説明

血小板レベルを増大させるためのペプチド療法

本発明は、T−140アナログペプチド及びそれを含む組成物の新規な治療適用に関する。特に、本発明は、出血を制御するために及び止血を誘導又は調節するために、血小板減少症の処置または防止に有用な、改良された血小板レベルを与える組成物及び方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血中の血小板レベルを調節するための組成物および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
血小板は栓球とも呼ばれており、哺乳動物の血液に存在し、血餅形成および止血を媒介する無核の細胞フラグメントである。加えて、血小板は、結合組織の修復および再生において重要な役割を果たし、かつ、創傷治癒を促進させる増殖因子を放出する。血小板は、骨髄の多能性幹細胞から同様に生じる巨核球(MK)の最終分化産物である。体液性因子、例えば、トロンボポエチン(TPO)などが、巨核球発達における種々の細胞段階に影響を与えることが見出されたが、多能性幹細胞から始まり、血中の血小板で終わる複雑な成熟化プロセス、分化プロセスおよび局在化プロセスは依然として、完全には理解されていないままである。
【0003】
血小板は平均寿命が約5日〜10日であり、その生理学的血中レベルが通常、150000/μL〜450000/μLである。循環している血小板の患者レベルが激減してこの生理学的範囲を下回るとき、血小板減少症として知られている状態が生じ得る。この状態は典型的には、止血プラグの不完全な形成および出血に関連し、この場合、出血の危険性が血小板数に逆比例している。
【0004】
血小板のレベルが、骨髄における血小板産生性の低下によって、あるいは、血小板の消耗、末梢における血小板分解の促進、または、異常な血小板分布によって低下することがある。例えば、血小板減少症は、抗体媒介の血小板破壊、あるいは、例えば、悪性浸潤または化学療法から生じる骨髄不全に起因し得る。
【0005】
薬理学的介入が一部の場合には可能である;例えば、いくつかの状態、例えば、免疫媒介の血小板減少症(この場合には、血小板が免疫系の成分によって標的とされ、破壊される)などでは、免疫抑制薬物の使用が適応される。しかしながら、多くの患者のための最適な現在承認されている処置選択肢が血小板輸血および骨髄移植である。予防的輸血はあまり使用されない。これは、予防的輸血では、血小板の同種抗体が発達するために、その有効性が反復使用により失われることがあるからである。血小板輸血のさらなる潜在的危険性には、感染、アナフィラキシーおよび溶血反応が含まれる。血小板機能異常症、または、低下した産生によって引き起こされる血小板減少症では、輸血が、激しい出血または重篤な血小板減少症(例えば、10000/μL未満の血小板数)の患者のために残してある。血小板破壊によって引き起こされる血小板減少症では、輸血が、生命を危うくする出血またはCNS出血のために残してある。
【0006】
TPOは、MKの増殖および成熟化ならびに血小板の形成を促進することが示されてので(Kaushansky他、1994)、血小板減少症の処置におけるTPOの使用が提案されている。正常な健康者およびガン患者に静脈内投与されたとき、組換えヒトTPOが、投与後5日から始まり、10日後〜14日後にピークに達する血小板数における用量依存的な増大をもたらしたことが報告された。しかしながら、初期のトロンボポエチンアナログの臨床試験は、抗体が内因性トロンボポエチンと交差反応し、二次的な血小板減少症および出血を引き起こしたので中止された(Junzhi他、2001)。いくつかの条件のもとでは、TPOが、寛解を誘導するためではなく、むしろ、維持療法として提案される。
【0007】
他のサイトカイン、例えば、IL−1、IL−3、IL−6およびGM−CSFなどが、動物における巨核球の生成において役割を果たすことが示されており、また、血小板新生活性を臨床試験において明らかにしている。しかしながら、それぞれが、容認できない毒性プロフィルを示すか、または、血小板数における有意な増大をもたらさないかのどちらかであり、血小板減少症の処置におけるこれらのサイトカインのさらなる治療的使用は中断されている。
【0008】
したがって、血小板減少症を防止および/または処置する、血小板輸血の代替としての効果的な薬剤に対する満たされない要求が存在することが明らかである。
【0009】
ケモカイン受容体CXCR4は、幅広い各種の正常な組織において発現し、胎児の発達、造血幹細胞の可動化およびナイーブリンパ球の輸送において基本的役割を果たすGタンパク質共役受容体である(RossiおよびZlotnik、2000)。ケモカインCXCL12(これはまた、間質由来因子−1またはSDF−1として知られている)がCXCR4の唯一の天然リガンドである。CXCL12が、肺、肝臓、骨髄およびリンパ節を含めて、様々な組織において構成的に発現される。
【0010】
CXCL12がCXCR4に結合することにより、細胞の走化性、接着、生存および増殖を調節する様々な細胞内のシグナル伝達経路およびエフェクター分子が活性化される。例えば、ホスファチジルイノシトール−3−キナーゼ経路およびマイトジェン活性化タンパク質(MAP)キナーゼ経路がCXCL12およびCXCR4によって調節される。
【0011】
成熟MKは、SDF−1受容体、すなわち、CXCR4を機能的に発現することが示されている。SDF−1が、内皮細胞層を通過する成熟MKの遊走をインビトロで誘導し、その血小板産生を増大させたこともまた見出された。加えて、正常なマウスへのアデノ−SDF−1の注入は、増大した血小板数を3日後にもたらし、その後、血小板数は7日目〜10日目にピークに達し、28日目までに正常に戻った(Lane他、2000)。
【0012】
CXCR4のアゴニストおよびアンタゴニストを含めて、ケモカイン受容体調節剤の様々な使用がこの技術分野では記載されている(Princen他、2005;Tamamura他、2005;米国特許第7169750号)。米国特許第7435718号は、CXCR4アンタゴニストとして作用するいくつかのSDF−1アナログペプチドで、造血細胞(例えば、始原細胞または幹細胞など)を処置して、細胞の増加、自己再生、増殖または拡大の速度を促進させるために使用され得るものを開示する。米国特許第7435718号の開示は、これらのSDF−1アナログがさらなる有効成分(とりわけ、TPO)とともに配合または投与され得ることを示唆する。
【0013】
米国特許出願公開第2007/0167459号は、CXCR4調節活性を有する複素環式化合物、具体的にはCXCR4アンタゴニストを開示する。これらの化合物は、様々な疾患(とりわけ、血小板減少症を含むガン性疾患)を防止および処置するために提案される。その明細書はまた、これらの化合物が、TPOを含む幅広い列挙から選択されるさらなる薬物または化合物とともに使用されることを開示する。
【0014】
AMD3100と呼ばれるビシクラム(bicyclam)薬物は、最初は抗HIV化合物として発見されたものであり、アンタゴニスト様式でCXCR4と特異的に相互作用する。CXCR4受容体をAMD3100により阻止することにより、造血始原細胞の可動化がもたらされる。PCT公開番号WO03/011277は、対象における始原細胞および/または幹細胞の集団を、CXCR4アンタゴニスト(例えば、AMD3100など)を必要な場合には同時投与TPOと一緒に投与することによって強化するための方法に関する。AMD3100は、移植のために利用可能な幹細胞を増大させるその能力を評価するための臨床試験を受けている最中であり、また、造血幹細胞(HSC)を、非ホジキンリンパ腫および多発性骨髄腫の患者における採取およびその後の自家造血幹細胞移植のために末梢血に可動化するために顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)との組合せで(Mozobilの商品名で)適応される。しかしながら、Mozobilの製品添付文書から明らかにされ得るように、この薬物の投与は、低下した血小板レベルおよび血小板減少症を生じさせることがあり、したがって、血小板レベルがMozobil使用時およびアフェレーシス時においてはモニターされなければならない。
【0015】
このように、矛盾する証拠が、血小板レベルを調節することにおける様々なCXCR4アゴニストおよびCXCR4アンタゴニストの起こり得る関与に関して存在する。
【0016】
T−140は、CXCR4に対する特異的な結合によりT細胞へのHIV−1(X4−HIV−1)進入を抑制する特異的なCXCR4アンタゴニストとして開発された14残基の合成ペプチドである(Tamamura他、1998)。続いて、T−140のペプチドアナログが、ナノモルレベルでの阻害活性を有する特異的なCXCR4アンタゴニストペプチドとして開発された(Tamamura他、2003;国際公開WO2002/020561および同WO2004/020462を参照のこと)。
【0017】
国際公開WO2002/020561はT−140の新規なペプチドアナログおよび誘導体を開示する。この‘561号公報は、主張されるペプチドが、高い抗HIVウイルス活性および低い細胞毒性を発現する強力なCXCR4阻害剤であることを明らかにする。
【0018】
国際公開WO2004/020462は、4F−ベンゾイル−TN14003(配列番号1)を含めて、T−140のさらなる新規なペプチドアナログおよび誘導体を開示する。この‘462号公報はさらに、ガンおよび慢性関節リウマチを処置するために、T−140アナログを利用する新規な予防用および治療用の組成物、ならびに、これらの組成物を使用する新規な予防方法および治療方法を開示する。‘462号の明細書は、これらのペプチドが、乳ガン細胞および白血病細胞を含めて、ガン細胞の遊走を阻害できること、また、転移形成をインビボで阻害できることを明らかにする。その明細書においてさらに明らかにされることが、マウスおよびコラーゲン誘導関節炎(関節リウマチの動物モデル)における遅延型過敏症反応の阻害である。
【0019】
国際公開WO2004/087068は、CXCR4媒介病理を処置または防止するための方法で、CXCR4ペプチドアンタゴニストを、CXCR4受容体またはそのホモログを発現する細胞においてCXCR4シグナル伝達を阻害するために十分な量で宿主に投与することを含み、CXCR4ペプチドアンタゴニストが抗体またはそのフラグメントではない方法に関する。この‘068号公報は、例示的なCXCR4ペプチドアンタゴニストには、T140およびT140の誘導体が含まれること、そして、上記病理には、ガン、例えば、乳ガン、脳ガン、膵臓ガン、卵巣ガン、前立腺ガン、腎臓ガンおよび非小細胞肺ガンなどが含まれることを開示する。ガン治療におけるCXCR4アンタゴニストの使用に関する他の刊行物には、例えば、国際公開WO00/09152、米国特許出願公開第2002/0156034号および国際公開WO2004/024178が含まれる。
【0020】
本発明の発明者の一部による刊行物(Avniel他、2006)は、CXCR4/CXCL12軸をT−140アナログによって阻止することにより、真皮での好酸球蓄積における著しい低下、および、改善された上皮形成がもたらされ、したがって、火傷後の皮膚回復が著しく改善されたことを開示する。
【0021】
その後には、いくつかの条件のもとで、T−140アナログの機能の一部が、そのCXCR4アンタゴニスト活性に加えて、CXCR4スーパーアゴニスト的性質を有し得ることが発見された。本発明の発明者の一部による国際公開WO2008/075369は、CXCR4スーパーアゴニスト活性を有するT−140ペプチドアナログを含む組成物、および、造血系の回復を、特に、骨髄への損傷に関連する状態の処置において調節することにおけるその治療的使用を開示する。本発明の発明者の一部による国際公開WO2008/075370は、CXCR4スーパーアゴニスト活性を有するT−140ペプチドアナログを含む組成物、および、ガン治療におけるその治療的使用を開示する。本発明の発明者の一部による国際公開WO2008/075371は、CXCR4スーパーアゴニスト活性を有するT−140ペプチドアナログを含む組成物、ならびに、免疫療法およびワクチン接種のためのその新規な治療的使用を開示する。
【0022】
先行技術のどれもが、T−140アナログファミリーに属するCXCR4阻害剤ペプチドが血小板の産生をインビボで特異的に促進させること、および、特に、これらのペプチドが、血小板数を上昇させるTPOの能力を高め得ることを開示も、示唆もしていない。血小板欠乏を処置および防止するために有用な組成物および方法が長年にわたって切実に求められている。血小板数を急性様式で高めることができ、出血をその必要性のある対象において抑えるために有用な治療剤もまた好都合であろう。
【発明の概要】
【0023】
本発明は、血小板レベルを高めるための組成物および方法、ならびに、血小板減少症に関連する状態およびその症状を処置および防止するための組成物および方法に関する。具体的な実施形態によれば、本発明は、低下した血小板数を有する対象において出血を抑制または阻止するために使用することができる。
【0024】
本発明は、部分的には、既知のペプチド4F−ベンゾイル−TN14003(4F−ベンゾイル−Arg−Arg−Nal−Cys−Tyr−Cit−Lys−DLys−Pro−Tyr−Arg−Cit−Cys−Arg−NH、配列番号1)が、既知の増血剤(例えば、トロンボポエチン(TPO)など)の特徴的なパターンと比較して、血小板レベルを高める量的および質的に異なったパターンを明らかにするという驚くべき発見に基づく。具体的には、驚くべきことに、このペプチドをヒト対象に投与することにより、血中の血小板数における即時的な増大が刺激されたことが見出された。加えて、4F−ベンゾイル−TN14003は、健康なC57B1マウスにおける血小板の産生を刺激することにおいてTPOと同じくらい強力であり、また、血小板レベルを高めること、および、化学療法によって誘導される血小板減少症を軽減することにおいてTPOよりも一層強力であった。そのうえ、4F−ベンゾイル−TN14003は驚くべきことに、TPOによって誘導される血液における血小板の生成および骨髄における前駆体コロニーの生成をさらに刺激することが見出された。したがって、本発明のペプチドは予想外にも、血小板レベルを調節することにおける好都合な二重の効果、すなわち、投与から数分以内である血中血小板の上昇によって特徴づけられる即時的効果と、投与から数日以内である長期にわたる効果とを、増大した血小板新生をさらに伴って有することが見出された。
【0025】
本発明は、いくつかの実施形態において、本明細書中に詳述されるように、改善された効率および/または安全性とともに、血小板の産生および/またはその血中循環レベルを刺激するために有用な、4F−ベンゾイル−TN14003およびそのアナログを使用する組成物および方法を提供する。
【0026】
本発明の新規な組成物および方法において使用される4F−ベンゾイル−TN14003アナログ(これはまた、本明細書中では「本発明のペプチド」として示される)は、本明細書中下記で詳述されるように、特許出願公開WO2002/020561および同WO2004/020462に開示される構造的および機能的に関連したペプチド(これはまた、「T−140アナログ」として知られている)である。
【0027】
第1の局面によれば、血小板のレベルをその必要性のある対象において上昇させるための方法であって、配列番号1に示されるようなアミノ酸配列のペプチドまたはそのアナログの効果的な量を前記対象に投与し、その結果、前記対象における血小板のレベルを上昇させるようにすることを含む方法が提供される。
【0028】
1つの実施形態において、本発明の方法は、血小板のレベルを前記対象の末梢血において上昇させるために使用される。他の実施形態において、本発明の方法は、血中の血小板レベルを急性様式で増大させ、その結果、血小板上昇を投与から数時間以内に、または、他の実施形態では投与から数分以内に誘導するようにするために都合よく使用することができる。1つの特定の実施形態において、本発明の方法は、前記対象の末梢血における血小板の著しい上昇を急性様式で誘導する。別の特定の実施形態において、前記上昇が前記ペプチドの投与から1時間以内に生じる。
【0029】
血小板のレベルを、いくつかの実施形態では、処置開始前のそのレベルと比較して、または、他の実施形態では、処置がない場合のそのレベル(例えば、その予測レベル、または、コントロール対象におけるそのレベル)と比較して上昇させることができる。
【0030】
本発明の組成物および方法は、いくつかの実施形態では、低下した血小板数または最適でない血小板数に関連する状態または症状の処置または防止において使用することができる。いくつかの実施形態によれば、本発明の方法は、血小板減少症を前記対象において処置または防止するために使用される。
【0031】
様々な実施形態において、本発明の方法は、激しい出血またはその危険性が付随することがある急性または慢性の血小板減少症の症状を処置または防止するために使用することができる。特定の実施形態において、血小板減少症は、20000/μL未満の血小板数によって特徴づけられる。別の特定の実施形態において、本発明の方法は、10000/μL未満の血小板数によって特徴づけられる重篤な血小板減少症の処置のために使用することができる。さらに別の特定の実施形態において、前記対象は、臨床的に著しい出血に苦しむ。
【0032】
他の実施形態において、本発明の方法は、血小板数の即時的または一時的な増大が、抜歯、出産、手術または他の浸襲的な外科的手順のために要求されるときに使用することができる。例えば、本発明の方法は、対象が血小板減少症を患い、前記ペプチドの投与が外科的手順の24時間以内(例えば、手術の数時間前または数分前、外科的手順の期間中あるいはその直後)に開始されるときに使用することができる。
【0033】
様々な実施形態において、血小板減少症は、増大した血小板破壊に関連する血小板減少症、増大した血小板捕獲に関連する血小板減少症、血小板希釈に関連する血小板減少症、および、損なわれた血小板産生に関連する血小板減少症からなる群から選択され得る。
【0034】
特定の実施形態において、前記血小板減少症は、増大した免疫学的な血小板破壊に関連する(例えば、特発性血小板減少性紫斑病または自己免疫性血小板減少症)。別の特定の実施形態において、前記血小板減少症はC型肝炎ウイルス関連肝硬変に関連する。さらに別の特定の実施形態において、前記血小板減少症は、損なわれた血小板産生に関連し得る(例えば、先天性巨核球減少性血小板減少症、または、橈骨欠損を伴う血小板減少症)。別の実施形態において、血小板減少症は骨髄欠乏または骨髄抑制に関連しない。さらに別の実施形態において、前記対象は、放射線または化学療法にさらされることに関連する血小板低下に苦しむか、あるいは、そのような血小板低下の危険性がある。
【0035】
本発明のペプチドは、単独で、あるいは、抗ガン薬物、サイトカイン、増血剤、免疫調節薬物、および、凝固剤または抗凝固剤(これらに限定されない)を含めて、他の治療剤との同時併用または逐次併用でのどちらでも対象に投与することができる。場合により、本発明のペプチドは、血小板産生を刺激する少なくとも1つのサイトカインとの併用で前記対象に投与され、例えば、本発明のペプチドは、トロンボポエチンまたはトロンボポエチンアゴニストとの併用で投与することができる。いくつかの実施形態によれば、本発明の方法は、前記対象における血小板レベルのトロンボポエチン誘導上昇を高めるために使用することができる。別の実施形態において、本発明の方法は、前記対象における血小板減少症の継続期間を短くするために使用することができる。別の実施形態において、前記ペプチドは、血小板減少症またはその危険性のために他の場合には前記対象に投与されないであろうさらなる薬物または物質と(逐次併用または同時併用で)同時投与することができる。
【0036】
本発明のペプチドは、単独で、または、本発明のペプチドおよび少なくとも1つの医薬的に許容されるキャリアまたは賦形剤を含む医薬組成物の形態で対象に投与することができる。場合により、本発明のペプチドは、血小板産生を刺激する少なくとも1つのサイトカインをさらに含む医薬組成物の形態で対象に投与することができる。
【0037】
いくつかの実施形態によれば、本発明のペプチドは血中の血小板を投与直後に高め、したがって、出血を対象(特に、血小板欠乏のために出血しやすい対象)において軽減または防止することにおいて好都合である。別の局面において、出血をその必要性のある対象において抑える方法であって、配列番号1に示されるようなアミノ酸配列のペプチドまたはそのアナログの効果的な量を前記対象に投与し、その結果、前記対象における出血を抑えるようにすることを含む方法が提供される。1つの実施形態において、この方法は、前記対象における出血継続期間を短くするために使用される。別の実施形態において、この方法は、前記対象における出血の強さを軽減するために使用することができる。別の実施形態において、前記対象は血小板減少症を患う。別の実施形態において、前記対象は、臨床的に著しい出血に苦しむ。別の特定の実施形態において、前記対象は血小板減少症を患い、前記ペプチドの投与が外科的手順の24時間以内に開始される。
【0038】
別の局面において、活性成分として、配列番号1に示されるようなアミノ酸配列のペプチドまたはそのアナログの効果的な量と、血小板産生を刺激する少なくとも1つのサイトカイン(例えば、トロンボポエチンまたはトロンボポエチンアゴニスト)の効果的な量とを含む医薬組成物が提供される。
【0039】
本発明の他の目的、特徴および利点が、下記の記載および図面から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1A−1B】図1Aは、4F−ベンゾイル−TN14003が血小板の血中レベルをそれだけで、また、トロンボポエチンとの併用で高めることを明らかにする。図1Bは、4F−ベンゾイル−TN14003がコロニー形成細胞の数をそれだけで、また、トロンボポエチンとの併用で高めることを明らかにする。
【0041】
【図2】図2は、4F−ベンゾイル−TN14003の1回の注射(5mg/Kg)が、血小板の血中レベルを高めるために十分であることを明らかにする。
【0042】
【図3】図3は、4F−ベンゾイル−TN14003の1回の注射(5mg/Kg)が、オスおよびメスの両方のマウスの血小板の血中レベルを高めるために十分であることを明らかにする。
【0043】
【図4】図4は、4F−ベンゾイル−TN14003の注射(5mg/Kg)を5FUによるマウス処置の前の5日間行うことにより(この場合、4F−ベンゾイル−TN14003による処置は5FU処置後において継続される)、血小板の血中レベルが5FUによる処置の前後において高まることを明らかにする。
【0044】
【図5】図5は、4F−ベンゾイル−TN14003の注射(5mg/Kg)を5FUによるマウス処置の前の5日間行うことにより(この場合、4F−ベンゾイル−TN14003(5mg/Kg)による処置は5FU処置後において継続される)、血小板の血中レベルが5FUによる処置の前後において高まり、これに対して、5FUを注射した1日後、単独または4F−ベンゾイル−TN14003との併用でのG−CSFによる処置は、血小板レベルに対する影響が全くなかったことを明らかにする。
【0045】
【図6】図6は、4F−ベンゾイル−TN14003の注射(5mg/Kg)を5FUによるマウス処置の前の5日間行うことにより(この場合、4F−ベンゾイル−TN14003(5mg/Kg)による処置は5FU処置後において継続される)、血小板の血中レベルが5FUによる処置の前後において高まり、これに対して、5FU処置前3日間のTPOの投与(0.5μg/マウス)は4F−ベンゾイル−TN14003による処置よりも劣っていることを明らかにする。
【0046】
【図7A−7B】図7A−7Bは、4F−ベンゾイル−TN14003の注射(0.9mg/Kg)をヒト患者に1回行うことにより、血液中の血小板の数における即時的な増大が刺激されることを明らかにする(図7A−患者1;図7B−患者2)。
【発明を実施するための形態】
【0047】
本発明は、T−140アナログペプチドが、CXCR4媒介の血小板産生を刺激するために、また、血液中の血小板レベルを上昇させるために使用される新規な組成物および方法に関する。
【0048】
本発明は、T−140アナログペプチドの新規な治療適用に関する。本発明は、4F−ベンゾイル−TN14003(配列番号1)、すなわち、T−140ペプチドファミリーに属する知られているCXCR4阻害剤が、即時的に、または、連続した注射の後で、健康なC57blマウスにおいて、同様にまた、血小板減少症のマウスおよびヒトにおいて血小板の産生および血中レベルを刺激するという他にないパターンを媒介することを初めて開示する。加えて、本発明は、T−140アナログが血小板の産生を単独で、または、トロンボポエチン(TPO)との併用で刺激し、したがって、トロンボポエチン受容体c−MPLを刺激するTPOまたはそのアナログ(例えば、Romiplostim(AMG−531)およびエルトロンボパグ(SB−497115)など)との併用で使用される使用のために好適であることを初めて開示する。
【0049】
したがって、本発明の第1の局面によれば、血小板のレベルをその必要性のある対象において上昇させるための方法であって、配列番号1に示されるようなアミノ酸配列を有するペプチドまたはそのアナログを含む治療剤を前記対象に投与することを含む方法が提供される。
【0050】
別の局面において、本発明は、血小板減少症をその必要性のある対象において処置または防止するための方法であって、配列番号1に示されるようなアミノ酸配列を有するペプチドまたはそのアナログを含む治療剤を前記対象に投与することを含む方法を提供する。
【0051】
別の局面において、血小板レベルのトロンボポエチン誘導上昇をその必要性のある対象において高めるための方法であって、配列番号1に示されるようなアミノ酸配列を有するペプチドまたはそのアナログを含む治療剤を前記対象に投与することを含み、前記対象がトロンボポエチンまたはトロンボポエチンアゴニストにより同時に処置される方法が提供される。
【0052】
別の局面において、出血をその必要性のある対象において抑える方法であって、配列番号1に示されるようなアミノ酸配列を有するペプチドまたはそのアナログを含む治療剤を前記対象に投与することを含む方法が提供される。
【0053】
別の局面において、本発明は、有効成分として、配列番号1に示されるようなアミノ酸配列を有するペプチドまたはそのアナログの効果的な量と、血小板産生を刺激する少なくとも1つのサイトカインの効果的な量とを含む医薬組成物が提供される。
【0054】
本発明の実施形態によれば、ペプチドは効果的な量で投与され、その結果、本明細書中に詳述されるように、前記対象における血小板のレベルを上昇させるように、あるいは、血小板減少症の臨床症状(例えば、出血)の改善を誘導するように、あるいは、その継続期間または大きさを妨げ、遅らせ、または軽減するように、あるいは、同時投与された薬物または物質の活性を高めるようにすることができる。
【0055】
ペプチド
本明細書および図面において、略号によるアミノ酸などの表示は、生化学命名法に関するIUPAC−IUB委員会によって定められる記号の使用によって、または、関連分野において慣例的に使用される記号によってなされる。そのような記号の例が下記に示される。光学異性体がアミノ酸に関して存在するならば、光学異性体は、別途明示的に指定される場合を除き、好ましくはL型を表す。
【0056】
GlyまたはG:グリシン;AlaまたはA:アラニン;ValまたはV:バリン;LeuまたはL:ロイシン;IleまたはI:イソロイシン;SerまたはS:セリン;ThrまたはT:トレオニン;CysまたはC:システイン;MetまたはM:メチオニン;GluまたはE:グルタミン酸;AspまたはD:アスパラギン酸;LysまたはK:リシン;ArgまたはR:アルギニン;HisまたはH:ヒスチジン;PheまたはF:フェニルアラニン;TyrまたはY:チロシン;TrpまたはW:トリプトファン;ProまたはP:プロリン;AsnまたはN:アスパラギン;GlnまたはQ:グルタミン;pGlu:ピログルタミン酸;Nal:3−(2−ナフチル)アラニン;Cit:シトルリン;DLys:D−リシン;DCit:D−シトルリン;DGlu:D−グルタミン酸;Me:メチル基;Et:エチル基;Bu:ブチル基;Ph:フェニル基。
【0057】
本明細書において多用される置換基、保護基および試薬が下記の記号によって示される。
BHA :ベンズヒドリルアミン
pMBHA :p−メチルベンズヒドリルアミン
Tos :p−トルエンスルホニル
CHO :ホルミル
HONB :N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシミド
OcHex :シクロヘキシルエステル
Bzl :ベンジル
Cl−Bzl :ジクロロ−ベンジル
Bom :ベンジルオキシメチル
Z :ベンジルオキシカルボニル
Br−Z :2−ブロモベンジルオキシカルボニル
Boc :5−ブチルオキシカルボニル
DCM :ジクロロメタン
HOBt :1−ヒドロキシベンゾトリアゾール
DCC :N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド
TFA :トリフルオロ酢酸
DIEA :ジイソプロピルエチルアミン
Fmoc :N−9−フルオレニルメトキシカルボニル
DNP :ジニトロフェニル
Bum :第三級ブトキシメチル
Trt :トリチル
Ac :アセチル
Guanyl :グアニル
Succinyl :スクシニル
glutaryl :グルタリル
TMguanyl :テトラメチルグアニル
2F−benzoyl :2−フルオロベンゾイル
4F−benzoyl :4−フルオロベンゾイル
APA :5−アミノペンタノイル
ACA :6−アミノヘキサノイル
desamino−Arg :2−デスアミノ−アルギニル
deaminoTMG−APA:下記式(IV):

R−CH2:下記式(V):

【0058】
N末端アミノ酸において、[H−]は、末端アミノ基が誘導体化されていないことを示し、また、C末端アミノ酸において、[−OH]は、末端カルボキシル基が誘導体化されていないことを示す。
【0059】
本発明の4F−ベンゾイル−TN14003アナログは、T−140アナログとしてもまた知られている構造的に非常に関連したペプチドの一群に属する。T−140は、アミノ酸配列H−Arg−Arg−Nal−Cys−Tyr−Arg−Lys−DLys−Pro−Tyr−Arg−Cit−Cys−Arg−OH(配列番号69)を有する既知の合成ペプチドである(Tamamura他、2003)(このアミノ酸配列は、カブトガニのタキプレシンファミリーポリペプチドに基づいて設計されたものである)。本発明の好ましいペプチドには、特許出願公開WO2002/020561および同WO2004/020462に開示されるアナログおよび誘導体が含まれる。これらのペプチドは人工起源の合成ペプチドである。
【0060】
したがって、配列番号1の「アナログ」なる用語は、本明細書中で使用される場合、配列番号1に対する少なくとも60%の同一性を有するペプチドに関連し、好ましくは、本明細書中で定義されるような式(I)または式(II)のペプチドに関連する。
【0061】
1つの局面において、本発明は、下記の式(I)によって示されるペプチドまたはその塩を有効成分として含む医薬組成物の使用に関連する:

ただし、
上記式(I)におけるAは、N末端で誘導体化され得るアルギニン残基、リシン残基、オルニチン残基、シトルリン残基、アラニン残基もしくはグルタミン酸残基(L型またはD型のどちらか)を表すか、または、Aは水素原子であり、あるいは、Aは、アルギニン残基、シトルリン残基、アラニン残基もしくはD−グルタミン酸残基であるか、または、Aは水素原子である(すなわち、この位置におけるアミノ酸は存在しなくてもよい)ことが好ましい。
【0062】
「N末端誘導体化ペプチド」または「N−α−置換誘導体」の例には、ホルミル基;アシル基、例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、ペンタノイル基、C2〜6アルカノイル基(例えば、ヘキサノイル基)、ベンゾイル基、アリールカルボニル基(例えば、置換ベンゾイル基(例えば、2−フルオロベンゾイル基、3−フルオロベンゾイル基、4−フルオロベンゾイル基、2−ブロモベンゾイル基、3−ブロモベンゾイル基、4−ブロモベンゾイル基、2−ニトロベンゾイル基、3−ニトロベンゾイル基、4−ニトロベンゾイル基)、スクシニル基、グルタリル基;ニコチニル基;イソニコチニル基;アルキルスルホニル基(例えば、メタンスルホニル基、エタンスルホニル基、プロパンスルホニル基、ショウノウスルホニル基);アリールスルホニル基(例えば、p−トルエンスルホニル基、4−フルオロベンゼンスルホニル基、メシチレンスルホニル基、4−アミノベンゼンスルホニル基、ダンシル基、4−ブロモベンゼンスルホニル基)などによって保護されるそのようなペプチドまたは誘導体が含まれるが、これらに限定されない。あるいは、N末端アミノ基は存在しなくてもよい。
【0063】
場合により、また、好ましくは、ペプチドは置換ベンゾイル基によりN末端で誘導体化される。特定の実施形態において、置換ベンゾイル基は4−フルオロベンゾイル基である。別の特定の実施形態において、置換ベンゾイル基は2−フルオロベンゾイル基である。
【0064】
上記式(I)におけるAは、A1が、N末端で誘導体化され得るアルギニン残基、リシン残基、オルニチン残基、シトルリン残基、アラニン残基もしくはグルタミン酸残基(L型またはD型のどちらか)であるならば、アルギニン残基もしくはグルタミン酸残基(L型またはD型のどちらか)を表すか、または、Aは、Aが存在しないならば、N末端で誘導体化され得るアルギニン残基もしくはグルタミン酸残基(L型またはD型のどちらか)を表し、あるいは、Aは、Aが、N末端で誘導体化され得るアルギニン残基、シトルリン残基、アラニン残基もしくはグルタミン酸残基であるならば、アルギニン残基もしくはグルタミン酸残基であるか、または、Aは、Aが存在しないならば、N末端で誘導体化され得るアルギニン残基もしくはグルタミン酸残基であることが好ましい。「N末端で誘導体化されるペプチド」の例には、A1において述べられるN末端誘導体化ペプチドと同じものが含まれるが、これらに限定されない。
【0065】
上記式(I)におけるAは、芳香族アミノ酸残基、例えば、フェニルアラニン、トリプトファン、3−(2−ナフチル)アラニン、チロシン、4−フルオロフェニルアラニン、3−(1−ナフチル)アラニン(L型またはD型のどちらか)を表し、あるいは、好ましくは、Aは、フェニルアラニン、トリプトファンまたは3−(2−ナフチル)アラニンを表す。
【0066】
上記式(I)におけるAは、アルギニン残基、リシン残基、オルニチン残基、シトルリン残基、アラニン残基またはグルタミン酸残基(L型またはD型のどちらか)を表し、あるいは、Aは、アルギニン残基、シトルリン残基、アラニン残基またはL−グルタミン酸残基もしくはD−グルタミン酸残基であることが好ましい。
【0067】
上記式(I)におけるAは、アルギニン残基、リシン残基、オルニチン残基、シトルリン残基、アラニン残基またはグルタミン酸残基(L型またはD型のどちらか)を表し、あるいは、Aは、アルギニン残基、シトルリン残基、アラニン残基、リシン残基またはグルタミン酸残基であることが好ましい。
【0068】
上記式(I)におけるAは、プロリン残基、グリシン残基、オルニチン残基、リシン残基、アラニン残基、シトルリン残基、アルギニン残基またはグルタミン酸残基(L型またはD型のどちらか)を表し、あるいは、Aは、D−リシン残基、D−アラニン残基、D−シトルリン残基またはD−グルタミン酸残基であることが好ましい。
【0069】
上記式(I)におけるAは、プロリン残基、グリシン残基、オルニチン残基、リシン残基、アラニン残基、シトルリン残基またはアルギニン残基(L型またはD型のどちらか)を表し、あるいは、Aはプロリン残基またはアラニン残基であることが好ましい。
【0070】
上記式(I)におけるAは、チロシン残基、フェニルアラニン残基、アラニン残基、ナフチルアラニン残基、シトルリン残基またはグルタミン酸残基(L型またはD型のどちらか)を表し、あるいは、Aは、チロシン残基、アラニン残基またはD−グルタミン酸残基であることが好ましい。
【0071】
上記式(I)におけるAは、アルギニン残基、リシン残基、オルニチン残基、シトルリン残基、アラニン残基またはグルタミン酸残基(L型またはD型のどちらか)を表し、あるいは、Aは、アルギニン残基、シトルリン残基またはグルタミン酸残基であることが好ましい。
【0072】
上記式(I)におけるA10は、シトルリン残基、グルタミン酸残基、アルギニン残基またはリシン残基(L型またはD型のどちらか)を表し、あるいは、A10はシトルリン残基またはD−グルタミン酸残基であることが好ましい。
【0073】
上記式(I)におけるA11は、C末端で誘導体化され得るアルギニン残基、グルタミン酸残基、リシン残基またはシトルリン残基(L型またはD型のどちらか)を表し、あるいは、A11は、C末端で誘導体化され得るアルギニン残基またはグルタミン酸残基であることが好ましい。
【0074】
「C末端誘導体化」または「C末端カルボキシル誘導体化」には、限定されないが、アミド化(−CONH、−CONHR、−CONRR’)およびエステル化(−COOR)が含まれる。この場合、アミドおよびエステルにおけるRおよびR’には、例えば、C1〜6アルキル基(例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピルまたはn−ブチル)、C3〜8シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル、シクロヘキシル)、C6〜12アリール基(例えば、フェニルおよびα−ナフチル)、フェニル−C1〜2アルキル基(例えば、ベンジル、フェネチル)またはC7〜14アラルキル基(例えば、α−ナフチルメチル基)、および、さらには、経口生物利用可能なエステルとして一般に使用されるピバロイルオキシメチル基が含まれる。
【0075】
本発明のペプチドがカルボキシ基(またはカルボキシラート)をC末端以外の側鎖末端に有するならば、アミド化またはエステル化されたカルボキシ基を側鎖末端に有するこのペプチドは本発明のペプチドに含まれる。この場合のアミドおよびエステルとして、例えば、A11において例示されるアミドおよびエステルが同様に使用される。また、本発明のペプチドには、分子内アミノ酸側鎖における置換基(例えば、−OH、−SH、アミノ基、イミダゾール基、インドール基、グアニジノ基など)が好適な保護基(例えば、C1〜6アシル基、C2〜6アルカノイル基(例えば、ホルミル基、アセチル基など))によって保護されるペプチド、または、複合ペプチド(例えば、上記ペプチドにおいて糖鎖と結合した糖ペプチドなど)が含まれる。
【0076】
本発明のペプチドの塩には、酸または塩基の生理学的に許容される塩が含まれ、具体的には、生理学的に許容される酸付加塩が好ましい。そのような塩が、無機酸(例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸)の塩、または、有機酸(例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、シュウ酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸)の塩によって例示される。
【0077】
1つの態様において、組成物は、本明細書中上記で定義されるような式(I)において示されるようなペプチドで、Aがグルタミン酸残基であるか、または、非存在である(存在しない)ペプチドを含む。
【0078】
別の態様において、組成物は、本明細書中上記で定義されるような式(I)において示されるようなペプチドで、Aがグルタミン酸残基であるペプチドを含む。
【0079】
別の態様において、組成物は、本明細書中上記で定義されるような式(I)において示されるようなペプチドで、Aがグルタミン酸残基であるペプチドを含む。
【0080】
別の態様において、組成物は、本明細書中上記で定義されるような式(I)において示されるようなペプチドで、Aがグルタミン酸残基であるペプチドを含む。
【0081】
別の態様において、組成物は、本明細書中上記で定義されるような式(I)において示されるようなペプチドで、Aがグルタミン酸残基であるペプチドを含む。
【0082】
別の態様において、組成物は、本明細書中上記で定義されるような式(I)において示されるようなペプチドで、Aがアルギニンまたはグルタミン酸残基であるペプチドを含む。
【0083】
別の態様において、組成物は、本明細書中上記で定義されるような式(I)において示されるようなペプチドで、A10がグルタミン酸、アルギニンまたはリシン残基であるペプチドを含む。
【0084】
別の態様において、組成物は、本明細書中上記で定義されるような式(I)において示されるようなペプチドで、A11がグルタミン酸、リシンまたはシトルリン残基であるペプチドを含む。
【0085】
別の態様において、ペプチドは、本明細書の表1に与えられている配列番号1〜72のいずれか一つに述べられたアミノ酸配列を持つ:




【0086】
配列番号1〜配列番号72のそれぞれ1つにおいて、2つのシステイン残基は好ましくは、ジスルフィド結合でつながれる。
【0087】
本発明による現時点で好まれるペプチドは、配列番号1〜配列番号72のいずれか1つに示されるようなアミノ酸配列を有するペプチドである。より具体的には、表1において示される配列番号1〜配列番号68および配列番号70〜配列番号72のいずれか1つに示されるようなアミノ酸配列を有するT−140誘導体が、T−140(配列番号69)と比較して、血清における改善された安定性、および、低下した細胞毒性を有し得ることがこれまでに報告されている。しかしながら、T−140は、いくつかの実施形態に従った本発明の方法における使用のために好適である場合がある。
【0088】
別の好ましい実施形態において、本発明の組成物および方法において使用されるペプチドは、配列番号1に示されるようなアミノ酸配列から本質的になる。別の好ましい実施形態において、本発明の組成物および方法において使用されるペプチドは、配列番号1に示されるようなアミノ酸配列のものである。別の実施形態において、ペプチド(アナログ)は、配列番号1に対する相同性が少なくとも60%であり、好ましくは少なくとも70%であり、より好ましくは少なくとも80%である。別の実施形態において、ペプチドは、配列番号1に対する相同性が少なくとも約90%である。別の実施形態において、ペプチドは、配列番号1に対する相同性が少なくとも約95%である。それぞれの可能性が本発明の別個の実施形態を表す。
【0089】
2つの配列の間での相同性の程度が、それらのアミノ酸配列における同一性の程度、および、それらの長さに関するそれらの同一性に依存することが一般に認められている。したがって、本発明のペプチドホモログは、典型的には長さにおいて約8個〜22個のアミノ酸であり、より典型的には長さにおいて14個〜20個のアミノ酸であり、または、他の実施形態では長さにおいて13個〜15個のアミノ酸であり、特定の実施形態では長さにおいて約14個のアミノ酸である。様々な他の特定の実施形態において、ペプチドは、配列番号1〜配列番号72から選択され、ただし、この場合、それぞれの可能性が本発明の別個の実施形態を表す。
【0090】
別の特定の実施形態において、前記ペプチドは、配列番号1〜配列番号4、配列番号10、配列番号46、配列番号47、配列番号51〜配列番号56、配列番号65、配列番号66、配列番号68、配列番号70および配列番号71のいずれか1つに示されるようなアミノ酸配列を有する。別の特定の実施形態において、前記ペプチドは、配列番号4、配列番号10、配列番号46、配列番号47、配列番号68および配列番号70のいずれか1つに示されるようなアミノ酸配列を有する。別の特定の実施形態において、前記ペプチドは、配列番号1、配列番号2、配列番号51、配列番号65および配列番号66のいずれか1つに示されるようなアミノ酸配列を有する。別の特定の実施形態において、前記ペプチドは、配列番号53〜配列番号56のいずれか1つに示されるようなアミノ酸配列を有する。それぞれの可能性が本発明の別個の実施形態を表す。
【0091】
好ましい特定の実施形態において、前記ペプチドは、配列番号1に示されるようなアミノ酸配列を有する。別の特定の実施形態において、前記ペプチドは、配列番号2に示されるようなアミノ酸配列を有する。別の特定の実施形態において、前記ペプチドは、配列番号51に示されるようなアミノ酸配列を有する。別の特定の実施形態において、前記ペプチドは、配列番号66に示されるようなアミノ酸配列を有する。それぞれの可能性が本発明の別個の実施形態を表す。
【0092】
別の局面において、本発明は、下記の式(II)によって示されるペプチドまたはその塩を含む医薬組成物の使用に関連する:

ただし、
は、アルギニン残基、リシン残基、オルニチン残基、シトルリン残基もしくはアラニン残基またはこれらのアミノ酸のN−α−置換誘導体、あるいは、水素原子(すなわち、存在しなくてもよい)を表す;
は芳香族アミノ酸残基を表す;
、AおよびAはそれぞれが独立して、アルギニン残基、リシン残基、オルニチン残基、シトルリン残基またはアラニン残基を表す;
は、チロシン残基、フェニルアラニン残基、アラニン残基、ナフチルアラニン残基またはシトルリン残基を表す;
は、カルボキシル基がアミド化またはエステル化され得るリシン残基またはアルギニン残基を表す;
Xは、下記の(i)〜(iii)からなる群から選択される:
(i)下記の式(III)によって表されるペプチド残基:

式中、AおよびA12はそれぞれが独立して、アラニン残基、バリン残基、ロイシン残基、イソロイシン残基、セリン残基、システイン残基またはメチオニン残基を表す;
は芳香族アミノ酸残基を表し、A10は、Aの場合と同じアミノ酸残基から選択され、A11は、チロシン残基、フェニルアラニン残基、トリプトファン残基、アラニン残基、バリン残基、ロイシン残基、イソロイシン残基、セリン残基、システイン残基またはメチオニン残基を表し、ただし、1’位および6’位の両方がシステイン残基であるならば、それらはジスルフィド結合で結合されてもよい;
(ii)D−オルニチル−プロリン、プロリル−D−オルニチン、D−リシル−プロリン、プロリル−D−リシン、D−アルギニル−プロリン、プロリル−D−アルギニン、D−シトルリル−プロリン、D−シトルリル−アラニン、D−アラニル−シトルリン、プロリル−D−シトルリン、グリシル−オルニチン、オルニチル−グリシン、グリシル−リシン、リシル−グリシン、グリシル−アルギニン、アルギニル−グリシン、グリシル−シトルリン、シトルリル−グリシン、D−アラニル−プロリンおよびD−リシル−アラニンからなる群から選択されるペプチド、
かつ、前記ペプチド残基の構成アミノ酸であるD−アルギニン、L−アルギニン、D−リシン、L−リシン、D−オルニチンまたはL−オルニチンの側鎖ω−アミノ基の水素原子はω−アミノアシル基によって置換されてもよく、
また、(i)および(ii)のペプチド残基は、ペプチド結合を介して7位および9位におけるアミノ酸残基と結合するペプチドを表す;
また、4位および12位におけるシステイン残基はジスルフィド結合で結合してもよい;
ただし、上記ペプチドまたはその塩において、A、A、A、A、AおよびAのアミノ酸残基のいずれかがアラニン残基またはシトルリン残基である;あるいは
(iii)D−シトルリン残基、D−アラニン残基、シトルリン残基もしくはアラニン残基またはその塩を含有するペプチド残基。
【0093】
本発明の式(II)のポリペプチドにおいて、Aは好ましくは、アルギニン残基、アラニン残基またはシトルリン残基である;Aは好ましくは、トリプトファン残基またはナフチルアラニン残基である;Aは好ましくは、アルギニン残基、アラニン残基またはシトルリン残基である;Aは好ましくは、リシン残基、アラニン残基またはシトルリン残基である;Xは好ましくは、D−リシル−プロリン残基、D−アラニル−プロリン残基、D−リシル−アラニン残基またはD−シトルリル−プロリン残基である;Aは好ましくは、チロシン残基またはアラニン残基である;Aは好ましくは、アルギニン残基、アラニン残基またはシトルリン残基である;Aは好ましくは、アルギニン残基である。
【0094】
式(II)の例示的ペプチドが、A、AおよびAがアルギニン残基であり、Aがナフチルアラニン残基であり、Aがシトルリン残基であり、Aがリシン残基であり、XがD−リシル−プロリン残基であり、かつ、Aがチロシン残基であるペプチド、A、A、AおよびAがアルギニン残基であり、Aがナフチルアラニン残基であり、Aがリシン残基であり、XがD−シトルリル−プロリン残基であり、かつ、Aがチロシン残基である式(II)のポリペプチド、A、AおよびAがアルギニン残基であり、Aがナフチルアラニン残基であり、Aがシトルリン残基であり、Aがリシン残基であり、XがD−シトルリル−プロリン残基であり、Aがチロシン残基である式(II)のポリペプチド、ならびに、Aがシトルリン残基であり、Aがナフチルアラニン残基であり、A、AおよびAがアルギニン残基であり、Aがリシン残基であり、XがD−シトルリル−プロリン残基であり、Aがチロシン残基である式(II)のポリペプチドである。
【0095】
式(II)のペプチドが、別の実施形態では、A、AおよびAがアルギニン残基であり、Aがナフチルアラニン残基であり、Aがアラニン残基であり、Aがリシン残基であり、XがD−リシル−プロリン残基であり、かつ、Aがチロシン残基である式(II)のペプチド、Aがシトルリン残基であり、Aがナフチルアラニン残基であり、A、AおよびAがアルギニン残基であり、Aがリシン残基であり、XがD−リシル−プロリン残基であり、かつ、Aがチロシン残基である式(II)のポリペプチド、A、AおよびAがアルギニン残基であり、Aがナフチルアラニン残基であり、Aがリシン残基であり、XがD−リシル−プロリン残基であり、Aがチロシン残基であり、かつ、Aがシトルリン残基である式(II)のポリペプチド、AおよびAがシトルリン残基であり、Aがナフチルアラニン残基であり、Aがリシン残基であり、XがD−リシル−プロリン残基であり、Aがチロシン残基であり、AおよびAがアルギニン残基である式(II)のポリペプチド、ならびに、A、AおよびAがアルギニン残基であり、Aがナフチルアラニン残基であり、Aがリシン残基であり、XがD−シトルリル−プロリン残基であり、Aがチロシン残基であり、かつ、Aがシトルリン残基である式(II)のポリペプチドによって例示され得る。
【0096】
本明細書中の式IIにおいて示されるようなAのアミノ酸は好ましくは、カルボキシル基が、インビボにおける、例えば、血清などにおけるポリペプチドの安定性を改善するためにアミド化されるアミノ酸である。
【0097】
本発明のペプチドには、上記ペプチドのいずれかの配列と実質的に同じアミノ酸配列であるアミノ酸配列を含有するペプチドまたはそのアミド、エステルもしくは塩が含まれる。この場合、「実質的に同じアミノ酸配列」は、本発明のペプチドの活性または本発明のペプチドの生物学的活性(例えば、血小板レベルを高めること)などにおいて質的に同一であるアミノ酸配列を意味する。それによれば、量的不一致が、ある程度は許容され得る(例えば、約0.01倍〜100倍、好ましくは0.5倍〜20倍、または、より好ましくは0.5倍〜2倍)。したがって、上記性質のいずれかを有する限り、上記式(I)、上記式(II)および配列番号1〜配列番号72のいずれかにおいて示されるアミノ酸配列におけるアミノ酸の1つまたは複数が不一致を有し得る。すなわち、本発明では、元の(非変化)ペプチドの生理学的性質または化学的性質における有意な変化(すなわち、質的に異なる変化、または、質的に同一であるが、量的に著しく異なる変化)を何らもたらさないアミノ酸配列における不一致(例えば、置換、欠失または挿入(付加)など)から生じるペプチド(変化ペプチド)はどれも、そのような不一致を全く有しない元の(非変化)ペプチドと実質的に同じであると見なされ、また、そのような変化ペプチドのアミノ酸配列は、元の(非変化)ペプチドのアミノ酸配列と実質的に同じであると見なされる。
【0098】
一般に、ペプチド配列におけるアミノ酸の変化、例えば、置換、欠失または挿入(付加)などは、多くの場合、そのようなペプチドの生理学的性質または化学的性質に対する著しい変化をもたらさないことは、広く知られている事実である。例えば、ある特定のアミノ酸を類似する化学的性質の別のアミノ酸によって置換することは、元のペプチドの性質からのずれが最小限に抑えられたペプチドをもたらすと一般には見なされている。
【0099】
アミノ酸が、それらの性質の類似性を判断基準の1つとして使用して、例えば、下記のクラスに分類される:(i)非極性の(疎水性)アミノ酸(例:アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、メチオニンなど);(ii)極性の(中性)アミノ酸(例:グリシン、セリン、トレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、グルタミンなど);(iii)正電荷を有する塩基性アミノ酸(例:アルギニン、リシン、ヒスチジンなど);(iv)負電荷を有する酸性アミノ酸(例:アスパラギン酸、グルタミン酸など)。したがって、それぞれのクラスの中でのアミノ酸置換は、ペプチドの性質に関して保存的(すなわち、「実質的に同じ」アミノ酸配列を生じさせる置換)であり得る。言い換えれば、「実質的に同じアミノ酸配列」には、下記のものが含まれ得る:
(i)1個または複数個、あるいは、他の実施形態では1個〜3個のアミノ酸が、上記式(I)、上記式(II)および配列番号1〜配列番号72において示されるアミノ酸配列において他のアミノ酸によって置換されたアミノ酸配列;
(ii)1個または複数個、あるいは、他の実施形態では1個〜3個のアミノ酸が、上記式(I)、上記式(II)および配列番号1〜配列番号72において示されるアミノ酸配列において欠失されたアミノ酸配列;
(iii)1個または複数個、あるいは、他の実施形態では1個〜3個のアミノ酸が、上記式(I)、上記式(II)および配列番号1〜配列番号72において示されるアミノ酸配列において付加(挿入)されたアミノ酸配列;または
(iv)上記(i)、(ii)または(iii)において示されるアミノ酸配列を有するペプチドの中で、アミノ酸(特に、その側鎖)に対する修飾を含むペプチド、あるいは、そのエステル、アミドまたは塩。
【0100】
本発明のペプチドは、上記(i)〜(iv)の置換、欠失、挿入(付加)、修飾などがそのアミノ酸配列において意図的または偶発的にもたらされるならば、また、それらがそのアミノ酸配列において意図的または偶発的にもたらされるとき、熱またはプロテアーゼに対する安定なペプチドに、あるいは、より高まった活性を有する高活性なペプチドに変化させることができる。本発明のペプチドにはまた、これらの変化ペプチド、あるいは、そのアミド、そのエステルまたはその塩が含まれる。
【0101】
さらに、本発明のペプチドには、上記式(I)、上記式(II)および配列番号1〜配列番号72のいずれかにおいて示されるアミノ酸配列からなるペプチド、ならびに、前記アミノ酸配列との約50%〜99.9%(好ましくは70%〜99.9%、より好ましくは90%〜99.9%)の相同性を共有し、かつ、上記式(I)、上記式(II)および配列番号1〜配列番号72のいずれかにおいて示されるアミノ酸配列からなるペプチドと実質的に同じ性質の活性を有するペプチド、あるいは、それらのアミド、それらのエステルまたはそれらの塩がある。
【0102】
本発明のペプチドアナログには、他の実施形態では、本明細書中に開示されるペプチドと血小板レベルに関するその活性において質的に同一である限り、配列番号1、または、そのアミノ酸配列に関して本明細書中に開示される他のペプチドと同一であるが、異なる誘導体化基(例えば、N’誘導体化またはC’誘導体化)を有するペプチドが含まれる。
【0103】
上記の配列番号1〜配列番号72のいずれかにおいて示されるアミノ酸配列を有するペプチドのアミド、エステルまたは塩には、上記式(I)において示されるペプチドについて例示されるのと同じものが含まれる。好ましくは、上記の配列番号1〜配列番号72のいずれかにおいて示されるアミノ酸配列を有するペプチドはC末端アミノ酸残基のカルボキシル基においてアミド化される。
【0104】
上記の配列番号1〜配列番号72のいずれかにおいて示されるアミノ酸配列を含有するペプチドを含む本発明のペプチドは、ペプチドを合成する従来から知られている方法によって製造することができる。ペプチドの合成のために、固相ペプチド合成または液相ペプチド合成のどちらも利用することができる。すなわち、期待されるペプチドを、ペプチドを構成し得る部分ペプチド、または、アミノ酸を残り部分と縮合すること、そして、生成物が保護基を有するならば、保護基を除くことによって製造することができる。知られている縮合方法および保護基の除去として、下記の例(1)〜(5)が含まれる:

【0105】
ペプチドを合成するための実用的方法として、下記の例を挙げることができる:
一般には、ポリペプチドを合成するための市販の樹脂を使用することができる。そのような樹脂には、例えば、クロロメチル樹脂、ヒドロキシメチル樹脂、ベンズヒドロキシルアミン樹脂、アミノメチル樹脂、4−ヒドロキシベンジルアルコール樹脂、4−メチルベンズヒドロキシルアミン樹脂、PAM樹脂、4−ヒドロキシメチルメチルフェニルアセトアミドメチル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、4−(2’,4’−ジメトキシフェニル−ヒドロキシメチル)フェノキシ樹脂、4−2’,4’−ジメトキシフェニル−Fmocアミノエチルフェノキシ樹脂などが含まれる。そのような樹脂を使用する場合、好適に保護されたα−アミノ基および側鎖官能基を有するアミノ酸が、従来から知られている縮合方法に従って、期待されるポリペプチドの配列になるまで樹脂上で縮合される。反応の最後の段階で、ポリペプチドが樹脂から切り離され、同時に、様々な保護基が除かれ、その後、分子内ジスルフィド結合反応を高希釈溶液において行うことによって、期待されるポリペプチドまたはそのアミドが得られる。保護アミノ酸の上記縮合については、ポリペプチドの合成のために使用可能な様々な活性化された試薬を使用することができるが、カルボジイミドを使用することが特により良好である。そのようなカルボジイミドには、DCC、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド、N−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドなどがある。これらによる活性化のために、ラセミ化阻害添加剤(例えば、HOBt、HOOBt)と一緒に、保護アミノ酸が樹脂に直接に加えられるか、あるいは、保護アミノ酸を対称的な酸無水物またはHOBtエステルまたはHOOBtエステルとして活性化した後で、保護アミノ酸をエステル樹脂に加えることができる。
【0106】
保護アミノ酸の活性化および樹脂との縮合のために使用される溶媒を、ポリペプチド縮合反応のために使用可能であることが知られている溶媒の中から選ぶことができる。例えば、酸アミド、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドおよびN−メチルピロリドンなど、ハロゲン化炭化水素、例えば、塩化メチレンおよびクロロホルムなど、アルコール、例えば、トリフルオロエタノールなど、スルホキシド、例えば、メチルスルホキシドなど、エーテル、例えば、ピリジン、ジオキサンおよびテトラヒドロフランなど、ニトリル、例えば、アセトニトリルおよびプロピオニトリルなど、エステル、例えば、酢酸メチルおよび酢酸エチルなど、または、前記の適切な混合物が使用される。保護アミノ酸の活性化または樹脂とのその縮合のために使用される溶媒を、ポリペプチドの縮合反応のために使用可能であることが知られている溶媒の中から選択することができる。反応温度が、ポリペプチド結合形成反応に対して適用可能であることが知られている範囲内で適切に設定され、通常的には−20℃〜50℃で設定される。活性化されたアミノ酸誘導体が通常の場合、1.5倍〜4倍の過剰で使用される。ニンヒドリン反応を採用する試験の結果に従って、縮合が不十分であるならば、保護基を除くことなく縮合反応を繰り返すことにより、十分な縮合に至らせることができる。十分な縮合が反応の繰り返しによって達成されるならば、未反応のアミノ酸を無水酢酸またはアセチルイミダゾールの使用によってアセチル化することができる。
【0107】
成分として使用されるアミノ基の保護基には、例えば、Z、Boc、第三級ペンチルオキシカルボニル、イソボルニルオキシカルボニル、4−メトキシベンジルオキシカルボニル、Cl−Z、Br−Z、アダマンチルオキシカルボニル、トリフルオロアセチル、フタロイル、ホルミル、2−ニトロフェニルスルフェニル、ジフェニルホスフィノチオイル、Fmocなどが含まれる。カルボキシル基を、例えば、アルキルエステル化(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、第三級ブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、2−アダマンチルなどの直鎖アルキルエステル化、分岐アルキルエステル化または環状アルキルエステル化)、アラルキルエステル化(例えば、ベンジルエステル、4−ニトロベンジルエステル、4−メトキシベンジルエステル、4−クロロベンジルエステル、ベンズヒドリルエステル化)、フェナシルエステル化、ベンジルカルボニルヒドラジド化、第三級ブトキシカルボニルヒドラジド化、トリチルヒドラジド化などによって保護することができる。セリンのヒドロキシル基を、例えば、エステル化またはエーテル化によって保護することができる。このエステル化のために好適な基には、例えば、カルボン酸から誘導体化される基、例えば、低級アルカノイル基(例えば、アセチル基など)、アロイル基(例えば、ベンゾイル基など)、ベンジルオキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などが含まれる。エーテル化のために好適な基には、例えば、ベンジル基、テトラヒドロピラニル基、第三級ブチル基などが含まれる。チロシンのフェノール性OH基の保護基として、例えば、Bzl、Cl2−Bzl、2−ニトロベンジル、Br−Z、第三級ブチルなどが使用される。ヒスチジンのイミダゾールの保護基として、例えば、Tos、4−メトキシ−2,3,6−トリメチルベンゼンスルホニル、DNP、ベンジルオキシメチル、Bum、Boc、Trt、Fmocなどが使用される。
【0108】
活性化カルボキシル基を有する成分には、例えば、対応する酸無水物、アジド、活性エステル[アルコール(例えば、ペンタクロロフェノール、2,4,5−トリクロロフェノール、2,4−ジニトロフェノール、シアノメチルアルコール、p−ニトロフェノール、HONB、N−ヒドロキシスクシミド、N−ヒドロキシフタルイミド、HOBt)のエステル]が含まれる。活性化アミノ基を有する成分には、例えば、対応するリン酸アミドが含まれる。保護基を取り除く(除去する)ための方法として、例えば、触媒(例えば、Pd黒またはPd−炭素など)の存在下における水素気流中での接触還元、無水フッ化水素、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸またはそれらの混合物などによる酸処理、ジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミン、ピペリジン、ピペラジンなどによる塩基処理、および、液体アンモニア中でのナトリウムによる還元が使用される。上記酸処理による除去反応は一般には約−20℃〜40℃の温度で行われるが、酸処理では、カチオン捕捉剤、例えば、アニソール、フェノール、チオアニソール、m−クレゾール、p−クレゾール、ジメチルスルフィド、1,4−ブタンジチオール、1,2−エタンジチオールなどを加えることが効果的である。ヒスチジンのイミダゾールの保護基として使用される2,4−ジニトロフェニル基は、チオフェノール処理によって除かれる。トリプトファンのインドールの保護基として使用されるホルミル基は、1,2−エタンジチオール、1,4−ブタンジチオールなどの存在下における上記酸処理による保護の除去によって除かれ、また、薄い水酸化ナトリウム溶液、薄いアンモニアなどによるアルカリ処理によっても除かれる。
【0109】
成分の反応に関与させないための官能基の保護および保護基、ならびに、そのような保護基の除去、ならびに、反応に関与させるための官能基の活性化などを、従来から知られている基または従来から知られている方策の中から適切に選ぶことができる。ポリペプチドのアミドを得るための代替方法として、例えば、カルボキシ末端アミノ酸のα−カルボキシル基をアミド化および保護し、その後、ペプチド鎖をアミノ基側に所望の鎖長にまで伸ばした後で、そのようなペプチド鎖のN末端のα−アミノ基の保護基を除去してポリペプチドを製造し、また、C末端のカルボキシル基の保護基を除去してポリペプチドを製造する方法があり、その後、これら2つのペプチドが上記の混合溶媒において縮合される。縮合反応の詳細は、上記で記載されるのと同じである。縮合によって得られる保護ポリペプチドを精製した後、所望される粗ポリペプチドを、すべての保護基を上記方法によって除去することによって得ることができる。この粗ポリペプチドを、様々な知られている方法を使用して精製した場合、主画分が凍結乾燥されるならば、アミドタイプの所望されるポリペプチドを得ることができる。エステルタイプのポリペプチドを得るために、例えば、アミノ酸エステルを、カルボキシ末端アミノ酸のα−カルボキシル基を所望のアルコールと縮合することによって作製することができ、その後、エステルタイプの所望されるポリペプチドをアミドタイプのポリペプチドと同じ方式で得ることができる。
【0110】
反応後、本発明のペプチドは、通常の精製方法(例えば、溶媒抽出、蒸留、カラムクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、再結晶など)を組み合わせることによって精製および単離することができる。上記方法によって得られるペプチドが、塩非含有タイプであるならば、ペプチドは、知られている方法によって好適な塩に変換することができ、または、そのようなペプチドが塩であるならば、ペプチドは、知られている方法によって塩非含有タイプ変換することができる。
【0111】
医薬組成物およびキット
本明細書中で使用される「医薬組成物」は、本明細書中に記載される有効成分の1つまたは複数と、他の化学的成分(例えば、生理学的に好適なキャリアおよび賦形剤など)との調製物を示す。医薬組成物の目的は、生物に対する化合物の投与を容易にすることである。
【0112】
本明細書中以降、表現「生理学的に許容されるキャリア」および表現「医薬的に許容されるキャリア」は、交換可能に使用され得るが、生物に対する著しい刺激を生じさせず、かつ、投与された化合物の生物学的な活性および性質を妨げないキャリアまたは希釈剤を示す。
【0113】
本明細書中において、用語「賦形剤」は、有効成分の投与をさらに容易にするために医薬組成物に添加される不活性な物質を示す。賦形剤の非限定的な例としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な糖およびデンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、植物油およびポリエチレングリコールが挙げられる。
【0114】
薬物の配合および投与のための技術が「Remington’s Pharmaceutical Sciences」(Mack Publishing Co.、Easton、PA)の最新版に見出されることができ、これは参考として本明細書中に完全に組み込まれる(Remington: The Science and Practice of Pharmacy,Gennaro,A.,Lippincott,Williams & Wilkins,Philadelphia,Pa.,20th ed,2000)。
【0115】
本発明の医薬組成物は、この分野で十分に知られているプロセスによって、例えば、従来の混合、溶解、造粒、糖衣錠作製、研和、乳化、カプセル化、包括化または凍結乾燥のプロセスによって製造されることができる。
【0116】
本発明に従って使用される医薬組成物は、医薬品として使用されることができる調製物への有効成分の加工を容易にする賦形剤および補助剤を含む1つまたは複数の生理学的に許容されるキャリアを使用して従来の様式で配合されることできる。適正な配合は、選ばれた投与経路に依存する。
【0117】
本発明の医薬組成物は、全身投与、または、例えば、医薬組成物を直接に患者の組織領域に注入すること(例えば、病巣内注入)による局所的様式での投与のために好適である。
【0118】
注射の場合、医薬組成物の有効成分は、水溶液において、好ましくは生理学的に適合される緩衝液(例えば、ハンクス溶液、リンゲル溶液、または生理学的な食塩緩衝液など)において配合されることができる。
【0119】
行われ得る投与のための医薬組成物には、水溶性形態での活性な調製物の水溶液が含まれる。加えて、有効成分の懸濁物を適切な油性または水系の注射用懸濁物として調製することができる。好適な親油性の溶媒またはビヒクルには、脂肪油(例えば、ゴマ油など)または合成脂肪酸エステル(例えば、オレイン酸エチルなど)、トリグリセリド、あるいは、リポソームが含まれる。水性の注射用懸濁物は、懸濁物の粘度を増大させる物質、例えば、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ソルビトールまたはデキストランなどを含有することができる。場合により、懸濁物はまた、高濃度溶液の調製について可能にするために、有効成分の溶解性を増大させる好適な安定剤または薬剤を含有することができる。
【0120】
代替において、有効成分は、好適なビヒクル(例えば、殺菌された、パイロジェン非含有の水系溶液)により使用前に構成されるための粉末形態である場合がある。
【0121】
経口投与の場合、医薬組成物は、活性化合物をこの分野でよく知られている医薬的に許容されるキャリアと組み合わせることによって容易に配合されることができる。そのようなキャリアは、医薬組成物が、患者によって経口摂取される錠剤、ピル、糖衣錠、カプセル、液剤、ゲル、シロップ、スラリー剤および懸濁物などとして配合されることを可能にする。経口使用される薬理学的調製物は、固体の賦形剤を使用し、得られた混合物を場合により粉砕し、錠剤または糖衣錠コアを得るために、望ましい好適な補助剤を添加した後、顆粒の混合物を加工して作製されることができる。好適な賦形剤は、特に、ラクトース、スクロース、マンニトールまたはソルビトールを含む糖などの充填剤;セルロース調製物、例えば、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびナトリウムカルボメチルセルロースなど;および/またはポリビニルピロリドン(PVP)などの生理学的に許容されるポリマーである。もし望むなら、架橋されたポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸もしくはその塩(例えば、アルギン酸ナトリウムなど)などの崩壊剤が加えられることができる。
【0122】
糖衣錠コアには、好適なコーティングが施される。この目的のために、高濃度の糖溶液を使用することができ、この場合、糖溶液は、場合により、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、二酸化チタン、ラッカー溶液、および好適な有機溶媒または溶媒混合物を含有しうる。色素または顔料は、活性化合物の量を明らかにするために、または活性化合物の量の種々の組合せを特徴づけるために、錠剤または糖衣錠コーティングに加えられることができる。
【0123】
経口使用されうる医薬組成物としては、ゼラチンから作製されたプッシュ・フィット型カプセル、ならびに、ゼラチンおよび可塑剤(例えば、グリセロールまたはソルビトールなど)から作製された軟いシールされたカプセルが挙げられる。プッシュ・フィット型カプセルは、充填剤(例えば、ラクトースなど)、結合剤(例えば、デンプンなど)、滑剤(例えば、タルクまたはステアリン酸マグネシウムなど)、および場合により安定化剤との混合で有効成分を含有することができる。軟カプセルでは、有効成分は、好適な液体(例えば、脂肪油、流動パラフィンまたは液状のポリエチレングリコールなど)に溶解または懸濁されることができる。さらに、安定化剤が加えられることができる。経口投与される配合物はすべて、選ばれた投与経路について好適な投薬形態でなければならない。
【0124】
口内投与の場合、組成物は、従来の方法で配合された錠剤またはトローチの形態を取ることができる。
【0125】
本発明の関連での使用のために好適な医薬組成物には、有効成分が、意図された目的を達成するために効果的な量で含有される組成物が含まれる。治療効果的な量の決定は、とりわけ、本明細書中に提供される詳細な開示に照らして、十分に当業者の能力の範囲内である。ヒト使用のための例示的な用量が、いくつかの実施形態では、0.03mg/kg〜10mg/kg、0.1mg/kg〜10mg/kg、0.1mg/kg〜2mg/kg、0.1mg/kg〜1mg/kg、0.3mg/kg〜10mg/kg、0.3mg/kg〜2mg/kg、0.3mg/kg〜1mg/kg、または、0.3mg/kg〜0.9mg/kgであり得る。例えば、皮下投与される0.3mg/kg以上の用量が、血中の血小板レベルを、化学療法を受けるヒト患者において上昇させることにおいて効果的であったことが見出された。
【0126】
場合により、本発明のペプチドは1つまたは複数のさらなる活性な薬剤とともに配合することができ、あるいは、1つまたは複数のさらなる活性な薬剤との(同時または逐次)併用で投与することができる。いくつかの実施形態において、組成物はさらに、本発明のペプチドに加えて、血小板産生を誘導するか、または高める1つまたは複数の他の薬剤(例えば、TPOおよびTPOアゴニストなど)を含むことができる。TPOアゴニスト(またはTPO受容体アゴニスト)は、本明細書中で使用される場合、TPOに特徴的であって、かつ、TPOの薬理学的活性と実質的に類似する薬理学的活性を有する分子を示す。例えば、そのような分子は、c−mpl(TpoR)受容体、すなわち、トロンボポエチンの生理学的標的にアゴニスト様式で結合するTPOアナログまたはTPO模倣体あるいは他の分子(例えば、タンパク質、ペプチド、抗体および小分子など)であり得る。一般的なTPOアゴニストは、血小板新生活性を、例えば、巨核球の増殖および分化を増大させることにおいて有する。様々な具体的な実施形態において、本発明のペプチドは、血小板新生の様々な局面または血中の血小板レベルを高めるために相乗的様式または付加的様式で作用することができる。
【0127】
市販されているTPOアゴニストを含めて、血小板産生を誘導するか、または高める薬剤の具体的な例が、Amgenによってトロンボポエチン受容体結合ペプチボディー(peptibody)として開発されるRomiplostim(AMG−531、これはNplateの商品名で上市される);GlaxoSmithKlineによってTPO受容体アゴニストとしてPromactaの商品名で上市されるEltrombopag(rINN、SB−497115);AkaRxによって小分子のトロンボポエチン受容体アゴニストとして開発されるAKR−501;Ligand Pharmaceuticalsによって経口トロンボポエチン模倣体として開発されるLGD−4665;Adherex Technologiesによって、いくつかの化学療法様式から生じる骨髄抑制の防止のための化学的保護剤として提案されるN−アセチルシステイン;Johnson&Johnsonによってペグ化ペプチドのトロンボポエチン受容体アゴニストとして開発されるpeg−TPOmp;そして、GlaxoSmithKlineおよびLigand Pharmaceuticalsによって、経口非ペプチド型小分子のトロンボポエチン受容体アゴニストとして開発されるSB−559448である。血小板産生を刺激し得る他のサイトカインには、例えば、IL−1、IL−3、IL−6およびGM−CSFが含まれる。
【0128】
そのような同時投与薬物(例えば、TPOアゴニストなど)の適切な用量および投与スキームが利用可能であり、当業者によって必要に応じて適合化され得る。例えば、Nplate(Romiplostim)は、コルチコステロイド剤、免疫グロブリン剤または脾臓摘出に対する不十分な応答を有したことがある慢性的免疫性(特発性)血小板減少性紫斑病(ITP)の患者において血小板減少を処置するために適応されるトロンボポエチン受容体アゴニストである。Nplateは現在、10mcg/kgの最大一週間用量で適応される。
【0129】
場合により、さらなる活性な薬剤にはまた、他のサイトカインまたはサイトカイン受容体調節剤が含まれ得る。例えば、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)は、血小板減少を抑えるペプチドの能力を妨害しなかったことがこの場合に明らかにされた。したがって、いくつかの実施形態では、本発明のペプチドは、G−CSFあるいは(当業者によって理解されるようなG−CSFの生物学的活性を有する)そのアナログまたはアゴニスト(例えば、フィルグラスチム、レノグラスチムおよびナルトグラスチム)との併用で投与することができる。本発明のペプチドは、単独またはG−CSFとともに投与されたときのどちらでも、血小板数をインビボにおいて急性様式および長期的様式の両方で(数分または数日の内に)上昇させることができた。
【0130】
他の実施形態において、ペプチドは、抗ガン処置との併用で、例えば、1つまたは複数の化学療法薬物との併用で使用することができる。例えば、本発明のペプチドは、化学療法誘導の血小板減少を抑えるために5−フルオロウラシル(5−FU)と一緒に安全に投与され得ることが本発明によって明らかにされた。5−FUは、ガンの処置において使用される、ピリミジンアナログとして作用する例示的な代謝拮抗剤剤化学療法薬物である。いくつかの実施形態において、本発明のペプチドを化学療法薬物と同時投与することにより、血小板減少症の危険性が低くなり、したがって、化学療法が、長い継続期間にわたって、および/または、有害な影響のために他の場合には禁忌となるであろう増大した用量で継続されることが可能となる。他の実施形態において、化学療法薬物および本発明のペプチドは、出血の危険性を同時に低下させるとともにガン形成を阻害する点で相乗効果を有し得る。別の実施形態において、本発明の組成物および方法は、化学療法の安全性を、ガンに苦しむ患者において高める。別の実施形態において、本発明の組成物および方法は、化学療法の有効性を、ガンに苦しむ患者において高める。様々な実施形態において、併用処置は、血小板レベルを、化学療法を受けるガン患者において急性様式および長期的様式の両方で高める。いくつかの場合には、そのような抗ガン薬物および他の薬物または治療様式の使用が血小板減少患者では除外または制限されることがある。例えば、C型肝炎に起因する肝硬変を有する血小板減少患者では、低い血小板数により、インターフェロン処置が不可能となることがある。いくつかの実施形態において、本発明のペプチドは、さらなる薬物または物質(例えば、化学療法薬物)とともに同時投与して(または、医薬組成物を形成するために同時配合して)、血小板減少症またはその危険性のために他の場合にはそのような薬物が投与されないであろう患者におけるそのような薬物または物質の使用を容易にすることができる。
【0131】
化学療法薬物には、アルキル化剤(例えば、シクロホスファミド、イホスファミド、メルファラン、クロラムブチル、BCNU、CCNU、デカルバジン、プロカルバジン、ブスルファンおよびチオテパ)、代謝拮抗剤(例えば、メトトレキサート、5−フルオロウラシル、シタラビン、ゲムシタビン、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、フルダラビンおよびクラドリビン)、アントラサイクリン系薬物(例えば、ダウノルビシン、ドキソルビシン、イダルビシン、エピルビシンおよびミトキサントロン)、カンプトテシン系薬物(例えば、イリノテカンおよびトポテカン)、タキサン系薬物(例えば、パクリタキセルおよびドセタキセル)および白金系薬物(例えば、シスプラチン、カルボプラチンおよびオキサリプラチン)が含まれるが、これらに限定されない。
【0132】
いくつかの他の実施形態において、本発明のペプチドは、他の血小板調節剤または凝固調節剤とともに同時投与または同時配合することができる。
【0133】
さらに他の例示的な実施形態において、ペプチドは、この技術分野では知られているように、血小板減少症の処置において使用される他の薬剤とともに同時投与または同時配合することができる。例えば、免疫調節薬物、例えば、いくつかの場合には血小板減少症の処置のために適応されるコルチコステロイド剤または免疫抑制剤を標準的プロトコルに従って使用することができる。
【0134】
さらに別の実施形態において、組成物は、唯一の有効成分としての本発明のペプチドからなる。
【0135】
別の実施形態において、本発明による組合せが、1つまたは複数の有効成分(本発明のペプチド、および/または、本明細書中で指定されるようなさらなる有効成分)と、有効成分を本発明の方法で同時投与するための説明書とを含むキットの形態で提供される。例えば、別の実施形態において、i)血小板新生を刺激する少なくとも1つのサイトカイン、好ましくはTPOまたはTPOアゴニスト、および、ii)配列番号1に示されるようなアミノ酸配列のペプチドまたはそのアナログを含むキットが提供される。別の実施形態において、1処置単位分の本発明のT−140アナログを単位投薬形態で有する容器と、1処置単位分のTPOを有する容器とを含む、1哺乳動物個体のための1クール分の処置を含有する医薬用パックが提供される。
【0136】
治療的使用
様々な実施形態において、本発明のペプチドは、血小板障害を処置するために有用である。一般に、血小板障害には、血小板における異常な増大に関連する障害(血小板血症、骨髄増殖性障害)、血小板における低下に関連する障害(血小板減少症)、または、血小板機能異常に関連する障害が含まれる。これらの状態のどれもが、止血プラグの不完全な形成および出血を引き起こし得る。本発明の実施形態によれば、本発明の方法および組成物は、低下した血小板レベルまたは最適でない血小板レベルによって特徴づけられる状態において、また、血小板減少症の処置および防止において血小板数を上昇させるために特に有用である。
【0137】
血小板減少症の原因を機序によって分類することができ、その原因には、損なわれた血小板産生、血小板生存が正常である血小板の増大した脾臓捕獲、増大した血小板破壊または血小板消耗(免疫学的原因および非免疫学的原因の両方)、血小板の希釈、および、これらの組合せが含まれる。特定の状態の診断が典型的には、末梢血塗沫標本を使用して、また、必要ならば、骨髄吸引を使用して行われる;増大した脾臓捕獲が巨脾症によって示唆される。
【0138】
血小板減少症が、例えば、再生不良性貧血または白血球の患者、骨髄抑制薬物(例えば、化学療法)を受ける患者、および、発作性夜間血色素尿症の一部の患者では、骨髄における減少した巨核球または巨核球欠損によって引き起こされることがある。血小板減少症はまた、例えば、アルコール誘導血小板減少症、HIV関連血小板減少症、骨髄異形成症候群およびビタミンB12欠乏症またはホラート(葉酸)欠乏症では、骨髄における巨核球の存在にもかかわらず、低下した血小板産生から生じることがある。
【0139】
例えば、先天性巨核球減少性血小板減少症(CAMT)は、血小板減少および巨核球減少(少ない数の血小板および巨核球)によって顕在化する希な遺伝性疾患である。骨髄における巨核球の非存在が、関連した身体的異常を何ら伴うことなく認められる。この障害の原因は、高レベルの血清TPOにもかかわらず、TPO受容体(c−mpl)に対する遺伝子における変異であるようである。CAMTに対する第1位の処置が骨髄移植である。頻繁な血小板輸血が典型的には、血小板数が危険なレベルにまで下がらないことを保証するために要求される。
【0140】
TAR症候群(橈骨欠損を伴う血小板減少症)は、前腕における橈骨の欠損、および、劇的に低下した血小板数によって特徴づけられる希な遺伝性障害である。血小板減少の症状は結果として、紫斑および潜在的に生命を危うくする出血を生じさせる。血小板異常は、トロンボポエチンに対する応答の欠如に恐らくは関連する異常な巨核球形成または阻害された巨核球形成から生じるかもしれない血小板産生低下を反映する。
【0141】
TAR患者のための主たる処置が血小板輸血であり、この場合、造血幹細胞移植(HSCT)が、血小板輸血にもかかわらず、出血を伴って依然として血小板減少のままである患者のための選択肢である。加えて、脾臓摘出が成人患者において効果的である場合がある。血小板減少症の患者はこれまで、エリスロポエチンおよびインターロイキン−6によるサイトカイン処置に対して応答しており、だが、確立された処置様式はこれまで臨床的に承認されていない。
【0142】
脾臓捕獲に起因する血小板減少症が、巨脾症をもたらす様々な障害において、例えば、うっ血性巨脾症を伴う肝硬変、ゴーシュ病、および、骨髄化生を伴う骨髄線維症において生じることがある。捕獲が、進行した肝硬変によって引き起こされるうっ血性巨脾症の患者において予想される。巨脾症をもたらす障害がまた、(例えば、骨髄化生を伴う骨髄線維症において)血小板産生を損なう場合を除き、血小板数が通常、30000/μLを超える。血小板がエピネフリンによって脾臓から放出され、したがって、ストレス時には利用可能であるかもしれない。したがって、脾臓捕獲だけによって引き起こされる血小板減少症は典型的には、出血を引き起こさない。脾臓摘出は血小板減少症を治すが、同時的骨髄不全から生じる重篤な血小板減少症が存在する場合を除いて適応されない。
【0143】
血小板の免疫学的破壊が、例えば、結合組織障害、薬物誘導血小板減少症、HIV関連血小板減少症、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、リンパ球増殖性障害、新生児自己免疫性血小板減少症、輸血後紫斑および妊娠(妊娠血小板減少症)において生じる。血小板の非免疫学的破壊は、例えば、播種性血管内凝固、敗血症、ある種の全身性感染症(例えば、肝炎、エプスタイン・バールウイルス、サイトメガロウイルス)、急性呼吸窮迫症候群における血小板減少症、および、血栓性血小板減少性紫斑病−溶血性−尿毒症性症候群を特徴とする。症状発現が、点状出血、紫斑および粘膜出血である。
【0144】
特発性(免疫学的)血小板減少性紫斑病は、全身性疾患に関連しない血小板減少症によって引き起こされる出血障害である。典型的には、これは成人では慢性的であるが、小児では通常、急性的で、自己制限的である。特発性血小板減少性紫斑病(ITP)は通常、構造的な血小板抗原に向けられる自己抗体の発達から生じる。小児ITPにおいて、自己抗体が、巨核球へのウイルス抗原の結合によって誘発され得る。症状および徴候が、点状出血、紫斑および粘膜出血である。甚だしいGI出血および血尿は滅多に見られない。共存する小児ウイルス感染によって肥大している場合を除き、脾臓は正常なサイズである。
【0145】
ITPの処置には、コルチコステロイド剤、脾臓摘出および免疫抑制剤が含まれる。生命を危うくする出血については、血小板輸血、IVコルチコステロイド剤およびIV免疫グロブリンが必要とされる。血小板数が10000/μL〜20000/μLよりも少なく、激しい出血が存在する患者については、トロンボポエチン模倣薬物、例えば、ロミプロスチムおよびエルトロンボパグなどを使用することができる。しかしながら、これらの薬物は、寛解の誘導ではなく、むしろ、維持療法のために使用され、血小板数を50000/μLを超えて維持するために継続して投与される必要がある。ITPおよび生命を危うくする出血を有する小児または成人では、迅速な食作用阻止が、IV免疫グロブリン(1g/kg)を1日1回、1日〜2日間与えることによって試みられる。この処置は通常、血小板数が2日〜4日の内に上昇することを引き起こし、しかし、その数は2週間〜4週間だけ高いままである。ITPおよび生命を危うくする出血を有する患者にはまた、血小板輸血が施される。血小板輸血は予防的には使用されない。
【0146】
輸血後紫斑により、免疫学的な血小板破壊が、ITPに類似する症状発現とともに、かつ、7日前〜10日前における輸血の治療歴とともに引き起こされる。患者は通常の場合には女性であり、ほとんどの人々には存在する血小板抗原(PLA−1)を欠いている。PLA−1陽性血小板による輸血により、患者のPLA−1陰性血小板と反応し得る抗PLA−1抗体の形成が刺激される。重篤な血小板減少症が生じ、これは、沈静化するために2週間〜6週間を要する。
【0147】
結合組織(例えば、全身性エリテマトーデス、SLE)またはリンパ球増殖性障害により、免疫学的な血小板減少症が生じ得る。コルチコステロイド剤および脾臓摘出が処置において効果的である場合がある。
【0148】
薬物誘導の血小板減少症が典型的には、血小板に結合した薬物が新しい「異物」抗原を生じさせる免疫反応を引き起こすことによって生じる。症状発現が、薬物摂取の履歴を有する患者においてITPに類似する。薬物が中止されるとき、血小板数が典型的には、1日〜2日の内に増大し始め、7日以内に正常にまで回復する。血小板減少症を誘導することがある一般に使用される薬物には、キニーネ、トリメトプリム/スルファメトキサゾール、糖タンパク質IIb/IIIa阻害剤(アブシキシマブ、チロフィバン)、ヒドロクロロチアジド、カルバマゼピン、アセトアミノフェン、クロルプロパミド、ラニチジン、リファンピンおよびバンコマイシンが含まれる。
【0149】
自己免疫性血小板減少性紫斑病(AITP)は、血小板が細網内皮系において自己抗体によってオプソニン化され、食作用細胞によって早まって破壊される免疫媒介障害である。AITPにおいて見られる血小板減少症は主として、脾臓および肝臓による増大した血小板クリアランスの結果である。AITPにおける体液性異常が明確に定義されるが、T細胞がAITPの発症において大きな役割を果たすことがますます明らかである。この疾患の急性形態および慢性形態は、急性AITPは多くの場合、感染性の病気が先に生じ、そして、一般には、最初の症状提示の2、3週間の内に自然に消散するという点で異なる。この障害の慢性形態は、6ヶ月を超えての血小板減少の持続として定義され、一般には成人において生じ、IgG自己抗体によって主に媒介される臓器特異的な自己免疫疾患として分類される。
【0150】
未分画ヘパリンを受ける患者の5%までが血小板減少症を発症し、これは、(例えば、IVラインまたは動脈ラインを開けたままにするためにフラッシュで使用される)非常に低い用量のヘパリンを用いてさえ生じることがある。機序は通常、免疫学的である。出血が生じ得るが、より一般には血小板が過度に凝集し、このことは血管の閉塞を引き起こし、これにより、生命を危うくすることがある奇異な動脈血栓症および静脈血栓症が引き起こされる(例えば、四肢動脈の血栓塞栓性閉塞、卒中、急性MI)。
【0151】
HIV感染により、免疫学的な血小板減少症が、ITPに類似する症状発現を伴って引き起こされることがある。血小板数がコルチコステロイド剤により増大し得るが、コルチコステロイド剤は、血小板数が20000/μL未満に低下する場合を除き、控えられることが多い。これは、これらの薬物は免疫機能をさらに低下させることがあるからである。血小板数はまた、通常の場合、抗ウイルス薬による処置の後で増大する。他の感染症、例えば、全身性のウイルス感染症(例えば、エプスタイン・バールウイルス、サイトメガロウイルス)、リケッチア感染症(例えば、ロッキー山紅斑熱)および細菌性敗血症などが典型的には、血小板減少症に関連する。
【0152】
典型的には無症候性であるが、軽度の血小板減少が、正常な妊娠の約5%において妊娠後期に生じる(妊娠血小板減少症);軽度の血小板減少は通常の場合には軽症であり(70000/μL未満の血小板数は希である)、処置を何ら必要とせず、出産後に消散する。しかしながら、重度の血小板減少症が、子癇前症およびHELLP症候群(溶血、上昇した肝機能試験および低い血小板)の妊婦において現れることがある;そのような女性は典型的には、即刻の出産を必要とし、血小板数が20000/μL未満(または、帝王切開が行われることになるならば、50000/μL未満)であるならば、血小板輸血が検討される。
【0153】
敗血症は多くの場合、感染の重篤度と同時進行する非免疫学的な血小板減少症をもたらす。この血小板減少症は多数の原因を有する:播種性血管内凝固、血小板と会合し得る免疫複合体の形成、補体の活性化、および、損傷を受けた内皮表面での血小板の沈着。
【0154】
急性呼吸窮迫症候群の患者では、肺の毛細血管床における血小板の沈着に対して恐らくは二次的である非免疫学的な血小板減少症が現れることがある。血小板減少症はまた、慢性肝臓疾患の頻発する合併症であり、進行した疾患を示すものであると見なされる。低い血小板数は、部分的には門脈高血圧および脾機能亢進、低下したトロンボポエチン産生、ならびに、ウイルス誘導の骨髄抑制の影響のためである。
【0155】
血小板減少症は、C型肝炎ウイルス(HCV)感染患者における慢性肝臓疾患の頻発する合併症であり、進行した疾患を示すものであると見なされる。HCV関連肝硬変に関連する血小板減少症における低い血小板数は、部分的には門脈高血圧および脾機能亢進、低下したトロンボポエチン産生、ならびに、ウイルス誘導の骨髄抑制の影響のためであると考えられる。
【0156】
加えて、血小板減少症が、希釈によって、例えば、大量の血液交換または交換輸血において(貯蔵血液における血小板生存性の喪失のために)生じることがある。
【0157】
本明細書中で使用される場合、「血小板減少(症)」は、罹患個体における血小板レベルが、例えば、産生、分布および/または破壊における乱れのために、その個体についての血小板数の正常な範囲よりも低く低下する障害である。典型的には、正常な血小板数は150000/μL〜450000/μLの間である。75000/μL〜150000/μLの血小板数が悪性度1の血小板減少症として定義され、50000/μL〜75000/μLが悪性度2として定義され、25000/μL〜50000/μLが悪性度3として定義され、25000/μL未満が悪性度4の血小板減少症として定義される。
【0158】
出血の危険性が血小板数に対して逆比例している。血小板数が50000/μLよりも少ないとき、小さな出血が容易に生じ、大きな出血の危険性が増大し、20000/μL〜50000/μLの間の数は、小さな外傷でさえ、外傷により出血しやすくなる。数が20000/μLよりも少なくなる場合、特発性出血が生じることがある;数が5000/μLよりも少なくなる場合、重度の特発性出血がより起こりやすくなり、重度の血小板減少症が多くの場合、生命を危うくする血小板減少症として示される。
【0159】
他の実施形態において、血小板減少症はまた、その個体におけるある特定の参照時点で測定される血小板数と比較されるときの個体における血小板数における低下を示す。個体における血小板数における低下は、参照時点での値と比較して、20%、30%、40%、60%、80%、90%、95%またはそれどころかそれ以上を超えての低下であり得る。ある特定の参照時点で測定される血小板数と比較されるときの血小板数における低下には、特定の個体では、出血における変化が付随し得るが、一方で、他の個体では、同程度の低下には、出血における変化が付随しない。述べられる参照時点は、例えば、治療(例えば、放射線または化学療法など)の開始であり得る。
【0160】
いくつかの実施形態において、本発明のペプチドは、血小板減少症を処置するために使用される。他の実施形態において、本発明のペプチドは、血小板減少症を防止するために使用される。他の実施形態において、本発明のペプチドは、血小板減少症の発症を遅らせるために使用される。他の実施形態において、本発明のペプチドは、血小板減少症の継続期間を短くするために使用される。他の実施形態において、本発明のペプチドは、血小板減少症の症状を処置するために、または、血小板減少症の症状を防止するために、または、血小板減少症の症状の継続期間を短くするために、または、血小板減少症の症状を遅らせるために使用される。他の実施形態において、本発明のペプチドは、血小板減少を縮小させるために(例えば、この疾患またはその症状の継続期間または強さを低減するために、あるいは、この疾患またはその症状の発症を遅らせるために)使用される。
【0161】
いくつかの実施形態において、血小板減少症は、増大した血小板破壊に関連する。いくつかの特定の実施形態において、破壊は免疫学的である。いくつかの特定の実施形態において、破壊は非免疫学的である。他の特定の実施形態において、破壊は薬物誘導される。他の実施形態において、血小板減少症は、増大した血小板捕獲に関連する。他の実施形態において、血小板減少症は血小板希釈に関連する。他の実施形態において、血小板減少症は、損なわれた血小板産生に関連する。
【0162】
他の実施形態において、血小板減少症は、増大した血小板破壊、増大した血小板捕獲、血小板希釈および損なわれた血小板産生の少なくとも1つに関連する。他の実施形態において、血小板減少症は、上記状態のただ1つだけ(例えば、増大した血小板破壊、増大した血小板捕獲、血小板希釈または損なわれた血小板産生)に関連する。何らかの理論または作用機序によってとらわれることを望まないが、いくつかの実施形態において、本発明の方法は血小板放出を促進させることができ、あるいは、血小板破壊を低下させ、または打ち消すことができる。
【0163】
いくつかの実施形態において、対象は他の場合には、造血剤、または、骨髄障害を処置するために使用される薬剤による処置が行われない(または、他の実施形態において、そのような処置について受け入れられない)。他の実施形態において、血小板減少症は好中球減少症に関連しない。他の実施形態において、血小板減少症は貧血に関連しない。他の実施形態において、血小板減少症は巨核球減少症に関連しない。他の実施形態において、血小板減少症は骨髄欠乏症または骨髄抑制に関連しない。さらなる実施形態において、対象は、他の血小板障害(例えば、損なわれた血小板機能または異常な血小板機能に関連する障害、あるいは、凝血または凝固の欠如または異常に関連する障害など)に罹患していない。
【0164】
他の実施形態において、血小板減少症は重度の血小板減少症である。特定の実施形態において、血小板減少症は悪性度4の血小板減少症である。他の実施形態において、血小板減少症は急性血小板減少症である。他の実施形態において、血小板減少症は慢性血小板減少症である。他の実施形態において、血小板減少症は、50000/μL未満の血中の血小板数によって特徴づけられる。他の実施形態において、血小板減少症は、20000/μL〜50000/μLの間の血中の血小板数によって特徴づけられる。他の実施形態において、血小板減少症は、20000/μL未満の血中の血小板数によって特徴づけられる。他の実施形態において、血小板減少症は、10000/μL未満の血中の血小板数によって特徴づけられる。他の実施形態において、血小板減少症は、5000/μL未満の血中の血小板数によって特徴づけられる。他の実施形態において、血小板減少症は、激しい出血によって特徴づけられる。特定の実施形態において、血小板数は10000/μL〜20000/μLよりも少なく、激しい出血が存在する。他の実施形態において、血小板減少症は、生命を危うくする出血によって特徴づけられる。他の実施形態において、血小板減少症は、組織損傷を伴う出血によって特徴づけられる。他の実施形態において、血小板減少症は症候性である。例えば、症状には、下記の1つまたは複数が含まれ得る:大量出血、点状出血、紫斑、粘膜出血、甚だしいGI出血、血尿、巨脾症、または、他の実施形態では血栓症。他の実施形態において、血小板減少症は無症候性である。
【0165】
別の実施形態において、対象の血小板のレベルを上昇させるための方法であって、効果的な量の本発明のペプチドを対象に投与することを含む方法が提供される。いくつかの実施形態において、ペプチドは、血小板を、そのような細胞が、例えば、骨髄移植または化学療法、あるいは、ガン患者では放射線照射のために激減している状態において上昇させるために使用することができる。したがって、これらの患者における血小板低下に起因する死亡および合併症の危険性が小さくなる。他の実施形態において、ペプチドは、血小板のレベルを、放射線照射または化学療法により誘導される血小板減少症を患っていない患者において上昇させるために使用することができる。例えば、限定されないが、本発明の方法は、いくつかの実施形態では、特発性血小板減少性紫斑病の患者を処置するために使用される。他の実施形態において、ペプチドは、血小板のレベルを、特発性血小板減少性紫斑病の患者において上昇させるために使用することができる。他の実施形態において、ペプチドは、血小板のレベルを、先天性巨核球減少性血小板減少症の患者において上昇させるために使用することができる。他の実施形態において、ペプチドは、先天性巨核球減少性血小板減少症を処置するために使用することができる。他の実施形態において、ペプチドは、血小板のレベルを、橈骨欠損を伴う血小板減少症の患者において上昇させるために使用することができる。他の実施形態において、ペプチドは、橈骨欠損を伴う血小板減少症を処置するために使用することができる。他の実施形態において、ペプチドは、血小板のレベルを自己免疫性血小板減少症において上昇させるために使用することができる。他の実施形態において、ペプチドは、自己免疫性血小板減少症を処置するために使用することができる。他の実施形態において、ペプチドは、血小板のレベルを、HCV関連肝硬変に関連する血小板減少症の患者において上昇させるために使用することができる。他の実施形態において、ペプチドは、HCV関連肝硬変に関連する血小板減少症を処置するために使用することができる。他の実施形態において、ペプチドは、本態性血小板減少症を処置するために使用することができる。
【0166】
他の実施形態において、方法は、前記対象の末梢血で測定されるような血小板のレベルを上昇させるために使用することができる。
【0167】
様々な実施形態において、処置は血小板減少症における寛解を誘導することができる。いくつかの実施形態において、血中の血小板レベルを正常なレベルにまで回復させることができ、または、悪性度がより低い血小板減少症を特徴づけるレベルにまで回復させることができる(例えば、悪性度4から、悪性度3、悪性度2または悪性度1に、悪性度3から、悪性度2または悪性度1に、その他)。特定の実施形態において、処置は、50000/μLを超える血中の血小板レベルを対象において誘導または維持することに関連する。他の実施形態において、処置は、20000/μL〜50000/μLの間の血中の血小板レベルを対象において誘導または維持することに関連する。他の実施形態において、処置は、20000/μLを超える血中の血小板レベルを対象において誘導または維持することに関連する。他の実施形態において、処置は、対象における血小板レベルを、参照時点での値(例えば、処置開始、または、本発明のペプチドによって処置されないコントロール対象におけるレベル)と比較して、20%、30%、40%、60%、80%、90%、95%またはそれ以上でさえも増大させることを生じさせる。
【0168】
他の実施形態において、処置は、前記対象の末梢血における血小板の著しい上昇を急性様式および/または長期様式で誘導する。著しい上昇は、本明細書中で使用される場合、いくつかの実施形態では、統計学的に有意な上昇、臨床的に有意な上昇(すなわち、対象の状態、症状の顕在化などにおける改善を生じさせる上昇)、および/または、当業者によって認識されるような著しい上昇を示す。例えば、血小板レベル(例えば、血中レベル)を、所定の継続期間の後で、約10%、20%、30%、40%、60%、80%、90%、95%またはそれ以上高めることができる。急性の上昇は、著しい増大が、投与から24時間未満の後で、また、数時間または数分の内に、例えば、10分、20分、30分、40分、50分または60分の内に、あるいは、1時間〜24時間の内に、例えば、1時間、2時間、3時間、4時間または8時間の内に生じることを意味する。長期の上昇は、増大が、投与から数日または数週間の内に(例えば、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日または10日の内に)生じるか、または、観測され得ることを意味する。
【0169】
別の実施形態において、本発明は、血小板減少症に罹患する対象を処置するために使用することができ、ただし、この場合、前記ペプチドの投与が、外科的手順の24時間以内に(例えば、手術前1時間、2時間、3時間、4時間もしくは8時間、または、10分、20分、30分、40分または50分において、あるいは、他の実施形態では、手術期間中に、あるいは、手術後1時間、2時間、3時間、4時間もしくは8時間、または、10分、20分、30分、40分または50分において)開始される。
【0170】
別の実施形態において、方法は、血小板減少症の臨床的症状を低下させる(例えば、血小板減少症の臨床的症状の継続期間または強さを低減し、あるいは、血小板減少症の臨床的症状の発症を遅らせる)。
【0171】
世界保健機関は、出血の重篤度を見積もるための標準化された評価尺度を策定した。グレード0−出血なし;グレード1−点状出血性の出血;グレード2−軽度の失血(臨床的に著しい);グレード3−大量の失血、輸血を必要とする(重症);グレード4−衰弱させる失血、死に関連する網膜性または脳性。様々な実施形態において、方法は、グレード2、グレード3またはグレード4の出血(臨床的に著しい出血、重篤な出血、または、衰弱させる出血)の縮小、抑制、処置または防止のために使用することができる(この場合、それぞれの可能性が本発明の別個の実施形態を表す)。別の実施形態において、ペプチドは、血中の血小板レベルを出血エピソードの期間中に上昇させるために使用される。別の実施形態において、方法は、ある部位で生じる過度な出血を抑えるために使用される。
【0172】
本発明のペプチドは予想外にも、トロンボポエチンの活性をインビボで強化し、したがって、改善されたトロンボポエチン活性を低下した副作用とともに可能にすることが見出されている。したがって、別の実施形態において、血小板レベルのトロンボポエチン誘導上昇をその必要性のある対象において高めるための方法であって、配列番号1に示されるようなアミノ酸配列を有するペプチドあるいはそのアナログまたは誘導体と(同時または逐次的に)併用してトロンボポエチンを前記対象に投与すること含む方法が提供される。別の実施形態において、血小板減少の継続期間をその必要性のある対象において短くするための方法であって、配列番号1に示されるようなアミノ酸配列を有するペプチドあるいはそのアナログまたは誘導体との同時併用または逐次併用でTPOの効果的な量を前記対象に投与すること含む方法が提供される。別の実施形態において、本発明のペプチドは、本明細書中に詳述されるような血小板減少症の処置のためにTPOとの併用で使用することができる。
【0173】
投与経路および投与用量は患者の状態に従って調節することができ、様々な療法が、本開示および例を考慮して当業者(例えば、処置医師)には明らかであろう。いくつかの実施形態において、ペプチドは、例えば、急性的または一時的な血小板上昇が必要とされるとき(例えば、外科的手順の前に)、急性様式で、例えば、単回用量投与または短期間投与として投与することができる。例えば、実施例3において明らかにされるように、4F−ベンゾイル−TN14003のただ1回だけの皮下注射(0.9mg/kg)により、血中の血小板レベルの上昇が、投与後数分または数時間で測定されるとき、幹細胞採取について予定されるヒト血小板減少患者において誘導された。別の実施形態において、ペプチドは、長期様式で、例えば、反復投与または長期間投与として投与することができる。例えば、実施例1および実施例2は、数日間にわたる4F−ベンゾイル−TN14003の1日1回の皮下注射により、血小板レベルを上昇させることにおける長期に及ぶ効果が誘導されたことを示す。いくつかの実施形態において、ペプチドは全身投与される。他の実施形態において、ペプチドは局所投与される。特定の実施形態において、ペプチドは非経口投与される。例えば、ペプチドを、皮下投与、静脈内投与または皮内投与により投与することができる。
【0174】
他の実施形態において、本発明は、血小板のレベルをその必要性のある対象において上昇させるための医薬品を調製するための、配列番号1に示されるようなアミノ酸配列のペプチドまたはそのアナログの使用に関する。
【0175】
他の実施形態において、本発明は、血小板減少症をその必要性のある対象において処置または防止するための医薬品を調製するための、配列番号1に示されるようなアミノ酸配列のペプチドまたはそのアナログの使用に関連する。
【0176】
さらなる実施形態において、本発明は、血小板レベルのトロンボポエチン誘導上昇をその必要性のある対象において高めるための医薬品を調製するための、配列番号1に示されるようなアミノ酸配列のペプチドまたはそのアナログの使用を開示し、ただし、この場合、前記対象はトロンボポエチンまたはトロンボポエチンアゴニストにより同時に処置される。
【0177】
他の実施形態によれば、本発明は、出血をその必要性のある対象において抑えるための医薬品を調製するための、配列番号1に示されるようなアミノ酸配列のペプチドまたはそのアナログの使用を提供する。
【0178】
他の実施形態において、本発明は、本明細書中に詳述されるように、血小板のレベルをその必要性のある対象において上昇させるための、あるいは、血小板減少症をその必要性のある対象において処置または防止するための、あるいは、血小板レベルのトロンボポエチン誘導上昇をその必要性のある対象において高めるための、あるいは、出血をその必要性のある対象において抑えるための、配列番号1に示されるようなアミノ酸配列のペプチドまたはそのアナログを含む医薬組成物に関連する。
【実施例】
【0179】
材料および方法
試薬
トロンボポエチンをPROSPEC catから購入した(カタログ#CYT−346)。4F−ベンゾイル−TN14003(配列番号1)が、Novotide Ltd.によって合成された。
【0180】
マウスおよび実験プロトコル
メスのC57BL/6マウス(7週齢〜8週齢)を、Harlen Israelから購入し、Hebrew大学動物施設(Jerusalem、イスラエル)で特定病原体非含有条件のもとで維持した。
【0181】
4F−ベンゾイル−TN14003およびトロンボポエチンを様々な濃度でPBSにおいて再構成した。マウスに、200μlの総体積での皮下注射を行った。4F−ベンゾイル−TN14003(100ug/マウス、5mg/Kg)を1日1回、5日間注射した。5日目に、血液を採取し、血小板数について試験し、造血性コロニーを骨髄において試験した。トロンボポエチンを、(0.5ug/マウス)で1日1回、3回注射した。5日目に、血液を採取し、血小板数について試験し、造血性コロニーを骨髄において試験した。別の一群において、4F−ベンゾイル−TN14003(100ug/マウス)を1日1回、5日間注射した。3日目、4日目および5日目に、マウスにトロンボポエチンをさらに注射した(すなわち、0.5ug/マウスで1日1回、3回)。5日目に、血液を採取し、血小板数について試験し、造血性コロニーを骨髄において試験した。コントロールマウスにはPBSを適切な体積で注射した。5日目に、血液を採取し、血小板数について試験し、造血性コロニーを骨髄において試験した。
【0182】
化学療法実験において、150mg/kgでの5−フルオロウラシル(5−FU)を生理的食塩水に溶解し、腹腔内に注射した(0日目)。マウスを、5FUによる処置の前に、4F−ベンゾイル−TN14003(5mg/Kg)により5日間、または、TPO(0.5μg/マウス)により3日間処置した。4F−ベンゾイル−TN14003処置マウスはさらに、5FU投与後1日から4F−ベンゾイル−TN14003(5mg/Kg)により毎日処置され、処置が実験終了まで続けられた。血液サンプルを4F−ベンゾイル−TN14003投与またはコントロール(PBS)注射の後1時間で採取した;総血球数が、American Medical Laboratories,Israelによって試験された。一部の実験では、G−CSFを、0.2mlの総体積において5μg/マウスの最終濃度で、実験終了まで5FU投与後1日から毎日s.c.注射した。
【0183】
造血始原細胞(HPC)アッセイ
骨髄における始原細胞の数を評価するために、コロニー形成細胞アッセイを処置後の造血性コロニーの生成のために使用した。コロニーを、1%のメチルセルロース、15%のFBS、1%のウシ血清アルブミン(BSA)、3U/mlのrhEPO、10−4Mの2−メルカプトエタノール、2mMのL−グルタミン、50ng/mLのrmSCF、10ng/mLのrmIL−3、10μg/mLのrhインスリン、10ng/mLのrhIL−6および200μg/mLのヒトトランスフェリンを含有するイスコブ改変ダルベッコ培地(IMDM)(Methocult GF M3434;StemCell Technologies Inc.)に細胞を置床することによってアッセイした。培養物を、5%COを含有する加湿雰囲気において37℃でインキュベーションした。7日後、典型的なコロニーを、光学顕微鏡を使用して形態学的基準によって目視によりスコア化した。
【0184】
統計学的分析
結果が、平均±SDとして表される。統計学的な差を両側スチューデントt検定の分析によって求めた。pが0.05未満である値を、統計学的に有意であると見なした。
【0185】
臨床プロトコル
4F−ベンゾイル−TN14003の第I/II相の、非ランダム化非盲検による単回服用、用量増大、安全性研究を、骨髄から末梢血への始原幹細胞の可動化を誘導するためにG−CSFを受ける多発性骨髄腫(MM)の患者において行った。
【0186】
すべての適確患者が、外来環境で、その計画された治療法の一部として、シクロホスファミド(シトキサン(Neosar)に対する一般名)を、認められているMM診療に従って4gr/mで受けた。G−CSF(ニューポジェン)が5日後に開始され、幹細胞採取の終了まで続けられた(1日あたり5μg/kgで、毎日、18:00以降に投与された)。WBCおよび血小板のモニターリングを7日後および10日後に、そして、幹細胞採取まで行った。幹細胞採取を、1000個の細胞を覆うWBCのプロトコルに従って行った。
【0187】
4F−ベンゾイル−TN14003を、30μg/Kg、100μg/Kg、300μg/Kgまたは900μg/Kgの単回用量として10日後に注射した。注射後の追跡調査には、WBCおよび血小板のレベルを、30分、1時間、2時間、4時間、8時間、24時間の時点で計数することが含まれた。
【0188】
標示「4FB−TN140」は、これがすべての図を通して現れる場合、4F−ベンゾイル−TN14003(配列番号1)を示すために使用される。「PLAT」は血中の血小板レベルを表す。
【0189】
実施例1.コロニーおよび血小板の生成
図1ならびに表2および表3において認められ得るように、4F−ベンゾイル−TN14003およびトロンボポエチンにより、血液における血小板産生(図1A、表2)および骨髄におけるコロニー形成細胞(造血始原細胞、「HPC」)(図1B、表3)が誘導される。これらの薬剤は、血液における血小板数および骨髄における始原細胞の生成をさらに刺激するために一体的に共同することもまた見出された。したがって、4F−ベンゾイル−TN14003により、TPOの活性が、血小板レベルをインビボで高めることにおいて強化される。
【0190】
図1において、「CTRL」はリン酸塩緩衝化生理的食塩水(PBS)処置マウスを示し、「PLAT」は血中の血小板レベルを示し、「コロニー」は骨髄におけるコロニー形成細胞(造血始原細胞)の数を示し、「TPO」はトロンボポエチン処置マウスを示す。
【0191】
【表2】

【0192】
【表3】

【0193】
図2に記載される実験において、マウスに、4F−ベンゾイル−TN14003を5mg/kgの用量で皮下注射した(1日1回の注射として、または、1日2回で投与される2回の服用に分けられてのどちらかで投与した)。血中の血小板レベルを、1日後、2日後または3日後に測定した。図2から明らかにされ得るように、ペプチドのただ1回だけの注射が、血中の血小板レベルにおける著しい上昇を誘導するために十分であった。
【0194】
図3において認められ得るように、この効果がオスおよびメスの両方のマウスにおいて観測された。ペプチドにより、オスおよびメスの動物において投与後3日で測定される血小板レベルが高められたからである。図3において、「オスコントロール」および「メスコントロール」はPBS処置のオスマウスおよびメスマウスをそれぞれ示し、「オス+4FB−T140」および「メス+4FB−T140」は、4F−ベンゾイル−TN14003(5mg/kg)により処置されるオスマウスまたはメスマウスを示す。
【0195】
実施例2.化学療法誘導血小板減少症の防止
その後、血小板調節効果をマウスにおける化学療法誘導の血小板減少症モデルにおいて調べた。これらの実験において、生理的食塩水に溶解される150mg/kgでの5−フルオロウラシル(「5FU」)をすべてのマウスに腹腔内注射した(0日目)。マウスの一部を、5FUによる処置の前の5日間、4F−ベンゾイル−TN14003(5mg/Kg、1日1回のS.C.注射)によりさらに処置し、また、マウスを5FU後1日から4F−ベンゾイル−TN14003(5mg/Kg)により毎日処置し、処置を実験終了まで続けた。血液サンプルを、4F−ベンゾイル−TN14003の投与またはコントロール(PBS)注射の後1時間で採取した。図4において認められ得るように、4F−ベンゾイル−TN14003の投与は5FUによる処置の前後において血小板の血中レベルを高めた。図4において、菱形はコントロール(PBS処置)マウスを表し、白四角は4F−ベンゾイル−TN14003処置マウスを表す。
【0196】
次に、G−CSFの存在下または非存在下で5FUにより処置されるマウスに対するペプチドの影響を調べた。G−CSF投与(毎日のS.C.注射として、5μg/マウス)を5FU処置後1日で開始し、実験終了まで続けた。5FUおよび4F−ベンゾイル−TN14003の投与、ならびに、血液サンプル採取は、図4について上記で指定される通りであった。図5に示されるように、4F−ベンゾイル−TN14003は、単独またはG−CSFとの併用で投与されるとき、5FUによる処置の前後において血小板の血中レベルを高めた。G−CSFによる処置は血中の血小板レベルに対する影響を何ら有さず、血小板レベルの4F−ベンゾイル−TN14003による上昇を変化させなかった。図5において、菱形はコントロール(PBS処置)マウスを表し、白四角は4F−ベンゾイル−TN14003処置マウスを表し、三角はG−CSF処置マウスを表し、十字は、G−CSFおよび4F−ベンゾイル−TN14003により処置されるマウスを表す。
【0197】
その後、化学療法誘導血小板減少症モデルにおけるペプチドの活性をTPOの活性と比較した。TPO群において、マウスを、5FUによる処置の前の3日間、単回用量のTPO(0.5μg/マウス)により処置した。5FUおよび4F−ベンゾイル−TN14003の投与、ならびに、血液サンプル採取は、図4について上記で指定される通りであった。図6において認められ得るように、TPOおよび4F−ベンゾイル−TN14003はともに、血中の血小板レベルを5FU投与の前または後において上昇させた。投与の10日後、血小板レベルが、4F−ベンゾイル−TN14003処置マウスにおいて、TPO処置マウスまたはコントロールマウスよりも大きかった。図6において、菱形はコントロール(PBS処置)マウスを表し、白四角は4F−ベンゾイル−TN14003処置マウスを表し、三角はTPO処置マウスを表す。
【0198】
実施例3.血小板減少症患者における血小板の急性上昇
シクロホスファミドによる化学療法を受けるMM患者に、G−CSFが、その後の収集および移植のためのHPC可動化を誘導するために臨床プロトコルに従って与えられた。シクロホスファミドおよびG−CSFによる処置の10日後、患者は、0.9mg/kgの用量で注射される4F−ベンゾイル−TN14003を受けた。図7において認められ得るように、4F−ベンゾイル−TN14003により、血液中の血小板の数における即時的な増大が刺激され、これは投与後30分で検出することができ、また、数時間後(1時間後、2時間後、4時間後または8時間後)に依然として観測された。図7において、「0分」の時点は、4F−ベンゾイル−TN14003が注射されたときの血中の血小板レベルを表す。
【0199】

【0200】
特定の態様の上記説明は、本発明の一般的な性質を十分に明らかにするものであり、従って他者は、現在の知識を適用することにより過剰な実験をせずにしかも一般的な概念から逸脱せずにかかる特定の態様を容易に修正しかつ/または様々な用途に適合させることができ、それゆえ、かかる適合及び修正は開示された態様の均等の範囲及び意味内において考慮されるべきであり、そのように意図される。本明細書で使用される表現及び用語は説明の目的のためであり、限定されないことが理解されるべきである。様々な開示された機能を実施する手段、材料、及び工程は、本発明から逸脱せずに様々な代替形態をとることができる。
【配列表フリーテキスト】
【0201】
配列番号1〜68及び70〜72は、合成ペプチドの配列である。
配列番号69は、カブトガニのタチプレシンファミリーポリペプチドに基づいて設計された合成ペプチドの配列である。
配列番号73は、式Iによる合成ペプチドの配列である。
配列番号74〜77は、式IIによる合成ペプチドの配列である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
血小板のレベルをその必要性のある対象において上昇させるための方法であって、配列番号1に示されるアミノ酸配列のペプチドまたはそのアナログの効果的な量を前記対象に投与し、その結果、前記対象における血小板のレベルを上昇させるようにすることを含む方法。
【請求項2】
血小板のレベルを前記対象の末梢血において上昇させるためのものである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
方法は、前記対象の末梢血における血小板の著しい上昇を急性様式で誘導する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記上昇が前記ペプチドの投与から1時間以内に生じる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
血小板減少症を前記対象において処置または防止するためのものである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
血小板減少症は、20000/μL未満の血小板数によって特徴づけられる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
10000/μL未満の血小板数によって特徴づけられる重篤な血小板減少症の処置のためのものである、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記対象は、臨床的に著しい出血に苦しむ、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記対象が血小板減少症を患い、前記ペプチドの投与が外科的手順の24時間以内に開始される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
血小板減少症は、増大した血小板破壊に関連する血小板減少症、増大した血小板捕獲に関連する血小板減少症、血小板希釈に関連する血小板減少症、および損なわれた血小板産生に関連する血小板減少症からなる群から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項11】
前記血小板減少症は、増大した免疫学的な血小板破壊に関連する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記血小板減少症は、特発性血小板減少性紫斑病および自己免疫性血小板減少症からなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記血小板減少症はC型肝炎ウイルス関連肝硬変に関連する、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記血小板減少症は、損なわれた血小板産生に関連し、先天性巨核球減少性血小板減少症および橈骨欠損を伴う血小板減少症からなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
血小板減少症は骨髄欠乏または骨髄抑制に関連しない、請求項5に記載の方法。
【請求項16】
前記対象は、放射線または化学療法にさらされることに関連する血小板低下に苦しむか、あるいは、そのような血小板低下の危険性がある、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記ペプチドは、血小板産生を刺激する少なくとも1つのサイトカインとの併用で前記対象に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記ペプチドは、トロンボポエチンまたはトロンボポエチンアゴニストとの併用で投与される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記対象における血小板レベルのトロンボポエチン誘導上昇を高めるためのものである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記対象における血小板減少症の継続期間を短くするためのものである、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記ペプチドは、血小板産生を刺激する少なくとも1つのサイトカインをさらに含む医薬組成物の形態で対象に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記ペプチドは、血小板減少症またはその危険性のために他の場合には前記対象に投与されないであろうさらなる薬物または物質と同時投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
出血をその必要性のある対象において抑える方法であって、配列番号1に示されるアミノ酸配列のペプチドまたはそのアナログの効果的な量を前記対象に投与し、その結果、前記対象における出血を抑えるようにすることを含む方法。
【請求項24】
前記対象における出血継続期間を短くするためのものである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記対象における出血の強さを軽減するためのものである、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記対象は血小板減少症を患う、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
前記対象は、臨床的に著しい出血に苦しむ、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
前記ペプチドの投与が外科的手順の24時間以内に開始される、請求項23に記載の方法。
【請求項29】
活性成分として、配列番号1に示されるアミノ酸配列のペプチドまたはそのアナログの効果的な量と、血小板産生を刺激する少なくとも1つのサイトカインの効果的な量とを含む医薬組成物。
【請求項30】
サイトカインがトロンボポエチンまたはトロンボポエチンアゴニストである、請求項29に記載の医薬組成物。

【図1A−1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A−7B】
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【公表番号】特表2012−530130(P2012−530130A)
【公表日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−515626(P2012−515626)
【出願日】平成22年6月13日(2010.6.13)
【国際出願番号】PCT/IL2010/000466
【国際公開番号】WO2010/146578
【国際公開日】平成22年12月23日(2010.12.23)
【出願人】(511304383)バイオカイン セラピューティックス リミテッド (2)
【Fターム(参考)】