説明

血液サンプルからの血球の分離

(a)血球に結合して結合血球を形成する結合成分を有する剤と、血液サンプルとを接触させる工程と、(b)血液から前記結合血球を分離する工程と、を含み、前記剤が、複数種の異なる血球に結合可能であり、前記結合成分が、前記血球の表面上で発現しているタンパク質に結合可能である、血液サンプルから血球を分離する方法を提供する。また、(a)赤血球に結合する結合成分を有する剤を含むサンプル回収容器を提供する工程と、(b)赤血球が前記剤に結合するように、前記サンプル回収容器内に血液サンプルを回収する工程と、(c)赤血球が前記サンプル回収容器内に留まるように、前記サンプル回収容器から前記血液サンプルを除去する工程と、を含み、前記サンプル回収容器又は前記剤が、前記血液サンプルを除去する際に前記サンプル回収容器内に赤血球を保持する手段を含む、血液サンプルから赤血球を分離する方法も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全血から血液成分を分離する方法に関する。具体的には、本発明は、除去される細胞の全てに結合する単剤を用いて、血液サンプルから細胞の大部分を除去し、血漿サンプルを提供する方法に関する。本発明は、更に、サンプル回収容器に赤血球を捕捉することにより赤血球を除去した後、赤血球枯渇血液サンプルをアッセイ装置に運ぶ方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
血漿から赤血球及び白血球を分離する方法は、血液サンプルの調製及び分析の分野で多数知られている。従来、血漿から血球を分離するために、実験室では血液サンプルの遠心分離が用いられている。過去数年間で、添加剤を全く使用することなしに連続的に分離することができる、血球を分離するための改良法が確立された。
【0003】
磁気泳動分離機は、デオキシヘモグロビン赤血球が常磁性であること及び赤血球に比べて白血球の磁化率が低いことに基づいて、赤血球を標的とする。非特許文献1には、血球を高効率で分離するための、連続一段階及び三段階常磁性体捕捉モード磁気泳動マイクロ分離機の設計、製作、及び特徴について記載されている。強磁性ワイヤに一様の磁場を印加すると、高傾斜磁場が発生する。常磁性体捕捉モード分離機では、外部磁場をマイクロチャネルに垂直に印加したとき、常磁性体である赤血球は、強磁性ワイヤの近くに引きつけられ、反磁性体である白血球は、強磁性ワイヤから離れる。したがって、赤血球を分離出口チャネルに引きつけることにより、白血球から赤血球を分離できる。
【0004】
非特許文献2は、Zweifach−Fung効果とも呼ばれる分岐法則により、血球から血漿を分離する原理を用いて、連続的にリアルタイムで血漿を分離するためのマイクロ流体装置を開示している。赤血球が細管血液容器の分岐領域を通過するとき、赤血球は、流速の速い娘血液容器に入るため、流速の遅い他の容器に入る細胞は僅かである。圧力勾配がより高く、且つ血球に対してトルクが生じ、これが流速の速い容器に血球を引き入れるので、血球は流速の速い容器に引き込まれる。非特許文献2は、1つの分岐を備える単純な装置と、5つの平行分岐血漿チャネルを備える装置とを開示している。前記装置は、血球からの血漿の分離に成功したことが示された。
【0005】
血液成分を分離するための常磁性体捕捉モード磁気泳動分離機及びマイクロ流体装置の示す利点にもかかわらず、血液分離方法の速度及び効率を改善することに対する必要性が依然として存在している。非特許文献1及び2では、磁気分離機及びマイクロ流体分離機は、正確であるように設計されていたが、装置の流速が非常に遅く、且つ少量の血液しか分離されなかった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Han and Frazier(2006)Paramagnetic Capture Mode Magnetophoretic Microseparator for High Efficiency Blood Cell separations Lab on a Chip 6 265−273
【非特許文献2】Yang et al(2006)A microfluidic device for continuous,real time blood plasma separation Lab on a chip DOI:10.1039/b516401j,2006 Jul;6(7):871−80
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上記先行技術に関する問題を克服することにある。具体的には、本発明の目的は、高速且つ高効率で大量の血液を分離し得る方法及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
したがって、本発明は、
(a)血球に結合して結合血球を形成する結合成分を有する剤と、血液サンプルとを接触させる工程と、
(b)血液から前記結合血球を分離する工程と、
を含み、
前記剤が、複数種の異なる血球に結合可能である、血液サンプルから血球を分離する方法を提供する。
【0009】
前記結合成分が、血球の表面上で発現しているタンパク質に結合可能であることが特に好ましい。
【0010】
前記結合成分自体が、複数種の異なる血球に結合可能であることも特に好ましい。後者の場合、典型的には、抗CD147抗体又は抗CD235抗体等の、複数種の異なる細胞(以下で論じるように、サンプル中の血球の大部分であることが好ましい)の表面に存在するタンパク質に結合可能な抗体が用いられる。
【0011】
本発明は、更に、
(a)赤血球に結合する結合成分を有する剤を含むサンプル回収容器を提供する工程と、
(b)赤血球が前記剤に結合するように、前記サンプル回収容器内に血液サンプルを回収する工程と、
(c)赤血球が前記サンプル回収容器内に留まるように、前記サンプル回収容器から前記血液サンプルを除去する工程と、
を含み、
前記サンプル回収容器又は前記剤が、前記血液サンプルを除去する際に前記サンプル回収容器内に赤血球を保持するための手段を含む、血液サンプルから赤血球を分離する方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
したがって、典型的には、本発明で使用される剤は、血漿サンプルを作製できるように、又は赤血球を除去して赤血球枯渇血液サンプルを作製できるように、血球の大部分に結合可能である。本発明の利点は、装置(マイクロ流体装置及びナノ流体装置等)で用いたときの分離速度が既知の方法よりも速いこと、及び分離がより効率的且つ有効なことである。更に、上記装置を少量のサンプルで作動させても少量の血液しか得られないが、高効率且つ高速の分離を用いると、以前に可能であった量よりも大量の分離サンプルが、後の分析のために提供される。
【0013】
血漿サンプルが必要な場合、前記剤は、以下の種類の細胞:赤血球、白血球、血小板、及び内皮細胞のうちの2種、3種、又はそれ以上に結合可能であることが好ましい。前記剤は、赤血球、白血球、血小板、及び内皮細胞の全てに結合可能であることがより好ましい。しかし、前記剤は、血液サンプル中の細胞の大部分に結合可能であることが典型的であり、以下の種類の細胞:赤血球、巨核球、単球、マクロファージ、好中性顆粒球、好酸性顆粒球、好塩基性顆粒球、肥満細胞、ヘルパーT細胞、サプレッサーT細胞、細胞傷害性T細胞、ナチュラルキラーT細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞、樹状細胞、網状赤血球、及びこれらの細胞の幹細胞の大部分に結合可能であることが好ましい。大部分とは、細胞の種類又は総細胞数のいずれかによって50%以上の細胞が、サンプルから除去され得る形で結合していることを意味する。しかし、典型的には、除去される細胞はこれよりも遥かに多く、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、99%以上、99.9%以上、更には実質的に100%(実質的に全て)、又は100%(全て)の細胞が除去され得る。典型的には、赤血球のみを除去する場合でさえも、99%の細胞物質が除去される。しかし、他の種類の細胞のみを除去しようとする場合、関与する細胞の種類によって、この値が低くなる場合もある。保持された細胞画分から特定の種類の細胞を選択的に除去できるため、前記方法は、細胞集団を速やかに亜分画する手段も提供する。
【0014】
本発明の別の実施形態では、赤血球枯渇血液サンプルを必要とするとき、前記剤は、典型的には、血液から赤血球を除去できるように、赤血球に結合可能であるが、他の血液成分には結合することができず(又は、他の血液成分に対して赤血球に選択的に結合可能であり)、その結果、更なるアッセイのための血液を調製し得る。この実施形態では、赤血球は、サンプル回収容器に保持される。この容器は、特に限定されず、血液サンプルを回収するのに好適な任意の種類の容器であってもよい。前記容器は、vacutainer又は類似のサンプル管であることが好ましい。
【0015】
本方法では、血液から結合血球を分離する工程は、典型的には、磁場又は電磁場を印加して、結合血球を操作することを含む。前記操作は、特に限定されず、結合血球の捕捉及び保持の少なくともいずれかを行う(例えば、サンプル回収容器内等の特定の領域(特に好ましい)、反応領域、又は分離装置の分離領域に、結合血球をトラップする)ことを含み得る。赤血球のみが除去されたとき、白血球、血漿、及び任意の他の血液成分等の残りの血液成分は、必要に応じて、後の工程で除去されてもよい。別の実施形態では、前記操作は、結合血球を除去し、サンプル回収容器、分離装置、反応領域、又は分離領域内に残りの血液成分を残すことを含み得る。
【0016】
本方法で好ましく用いられる磁性物質又は磁化可能物質は、特に限定されない。磁性ビーズ及び磁性タンパク質の少なくともいずれか等の前記物質は、典型的には、固体表面を有してもよく、又は最も好ましくは、液体中で自由に流動する物質である。磁性タンパク質を用いるとき、前記磁性タンパク質は、磁性物質又は磁化可能物質を結合乃至内封する部分を含み得、前記部分は、金属結合タンパク質、ポリペプチド、又はペプチドを含む。本発明では、典型的には、結合成分及び磁性タンパク質全体は、融合タンパク質から形成される。磁性物質又は磁化可能物質を結合乃至内封する部分は、ラクトフェリン、トランスフェリン、フェリチン、第二鉄結合タンパク質、フラタキシン、シデロホア、及びメタロチオネインから選択されるタンパク質、又はタンパク質の金属結合ドメインを含むことが好ましい。磁性物質又は磁化可能物質を結合乃至内封する部分は、遷移金属原子、ランタニド金属原子、遷移金属イオン、ランタニド金属イオン、及び前記イオンを含む化合物の少なくともいずれかに結合可能であることが好ましい。
【0017】
本発明では、結合成分は、血球の表面上で発現しているタンパク質に結合可能であることが好ましい。しかし、場合によっては、赤血球の表面上の物質は、時にタンパク質以外である場合もある。上記のように、血液中の細胞の大部分に結合可能である限り、又は結合成分に選択的に結合することにより他の成分と赤血球とを区別し得る限り、いずれの物質を用いてもよい。しかし、タンパク質は、ニューロテリン(neurothelin)(CD147)(細胞の大部分、好ましくは白血球、赤血球、血小板、及び内皮細胞の全てに対する結合に好ましい)、又はグリコホリンA(CD235a)若しくはグリコホリンB(CD235b)(それぞれ、赤血球に対する結合に好ましい)等の膜貫通タンパク質であることが好ましい。この実施形態では、結合成分は、ニューロテリンモノクローナル抗体、グリコホリンAモノクローナル抗体、又はグリコホリンBモノクローナル抗体であることが好ましい。
【0018】
本方法は、血球を分離するためのいずれの手段を用いてもよい。しかし、サンプル回収容器内で血球を単離する手段を用いることが好ましい。典型的には、これは、結合成分の磁性表面又は磁化可能表面(例えば、磁性ビーズ等)への結合、結合成分の磁性タンパク質への結合、又は結合成分のサンプル回収容器表面への結合を含む。磁性ビーズ又は磁性タンパク質を用いるとき、結合細胞をサンプル回収容器内に確実に捕捉するために、結合が生じた後の適切な時点で磁場を印加するが、処理されたサンプルは除去され、更に調製又はアッセイされる。
【0019】
次に、本発明で用いられる結合成分について、より詳細に論じる。
【0020】
上記のように、血球又は赤血球に結合可能である限り、結合成分は、特に限定されない。したがって、結合成分は、血球に結合するのに好適である限り、それ自体いずれの種類の物質又は分子であってもよい。一般に、結合成分は、抗体又は抗体断片、受容体又は受容体断片、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド模倣体、核酸、オリゴヌクレオチド、及びアプタマーから選択される。本発明の他の好ましい実施形態では、結合成分は、抗体の可変ポリペプチド鎖(Fv)、T細胞受容体又はT細胞受容体断片、アビジン、及びストレプトアビジンから選択される。認識部分は、抗体の単鎖可変部分(sc−Fv)から選択されることが最も好ましい。
【0021】
抗体は、外来抗原の認識に関与する免疫グロブリン分子であり、脊椎動物で発現する。抗体は、Bリンパ球又はB細胞として知られている特殊な種類の細胞により産生される。個々のB細胞は、1種の抗体しか産生せず、前記抗体は1つのエピトープを標的とする。B細胞は、認識する抗原に遭遇すると、分裂し、抗体産生細胞(即ち、プラズマ細胞)に分化する。
【0022】
殆どの抗体の基本構造は、2種の異なる種類の4本のポリペプチド鎖から構成されている。小さい方の鎖(軽鎖)の分子量は、25キロダルトン(kDa)であり、大きい方の鎖(重鎖)の分子量は、50kDa〜70kDaである。軽鎖は、1つの可変領域(V)と1つの定常領域(C)とを有する。重鎖は、1つの可変領域(V)と抗体のクラスによって3つから4つの定常領域(C)とを有する。重鎖の第1の定常領域と第2の定常領域とは、可変長のヒンジ領域により隔てられている。2本の重鎖は、ジスルフィド架橋を介してヒンジ領域で結合している。ヒンジ領域よりも下の重鎖領域は、Fc領域(結晶化可能断片)としても知られている。ヒンジ領域よりも上の軽鎖及び重鎖複合体は、Fab領域(抗体断片)として知られており、2つの抗体結合部位が結合したものは、F(ab)領域として知られている。重鎖の定常領域は、補体カスケードの分子を含む免疫系の他の成分及び細胞表面上の抗体受容体に結合可能である。抗体の重鎖及び軽鎖は、ジスルフィド架橋により結合していることが多い複合体を形成し、前記複合体は、可変領域の末端で所定のエピトープに結合する。
【0023】
抗体の可変遺伝子は、突然変異、体細胞組換(遺伝子シャフリングとしても知られている)、遺伝子変換、及びヌクレオチド付加事象により形成される。
【0024】
ScFv抗体は、以下を含む多数の標的に対して産生され得る:
1.ウイルス:Torrance et al.2006.Oriented immobilisation of engineered single−chain antibodies to develop biosensors for virus detection.J Virol Methods.134(1−2)164−70、
2.C型肝炎ウイルス:Gal−Tanamy et al.2005.HCV NS3 serine protease−neutralizing single−chain antibodies isolated by a novel genetic screen.J Mol Biol.347(5):991−1003)、及びLi and Allain.2005.Chimeric monoclonal antibodies to hypervariable region 1 of hepatitis C virus.J Gen Virol.86(6)1709−16、
3.癌:Holliger and Hudson.Engineered antibody fragments and the rise of single domains.Nat Biotechnol.23(9)1126−36。
また、ScFv抗体は、プロテオミクスを含む各種用途で用いられ得る(Visintin et al.2004.Intracellular antibodies for proteomics.J Immunol Methods.290(1−2):135−53)。
【0025】
したがって、最も好ましい実施形態では、本方法は、血球、及び磁性ビーズ又は磁性タンパク質等の固体物質を認識するための、1以上の抗体の1以上の抗原結合腕から典型的に形成される剤を利用する。前記固体物質が磁性タンパク質であるとき、前記剤は、抗体の抗原結合腕に結合している金属結合タンパク質の1以上のコピーを有する多タンパク質剤である。典型的には、用いられる抗体断片は、通常、scFvと呼ばれる単鎖可変断片ポリペプチドを作り出す可動性リンカーで結合された、重鎖及び軽鎖の可変領域(即ちV及びV)を含む。剤の両方の部分がタンパク質及びポリペプチドの少なくともいずれかから形成されるとき(即ち、標識がキメラタンパク質を含むとき)、標識は、当該技術分野において周知である組み換え技術を用いて形成され得る。しかし、いずれかの部分が他の種から形成されている場合、標識は、単にある種を別の種に結合させることにより作製され得る。
【0026】
したがって、本方法は、上記で定義された分析物のための標識を形成する方法であって、赤血球、及び磁性物質又は磁化可能物質結合部分等の固体物質に剤を結合させるために、結合成分を結合させる工程を含む方法も提供する。
【0027】
次に、磁性物質又は磁化可能物質として磁性タンパク質を用いる本発明の実施形態について、より詳細に説明する。
【0028】
磁性物質又は磁化可能物質に結合可能であり、且つ結合成分の血球への結合に干渉しない限り、磁性物質又は磁化可能物質結合部分は、特に限定されない。磁性物質又は磁化可能物質結合部分は、金属結合タンパク質、ポリペプチド、又はペプチド(又はタンパク質、ポリペプチド、若しくはペプチドの金属結合ドメイン)を含む。典型的には、この部分は、1以上の遷移金属原子、ランタニド金属原子、遷移金属イオン、及びランタニド金属イオンの少なくともいずれか、又は前記イオンを含む任意の化合物に結合可能である、又は結合している。前記イオンとしては、Fe、Co、Ni、Mn、Cr、Cu、Zn、Cd、Y、Gd、Dy、又はEuの少なくともいずれかのイオンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0029】
本発明のより好ましい実施形態では、前記1以上の金属イオンは、Fe2+、Fe3+、Co2+、Co3+、Mn2+、Mn3+、Mn4+、Cd2+、及びNi2+の少なくともいずれかを含む。本発明で用いるための最も好ましいイオンは、Fe2+、Fe3+、Cd2+、及びMn2+イオンである。典型的には、これらイオンは、鉄の場合、ラクトフェリン、トランスフェリン、及びフェリチンに結合し、カドミウム及びマンガンの場合、メタロチオネイン−2に結合する。Fe2+の結合は、酸性条件を用いることにより促進されることが好ましく、一方Fe3+の結合は、中性条件又はアルカリ条件を用いることにより促進されることが好ましい。
【0030】
本発明の好ましい実施形態では、金属結合部分は、ラクトフェリン、トランスフェリン、フェリチン(アポフェリチン)、メタロチオネイン(MT1又はMT2)、第二鉄結合タンパク質(FBP、例えば、インフルエンザ菌由来のFBP)、フラタキシン、及びシデロホア(細菌膜を貫通して鉄を輸送する機能を有する非常に小さなペプチド)から選択されるタンパク質、又はタンパク質の金属結合ドメインを含む。
【0031】
幾つかの実施形態では、本発明の標識は、複数の磁性物質又は磁化可能物質結合部分を含み得る。標識の磁性を制御するために、前記部分の数を制御することもできる。かかる実施形態では、前記標識は、2個〜100個の磁性物質又は磁化可能物質結合部分を含むことが典型的であり、2個〜50個の前記部分を含むことが好ましく、2個〜20個の前記部分を含むことが最も好ましい。最終的なキメラタンパク質では、金属結合タンパク質の各コピーは、可動性のために非帯電アミノ酸リンカーに隣接して付着し得る。
【0032】
本発明はまた、
(a)血球に結合する結合成分を有する剤を含むサンプル回収容器と、
(b)血液サンプルを除去する際に前記サンプル回収容器内に前記血球を保持するための手段と、
を含む、血液から血球を分離するためのキットを提供する。
【0033】
前記キットの好ましい実施形態では、容器内に血球を保持するための手段は、容器表面、典型的には、容器の内面の大部分への剤の結合を含む。
【0034】
或いは、容器内に血球を保持するための手段は、剤に結合している血球に対して磁気的に影響を与える手段を含んでもよい。この実施形態では、前記剤は、血球に結合可能な結合成分を含み、前記結合成分が、磁性物質又は磁化可能物質に付着する。
【0035】
本キットでは、前記結合成分は、典型的には、本発明の方法に関して上に記載したような成分である。磁性物質又は磁化可能物質はまた、典型的には、本発明の方法に関して上に記載したような物質である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)血球に結合して結合血球を形成する結合成分を有する剤と、血液サンプルとを接触させる工程と、
(b)血液から前記結合血球を分離する工程と、
を含み、
前記剤が、複数種の異なる血球に結合可能であり、前記結合成分が、前記血球の表面で発現しているタンパク質に結合可能であることを特徴とする、血液サンプルから血球を分離する方法。
【請求項2】
剤が、以下の種類の細胞:赤血球、白血球、血小板、及び内皮細胞のうちの2種、3種、又はそれ以上に結合可能である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
剤が、赤血球、白血球、血小板、及び内皮細胞に結合可能である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
剤が、以下の種類の細胞:赤血球、巨核球、単球、マクロファージ、好中性顆粒球、好酸性顆粒球、好塩基性顆粒球、肥満細胞、ヘルパーT細胞、サプレッサーT細胞、細胞傷害性T細胞、ナチュラルキラーT細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞、樹状細胞、網状赤血球、及びこれらの細胞の幹細胞のうちの大部分に結合可能である請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
タンパク質が、膜貫通タンパク質である請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
タンパク質が、細胞外マトリクスメタロプロテイナーゼ誘導物質である請求項5に記載の方法。
【請求項7】
タンパク質が、ニューロテリン(CD147)である請求項6に記載の方法。
【請求項8】
(a)赤血球に結合する結合成分を有する剤を含むサンプル回収容器を提供する工程と、
(b)赤血球が前記剤に結合するように、前記サンプル回収容器内に血液サンプルを回収する工程と、
(c)赤血球が前記サンプル回収容器内に留まるように、前記サンプル回収容器から前記血液サンプルを除去する工程と、
を含み、
前記サンプル回収容器又は前記剤が、前記血液サンプルを除去する際に前記サンプル回収容器内に赤血球を保持する手段を含むことを特徴とする、血液サンプルから赤血球を分離する方法。
【請求項9】
結合成分が、赤血球の表面上で発現しているタンパク質に結合可能である請求項8に記載の方法。
【請求項10】
タンパク質が、膜貫通タンパク質である請求項9に記載の方法。
【請求項11】
膜貫通タンパク質が、グリコホリンA(CD235a)又はグリコホリンB(CD235b)である請求項10に記載の方法。
【請求項12】
血液サンプルを除去する際に赤血球がサンプル回収容器内に保持されるように、剤が、前記サンプル回収容器表面に結合している請求項8から11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
剤の結合成分が、磁性物質又は磁化可能物質に付着している請求項1から12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
請求項8から12のいずれかに従属するとき、サンプル回収容器から血液サンプルを除去する工程が、前記サンプル回収容器に磁場又は電磁場を印加して、赤血球を保持することを含む請求項13に記載の方法。
【請求項15】
磁性物質又は磁化可能物質が、固体表面、磁性ビーズ、及び磁性タンパク質の少なくともいずれかを含む請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
磁性タンパク質が、磁性物質又は磁化可能物質を結合乃至内封する部分を含み、前記部分が、金属結合タンパク質、ポリペプチド、又はペプチドを含む請求項15に記載の方法。
【請求項17】
結合成分及び磁性タンパク質全体が、融合タンパク質から形成される請求項16に記載の方法。
【請求項18】
磁性物質又は磁化可能物質を結合乃至内封する部分が、ラクトフェリン、トランスフェリン、フェリチン、第二鉄結合タンパク質、フラタキシン、シデロホア、及びメタロチオネインから選択されるタンパク質、又はタンパク質の金属結合ドメインを含む請求項16又は17に記載の方法。
【請求項19】
磁性物質又は磁化可能物質を結合乃至内封する部分が、遷移金属原子、ランタニド金属原子、遷移金属イオン、ランタニド金属イオン、及び前記イオンを含む化合物の少なくともいずれかに結合可能である請求項16から18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
遷移金属イオン及びランタニド金属イオンの少なくともいずれかが、Fe、Co、Ni、Mn、Cr、Cu、Zn、Cd、Y、Gd、Dy、又はEuの少なくともいずれかのイオンを含む請求項19に記載の方法。
【請求項21】
1以上の金属イオンが、Fe2+、Fe3+、Co2+、Co3+、Mn2+、Mn3+、Mn4+、Ni2+、Zn2+、及びCd2+の少なくともいずれかを含む請求項20に記載の方法。
【請求項22】
結合成分が、抗体又は抗体断片、受容体又は受容体断片、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド模倣体、核酸、オリゴヌクレオチド、及びアプタマーから選択される請求項1から21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
結合成分が、ニューロテリンモノクローナル抗体、グリコホリンAモノクローナル抗体、又はグリコホリンBモノクローナル抗体である請求項22に記載の方法。
【請求項24】
(a)請求項1から23のいずれかに記載の血液サンプルから血球を分離する方法と、
(b)所望の細胞を得る工程と、
(c)任意的に、前記所望の細胞を単離する工程と、
を含む、血液サンプルから所望の細胞を得る方法。
【請求項25】
(a)血球に結合する結合成分を有する剤を含むサンプル回収容器と、
(b)血液サンプルを除去する際に、前記サンプル回収容器内に前記血球を保持するための手段と、
を含むことを特徴とする、血液から血球を分離するためのキット。
【請求項26】
サンプル回収容器内に血球を保持するための手段が、前記サンプル回収容器の表面に対する剤の結合を含む請求項25に記載のキット。
【請求項27】
サンプル回収容器内に血球を保持するための手段が、剤に結合している血球に対して磁気的に影響を与える手段を含み、前記剤が、血球に結合可能である結合成分を含み、前記結合成分が、磁性物質又は磁化可能物質に付着している請求項26に記載のキット。
【請求項28】
結合成分が、血球の表面上で発現しているタンパク質に結合可能である請求項25から27のいずれかに記載のキット。
【請求項29】
タンパク質が、膜貫通タンパク質である請求項28に記載のキット。
【請求項30】
血球が赤血球であり、膜貫通タンパク質が、グリコホリンA(CD235a)又はグリコホリンB(CD235b)である請求項29に記載のキット。
【請求項31】
血球が、赤血球、白血球、血小板、及び内皮細胞のうちの2種、3種、又はそれ以上であり、膜貫通タンパク質が、ニューロテリンである請求項29に記載のキット。
【請求項32】
血球が、以下の種類の細胞:赤血球、巨核球、単球、マクロファージ、好中球、好酸球、好塩基球、肥満細胞、ヘルパーT細胞、サプレッサーT細胞、細胞傷害性T細胞、ナチュラルキラーT細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞、網状赤血球、樹状細胞、及びこれらの細胞の幹細胞のうちの大部分である請求項31に記載のキット。
【請求項33】
結合成分が、抗体又は抗体断片、受容体又は受容体断片、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド模倣体、核酸、オリゴヌクレオチド、及びアプタマーから選択される請求項25から32のいずれかに記載のキット。
【請求項34】
結合成分が、ニューロテリンモノクローナル抗体、グリコホリンAモノクローナル抗体、又はグリコホリンBモノクローナル抗体である請求項33に記載のキット。
【請求項35】
(a)血液サンプルを請求項1から24のいずれかに記載の方法に付して、調製血液サンプルを形成する工程と、
(b)前記調製血液サンプル中の分析物をアッセイする工程と、
を含むことを特徴とする、分析物をアッセイする方法。
【請求項36】
インビトロ診断法である請求項35に記載の方法。

【公表番号】特表2012−500982(P2012−500982A)
【公表日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−524309(P2011−524309)
【出願日】平成21年8月11日(2009.8.11)
【国際出願番号】PCT/EP2009/060356
【国際公開番号】WO2010/023096
【国際公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(507194084)アイティーアイ・スコットランド・リミテッド (30)
【Fターム(参考)】