説明

蛍光X線源

本発明は、電子の放射に対する電子源、及び電子の発生に応答してX線を放射するターゲットを有する蛍光X線の生成に対するX線源に係る。前述のターゲットは、電子の発生に応答する第1のX線の放射に対する輪状の第1のターゲット、及び、第1のX線の発生の応答する蛍光X線の放射に対する第2のターゲットを有する。強化された放射輝度を得るよう、第1のターゲットは、中心軸に相対する放射状方向に配置された液体金属流路を有すること、及び、液体金属は、X線源の動作中に輪状の第1のターゲットの内側から外側へ放射方向に循環することが提案される。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子の放射に対する電子源、及び電子の発生に応答してX線を放射するターゲットを有する蛍光X線の生成に対するX線源に係る。前述のターゲットは、電子の発生に応答する第1のX線の放射に対する輪状の第1のターゲット、及び、第1のX線の発生の応答する蛍光X線の放射に対する第2のターゲットを有する。
【0002】
本発明は更に、電子の発生に応答する蛍光X線の放射に対するX線アノードに係る。前述のアノードは、電子の発生に応答する第1のX線の放射に対する輪状の第1のターゲット、及び、第1のX線の発生に応答する蛍光X線の放射に対する第2のターゲットを有する。
【背景技術】
【0003】
単色X線源は、従来のX線技術の性能を強化し、革新的なものにすることが可能である。かかる単色X線源は、例えば、米国特許第4,903,287号明細書(特許文献1)及び米国特許第5,157,704号明細書(特許文献2)に記載される。第1のターゲットとも称されるアノードは、第2のターゲットとも称される一部分を有し、該部分に面する側を電子によって衝突され、アノードにおいて生成された第1のX線照射が該部分において蛍光放射線を生成する。該部分は、望ましくは、拡散された電子を該部分から離しておく囲いシールド(enclosing shield)内に配置される。この原理は、しばしばフルオレックス原理(Fluorex principle)と称される。
【0004】
コンプトン散乱、光電吸収、及びコヒーレントX線散乱等の基本的なX線の相互断面は、すべてエネルギ依存である。従来通りでは診断放射線医学において、多色放射源(電子衝撃)によって放射された連続スペクトルは、「平均的」エネルギーの単色線によって近似され得る、と想定されている。コンピュータ断層撮影法(CT)のビーム硬化アーチファクトは、減衰係数に対する正確な結果が所望される際にこの近似が放棄されなければならないことを示す。
【0005】
「平均的エネルギ」の近似は、コヒーレント散乱CT又はTEAMFI等の理想的には単色光を要求する新しいX線技術において、更に深刻に失敗する。かかる放射源は、弱い(放射線核種等)であるか、不利(シンクロトロン等)であるかのいずれかである。
【0006】
単色X線源の他の種類は、所謂LIMAX原理に基づくものであって、米国特許第6,185,277号明細書(特許文献3)に記載される。このX線源において、液体金属ターゲットが与えられる。電子源によって放射された電子は、薄い窓を介して液体金属に入り、そこでX線を作る。液体金属は高原子番号を有し、ポンプの影響を受けて循環し、電子との相互作用によってウィンドウに作られた熱及び液体金属は散逸され得るようにされる。この区域に生成された熱は、乱流によって散逸され、故に効率的な冷却が保証される。
【特許文献1】米国特許第4,903,287号明細書
【特許文献2】米国特許第5,157,704号明細書
【特許文献3】米国特許第6,185,277号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、冒頭で言及された種類の蛍光X線の生成に対して準単色X線源を与えることを目的とする。該X線源によって、(毎ステラジアン毎秒毎ユニット源区域の光子として定義付けられとしてて光子定義付けられた)強化された放射輝度が、既知の準単色X線源と比較して得られ得る。更に、かかるX線源における衣装に対するアノードが、与えられるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するよう、本発明に従った蛍光X線の生成に対するX線源、及び、本発明に従った蛍光X線の放射に対するX線アノードのいずれもが、前述の第1のターゲットは中心軸に相対して放射線状方向に配置された液体金属流路を有し、液体金属はX線源の動作中に前述の輪状の第1のターゲットの内側から外側へ放射方向に循環する、ことを特徴とする。
【0009】
本発明は、フルオレックス原理の液体金属アノードX線技術との組合せに基づき、源の放射輝度において多大な上昇をもたらす。上昇された放射輝度を得るよう、放射線状の形状が、液体金属流路に使用される。第1及び第2のターゲットの環状且つ対称な形状は、第2のターゲットの特定のサイズ(即ち焦点寸法)に対し、平均立体角、Ωmeanを最大化し、第2のターゲットは第1のターゲットに内在する。放射状流の配置は、これに応じて、出力を最大化し、それによって輪状の環状且つ対称の第1のターゲットが装備され得る。本発明によれば、従来の放射線技術の性能が強化され得、新しい放射線技術が実際に実現され得る。
【0010】
本発明の望ましい実施例は、従属請求項に記載される。例えば、第2のターゲットが、輪状の第1のターゲットの中心軸上に配置されること、及び、前述の中心軸に対して略平行である方向に蛍光X線を放出するよう適合されることが有利である。この配置は、第1のX線の使用の効率性に対してより効果的である。蛍光X線は、故に、輪状の第1のターゲットの中心の穴を介して放射される。
【0011】
本発明の他の実施例によれば、液体金属流路は、電子が第1のターゲットに衝突する電子衝突域に狭窄を有する。これは、電子が発生する電子窓では窓への圧力が最小化されること、即ち、電子窓にわたる粘性の圧力低下が、ベルヌーイ圧力(Bernoulli pressure)における上昇によって平衡化されることが保証される。
【0012】
他の面によれば、電子源に面する第1のターゲットの面は、フォイル等の金属膜によって被覆される。かかる膜は、X線源の真空領域を膜の後ろの液体金属流路から分離するよう役割をなす。
【0013】
液体金属流路を循環する液体金属は、望ましくは、高原子番号を有する材料を有し、X線が電子の発生時に生成されるよう保証するようにする。望ましくは、液体金属は、40番より大きく80番より小さい原子番号を有する。例えば、液体金属は、Bi,Pb,In又はSnの合金を有し得る。
【0014】
液体金属流路における液体金属の厳密な放射状流を保証するよう、液体金属流路を放射状のフィンが、多数の放射状の副流路へ分けるよう更に与えられる。故に、液体金属は、循環方向ではなく放射状方向、即ち中心軸の周囲の方向にのみ流れ得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の実施例は、図面を参照してより詳細に説明される。
【0016】
図1は、Philips社によって市販されているTaのターゲットを有する既知のフルオレックス装置(Fluorex device)の発光スペクトルを図示する。蛍光放射線は、(この装置におけるTaでできた)第2のターゲットにおいて、光電効果を介して起こる。第2のターゲットは、最大光子エネルギが第2のターゲットのK吸収限界より非常に高い(3という因数)である連続X線スペクトルによって照射される。この装置の光子出力は、第2のターゲット上に当たる第1のX線ビームの出力に比例する。従って、より高い放射輝度は、第1の出力が上昇される際に実現可能である。フルオレックス配置において、第1のビームは、電子ビームの印加電圧力を約10kWに制限する水冷式の固定アノードによって放射される。本発明の目的は、電子ビームが乱流する液体金属と相互作用するよう配置することによって、許容出力を大きく上昇させるようにすることである。
【0017】
本発明に従ったX線源の配置を介する中心断面は、図2中に図示される。配置は、原則的に、陰極1と、第1のターゲット(エンドキャップとも称される)2及び第2のターゲット3とを有するターゲット(アノード)とを有する。配置は、中心(回転)軸4の周囲で環状且つ対称であり、筐体5の内部に位置付けられる。輪状陰極1から放射される電子ビーム6は、第1のターゲット2の膜(フォイル)7上に衝突する。フォイル7は、電子がそこでは本来のエネルギのうち極少量を損失するよう、十分に薄い材料(W等)でできている。第1のターゲット2は、液体金属流路8を更に有する。該流路は、流体金属が、中心軸4に相対する放射状方向で、輪状の第1のターゲット2の内側13から外側14へと循環するようにさせる。図3は、図2中に図示された第1のターゲット2の半分の拡大図である。
【0018】
フォイル7は、X線管の真空領域をフォイル7の背後部の液体金属から離すことを目的とする。液体金属は、例えばBi,Pb,In,Sn等の合金であり得るが、望ましくは40番乃至80番である高原子番号を有するべきである。電子6は、液体金属へと拡散し、従って、熱へと転換されるエネルギを損失する。液体金属は毎秒何メートルもの速度を有して動いているため、液体金属に散逸され得る全出力は、固定のアノードX線管の全出力より大きい。
【0019】
液体金属の動きの方向は、図3中の流れの方向を示す矢印から計られる。矢印は、比較的小さい半径で第1のターゲット2に入り、比較的大きな半径で再度出る。熱交換器、液体金属ポンプ等の更なる構成要素が図2中の配置に加えられ得、液体金属流路8に対して閉回路をもたらし、その周囲で液体金属は反復的に循環される。
【0020】
第1のX線9は、比較的高いZを有することを前提にして、電子膜7及び液体金属8で生成される。図2中に図示される通り、かかるX線9は、X線窓11(Be等)を介して第2のターゲット3に衝突し、蛍光放射10を励起する。第2のターゲット3は、中心軸4の方向で陰極2からみて外方を向いて先端を有する円形の断面の円錐の形状を図示する。更に、第1のビーム・ストップ12は、X線9が陰極1に衝突することを防ぐよう、陰極1に面する側上に与えられる。蛍光放射10は、第1のターゲット2及び筐体5における出口窓16を介して中心軸4の方向に沿ってX線管を出る。中心軸4の方向で見た際の第1のターゲット2が、図4中図示される。
【0021】
第1のターゲット2は、複数の目的をはたす。第1に、第1のターゲット2は、電子ビーム、X線散乱事象等によってX線管で生成されたすべての他の放射を吸収する。これを達成するよう、エンドキャップは、数mmの同等な厚さのPbを有する。第2に第1のターゲット2は、比較的小さい半径で環状流路(注入口)13と、同様の流路(排出口)14とを有し、流路13を介して液体金属がアノードに与えられ、流路14を介して液体金属がポンプ等に移動される。第3に、第1のターゲット2は、液体金属8に適合する形状(即ち、コンフューザ、狭窄、及びディフューザ)を有し、電子窓7を支持する。
【0022】
最後に、図4から明らかである通り、図3中の液体金属流路8の左手側の第1のターゲット2の部分は、フィン17を備えられ、該フィンが、液体金属を、内側(供給)半径から外側(排出)半径への厳密に放射状に動かすよう方向付けるようにされる。
【0023】
本発明によれば、液体金属流路8は、断面積(流路高さ×円周)を図示する。液体の流れは、該断面積にわたって一定に保持される。半径が広がる(注入口13から排出口14まで)につれ、流路の高さは低減される。液体金属の放射状流は、フィン17によって保証される。更には、電子窓7への圧力は、窓7にわたる粘性圧力低下がベルヌーリ圧力における上昇によって平衡を保たれることを保証することによって、最小化され得る。液体流路8の放射状構造において、窓にわたる圧力低下は、半径に対して直線状ではない。電子窓7での最小の圧力を達成するよう、液体流路は、ほとんど又はすべての電子6が発生する電子衝撃域で狭窄を有する。
【0024】
本発明は、蛍光X線の生成に対して、高い明度の準単色X線源を与える。環状且つ対称なフロー形状において液体金属ターゲットを用い、高い密度の第1のビームをもたらすようにされる(既知のフルオレックス設計上ではX因子(factor ten)の向上)。かかるビームが交換可能な第2のターゲットを照射する際、蛍光光子の高密度ビームが生じる。かかる配置の強化された放射輝度は、分子像、コヒーレントX線散乱を有する組織特性、及び荷物検査等の非現実的な放射線技術の実践的実現を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】Taのターゲットを有する既知のフルオレックス装置の発光スペクトルを図示する。
【図2】本発明に従ったX線源を介する中心断面である。
【図3】図1中に図示されたX線源の第1ターゲットの拡大部分を図示する。
【図4】X線源の中心軸の方向に沿ってみられた図3中に図示された第1のターゲットの端部面を図示する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛍光X線の生成用のX線源であって、
電子放出用の電子源と、前記電子の発生に応答してX線を放射するターゲットと、を有し、
前記ターゲットは、前記電子の発生に応答する第1のX線の放射に対する輪状の第1のターゲットと、前記第1のX線の発生に応答する蛍光X線の放射に対する第2のターゲットとを有し、
前記第1のターゲットは、中心軸に相対する放射状方向に配置された液体金属流路と、前記X線源の動作中に前記輪状の第1のターゲットの内側から外側へ放射方向に循環する液体金属とを有する、
ことを特徴とするX線源。
【請求項2】
前記第2のターゲットは、前記輪状の第1のターゲットの前記中心軸上に配置され、前記中心軸に対して略平行な方向に前記蛍光X線を放射するよう適合される、
ことを特徴とする請求項1記載のX線源。
【請求項3】
前記液体金属流路は、前記電子が前記第1のターゲットに衝突する電子衝撃域で狭窄を有する、
ことを特徴とする請求項1記載のX線源。
【請求項4】
前記電子源に面する前記第1のターゲットの表面は、金属膜によって被覆される、
ことを特徴とする請求項1記載のX線源。
【請求項5】
前記液体金属は、40番より大きい、特には40番乃至80番の原子番号を有する材料を有する、
ことを特徴とする請求項1記載のX線源。
【請求項6】
前記液体金属流路は、放射状に整列されたフィンによって多数の放射状の副流路へと分けられる、
ことを特徴とする請求項1記載のX線源。
【請求項7】
蛍光X線の生成用のX線アノードであって、
電子放出用の電子源と、前記電子の発生に応答するX線を放射するターゲットと、を有し、
前記アノードは、前記電子の発生に応答する第1のX線の放射に対する輪状の第1のターゲットと、前記第1のX線の発生に応答する蛍光X線の放射に対する第2のターゲットとを有し、
前記第1のターゲットは、中心軸に相対する放射状方向に配置された液体金属流路と、前記X線源の動作中に前記輪状の第1のターゲットの内側から外側へ放射方向に循環する液体金属とを有する、
ことを特徴とするX線アノード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−503703(P2007−503703A)
【公表日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−530814(P2006−530814)
【出願日】平成16年5月12日(2004.5.12)
【国際出願番号】PCT/IB2004/050653
【国際公開番号】WO2004/102609
【国際公開日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips Electronics N.V.
【住所又は居所原語表記】Groenewoudseweg 1,5621 BA Eindhoven, The Netherlands