説明

血中エタノール濃度を減少させるための黒糖醗酵生産物

【課題】飲酒の危険性を減少させるために、血中エタノール濃度を迅速に減少させることができる組成物を提供する。
【解決手段】本発明は、黒糖を原料として醗酵させた醗酵生産物を含む、血中アルコール濃度を減少させるための飲食用組成物を提供する。黒糖をAspergillus nigerに醗酵させた醗酵液は、予想外に顕著かつ迅速に、血中エタノール濃度を減少させる効果を奏する。本発明は、このような醗酵液を含む飲食用組成物、サプリメントまたは飲食用補填物などを提供する。これらの組成物は、アルコール摂取の前、アルコール摂取と同時、またはアルコール摂取の後に使用され、個体における血中アルコール濃度の減少を促進する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血中エタノール濃度を減少させるための飲食用組成物、サプリメント、または飲食用補填物に関する。本発明の飲食用組成物、サプリメント、または飲食用補填物は、黒糖を原料として醗酵させた醗酵生産物を含む。
【背景技術】
【0002】
通常、飲酒により、アルコール(エタノール)が主に胃および腸から吸収される。吸収されたエタノールの95%は肝臓において代謝され、5%は呼気、尿、汗などによって放出される。ヒトを含む哺乳動物では、摂取されたエタノールは主に肝臓にあるアルコール脱水素酵素により酸化されてアセトアルデヒドとなる。さらに、ミトコンドリアに存在するアルデヒド脱水素酵素によって酢酸となり、TCA回路により代謝される。
【0003】
エタノールを摂取するとヒトを含む哺乳動物は「酔う」。「酔い」は、エタノールの中枢神経系の抑制に起因する。「酔い」には、血中エタノール濃度が高くなるのに従って、一般的に、「ほろ酔い」、「酩酊」、「泥酔」および「昏睡」などの段階が存在する。「ほろ酔い」とは、脳の理性を司る部分である大脳新皮質がエタノールの影響を受けている状態をいう。気分が高揚し、思考力、判断力、集中力などが鈍り、反射神経や運動の協調性にも重大な影響が生じる。「酩酊」とは、大脳新皮質から内側の大脳辺縁系または小脳にまで広がった状態をいう。感情や運動を司る脳の機能が低下するため、感情の起伏が激しくなり、いわゆる千鳥足になることがある。「泥酔」とは、大脳辺縁系または小脳が大きくエタノールの影響を受け、言語がまともに話せなくなり、意識が朦朧とし、立つことすら困難になる。「昏睡」とは、脳の中心に存在する延髄または脳幹にまでエタノールの影響が及んだ状態をいう。身体に刺激を与えても反応しない危険な状態であり、死に至ることも多い。呼吸中枢も危険な状態にあり、呼吸困難にも陥り得る。また、短時間に代謝量を上回るアルコールを摂取すると、代謝が追いつかず急激に血中エタノール濃度が上昇し、いきなり最悪の場合死に至る(急性アルコール中毒)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、飲酒の危険性を減少させるために、血中エタノール濃度を迅速に減少させることができる組成物が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、黒糖をAspergillus nigerを用いて醗酵させた醗酵液が、予想外に顕著かつ迅速に、血中エタノール濃度を減少させる効果を奏することを発見し、本発明を完成させた。本発明によって、このような醗酵液を含む飲食用組成物、サプリメントまたは飲食用補填物などが提供される。これらの組成物は、アルコール摂取の前、アルコール摂取と同時、またはアルコール摂取の後に使用され、個体における血中アルコール濃度の減少を促進する。
【0006】
本発明はまた、以下の項目を提供する。
(項目1)黒糖を主原料として醗酵させた醗酵生産物を含む、血中アルコール濃度を減少させるための飲食用組成物。
(項目2)上記醗酵生産物の生産方法が、Aspergillus nigerを用いる醗酵工程を包含する、項目1に記載の飲食用組成物。
(項目3)上記醗酵生産物が液状成分である、項目1に記載の飲食用組成物。
(項目4)上記醗酵生産物が固体成分である、項目1に記載の飲食用組成物。
(項目5)上記Aspergillus nigerがAspergillus niger UV32株である、項目2に記載の飲食用組成物。
(項目6)上記黒糖が、タイ産、日本産、中国産、ブラジル産、またはボリビア産のものである、項目1に記載の飲食用組成物。
(項目7)さらにアセトアルデヒドの分解を促進する成分を含む、項目1〜6のいずれか1項に記載の飲食用組成物。
(項目8)上記成分が、カテキン、ゴマ、ウコン、シジミエキス、ビタミンB、ビタミンC、ビタミンE、グルタチオン、システイン、プロリン、リジンなどアミノ酸、およびケールからなる群より選択される、項目7に記載の飲食用組成物。
(項目9)食品である、項目1〜7のいずれか1項に記載の飲食用組成物。
(項目10)飲料である、項目1〜7のいずれか1項に記載の飲食用組成物。
(項目11)サプリメントである、項目1〜7のいずれか1項に記載の飲食用組成物。
(項目12)飲食用補填物である、項目1〜7のいずれか1項に記載の飲食用組成物。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、血中エタノール濃度を迅速に減少させることができる飲食用組成物、サプリメントまたは飲食用補填物が提供される。これらの組成物は、飲酒による血中アルコール濃度の上昇によってもたらされる障害を減少させる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に本発明を、必要に応じて、添付の図面を参照して例示の実施例により説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語および科学技術用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
【0009】
以下に提供される実施形態は、本発明のよりよい理解のために提供されるものであり、本発明の範囲は以下の記載に限定されるべきではない。本明細書中の記載を参酌して、本発明の範囲内で適宜改変を行なうことができることは、当業者に明らかである。
【0010】
本発明は、黒糖を醗酵させた醗酵液が、予想外に顕著かつ迅速に、血中エタノール濃度を減少させる効果を奏することを発見し、本発明を一部完成させた。本発明によって、このような醗酵液を含む飲食用組成物、サプリメントまたは飲食用補填物などが提供される。これらの組成物は、アルコール摂取の前、アルコール摂取と同時、またはアルコール摂取の後に使用され、個体における血中アルコール濃度の減少を促進する。
【0011】
(定義)
本明細書中で使用される場合、「黒糖」とは、さとうきびや甜菜等の搾汁を煮詰めて得られる、搾汁の濃縮物、または、上白糖を製造する際に生じる副産物の糖蜜、あるいは、これらの混合物をいう。黒糖は、ショ糖部分を精製した上白糖等とは違い、ショ糖以外の成分、いわゆる糖蜜を含有した含蜜糖である。本発明における黒糖の原産国は特に限定されないが、例えばタイ産、日本産、中国産、ブラジル産、ボリビア産などが挙げられる。本発明における黒糖は、例えば、サトウキビを粉砕し、圧搾し、糖汁を加熱濃縮した後に乾燥して粉砕することによって製造される。
【0012】
本明細書中で使用される場合、「醗酵生産物」とは、ある特定の原料(本発明においては、主に黒糖)を任意の菌株によって醗酵させ、その結果生じる全ての産物、ならびに、その産物を出発材料として用いる精製物および部分精製物をいう。本発明の組成物の成分として添加する醗酵生産物として醗酵による産物の精製物または部分精製物を用いる場合、醗酵による産物の精製には、濾過、クロマトグラフィー、遠心分離、蒸留、および、有機溶媒抽出などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0013】
本明細書中で使用される場合、ある特定の組成物が血中アルコール濃度を「減少させる」とは、アルコール摂取からある特定の時間経過後の血中アルコール濃度を、その特定の組成物を摂取していない場合の血中アルコール濃度と比較して低下させることをいう。血中アルコール濃度は、例えば、ヘパリン加血液を採取し、それをガスクロマトグラフィー(例えば、ヒューレットパッカード HP5890−SERIES II)を使用して分析することによって測定され得る。
【0014】
本明細書中で使用される場合、「液状成分」とは、任意の液体成分をいい、代表的には培養液、醗酵液、またはそれらの濃縮液などである。
【0015】
本明細書中で使用される場合、「飲食用組成物」とは、黒糖を原料として醗酵させた醗酵生産物を含む任意の製品をいう。本発明の飲食用組成物は、代表的には、血中アルコール減少促進、悪酔いまたは二日酔いの防止などの本発明の効果を表示して販売され得る。
【0016】
本明細書中で使用される場合、「サプリメント」とは、健康食品または健康補助食品ともいい、通常の飲食によっては摂取することができない、一定の効能を摂取した者に与え得る任意の飲食物をいう。
【0017】
本明細書中で使用される場合、「飲食用補填物」とは、直接飲食に供するものではなく、食品や飲料などの飲食用組成物に添加する物質をいう。飲食用補填物は、任意の飲食物に添加され、この飲食物に好ましい特性を付与し得る。本発明において、この好ましい特性は、血中アルコール減少促進、悪酔いまたは二日酔いの防止、あるいは、これらの組合せなどである。
【0018】
本明細書中で使用される場合、「アセトアルデヒドの分解を促進する成分」とは、投与された場合に、生体内におけるアルデヒド脱水素酵素によるアセトアルデヒドの酢酸への分解を促進する任意の成分をいう。本明細書におけるアセトアルデヒド分解促進成分は、代表的には、カテキン、ゴマ、ウコン、シジミエキス、ビタミンB、ビタミンC、ビタミンE、グルタチオン、システイン、プロリン、リジンなどアミノ酸、ケールなどである。
【0019】
本明細書中で使用される場合、ある特定の成分が「アセトアルデヒドの分解を促進する」とは、アルコール摂取からある特定の時間経過後の血中アセトアルデヒド濃度を、その特定の成分を摂取していない場合の血中アセトアルデヒド濃度と比較して低下させることをいう。血中アルデヒド濃度は、例えば、以下のように測定され得る。蒸留水10mLで希釈した血漿1gに、0.6mol/L過塩素酸水溶液 1mLを添加し10分間放置する。3000rpm 10分間遠心分離を行い、タンパク質を除く。これに1mol/L水酸化ナトリウム水溶液を添加し、pH7〜9に調節する。ヘッドスペース用バイアル瓶に試料を密封し、60℃ 10分間過熱し平衡状態にする。気相500μLをシリンジで採取し、ガスクロマトグラフ質量分析計に注入する。GC/MS測定条件は、例えば以下の通りである。
機種:ガスクロマトグラフ質量分析計 M−7200 日立製作所製
カラム:AQUATIC 内径0.25mm 長さ60m 膜厚1.0μm
カラム温度:40℃⇒20℃/min(昇温速度)⇒210℃
注入口温度:150℃
イオン源温度:150℃
キャリアガス:ヘリウム
ガス流量:1.0mL/min
スプリット比:20/1
定量イオン質量:43。
【0020】
(好ましい実施形態の説明)
本発明のある実施形態において、使用される黒糖の種類および由来は特に限定されないが、例えば、由来としてはタイ産、日本産、中国産、ブラジル産、ボリビア産などが挙げられる。代表的には、本発明において使用される黒糖は、タイ産である。
【0021】
本発明の別の実施形態において、本発明における醗酵は、好ましくはAspergillus属の細菌、より好ましくはAspergillus nigerによって行われる。本発明における醗酵のために好ましい菌株は、Aspergillus niger UV32株である。Aspergillus nigerは、好気的条件下において、醗酵液中に本発明の醗酵生産物を蓄積する。
【0022】
本発明の飲食用組成物、サプリメントまたは飲食用補填物は、黒糖を醗酵させた醗酵生産物を含み、この醗酵生産物は、代表的には液状成分である。液状成分の醗酵生産物とは、例えば、Aspergillus nigerによる黒糖の醗酵における醗酵液、培養液、これらの濃縮液または精製物もしくは部分精製物などである。本発明の組成物は、黒糖を主原料とする培地にAspergillus nigerを接種、培養し、残糖が規定値以下となった時点で培養を終了し、必要に応じて濃縮・濾過することによって得られる。上記培養を終了する基準となる残糖の濃度は、好ましくは、40g/L以下である。
【0023】
(醗酵生産物の製造)
本発明の醗酵生産物は、以下の実施例1および2に記載されるように製造することができる。簡便に述べると、本発明における醗酵は、黒糖を約15重量%以上含む培地においてAspergillus属の細菌、より好ましくはAspergillus nigerを培養することによって産生される。醗酵生産のために使用される、黒糖を添加する培地の成分は当業者に周知であり、また、当業者は使用する菌体に応じて適宜改変することができる。
【0024】
本発明の醗酵において使用される黒糖は、例えばタイ産、日本産、中国産、ブラジル産、ボリビア産などのものが使用される。これら黒糖の産地は、本願発明の実施には影響しないが、経済的な観点から、好ましくはタイ産の黒糖が使用される。本発明における黒糖は、例えば以下のように製造される。サトウキビの煮汁を煮詰め、サトウキビを粉砕し、圧搾し、糖汁を加熱濃縮した後に乾燥して粉砕することによって製造される。本発明における黒糖は、好ましくは、タイ産、日本産、中国産、ブラジル産、ボリビア産などであり、より好ましくはタイ産である。
【0025】
(飲食用組成物の製造)
本発明の代表的な実施形態は、食品や飲料などの飲食用組成物である。このような飲食用組成物は、当業者に周知の方法によって製造され得る。サトウキビを粉砕し、圧搾し、糖汁を加熱濃縮した後に乾燥して粉砕することによって製造される。
本発明の飲食用組成物、サプリメントまたは飲食用補填物は、これをそのまま液状、ゲル状あるいは固形状の食品、例えば、健康食品、栄養補助食品、ジュース、清涼飲料、コーヒー、紅茶、日本茶、ウーロン茶、野菜ジュース、天然果汁、乳飲料、牛乳、豆乳、スポーツ飲料、ニアウォーター系飲料、栄養補給飲料、コーヒー飲料、ココア、スープ、ドレッシング、ムース、ゼリー、ヨーグルト、プリン、ふりかけ、育児用粉乳、加工乳、スポーツドリンク、栄養ドリンク、ケーキミックス、パン、ピザ、パイ、クラッカー、ビスケット、ケーキ、クッキー、スパゲティー、マカロニ、パスタ、うどん、そば、ラーメン、キャンデー、ソフトキャンデー、ガム、チョコレート、おかき、ポテトチップス、スナック、アイスクリーム、シャーベット、クリーム、チーズ、粉乳、練乳、乳飲料などの粉末状または液状の乳製品、饅頭、ういろ、もち、おはぎ、醤油、たれ、麺つゆ、ソース、だしの素、シチューの素、スープの素、複合調味料、カレーの素、マヨネーズ、ケチャップ、レトルトカレー、レトルトシチュー、レトルトスープ、レトルトどんぶり、缶詰、ハム、ハンバーグ、ミートボール、コロッケ、餃子、ピラフ、おにぎり、冷凍食品および冷蔵食品、ちくわ、蒲鉾、弁当のご飯、寿司、乳児用ミルク、離乳食、ベビーフード、スポーツ食品等に添加したり、必要に応じてデキストリン、乳糖、澱粉等の賦型剤や香料、色素等とともにペレット、錠剤、顆粒等に加工したり、またゼラチン等で被覆してカプセルに成形加工して健康食品や栄養補助食品等として利用できる。これらの食品類あるいは飲食用組成物における本発明の醗酵生産物の摂取量は、当該食品や組成物の種類や状態等により一律に規定しがたいが、本発明の黒糖醗酵生産物1.7g〜100g/日、より好ましくは、3.4〜10g/日である。
【0026】
(本発明の組成物の使用)
本発明の飲食用組成物は、アルコール摂取から120分後、90分後、60分後、または30分後における血中アルコール濃度を、本発明の飲食用組成物を摂取しない場合と比較して、約10%以上、約20%以上、約30%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、約50%以上、約55%以上、または約60%以上減少させる。好ましくは、本発明の飲食用組成物は、アルコール摂取から60分後における血中アルコール濃度を、本発明の飲食用組成物を摂取しない場合と比較して、約30%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、または約50%以上減少させる。さらに好ましくは、本発明の飲食用組成物は、アルコール摂取から30分後における血中アルコール濃度を、本発明の飲食用組成物を摂取しない場合と比較して、約30%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、またはより好ましくは約50%以上減少させる。本発明の飲食用組成物は、代表的に、アルコール摂取から120分後、90分後、60分後、または30分後における血中アルコール濃度を、本発明の飲食用組成物を摂取しない場合と比較して、約約40%以上減少させる。
【0027】
本発明のサプリメントは、アルコール摂取から120分後、90分後、60分後、または30分後における血中アルコール濃度を、本発明のサプリメントを摂取しない場合と比較して、約10%以上、約20%以上、約30%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、約50%以上、約55%以上、または約60%以上減少させる。好ましくは、本発明のサプリメントは、アルコール摂取から60分後における血中アルコール濃度を、本発明のサプリメントを摂取しない場合と比較して、約30%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、または約50%以上減少させる。さらに好ましくは、本発明のサプリメントは、アルコール摂取から30分後における血中アルコール濃度を、本発明のサプリメントを摂取しない場合と比較して、約30%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、またはより好ましくは約50%以上減少させる。本発明のサプリメントは、代表的に、アルコール摂取から120分後、90分後、60分後、または30分後における血中アルコール濃度を、本発明のサプリメントを摂取しない場合と比較して、約約40%以上減少させる。
【0028】
本発明の飲食用補填物は、飲食物に添加され、そしてその飲食用補填物が添加された飲食物を摂取した場合、アルコール摂取から120分後、90分後、60分後、または30分後における血中アルコール濃度を、本発明の飲食用補填物を摂取しない場合と比較して、約10%以上、約20%以上、約30%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、約50%以上、約55%以上、または約60%以上減少させる。好ましくは、本発明の飲食用補填物は、飲食物に添加され、そしてその飲食用補填物が添加された飲食物を摂取した場合、アルコール摂取から60分後における血中アルコール濃度を、本発明の飲食用補填物を摂取しない場合と比較して、約30%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、または約50%以上減少させる。さらに好ましくは、本発明の飲食用補填物は、飲食物に添加され、そしてその飲食用補填物が添加された飲食物を摂取した場合、アルコール摂取から30分後における血中アルコール濃度を、本発明の飲食用補填物を摂取しない場合と比較して、約30%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、またはより好ましくは約50%以上減少させる。本発明の飲食用補填物は、飲食物に添加され、そしてその飲食用補填物が添加された飲食物を摂取した場合、代表的に、アルコール摂取から120分後、90分後、60分後、または30分後における血中アルコール濃度を、本発明の飲食用補填物を摂取しない場合と比較して、約40%以上減少させる。
【0029】
本発明の飲食用組成物、サプリメント、または飲食用補填物の摂取時期は、特に限定されない。本発明の飲食用組成物、サプリメント、または飲食用補填物は、アルコール摂取の前に摂取されてもよいし、アルコール摂取と同時に摂取されてもよいし、アルコール摂取後に摂取されてもよい。本発明の飲食用組成物、サプリメント、または飲食用補填物は、例えば、二日酔いまたは悪酔いの予防のためにアルコール摂取前またはアルコール摂取と同時に摂取されてもよいし、二日酔いまたは悪酔いの抑制のためにアルコール摂取後に摂取されてもよい。
【0030】
本明細書において引用された、科学文献、特許、特許出願などの参考文献は、その全体が、各々具体的に記載されたのと同じ程度に本明細書において参考として援用される。
【0031】
以上、本発明を、理解の容易のために好ましい実施形態を示して説明してきた。以下に、実施例に基づいて本発明を説明するが、上述の説明および以下の実施例は、例示の目的のみに提供され、本発明を限定する目的で提供したのではない。従って、本発明の範囲は、本明細書に具体的に記載された実施形態にも実施例にも限定されず、請求の範囲によってのみ限定される。
【実施例】
【0032】
(実施例1:醗酵)
菌株として、工業技術センターより入手したAspergillus niger UV−32株を使用し、黒糖を原料として醗酵を行った。
【0033】
(1)保存菌株の管理
予め培養した生産菌(Aspergillus niger UV−32株)の胞子懸濁液を、凍結保存用チューブにてウルトラロー冷凍庫内で約−80℃にて保管した。
【0034】
(2)培養
含水グルコース 5.5質量%、ペプトン 0.5質量%、リン酸一カリウム 0.2質量%、硫酸マグネシウム 0.2質量%の培地を含む三角フラスコに、Aspergillus nigerを接種後、35℃で48時間培養した。
【0035】
得られた培養液を、含水グルコース 5.0質量%、ペプトン 0.5質量%、リン酸一カリウム 0.2質量%、硫酸マグネシウム 0.2質量%の培地を含むシード培養槽に、接種し、48時間培養してシード培養液を得た。
【0036】
他方で、黒糖 15質量%、ペプトン 0.2質量%、リン酸一カリウム 0.2質量%、硫酸マグネシウム 0.2質量%を含む本培養培地を準備し、これに上記シード培養液を添加して、34℃で(糖枯渇まで)8〜10日間培養した。
【0037】
残糖 40g/L以下かつ雑菌汚染が無いという基準を満たした培養液は、加熱を行い、生産菌を死滅させた。殺菌終了後、20℃まで冷却した。
【0038】
(実施例2:発酵生産物の調製)
フィルタープレスに殺菌済みの濾布をセットし、濾過助剤を用いてプリコートを施した。実施例1で調整した混合物を濾過し、濾過終了後、水押しエアブローを行い、製品を回収した。濃縮液のBrix値(糖濃度及び可溶性固形分濃度の合算値(%))が55〜60%になるまで濃縮を行った。
【0039】
濃縮による澱物質除去の為、再度フィルタープレスを用いて清澄濾過し、濾過終了後、水押しエアブローを行い、製品を回収した。再度、濾過清澄液のBrix値可溶性固形分濃度が55〜60%になるまで(再度)濃縮を行った。
【0040】
濃縮終了後、固形含量がBrix計で40〜45%になるように加水調整した。加水調整液は、80℃ 10分の殺菌後、70℃まで冷却し、3μmカートリッジフィルターを通して充填を行い、本発明の発酵生産物とした。
【0041】
(実施例3:ラットに対する本発明の醗酵生産物の投与)
供試動物として、7週齢の雄性ラット、系統SD−(IGS)(日本チャールズリバー)を使用した。飼育環境は、以下の通りであった。
設定温湿度:24℃±1℃、55±5%
照明時間:12時間自動点灯・消灯方式(8:00a.m.〜8:00p.m.に点灯)
飼育設備:プラスチック製ケージ
飼料:予備飼育期間は固形飼料CRF−1(オリエンタル酵母工業)を自由摂取
給水:蒸留水を給水瓶にて自由摂取。
【0042】
供試動物入荷時から7日間、固形飼料にて予備飼育を行い、馴化した。また、予備飼育最終日の体重を考慮して群分けを行い、各群採血ポイントにあわせて3匹ずつの集団飼育とした。個体識別はマジックで尾部にマーキングした。体重は、午前8〜9時の間に測定し、また体重測定時より絶食のため、飼料を取り出した。本発明の醗酵生産物の原液を使用して、本発明の効果を確かめた。比較例として黒糖(「泰国黒糖AI」(明治FM)) 500mgを蒸留水1mLに溶解したものを用い、コントロールとして蒸留水を用いた。
【0043】
各群の試験動物に、体重100g当たり0.1mLの醗酵生産物、黒糖または蒸留水を、胃ゾンデを用いて強制胃内投与した。この直後にエタノール量2.0g/kg(40%v/v)を強制胃内投与した。これは、60kgの成人男性に換算して、ウイスキーダブル2杯(120mL)を一気に飲んだ状態である。
【0044】
エタノール投与前、エタノール投与後30分、60分、90分および120分時に、ネンブタール(40mg/kg)麻酔下にて腹大動脈からヘパリン加採血を行った。得られた血液の1mLを血中エタノール分析に用いた。各分析試料は、分析に供するまで−80℃下にて凍結保存した。
【0045】
以下に、血中エタノール濃度および血中エタノールAUC(Area Under Curve)の試験結果を示す。試験結果は、平均値±標準誤差で表した。
【0046】
【表1】

【0047】
【表2】

コントロール群では、エタノール投与30分後に最も高い血中エタノール濃度を示し、それ以降は低下する傾向を示した。比較例の黒糖群および本発明の醗酵濃縮液の2群については、コントロールと同様の推移を示したが、両群ともに血中エタノールの上昇抑制が認められ、特に醗酵濃縮液で顕著に上昇が抑制された(エタノール投与から30分後に、コントロールに対して約45%の血中エタノールの減少)。血中エタノールAUCについても、黒糖群および本発明の醗酵濃縮液群の両群で低値を示したが、本発明の醗酵濃縮液群でより顕著であった。
【0048】
この結果から、黒糖を原料として醗酵させた本発明の醗酵生産物が、血中アルコール濃度を減少させるという予想外の効果を奏することが明らかになった。この血中アルコール濃度の減少は、エタノール投与の約30分後から観察され、本発明の醗酵生産物を含む飲食用組成物には、即効性の血中アルコール濃度減少効果があることも明らかになった。
【0049】
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、この実施形態に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】図1は、体重100g当たり0.1mLの本発明の醗酵生産物、黒糖群および蒸留水(コントロール群)を投与したラット各群における、エタノール投与後30分、60分、90分および120分時の血中アルコール濃度を示す。
【図2】図2は、体重100g当たり0.1mLの本発明の醗酵生産物、黒糖群および蒸留水(コントロール群)を投与したラット各群における、エタノール投与後30分、60分、90分および120分時の血中アルコールAUCを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
黒糖を主原料として醗酵させた醗酵生産物を含む、血中アルコール濃度を減少させるための飲食用組成物。
【請求項2】
前記醗酵生産物の生産方法が、Aspergillus nigerを用いる醗酵工程を包含する、請求項1に記載の飲食用組成物。
【請求項3】
前記醗酵生産物が液状成分である、請求項1に記載の飲食用組成物。
【請求項4】
前記醗酵生産物が固体成分である、請求項1に記載の飲食用組成物。
【請求項5】
前記Aspergillus nigerがAspergillus niger UV32株である、請求項2に記載の飲食用組成物。
【請求項6】
前記黒糖が、タイ産、日本産、中国産、ブラジル産、またはボリビア産のものである、請求項1に記載の飲食用組成物。
【請求項7】
さらにアセトアルデヒドの分解を促進する成分を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の飲食用組成物。
【請求項8】
前記成分が、カテキン、ゴマ、ウコン、シジミエキス、ビタミンB、ビタミンC、ビタミンE、グルタチオン、システイン、プロリン、リジンなどアミノ酸、およびケールからなる群より選択される、請求項7に記載の飲食用組成物。
【請求項9】
食品である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の飲食用組成物。
【請求項10】
飲料である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の飲食用組成物。
【請求項11】
サプリメントである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の飲食用組成物。
【請求項12】
飲食用補填物である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の飲食用組成物。

【図1】
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【図2】
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