説明

融雪装置

【課題】温排水を利用することで新たな熱源を不要とし、温排水の流量を確保して融雪の効率化が図れる融雪装置の実現。
【解決手段】融雪装置10は、温排水を供給する供給管11と、前記供給管に接続されて、前記温排水により槽内の雪を溶解する融雪槽13と、前記融雪槽に接続されて前記融雪槽内で溶解された融雪水を下水道に排出する排出管15と、を有し、前記融雪槽は、地上から槽内に雪を搬入する開口部16と、地下において前記供給管から前記排出管に向けて鉛直上方に傾斜する底部17と、前記底部の周囲に立設された側壁部18と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、工場等から排出される排水を熱源として利用して雪を溶解する融雪装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には融雪のためのエネルギーを使用せずに家庭内排水を融雪に利用する融雪装置、特許文献2にはロードヒーティング用の融雪水を融雪槽内に導入すると共に、槽壁面を温水パイプで加温する融雪装置、特許文献3には地下水と融雪槽内に地下水と温水を供給すると共に、融雪排水の一部を再利用する融雪装置、特許文献4には一般家庭や業務用給湯設備の温排水を利用して屋根の雪を溶解するシステムが記載されている。
【特許文献1】特開平11−350445号公報
【特許文献2】特開平08−302638号公報
【特許文献3】登録実用新案第3032661号明細書
【特許文献4】特開2004−137727号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
寒冷地において、冬季の工場内の積雪量は膨大となるが、場外へ移送するには多大な費用が生じる。これをボイラー等の熱源を利用して工場内で融雪する対策も考えられるが、設備費や燃料費が発生してしまう。一方で、冬季でも28℃×2500m3/日の排水が工場内から発生しそのまま下水道に放流されている。
【0004】
本発明は、上記課題に鑑みてなされ、その目的は、温排水を利用することで新たな熱源を不要とし、温排水の流量を確保して融雪の効率化が図れる融雪装置を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の課題を解決し、目的を達成するため、本発明に係る融雪装置10は、温排水を供給する供給管11と、前記供給管に接続されて、前記温排水により槽内の雪を溶解する融雪槽13と、前記融雪槽に接続されて前記融雪槽内で溶解された融雪水を下水道に排出する排出管15と、を有し、前記融雪槽は、地上から槽内に雪を搬入する開口部16と、地下において前記供給管から前記排出管に向けて鉛直上方に傾斜する底部17と、前記底部の周囲に立設された側壁部18と、を有する。
【0006】
また、好ましくは、前記供給管と前記排出管とは略同じ高さに配置され、前記開口部には、格子状のカバー部材19,20が配置され、前記融雪槽における前記排出管の近傍には、格子状の仕切り部材21が配置されている。
【0007】
また、好ましくは、前記開口部の地上側には、雪を投入するために外部からのアクセスを可能とする開閉扉22を有する建屋23が設置されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、工場内からの放流水を融雪に利用することで、新たな熱源が不要となり、融雪槽の底部を傾斜させることで温排水の流速を高め、所定の流量を確保できるので溶解時間を短縮し、融雪の効率化が図れる融雪装置を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に、本発明の実施の形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
尚、以下に説明する実施の形態は、本発明の実現手段としての一例であり、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で下記実施形態を修正又は変形したものに適用可能である。
【0010】
図1は、本発明に係る実施形態の融雪装置を含むシステム全体の概略図である。図2は、本発明に係る実施形態の融雪装置の断面図(a)及び(a)のi−i断面図(b)である。図3は、図2(a)のii−ii断面図(a)及びiii−iii断面図(b)である。図4は、本実施形態の融雪装置の建屋の正面図である。
【0011】
本実施形態の融雪装置10は、工場内に設置された廃液処理槽1から放流される温排水(従来は下水道に直接放流される)を融雪に利用することで新たな熱源を不要とし、更に後述するように融雪槽の底部を排水管に向けて上方に傾斜させたことで、温排水が一定量流れるようにして融雪の効率化を図るものである。
【0012】
具体的には、図1乃至図4に示すように、本実施形態の融雪装置10は、廃液処理槽1で処理された温排水を供給する供給管11と、この供給管11に連通する供給口12と、供給口12から槽内に導入される温排水により槽内の雪を溶かす融雪槽13と、排出口14と、排出口14に連通し融雪槽13内で融雪された融雪水を下水道に排出する排出管15と、を有する。
【0013】
上記融雪槽13は、除雪車等により地上から槽内に雪を搬入する開口部16と、地下において上記供給管11から上記排出管15に向けて鉛直上方に傾斜する底部17と、上記底部17の周囲に立設された側壁部18と、を有する。
【0014】
上記廃液処理槽1は、地面と略同等かそれ以上の高さの位置に設置されている。
【0015】
また、融雪装置10の開口部16は地面より低い位置に位置し、底部17は開口部16より更に低い位置に位置している。
【0016】
上記供給管11と排出管15とはバルブ等で開閉及び開度調整が可能となっており、冬季の積雪時には開成され、夏季時には閉成される。また、廃液処理槽1は不図示の配管により下水道に直接接続されており、積雪のない夏季時には融雪装置10を介在せずに温排水が下水道に流れるように構成されている。
【0017】
上記融雪槽13は4〜8m3程度の容積を有し、その底部17の傾斜面は廃液処理槽1から下水道まで自然落差で最大170m3/hの流量が確保できるような1/50程度の勾配を有する。また、融雪槽13の供給口12側(上流側)の底部には、傾斜面から500mm程度の段差を持つ溝部17aが形成されている。即ち、上記底部17の傾斜面によって、除雪の際に雪に含まれていた泥等が融雪槽13の上流側の溝部17aにとどまり、融雪水と一緒に排出口14から流出しないように構成されている。尚、上記溝部17aに溜まった泥等は定期的に清掃により除去される。
【0018】
上記融雪槽13の開口部16には、格子状のカバー部材19,20が配置されている。また、融雪槽13の下流側の排出口14近傍には、ゴミ取り用の格子状の仕切り部材21が配置されている。上記供給口12は上記カバー部材19より高い位置に配置され、上記排出口14と略同じ高さに配置されている。
【0019】
上記開口部16の地上側には、除雪車等により開口部に雪を投入するために外部からのアクセスを可能とするシャッター等の開閉扉22を有する屋根付きの建屋23が設置されている。
【0020】
尚、本実施形態の融雪装置10は下水道に放流する際の地方自治体の基準を満足している。
【0021】
上記融雪槽13の流路断面は、最適な溶解時間/リットルが得られる流速と流量(170m3/h)から決定される。
【0022】
また、廃液処理槽1は、60m3程度の容積を有し、槽内の液面tは3m〜7m程度で変化する。また、廃液処理槽1の出口1aと融雪槽13の供給口12との高低差は約1m程度、距離は50〜70mである。また、融雪槽13の排出口14から下水道までの距離(排水管の長さ)は110〜140m程度である。
【0023】
上記実施形態によれば、廃液処理槽1から放流される温排水を融雪に利用することで、新たな熱源が不要となる。また、排出口14に近づくほど流路断面が小さくなるように融雪槽13の底部17を傾斜させることで温排水の流速を高め、所定の流量を確保して溶解時間を短縮し、融雪の効率化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る実施形態の融雪装置を含むシステム全体の概略図である。
【図2】本発明に係る実施形態の融雪装置の断面図(a)及び(a)のi−i断面図(b)である。
【図3】図2(a)のii−ii断面図である。
【図4】本実施形態の融雪装置の建屋の正面図である。
【符号の説明】
【0025】
1 廃液処理槽
10 融雪装置
11 供給管
12 供給口
13 融雪槽
14 排出口
15 排出管
16 開口部
17 底部
18 側壁部
19,20 カバー部材
21 仕切り部材
22 開閉扉
23 建屋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温排水を供給する供給管と、
前記供給管に接続されて、前記温排水により槽内の雪を溶解する融雪槽と、
前記融雪槽に接続されて前記融雪槽内で溶解された融雪水を下水道に排出する排出管と、を有し、
前記融雪槽は、地上から槽内に雪を搬入する開口部と、地下において前記供給管から前記排出管に向けて鉛直上方に傾斜する底部と、前記底部の周囲に立設された側壁部と、地上から槽内に雪を搬入する開口部と、を有することを特徴とする融雪装置。
【請求項2】
前記供給管と前記排出管とは略同じ高さに配置され、
前記開口部には、格子状のカバー部材が配置され、
前記融雪槽における前記排出管の近傍には、格子状の仕切り部材が配置されていることを特徴とする請求項1に記載の融雪装置。
【請求項3】
前記開口部の地上側には、雪を投入するために外部からのアクセスを可能とする開閉扉を有する建屋が設置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の融雪装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−13752(P2009−13752A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−180136(P2007−180136)
【出願日】平成19年7月9日(2007.7.9)
【出願人】(000000055)アサヒビール株式会社 (535)
【Fターム(参考)】