説明

蛍光管種類識別装置および蛍光管種類識別方法

【課題】本発明は、廃棄された蛍光管を破壊することなく、識別のための特別なマーキングを蛍光管に施すことなく、蛍光体に使用される異なる種類のレアアースに対応した蛍光管の種類の識別が可能な程度に高精度であり、かつ安価に製造・実施できる蛍光管種類識別装置および蛍光管種類識別方法を提供することを目的とする。
【手段】少なくとも紫外線光源と色度値測定装置とを有する蛍光管種類識別装置であって、前記紫外線光源から紫外線を蛍光管のガラス管外部に照射する手段と、前記照射による蛍光管の発光の色度値をガラス管外部から計測する手段とを備え、前記計測された色度値のxy色度座標を蛍光管種類領域が表示されている色空間に重畳的に表示して該蛍光管の種類を識別することを特徴とする蛍光管種類識別装置および蛍光管種類識別方法を構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄された蛍光管のリサイクルまたはその蛍光体に含まれるレアアースの再利用に際し蛍光管の種類を識別する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
環境にやさしい社会を実現する技術の一環として廃棄された蛍光管のリサイクル、なかでも廃蛍光管に利用されている蛍光体に含まれるレアアースの回収・再利用が注目されている。
【0003】
現在普及している蛍光管のリサイクルでは、蛍光管から回収される蛍光体に貴重なレアアースが含まれるものであっても、その分別回収が困難なことから本来的なレアアースとしての再利用はできず、覆土材等に利用される程度にとどまっている。
最近になって、国際的なレアアース争奪戦が繰り広げられ、国の産業の発達に必要な量の確保が困難となる中、廃棄された蛍光管に含まれるレアアース系蛍光体に含まれるレアアース自体の再利用・リサイクルが検討され始めている。
【0004】
蛍光体は、わずかに数十μm程度の微粒子であり蛍光管から分離後に識別し分別することが困難であることから、蛍光体が塗布された蛍光管を破壊せずに非破壊の状態で識別し分別することが重要となり、これまでにいくつかの技術的提案が見られる。
蛍光管全体は破壊しないが、蛍光管の端(一部)を破断して、管内に識別対象とする各蛍光体の適した励起波長の光源を挿入して、直接蛍光体に照射、励起発光させる方法が容易に想起される(特許文献1)。
しかし、この方法では、工程が複雑になるとともに、含有される水銀が管外に放出されるため、水銀を処理可能なリサイクル処理施設以外では適用が困難である。
【0005】
全く破壊しない最も簡便な方法として廃棄された蛍光管を通常の照明装置に装着して点灯させる方法がある。
蛍光管は、発光色によって昼光色、昼白色、白色、温白色、電球色等、製品規格が定められており、通常の照明装置での使用と同様に点灯させてその色温度を測定することにより上述の5種類等に分類することが可能である。
しかし、本方法では形状等が異なる蛍光管の適合する照明装置への装着点灯作業の手間が増えること、またそれ以前に廃棄回収品の場合には劣化により点灯しない場合があること、さらに色温度等の規格が等しいハロリン酸系(非レアアース系)と三波長域発光形(レアアース系)とを識別するのに有効な測定指標が無いことなどから応用は困難である。
【0006】
また破壊しない方法として、たとえば蛍光管へ外部から波長300nm(365nm以下)の紫外線を照射して青色蛍光体を発光させその発光スペクトルを検出することで識別する方法が提案されている(特許文献2)。
しかしこの方法では、青色蛍光体の添加量の少ない電球色蛍光管の識別が困難であり、したがって、三波長域発光形蛍光管とハロリン酸系蛍光管に大別することさえ困難である。
さらに、低輝度の対象物を短時間で精度良くスペクトル測定する計測器は色度を測定する機器よりも著しく高価になりコスト面で不利となる。
【0007】
また別の識別方法としてあらかじめ蛍光管の種類ごとにマーキングしておき、このマークを基に識別する方法が提案されている(特許文献3)。
しかしこの方法を、国内・国外の各社からすでに市場に投入された大量の蛍光管のリサイクル・再利用へ適用することは困難である。
【0008】
さらに蛍光管の種類の識別にあたっては、リサイクルの対象とする蛍光管識別後、蛍光管分別装置による分別を経た最終利用形態に留意することが重要であり、蛍光管だけでなくそこに含まれるレアアース系蛍光体の再利用の形態の多様化にも対応できる必要性が指摘されている。
【0009】
したがって最終利用形態に応じた応用範囲が広い、蛍光管分別装置やリサイクル・再利用装置への組み込みの柔軟性の高い、蛍光管と一体となった蛍光体に含まれるレアアースの種別が大別できるほどに高精度であり、かつ安価な蛍光管種類識別装置および蛍光管種類識別方法の開発が重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2005−203214
【特許文献2】特開2001−345051
【特許文献3】特開2005−108706
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたもので、廃棄された蛍光管を破壊することなく、識別のための特別なマーキングを蛍光管に施すことなく、蛍光体に使用される異なる種類のレアアースに対応した蛍光管の種類の識別が可能な程度に高精度であり、かつ安価に製造し、実施できる蛍光管種類識別装置および蛍光管種類識別方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するため、本発明は第1の態様として、少なくとも紫外線光源と色度値測定装置とを有する蛍光管種類識別装置であって、前記紫外線光源から紫外線を蛍光管のガラス管外部に照射する手段と、前記照射による前記蛍光管の発光の色度値を前記ガラス管外部から計測する手段と、前記計測された色度値を色空間上の色度座標に変換する手段とを備え、前記変換された色空間上の色度座標により前記蛍光管の蛍光管種類を識別する、ことを特徴とする蛍光管種類識別装置が構成される。
【0013】
これにより、廃棄された蛍光管を破壊することなく、識別のための特別なマーキングを施すことなく、蛍光管に使用される異なる種類のレアアースごとに(レアアース種の含有率を反映させた)蛍光管の種類の識別が可能な程度に高精度であり、かつ安価に製造・実施できる蛍光管種類識別装置が提供されるようになった。
蛍光管外部より紫外線を照射して蛍光管を発光させた場合の色度は、照度や輝度等と同様に汎用の光学計測器により容易に測定が可能であり、それらを同時に測定可能な機器が一般に流通しているので本発明への利用は容易である。
また本発明が利用する色度は色温度のような測定範囲の限定は無く、照度や輝度を計測できる光量があれば計測可能なものであり高精度で安定的な識別が可能である。
【0014】
具体的には、さらに、蛍光管種類ごとに定められた領域を色空間に定義する手段と、前記定義された蛍光管種類ごとに定められた領域を前記色空間に表示する手段と、前記領域を表示した色空間に前記変換された色空間上の色度座標を重畳して表示する手段と、前記識別された蛍光管種類を表示する手段を備え、前記変換された色空間上の色度座標が包含される前記領域により前記蛍光管の蛍光管種類を識別することを特徴とする蛍光管種類識別装置が構成される。
蛍光管種類領域と被識別蛍光管の色度座標とを同時に色空間に重畳して表示することにより被識別蛍光管の種類が容易に識別できるようになる。
【0015】
さらに前記蛍光管種類領域がハロリン酸系蛍光管領域と三波長域発光形蛍光管領域であることを特徴とする蛍光管種類識別装置が構成される。
これにより大別して、ハロリン酸系蛍光管領域と三波長域発光形蛍光管領域の蛍光管が、破壊することなく、その種類が識別できる蛍光管種類識別装置が提供されるようになった。
また、前記三波長域発光形蛍光管領域が電球色領域、昼白色および昼光色領域、白色および温白色領域からなることを特徴とする蛍光管種類識別装置が構成される。
これによりさらに、三波長域発光形蛍光管を、破壊することなく、電球色、昼白色および昼光色、または白色および温白色蛍光管の種類に識別できる蛍光管種類識別装置が提供されるようになった。
【0016】
さらに、蛍光管種類識別手段を有する蛍光管分別装置であって、上述のいずれかの蛍光管種類識別装置を蛍光管種類識別手段として有することを特徴とする蛍光管分別装置が構成される。
蛍光管種類識別装置を蛍光管分別装置に組み込むことにより、蛍光管を破壊することなく廃棄された蛍光管を識別後、該蛍光管をその種類ごとに分別・回収することが可能になった。
該蛍光管分別装置を工場ライン等の一工程として設置し、該蛍光管のリサイクル特性に沿ってその種類を分別後、後のリサイクル工程につなぐことが可能になる。
さらに上述の蛍光管種類識別装置または蛍光管分別装置を有する蛍光管再利用処理装置の構成が可能となる。
【0017】
また上述の目的を達成するため、本発明は第2の態様として、少なくとも紫外線光源と色度値測定装置とを有する蛍光管種類識別装置を利用する蛍光管種類識別方法であって、前記紫外線光源から紫外線を蛍光管のガラス管外部に照射するステップと、前記照射による前記蛍光管の発光の色度値を前記ガラス管外部から計測するステップと、前記計測された色度値を色空間上の色度座標に変換するステップと、前記変換された色空間上の色度座標により前記蛍光管の蛍光管種類を識別するステップとから構成されることを特徴とする蛍光管種類識別方法を提供する。
【0018】
具体的には、前記変換された色空間上の色度座標により前記蛍光管の蛍光管種類を識別するステップは、蛍光管種類ごとに定められた領域を色空間に定義するサブステップと、前記定義された蛍光管種類ごとに定められた領域を色空間に表示するサブステップと、前記領域を表示した色空間に前記変換された色空間上の色度座標を重畳して表示するサブステップと、前記変換された色空間上の色度座標が包含される前記領域により前記蛍光管の蛍光管種類を識別するサブステップと、前記識別された蛍光管種類を表示するサブステップとから構成される蛍光管種類識別方法を提供する。
【0019】
また、第2の態様として、前記蛍光管種類領域がハロリン酸系蛍光管領域と三波長域発光形蛍光管領域である蛍光管種類識別方法が構成される。
これにより大別して、ハロリン酸系蛍光管領域と三波長域発光形蛍光管領域の蛍光管が、破壊することなく、その種類が識別できる蛍光管種類識別方法が提供されるようになった。
さらに、第2の態様として、前記三波長域発光形蛍光管領域が電球色領域、昼白色および昼光色領域、白色および温白色領域からなる蛍光管種類識別方法が構成される。
これによりさらに、三波長域発光形蛍光管を、破壊することなく、電球色、昼白色および昼光色、または白色および温白色蛍光管の種類に識別できる蛍光管種類識別方法が提供されるようになった。
【0020】
さらに、第2の態様として、蛍光管種類識別ステップを有する蛍光管分別方法であって、上述のいずれかの蛍光管種類識別方法をその蛍光管種類識別ステップとして蛍光管分別方法が構成される。
蛍光管を破壊することなく廃棄された蛍光管を識別後、該蛍光管をその種類ごとに分別・回収することが可能になる。
該蛍光管分別方法を工場ライン等の一工程として使用し、該蛍光管のリサイクル特性に沿ってその種類を分別後、後のリサイクル工程につなぐことが可能になる。
【発明の効果】
【0021】
蛍光管に含まれる特定レアアースに対して、適宜、該領域を設定することで、当該蛍光管種類を識別し分別することが可能となるので、結果的に回収されるレアアース種の濃縮度を高くすることが可能となり、レアアース本来の再利用に有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の概念的構成図を表している。
【図2】Yxy表色系のxy直交座標系色空間に各種蛍光管について遮光フィルタありと遮光フィルタなしの2回計測して得た色度座標を表し、さらに直線で結んで表示している。
【図3a】図2を含むYxy表色系のxy直交座標系色空間の全体図を模式化して表している。
【図3b】Yxy表色系のxy直交座標系色空間の一部に蛍光管種類領域12、13を模式化して表したものである。
【図4】Yxy表色系のxy直交座標系色空間の一部に蛍光管種類領域12、12a、12b、12c、13を模式化して表したものである。
【図5】蛍光管種類識別方法の概略フローチャートと識別ステップの詳細フローチャートを表している。
【図6】蛍光管種類識別方法の識別ステップの蛍光管種類を識別するサブステップの詳細フローチャートを表している。
【図7】本発明を利用した蛍光管分別装置の構成図を表している。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0023】
以下に、図1を参照して直管蛍光ランプで本発明の実施の形態を詳細に説明する。
蛍光管には直管蛍光ランプ、片口金(環形、コンパクト形)蛍光ランプ、電球口金付蛍光灯あるいは電球形蛍光灯等の種類があるが、蛍光管の形態にあった紫外線の照射方法を適宜採用することにより、いずれの蛍光管(蛍光ランプ・蛍光灯)にも本発明は適用できるものである。
図1は、本発明の実施の形態を示す概念的構成図である。
少なくとも紫外線光源3と色度値測定装置6とを有する蛍光管種類識別装置10であって、前記紫外線光源から紫外線8を蛍光管1のガラス管外部2に照射する手段と、前記照射による蛍光管1の発光9の色度値を前記ガラス管外部2から計測する手段と、前記計測された前記色度値を色空間上の色度座標に変換する手段とを備え、前記変換された色空間上の色度座標により蛍光管1の蛍光管種類を識別することを特徴とする蛍光管種類識別装置が図1に示されている。
本実施例では、紫外線光源3として市販の紫外線ランプ、色度値測定装置6および前記計測された前記色度値を色空間上の色度座標に変換する手段として市販の分光放射輝度計あるいは色彩照度計を用い、前記変換された色空間上の色度座標により蛍光管種類を識別する手段としてパーソナルコンピュータの演算装置と表示装置を実施手段として蛍光管種類識別装置を構成した。
【0024】
本実施例で使用するレアアースの識別に有利な励起光源について説明する。
蛍光管に使用される蛍光体は蛍光管のガラス管1aの内壁に塗布されており、その種類や量比によって点灯時の発光色(色温度)が調整されている。
蛍光体の励起に有効な紫外線は、管を透過する段階で大部分が吸収または遮られる。
またこの管による紫外線の吸収(遮断)は、可視域から遠い短波長側の方が顕著であることから、現在市場で一般的に流通している紫外線源として、水銀ガスを放電媒体とする放電管タイプでは、可視域に近い長波長365nm前後のもの、LEDランプ(中心波長365nm、中心波長375nm、中心波長395nm)などに利用の可能性がある。
【0025】
可視域に近い紫外線光源は、レアアースを含まないハロリン酸系蛍光管と三波長域発光形蛍光管との分離が良く、三波長域発光形では、紫外線遮断処理等の外因の影響はあるものの、蛍光体の発光強度が相対的に高くなって、蛍光体の成分比すなわち光源色規格を反映した識別情報となる。
従ってレアアース元素の分離濃縮に主眼を置く場合には、蛍光体種を反映した識別情報であるため有利である。
一方LED光源で選択可能な、より長波長側の光源(375nm、395nm等)は赤色蛍光体の発光強度が強く、三波長域発光形では光源色規格、すなわち蛍光体種の使用割合を相対的に強く反映した励起発光が得られる。
それらの効果によってLEDを励起源に用いることで識別精度を高める場合があるので蛍光体(レアアース)主体の分離に適する。
【0026】
なお短波長254nm前後の紫外線光原でもハロリン酸系に照射すると、三波長域発光形と異なり、特異な青色発光を示さないことから、同一規格の三波長域発光形との識別は可能になる。
本実施例では可視域に近い375nmの紫外線光源を採用したが、異なる紫外線光原を複数回照射しこれらの各種光源別の識別方法を二つ以上組み合せて識別することによって、識別対象をより詳細に、またより精度高く識別することが可能である。
【0027】
紫外線光源から紫外線を蛍光管のガラス管外部に照射する手段では、波長が375nmの紫外線を照射して蛍光管中の蛍光体を励起発光9させる。
破壊することなく計測するため、ガラス管外部より照射する。
また励起発光を確実に計測するために、好ましくは蛍光管1を暗箱状に囲い紫外線光源から紫外線を照射してその励起発光をガラス管外部から測定する。
装置と測定環境とを省スペース化するためには、測定部位のみを遮光して、紫外線光源と計測装置を小型一体化し、照射し計測してもよい。
【0028】
紫外線8照射による蛍光管の発光の色度値をガラス管外部から計測する手段においては、その発光の色度を測定する。
色度は、発光量が一定以上の光量であれば、スペクトルの強度と異なり光量によらず、該蛍光体に応じて、一定の値(範囲)を示す。
よって、蛍光管に使用されている蛍光体の色度値の相違で、蛍光管の種類(ハロリン酸系-白色、三波長-電球色、三波長-昼白色、など)が識別できる。
また蛍光管のガラス管表面が紫外線コーティングされている蛍光管に対しても、ガラス管内部の蛍光体に紫外線を照射して得られる微弱な発光が一定以上の光量であれば、該蛍光管の種類を高い確率で識別することが可能である。
【0029】
本実施例では、各直管蛍光ランプおよびコンパクト形蛍光ランプについて、紫外線を照射された蛍光体の発光に測光器のレンズをあてて直接的に計測した場合と、測光器のレンズに特定(蛍光管の発光以外)の波長域を遮る光遮断フィルタを被せて間接的に計測した場合の2回について計測値を取得した。
これは、照射された紫外線の反射光(迷光)により、判定すべき計測値に幅が想定されるためである。
【0030】
本発明の実施例では、蛍光管の発光により計測された色度値の色度座標変換は、色度計測が可能な色彩照度計または分光放射輝度計を用いて計測を行った後、該色彩照度計または分光放射輝度計の表示部から計測された該色度値を直接読み取り、それをパーソナルコンピュータに入力した後にパーソナルコンピュータ上の表示装置に図3aに示すような色空間11を定義してその色空間上で蛍光管種類を識別した。
なお、色空間の座標系の定義は色々あり、どれをとっても問題ないが、本発明の実施例では、図3aに示すように、色空間の座標系として日本工業規格(JIS)にも取り入れられているCIE(国際照明委員会、Commision Internationale de l'Eclairage)のYxy表色系の色度図を用いて表し、測定装置として該表色系のCIE2°視野標準観測者(CIE1931等色関数)近似値を演算出力する分光放射輝度計を用いて該色度図上の座標を求め、パーソナルコンピュータ上の表示装置に表示した。
【0031】
前記変換された色空間上の色度座標により蛍光管1の蛍光管種類を識別するには、より具体的には、さらに蛍光管種類ごとに定められた領域を色空間に定義する手段と、前記定義された蛍光管種類ごとに定められた領域を前記色空間に表示する手段と、前記領域を表示した色空間に前記変換された色空間上の色度座標を重畳して表示する手段と、前記識別された蛍光管種類を表示する手段とを備え、前記色度座標が包含される前記領域により蛍光管1の蛍光管種類を識別する。
【0032】
色空間は表示装置に、図1では情報制御表示部6に表示すれば目視できて視認性は優れ識別は容易である。
しかし必ずしも表示装置に表示しなくとも論理的な制御部上の色空間としてその表示情報を外部制御信号出力7に出力してもよい。
また色空間を表示する表示装置は計測手段、紫外線光源や制御部と一筺体として構成してもよく、反対にそれぞれ別構成として電気通信手段で連結してもよい。
本発明が蛍光管分別装置やリサイクル工場に組み入れられる場合には表示装置は中央制御室等に構成されることもあるので、これらの手段は全体として構成されていればよい。
この図1の模式図では、発光の計測値は情報制御表示部6の表示部において色度座標に変換されて色空間に重畳して表示される。
【0033】
蛍光管種類ごとに定められた領域を色空間11に定義する手段においては、同一種類の蛍光管に外部から紫外線照射して計測した発光の計測色度値から変換された色度座標の組で領域を定義する。
抽出対象のレアアースは蛍光管の種類ごとに成分比が近似し、当該レアアースを成分とする蛍光体の励起発光に基づき前記xy色度座標が決定することからそのxy色度座標は互いに近接するので、たとえば各社の同種の蛍光管について定義を行う。
また特定の、若しくは複数のレアアースが蛍光体に含まれる種類について特定の製造元ごとに纏めて定義してもよい。
領域は特別の蛍光管製品群からなる種類であってもよいし、蛍光管の蛍光体に利用されているレアアース組成ごとに領域を形成してもよい。
【0034】
図2は、色度計測が可能な市販の分光放射輝度計を用いて複数の蛍光管について遮光フィルタありと遮光フィルタなしの2回計測を行い、各蛍光管の発光の色度計測値を座標変換した一対の色度座標を直線で結んでxy直交座標系の色空間上に表し、これを各種類に属する蛍光管についてすべて表示したものである。
図2では、大きく分けて、L(三波長電球色)グループ、D(三波長昼光色)とN(三波長昼白色)とからなるグループ、W(三波長白色)とWW(三波長温白色)とからなるグループの3個の三波長域発光形グループとハロリン酸系グループとに分かれていることがわかる。
図3aは図2を含むYxy座標系色空間の全体を模式的に表している。
なお当実施例では分光放射輝度計に加えて色彩照度計を用いて蛍光管種類領域用データを計測したが、その結果は、前記グループ間でほぼ同様の座標位置関係が得られた。
従って蛍光管種類領域の定義のための計測と蛍光管種類の識別のための計測とは必ずしも同一の色度値測定装置で行う必要はなく全体として構成されていればよく、蛍光管種類領域定義専用色度値測定装置と蛍光管識別専用色度値測定装置として分離して別構成としてもよい。
【0035】
前記定義された蛍光管種類ごとに定められた領域を色空間に表示する手段ではまず、上述の各グループに定義された蛍光管の測定から得られた一対のxy座標を、色空間に点描し、次に最外周の点に沿って多角形の領域を画して各領域を定義する。
xy直交座標は正規化されているので該領域は色空間では必ず閉領域となる。
よって領域が画されるので、適宜、領域内或いは領域外周辺に蛍光管種類の表示を行い、当該領域の種類を明確にする。
本実施例では、図2に表示された各蛍光管について得られた一対の計測値から変換された一対のxy色度座標を、製造元にかかわらず同一種類の蛍光管で纏めて一領域とした。
図3bは三波長域発光形グループを蛍光管種類領域12として、ハロリン酸系グループを蛍光管種類領域13としてYxy座標系色空間の一部に表している。
【0036】
図4は、図3bに表示した三波長域発光形グループ12を細分化して、L(三波長電球色)グループ12a、D(三波長昼光色)とN(三波長昼白色)とからなるグループ12b、W(三波長白色)とWW(三波長温白色)とからなるグループ12cとし、全部で4つの蛍光管種類のグループとし、蛍光管種類領域1乃至蛍光管種類領域4を凸多角形で領域化して領域表示したものである。
さらに前記三波長域発光形グループを昼光色、昼白色、白色、温白色、電球色の領域と細分化してもよい。
計測精度が得られる場合には遮光フィルタあり、または遮光フィルタなしのいずれか1回計測を行い領域化してもよい。
色空間に蛍光管種類を表示する場合は領域内に色や斜線を施して視覚化してもよく、また色空間の周辺に該蛍光管種類を例示してもよい。
【0037】
なお色空間については、xy直交座標系が視認性はよく目視は容易であるが、立体座標に表示してもよい。
また各社の各製品の色度座標の基準値が他の基準値と異なり単独で特定できる場合には領域をさらに細分化して作成して該蛍光管を識別することにより製品に使用される蛍光体のレアアースだけでなく、製品に使用される蛍光体以外の他の材質(ガラス等)の分別回収等にも応用が可能になる。
【0038】
複数の蛍光管種類領域を表示した色空間に前記計測された色度座標を重畳して表示することにより、色度座標が包含される蛍光管種類領域により蛍光管種類が識別されるので、該蛍光管の種類が明らかとなる。
Yxy表色系xy直交座標系において凸多角形の領域が定義されている場合において、具体的に色度座標が包含される蛍光管種類領域を判別するには、X軸上に、該X座標を通るY軸と平行な直線を立てて、該平行線がよぎる領域のY座標の最小、最大の範囲内に該Y座標が含まれれば、当該領域の蛍光管の種類と判定される。
該蛍光管についての平行線が、定義されたいずれの領域をもよぎらない場合は、該蛍光管に含まれるレアアースの種類・含有率等を勘案した上で、既存のまたは新しい蛍光管の種類と関係づけて定義すればよい。
既に定義された領域を拡張してもよいし、新たな種類として領域を定義してもよい。
【0039】
前記識別された蛍光管種類を表示する手段においては、表示部6に表示された図4により該蛍光管の色度座標が包含される蛍光管種類領域により蛍光管種類は明らかであるが、さらに該蛍光管の種類を明示して計測者に周知する。
識別結果は、表示部6に表示された図4により直接的に目視により判断できるが、その他の情報と合わせて識別情報として表示部に表示することにより、徹底することができる。
たとえば識別した蛍光管種類に加えて、該計測値・該xy座標・使用されているレアアースの種類その他情報(蛍光管形状が判別できれば蛍光管形状)を識別情報として適宜表示部6に表示する。
【0040】
本発明の実施態様では、Yxy表色系色空間と識別情報の表示には、パーソナルコンピュータの表示部を利用したが、専用の色度計等を拡張して既存表示部に追加表示してもよいし、また組み込み用として計測値変換部と識別情報表示部を含む専用ユニットとして設計してもよいし、また遠隔操作ができるように分離してもよい。
またこれらの識別情報は、計測された時間等計測条件情報と一緒に記録されてもよい。
【0041】
なお前述した識別された蛍光管種類を表示する手段は外部制御信号出力7を含む概念である。
他の装置が総合して識別情報を利用できるようにしてもよい。
外部出力は、必要とされる識別情報を利用する装置により、例えば蛍光管分別装置等においては、アナログ接続であってもデジタル接続であってもよく、また有線接続であっても無線接続であってもよい。
また本発明に必要な機能のみからなる上述手段の構成要素を同一筺体に組み込めば、簡易で携帯可能な蛍光管種類識別装置が実現できる。
【実施例2】
【0042】
蛍光管分別装置の実施例について図7を用いて説明する。
図7は本蛍光管種類識別装置を利用した直管蛍光ランプの蛍光管分別装置70を表した模式構成図である。
蛍光管装填機構71は該蛍光管を本蛍光管種類識別装置10に供給すると同時に、外部制御信号入出力7を通じて本蛍光管種類識別装置に直管蛍光ランプ、片口金(環形、コンパクト形)蛍光ランプ、電球口金付蛍光灯あるいは電球形蛍光灯等の形態情報を出力する。
本蛍光管種類識別装置は入力された該形態情報に基づいて紫外線光源と紫外線の照射方法を適宜選択採用し該蛍光管に紫外線を照射する。
【0043】
本蛍光管種類識別装置10は蛍光管の発光の計測値から該蛍光管の種類を識別しその情報を、外部制御信号入出力7を経由して蛍光管分別部72aに出力すると同時に、該蛍光管を蛍光管分別部72aに排出する。
分別機構72は排出された該蛍光管を当該識別情報により蛍光管を種類別または製品別等に沿って分別収集する。
【0044】
本蛍光管種類識別装置は蛍光管供給を手動で行う小型の蛍光管分別装置から、蛍光管供給を自動で行う大型蛍光管分別装置あるいはそれらを直接的または間接的に利用する蛍光管リサイクル工場まで幅広い利用が可能である。
【実施例3】
【0045】
蛍光管種類識別方法について図5を用いて説明する。
少なくとも紫外線光源と色度値測定装置とを有する蛍光管種類識別装置を利用する蛍光管種類識別方法であって、前記紫外線光源から紫外線を蛍光管のガラス管外部に照射するステップ(S510)と、前記照射された前記蛍光管の発光の色度値を前記ガラス管外部から計測するステップ(S520)と、前記計測された色度値を色空間上の色度座標に変換するステップ(S530)と、前記変換された色空間上の色度座標により前記蛍光管の蛍光管種類を識別するステップ(S540)とからなることを特徴とする蛍光管種類識別方法が図5に示されている。
【0046】
上述の各ステップの内容は実施例1の蛍光管種類識別装置において図1を用いて説明したとおりである。
【0047】
さらに図6は前記変換された色空間上の色度座標により前記蛍光管の蛍光管種類を識別するステップ(S540)の詳細ステップが示されている。
具体的には、蛍光管種類ごとに定められた領域を色空間に定義するサブステップ(S541)と、前記定義された蛍光管種類ごとに定められた領域を色空間に表示するサブステップ(S542)と、前記領域を表示した色空間に前記変換された色空間上の色度座標を重畳して表示するサブステップ(S543)と、前記色空間上の色度座標が包含される領域により前記蛍光管の蛍光管種類を識別するサブステップ(S544)と、前記識別された蛍光管種類を表示するサブステップ(S545)とから構成される。
【0048】
上述の各サブステップの内容は実施例1の蛍光管種類識別装置において図2、図3a、図3bおよび図4を用いて説明した通りである。
照射された蛍光管の発光の色度座標がいずれの蛍光管領域にも属さない場合には、該蛍光管に含まれるレアアースの種類・含有率等を勘案した上で、既存のまたは新しい蛍光管の種類と関係づけて再定義すればよい。
既に定義された領域を拡張してもよいし、新たな種類を追加して領域を定義すれば識別可能となる。
【0049】
また図3bおよび図4に例示したように、前記蛍光管種類領域をハロリン酸系蛍光管領域と三波長域発光形蛍光管領域であることを特徴とする蛍光管種類識別方法と、さらに前記三波長蛍光管領域が電球色領域、昼白色および昼光色領域、白色および温白色領域からなることを特徴とする蛍光管種類識別方法とが新たに追加される。
さらに前記三波長域発光形蛍光管領域を細分化して昼光色、昼白色、白色、温白色、電球色の領域からなることを特徴とする蛍光管種類識別方法も容易に構成することができる。
【0050】
さらに図7を用いて実施例2の蛍光管分別装置で説明したように、上述の蛍光管種類識別方法を蛍光管種類識別ステップとして有する蛍光管分別方法が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
上述した本発明によれば、外部からの紫外線照射では発光が不十分で破壊しないとスペクトル等の測定・分析による識別はできないとされている電球色蛍光管を含めて、全ての種類の蛍光管について破壊することなく(非破壊)でその種類を識別することが可能である。
また、組成の異なるレアアースがその蛍光体に使用されている蛍光管からの紫外線照射による発光色の差異により、蛍光管が種類ごとに識別されて、その結果非破壊で分別が可能となるので、蛍光管分別装置の生産性が高まり、蛍光管分別装置への組み込みが容易になる。
また蛍光管種類識別装置またはその蛍光管分別装置はコンパクトかつ廉価に製造が可能となるので、リサイクル・再利用装置、工場ライン等への応用が有利となる。
【符号の説明】
【0052】
1.蛍光管(蛍光灯)
1a.蛍光管のガラス管
2.蛍光管のガラス管外部
3.紫外線光源
4.色度値測定装置
5.遮光部
6.情報制御表示部(制御部、結果表示部、制御信号出力部)
7.外部制御信号入出力
8.紫外線
9.蛍光管の発光
10.蛍光管種類識別装置
11.色空間
12.蛍光管種類領域1
12a.蛍光管種類領域2
12b.蛍光管種類領域3
12c.蛍光管種類領域4
13.蛍光管種類領域5
20.被識別蛍光管の色度座標
70.蛍光管分別装置
71.蛍光管装填機構
72. 分別機構
72a.蛍光管分別部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも紫外線光源と色度値測定装置とを有する蛍光管種類識別装置であって、
前記紫外線光源から紫外線を蛍光管のガラス管外部に照射する手段と、
前記照射による前記蛍光管の発光の色度値を前記ガラス管外部から計測する手段と、
前記計測された色度値を色空間上の色度座標に変換する手段と、
を備え、
前記変換された色空間上の色度座標により前記蛍光管の蛍光管種類を識別する、
ことを特徴とする蛍光管種類識別装置。
【請求項2】
さらに蛍光管種類ごとに定められた領域を色空間に定義する手段と、
前記定義された蛍光管種類ごとに定められた領域を前記色空間に表示する手段と、
前記領域を表示した色空間に前記変換された色空間上の色度座標を重畳して表示する手段と、
前記識別された蛍光管種類を表示する手段と、
を備え、
前記色空間上の色度座標が包含される前記領域により前記蛍光管の蛍光管種類を識別する、
ことを特徴とする請求項1記載の蛍光管種類識別装置。
【請求項3】
前記領域がハロリン酸系蛍光管領域と三波長域発光形蛍光管領域である請求項2に記載の蛍光管種類識別装置。
【請求項4】
前記三波長域発光形蛍光管領域が電球色領域、昼白色および昼光色領域、白色および温白色領域からなる請求項3に記載の蛍光管種類識別装置。
【請求項5】
蛍光管種類識別手段を有する蛍光管分別装置であって、請求項1乃至請求項4のいずれか1つに記載の蛍光管種類識別装置を蛍光管種類識別手段とする蛍光管分別装置。
【請求項6】
少なくとも紫外線光源と色度値測定装置とを有する蛍光管種類識別装置を利用する蛍光管種類識別方法であって、
前記紫外線光源から紫外線を蛍光管のガラス管外部に照射するステップと、
前記照射による前記蛍光管の発光の色度値を前記ガラス管外部から計測するステップと、
前記計測された色度値を色空間上の色度座標に変換するステップと、
前記変換された色空間上の色度座標により前記蛍光管の蛍光管種類を識別するステップと、
から構成されることを特徴とする蛍光管種類識別方法。
【請求項7】
前記変換された色空間上の色度座標により前記蛍光管の蛍光管種類を識別するステップは、
さら蛍光管種類ごとに定められた領域を色空間に定義するサブステップと、
前記定義された蛍光管種類ごとに定められた領域を色空間に表示するサブステップと、
前記領域を表示した色空間に前記変換された色空間上の色度座標を重畳して表示するサブステップと、
前記色空間上の色度座標が包含される前記領域により前記蛍光管の蛍光管種類を識別するサブステップと、
前記識別された蛍光管種類を表示するサブステップと、
からなることを特徴とする請求項6に記載の蛍光管種類識別方法。
【請求項8】
前記領域がハロリン酸系蛍光管領域と三波長域発光形蛍光管領域であることを特徴とする請求項7に記載の蛍光管種類識別方法。
【請求項9】
前記三波長域発光形蛍光管領域が電球色領域、昼白色および昼光色領域、白色および温白色領域からなることを特徴とする請求項8に記載の蛍光管種類識別方法。
【請求項10】
蛍光管種類識別ステップを有する蛍光管分別方法であって、請求項6乃至請求項9のいずれか1つに記載の蛍光管種類識別方法を蛍光管種類識別ステップとすることを特徴とする蛍光管分別方法。














【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−56294(P2013−56294A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−195583(P2011−195583)
【出願日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】