説明

血液を分離および分析する装置並びにその方法

【課題】血液を分離および分析する装置並びにその方法を提供する。
【解決手段】本発明は、患者からの血液試料においてFABPを検出する装置と、FABPの存在について血液を分析する方法と、患者からの血液試料におけるFABPの検出方法およびキット、である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液を分離し、存在する蛋白質の量について血液を分析する装置に関するものである。特に、本発明は、血液中の脂肪酸結合蛋白質(FABP)を分析する装置と、前記装置を用いて血液中のFABPの量を確定する方法とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
血液検査を用いて、正常な血液像からのずれを特定することができ、それに基づいて、たとえば病理学的異常または危険因子の存在を確証することができ、または、少なくともさらなる検査が必要であるかまたは望ましいことを示すことができる。当然ながら、健康な血液像を確証することも可能である。
【0003】
米国特許出願公開第2003/0175167号明細書には、ある量の血液をチャンバ内に取り込むことができ、それを希釈した後、少なくとも部分的に押圧してフィルタに通す装置が記載されている。フィルタは、血液からの少なくとも血漿がそのフィルタを通過して採集空間で採集されることが可能である一方、血液からの少なくとも血球はフィルタを通過することができず、チャンバ内に残るように選択される。その後、血漿および血球が入れ替わらないように、チャンバと前記採集空間との間の通路が密封される。そして、装置は、血漿に対する分析を行うために検査機関に郵送される。血漿と赤血球との分離が維持されることが特に重要であり、それは、そうでなければ、その後の多くの検査に血漿を使用できなくなるためである。血漿の分析は、たとえばスペクトル分析によって行われる。
【0004】
米国特許出願公開第2004/0133146号明細書には、細管を用いて血液を採取し、次いでその血液をチャンバ内に供給し、その後、プランジャによってフィルタに対して押圧し、それによって少なくとも血漿が強制的にフィルタを通され少なくとも赤血球がチャンバ内に残るようにする、装置が記載されている。分離された血漿を、その後、たとえばスペクトル分析によって検査することができる。
【0005】
全血分析と比較して、これらの装置には、血液を遠心分離する必要がないという利点がある。これにより、より少ない血液の採取で十分であり、検査をより迅速に行うことができる。
【0006】
これらの従来技術による装置およびそれらが用いられる方法には、血液を採取した患者にまたは治療する人に検査結果が知らされるまでに、依然として比較的長い時間が必要であるという欠点がある。結局、採取する必要のある血液の量がわずかでしかなく、遠心分離がもはや必要でなくても、分析を検査機関で行わなければならず、そのため、搬送および処理に比較的長い時間が必要となる。さらに、患者には、患者自身より先に他人が検査結果を知ることができることが不都合と感じられる可能性がある。
【0007】
さらに、たとえば米国特許第4,477,575号明細書から、試薬が使用され、それによりフィルタの上に一滴の血液が堆積される装置が知られている。血漿は、毛細管作用および/または重力によって導かれて、フィルタ層を通るように案内され、一方で赤血球はフィルタの上に残る。濾過層内またはその周囲に、血漿中の物質と反応することができる試薬が提供される。その後、装置の可視表面の目視検査により、血液中に被分析物が存在するか否かを(変色または表面に現れる線により)確証することができる。独国特許第29 22 958号明細書には、血液中の種々の病理学的因子またはその他の指標となる因子に対して異なる試薬を有する多層フィルタが記載されている。
【0008】
こうした装置には、患者によって、または患者のいる所で検査を行うことができ、そのため、検査結果を得るための時間を大幅に短縮することができるという利点がある。
【0009】
しかしながら、こうした検査でも、依然として数十分以上が必要であり、それは多くの場合に望ましくない。さらに、これらの検査には、装置が開放されているため、たとえば外部から非常に汚染されやすく、一方でさらに、分離の程度、したがって得られる血漿の量を十分正確に確定することができない、という欠点がある。特に、種々の試薬とともに多層フィルタが使用される場合、この欠点は悪くなるが、それは、どれほどの血漿がフィルタのいずれの層に提供されるか不明瞭であり、実行時間、したがって検査の結果までにかかる時間が、フィルタ層の数に応じて増大するためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許出願公開第2003/0175167号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2004/0133146号明細書
【特許文献3】米国特許第4,477,575号明細書
【特許文献4】独国特許第29 22 958号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、被分析物が存在するか否か血液を分析するための装置および/または方法を提供することを目的とするものである。
【0012】
特に、本発明は、全血から少なくとも血漿および赤血球を比較的迅速に分離し、その後、少なくとも血漿を分析する方法および/または装置を提供することを目的とするものである。さらに、本発明は、使用者が自力でかつ比較的速やかに血液検査を行うことができる方法および/または装置を提供することを目的とするものである。
【0013】
さらにまた、本発明の別の目的は、血液中に存在する1つまたは複数の被分析物、特にFABPの閾値または値に関して指標を与える、血液の分離および分析のための装置および/または方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
第1態様において、本発明は、患者からの血液試料におけるFABPを検出する装置であって、以下の要素、すなわち
a)血漿と赤血球とを分離する分離手段であって、
血液試料を受け入れかつ前記血液試料に対する希釈液を備えるチャンバと、
希釈された血液試料からの血漿と、任意に抗体と複合化されるFABPとが通過することができるが、少なくとも赤血球は通過することができないフィルタと、
分離された血漿を提供するために、前記血液試料の少なくとも一部を押圧して前記フィルタに通す押圧手段と、
が設けられた分離手段と、
b)分離された血漿を採集する採集手段と、
を備え、
前記分離手段および/または前記採集手段は、
FABPの第1エピトープに対する検出抗体であって、検出可能な標識と結合されかつ分離された血漿と接触することができる検出抗体と、
前記第1エピトープとは異なるFABPの第2エピトープに対する捕捉抗体であって、前記採集手段に固定化形態で提供されることが可能でありかつ分離された血漿と接触することができる捕捉抗体と、
のうちの少なくとも一方を備える、装置に関するものである。
【0015】
本明細書で使用する「接触することができる」という用語は、装置が使用される時に抗体がそれぞれの液体(大部分は血漿)と接触するかまたは接触することができるという事実を指す。
【0016】
検出抗体のみが提供される好ましい実施形態では、検出抗体は、本質的に、均一に分散した検出抗体を含む希釈血漿からなる液相で発生する検出反応で、FABPと複合化することができ、それにより、液相が、前記採集手段に存在する検出表面と直接接触し、検出抗体を前記検出表面上で固定化することができる、という利点がある。
【0017】
本発明の装置の好ましい実施形態では、前記フィルタは、前記チャンバに挿入することができる管状要素の端部にまたはその近くに設けられ、前記採集手段は、前記管状要素の内部部品によって形成される。
【0018】
別の好ましい実施形態では、前記捕捉抗体は、前記採集要素に挿入することができる挿入要素で固定化される。
【0019】
本発明の装置のさらに別の好ましい実施形態では、前記検出抗体は前記希釈液に提供される。
【0020】
本発明の装置の別の好ましい実施形態では、前記FABPは、H−FABP、L−FABP、I−FABP、ILBP,B−FABP、A−FABP、E−FABP、T−FABPおよびM−FABPならびにそれらの組合せからなる群から選択される。
【0021】
本発明の装置の別の好ましい実施形態では、前記検出可能な標識は、金コロイドまたは銀コロイド、ストレプトアビジン、ビオチン、ミクロスフェア、ラテックスビーズ、ペルオキシダーゼ、ストレプトアビジン標識西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、ホスファターゼ、アルカリホルファターゼ(AP)、発色標識、蛍光標識、燐光標識、化学発光標識および二次抗体ならびにこれら物質の組合せからなる群から選択される。
【0022】
本発明の装置のさらに別の好ましい実施形態では、採集手段は、少なくとも部分的に透明であり、それにより、前記固定化捕捉抗体(の付着部分)が、前記採集手段または装置の外側から少なくとも部分的に視認可能である、
【発明の効果】
【0023】
本発明によるFABPを検出する装置の利点は、ここで、数分以内で検査結果が得られる迅速検査が提供されるということである。典型的には、検査結果は、血液試料を装置に与えた時点から3分以内、好ましくは2分以内で読み取られる。この重要な利点は、装置および付随する方法の2つの重要な特徴によって達成される。第1に、好ましい実施形態では、検出試薬とFABPとの間の検出反応が使用され、その反応は、溶解したかまたは懸濁した(均一に分散した)検出試薬を含む希釈血液または血漿をからなる液相で発生し、前記液体は、検出表面と直接接触しているかまたは接触する。液相でのこうした検出反応は、非常に迅速に進む。そして、検出試薬およびFABPの反応生成物の拡散が、液相から検出表面に発生する。検出表面における固定化の後、反応生成物を視覚的に観察することができる。この拡散プロセスは、本発明によるFABPの検出システムの好ましい実施形態では律速段階であり、そのシステムは、本明細書で説明する装置の適用を含む。しかしながら、従来技術に比較してこれは依然として非常に高速である。
【0024】
第2に、血漿を生成する所定のシステムが使用される。従来技術によるシステムは、血球から血漿を分離するために側方流原理を使用するが、本システムは、これを達成するために押圧手段とともにフィルタを使用する。これもまた、本システムの速度の向上に非常に役立つ。こうした迅速検査(従来の約10倍高速である)をこのように達成することができることは、システムが、血液が押圧されてフィルタを通る前に希釈液と希釈される第1ステップを提供するという事実を考慮すると予期されない。しかしながら、検査の感度は、希釈された血漿におけるFABPの臨床的に意義のあるレベルを検出するのには十分である。
【0025】
別の態様では、本発明は、FABPの存在について血液を分析する方法であって、ある(既知の)量の血液が少なくとも血漿および赤血球に分離され、少なくとも血漿が採集手段に採集され、血液中に存在するFABPが、特にFABPと反応する少なくとも1つの抗体と接触することが可能であり、抗体とFABPとの結合を、その採集手段の外側から観察することができる、方法に関するものである。
【0026】
本発明の方法の好ましい実施形態では、所定量の血液が、被験者からまたは血液試料から採取され装置に投入され、所望の希釈を得るために所定量の希釈液と混合され、その後、希釈血液はフィルタに対して押圧され、それにより血漿が強制的にフィルタに通され前記採集手段に入り、赤血球がフィルタによって阻止される。
【0027】
本発明の方法の好ましい実施形態では、前記血漿は前記採集手段において前記少なくとも1つの抗体と接触する。
【0028】
本発明の方法のさらに好ましい実施形態では、FABPの第1エピトープに対して検出抗体が使用され、検出抗体は、検出可能な標識と結合され、装置の、分離された血漿との接触を確立することができる位置に提供される。
【0029】
本発明の方法のさらに好ましい実施形態では、FABPの前記第1エピトープとは異なる第2エピトープに対して捕捉抗体が使用され、前記捕捉抗体が、前記採集手段において固定化状態になることが可能であり、かつ装置の、分離された血漿との接触を確立することができる位置に提供される。
【0030】
特に、各々が特にFABPの異なるエピトープと反応する少なくとも2つの抗体、すなわち、検出可能な標識で標識化された検出抗体と、装置の固体表面におけるFABP・検出抗体複合体の固定化のための捕捉抗体とが使用され、両抗体が同時にFABPと結合することができ、前記検出抗体が前記希釈液に加えられ、前記捕捉抗体が、本明細書で定義する挿入要素または心棒で固定化され、分離された血漿と接触する、方法が提供される。
【0031】
別の態様では、本発明は、患者からの血液試料におけるFABPを検出する方法であって、
上述した本発明の装置を提供するステップと、
前記チャンバ内の前記希釈液に既知の量の血液を投入し、それにより、任意に、所定量の血液を希釈液に提供するために一定量の血液を吸収することができる多孔質体が適用され、血液を希釈液と混合させるステップと、
装置の分離手段を作動させることにより血漿から赤血球を分離するステップと、
前記血液または血漿中のFABPを、前記検出抗体および前記捕捉抗体のうちの少なくとも一方と、抗体とFABPとの間に特定の結合が発生する条件下で接触させるステップと、
特定の結合を検出するステップと、
を含む方法に関するものである。
【0032】
特定の結合は、たとえば、周囲温度および圧力下で、FABPおよび抗体の一方または両方が、リン酸塩または他の一般緩衝液等の液体である条件下で発生する。当業者は、抗体とその抗原との結合が発生する条件については熟知していることが留意される。
【0033】
本発明の方法の好ましい実施形態では、前記検出抗体は前記希釈液に提供され、前記捕捉抗体が、前記採集手段において固定化状態で血漿と接触することが確実になる。これは、好ましくは、前記血漿に、前記捕捉抗体が上で固定化される要素(たとえば、本明細書で定義した心棒または挿入要素)を挿入することによって達成される。そして、FABPおよび検出抗体によって形成される複合体が捕捉抗体に結合することができ、固定化した捕捉抗体を含む前記要素が検出表面の機能を果たす。
【0034】
本発明の方法の別の好ましい実施形態では、まず、FABPと検出抗体との複合体が液体(たとえば、チャンバ内の希釈血液または採集手段における希釈血漿)で形成されることが可能であり、その後、その複合体が前記固定化された捕捉抗体と結合することができる。
【0035】
本発明の方法のさらに別の好ましい実施形態では、希釈液、希釈血液および分離された血漿から選択された液体に、検出抗体のみが提供され、その液体に、または装置を使用することによって形成される後続する液体に、検出抗体・FABP複合体が形成されることが可能であり、その後、前記複合体が、空間27(すなわち第1採集手段27)を制限する装置1の任意の要素のその空間27に面する側の任意の面に(たとえば、検出試薬に常磁性ビーズを付与することにより)固定化することができ、それにより、捕捉抗体が血漿28と直接接触することができる。実際には、こうした実施形態では、検出抗体は捕捉抗体にもなる。
【0036】
本発明の方法のさらに別の好ましい実施形態では、前記FABPは、H−FABP、L−FABP、I−FABP、ILBP、B−FABP、A−FABP、E−FABP、T−FABPおよびM−FABPおよびそれらの組合せからなる群から選択される、
【0037】
本発明の方法の別の好ましい実施形態では、前記検出可能な標識は、金コロイドまたは銀コロイド、ストレプトアビジン、ビオチン、ミクロスフェア、ラテックスビーズ、ペルオキシダーゼ、ストレプトアビジン標識西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、ホスファターゼ、アルカリホルファターゼ(AP)、発色標識、蛍光標識、燐光標識、化学発光標識および二次抗体ならびにこれら物質の組合せからなる群から選択される。
【0038】
さらなる態様では、本発明は、血液を少なくとも血漿および赤血球に分離する少なくとも1つの装置を備え、前記装置が、分離された血漿を採集する採集空間と、前記採集空間に投入されるために好適なFABPと反応する少なくとも1つの特定の抗体とを備える、部品キットを提供する。
【0039】
好ましくは、本発明による部品キットは、たとえばスポンジ等の、所定量の血液を取り込みかつ解放する要素をさらに備える。
【0040】
好ましくは、本発明による部品キットは、上述した本発明の装置を含む。
【0041】
好ましくは、キットはまた、本発明の方法を行い、前記装置および/または要素を操作し、かつ/または前記使用済みの装置および/または取込み要素を安全に処分するための指示書も含む。
【0042】
本発明をさらに例示するために、本発明による装置および方法の実施形態について、図面に基づいて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】図1は第1実施形態における本発明の装置の使用前の断面図を示す。
【図2】図2は管状要素が部分的にチャンバ内に挿入されている部分的に係合した状態での図1の装置を示す。
【図3】図3は管状要素が完全にチャンバ内に挿入されている完全に係合した状態での図1および図2の装置を示す。
【図4】図4Aは初期位置にある本発明の装置の別の実施形態を、部分的な断面側面図で示し、図4Bは最終位置にある本発明の装置の別の実施形態を、部分的な断面側面図で示し、図4Cは図4の装置用のフィルタを断面側面図で概略的に示す。
【図5】図5は本発明の装置で使用される挿入要素を概略的に示す。
【図6】図6は別の実施形態における図1の装置の挿入要素を示す。
【発明を実施するための形態】
【0044】
この明細書において、同じかまたは対応する要素は、同じかまたは対応する参照番号を有している。図面のすべてにおいてすべての参照番号が提供されているわけではない。後に説明するように、図4Cの参照番号57は、図5の参照番号57と一致していない。
【0045】
第1実施形態では、本発明の装置は、少なくとも、血漿および赤血球を分離する分離手段が含まれることを特徴とし、この分離手段は、血液の少なくとも一部を押圧してフィルタに通す押圧手段を備え、分離された血漿を採集する少なくとも第1採集手段が設けられ、前記血漿中に存在する物質または有機体と反応する少なくとも1つの試薬が、前記第1採集手段に提供されるか、またはそこに挿入され得る。
【0046】
こうした装置には、少なくとも血漿が圧力下で少なくとも赤血球から分離され、それにより略瞬時に血漿および赤血球の所望の分離が得られるという利点がある。さらに、採集手段に少なくとも血漿が採集され、そこで、血漿は少なくとも1つの試薬と接触しまたは接触することができ、それにより、ある患者の血液中に特定の物質が存在するか否か、または少なくともその物質が一定の値または限界値を超過するか否かを、非常に短い時間で(数分または数秒で)確定することができる。好ましくは、たとえば色の変化、凝固、溶解等の構造上の変化によって、一定の反応が発生しているか否かを目視で確定することができる試薬が使用される。
【0047】
血漿は、好ましくは、血漿の汚染、コンタミネーションまたは漏出が起こり得ないように、外部環境から分離された空間の形態で設けられる第1採集手段に採集される。好ましくは、使用前に、装置に、特にチャンバに既知の量の希釈液が提供され、一方で、さらにチャンバに既知の量の血液が提供され、それにより、血液の希釈度が正確に知られる。これにより、迅速かつ正確な検査結果が容易に得られることが確実になる。
【0048】
第1の特に有利な実施形態では、少なくとも1つの試薬は、第1採集手段の特にその壁部分に提供されまたはそこで利用できる。好ましくは、前記壁部分は、少なくとも部分的に透明であり、それにより、たとえば、試薬の色または構造の変化が、装置の外側から、少なくとも第1採集手段の外側から、装置を開放する必要なく明確に視認できる。
【0049】
別の実施形態では、少なくとも1つの試薬は、第1採集手段内に挿入することができる要素の上、要素の中またはその要素に提供される。それには、少なくとも、装置を実質的に汎用的に実装することができ、行われる検査に応じて常に好適な試薬を選択することができる、という利点がある。
【0050】
本発明の装置および/または方法における試薬は、好ましくは、遷移値を確定することができ、それにより、少なくとも、血液中の特定の因子が所定値を上回るかまたは下回るかを確定することができるように選択されかつ/または配量される。
【0051】
特定の実施形態では、本装置にはピストンが備えられ、それは、血液、少なくとも血漿を押圧してフィルタに通すことができ、それにより、ピストンの内側に好ましくは第1採集手段が設けられる。ピストンの上またはピストンの中に、少なくとも1つの試薬を提供することができる。
【0052】
本発明による装置および方法では、毎回1つの試薬を適用することができるが、1つの装置で一連の検査を同時に実施するために試薬の組合せを提供することも可能である。たとえば、第1採集手段の壁部分の上に、種々の試薬のリングまたは表面を設けることができる。必要な場合は、当然ながら、試薬を、液体等、別の凝集状態で、または固体の形態で提供してもよい。
【0053】
別の実施形態では、少なくとも1つの試薬は、別個の容器内または容器上に提供され、その場合、血液を分離する装置の特に第1採集手段に、注入開口部が備えられ、それにより、赤血球から分離した後の血漿を、前記容器の中または上、少なくとも前記少なくとも1つの試薬の中または上に注ぐことができる。
【0054】
少なくとも1つの試薬は、好ましくは、血漿中の物質または有機体の存在のみを示し、その濃度の値は示さない試薬の群から選択される。好ましくは、少なくとも1つの試薬は、本質的に二成分であり、すなわち、試薬の反応が、たとえば、試薬、血漿またはそれらの間の反応の色、凝固または他の変化によって、一定の閾値を超過したか否かを示す。
【0055】
本明細書で示しかつ説明する実施形態は、常に血液の分離および分析に基づく。しかしながら、同じかまたは同様の装置で、他の生物試料を検査することができる。例で与える装置、方法および試料の実施形態は、単に例示の目的で示すものであり、本発明を決して限定するものではない。
【0056】
図1に、第1実施形態において2つの部品で示す本発明による装置1の部分的な断面図を示す。図1では、左側に、透明なプラスチックシェル3によって形成された第1部品2を示し、それは、底部が先細りの底部4によって閉鎖され、反対側5が開放されている。開放側5には、外側ねじ山7を備えた首部6が設けられ、ねじ山7の上にキャップ8がねじ込まれる。キャップ8は、首部6においてガスケット9を締め付け、それにより、シェル3内の内部空間またはチャンバ10が閉鎖される。チャンバ10内には、所定量の希釈液11が提供される。
【0057】
図1は、右側に、ピストン部品12の形態の第2部品20を示し、それは、開放底部14と、フランジ16によって包囲された反対側の開放頂部15とを有する、少なくとも部分的に透明な管状要素13を備えている。底部14の外側の周囲に、可撓性リング17が取り付けられており、その外径Dbは、後述するような方法で第1部品2のシェル3の内径Diと適合する。管状要素13には、心棒18が挿入されており、その外径d1は管状要素13の内径d2より小さい。心棒18の頂部に、フランジ部品19が設けられており、それは、頂部側で上方に延在するエプロン21に連結し、エプロン21には、部品2の外側ねじ山7上に嵌合することができる内側ねじ山22が備えられている。フランジ部品は、頂部15に密封して嵌合し、同時にエプロンがフランジ16の外側に隣接することができる。心棒18およびフランジ部品19は、図1に示す位置において、心棒18の下端部24が管状要素13内で下端部14からある程度離れたままであるような長さである。心棒18の下端部24には、後に説明する止め具25が設けられている。管状要素13の底端部14にはフィルタ26が取り付けられており、そこを、少なくとも血液の任意の希釈により、少なくとも血漿は通過することができるが、赤血球は通過することができない。フィルタおよび希釈を使用する例は、米国特許出願公開第2003/0175167A1号明細書に記載されており、それは参照により本明細書に援用されるが、それは限定的であるとみなされるべきではない。
【0058】
図2では、第2部品20を、第1部品2内に部分的に挿入されまたは係合している状態で示しており、そこでは、既知の量の一滴の血液が希釈液に混合されている。この位置で、フィルタ26は、希釈血液の上に載っており、シェル3の内側に対してリング17を密封する。それにより、チャンバ10が閉鎖される。この位置から、第2部分20を、底部4の方向に下方にさらに押すことができる。それにより、フィルタ26が希釈血液を強く圧迫し、それによって、血漿が上方に押されてフィルタ26を通り、一方で赤血球は阻止されてチャンバ10内に残る。心棒18、管状要素13、フィルタ26およびフランジ部品19の間に、環状チャンバの形態で第1採集手段27が形成され、そこに血漿が採集される。
【0059】
図3に、本発明による装置1の断面側面図を示し、内側ねじ山22が外側ねじ山7にねじ込まれ、止め具25がフィルタ26の上方で管状要素13の開放端部を密封し、それにより血漿28が第1採集手段27からチャンバ内に逆流することが防止される程度まで、第2部品20が第1部品2内を完全に下方に押し込まれている。
【0060】
図1〜図3に示す実施形態では、管状要素13の内側に少なくとも1つの表面29が設けられており、それは、血漿28中に存在するかまたは存在する可能性のある少なくとも1つの成分または被分析物に対する試薬30を含む。好ましくは、試薬30は、複合装置1の外側のすべての側から見えるように、環状面として付与される。これにより、血漿内に前記被分析物が一定の程度まで存在する場合、この被分析物との試薬30の反応を、たとえば色の変化、構造上の変化、凝固、溶解等によって明確に観察することができる。存在、濃度、レベル等を確証しなければならない被分析物に基づき、1つまたは複数の試薬30を選択することができることは明らかとなろう。望ましい場合、2つ以上の表面29、29A、29B、29C・・・に、同じ試薬30が提供されるが、好ましくは異なる試薬30A、30B、30C・・・が提供される。
【0061】
図6に示す別の実施形態では、試薬は、環状表面29の形態で心棒18上に提供される。これには、確定されるべき所望の被分析物に応じて、たとえば異なる試薬を備えた心棒18のセットから心棒18を選択することができるという利点がある。実際には、これを、当然ながら、異なる試薬を有するさまざまな管状要素13によって達成することができる。
【0062】
本発明の装置の別の実施形態では、図6に概略的に示すように、(中空)ロッド31、リング32等の一連の挿入要素を設けることができ、そこでは、種々の挿入要素が異なる試薬30、30A、30B・・・を支持する。これにより、常に、所望の検査に応じて、管状要素13に、好適な試薬または試薬の好適な組合せを提供することができる。図6に示すような心棒18を形成するために、環状要素を心棒18の上で摺動させてもよい。ロッド等を、たとえば、心棒18のスロットまたは開口部に、あるいは空間27または管13等、心棒18を包囲するシートまたはチャンバ内に配置してもよく、たとえば緩く挿入してもよい。
【0063】
図5は、図1〜図3の装置で使用される挿入要素32の別の実施形態の概略的な斜視図を示す。この挿入要素32は、実質的に、中空の円筒状本体50によって形成され、円筒状本体50は、第1端部51に環状部52を備え、そこから複数の指部53が反対側の第2端部54の方向に延在している。指部53は、第2端部54に返り部(rejuvenation)55を有しており、それは、各指部の一部分56が、前記本体50の外面57に対して内側に曲がっているためである。各指部53の返り部55の外側に向いた表面29に、試薬30が提供される。試薬は、各指部で同じであり得るが、たとえば、関連があってもなくても異なる検査を行うために、異なる指部53に異なる試薬30、30A、30B・・・を提供することも可能である。円筒状本体50の外形D3は本体13の内径D2とおよそ等しく、それにより、好ましくは指部53を端部14の方向にして、円筒状本体50を頂部15から本体13内に挿入することができる。その際、外面57が本体13の内側に隣接することができ、一方で表面29は内側からある距離を置いて維持される。これにより、試薬30、30A、30B・・・が、空間27内に採集された血漿と適切に接触することができる。当然ながら、試薬を別の方法で、たとえば、試薬が、表面57が本体13の壁から離れて維持される場合は表面57上に直接、または挿入要素32の内側に面する面に、提供しまたは付与することができ、後者の場合、少なくとも試薬30の位置における少なくとも指部53が少なくとも部分的に透明である場合に有益である。
【0064】
図4Aおよび図4Bは、別の実施形態における本発明による装置1を概略的に示し、その基本は、NL1016646号明細書に記載されており、この公開公報は、少なくとも血液から血漿を分離する操作に関して、その開示内容が参照により本明細書に援用される。
【0065】
この装置1は、中空の円筒状本体33を有し、そこでは、第1ピストン34が、押圧体35により、押圧体が第1ピストンに連結された第1心棒36の端部に載置される第1位置と、心棒36に沿って、本体33を通る軸を中心に約90度の角度で第1位置に対して回転した第2位置との間で、密封された状態で移動可能である。したがって、第1位置では、第1ピストン34を、押圧体35を用いて、本体33の下端部37の方向に、当接部38に接するまで押すことができる。心棒36の周囲に、心棒46を有する第2ピストン39が設けられ、それが、心棒と本体33の内側とをともに密封する。第2ピストン39は、たとえばゴム製リングである。第1ピストン34と第2ピストン39との間に処理チャンバ40が囲まれており、その容積は可変である。処理チャンバ40は、図1〜図3と同様に、緩衝液11、たとえばリン酸緩衝液等、処理液または他の材料を収容することができる。本体33の壁44に、入口42および出口43が取り付けられている。入口に毛細管44を配置することができ、それにより、後述するように、毛細管44の中身を、本体の2つのピストン34、39間の処理チャンバ40内に吸引することができる。出口43にはフィルタ26が取り付けられており、少なくとも処理チャンバ40の中身をその中にかつ/またはそこを通過するように強制的に送ることができる。
【0066】
図4Aに示す開始位置では、ピストン34、39は、本体33内で比較的高くかつ互いに比較的近接して位置決めされる。入口は、好ましくは、厳密に処理チャンバ内に開放しており、処置チャンバ40は容積が比較的小さい。試料として全血45が充填された毛細管44が、入口42に配置される。第1ピストン34を本体の下端部37の方向に押すことにより、第1ピストン34は出口43を通過し、一方で、処理チャンバ40の容積が増大する。それは、第2ピストン39が、第1部分における第1ピストン34の最大行程、すなわち押圧体35が第2位置になる前に開始位置から下端部37の方向に移動することができる最大距離の移動に従わないか、または少なくとも完全には従わないためである。処理チャンバ40の容積が増大するため、毛細管の中身が、処理チャンバ内に吸引され処理液11と混合される。
【0067】
次に、押圧体が、心棒36に対して第2位置になり、それにより、押圧体を心棒36の上で下端部37の方向にさらに押すことができ、それによって、第2ピストン39が第1ピストン34の方向に押される。それにより、処理チャンバの容積が再び低減し、特に最小となり、処理液と試料との混合物が出口43からフィルタ26内にかつ/またはフィルタ26を通るように押される。フィルタは、任意の好適なフィルタ、たとえばガラス繊維フィルタであり得る。それによって、血液が血漿から分離され、それは、血漿が押圧されてフィルタを通され、赤血球および白血球等の血液粒子が取り除かれるためである。
【0068】
本発明によれば、フィルタ26内にかつ/またはフィルタ26に、図4Cに示すように少なくとも1つの検査表面29が設けられており、それは、たとえば上述したもの等の試薬30によって形成されるかまたはそれを含む。血漿は、強制的にフィルタを通されるため、任意の検査表面29と、したがって試薬30のいずれかと直接かつ激しく接触し、検査結果を略瞬時に読み取ることが可能になる。利点は、血漿を外部の試薬面に供給する必要がなく、それにより血漿および/または試薬のコンタミネーションを防止することができるということである。
【0069】
さらに、血漿を、フィルタ26または少なくともそのハウジング47に採集することができ、それにより、環境の汚染および特にコンタミネーションを防止することができる。これは、病原体が存在する可能性のある血液等の生体試料で使用する場合に特に重要である。
【0070】
図4Cに、図1、図4Aおよび図4Bによる装置のための概略的なフィルタ26を示し、このフィルタ26はハウジング47を有している。ハウジング47は、少なくとも部分的に、好ましくは完全に透明であり、それにより、試薬30が供給されるフィルタ表面48または少なくともその一部を、ハウジング47を開放する必要なしに見ることができる。これにより、血漿、試薬および/または環境の汚染が防止される。ハウジング47は、たとえば、互いに取り付けられるとともに、上述したように、血漿と血球とを分離する濾材57を有する、2つのハウジング部品48、49を有することができる。第1ハウジング部品48の濾材57の上方において、使用中に出口43に面する側にチャンバ58が設けられ、そこに血球が残る。第2ハウジング部品49には、採集チャンバまたは空間27が設けられ、そこに分離した血漿28が採集される。この空間には少なくとも表面29が設けられ、その上または中に、血漿と反応する試薬が含まれる。この表面29を、たとえば、濾材57の採集チャンバ27に面する側に設けてもよく、それにより、表面を、たとえば、血漿と試薬とが激しく接触するように多孔質形態で提供することができる。図4Cに示すように、表面29を、ハウジング47の内側に、採集チャンバ27内にまたは両方に設けることも可能である。この実施形態では、第2ハウジング部品は、ここではブロック59上に設けられる少なくとも表面29の位置において透明であり、それにより、たとえば、血漿のまたは血漿中の成分と試薬30との反応の結果としてのブロックの変色がハウジング47の外側から視認できる。
【0071】
本発明は、図面および説明において提供する実施形態に決して限定されるものではない。多くの変形が、本発明の特許請求の範囲によって概説する範囲内にあり得る。
【0072】
たとえば、フィルタを用いる時、血漿が少なくとも部分的に採集されるハウジングを使用することができ、そこでは、ハウジングは少なくとも部分的に透明であり、試薬がそこに提供される。これには、汚染および/またはコンタミネーションに対する優れた保護という利点がある。さらに、後に、装置または少なくともそこに採集された血漿を、さらなる検査に使用することができる。装置全体あるいはフィルタおよび/またはハウジングを、たとえば検査機関に送ることができ、そこで、たとえば試薬で得られた最初の兆候を検証しまたはさらに検査するために、さらなる検査を行うことができる。
【0073】
本装置を使用する血液中の被分析物の検出
本発明の装置に、検出のため、すなわち血漿内の化学的物質または生物学的物質あるいは微生物等の被分析物の定量的、半定量的または定性的存在の確定のために試料を提供することができる。
【0074】
たとえば、ヘリコバクターピロリ菌の存在を示すことができる、または凝固因子の過剰または欠乏を示す試薬を使用することができる。
【0075】
また、抗原、たとえば、腫瘍の存在を立証することができるかまたは確かなものにすることができる抗原が、存在するはずである程度または限界値を超過する程度等の、抗原の存在を示す試薬を使用することも可能である。
【0076】
たとえばビタミンの存在を確定することができる試薬を適用することも可能である。
【0077】
閾値または限界値を超過するかまたはそれに達していないことにより、その超過が患者にとって有害であるか否かを示すことができる試薬をさらに使用することができる。こうした試薬は、その限界値を超過しているかまたはそれに達していないことを示す試薬と有利に組み合わせることができる。さらに、物質、たとえば、最適な機能に対し、たとえば望ましくない副作用により超過する可能性のある最適な血中濃度に依存する薬剤等、たとえば薬剤または毒物の治療域血中濃度を確定することができる試薬を適用することができる。また、上述した試薬の組合せを適用することも可能である。当然ながら、これら試薬および適用は単に例示的なものであり、限定するように解釈されるべきではない。
【0078】
本明細書において、用語「試薬」または「複数の試薬」あるいは同様の文言は、少なくとも抗体または酵素を含むものと理解されるべきであり、これは、抗体または酵素に基づく検査を適用することができることを意味する。
【0079】
抗原、化学試薬、酵素、化学マーカー等、いくつかの試薬および他のマーカーを適用することができる。試薬およびマーカーを用いて、心臓、肝臓、腎臓または他の臓器の問題、糖尿病等のグルコース異常、コレステロール異常、1つまたは複数のホルモンまたはサイトカインの欠乏、一般的な診断パラメータ等、インフルエンザ、マラリア、肝炎、HIV、炎症、MS、ME等のウイルス性または細菌性異常、ならびに特に存在するかつ/または潜在的な健康問題に対する他の指標を示すことができる。この文脈におけるずれとは、期待され得る正常な値からのずれとして理解されるべきであり、そのずれは、問題の患者に対し、これらの値が、医師に対して、たとえば薬剤、流体または栄養物によりあるいは外科的介入により、さらなる検査または介入が必要であることを示すかまたは示すべきであるようなものである。
【0080】
本発明を決して限定するものではない試薬の例には、たとえば、HTLV Iおよび/またはIIの抗体、シスタチンCあるいは心臓または心血管の問題、心臓麻痺(心筋梗塞)および/または心発作等、腎機能に対するマーカー、モノクローナル抗体、ループス性抗凝固因子感受性または非感受性試薬等の凝固試薬、PSA抗原、HBS−1、HLA抗体、ヘモグロビン測定値のHbA(1c)またはGlyHbがある。
【0081】
表面29の実施形態の第1例では、管状部13の内側に、コレステロール(総コレステロール、HDLまたはLDL)を実証するために好適である、試薬30等のコレステロール試薬、CHOD−Pap(Boehringer−Mannheim GmbH)を採用した。チャンバ10に、ある量の希釈液(緩衝液)(約220マイクロリットル)を供給し、その後、その中で血液を希釈した(たとえば、60マイクロリットルの血液であり、その血液を4回〜5回有効に希釈する)。上述したように、第1部品内に第2部品を押し下げることにより、第1空間27に220マイクロリットルの血漿が採集された。この血漿を、振とう(水平方向の揺動)により試薬と接触させた結果、試薬が中間色から独特な色、この場合は赤色に変色し、それは外側から明確に視認できた。これにより、血液中のコレステロールレベルが6.5mmol/lの閾値より高いことが分かった。静脈採集によって採取され検査機関で検査された全血の対照測定値と指先採血(finger prick)によって採取され検査機関で検査された全血の対照測定値とから、血液が、実際に、その閾値を上回る値を有することが分かった。
【0082】
以下、腎機能、肝臓、心臓麻痺および/または脳卒中用のマーカーの検出の特に好ましい実施形態について説明する。
【0083】
この特に好ましい実施形態を、特に、体内組織または体液の試料におけるFABPの定量的、半定量的または定性的検出に対して適用することができる。脂肪酸結合蛋白質(FABP)が、特定の組織の損傷に対する早期マーカーとして知られる蛋白質であり、そこでは、各組織の型がそれ自体のFABP型によって特徴付けられる。FABPは、脂肪酸の細胞内結合に関与する15kDa細胞質蛋白質であり、9つの異なるアイソフォームで表され、それらは各々、それが最初に表現された組織にちなんで命名されている。
−心臓型FABP(H−FABPまたは心臓型)
−肝臓型FABP(L−FABPまたは肝臓型)
−腸型FABP(I−FABPまたは小腸型)
−回腸型FABP(ILBPまたは回腸型)
−脳型FABP(B−FABPまたは脳型)
−脂肪細胞型FABP(A−FABPまたは脂肪細胞型)
−上皮/表皮型FABP(E−FABPまたは上皮細胞型)
−精巣型FABP(H−FABPまたは精巣型)および
−ミエリン型FABP(M−FABPまたは神経細胞型)。
【0084】
これまで、数分間も経たずに結果を得ることができるFABP用の迅速検査はない。FABPの迅速な確定により、特に心疾患または心発作等の命にかかわる状態における組織損傷の迅速な診断と適切な治療の早期の開始をもたらすことができる。特定のFABPの量の測定値を、特に、排他的ではないが、心筋損傷(H−FABP)、骨格筋損傷(H−FABP)、肝障害(L−FABP)、腎障害(L−FABPおよび/またはH−FABP)、腸障害(I−FABP、ILBPおよび/またはL−FABPを含む)、脳障害(B−FABPおよび/またはH−FABP)の診断に、かつ脂質代謝、糖尿病、炎症性疾患、多発性硬化症、動脈硬化症、癌および移植後の組織拒絶反応に対する一連の疾患の診断に適用することができる。
【0085】
本発明により、動物患者またはヒト患者に発生する可能性のある各アイソフォームでの上記FABPの基本的に任意のものの検出が可能になり、検出は、所望の特異性に関連して、好ましくは、免疫学的検定法に基づき、かつ好ましくは血液で行われる。
【0086】
FABPを検出する免疫学的検定法は、原則として当業者には既知であり、こうした検定は、本発明で使用するのに好適である。利用可能な免疫学的検定法の一例は、サンドイッチELISA(Pelser MMAL.2004、「Fatty acid−binding protein as plasma marker for tissue injury.」Thesis University of Maastricht、Netherlands ISBN90−9018161−X、Chapter 3、p.43−51;Wodzig KWH、Pelser MMAL、van der Vusse GJ、Roos W、Glatz JFC. One−step enzyme−linked immunosorbent assay(ELISA)for plasma fatty acid−binding protein、Ann Clin Biochem 1997;34:263−8)の形態をとる。全持続時間が45分でのこの検定は、商用の最も高速であり、最も明確かつ高感度なH−FABP ELSAである。この検定では、2つの異なるモノクローナル抗体を使用し、それらは各々、H−FABPの異なるエピトープに向けられる。これらモノクローナル抗体のうちの一方は、捕捉抗体として作用し、検出表面に付着する。他方の抗体は、西洋ワサビペルオキシターゼ(HRP)と結合され、検出抗体としての役割を果たす。この検定に適用されるモノクローナル抗体については、ほかの場所により詳細に記載されている(上記Pelser MMAL.2004、Chapter 3、p.43−51およびChapter 4、p.53−67;Roos W、Eymann E、M Symannek、Duppenthaler J、Wodzig KWH、Pelser MMAL、Glatz JFC.「Monoclonal antibodies to human heart fatty acid−binding protein.」、J Immunol Methods 1995;183:149−53参照)。検出を、捕捉抗体/H−FABP/検出抗体複合体の形成の後、色原体テトラメチルベンジジン(TMB)等のHRP固有の酵素基質を使用して行う。TMBは、HRPによる転化後に、青色反応生成物を提供し、これを、450nmでの吸収を測定することにより分光光度的に検出することができる。
【0087】
当業者は、本発明の態様において上記検出原理に対する多くの変形を用いることができることを理解するであろう。
【0088】
したがって、H−FABP以外の他のFABP型に対する抗体を用いて、この蛋白質の他のアイソフォームを検出することができる。また、抗体とFABPとの結合に対し他のエピトープを適用することができる。エピトープに対する抗体がすでに利用できる特定のFABPの他のエピトープに対する抗体の開発、または他のFABPアイソフォームとの特定の結合を示す抗体の開発は、当業者の理解の範囲内にあり、ここでは詳細に説明する必要はない。
【0089】
本発明の態様において試薬として適用することができる抗体は、ポリクローナル抗体かまたはモノクローナル抗体であり得る。好ましくは、モノクローナル抗体が使用される。抗体は、完全免疫グロブリンかまたはそのフラグメントを含むことができ、免疫グロブリンを、IgA、IgD、IgE、IgG1、IgG2a、IgG2bおよびIgG3、IgM等、異なるクラスおよびアイソタイプから選択することができる。そのフラグメントは、Fab、FvおよびF(ab’)2、Fab’等を含むことができる。さらに、所与のFABPに対する結合親和力が維持される限り、免疫グロブリンまたはそのフラグメントの会合体、重合体および結合体を好適に適用することができる。
【0090】
本明細書で共通して試薬30と呼ぶ要素は、通常、捕捉抗体によって形成される。この捕捉抗体を、空間27(すなわち第1採集手段27)を制限する装置1の任意の要素の表面に付着させることができ、その表面は、空間27に向かって内側に面しており、それにより、捕捉抗体は、血漿28と直接接触しまたは接触することができる。したがって、捕捉抗体を、心棒18(の少なくとも一部)、管状要素13(の少なくとも一部)または少なくとも上述したような表面29に付与することができる。また、以下の実施例において説明するように、捕捉抗体を、空間27(すなわち第1採集手段27)を制限する装置1の任意の要素の表面の上または中に取り付けられる多孔質要素に付着させることができ、その表面は、空間27に向かって内側に面しており、それにより、捕捉抗体と血漿との接触を向上させることができる。捕捉抗体の固体表面への付着を、たとえば、ビオチン−(ストレプト)アビジン結合によって達成することができる。捕捉抗体に、任意に、常磁性標識を提供することができ、それにより、捕捉抗体を、磁力による反応中に常に液体から採集し固相に固定化することができる。
【0091】
心棒(18)は、好ましくは、押圧手段の管状要素内に挿入することができる形態である。心棒は管状であってもよく、それは、内部が中空であることを意味し、心棒は中実であってもよく、断面は円形、楕円形、正方形、三角形または長方形であってもよい。心棒は、上に試薬が付与されるかまたは付与することができる要素を含むことができる。こうした要素は、多孔質かまたは中実であり得る。好ましくは、試薬支持要素は、それらの多孔質の特徴により、採集手段からの希釈血漿の取込みを促進する。好ましくは、試薬支持要素は、採集手段27から10%を上回る、好ましくは20%、30%、40%または50%を上回る分離された血漿を取り込むことができる。結果として、捕捉抗体と液相で存在するFABPとの間の拡散距離(前記FABPは、好ましくは、検出抗体と複合化される形態で存在する)は、実質的に短くなる。試薬支持要素が毛細管流に対応することが非常に好ましく、それにより、血漿が、毛細管力の影響下で多孔質試薬支持要素内に引き込まれ、その結果、固定化試薬(すなわち、固定化捕捉抗体)と接触する。
【0092】
好ましくは、本発明の検査は、サンドイッチELISAの形態であり、さらに、FABPの捕捉抗体への結合を検出するために検出抗体が使用される。検出抗体のFABPへの結合は、原則的にFABPの捕捉抗体への結合の前、その間またはその後に発生する可能性がある。好ましくは、まず、検出抗体が生体試料に存在するFABPに結合することが可能であり、次いで、この複合体が、固体化したまたは固体化すべき捕捉抗体に結合することができる。これを達成するために、検出抗体を、本発明の装置のチャンバ10内の希釈液11に非常に好適に加えることができる。別の実施形態では、抗体を、既知の量の血液が希釈液11に投入されるようにする(多孔質)要素に加えることができる。こうした要素は、スポンジの形態をとることができ、その場合、検出抗体は、血液および検出抗体をスポンジから希釈液11に移すために全スポンジが希釈液11内に投入される前に、採取された血液と直接混合することができるように存在する。
【0093】
さらなる別の実施形態では、抗体を、血漿が空間27内に採集された後に、空間27に加えることができ、または抗体は、血漿が採集される前に空間27にすでに存在していてもよい。検出抗体が、FABPに対する結合が発生するかまたは可能である条件下で血液または血漿と均一に混合することが重要である。固体化される、かつ最初に液相のFABPと反応することができる捕捉抗体が適用される実施形態では、この捕捉抗体を、希釈液11に、血液採取要素または血液採集要素に、あるいは空間27における分離後の血漿に加えることも可能である。実際には、最終結果により、捕捉抗体/FABP/検出抗体の固体化複合体が得られる限り、すべてのあり得る組合せまたは順序が可能である。
【0094】
検出抗体に、金コロイドまたは銀コロイド、ストレプトアビジン、ビオチン、ミクロスフェア、ラテックスビーズ、ペルオキシダーゼ、ストレプトアビジン標識西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、ホスファターゼ、アルカリホルファターゼ(AP)、発色標識、蛍光標識、燐光標識、化学発光標識、二次抗体、または成功した結合の検出を確証することができる他の任意の好適な標識等の任意の適切な検出標識で標識化することができる。任意の二次抗体は、上記標識のうちの任意のものを含むことができる。
【0095】
好ましくは、金コロイドが使用され、それは、洗浄段階が不要であり、簡単な一段階検査が得られるためである。金コロイドは、直径が10nm〜100nmでありかつ吸光係数が非常に高い離散赤色粒子からなる。金コロイドは、固体面で濃縮する場合、赤色として非常に容易に視覚的に観察することができる。したがって、好ましくは、捕捉抗体は、空間27を制限する装置1の任意の要素の表面に認識可能なパターンで付与され、その表面は、捕捉抗体が血漿28と直接接触するように空間27に向かって内側に面しており、その表面を、装置の外側から少なくとも部分的に観察することができる。
【0096】
当業者は、本発明において、側方流の適用が想定されることを理解する。当業者はまた、一次検査と並んでかつ平行して二次検査を行うことができ、それにより第2FABPが検出されるかまたは対照反応が提供されることも理解する。
【0097】
本発明による検査で使用することができる生体試料は、原則的に血液に限定されない。また、組織試料、あるいは尿、糞便、唾液、涙液、粘液、痰、精液、頸管分泌物、髄液、嘔吐物、鼻分泌物、汗、羊水または母乳の試料等、他の生体試料を検査することも可能である。
【0098】
さらなる態様では、本発明は、部品のキットを提供し、その構成要素は、好ましくは合わせて包装される。本発明によるキットは、好ましくは以下を含む。
−希釈液を含む管(図1に示す本発明による装置1の第1部品2であり、上述した希釈液11を含むチャンバ10を備え、好ましくは図に示す外側ねじ山7を有する)。
−任意に、装置1のチャンバ10内の希釈液11に投入する既知の量の血液を採取することを可能にするスポンジ(図示せず)。この要素を適用して、装置のチャンバ内の希釈液に既知の量の血液試料(通常、約60μLの血液、ただしこの量は変動してもよい)を投入することができ、それにより、血液成分が希釈液内で希釈される。
−血液フィルタ(開放下端部14を有する少なくとも部分的に透明な管状要素13を備えるピストン部品12であり、そこには、少なくとも血漿が通過することができるが、赤血球は通過することができないフィルタ26が提供され、ピストン部品を、チャンバ10内に挿入することができ、かつ底部4に向かってチャンバ10の壁に沿って密封して摺動させることができる)。
−キャップ(図1に示す心棒18を有するフランジ部品19であり、それにより、心棒18の下端部24に、図3に示すようにフィルタ26の上方で開放端部を有する管状要素13を密封することができる止め具25が提供され、それにより、第1採集手段27からの血漿28の戻りが防止され、図1に示すように本発明により、頂部のフランジ部品19が、外側に延在するエプロン21に連結し、エプロン21に、装置1の第1部品2の外側ねじ山7と嵌合することができる内側ねじ山22が設けられる)。
−特にFABPの第1エピトープに結合することができる捕捉抗体(試薬30)。捕捉抗体は、有利には、空間27を制限しかつ装置の外側から観察することができる要素の空間27に面する側の表面内またはその上において固体化する形態であり得る。H−FABPの検出のために捕捉抗体として使用されるのに好適な抗体は、抗ヒトモノクローナル抗体H−FABP 67D3(オランダ、UdenのHycult Biotechnology BVから入手可能)である。好適な表面は、毛細管作用を有する多孔質部品であり、それをたとえば、側方流検出に適用することができる。
−任意に、特に、第1エピトープとは異なるFABPの第2エピトープと結合することができる検出抗体であって、両抗体は、実質的に、FABPに対する互いの結合に対し好ましくないように影響を与えることはない。検出抗体は、有利には、希釈液に適用され得る。希釈液における検出検体の適切な濃度は、5μg/L〜20μg/Lである。H−FABPの検出用の検出抗体として使用されるのに好適な抗体は、抗ヒトモノクローナル抗体H−FABP 66E2(オランダ、UdenのHycult Biotechnology BVから入手可能)である。
本発明による装置および検出システムの適用により、ポイント・オブ・ケア(point−of−care)迅速検査、すなわち、血漿中のFABPの検出のために、一般開業医により、救急車で、病院で、または家庭用検査として使用される迅速検査が提供される。
【0099】
患者から血液の試料におけるFABPを検出する方法は、好ましくは、
上述した本発明の装置を提供するステップと、
前記チャンバ内の前記希釈液に既知の量の血液を投入し、それにより、任意に、所定量の血液を希釈液に提供するために一定量の血液を吸収することができる多孔質体が適用され、血液を希釈液と混合させるステップと、
装置の分離手段を作動させることにより血漿から赤血球を分離するステップと、
前記血液または血漿中のFABPを、前記検出抗体および前記捕捉抗体のうちの少なくとも一方と、抗体とFABPとの間に特定の結合が発生する条件下で接触させるステップと、
特定の結合を検出するステップと、
を含む。
【0100】
この方法に対する実施形態の種々の変更形態について、上で詳細に説明している。
【0101】
ここで、本発明を、決して本発明を限定しない以下の実施例によって例示する。
【実施例】
【0102】
ポイント・オブ・ケア(POC)迅速検査(血漿中のFABPの検出のために、一般開業医の診療室で、救急車で、病院で、または家庭用検査として使用される検査)の展開
本検査は、血漿中の心臓型脂肪酸結合蛋白質(H−FABP)の濃度の増大(>6μg/L)の存在の免疫化学的確定を可能にし、本明細書で説明した装置と組み合わされる。血液試料を採取して検査結果が得られるまでの時間は90秒間未満である。
【0103】
本実施形態は、上述しかつ本発明者らが想定する部品キットを詳細に説明する。本実施形態は以下を含む。
−血液試料を提供するために指先に切込みを入れるランセット(指先採血器(finger pricker)、
−希釈液(100mM HEPES EDTA(pH7.4)および0.9%NaCl)を含む管(チャンバ)、
−規定量の血液を採集するためのスポンジ、
−管状要素の先端にある、血漿および血球の分離のための血液フィルタ、
−止め具を有する心棒が取り付けられたキャップであり、それにより、チャンバ(キャップ)の頂部側および血液フィルタ(止め具)を通る戻りを封止することができる。
【0104】
ヒト心臓型FABPに対するマウスモノクローナル抗体66E2(オランダ、UdenのHycult Biotechnology BVから入手可能)(このモノクローナルを「第1抗体」mAbdetectと呼ぶ)を含む希釈液を提供し、それを、金コロイドまたは別の適切な色の標識と結合する。希釈液におけるmAbdetectの適切な濃度は5μg/L〜20μg/Lである。
【0105】
スポンジを適用して、血液試料から、装置のチャンバ内の希釈液におよそ60μLの血液を投入し、そこで血液が希釈される。血液試料に存在するFABPは、本質的に、希釈液に存在する金結合モノクローナル抗体mAbdetectに対して瞬時に結合して、FABP・mAbdetect・金複合体を形成する。チャンバの中身をたとえば平均40秒間振とうすることにより、希釈液中の血液の溶解とmAbdetectによるFABPの完全な結合とが促進される。
【0106】
その後、血液フィルタをチャンバ内に配置し、チャンバの底部の方向において下方にゆっくりと押す。血液フィルタを、血液型FABP・mAbdetect・金複合体を含有する希釈血液に対して強く押圧し、それにより、血漿がFABP・mAbdetect・金複合体とともに血液フィルタ内を通るように上方に押圧され、一方で、赤血球は阻止されチャンバ内に残る。血漿はFABP・mAbdetect・金複合体とともに、管状要素の内部空間において血液フィルタの他方の側で採集される。止め具を有する心棒が設けられている密封キャップを管状要素に配置した後、血液フィルタの上方の管状要素の開放端を密封し、血液フィルタを通る戻りを防止する。同時に、チャンバの頂部をキャップによって密封する。
【0107】
本実施形態では、止め具をキャップに連結する心棒は、少なくとも部分的に透明であるかまたは約10mmの長さにわたって開放している壁を有する中空管の形態で提供される。心棒の壁の透明かまたは開放した部分は、好ましくは、心棒の下端部から約2mm〜3mmで開始し、好ましくは心棒の下端部から約12mm〜13mmまで延在する。心棒の中空管には、液体に対して毛細管作用を有する多孔質部品が充填され、その多孔質部品は、心棒の少なくとも部分的に透明であるかまたは開放した壁によって装置の外側から視認できる。心棒の下端部から約5mmの距離において、多孔質部品には、ヒト心臓FABP型に対する、量がおよそ200ngのモノクローナル抗体67D3(オランダ、UdenのHycult Biotechnology BV)(「二次抗体」mAbcaptureと呼ぶ)が固定化され、その抗体は、mAbdetectによって認識されるものとは異なるヒト心臓型FABPに対するエピトープを認識する。
【0108】
同様に、心棒の下端部から約10mmの距離にある多孔質部品には、別の蛋白質(たとえば、対照または基準または第2検査蛋白質)に対するモノクローナル抗体が固定化される。多孔質部品の全長および体積(すなわちサイズ)は、好ましくは、希釈血漿試料のかなりの部分(約100μL)が多孔質部品に吸収されるようなものである。
【0109】
多孔質部品内への血漿の吸収の後、FABP・mAbdetect・金複合体は、心棒の透明なまたは開放した壁を通して視認できる色付き帯の形成の下で、多孔質部品上で固定化された第2モノクローナル抗体mAbcaptureと結合する。この色付き帯の強度は、血液試料中のFABPの濃度に応じて増大する。元の血液試料におけるFABP濃度が<6μg/Lである場合、いかなる色付き帯も視認されない。
【産業上の利用可能性】
【0110】
血液中に存在する別の蛋白質が、同様に、上述した心棒の下端部から10mmの距離において多孔質部分上で固定化される特定の抗体と結合し、希釈液に、その蛋白質の別のエピトープに対する金結合抗体も提供される場合、この複合体は、心棒の下端部から10mmの距離で多孔質部品上に色付き帯として視認される。この反応を、検査における血漿の存在に対する対照として、したがって適切な実施態様として使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者からの血液試料におけるFABPを検出する装置であって、以下の要素、すなわち
a)血液を血漿と赤血球とに分離する分離手段であって、
血液試料を受け入れかつ前記血液試料に対する希釈液を収容するチャンバと、
希釈された血液試料からの血漿と、任意に抗体と複合化されるFABPとが通過することができるが、少なくとも赤血球は通過することができないフィルタと、
分離された血漿を提供するために、前記血液試料の少なくとも一部を押圧して前記フィルタに通す押圧手段と、
が設けられた分離手段と、
b)分離された血漿を採集する採集手段と、
を具備し、
前記分離手段および/または前記採集手段が、
i)FABPの第1エピトープに対する検出抗体であって、検出可能な標識と結合されかつ分離された血漿と接触することができる検出抗体と、
ii)前記第1エピトープとは異なるFABPの第2エピトープに対する捕捉抗体であって、前記採集手段に固定化形態で提供されることが可能でありかつ分離された血漿と接触することができる捕捉抗体と、
のうちの少なくとも一方を備える、装置。
【請求項2】
前記フィルタが、前記チャンバに挿入することができる管状要素の端部にまたはその近くに設けられ、前記採集手段が、前記管状要素の内部部品によって形成される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記捕捉抗体が、前記採集要素に挿入することができる挿入要素の上または中で固定化される、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記検出抗体が前記希釈液に提供される、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記FABPが、H−FABP、L−FABP、I−FABP、ILBP,B−FABP、A−FABP、E−FABP、T−FABPおよびM−FABPからなる群から選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記検出可能な標識が、金コロイドまたは銀コロイド、ストレプトアビジン、ビオチン、ミクロスフェア、ラテックスビーズ、ペルオキシダーゼ、ストレプトアビジン標識西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、ホスファターゼ、アルカリホルファターゼ(AP)、発色標識、蛍光標識、燐光標識、化学発光標識および二次抗体からなる群から選択される、請求項1から5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記採集手段が、少なくとも部分的に透明であり、それにより、前記固定化捕捉抗体の付着部分が、装置の外側から少なくとも部分的に視認可能である、請求項1から6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
FABPの存在について血液を分析する方法であって、ある量の血液が少なくとも血漿および赤血球に分離され、少なくとも前記血漿が採集手段に採集され、前記血液中に存在するFABPが、特にFABPと反応する少なくとも1つの抗体と接触することが可能であり、前記抗体と前記FABPとの結合を、前記採集手段の外側から観察することができる、方法。
【請求項9】
所定量の血液が、血液試料から取得され装置に投入され、所望の希釈を得るために所定量の希釈液と混合され、その後、前記希釈血液がフィルタに対して押圧され、それにより血漿が強制的に前記フィルタに通され前記採集手段に入り、赤血球が前記フィルタによって阻止される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記血漿が前記採集手段において前記抗体と接触する、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
FABPの第1エピトープに対して検出抗体が使用され、前記検出抗体が、検出可能な標識と結合されかつ前記分離された血漿と接触することができる、請求項8−10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記第1エピトープとは異なるFABPの第2エピトープに対して捕捉抗体が使用され、前記捕捉抗体が、前記採集手段において固定化されることが可能であり、かつ前記分離された血漿と接触することができる、請求項8−11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
患者からの血液試料におけるFABPを検出する方法であって、
請求項1−7のいずれか一項に記載の装置を提供するステップと、
任意に、後に前記チャンバ内の前記希釈液に提供される所定量の血液を吸収することができる多孔質体を使用することにより、所定量の血液を前記チャンバ内の前記希釈液に投入し、前記血液を前記希釈液と混合させるステップと、
前記装置の前記分離手段を作動させることにより濾過によって血漿から赤血球を分離するステップと、
前記血液または血漿中のFABPを、前記検出抗体および前記捕捉抗体のうちの少なくとも一方と、前記抗体と前記FABPとの間に特定の結合が発生する条件下で接触させるステップと、
前記特定の結合を検出するステップと、
を含む方法。
【請求項14】
前記検出抗体が前記希釈液に提供され、前記捕捉抗体が、前記採集手段において固定化状態で血漿と接触することができる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
検出抗体・FABP複合体が形成され、それが、前記固定化捕捉抗体と結合される、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
前記FABPが、H−FABP、L−FABP、I−FABP、ILBP、B−FABP、A−FABP、E−FABP、T−FABPおよびM−FABPからなる群から選択される、請求項8−15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
血液を少なくとも血漿および赤血球に分離する少なくとも1つの装置を備え、前記装置が、前記分離された血漿を採集する採集空間と、前記採集空間に投入されるために適用できるFABPと反応する少なくとも1つの特定の抗体とを備える、部品キット。
【請求項18】
所定量の血液を取り込みかつ解放する要素をさらに有する、請求項17に記載の部品キット。
【請求項19】
請求項1から7のいずれか一項に記載の、および請求項8−16のいずれか一項に記載の方法を行うために適用される装置を具備する請求項17または18に記載の部品キット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公表番号】特表2011−521226(P2011−521226A)
【公表日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−509429(P2011−509429)
【出願日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際出願番号】PCT/NL2009/050260
【国際公開番号】WO2009/139632
【国際公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(510299455)エフエイビープラウス ビー.ブイ. (1)
【氏名又は名称原語表記】FABPulous B.V.
【住所又は居所原語表記】Oxfordlaan 70, NL−6229 EV Maastricht, Netherlands
【Fターム(参考)】