説明

螺子締結構造

【課題】螺子回しにて雌螺子と雄螺子とを螺子締結する螺子締結構造において、一度の螺子締結を強固にするにあたって、構造の簡単化を図って螺子締結のコストの安価とする。
【解決手段】挿し込み軸41は、挿し込み孔35の内部開口部37から雌螺子孔22の内部の雌螺子山23の周面から突き出すようになっている。挿し込み部材40は、雌螺子21および雄螺子15を形成する材料よりも軟質のプラスチック樹脂を材料とする成形品であるナット20に対して雄螺子部材11を締結完了する際、挿し込み部材40の内部先端43側を雄螺子15の雄螺子山16に当てて変形させる。ここで、変形した挿し込み部材40の内部先端43側は、雄螺子山16と雌螺子山23との間に入り込ませて雄螺子山16と雌螺子山23との間の摩擦力を増大させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、螺子回しにて雌螺子と雄螺子とを螺子締結する螺子締結構造に関し、詳しくは、雌螺子と雄螺子との締結状態を強固な締結状態とすることができる螺子締結構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば雌螺子が切られたナットに対して雄螺子が切られたボルトを螺子回しにて締結する螺子締結構造が知られている。このような螺子締結構造では、ナット(雌螺子)の螺子山とボルト(雄螺子)の螺子山とが噛み合わされて螺子回しされる。このように螺子回しをしていくと、ナットに対してボルトが嵌り込んでいくように入り込んでいき、やがてナットとボルトとの互いの対向面同士は面当接することとなる。ここでさらに、ナットとボルトとの互いの対向面士を面当接させた状態で螺子回しすると、ナットの螺子山とボルトの螺子山との噛合いに摩擦力が生じる。そして、これら螺子山の間の摩擦力が規定以上の摩擦力となると、ナットに対してボルトが外れてしまわない螺子締結状態となる。
このような螺子締結構造にあっては、ナットに対するボルトの螺子締結を、さらに強固な螺子締結としておきたいという要請がある。このような要請に対し、下記特許文献1および下記特許文献2では、ボルトの螺子山外周面に介装部材により当り力を発生させる螺子締結構造が開示されている。このような開示される技術では、ボルトの螺子回しにより介装部材にてボルトの外周面に向けて当り力を発生させており、これらの間の摩擦力を向上させてナットに対するボルトの螺子締結を強固にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭58−156712号公報
【特許文献2】特開2008−309202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、上記した開示される技術にあっては、上記した介装部材の構成を互いに螺子締結するナットとボルトに対応した構成とする必要がある。このため、種々のナットとボルトに対応するように介装部材の構造を複雑化させてしまい、螺子締結のコストが高価なものとなってしまう問題が生じていた。このため、ナットに対するボルトの螺子締結を強固する構造の簡単化を図り、螺子締結のコストを安価にしたいという要請がある。
他方、上記した螺子締結にあっては、螺子締結をした後には、螺子締結を外す必要が無いものがある。さらに言えば、上記した螺子締結にあっては、螺子締結を一度した後に該螺子締結を外した場合には、該螺子締結が一度されていた証拠が残るようにしておきたいものもある。このため、螺子締結を一度した後には、該螺子締結を外して再び螺子締結できるように構成するよりも、この一度の螺子締結を強固な螺子締結とするように構成しておきたい。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであって、本発明が解決しようとする課題は、螺子回しにて雌螺子と雄螺子とを螺子締結する螺子締結構造において、一度の螺子締結を強固にするにあたって、構造の簡単化を図って螺子締結のコストの安価とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題を解決するにあたって本発明に係る螺子締結構造は次の手段を採用する。
すなわち、本発明の第1の発明に係る螺子締結構造は、雌螺子を具備する雌螺子部材に対して該雌螺子と螺合する雄螺子を具備する雄螺子部材を螺子回しにて、該雌螺子と該雄螺子とを螺子締結する螺子締結構造であって、前記雌螺子部材には、前記雌螺子孔の開口周辺の前記雄螺子部材と対向する外部対向面に設けられた外部開口部と、前記雌螺子孔の内部の雌螺子山の周面に設けられた内部開口部とを通じさせることにより、該雌螺子孔の内外を連通する挿し込み孔が配設されており、前記挿し込み孔には、前記外部開口部と前記内部開口部との間の長さよりも長い長さに設定される挿し込み部材が挿し込まれるようになっており、前記挿し込み部材は、螺子回しにより該雌螺子部材に対して変位する該雄螺子部材の変位量に要因して該挿し込み部材の外部基端側が該雄螺子部材側から押されることにより、前記外部開口部から前記内部開口部に向けて押し込まれるようになっており、前記雌螺子部材に対して前記雄螺子部材を締結完了する際、前記外部開口部から前記内部開口部に向けた前記挿し込み部材の内部先端側の押し込みにより、該挿し込み部材の該内部先端側または前記雄螺子の前記雄螺子山の少なくともいずれか一方を変形させて、嵌め合い状態となっている前記雌螺子の前記雌螺子山と前記雄螺子の雄螺子山との間の隙間を無くすように作用することを特徴とする。
【0007】
この第1の発明に係る螺子締結構造によれば、雌螺子部材に対して雄螺子部材を締結完了する際、挿し込み部材の内部先端側または雄螺子の雄螺子山の少なくともいずれか一方を変形させて、嵌め合い状態となっている雌螺子の雌螺子山と雄螺子の雄螺子山との間の隙間を無くすように作用する。これによって、雌螺子に対する雄螺子の相対移動を抑制もしくは規制することができ、雌螺子と雄螺子との螺子締結を強固なものとすることができる。また、この螺子締結を強固にするにあたっては、従前の螺子締結構造に対して、雌螺子部材に挿し込み孔を配設するとともに、この挿し込み孔に挿し込む挿し込み部材を用意するだけで構成することができる。また、これら挿し込み孔および挿し込み部材の形状については、互いに単純な形状にて構成される。なお、挿し込み部材の内部先端側の変形は復元不可の塑性変形であるため、螺子締結を強固するにあたって一度きりの螺子締結構造となる。
もって、この第1の発明に係る螺子締結構造によれば、螺子回しにて雌螺子と雄螺子とを螺子締結する螺子締結構造において、一度の螺子締結を強固にするにあたって、構造の簡単化を図って螺子締結のコストの安価とすることができる。
【0008】
第2の発明に係る螺子締結構造は、前記第1の発明に係る螺子締結構造において、前記挿し込み部材は、前記雌螺子および前記雄螺子を形成する材料よりも軟質の材料が選択されて成形されており、前記雌螺子部材に対して前記雄螺子部材を締結完了する際、前記外部開口部から前記内部開口部に向けて押し込まれた前記挿し込み部材の内部先端側は、前記雄螺子の雄螺子山に当てられることにより自身が変形して、該雄螺子山と前記雌螺子山との間に隙間に入り込んで、該雄螺子山と前記雌螺子山との間の摩擦力を増大させることを特徴とする。
この第2の発明に係る螺子締結構造によれば、雌螺子部材に対して雄螺子部材を締結完了する際、挿し込み部材の内部先端側を雄螺子の雄螺子山に当てて変形させる。ここで、変形した挿し込み部材の内部先端側は、雄螺子山と雌螺子山との間に入り込ませて雄螺子山と雌螺子山との間の摩擦力を増大させる。ここで挿し込み部材の内部先端側は、雌螺子および雄螺子を形成する材料よりも軟質であるので、螺子締結を一度した後に該螺子締結を外して再び螺子締結する場合であっても、雄螺子山および雌螺子山を破壊することなく、この螺子締結を外すことができる。もって、この第2の発明に係る螺子締結構造によれば、上記した第1の発明に係る作用効果を奏することができながら、螺子締結を一度した後でも該螺子締結を外して再び螺子締結することができる。さらに言えば、雄螺子山と雌螺子山との間に入り込んだ挿し込み部材の内部先端側は、螺子締結を一度した後に該螺子締結を外した場合に、螺子締結が一度されていた証拠として、挿し込み部材の一部を雄螺子山と雌螺子山との間に入り込んだままで残すことができる。
【0009】
第3の発明に係る螺子締結構造は、前記第1の発明に係る螺子締結構造において、前記挿し込み部材は、前記雌螺子および前記雄螺子を形成する材料よりも同等もしくは硬質の材料が選択されて成形されており、前記雌螺子部材に対して前記雄螺子部材を締結完了する際、前記外部開口部から前記内部開口部に向けて押し込まれた前記挿し込み部材の内部先端側は、前記雄螺子の雄螺子山に当てられることにより該雄螺子山を変形させて、該雄螺子山の前記雌螺子山に対する相対移動が可能な状態から該相対移動が不可な状態となるように、該雄螺子山の前記雌螺子山に対する嵌め合い状態を壊すことを特徴とする。
この第3の発明に係る螺子締結構造によれば、雌螺子部材に対して雄螺子部材を締結完了する際、押し込まれた挿し込み部材の内部先端側は、雄螺子の雄螺子山に当てられることにより雄螺子山を変形させる。ここで、変形した雄螺子山は、雄螺子山の雌螺子山に対する嵌め合い状態を壊して、雄螺子山の雌螺子山に対する相対移動が可能な状態から相対移動が不可な状態となる。ここで挿し込み部材の内部先端側は、雌螺子および雄螺子を形成する材料よりも同等もしくは硬質であるので、螺子締結を一度した後には該螺子締結を外すことができないほどに強固に螺子締結することができる。もって、この第3の発明に係る螺子締結構造によれば、上記した第1の発明に係る作用効果を奏することができながら、より強固な螺子締結とすることができる。
【0010】
第4の発明に係る螺子締結構造は、前記第1から前記第3のいずれかの発明に係る螺子締結構造において、前記挿し込み部材の前記外部基端側には、前記雄螺子部材側から押される押圧力を面で受ける押圧受け面が設けられていることを特徴とする。
この第4の発明に係る螺子締結構造によれば、挿し込み部材の外部基端側には、雄螺子部材側から押される押圧力を面で受ける押圧受け面が設けられているので、外部開口部から内部開口部に向けて挿し込み部材を押し込むにあたって雄螺子部材側からの押圧力を面で受けることができる。これによって、雄螺子部材側から受ける挿し込み部材への押圧力の荷重を面で受けることができるようになり、外部開口部から内部開口部に向けた押し込む挿し込み部材の押し込みを効率の良い押し込みとすることができる。
【発明の効果】
【0011】
第1の発明に係る螺子締結構造によれば、螺子回しにて雌螺子と雄螺子とを螺子締結する螺子締結構造において、一度の螺子締結を強固にするにあたって、構造の簡単化を図って螺子締結のコストの安価とすることができる。
第2の発明に係る螺子締結構造によれば、螺子締結を一度した後でも該螺子締結を外して再び螺子締結することができる。
第3の発明に係る螺子締結構造によれば、より強固な螺子締結とすることができる。
第4の発明に係る螺子締結構造によれば、外部開口部から内部開口部に向けた押し込む挿し込み部材の押し込みを効率の良い押し込みとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】螺子締結構造をなすナットを裏面側から視た斜視図である。
【図2】図1において挿し込み部材を挿し込んだ状態を示す斜視図である。
【図3】図1の螺子締結途中時における螺子締結構造の断面を示す断面図である。
【図4】図3の後の締結完了時における螺子締結構造の断面を示す断面図である。
【図5】螺子締結構造をなすフロアを上面側から視た斜視図である。
【図6】図5において挿し込み部材を挿し込んだ状態を示す斜視図である。
【図7】図5の螺子締結途中時における螺子締結構造の断面を示す断面図である。
【図8】図7の後の締結完了時における螺子締結構造の断面を示す断面図である。
【図9】第3の実施の形態となる螺子締結構造の断面を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[第1の実施の形態]
次に図1〜図4を参照しながら、本発明に係る螺子締結構造を実施するための形態について説明する。なお、図1は、螺子締結構造10をなすナット20を裏面側から視た斜視図である。図2は、図1において挿し込み部材40を挿し込んだ状態を示す斜視図である。図3は、図1の螺子締結途中時における螺子締結構造10の断面を示す断面図である。図4は、図3の後の締結完了時における螺子締結構造10の断面を示す断面図である。なお、図4は、図2におけるIV−IV断面矢視を図示している。また、図1および図2に示すナット20は、挿し込み部材40の配設を分かり易くするために、表裏を反対にして図示している。このため、図1および図2に示すナット20は、裏面側から見えるように示されている。
【0014】
図1に示すように、螺子締結構造10は、雄螺子15を具備する雄螺子部材11に対して雌螺子21を具備するナット20を螺合させる構造となっている。つまり、螺子締結構造10では、雄螺子部材11に対してナット20を螺子回しにて、雄螺子15に対して雌螺子21を螺子締結させている。なお、ナット20は、本発明に係る雌螺子部材に相当する。また、雌螺子21と雄螺子15とは、螺合可能な対応関係にて構成されている。
雄螺子部材11は、図3および図4にも示すように、取付面12から上側に突き出すように雄螺子15が設けられている。この雄螺子15の外周面には、雄螺子山16が設けられている。この雄螺子山16は、雌螺子21の雌螺子山23と噛合う関係に、互いは成形されている。
図1および図2に示すように、ナット20には、雌螺子21をなす雌螺子孔22が設けられている。ここで、雄螺子部材11と対向する外部対向面25のうち、雌螺子孔22の開口周辺には、後に説明する挿し込み部材40を配設するための挿し込み部位30が設けられている。この挿し込み部位30は、後に説明する挿し込み部材40の基端壁45に対応した形状にて形成されている。具体的には、この挿し込み部位30は、上記した雄螺子部材11と対向する面となる外部対向面25から一段下げられるように、外部対向面25から一段窪んだ段差形状を有して形成されている。このため、この挿し込み部位30のうちの雌螺子孔22周方向(雌螺子孔22径方向と交差する方向)には、外部対向面25から一段下げられたために形成された段差壁31a,31bを備える。
【0015】
この挿し込み部位30には、挿し込み孔35の外部開口部36が設けられている。この外部開口部36は、外部対向面25から一段下がった雌螺子孔22の開口周辺に設けられている。この外部開口部36は、図3および図4にも示すように、雌螺子孔22の内部の雌螺子山23の周面に設けられた内部開口部37とを通じさせることにより、雌螺子孔22の内外を連通する挿し込み孔35を形成する。このため、挿し込み孔35は、ナット20に対して、外部対向面25の面延在方向に対して傾斜した角度を有して設けられている。この挿し込み孔35には、挿し込み部材40が挿し込まれる。この挿し込み孔35の孔径は、次に説明する挿し込み部材40が挿入可能な、挿し込み部材40の軸径よりも長い径に設定されている。
挿し込み部材40は、図1〜図4に示すように、挿し込み部材40は、基端側から先端側にかけて軸形状に形成される挿し込み軸41と、この挿し込み軸41の基端側に平板形状に形成される基端壁45とを備える。この挿し込み部材40は、雌螺子21および雄螺子15を形成する材料よりも軟質のプラスチック樹脂を材料とする、挿し込み軸41と基端壁45とを一体成形した成形品となっている。
【0016】
挿し込み軸41は、上記した挿し込み孔35に挿入可能な軸形状にて形成され、挿し込み孔35に対する挿し込み方向に対応して外部基端42および内部先端43が規定されている。この挿し込み軸41は、挿し込み孔35の長さよりも長い長さにて設定されている。つまり、挿し込み軸41は、挿し込み孔35を形成する、外部開口部36と内部開口部37との間の長さよりも長い長さに設定されている。基端壁45は、挿し込み軸41の軸延在方向と傾斜交差方向に延在する平板形状にて形成されている。基端壁45の平板形状としては、上記した挿し込み部位30の窪み形状に対応した形状にて形成されている。このため図4に示すように、基端壁45が挿し込み部位30に嵌る際には、基端壁45は、雌螺子孔22周方向(雌螺子孔22径方向と交差する方向)において段差壁31a,31bと対向する壁面形状を有して形成されている。また同様に、基端壁45が挿し込み部位30に嵌る際には、基端壁45は、ナット20の側面26と面一となる壁面形状を有して形成されるとともに、ナット20の外部対向面25と面一となる壁面形状を有して形成されている。なお、この挿し込み部材40の外部基端側に設けられた基端壁45の外面は、雄螺子部材11側から押される押圧力を面で受ける押圧受け面46に設定されている。
【0017】
このように形成された挿し込み部材40は、図4に示すように基端壁45が挿し込み部位30に嵌る際は、挿し込み軸41は、挿し込み孔35の内部開口部37から、雌螺子孔22の内部の雌螺子山23の周面から突き出すようになっている。つまり、螺子回しによりナット20に対して変位する雄螺子部材11の変位量に要因して、図3から図4に図示変化するように、挿し込み部材40は、挿し込み部材40の外部基端側の押圧受け面46が雄螺子部材11側から押されることにより、外部開口部36から内部開口部37に向けて押し込まれるようになっている。具体的には、螺子回しによりナット20に対して雄螺子部材11が変位していくと、上記した基端壁45の押圧受け面46に雄螺子部材11の取付面12が当たり、さらなる螺子回しによりナット20に対して雄螺子部材11が変位していくと、挿し込み部材40は、外部開口部36から内部開口部37に向けて押し込まれる。
ここでナット20に対して雄螺子部材11を締結完了する際、外部開口部36から内部開口部37に向けて押し込まれた挿し込み部材40の内部先端43側は、雄螺子15の雄螺子山16に当たることとなる。ここで、雄螺子15の雄螺子山16に当てられた挿し込み部材40の内部先端43側は、螺子回しされる雄螺子15の雄螺子山16と、外部開口部36から内部開口部37に向けて押し込まれる挿し込み部材40の押圧力により変形する。つまり挿し込み部材40の内部先端43側は、この内部先端43側の変形によって雄螺子山16と雌螺子山23との間に入り込むこととなる。そうすると、雄螺子山16と雌螺子山23との間に入り込んだ挿し込み部材40の内部先端43は、雄螺子山16と雌螺子山23と嵌め合い隙間を埋めるように作用して、これら雄螺子山16と雌螺子山23と嵌め合いにおける摩擦力を増大させる。
【0018】
上記した螺子締結構造10によれば、ナット20に対して雄螺子部材11を締結完了する際、挿し込み部材40の内部先端43側を変形させて、嵌め合い状態となっている雌螺子21の雌螺子山23と雄螺子15の雄螺子山16との間の隙間を無くすように作用する。つまり、ナット20に対して雄螺子部材11を締結完了する際、挿し込み部材40の内部先端43側を雄螺子15の雄螺子山16に当てて変形させる。ここで、変形した挿し込み部材40の内部先端43側は、雄螺子山16と雌螺子山23との間に入り込ませて雄螺子山16と雌螺子山23との間の摩擦力を増大させる。これによって、この雌螺子15と雄螺子21とを螺子締結を強固にすることができる。ここで挿し込み部材40の内部先端側は、雌螺子21および雄螺子15を形成する材料よりも軟質であるので、螺子締結を一度した後に該螺子締結を外して再び螺子締結する場合であっても、雄螺子山16および雌螺子山23を破壊することなく、この螺子締結を外すことができる。
また、この螺子締結を強固にするにあたっては、従前の螺子締結構造に対して、ナット20に挿し込み孔35を配設するとともに、この挿し込み孔35に挿し込む挿し込み部材40を用意するだけで構成することができる。また、挿し込み孔35および挿し込み部材40の形状については、互いに単純な形状にて構成される。なお、挿し込み部材40の内部先端43側の変形は復元不可の塑性変形であるため、螺子締結を強固するにあたって一度きりの螺子締結構造となる。もって、上記した螺子締結構造10によれば、一度の螺子締結を強固にするにあたって、構造の簡単化を図って螺子締結のコストの安価とすることができる。
また、上記した螺子締結構造10によれば、挿し込み部材40は雌螺子21および雄螺子15を形成する材料よりも軟質のプラスチック樹脂であるので、螺子締結を一度した後に該螺子締結を外して再び螺子締結する場合であっても、雄螺子山16および雌螺子山23を破壊することなく、この螺子締結を外すことができる。もって、螺子締結を一度した後でも該螺子締結を外して再び螺子締結することができる。さらに言えば、雄螺子山16と雌螺子山23との間に入り込んだ挿し込み部材40の内部先端43側は、螺子締結を一度した後に該螺子締結を外した場合に、螺子締結が一度されていた証拠として、挿し込み部材40の一部を雄螺子山16と雌螺子山23との間に入り込んだままで残すことができる。
また、上記した螺子締結構造10によれば、挿し込み部材40の外部基端42側には、雄螺子部材11側から押される押圧力を面で受ける押圧受け面46が設けられているので、外部開口部36から内部開口部37に向けて挿し込み部材40を押し込むにあたって雄螺子部材11の取付面12からの押圧力を面で受けることができる。これによって、雄螺子部材11側から受ける挿し込み部材40への押圧力の荷重を面で受けることができるようになり、外部開口部36から内部開口部37に向けた押し込む挿し込み部材40の押し込みを効率の良い押し込みとすることができる。
【0019】
[第2の実施の形態]
次に図5〜図8を参照しながら、上記した第1の実施の形態とは相違する場面で実施される本発明に係る螺子締結構造を実施するための形態について説明する。なお、図5は、螺子締結構造10Aをなすフロア70を上面側から視た斜視図である。図6は、図5において挿し込み部材40を挿し込んだ状態を示す斜視図である。図7は、図5の螺子締結途中時における螺子締結構造10Aの断面を示す断面図である。図8は、図7の後の締結完了時における螺子締結構造10Aの断面を示す断面図である。なお、図8は、図6におけるVIII−VIII断面矢視を図示している。
この第2の実施の形態の螺子締結構造10Aは、上記した第1の実施の形態とは実施される場面が相違するものであり、大略、上記した第1の実施の形態と同様に構成される。つまり、図5および図6に示すように、この第2の実施の形態の螺子締結構造10Aにおいての本発明に係る雌螺子部材は、フロア70に雌螺子71が設けられていることにより構成されている。また、この第2の実施の形態では、本発明に係る雄螺子部材は、床面となるフロア70に雌螺子71に螺合する雄螺子65を具備するボルト61により構成されている。なお、この第2の実施の形態の雌螺子部材に相当するフロア70は、第1の実施の形態にて説明した挿し込み部位30が設けられていない点に関して、第1の実施の形態の雌螺子部材に相当するナット20と相違する。また、この第2の実施の形態の雄螺子部材に相当するボルト61は、第1の実施の形態の雄螺子部材11を小型化した構成となり相違する。
このため、この螺子締結構造10Aでは、上記した雄螺子部材11としてボルト61が代替構成される。つまり、上記した取付面12として取付面62が、雄螺子15として雄螺子65が、雄螺子山16として雄螺子山66が、代替構成されている。また、この螺子締結構造10Aでは、上記したナット20としてフロア70が代替構成される。つまり、上記した雌螺子21として雌螺子71が、雌螺子孔22として雌螺子孔72が、雌螺子山23として雌螺子山73が、外部対向面25として外部対向面75が、挿し込み孔35として挿し込み孔85が、外部開口部36として外部開口部86が、内部開口部37として内部開口部87が、代替構成される。なお、この螺子締結構造10Aの挿し込み部材40に関しては、上記したこの螺子締結構造10の挿し込み部材40と同一に構成されている。
【0020】
[第3の実施の形態]
次に図9を参照しながら、上記した第1の実施の形態とは相違する本発明に係る螺子締結構造を実施するための形態について説明する。なお、図9は、第3の実施の形態となる螺子締結構造10Bの断面を示す断面図である。
この第3の実施の形態の螺子締結構造10Bは、上記した第1の実施の形態とは挿し込み部材40に関する材料だけが相違するものであり、その他の構成については上記した第1の実施の形態と同様に構成される。つまり、第3の実施の形態の螺子締結構造10Bにおける挿し込み部材40Bは、雌螺子21および雄螺子15を形成する材料よりも同等もしくは硬質の材料が選択されて成形されている。具体的には、挿し込み部材40Bは、雌螺子21および雄螺子15をなす金属よりも同等もしくは硬い金属を材料にして成形されている。このため、図9における第3の実施の形態の螺子締結構造10Bでは、挿し込み部材40Bに関する符号について第1の実施の形態の挿し込み部材40の符号末尾に‘B’を付加してある。また、その他の構成については、上記した第1の実施の形態と同一の符号を付している。
この第3の発明に係る螺子締結構造によれば、挿し込み部材40Bに関する材料が相違することにより、上記した第1の実施の形態とは相違する次のような作用効果を奏することができる。すなわち、図9に示すように、ナット20に対して雄螺子部材11を締結完了する際、外部開口部36から内部開口部37に向けて押し込まれた挿し込み部材40Bの内部先端43B側は、雄螺子15の雄螺子山16に当てられることにより雄螺子山16を変形させている。これにより、雄螺子山16の雌螺子山23に対する相対移動が可能な状態から相対移動が不可な状態となるように、雄螺子山16の雌螺子山23に対する嵌め合い状態を壊すこととなっている。つまり、図9の丸抜き拡大図に示すように、雄螺子山16のピッチが雌螺子山23のピッチと嵌合しない程度に、雄螺子山16が曲げ潰されている。これによって、ナット20に対して雄螺子部材11を締結完了する際、押し込まれた挿し込み部材40Bの内部先端43B側は、雄螺子15の雄螺子山16に当てられることにより雄螺子山16を変形させる。ここで、変形した雄螺子山16は、雄螺子山16の雌螺子山16に対する嵌め合い状態を壊して、雄螺子山16の雌螺子山23に対する相対移動が可能な状態から相対移動が不可な状態となる。ここで挿し込み部材40Bの内部先端43B側は、雌螺子23および雄螺子16を形成する材料よりも同等もしくは硬質であるので、螺子締結を一度した後には該螺子締結を外すことができないほどに強固に螺子締結することができる。もって、この螺子締結構造10Bによれば、より強固な螺子締結とすることができる。
【0021】
なお、本発明に係る螺子締結構造にあっては、上記した実施の形態に限定されるものではなく、次のように適宜個所を変更して構成するようにしてもよい。
すなわち、上記した実施の形態における挿し込み部材40は、雌螺子15,65および雄螺子21,71を形成する材料よりも軟質のプラスチック樹脂を材料として成形するものであった。しかしながら、本発明に係る挿し込み部材の材料としては、これに限定されることなく、雌螺子15,65および雄螺子21,71を形成する材料よりも軟質の金属を材料として成形するものであってもよい。
また、上記した実施の形態における挿し込み部材40の外部基端42側には、雄螺子部材11(61)側から押される押圧力を面で受ける押圧受け面46が設けられるものであた。しかしながら、本発明に係る挿し込み部材の外部基端側としては、これに限定されることなく、上記した押圧受け面46を具備する基端壁45が設けられることなく、挿し込み軸41のみの形状となる挿し込み部材40にて構成されるものであってもよい。
【符号の説明】
【0022】
10,10A,10B 螺子締結構造
11 雄螺子部材
12 取付面
15 雄螺子
16 雄螺子山
20 ナット(雌螺子部材)
21 雌螺子
22 雌螺子孔
23 雌螺子山
25 外部対向面
26 側面
30 挿し込み部位
31a,31b 段差壁
35 挿し込み孔
36 外部開口部
37 内部開口部
40 挿し込み部材
41 挿し込み軸
42 外部基端
43 内部先端
45 基端壁
46 押圧受け面
61 ボルト(雄螺子部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
雌螺子を具備する雌螺子部材に対して該雌螺子と螺合する雄螺子を具備する雄螺子部材を螺子回しにて、該雌螺子と該雄螺子とを螺子締結する螺子締結構造であって、
前記雌螺子部材には、前記雌螺子孔の開口周辺の前記雄螺子部材と対向する外部対向面に設けられた外部開口部と、前記雌螺子孔の内部の雌螺子山の周面に設けられた内部開口部とを通じさせることにより、該雌螺子孔の内外を連通する挿し込み孔が配設されており、
前記挿し込み孔には、前記外部開口部と前記内部開口部との間の長さよりも長い長さに設定される挿し込み部材が挿し込まれるようになっており、
前記挿し込み部材は、螺子回しにより該雌螺子部材に対して変位する該雄螺子部材の変位量に要因して該挿し込み部材の外部基端側が該雄螺子部材側から押されることにより、前記外部開口部から前記内部開口部に向けて押し込まれるようになっており、
前記雌螺子部材に対して前記雄螺子部材を締結完了する際、前記外部開口部から前記内部開口部に向けた前記挿し込み部材の内部先端側の押し込みにより、該挿し込み部材の該内部先端側または前記雄螺子の前記雄螺子山の少なくともいずれか一方を変形させて、嵌め合い状態となっている前記雌螺子の前記雌螺子山と前記雄螺子の雄螺子山との間の隙間を無くすように作用することを特徴とする螺子締結構造。
【請求項2】
請求項1に記載の螺子締結構造において、
前記挿し込み部材は、前記雌螺子および前記雄螺子を形成する材料よりも軟質の材料が選択されて成形されており、
前記雌螺子部材に対して前記雄螺子部材を締結完了する際、前記外部開口部から前記内部開口部に向けて押し込まれた前記挿し込み部材の内部先端側は、前記雄螺子の雄螺子山に当てられることにより自身が変形して、該雄螺子山と前記雌螺子山との間に隙間に入り込んで、該雄螺子山と前記雌螺子山との間の摩擦力を増大させることを特徴とする螺子締結構造。
【請求項3】
請求項1に記載の螺子締結構造において、
前記挿し込み部材は、前記雌螺子および前記雄螺子を形成する材料よりも同等もしくは硬質の材料が選択されて成形されており、
前記雌螺子部材に対して前記雄螺子部材を締結完了する際、前記外部開口部から前記内部開口部に向けて押し込まれた前記挿し込み部材の内部先端側は、前記雄螺子の雄螺子山に当てられることにより該雄螺子山を変形させて、該雄螺子山の前記雌螺子山に対する相対移動が可能な状態から該相対移動が不可な状態となるように、該雄螺子山の前記雌螺子山に対する嵌め合い状態を壊すことを特徴とする螺子締結構造。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の螺子締結構造において、
前記挿し込み部材の前記外部基端側には、前記雄螺子部材側から押される押圧力を面で受ける押圧受け面が設けられていることを特徴とする螺子締結構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−219987(P2012−219987A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−89281(P2011−89281)
【出願日】平成23年4月13日(2011.4.13)
【出願人】(000227711)日邦産業株式会社 (29)