ベーシックオレンジ14、C.I.ベーシックオレンジ15、C.I.ベーシックバイオレット7、C.I.ベーシックバイオレット10、C.I.ベーシックバイオレット11、C.I.ベーシックイエロー40、C.I.ベーシックグリーン1、ウラニン、及びピラニンコンク(緑色204号)等が挙げられるが、ピラニンコンクが好ましい。
上記水溶性蛍光色素の使用量は、本発明の固形状接着剤全質量に対し、0.05質量%〜0.3質量%とするのが好ましく、より好ましくは0.05質量%〜0.18質量%である。
本発明において、上記水溶性蛍光色素を用いる場合には、固形状接着剤全体としてアルカリ性であることが好ましい。ゲル形成物質として添加している上記脂肪族カルボン酸塩により本発明の固形状接着剤組成物はアルカリ性であるので特にアルカリ剤の添加を必要としないが、蛍光色素の発色域によって必要に応じて添加してもよい。
本発明の固形状接着剤の塗着面の被膜を柔軟にするため有用な保湿剤として使用するグリコール系溶剤としては、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコールやジエチレングリコールなどの分子内にアルコール性水酸基を2以上有する化合物があげられる。これらのうち、炭素数2〜6のグリコールが好ましく、特に好ましくは炭素数2〜4のグリコールである。
上記グリコール系溶剤の使用量は、本発明の固形状接着剤に対し、好ましくは8〜10質量%、より好ましくは8.5〜9.5質量%含有させることができる。
上記水の含有量は、固形状接着剤中最大65質量%とするのが好ましく、より好ましくは、58〜62質量%である。
本発明の固形状接着剤は、上記成分を必須とし、上記成分の他に香料、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オンのような防腐剤又は防黴剤などの種々の成分を含有させることができる。例えば、防腐剤又は防黴剤を0.005〜0.5質量%程度含有するのが好ましい。
本発明の固形状接着剤の製造は、全ての原料を製造容器に入れ、攪拌しながら、還流下約90℃に加熱して溶解し、その固形状接着剤を押し出し容器に注入するか、冷却固化又は押し出し成形し、できた棒状物をキャップ付き密閉容器に挿入することにより行う。
【実施例】
【0009】
(実施例1〜4)
以下、本発明について、具体的な実施例を示して説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、表1における配合量は、質量%で示す。
表1記載の組成物を、すべて製造容器に入れ、ゆっくりと攪拌しながら環流下、90℃に加熱して溶解した。溶解した材料を直接、繰出し式密閉容器に注入し、放置冷却した。あるいは、溶解した材料を一度、金型に注入し、冷却固化して棒状とし、キャップつき繰出し式密閉容器に挿入した。
[評価方法]
上記の方法で製造した固形状接着剤を黒色紙に塗着し、塗着部分の視認性及び経時的な色の変化を目視で評価した。
(表1)

a)防腐剤
b)ISP製ポリビニルピロリドン
表1に示された結果から、ピラニンコンクを0.05質量%〜0.3質量%含有する場合、糊の塗着部分は、蛍光色素によってはっきりと視認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)ゲル形成物質としての炭素原子8〜36個を有する脂肪族カルボン酸塩、
(2)20〜25質量%の水溶性又は水分散性の接着成分、
(3)0.05質量%〜0.3質量%の水溶性蛍光色素、
(4)グリコール系溶剤、及び
(5)水、
を含有することを特徴とする蛍光発色性固形状接着剤。
【請求項2】
前記接着成分が、ポリビニルピロリドンである請求項1に記載の固形状接着剤。
【請求項3】
上記蛍光色素が、空気に接触することにより色が薄くなる若しくは消える色素である請求項1に記載の固形状接着剤。
【請求項4】
上記蛍光色素が、黄色系である請求項1に記載の固形状接着剤。
【請求項5】
上記蛍光色素が、ピラニンコンクである請求項1に記載の固形状接着剤。
【請求項6】
上記蛍光色素を0.05質量%〜0.18質量%含む請求項1〜5のいずれか1項に記載の固形状接着剤。

【公開番号】特開2007−238869(P2007−238869A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−66392(P2006−66392)
【出願日】平成18年3月10日(2006.3.10)
【出願人】(000136697)株式会社ブンチョウ (6)
【Fターム(参考)】