説明

融合担体として種子貯蔵蛋白を利用する植物種子中の融合ポリペプチドの高水準発現

【解決手段】単子葉植物の種子中の非相同ペプチドまたはポリペプチドの発現は、単子葉植物種子貯蔵蛋白が非相同ペプチドまたはポリペプチドのための融合蛋白担体として使用される融合蛋白コンストラクトの形成により最適化される。非相同ペプチドまたはポリペプチドは好ましくは小型であり約10kDa以下であり、そして5〜100アミノ酸長である。これ等の小型非相同ペプチドまたはポリペプチドはヒト及び動物の栄養学的及び治療組成物中において使用可能である。

【発明の詳細な説明】
【関連出願のクロスリファレンス】
【0001】
本発明は2003年12月9日出願の米国仮出願60/527,753及び2004年10月1日出願の米国仮出願60/614,546の優先権を主張する。両出願の内容は参照により全体が本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本発明はヒト及び動物の栄養及び治療用の組成物を作成する場合に使用する、コメ植物のような単子葉植物の種子における非相同ペプチドまたはポリペプチドの発現に関する。発現は単子葉植物種子貯蔵蛋白が非相同ペプチドまたはポリペプチドのための融合蛋白担体として使用される融合蛋白コンストラクトの形成により最適化される。非相同ペプチドまたはポリペプチドは小型で即ち約10kDa以下であり、好ましくは5〜100アミノ酸長である。
【背景技術】
【0003】
多くの非相同ペプチド及びポリペプチドは栄養または治療用途に多くの量が必要であることにより、または、世界人口によるこれ等の非相同ペプチドの需要が高いことにより、供給不足となっている。200アミノ酸未満、好ましくは5〜100までのアミノ酸長の非相同ペプチドまたはポリペプチドが多くの用途、例えば抗体結合エピトープ、抗微生物剤、AIDS及び癌の治療及び/または種々の疾患の診断試験のために有用である。更に、特定の非相同ペプチドまたはポリペプチドはその生化学的及び生物学的機能を付与するために大量に必要となる。単子葉植物中に非相同ペプチドまたはポリペプチドを発現することは高まる需要を満たす1つの方法である。
【0004】
化学合成法は通常非相同ペプチドまたはポリペプチド分子の生成のために使用される。しかしながら一部の非相同ペプチドの特定のアミノ酸配列は化学合成法により非相同ペプチドを製造することを困難または不可能とする場合がある。例えば、連続するイソロイシン及びバリン残基を含む配列は、その側鎖が嵩高なため、標的非相同ペプチドが樹脂系マトリックス上に化学的に構築される場合に、所定の非相同ペプチド鎖の凝集をもたらす疎水性βシートを形成することが可能である。化学合成法のこの複雑さにより所定の非相同ペプチドのコスト構造は多大に増大し、これにより商業上の障壁となる。
【0005】
代替法として、商業的な量で非相同ペプチドまたはポリペプチドを生成する手段に相当する低コストの組み換え発現プラットホームの開発がある。標的非相同ペプチドまたはポリペプチドをより大型の蛋白相手に結合させたキメラ融合蛋白の作成は生物学的系におけるこれ等の化合物の生成を改善するための1つの手法である。融合相手は蛋白の全体の大きさを増大させることにより、標的非相同ペプチドまたはポリペプチドの質量ベースの発現水準及び潜在的安定性を向上させる。
【0006】
融合の手法は種々の系、例えば細菌、コウボ及びカビ、昆虫及び哺乳類細胞において良好に使用されている。各宿主発現系はその関連する利点及び難点を有する。
歴史的には、高等植物における蛋白融合系は細胞内小器官内に外来蛋白を効率的に移入するための内因性植物蛋白のトランジット及び/またはシグナルペプチド及びN末端成熟領域を使用することに限定されていたか、または、選択的植物遺伝子発現をモニタリング、安定化及び/または増量するために利用されているGUSまたはGFPのようなマーカー蛋白のために使用されていた。
【0007】
上記した通り、非相同ペプチドまたはポリペプチドの生成に直面している重大な問題点は製造コストである。トランスジェニック植物は期待される需要を満たすために大量の生成物が必要とされる化合物の発現系のための宿主として魅力的である。トランスジェニック作物の利点は、トランスジェニック植物が動物ウィルス及び場合により微生物宿主に伴う毒素を含有しないことから、資本投資が低いこと、スケールアップがより容易であること、そして病原汚染が低リスクであることである。しかしながら非相同ペプチドまたはポリペプチドの発現の水準は低く、そして精製工程は高コストであり、このような発現系を商業的に実施不可能にしている。
【0008】
即ち、融合法を利用することにより非相同ペプチドまたはポリペプチドの発現を増大可能である。本発明以前に、融合蛋白は例えば参照により全体が本明細書に組み込まれる以下に記載する参考文献に開示されている通り植物において発現されているものの、単子葉植物種子貯蔵蛋白は非相同ペプチドまたはポリペプチドのための融合担体として利用されてはいなかった。
【0009】
米国特許第5,292,646号は宿主細胞を培養して切断部位を与えるリンカーペプチドを場合により含有する選択された非相同ペプチドまたは蛋白に融合したチオレドキシン様蛋白配列を含む融合蛋白を製造することによる、可溶性組み換え蛋白の発現を開示している。
【0010】
米国特許第6,080,559号は組み換えプラスミドを含有する形質転換されたアスペルギルスのカビ細胞を培養することによる、アスペルギルス中の融合蛋白からのプロセシングされたリコラクトフェリン及びラクトフェリンポリペプチドフラグメントの発現を開示している。
【0011】
WO97/28272はヒンジ領域、親水性スペーサー及び2塩基性のアミノ酸エンドプロテアーゼ切断部位を含むポリペプチドにより目的蛋白に融合したFcフラグメントのような別のドメイン及び/またはエレメントを有する融合蛋白から真正の組み換え蛋白の発現を開示しており、ここではスペーサーが切断され、次にカルボキシペプチダーゼBで消化されて真正の蛋白が形成される。
【0012】
米国特許第5,595,887号は融合担体としてのヒト炭酸アンヒドラーゼ及び小分子ペプチドのための親和性タグの使用を開示している。
【0013】
米国特許第5,686,079号は細菌βガラクトシダーゼ(lac)蛋白及び細菌SpA蛋白の小区分よりなる融合蛋白のトランスジェニック植物、特にトランスジェニックタバコ植物葉中の発現を開示している。融合蛋白の発現水準は葉組織の新鮮重量で0.002%であった。
【0014】
米国特許第5,767,372号は細菌nptII蛋白のN末端部分及びBt毒素ポリペプチドの毒性部分よりなる融合蛋白の植物、特にトランスジェニックタバコカルス及びトランスジェニックタバコ葉中の発現を開示している。発現水準は融合蛋白については非常に低値であり、25〜50ng/g植物組織新鮮重量(0.00005%)であった。
【0015】
米国特許第5,861,277号はアラビドプシスPAT1蛋白のN末端部分及び細菌GUS蛋白よりなる融合蛋白のトランスジェニックアラビドプシス植物中の発現を開示している。融合産物の発現水準は詳述されていない。
【0016】
米国特許第5,929,304号は精製を容易にするためにFLAG(登録商標)融合蛋白と共に融合蛋白コンストラクト内に取り込まれたヒトリソソーム酵素のトランスジェニックタバコ植物中の発現を開示している。hGC(ヒトグルコセレブリオシダーゼ)に関する融合産物の発現は約2.5mg/1.6kg(0.0015%)タバコ葉組織新鮮重量であった。
【0017】
米国特許第5,977,438号は細菌マラリア表面抗原の12アミノ酸ペプチド部分にカップリングした融合担体としてのタバコモザイクウィルス被覆蛋白の部分を包含する融合蛋白の感染タバコ植物中の発現を開示している。この融合蛋白はウィルスベクター系を用いてタバコ中で発現されており、タバコ葉中の12アミノ酸ペプチドの発現は25μg/g(0.0004%)葉組織新鮮重量で得られている。
【0018】
米国特許第6,018,102号は植物ユビキチン蛋白部分を種々の小型溶解ペプチドのための担体分子として利用しているトランスジェニックバレイショ葉及び塊茎における発現のための融合蛋白の予測的構築を開示している。
【0019】
米国特許第6,288,304号が融合担体としてのブラシカ油脂体蛋白オレオシンのN末端領域よりなる融合蛋白を用いた脂肪種子作物セイヨウナタネの種子中のソマトトロピン(成長ホルモン)の発現を開示している。
【0020】
米国特許第6,331,416号はトランスジェニックバレイショ塊茎における種々の融合ポリペプチドの発現のための予測的コンストラクトを開示している。提案されているN末端融合担体は安定な植物発現を達成するための何れかの非植物蛋白に融合された細菌セルロース結合ドメインイン(CBD)である。
【0021】
米国特許第6,448,070号は融合蛋白がアルファルファモザイクウィルスカプシド蛋白及びHIV−1及び狂犬病の哺乳類ウィルスエピトープのN末端部分よりなる、植物、特に単離されたタバコプロトプラストまたはウィルス感染タバコ植物中の融合蛋白の構築及び発現を開示している。融合蛋白発現の水準は詳述されていない。
【0022】
米国特許第6,455,759号は植物ユビキチン連結ドメインにより連結された2種の蛋白、例えばマーカー蛋白ルシフェラーゼ及びベータグルクロニダーゼ(GUS)よりなる融合手法のタバコ等のトランスジェニック被子植物中の発現を開示している。この融合蛋白の発現水準は記載されていない。
【0023】
米国特許出願第2002/0146779号は細菌、コウボ、動物及び植物を包含する種々のトランスジェニック系におけるオーセンティックアミノ末端アミノ酸を有する組み換えポリペプチドの高生産のための融合蛋白の使用を開示している。植物または植物細胞における如何なる融合蛋白の発現に関するデータも提示されておらず、また植物における如何なるキメラ遺伝子融合蛋白コンストラクトの例も記載されていない。
【0024】
米国特許出願第2003/0159182号はコメを包含するトランスジェニック穀物の種子中のヘルペスウィルスエピトープの生産のためのシグナルペプチド融合蛋白の使用を開示している。ヘルペス表面抗原をターゲティングするためのシグナルペプチドを含有するプラスミドコンストラクトが詳述されている。コメ種子中において0.5%総蛋白の発現水準が得られている。融合担体としての単子葉植物種子貯蔵蛋白の利用に関する予測的な例またはデータは記載されていない。
【0025】
シラーら(Schreier et al.)(EMBO J4,25−32,1985)はインビトロのタバコクロロプラスト内への細菌ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ(npt)蛋白の輸送がnptに融合したタバコ小型サブユニット成熟蛋白の部分を用いて増強されることを開示している。
【0026】
コマイら(Comai et al.)(J.Biol.Chem.26315104−15109,1986)はインビトロ及びインビボのタバコクロロプラスト内への細菌5−エノールピルビルシキメート−3−ホスフェート(ESP)シンターゼの効率的な輸送がタバコ小型サブユニット蛋白の成熟部分と細菌ESPシンターゼとの間の融合を必要とすることを開示している。
【0027】
これ等の特許または刊行物の何れも融合担体として単子葉植物種子貯蔵蛋白を用いた単子葉植物中の非相同ペプチドまたはポリペプチドの高水準発現を開示していない。
生産系としてのトランスジェニック植物の使用は期待される需要を満たすために大量の生産を必要とする化合物にとって理想的であると考えられる。トランスジェニック作物の利点には低資本投資、スケールアップの容易性及び病原体汚染の低い危険性が包含される。コメ系の高水準発現系が開発されており、種々の蛋白を良好に生産している。
【0028】
このような蛋白の1つは「トレフォイル(trefoil)ドメイン」1つ以上を含有する3小型ペプチドよりなる三つ葉因子ファミリー(TFF)である。各トレフォイル(trefoil)ドメインは約40アミノ酸残基よりなる。各トレフォイル(trefoil)ドメインは3つの高度な安定性を有するループに折り畳まれており、各ループは3つのシステイン媒介ジスルフィド結合中の1つにより形成されている。これ等の内部鎖ジスルフィド結合はその主要アミノ酸配列の順序に応じて1−5、2−4及び3−6配置において形成される。
【0029】
全ての腸トレフォイル(trefoil)因子(ITF)ペプチドは高度に相同である。ヒトITFは75アミノ酸ポリペプチドよりなる。N末端シグナルペプチドを切断した後、得られる成熟ヒトITFは60アミノ酸を含有する。ヒトITFは胃腸組織内で単量体及び2量体の両方において存在する。
トレフォイル(trefoil)モチーフのコンパクトな構造は蛋白分解性の消化に対するトレフォイル(trefoil)ペプチドの顕著な耐性の原因と考えられ、トレフォイル(trefoil)ペプチドを胃腸管の苛酷な環境において生存させ続けている。単一ドメインのヒトITFは7システイン残基を有し、そのうち6個はトレフォイル(trefoil)ドメインの構造を維持することに関与している。7番目のシステイン残基はトレフォイル(trefoil)ドメインの部分ではなく、C末端の3残基上流に位置する。
【0030】
ITFの幾つかの生物学的活性が発見されており、創傷治癒の促進、表皮細胞遊走の刺激及び小腸表皮障壁の保護も含まれる。即ちITFは種々の疾患状態の防止及び治療において使用できる。ITFの天然原料は結腸及び小腸の粘膜から調製されるが、収率は極めて低値であり、種々の疾患状態の防止及び治療における臨床使用に必要な大量のITFを提供することは不可能である。
【0031】
ITFはまたハイブリッドのリーダー配列及び成熟ITF配列よりなる融合蛋白をコードするように構築されているコウボ及び組み換えプラスミド中でも生成される。リーダー配列はコウボ細胞の分泌(及びプロセシング)経路内に融合蛋白を指向させる。発現水準は約100mg/Lであるため、これ等の系からのITFの全体的な量はなお制限されている。
【0032】
別の適切な蛋白はヒト成長ホルモン(hGH)に関与するものである。hGHはインビボで脂質分解/抗脂質形成作用を有し、これにより脂肪量の低減、非脂肪量の増大及び体重減少をもたらす。インビトロ及びインビボの試験によれば、この応答は部分的にはβアドレナリン受容体カップリング効率の増大、ホルモン感受性リパーゼの増大した活性及びインスリンの作用に対する抑制作用により媒介される。hGH分子のカルボキシ末端(hGH177−191{AOD9601})は未損傷ホルモンの脂質移動化ドメインとして発見されている。このフラグメントは脂肪細胞及び肝細胞内のアセチルCoAカルボキシラーゼの活性を抑制し、そして単離された細胞及び組織の両方において脂質へのグルコースの取り込みを低減するように作用する。hGHの合成C末端フラグメント(AOD9604)はhGHの脂質分解作用の原因である脂質分解ドメインを含有する。親分子であるAOD9601はインビトロの死亡組織における脂質分解及び脂肪酸化を誘導する。インビボにおいては、AOD9601は食物摂取に影響することなく体重減少をもたらし、脂質分解感受性を増大させ、そして、インスリン感受性の悪影響を及ぼすことなく脂肪酸化を増大させる。
【0033】
hGH及びAOD9604の両方に対する応答の性質は殆ど解明されていない。両方の分子は脂肪組織における主要な脂質分解組織であるB3−アドレナリン作用性受容体(B3−ARs)の発現に影響するという仮説がある。AOD9604及びhGHは共にインビトロのマウス及びヒトの細胞系統においてB3−ARmRNA発現及び蛋白の濃度と機能を増大させることができる。このペプチドの高水準生産の機序は何れかの脂肪低減療法において将来の用途のために重要である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0034】
本発明の1つの態様では、単子葉植物種子における非相同ペプチド又はポリペプチドを発現する方法であって、単子葉植物成熟種子発現系において非相同ペプチドまたはポリペプチドを単子葉植物種子貯蔵蛋白に融合させる工程、及び、成熟単子葉植物種子中で非相同ペプチドまたはポリペプチドを発現させる工程からなる方法を包含する。
【0035】
本発明の別の態様によると、トランスジェニック単子葉植物種子中における少なくとも15〜20μg/穀物の濃度での融合コンストラクトの発現、即ち何れかの種子貯蔵蛋白融合手法の非存在下における非相同ペプチドまたはポリペプチドの発現よりも実質的(約20倍)に向上している発現を包含する。融合コンストラクトの発現は好ましくは穀物中の総可溶性蛋白の少なくとも3.0%、より好ましくは少なくとも5.0%である。
【0036】
本発明の別の態様によると、成熟単子葉植物種子発現系における小型ポリペプチドと発現のための種子貯蔵蛋白とを融合させることによる非相同オリゴペプチド分子の高水準発現のための高度に良好な融合方法を含む。
【0037】
本発明の別の態様では種子貯蔵蛋白と小型ポリペプチドの間に「フレームの中に入るように」操作された化学切断部位を与える戦略的トリプトファン残基を使用する。この部位は融合担体から成熟小型ポリペプチドを遊離させるために使用することもできる。
【0038】
本発明の別の態様は、単子葉植物成熟種子発現系において小型非相同ペプチドまたはポリペプチドを単子葉植物種子貯蔵蛋白に融合させること、及び、成熟単子葉植物種子中で非相同ペプチドまたはポリペプチドを発現すること、を含む単子葉植物種子中における小型(約10kDa以下及び/または5〜100アミノ酸長)の非相同ペプチドまたはポリペプチドの発現のための方法を包含する。
【0039】
本発明の別の態様によると、単子葉植物種子貯蔵蛋白及び小型非相同ペプチドまたはポリペプチド及び/またはシグナルペプチドを含む融合蛋白を含む。単子葉植物種子貯蔵蛋白は融合蛋白の小型非相同ペプチドまたはポリペプチドのN末端またはC末端側にあってよい。単子葉植物種子貯蔵蛋白は小型非相同ペプチドまたはポリペプチドのN末端側に位置しているのが好ましい。
【0040】
本発明の別の態様によると、小型非相同ペプチドまたはポリペプチドと単子葉植物種子貯蔵蛋白の間にフレームの中に入るように操作されたメチオニンまたはトリプトファンの残基を含む融合蛋白を含む。
【0041】
本発明の別の態様によると、非相同ペプチドまたはポリペプチドと単子葉植物貯蔵蛋白の間の翻訳フレーム内に融合された単子葉植物種子貯蔵蛋白担体からの非相同ペプチドまたはポリペプチドの最終的放出のための少なくとも1つの選択的精製タグ及び/または少なくとも1つの特異的プロテアーゼ切断部位を含む。好ましくは、特異的プロテアーゼ切断部位はエンテロキナーゼ(ek)、第Xa因子、トロンビン、V8プロテアーゼ、Genenase(登録商標)、α−溶解蛋白またはタバコエッチ(Tobacco etch)ウィルス(TEV)プロテアーゼを含んでよい。
【0042】
本発明の別の態様によると、臭化シアンのような化学切断剤を介した融合蛋白の切断を含む。
【0043】
以上及びその他の本発明の特徴及び側面は以下の本発明の詳細な説明を添付図面と関連させて読むことにより更に十分明確化される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
特段の記載が無い限り、本明細書において使用する全ての用語は以下に示す意味を有するか、または、本発明の技術分野の当業者に対してその用語が有する同じ意味と一般的に合致するものである。
【0045】
本明細書においては、「種子」という用語は全ての種子要素、例えば種子の成熟中及び種子の発芽中における子葉鞘及び葉、幼根及び根鞘、菌甲、澱粉性内乳、アリューロン層、果皮及び/または外殻を包含する。本発明の意味においては、「種子」及び「穀粒」という用語は互換的に使用する。
「生物学的活性」という用語は当業者によりその蛋白に典型的に帰属させられる何れかの生物学的活性を指す。
「融合担体」及び「融合相手」という用語は当業者により理解されるとおり互換的に使用される。
【0046】
「非相同ペプチドまたはポリペプチド」は目的の非相同ペプチドまたはポリペプチドに関するコーディング配列を含む。目的の非相同ペプチドまたはポリペプチドは好ましくは200アミノ酸長未満である。好ましくは約10kDa以下及び/または5〜100アミノ酸を含むような小型非相同ペプチドまたはポリペプチドを本発明に従って使用する。例えば60アミノ酸の腸trefoil因子を小型非相同ペプチドまたはポリペプチドとして利用してよい。
【0047】
他の目的の非相同ペプチド及びポリペプチドは哺乳類起源のものである。このような非相同ペプチド及びポリペプチドはこれらには限らないが、例えば乳蛋白、血液蛋白(例えば血清アルブミン、第VII因子、第VIII因子または修飾第VIII因子、第IX因子、第X因子、組織プラスミノーゲン因子、C蛋白、フォンウイルブランド因子、抗トロンビンIII及びエリスロポエチン)、コロニー刺激因子(例えば顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)及び顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF))、サイトカイン(例えばインターロイキン)、インテグリン、アドレシン、セレクチン、ホーミング受容体、表面膜蛋白(例えば表面膜蛋白受容体)、T細胞受容体単位、免疫グロブリン、可溶性主要組織適合性複合体抗原、構造蛋白(例えばコラーゲン、フィブロイン、エラスチン、チュブリン、アクチン及びミオシン)、成長因子受容体、哺乳類成長因子、成長ホルモン、細胞周期蛋白、ワクチン、フィブリノーゲン、トロンビン、サイトカイン、ヒアルロン酸及び抗体を包含する。
【0048】
「哺乳類成長因子」という用語は、これらに限らないが、表皮成長因子(EGF)、ケラチノサイト成長因子(KGF)、例えばKGF−1及びKGF−2、インスリン様成長因子(IGF)、例えばIGF−I及びIGF−II、腸トレフォイル(trefoil)因子(ITF)、形質転換成長因子(TGF)、例えばTGF−β及び−β−3、顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)、神経成長因子(NGF)、例えばNGF−β及び線維芽細胞成長因子(FGF)、例えばFGF−1−19及び−12β、及びこれ等の蛋白の生物学的に活性なフラグメントを包含する蛋白または生物学的に活性なそのフラグメントを指す。これ等及び他のヒト成長因子の配列は当業者のよく知る通りである。本発明の好ましい実施形態においては、哺乳類成長因子はITFである。ITFの単子葉植物種子中の発現水準は15〜20μg/穀粒であることがより好ましい。
【0049】
「乳蛋白」という用語は、これらに限らないが、例えばラクトフェリン、リソザイム、ラクトフェリシン、表皮成長因子、インスリン様成長因子−1、ラクトヘドリン、カッパ−カゼイン、ヘパトコリン、ラクトパーオキシダーゼ、免疫グロブリン及びアルファ−1−抗トリプシンを包含する蛋白またはその生物学的に活性なフラグメントを指す。好ましくは、乳蛋白はリソザイムまたはラクトフェリンである。
【0050】
ペプチド性の産物が一般的に生じるが、細胞により生成された非ペプチド性の産物を改変する作用を有する遺伝子を導入してよい。その配列が天然のペプチドまたはポリペプチドに関連している限り、ペプチドまたはポリペプチドが全体として、または部分的に合成されたものであるかに関わらず、通常は少なくとも10アミノ酸の、融合複合物、突然変異体及び合成のペプチドまたはポリペプチドの上記非相同ペプチドまたはポリペプチド及びそのフラグメントも生成してよい。
【0051】
更にまた、単子葉植物種子の非相同ペプチドまたはポリペプチドの高水準発現を達成するためのこの良好な方法は栄養または治療上重要な種々の他の非相同ペプチドまたはポリペプチドの発現を可能にする。それらには、これらには限らないが、例えば肥満を治療するためのペプチド、例えばAOD9604及びPYY、潜在的ペプチド抗生物質、例えばイセガナン及びβ−デフェンシン、成熟ペプチド成長因子、例えばEGF、IGF及びFGF、抗HIVペプチド、例えばFuzeon及びその誘導体、ペプチドホルモン及びペプチドホルモンフラグメント、例えば副甲状腺ホルモン(PTH)、アデノコルチコトロピン(ACTH)及びガストリン放出ペプチド(GRP)及び高血圧を治療するためのペプチド、例えば血管作用性腸ペプチド(VIP)及び血管内皮生育抑制剤(VEGI)が包含される。
【0052】
更にまた、ヒトまたは獣医科用途の非相同ペプチド及びポリペプチド、例えばワクチン及び成長ホルモンを生産してよい。目的のポリペプチドを含有する単子葉植物種子はマッシュ製品またはヒトまたは家畜用の適用に直接有用である種子製品に調製できる。
【0053】
しかしながら遺伝子コードの固有の縮重により、実質的に同じか機能的に等価なアミノ酸配列をコード化する多くの核酸配列を形成し、そして所定の非相同ペプチドまたはポリペプチドをクローニング及び発現するために使用してよい。即ち、核酸配列をコードする所定の非相同ペプチドまたはポリペプチドについて、遺伝子コードの縮重の結果として同じ蛋白アミノ酸配列をコードする多くのコーディング配列が形成される場合がある。コーディング領域内のこのような置換は本発明の対象となる配列変異体の範囲内に属するものとする。これ等の配列変異体の全ては核酸配列をコード化する例示される非相同ペプチドまたはポリペプチドに関して本明細書に記載したものと同様の方法で利用できる。
【0054】
当業者の知る通り、一部の場合においては、天然に存在しないコドンを保有するヌクレオチド配列をコード化する非相同ペプチドまたはポリペプチドを使用することが有利な場合がある。特定の真核生物の宿主により好まれるコドンを選択することにより、例えば発現率を上昇させたり、又は、天然に存在する配列から生成した転写物よりも望ましい特性、例えばより長い半減期を有する組み換えRNA転写物を生成することができる。例としては、コメにおいて発現される遺伝子に関するコドンは第3のコドン位置においてグアニン(G)またはシトシン(C)リッチであることが示されてきた。低G+C含量を高G+C含量に変化させることは大麦穀粒中の外来性蛋白遺伝子の発現濃度を上昇させることがわかっている。本発明において使用されるDNA配列は遺伝子クローニングのための適切な制限部位に伴ったコメ遺伝子コドンの偏りに基づいていてよい。
【0055】
「種子成熟」とは、穀粒の大型化及び穀粒の充填をもたらす、種子(穀粒)、例えば内乳、外殻、アリューロン層及び鱗性表皮における種々の組織に対する小胞ターゲティングの有無に関わらず、代謝可能な温存物、例えば糖類、オリゴ糖類、澱粉、フェノール類、アミノ酸及び蛋白が蓄積する受精と共に開始され、穀粒乾燥で終了する期間を指す。
【0056】
本発明において有用となるプロモーターは植物細胞において活性である何れかのプロモーターである。使用されるプロモーターの型は重要ではなく、そして本発明の新しい特徴を構成しない。好ましい型のプロモーターは成熟特異的単子葉植物種子貯蔵蛋白(「成熟特異的蛋白プロモーター」として知られている)の遺伝子に由来するプロモーターである。「成熟特異的蛋白プロモーター」とは種子成熟の間に実質的にアップレギュレートされた活性(25%超)を示すプロモーターを指す。
【0057】
「シグナル配列」または「シグナルペプチド」(互換的に使用)とは種子内乳のような選択された細胞内または細胞外の領域に自身が結合しているペプチドまたは蛋白を位置決めするため、または、細胞からペプチドまたは蛋白を輸送するために有効であるN末端またはC末端のポリペプチド配列である。使用するシグナル配列は重要ではなく本発明の新しい特徴を構成しない。好ましくは、シグナル配列は、宿主細胞からの分泌の後、内乳細胞、より好ましくは内乳細胞の非細胞のコンパートメントまたは組織、例えば細胞内小胞または他の蛋白貯蔵体、クロロプラスト、ミトコンドリアまたは小胞体または細胞外空間のような位置に結合ペプチドまたは蛋白をターゲティングする。
【0058】
本明細書においては、所定の細胞、ポリペプチド、核酸、形質または表現型に関連して「ネイティブ」または「野生型」という用語は、自然界に典型的に存在する形態を指す。
【0059】
本明細書においては、「精製する」という用語は「単離する」という用語と互換的に使用し、そして一般的にそれが存在する、または生成される環境の他の成分からの特定の成分のいかなる分離をも指す。例えば、組み換え蛋白をそれが生成された植物細胞から精製することは、典型的には、トランスジェニック蛋白含有植物材料を沈降、遠心分離、濾過、カラムクロマトグラフィーのような分離手法に付すことを意味する。このような精製または単離何れかの工程による結果物は、それがその精製または単離の工程の前よりも他の成分(「不純物成分」)が少ない限り、他の成分をなお含有していてもよい。
【0060】
本明細書においては、宿主細胞に言及した場合の「形質転換された」または「トランスジェニック」という用語はネイティブの宿主細胞には存在しない非ネイティブまたは非相同または導入された核酸配列を宿主細胞が含有することを意味する。
【0061】
「操作可能に連結された」という用語は、本明細書においては、核酸が他の核酸配列と機能的関連を有するように位置づけられていることを意味する。例えばプロモーターはそれが配列の転写に影響する場合にコーディング配列に作動可能に連結されている。連結は好都合な制限部位におけるライゲーションにより達成される。そのような部位が存在しない場合は、合成オリゴヌクレオチドアダプターまたはリンカーを従来の慣行に従って使用する。
【0062】
「単子葉植物種子貯蔵蛋白」または「成熟特異的単子葉植物種子貯蔵蛋白」(互換的に使用)という用語は、これらに限らないが、グロブリン、コメグルテリン、オリジン、プロラミン、オオムギホルデイン、コムギグリアジン及びグルテニン、トウモロコシゼイン及びグルテリン、エンバクグルテリン、モロコシカフィリン、アワペニセチンまたはライムギセカリンのような蛋白またはその生物学的に活性なフラグメントを指す。
【0063】
本発明の好ましい実施形態においては単子葉植物種子貯蔵蛋白はコメ由来の19キロダルトン(kDa)のグロブリンである。グロブリン遺伝子を単離し、特性化し、そしてDNA配列を決定した。コメ種子貯蔵蛋白抽出液の2次元ゲル電気泳動によれば、19キロダルトン(kDa)のグロブリン蛋白は完全ではないが大部分は単一成分であり、蛋白のファミリーとして存在するとは考えられない。19kDaグロブリン蛋白のコメ内乳中の含有量はグルテン蛋白含有量の概ね10%であるが、19kDaグロブリン蛋白はコメ内乳における単一の遺伝子の最も大量の産物であり、そして、この観点において、コメ内乳における非相同ペプチドの発現のための融合担体として操作するために最も優れた選択肢である。
【0064】
別の実施形態においては、本発明は種々の細菌及びウィルス性疾患の経口免疫化のために使用できるこれ等の疾患に特異的な非相同抗原性ポリペプチドエピトープの高水準発現を可能にする。
【0065】
即ち、本発明は単子葉植物成熟種子発現系において単子葉植物種子貯蔵蛋白に非相同ペプチドまたはポリペプチドを融合することによる、非相同ペプチドまたはポリペプチドの発現を最適化するための高度に良好な融合方法を提供する。1つの好ましい実施形態においては、本発明はコメ成熟種子発現系におけるコメ種子貯蔵蛋白、例えばグロブリン(Glb)との小型ポリペプチド、例えば腸トレフォイル(trefoil)因子(ITF)の融合を可能にする。
【0066】
場合により、少なくとも1つの選択的精製タグ及び/または特異的ペプチド切断部位を単子葉植物種子貯蔵蛋白と非相同ペプチドまたはポリペプチドとの間の翻訳フレーム内となるよう操作することができる。好ましい実施形態においてはヒトエンテロキナーゼ(ek)のペプチド切断部位をコードする合成オリゴヌクレオチドをグロブリンとITF蛋白ドメインの間に「インフレーム」に操作する。この部位はグロブリン融合担体からの成熟ITF蛋白の潜在的放出のために利用できる。
【0067】
本発明において使用するための発現ベクターは適切に会合した上流及び下流の配列を含む植物内の操作のために設計されたキメラ核酸コンストラクト(または発現ベクターまたはカセット)である。
【0068】
一般的に本発明の実施において使用するための発現ベクターは、キメラ遺伝子を構成する以下の作動可能に連結した成分、即ち(a)成熟特異的単子葉植物種子貯蔵蛋白の遺伝子由来のプロモーター、(c)単子葉植物種子貯蔵蛋白をコードする第2のDNA配列、(d)非相同ペプチドまたはポリペプチドをコードする第3のDNA配列、及び/または(b)単子葉植物種子貯蔵体への自身に連結した非相同ペプチドまたはポリペプチドのターゲティングが可能である単子葉植物種子特異的シグナル配列をコードする該プロモーターに作動可能に連結した第1のDNA配列を包含してよく、ここで第1、第2及び第3のDNA配列は翻訳フレーム内に連結され、そして共に貯蔵蛋白及び非相同ペプチドまたはポリペプチド及び/またはシグナル配列を含む融合蛋白をコードしている。
【0069】
キメラ遺伝子は(i)プラスミドまたはウィルス起源であり、そして、1つの宿主から別の宿主へ、例えば細菌から所望の植物宿主へのDNAの移動がベクターにとって可能となるようにベクターに必要な特性を与えるキメラ遺伝子の上流及び/または下流のコンパニオン配列、(ii)選択可能なマーカー配列、及び(iii)polyAテール存在下または非存在下の転写終了領域を有する適切な植物形質転換(「発現」)ベクター内に入れてよい。
【0070】
キメラ遺伝子及びキメラ遺伝子を担持する形質転換ベクターを構築するための例示される方法は以下の実施例に記載する。
【0071】
本発明においては、非相同ポリヌクレオチドは植物種子組織において優先的に発現される転写開始領域由来のプロモーターの制御下に発現できる。例示される好ましいプロモーターは内乳の外層において遺伝子発現を起こすグルテリン(Gt1)プロモーター及び内乳の中心部において遺伝子発現を起こすグロブリン(Glb)プロモーターを包含する。自身に作動可能に連結した遺伝子コーディング配列の転写を調節するためのプロモーター配列は天然に存在するプロモーターまたは種子特異的転写を指向することができるその領域、及び1プロモーターより多くのエレメントを組み合わせたハイブリッドプロモーターを包含する。このようなハイブリッドプロモーターの構築のための方法は当該分野で知られている。
【0072】
一部の場合において、プロモーターはキメラ核酸コンストラクトを導入すべき植物細胞と同じ植物種から取り出す。本発明において使用するプロモーターは典型的にはコメ、オオムギ、コムギ、エンバク、ライムギ、トウモロコシ、アワ、ライコムギまたはサトウモロコシのような穀物から取り出される。或いは、1つの型の植物に由来する種子特異的プロモーターを使用して異なる植物に由来する核酸コーディング配列の転写を調節してもよい。
【0073】
本発明において有用であるプロモーターの別の例は、これには限らないが、上記した以下の成熟特異的単子葉植物貯蔵蛋白の1つに関連する成熟特異的プロモーターを包含する。更に包含されるものはアエウロン及びコメ、コムギ及びオオムギ遺伝子に関連する胚特異的プロモーター、例えば脂質転移蛋白Ltp1、キチナーゼChi26及びEm蛋白Emp1である。
【0074】
成熟種子中の発現に適する他のプロモーターはオオムギ内乳特異的B1ホルデインプロモーター、GluB−2プロモーター、Bx7プロモーター、Gt3プロモーター、GluB−1プロモーター及びRp−6プロモーターを包含する。好ましくは、これ等のプロモーターは転写因子と組み合わせて使用する。
【0075】
目的の蛋白をコード化することに加えて、発現カセットまたは非相同核酸コンストラクトは適宜蛋白のプロセシング及び転座を可能にするシグナルペプチドをコード化してよい。上記定義した例示されるシグナル配列は、単子葉植物成熟特異的遺伝子に関連するシグナル配列、即ち、グルテリン、プロラミン、ホルデイン、グリアジン、グルテニン、ゼイン、アルブミン、グロブリン、ADPグルコースピロホスホリラーゼ、澱粉シンターゼ、分枝鎖形成酵素、Em及びleaである。
【0076】
更にまた、多くの単子葉植物種子貯蔵蛋白は成熟特異的プロモーターの制御下にあり、そしてこのプロモーターは蛋白本体をターゲティングするためのリーダー配列に作動可能に連結しているため、プロモーター及びリーダー配列はキメラ遺伝子コンストラクトにおける非相同ペプチドまたはポリペプチドに作動可能に連結した単一の蛋白貯蔵遺伝子から単離できる。1つの例示されるプロモーター−リーダー配列はコメGt1遺伝子由来のものである。或いは、プロモーター及びリーダー配列は異なる遺伝子から取り出してよく、例えばコメGt1リーダー配列に連結したコメGlbプロモーターが挙げられる。
【0077】
非相同ペプチドまたはポリペプチドの製造は遺伝子のコドン最適化により増強できる。コドン最適化の意図は、GまたはCのコドンの第3の位置においてAまたはTを変更することであった。この配置は典型的なコメ遺伝子におけるコドンの使用とより緊密に整合する。このようなコドンの最適化は本発明の範囲内に包含されるものとする。
【0078】
単子葉植物細胞における選択のための適切な選択可能なマーカーは、これらには限らないが、例えば抗生物質耐性遺伝子、例えばカナマイシン(nptII)、G418、ブレオマイシン、ハイグロマイシン、クロラムフェニコール、アンピシリン、テトラサイクリン等を包含する。別の選択可能なマーカーはバイアラホス耐性をコードするbar遺伝子、グリホサート耐性をコードする突然変異体EPSPシンセターゼ遺伝子、ブロモキシニルに対する耐性を与えるニトリラーゼ遺伝子、イミダゾリノンまたはスルホニル尿素耐性を与える突然変異体アセトラクテートシンターゼ遺伝子(ALS)を包含する。使用される特定のマーカー遺伝子は導入されているDNAを欠いた細胞と比較して形質転換細胞の選択を可能にする。好ましくは選択可能なマーカー遺伝子は組織培養段階における選択を容易にするもの、例えばnptII、ハイグロマイシンまたはアンピシリン耐性遺伝子である。即ち使用される特定のマーカーは本発明に必須ではない。
【0079】
一般的に、選択された核酸配列はベクター内の適切な制限エンドヌクレアーゼ部位内に挿入される。当業者に公知の切断、ライゲーション及びE.coli形質転換のための標準的方法を本発明で使用するベクターの構築において使用する。
植物細胞または組織は種々の標準的手法を用いて上記発現コンストラクトを用いて形質転換される。ベクター配列は宿主ゲノム内に安定して組み込まれることが好ましい。
【0080】
本発明の意味においては、「安定的に形質転換される」とは、導入された核酸配列が宿主の2世代以上に通じて維持されることを意味し、これは好ましくは(必然ではない)宿主ゲノム内への導入配列の組み込みによるものである。宿主植物細胞を形質転換するために使用する方法は本発明では重要ではない。本発明に従って発現される非相同ペプチドまたはポリペプチドの商業化のためには、植物の形質転換は好ましくは永久的なもの、即ち宿主植物ゲノム内への導入発現コンストラクトの組み込みによるものであり、これにより、導入されたコンストラクトは連続する植物の世代に受け継がれる。当業者の知る通り、広範な種類の形質転換技術が当該分野に存在しており、新しい技術が持続的に使用可能となっている。
【0081】
標的宿主植物のために適しているいかなる手法をも、本発明の範囲内で使用してよい。例えばコンストラクトは、これらに限らないが種々の形態、例えばDNA鎖において、プラスミドまたは人工染色体に導入できる。標的植物細胞内へのコンストラクトの導入はこれらに限らないが種々の手法、例えば燐酸カルシウムDNA同時沈殿、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、アグロバクテリウム媒介形質転換、リポソーム媒介形質転換、プロトプラスト融合または、マイクロプロジェクタイルボンバードメントにより達成できる。当業者は詳細については文献を参照して本発明の方法において使用するための適切な手法を選択できる。
【0082】
形質転換された植物細胞は選択試薬の閾値濃度を有する選択培地中で培養され得る能力があるかどうかスクリーニングされる。選択培地上または培地中で生育する植物細胞は典型的には同じ培地を新しく用意したものに移して再度培養する。次に外植片を再生条件下で培養することにより再生植物の新芽を生産する。新芽形成後、新芽を選択定着培地に移し、完全な幼植物体とする。次に幼植物体を生育させて形質転換植物の増殖のための種子、切片等を得る。方法は非相同の起源の遺伝子の発現及びトランスジェニック植物の再生による植物の効率的な形質転換を可能とし、これにより非相同ペプチドまたはポリペプチドが生成できる。
【0083】
非相同ペプチドまたはポリペプチドの発現は発現されている特定の蛋白に特異的な生物活性に関する試験と組み合わせたウエスタンブロット、ELISA、PCR、HPLC、NMRまたは質量スペクトル分析のような標準的な分析手法を用いて確認してよい。
後述する実施例に記載されている発現系は特異的な配列系に基づいている。しかしながら、当業者の知る通り、本発明は特定の系に限定されない。即ち、別の実施形態においては、他のプロモーター及び他のシグナル配列を使用して単子葉植物種子中で非相同ペプチドまたはポリペプチドを発現してよい。
【0084】
以下、本発明の融合担体として種子貯蔵蛋白を利用する植物種子中の融合ポリペプチドの高水準発現の一実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0085】
ヒトITF配列及びプラスミドの構築
ヒトITFDNA配列はゲンバンク(GenBank)アクセッション番号L08044に基づくものとした。この配列は75アミノ酸のITFペプチドのオープンリーディングフレームをコードする。コメ穀粒中の成熟ITFの発現のために、60アミノ酸の成熟ITFペプチドをコードするDNA配列を内因性コメ遺伝子の発現に特異的なコドン表に基づいてコドン最適化した(ITF、図1)。
【0086】
図1はコメ穀粒中の腸トレフォイル(trefoil)因子(ITF)の60アミノ酸成熟部分の発現のためのコドン最適化DNAの比較を示す。「ネイティブ遺伝子」とは正常ヒトITFDNA配列を指し、「トレフォイル(trefoil)」とはコドン最適化ITFDNA配列を指す。相当するアミノ酸配列はDNA配列の下に記載する。
【0087】
図2は融合担体としての19kDaグロブリン蛋白(Glb)、エンテロキナーゼ(ek)切断部位及び成熟ITF蛋白と融合させた構築されたGt1シグナルペプチドに関するヌクレオチド及びアミノ酸の配列を示し、全ては同じ翻訳リーディングフレーム内に融合されている。
【0088】
成熟ITFをコードするコドン最適化ITF遺伝子は化学合成により誘導し、そして、1本鎖DNA増幅及びA/Tオーバーハング法を介したストラータジーン社(Stratagene)のユニバーサルクローニングベクターpCR2.1内にクローニングした。このようにして得られたプラスミドをpAPI431と命名した。
【0089】
プラスミドpAPI471は3種の中間体プラスミド、即ちコメグロブリン融合相手(pAPI469)、ek(エンテロキナーゼ)リンカー−ITF(pAPI465)及び上記したコメコドン最適化ITF遺伝子(pAPI431)を利用して最終的に構築した。融合相手の19kDaのコメグロブリン遺伝子はゲンバンク(GenBank)アクセッション番号X63990から設計したプライマー対を用いて増幅し、ストラータジーン社(Stratagene)のpCR2.1ベクターにクローニングした。19kDグロブリンをコード化する増幅しクローニングしたDNA配列をDNA配列分析により確認した。このようにして得られたプラスミドをpAPI469と命名した。次に、15塩基対エンテロキナーゼ(ek)リンカーDNAセグメントを成熟コドン最適化ITFのN末端コーディング領域上の部位指向性突然変異誘発によりpAPI431内に導入した。このようにして得られたプラスミドpAPI465はek−ITF遺伝子融合を含んでいる。
【0090】
プラスミドpAPI469は酵素HindIII及びSnaBIで消化し、次にMfeI(Mungマメヌクレアーゼにより平滑末端化)及びHindIIIで消化されているpAPI465内にクローニングした。2つのDNAセグメントを1%アガロースゲル上で単離し、QIAGENゲル抽出プロトコルを用いて精製した。2つのフラグメントをT4DNAリガーゼでライゲーションし、そして、コンピテントなE.coli細胞を形質転換するために使用した。得られたプラスミドは19kDのグロブリン−ek−コドン最適化ITF融合をコードする遺伝子を含有していた。この中間体プラスミドをpAPI470と命名した。
【0091】
pAPI470から得られたGlb−ek−ITFを含有するDNAフラグメントをBamHI(Mungマメヌクレアーゼにより平滑末端化)及びXhoIで消化し、pAPI405のNael及びXhoI部位にクローニングした。pAPI405及びpAPI470消化物の両DNAセグメントを1%アガロースゲルから精製し、ライゲーションした。プラスミドpAPI405はコメGt1プロモーターカセットベクターpAPI141の誘導体であり、Gt1プロモーター、Gt1シグナルペプチド及びnosターミネーター領域を含有している。pAPI405のGt1プロモーターとnosターミネーターの間のリンカー領域は1.8KbのGus遺伝子stufferフラグメントを含有している。得られたpAPI471プラスミドはコメGt1プロモーター、コメGt1シグナルペプチド、融合担体としてのコメグロブリン蛋白、コドン最適化ITF遺伝子にインフレームに融合したエンテロキナーゼ切断部位(Gt1プロモーター/Gt1sg−Glb−ek−ITF)及びnosターミネーター領域を含有している。
【0092】
図3は成熟コメ穀粒中のGlb−ek−ITF融合蛋白の発現のためのキメラ遺伝子コンストラクトを含有するプラスミドpAPI471を示す。融合蛋白の発現は記載されている通りコメGt1プロモーターの制御下にある。カナマイシンはプラスミド上の細菌選択マーカーを示す。該当する制限酵素部位を示す。
【実施例2】
【0093】
コメ形質転換及び植物再生
Gns9プロモーターにより駆動されるハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ(Hph)遺伝子よりなり、NOSターミネーターが後続する選択可能なマーカープラスミドpAPI176は全ての植物形質転換のための選択可能なマーカーDNAセグメントを与えた。プラスミドDNAを適切な酵素で消化することによりDNAを線状化し、次に1%低融点アガロースゲルにより分離した。分離後、DNAフラグメントをアガロースゲルスライスから溶離させ、アガロースをアガラーゼ(Agarase)で消化することにより除去した。
【0094】
DNAを沈殿させ、ゲル上で泳動させることにより、未損傷プラスミドDNAに関して線状DNAの純度を確認した。合計50μlの金粒子を0.65μgのDNAでコーティングし、そして選択されたマーカーフラグメント及び標的遺伝子フラグメントのDNA量を1:1のモル比で計算した。未成熟コメ胚から得られたコメカルスをファンら(Huang et al.)(Molec.Breeding 10,83−94,2001)に記載の通り形質転換のために調製した。コメのマイクロプロジェクタイル媒介の形質転換はファンら(Huang et al.)の記載した操作法に従って実施した。トランスジェニックコメ植物を温室において成熟時まで生育させ、種子を収穫した。
【実施例3】
【0095】
成熟コメ穀粒中のITF含有融合蛋白発現の分析
蛋白抽出のためにITF融合蛋白のコンストラクトを含有するトランスジェニック植物に由来する個々の脱穀したコメ穀粒を粉砕プレートのウェル中に入れた。各ウェルに抽出緩衝液であるトリス緩衝食塩水(TBS)+0.35MNaCl0.2mlを添加した。穀粒をゲノムグラインダー(Genome Grinder)を用いて12分間1300ストローク/分で粉砕した。得られた種子抽出液を4000rpmで20分間遠心分離し、種子上澄みを新しいプレートに移した。
或いは、10脱穀コメ穀粒を合わせ、抽出緩衝液であるTBS+0.35MNaCl2ml中において乳鉢で粉砕し、次に37℃で1.5時間混合した。混合スラリーを12000rpmで12分間遠心分離し、上澄みを2mlエッペンドルフ試験管に移し、後の分析のために−20℃で保存した。
【0096】
発現水準の分析のために、合計32μl(約50〜60μg総蛋白)の個々の種子上澄みを4〜20%プレキャストポリアクリルアミドゲル上で分割した(カリフォルニア州カールスバッドのノーベックス(Novex,Carlsbad,CA))。ゲルを染色溶液である0.1%クーマシーブリリアントブルーR−250で染色し、次に脱色して蛋白バンドを可視化した。ウエスタンブロット分析のためにゲルを0.45μmのニトロセルロースメンブレンにエレクトロブロットし、3時間リン酸塩緩衝食塩水(PBS)中5%のノンファットドライミルクでブロッキングし、次にPBS中ですすいだ。一時抗体と共にインキュベートするために、ITFに対するマウスモノクローナル抗体(ジーアイラボラトリーズ(GI Laboratories))を一次抗体溶液である0.05%Tween20含有PBS中5%BSA中1:1000希釈で使用した。ブロットは一夜溶液中でインキュベートした。
【0097】
得られたブロットを各々10分間PBSで3回洗浄した。二次抗体(ヤギ抗ウサギIgGアルカリホスファターゼコンジュゲート(カリフォルニア州バイオラッド社(Bio−Rad,CA))をブロッキング緩衝液中1:4000に希釈した。次にメンブレンを二次抗体溶液中で2時間インキュベートし、次にPBS中で3回洗浄した。発色は基質BCIP−NBT(シグマ社、ミズーリ州セントルイス(Sigma,St.Louis,MO))を添加することにより開始させ、そして所望の強度のバンドが達成された後に水でブロットをすすぐことにより操作を終了した。
【0098】
図4はクーマシー染色PAGEにより分割したGlb−ek−ITF融合蛋白の発現を示す。個々のR1世代の種子蛋白抽出液約50〜60μgをトランスジェニックライスイベント471−70から調製し、4〜20%PAGE上で分割した。レーン1は非トランスジェニックコメ種Tapei309(TP309)由来の対照抽出液を指す。471−70形質転換イベントの7種の分割された個々の種子の抽出液をレーン2〜4及び6〜9に示す。分子量マーカーはレーン5に示す。存在する融合蛋白の量を推定するために、約5μgのマーカー蛋白である23kDaの炭酸アンヒドラーゼ(シグマ社(Sigma))を発現水準の比較参照物質としてゲル(レーン10)にロードした。レーン471−70−2、471−70−4及び471−70−5は約10μgのGlb−ek−ITF融合蛋白のバンドを含有すると推定される。内因性またはネイティブの19kDaのグロブリン蛋白及び約28kDaのGlb−ek−ITF融合蛋白の位置は矢印で示す。矢印で示すGlb−ek−ITF融合蛋白に相当するこのバンドは対照TP309には存在していない。
種子抽出液の容量の六分の一をゲルにロードしたため、総融合蛋白は約60μg/穀粒または総穀粒重量の0.3%と推定される。穀粒当たり総蛋白の約300〜400μgが一般的に抽出緩衝液で抽出され、従って組み換え融合蛋白は総可溶性蛋白の約15〜20%である。ITFは重量において融合蛋白の約四分の一であり、従って、ITFは約15μg/穀粒または0.075%穀粒重量である。
【0099】
図5はウエスタンブロット分析によるGlb−ek−ITF融合蛋白のITF部分の検出を示す。2つのトランスジェニック試料(合わせた種子試料)及びTP309非トランスジェニック試料を2つの同一ゲル上で泳動させた。1つのゲルはクーマシー染色して全蛋白を可視化し、他方のゲルは特異的抗ITF抗体を用いてプロービングした。クーマシー染色ゲルで可視化した融合蛋白バンドはウエスタンブロットにおいて抗体により検出することにより、組み換えコメ穀粒中の融合蛋白として成熟ITFの発現を確認した。
【0100】
本発明は小型非相同ペプチドまたはポリペプチドと単子葉植物種子貯蔵蛋白の間にインフレームに操作されたメチオニンまたはトリプトファン残基を場合により含む小型非相同ペプチドまたはポリペプチド及び単子葉植物種子貯蔵蛋白を含む融合コンストラクトの発現を可能にする。このような融合コンストラクトの発現はトランスジェニックコメ種子中で>100μg/穀粒の水準まで達している。AODの外に、本発明の良好な方法は栄養学的、薬理学的及び医療上重要な種々のペプチドの発現を可能とする。これ等には、これには限らないが、肥満治療用ペプチド、例えばPYY、ペプチド抗生物質、例えばイセガナン及びβ−デフェンシン、成熟ペプチド成長因子、例えばEGF、IGF、FGF及びITF、抗HIVペプチド、例えばFuzeon及び誘導体、ペプチドホルモン及びペプチドホルモンフラグメント、例えば副甲状腺ホルモン(PTH)、アデノコルチコトロピン(ACTH)及びガストリン放出ペプチド(GRP)及び高血圧を治療するためのペプチド、例えば血管作用性腸ペプチド(VIP)及び血管内皮生育抑制剤(VEGI)が包含される。この特定の融合手法はまた、種々の細菌及びウィルス性疾患の経口免疫化のために使用できるこれ等の疾患に特異的な抗原性ポリペプチドエピトープの高水準発現のために利用してよい。
【0101】
種子保存蛋白融合相手としてのコメグロブリン
コメ種子貯蔵蛋白抽出液の2次元ゲル電気泳動によれば、19kDaのグロブリン蛋白は完全ではないが大部分は単一成分であり、蛋白のファミリーとして存在するとは考えられない。19kDaグロブリン蛋白のコメ内乳中の含有量はグルテン蛋白含有量の概ね10%であるが、19kDaグロブリン蛋白はコメ内乳における単一の遺伝子の最も大量の産物であり、そして、この観点において、コメ内乳における非相同ペプチドの発現のための融合担体として操作するために最も優れた選択肢である。グロブリン遺伝子を予め単離し、特性化し、DNA配列を決定した。非相同ペプチドの高水準発現のために潜在的融合相手として使用してよい別の単子葉植物種子蛋白は、コメグルテリン、オリジン及びプロラミン、オオムギホルデイン、コムギグリアジン及びグルテニン、トウモロコシゼイン及びグルテリン、エンバクグルテリン、モロコシカフィリン、アワペニセチン及びライムギセカリンを包含する。
【実施例4】
【0102】
ヒトAOD9604配列及びプラスミド構築
ヒトAOD9604DNA配列はヒト成長ホルモンのC末端フラグメントに基づくものとした(Natera et al.,Biochem.Mol.Biol.Int.33,1011−1021,1994)。配列は16アミノ酸のAODペプチドに対するオープンリーディングフレームをコードし、オーストラリアメルボルンのメタボリックスリミテッド(Metabolics Ltd.,Melbourne,AUS)により提供されたものである。コメ穀粒中におけるAODの発現のために、16アミノ酸AODペプチドをコードするDNA配列を内因性コメ遺伝子の発現に特異的なコドン表に基づいてコドン最適化(図6)した。
【0103】
3組み換えDNAをコメ穀粒中でAODを発現するために調製した。第1に、グロブリン貯蔵蛋白の成熟部分(GLB)、トリプトファン残基及びAOD9604ペプチドを含有する完全合成遺伝子を合成した(コメ好適コドン使用)。この合成遺伝子はGLB−W−AOD融合蛋白をコードしている。更に、ネイティブの成熟グロブリン中の唯一のトリプトファン残基をこのGLB−W−AOD融合蛋白中でプロリン残基(アミノ酸127位)に変換する(図8)ことにより、最終的に成熟グロブリン蛋白のC末端に新しく導入されたトリプトファン残基においてN−クロロスクシンイミドによるグロブリン融合担体からのAODペプチドの化学的放出を促進させた(図8)。
【0104】
GLB−W−AOD遺伝子フラグメントを制限酵素PmI及びXhoで切り出し、GLB−W−AOD遺伝子を含有するこの平滑末端/XhoDNAセグメントを1%アガロースゲルから単離し、QIAGENゲル抽出プロトコルを用いて精製した。プラスミドpAPI405を含有するGt1プロモーター/シグナルペプチド発現カセットをNaeI/XhoIで消化し、ベクターDNAもまた1%アガロースゲル上で単離し、QIAGENゲル抽出プロトコルを用いて精製した。2つのDNAフラグメントをT4DNAリガーゼを用いてライゲーションし、そしてコンピテントE.coli細胞を形質転換するために使用した。得られたプラスミド(pAPI506)はコメGt1プロモーター、Gt1シグナルペプチド、GLB−W−AOD融合蛋白コーディング領域及びnosターミネーター3’領域を含有していた。全発現カセット(Gt1プロモーター/Gt1sp:GLB−W−AOD融合蛋白/nosターミネーター領域)を酵素HindIII及びEcoRIを用いてプラスミドpAPI506から切り出し、これ等と同じ制限部位においてバイナリベクタープラスミドpJH2600(Horvath et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.97,1914−1919,2000)内にクローニングすることにより、全発現カセット(図8)を含有するバイナリプラスミドpAPI507を形成した。
【0105】
グロブリン遺伝子のN末端の第2の融合物はコメ好適コドンを用いて合成した。トリプトファンを化学的切断により融合物からAODを放出させるために融合物とAODとの間に操作した(図10)。合成した遺伝子フラグメントをSchI/XhoIで消化し、次にNael/XhoIにより消化したpAPI405に直接クローニングすることにより中間体プラスミドpAPI500を作成した。全発現カセット及びpAPI500由来融合/AODを含有するフラグメントをHindIII及びEcoRIで切り出し、これ等と同じ制限部位においてバイナリベクタープラスミドpJH2600内にクローニングすることにより、全発現カセット(図11)を含有するバイナリプラスミドpAPI502を形成した。
【0106】
第3の融合担体は突然変異したグロブリン遺伝子である。全メチオニンをセリンに突然変異させることにより臭化シアンの切断部位を排除し、全てのシステインをグリシンに突然変異させることによりジスルフィド結合を排除し、そして後の精製目的のためにHis6タグを融合相手のN末端に連結した。別のメチオニンを臭化シアンによる切断部位を形成するために融合部とAODとの間に入れた。フラグメントはブルーへロンテクノロジーズ(Blue Heron Technologies)により合成した(図11)。合成フラグメントを制限酵素PmI及びXhoIで切り出し、Gt1プロモーター/シグナル発現カセット(pAPI405)内にクローニングすることにより中間体プラスミドpAPI494を形成した。全発現カセット及びpAPI494由来融合/AODを含有するフラグメントをHindIII及びEcoRIで切り出し、これ等と同じ制限部位においてバイナリベクタープラスミドpJH2600内にクローニングすることにより、全発現カセット(図12)を含有するバイナリプラスミドpAPI499を形成した。
【実施例5】
【0107】
コメ形質転換及び植物再生
バイナリベクターJH2600中のT−DNAの右及び左の境界によりフランキングされているGns9プロモーターにより駆動されnosターミネーターが後続するホスフィノスリシンアセチルトランスフェラーゼ(Bar)遺伝子よりなる選択可能なマーカープラスミドpAPI412は、全植物形質転換のための選択可能なマーカーDNAセグメントを提供した。プラスミドpAPI412及びpAPI507、pAPI499及びpAPI502をアグロバクテリウムLBA4404株内に独立して形質転換し、そして個々のプラスミドを含有するアグロバクテリウム株を選択培地上一夜生育後に1:1比で混合した。コメのアグロバクテリウム媒介形質転換は本質的には米国特許第5,591,616号に記載の操作法に従って実施した。成熟コメ胚より得たコメカルスをファンら(Huang et al.)の記載に従って形質転換用に調製した。コメ品種TP309から誘導したコメカルスにプラスミドpAPI412及びAODプラスミドを含有するアグロバクテリウムLBA4404を接種した。3日間の共インキュベーションの後、8〜9週間、カルスを5mg/lのビアラホスを含有する選択培地中に移した。生存カルスを再生培地上、次いで定着培地上で完全植物となるまで再生させた。トランスジェニック植物(以下の表1)は温室内で成熟するまで育成し、そしてR1種子を採取して発現の分析に付した。
【表1】

【実施例6】
【0108】
成熟コメ穀粒中のAOD含有融合蛋白発現の分析
蛋白抽出のためにAOD融合蛋白のコンストラクトを含有するトランスジェニック植物に由来する個々の脱穀したR1コメ穀粒を粉砕プレートのウェル中に入れた。各ウェルに抽出緩衝液であるトリス緩衝食塩水(TBS)+0.35MNaCl0.2mlを添加した。穀粒をゲノムグラインダー(Genome Grinder)を用いて12分間300ストローク/分で粉砕した。得られた種子抽出液を4000rpmで20分間遠心分離し、種子上澄みを新しいプレートに移した。
或いは、10脱穀コメ穀粒を合わせ、抽出緩衝液であるTBS+0.35MNaCl2ml中において乳鉢で粉砕し、次に37℃で1.5時間混合した。混合スラリーを12000rpmで12分間遠心分離し、上澄みを2mlエッペンドルフ試験管に移し、後の分析のために−20℃で保存した。
【0109】
発現水準の分析のために、合計32μl(約50〜60μg総蛋白)の個々の種子上澄みを4〜20%プレキャストポリアクリルアミドゲル上(カリフォルニア州カールスバッドのノーベックス(Novex,Carlsbad,CA))で分割し、そして、ゲルを染色溶液である0.1%クーマシーブリリアントブルーR−250で染色し、次に脱色して蛋白バンドを可視化した。ウエスタンブロット分析のためにゲルを0.45μmのニトロセルロースメンブレンにエレクトロブロットし、3時間PBS中5%のノンファットドライミルクでブロッキングし、次にリン酸塩緩衝食塩水(PBS)中ですすいだ。一次抗体と共にインキュベートするために、AOD及びグロブリンに対するマウスモノクローナル抗体を一次抗体溶液である0.05%Tween20含有PBS中5%BSA中1:1000希釈で使用し、そしてブロットは一夜溶液中でインキュベートした。
【0110】
得られたブロットを各々10分間PBSで3回洗浄した。二次抗体(ヤギ抗ウサギIgGアルカリホスファターゼコンジュゲート(カリフォルニア州バイオラッド社(Bio−Rad,CA))をブロッキング緩衝液中1:4000に希釈した。次にメンブレンを二次抗体溶液中で2時間インキュベートし、次にPBS中で3回洗浄した。発色は基質BCIP−NBT(シグマ社、ミズーリ州セントルイス(Sigma,St.Louis,MO))を添加することにより開始させ、そして所望の強度のバンドが達成された後に水でブロットをすすぐことにより操作を終了した。
【0111】
図13(ゲルB)はクーマシー染色PAGEにより分割したGLB−W−AOD融合蛋白の発現を示す。レーンTP309は全ゲルにおける非トランスジェニック対照である。トランスジェニックイベント507−13及び507−17に由来する2つの独立した種子の試料の抽出液を示す。GLB−W−AOD融合蛋白は全ゲル中矢印で示す(融合)。このバンドは対照のTP309レーンには存在しない。図13(ゲルC)はまたウエスタン分析によるGLB−W−AOD融合蛋白としてのAOD部分の検出を示す。2つのトランスジェニックの合わせた種子試料(507−13及び507−17)をTP309非トランスジェニック試料と共に泳動させ、ウエスタンブロットに付し、そして融合蛋白を抗AOD抗血清で可視化した。融合蛋白のバンドはまた、ウエスタンブロットにおいてグロブリン特異的抗体を用いたウエスタンブロット(ゲルA)により可視化することにより組み換えコメ穀粒中のGLB融合蛋白としてのAODペプチドの発現を確認した。コメ穀粒中の融合蛋白の初期の発現推定値は100〜150μg/種子である。これは穀粒重量の0.5〜0.75%に相当する。融合蛋白は成熟グロブリンCAの約1/10の大きさであるため、AOD9604ペプチドの発現は総穀粒重量の概ね0.05〜0.075%である。
【0112】
本発明者等は同じ方法を用いてコンストラクトpAPI449から作成したトランスジェニック植物をスクリーニングした。SDS−PAGEクーマシー染色ゲルを使用し、このコンストラクトについて合計70植物がHis6−mGLB−AOD融合物を発現することが検出された。このコンストラクト由来のAOD9604融合蛋白の最高発現を示した上位7植物系統を図14に示す。このコンストラクトについて植物の最高の系統である499−105の発現水準は5.6mg/g粉体または穀粒重量の0.56%であった。このコンストラクトにおけるAOD9604融合蛋白はHisタグを含有しているため、分子質量はpAPI507コンストラクトのAOD9604融合物よりも僅かに高値となる。融合蛋白は同じ分子質量を有するネイティブの蛋白と重複している(図14)。即ち、発現水準はこの系統に対しては、陰性対照親系統(TP309)がKodakゲルドキュメンテーションソフトウエアを用いて差し引かれているとはいえ、過大評価される可能性がある。
【0113】
コンストラクトpAPI502については、164のトランスジェニック植物中118がSDS−PAGEゲルによりスクリーニングされた。クーマシー染色ゲルではnGLB−AOD融合物を観察することが困難であったがウエスタンブロット分析によればnGLB−AOD融合物が検出された。ウエスタンブロットを用いて分析した場合、48のトランスジェニック植物が陽性シグナルを有していた(図14)。このコンストラクトからの最良の植物系統におけるnGLB−AOD9604融合物の発現水準は15μg/g粉体と推定される。これは、この融合方法が他の2つの融合相手と比較してAOD9604の高発現水準をもたらさないことを示している。
【実施例7】
【0114】
ヒトインスリン様成長因子−1(IGF−1)配列及びプラスミド構築
ヒトIGF−1DNA配列はゲンバンク(GenBank)アクセッション番号M11568のゲンバンク(GenBank)蛋白配列に基づいたものとした。配列は70アミノ酸ペプチドのオープンリーディングフレームをコードしている。コメ穀粒中のIGF−1の発現のために、70アミノ酸IGF−1ペプチドをコードするDNA配列を内因性コメ遺伝子の発現に特異的なコドン表に基づいてコドン最適化した(図16)。2組み換えDNAをコメ穀粒中でIGF−1を発現するために調製した。第1に、グロブリン貯蔵蛋白の成熟部分(GLB)、トリプトファン残基及びIGF−1ペプチドを含有する完全合成遺伝子を合成した(コメ好適コドン使用)。この合成遺伝子はGLB−W−IGF−1融合蛋白をコードしている。更に、ネイティブの成熟グロブリン中の唯一のトリプトファン残基をこのGLB−W−IGF−1融合蛋白中でプロリン残基(アミノ酸127位)に変換する(図18)ことにより、最終的に成熟グロブリン蛋白のC末端に新しく導入されたトリプトファン残基においてN−クロロスクシンイミドによるグロブリン融合担体からのIGF−1ペプチドの化学的放出を促進させた(図18)。
【0115】
GLB−W−IGF−1遺伝子フラグメントを制限酵素PmI及びXhoで切り出し、GLB−W−IGF−1遺伝子を含有するこの平滑末端/XhoDNAセグメントを1%アガロースゲルから単離し、キアゲン社(QIAGEN)ゲル抽出プロトコルを用いて精製した。プラスミドpAPI405を含有するGt1プロモーター/シグナルペプチド発現カセットをNaeI/XhoIで消化し、ベクターDNAもまた1%アガロースゲル上で単離し、キアゲン社(QIAGEN)ゲル抽出プロトコルを用いて精製した。2つのDNAフラグメントをT4DNAリガーゼを用いてライゲーションし、そしてコンピテントE.coli細胞を形質転換するために使用した。得られたプラスミドはコメGt1プロモーター、Gt1シグナルペプチド、GLB−W−IGF−1融合蛋白コーディング領域及びnosターミネーター3’領域を含有していた(図19)。
【0116】
第2の融合相手はグルテリンの塩基性サブユニットである。融合相手とIGFの間にトリプトファン残基を有するこのフラグメントはコメ好適コドンを用いてブルーへロンテクノロジーズ(Blue Heron Technologies)により合成した(図18)。フラグメントをPmI及びXhoIで切り出し、pAPI405内にクローニングすることによりプラスミドpAPI521を形成した(図20)。
【実施例8】
【0117】
コメ形質転換及び植物再生
約200個のTP309種子を脱穀し、50%v/vの市販脱色剤で25分間滅菌し、各々5分間3回滅菌水で洗浄した。滅菌した種子を10日間2mg/lの2,4−Dを添加したN6培地の入ったプレート7枚上に置き、カルス形成を誘導した。一次カルスを切り出し、3週間新鮮N6培地上に置いた。二次カルスを一次カルスから分離し、同じN6培地上において3次カルスを形成させた。3次カルスをボンバードメントに使用するか、2週おきに4〜5回継代培養した。各継代培養のカルスをボンバードメントに用いることができる。
【0118】
直径1〜4mmのカルスを選択し、ボンバードメントの前5〜24時間0.3Mマンニトール及び0.3Mソルビトールを含有するN6培地上に4cmの円形に置いた。バイオリスティック(Biolistic)ボンバードメントをバイオリスティック(Biolistic) PDC−1000/Heシステム(バイオラッド社(Bio−Rad))を用いて実施した。操作には2.5μgの選択可能なマーカーDNA及び共転移プラスミドDNA(pAPI520またはpAPI521)を1対3の比でコーティングした金粒子1.5mg(60μg/μl)を要した。DNAコーティング金粒子を1100psiのヘリウム圧でコメカルス内へのボンバードメントに付した。ボンバードメントの後、カルスを48時間同じプレート上で回復させ、次に50mg/LのハイグロマイシンBを含有するN6培地に移した。
【0119】
ボンバードメントに付したカルスを45日間26℃で暗所、選択培地上でインキュベートした。この時点で、白色不透明緻密であり、黄色または茶色であり軟質で含水性の非形質転換対と容易に識別できる形質転換体を今度はハイグロマイシンB非含有のN6(2,4−D非含有)3mg/lBAP及び1mg/lのNAAよりなる再生培地に移し、約2〜3週間連続照明条件下において培養した。
【0120】
再生された植物が1〜3cmの丈になった時点で、幼植物体をMS培地の半分の濃度で有り0.05mg/lNAAを含有する定着培地に移した。2週間以内に、定着培地中の幼植物体は発根し、その新芽は10cm超の長さとなった。次に植物を50%市販土壌Sunshine#1(ワシントン州サングロホルティカルチャー有限会社(San Gro Horticulture Inc,WA))及び50%水田由来自然土壌の入った2.5インチのポットに移した。ポットをプラスチック容器に入れ、これを別の透明プラスチック容器で覆うことにより高湿度を維持した。植物は継続照明下に1週間培養した。次に透明プラスチックカバーを一日の期間に渡ってゆっくり移動させることにより湿度を徐々に低下させた。その後、プラスチックカバーを完全に取り外し、水及び肥料を必要に応じて添加した。植物が約12cmの丈となった時点で温室に移し、そこで生育させ成熟させた。
【0121】
本発明は特定の実施形態を用いて上記の通り説明したが説明及び実施例は本発明の構造的及び機能的原理を説明することを意図しており、本発明の範囲を限定する意図はない。むしろ本発明はその精神及び添付請求項の範囲内における全ての変更、改変及び置き換えを包含することを意図している。
【図面の簡単な説明】
【0122】
【図1】コメ穀粒中の腸トレフォイル(trefoil)因子(ITF)の60アミノ酸成熟部分の発現のためのコドン最適化DNA配列の比較を示す。
【図2】融合担体としての19kDaグロブリン蛋白(Glb)、エンテロキナーゼ(ek)切断部位及び成熟ITF蛋白と融合させた構築されたGt1シグナルペプチドに関するヌクレオチド及びアミノ酸の配列を示し、全ては同じ翻訳リーディングフレーム内に融合されている。
【図3】成熟コメ穀粒中のGlb−ek−ITF融合蛋白の発現のためのキメラ遺伝子コンストラクトを含有するプラスミドpAPI471を示す。
【図4】成熟コメ穀粒中のGlb−ek−ITF融合蛋白の発現水準を示す。
【図5】Glb−ek−ITF融合蛋白の部分としてのITF発現のウエスタンブロット分析を示す。
【図6】コメ穀粒中の16アミノ酸AOD9604(AOD)ペプチドの発現に関するコドン最適化DNA配列の比較を示す。
【図7】同じ翻訳リーディングフレーム内に全て融合された融合担体としての19kDaグロブリン蛋白(Glb)、アミノ酸トリプトファンの化学切断に基づいた切断部位(#で示す)及びAODペプチドに融合させた構築されたGt1シグナルペプチドに関するヌクレオチド及びアミノ酸の配列を示す。
【図8】成熟コメ穀粒におけるGlb−W−AOD融合蛋白の発現を特定するキメラ遺伝子コンストラクトを含有するプラスミドpAPI507を示す。
【図9】グロブリン−M−AOD9604融合ポリペプチドのN末端領域のDNA及びアミノ酸の配列を示す。
【図10】His6−突然変異グロブリン−M−AOD9604ポリペプチドのDNA及びアミノ酸配列を示す。
【図11】プラスミドpPAI502を示す。
【図12】プラスミドpAPI499を示す。
【図13】融合相手−及びAOD9604−特異的抗体を用いたウエスタンブロット分析によるAOD9604融合同一性を確認したものである。総蛋白は66mMTris−HCl、pH6.8、2%SDS及び2%βメルカプトエタノールで抽出した。パネルAはSDS−PAGEクーマシー染色ゲルを示す。パネルB及びCはそれぞれAOD9604及びグロブリンに対する抗血清を用いたウエスタンブロット分析の結果を示す。レーン1は陰性対照であるTP309であり、レーン2及び3はトランスジェニック系統507−13を示す。レーン4はトランスジェニック系統507−17である。総蛋白抽出緩衝液20ミリリットルを用いて1グラムトランスジェニックコムギを抽出し、そして抽出液15μlをロードした。
【図14】pAPI499コンストラクト由来のAOD9604融合蛋白を発現する上位7系統のSDS−PAGEクーマシー染色ゲルを示す。ブラウン種子の第1世代由来のコメ粉1グラムをTBS+0.5MNaCl25mlで2時間抽出した。スラリーを5000rpmで20分間遠心分離した。上澄みを廃棄し、ペレットを15mlの2%SDS及び0.2%ベータ−メルカプトエタノールで抽出した。抽出液1ミリリットルを取り出し、12分間14000rpmで遠心分離した。上澄み35mlをロードし、4〜20%SDS−PAGEゲル上で分離した。ゲルをクーマシーブルー染色溶液で染色した。
【図15】nGLB−AOD融合蛋白のウエスタンブロットを示す。第1世代の種子由来のコメ粉1グラムをTBS+0.5MNaCl25mlで2時間抽出した。スラリーを5000rpmで20分間遠心分離した。上澄みを廃棄し、ペレットを15mlの2%SDS及び2%ベータ−メルカプトエタノールで抽出した。抽出液1ミリリットルを取り出し、12分間14000rpmで遠心分離した。上澄み40μlをロードした。
【図16】ネイティブのIGF−1へのインスリン様成長因子(IGF−1opt)のコドン最適化の比較を示す。
【図17】GLB−W−IGFのDNA及びアミノ酸配列を示す。
【図18】グルテリン−W−IGFの塩基性サブユニットのDNA及びアミノ酸配列を示す。
【図19】プラスミドpAPI520を示す。
【図20】プラスミドpAPI521を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非相同ペプチドまたはポリペプチドの発現を示す単子葉植物種子を製造する方法であって、
(a)以下の(i)、(iii)、(iv)及び/または(ii)の要素を含むキメラ遺伝子で単子葉植物を形質転換する工程と、
(i)植物細胞中で活性なプロモーター、
(ii)シグナル配列をコードするプロモーターに作動可能に連結した第1のDNA配列、
(iii)単子葉植物種子貯蔵蛋白をコードするプロモーターに作動可能に連結した第2のDNA配列、
(iv)非相同ペプチドまたはポリペプチドをコードするプロモーターに作動可能に連結した第3のDNA配列、
ここで第2、第3及び/または第1のDNA配列は翻訳フレーム内に連結され、そして共に単子葉植物種子貯蔵蛋白及び非相同ペプチドまたはポリペプチド及び/またはシグナル配列を含む融合蛋白をコードし、
(b)融合蛋白を含有する種子を製造するのに十分な時間形質転換単子葉植物細胞から単子葉植物を成育させる工程と、
(c)単子葉植物から種子を収穫する工程と、
を含む方法。
【請求項2】
単子葉植物がトウモロコシ、コメ、オオムギ、コムギ、ライムギ、トウモロコシ、アワ、ライコムギまたはサトウモロコシから選択される請求項1記載の方法。
【請求項3】
単子葉植物がコメである請求項2記載の方法。
【請求項4】
非相同ペプチドまたはポリペプチドが約10kDa以下である請求項1記載の方法。
【請求項5】
非相同ペプチドまたはポリペプチドが5〜100アミノ酸長である請求項1記載の方法。
【請求項6】
キメラ遺伝子が更にメチオニンまたはトリプトファン残基をコードするプロモーターに作動可能に連結した第4のDNA配列を含み、そして、融合蛋白が更に非相同のペプチドまたはポリペプチドと単子葉植物種子貯蔵蛋白との間にフレームの中に入るように操作されているメチオニンまたはトリプトファン残基を含む請求項1記載の方法。
【請求項7】
融合蛋白を切断して非相同ペプチドまたはポリペプチドを単子葉植物種子貯蔵蛋白から分離する工程を更に含む請求項1記載の方法。
【請求項8】
キメラ遺伝子が更に少なくとも1つの選択的精製タグ及び/または少なくとも1つの特異的プロテアーゼ切断部位をコードするプロモーターに作動可能に連結した第4のDNA配列を含み、融合蛋白が更に少なくとも1つの選択的精製タグ及び/または非相同ペプチドまたはポリペプチドと単子葉植物種子貯蔵蛋白の間の翻訳フレーム内に融合した少なくとも1つの特異的プロテアーゼ切断部位を含む請求項7記載の方法。
【請求項9】
融合蛋白を切断して単子葉植物種子貯蔵蛋白から非相同ペプチドまたはポリペプチドを分離する工程を更に含む請求項8記載の方法。
【請求項10】
少なくとも1つの特異的プロテアーゼ切断部位がエンテロキナーゼ、第Xa因子、トロンビン、V8プロテアーゼ、Genenase(登録商標)、α−溶解蛋白またはタバコエッチ(Tobacco etch)ウィルスプロテアーゼである請求項8記載の方法。
【請求項11】
少なくとも1つの特異的プロテアーゼ切断部位がエンテロキナーゼである請求項10記載の方法。
【請求項12】
融合蛋白が化学的切断剤により切断される請求項7記載の方法。
【請求項13】
化学的切断剤が臭化シアンである請求項12記載の方法。
【請求項14】
以下のa)、c)、d)及び/またはb)の要素を含む形質転換された単子葉植物細胞であって、
a)植物細胞中で活性なプロモーター、
b)シグナル配列をコードするプロモーターに作動可能に連結した第1のDNA配列、
c)単子葉植物種子貯蔵蛋白をコードするプロモーターに作動可能に連結した第2のDNA配列、
d)非相同ペプチドまたはポリペプチドをコードするプロモーターに作動可能に連結した第3のDNA配列、
ここで、第2、第3及び/または第1のDNA配列は翻訳フレーム内に連結され、そして共に貯蔵蛋白及び非相同ペプチドまたはポリペプチド及び/またはシグナル配列を含む融合蛋白を共にコードしている単子葉植物細胞。
【請求項15】
単子葉植物がトウモロコシ、コメ、オオムギ、コムギ、ライムギ、トウモロコシ、アワ、ライコムギまたはサトウモロコシから選択される請求項14記載の形質転換された単子葉植物細胞。
【請求項16】
単子葉植物がコメである請求項15記載の形質転換された単子葉植物細胞。
【請求項17】
非相同ペプチドまたはポリペプチドが約10kDa以下である請求項14記載の形質転換された単子葉植物細胞。
【請求項18】
非相同ペプチドまたはポリペプチドが5〜100アミノ酸長である請求項14記載の形質転換された単子葉植物細胞。
【請求項19】
キメラ遺伝子が更にメチオニンまたはトリプトファン残基をコードするプロモーターに作動可能に連結した第4のDNA配列を含み、融合蛋白が更に非相同のペプチドまたはポリペプチドと単子葉植物種子貯蔵蛋白との間にフレームの中に入るように操作されているメチオニンまたはトリプトファン残基を含む請求項14記載の形質転換された単子葉植物細胞。
【請求項20】
キメラ遺伝子が更に少なくとも1つの選択的精製タグ及び/または少なくとも1つの特異的プロテアーゼ切断部位をコードするプロモーターに作動可能に連結した第4のDNA配列を含み、そして、融合蛋白が更に少なくとも1つの選択的精製タグ及び/または非相同ペプチドまたはポリペプチドと単子葉植物種子貯蔵蛋白の間の翻訳フレーム内に融合した少なくとも1つの特異的プロテアーゼ切断部位を含む請求項14記載の形質転換された単子葉植物細胞。
【請求項21】
少なくとも1つの特異的プロテアーゼ切断部位がエンテロキナーゼ、第Xa因子、トロンビン、V8プロテアーゼ、Genenase(登録商標)、α−溶解蛋白またはタバコエッチ(Tobacco etch)ウィルスプロテアーゼである請求項20記載の形質転換された単子葉植物細胞。
【請求項22】
少なくとも1つの特異的プロテアーゼ切断部位がエンテロキナーゼである請求項21記載の形質転換された単子葉植物細胞。
【請求項23】
以下のa)、c)、d)及び/またはb)の要素含むキメラ遺伝子であって、
a)植物細胞中で活性なプロモーター、
b)シグナル配列をコードするプロモーターに作動可能に連結した任意の第1のDNA配列、
c)単子葉植物種子貯蔵蛋白をコードするプロモーターに作動可能に連結した第2のDNA配列、
d)非相同ペプチドまたはポリペプチドをコードするプロモーターに作動可能に連結した第3のDNA配列、
第2、第3及び/または第1のDNA配列は翻訳フレーム内に連結され、共に貯蔵蛋白及び非相同ペプチドまたはポリペプチド及び/またはシグナル配列を含む融合蛋白をコードしているキメラ遺伝子。
【請求項24】
単子葉植物がトウモロコシ、コメ、オオムギ、コムギ、ライムギ、トウモロコシ、アワ、ライコムギまたはサトウモロコシから選択される請求項23記載のキメラ遺伝子。
【請求項25】
単子葉植物がコメである請求項24記載のキメラ遺伝子。
【請求項26】
非相同ペプチドまたはポリペプチドが約10kDa以下である請求項23記載のキメラ遺伝子。
【請求項27】
非相同ペプチドまたはポリペプチドが5〜100アミノ酸長である請求項23記載のキメラ遺伝子。
【請求項28】
更にメチオニンまたはトリプトファン残基をコードするプロモーターに作動可能に連結した第4のDNA配列を含み、融合蛋白が更に非相同のペプチドまたはポリペプチドと単子葉植物種子貯蔵蛋白との間にフレームの中入るように操作されているメチオニンまたはトリプトファン残基を含む請求項23記載のキメラ遺伝子。
【請求項29】
更に少なくとも1つの選択的精製タグ及び/または少なくとも1つの特異的プロテアーゼ切断部位をコードするプロモーターに作動可能に連結した第4のDNA配列を含み、そして、融合蛋白が更に少なくとも1つの選択的精製タグ及び/または非相同ペプチドまたはポリペプチドと単子葉植物種子貯蔵蛋白の間の翻訳フレーム内に融合した少なくとも1つの特異的プロテアーゼ切断部位を含む請求項23記載のキメラ遺伝子。
【請求項30】
少なくとも1つの特異的プロテアーゼ切断部位がエンテロキナーゼ、第Xa因子、トロンビン、V8プロテアーゼ、Genenase(登録商標)、α−溶解蛋白またはタバコエッチ(Tobacco etch)ウィルスプロテアーゼである請求項29記載のキメラ遺伝子。
【請求項31】
少なくとも1つの特異的プロテアーゼ切断部位がエンテロキナーゼである請求項30記載のキメラ遺伝子。
【請求項32】
単子葉植物種子中の非相同ペプチドまたはポリペプチドの発現方法であって、
a)単子葉植物成熟種子発現系において単子葉植物種子貯蔵蛋白に非相同ペプチドまたはポリペプチドを融合させる工程と、
b)成熟単子葉植物種子中で非相同ペプチドまたはポリペプチドを発現させる工程と、
を含む方法。
【請求項33】
単子葉植物種子中の非相同ペプチドまたはポリペプチドの発現が種子貯蔵蛋白の非存在下の非相同ペプチドまたはポリペプチドの発現より少なくとも20倍高値である請求項32記載の方法。
【請求項34】
非相同ペプチドまたはポリペプチドが少なくとも15〜20μg/単子葉植物種子の水準で発現される請求項32記載の方法。
【請求項35】
非相同ペプチドまたはポリペプチドが種子の全可溶性蛋白の少なくとも3.0%である請求項32記載の方法。
【請求項36】
非相同ペプチドまたはポリペプチドが種子の全可溶性蛋白の少なくとも5.0%である請求項35記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公表番号】特表2007−517504(P2007−517504A)
【公表日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−543945(P2006−543945)
【出願日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【国際出願番号】PCT/US2004/041083
【国際公開番号】WO2005/056578
【国際公開日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【出願人】(503293525)ベントリア バイオサイエンス (5)
【Fターム(参考)】