説明

血液冷却装置及び採血装置

【課題】製品製造作業においてこれまでよりも良好な白血球除去性能が得られ、献血バスなどの狭いスペースへの積載も可能で、かつ、作業性をも向上させた血液冷却装置及び採血装置を提供すること。
【解決手段】ハウジング(2)の上部に、冷却手段(3)を装着し、当該冷却手段(3)の下部(ハウジング(2)の内部)に揺動手段(4)を配置し、前記冷却手段(3)がペルチェ素子である血液冷却装置(1)。血液バッグ(B)を、前記冷却手段(3)に載せて、揺動しながら冷却する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、日本赤十字社の血液センターで実施されている全血採血後に、採取された血液を冷却するための血液冷却装置と血液を採血しながら冷却できる採血装置に関する。
【背景技術】
【0002】
血液バッグに採血した後の血液は、通常32から31℃の温度である。血液センターでは、白血球除去を行うために最適な温度である25℃まで血液の温度を下げるため、採血した血液バッグを運搬時に凍結したクーラントを入れたクーラーボックスに入れて製剤工程まで輸送しているが、現実には、製剤工程の現場でクーラーボックスから取り出した時点で血液バッグの温度を測定した時にほとんどが最適な温度に達していない状態である。
特に、夏場は半数以上が血液の温度が30℃以上であったという報告もある。
また、白血球除去に適していない温度25℃よりも上の温度でフィルタによる白血球除去を行うと、白血球除去率が下がるという報告もされている。
血液センターの採血現場は献血バスやオープン採血など、場所を一時的に借りたスペースで行うこともあるため、冷蔵庫などの大型で電力を大量に消費する機器を持ち込み血液バッグを現場で冷却することも輸送や電力の問題から困難であるため、小型であり効率良く血液バッグを冷却する機器を求められている。
【0003】
特許文献1には、全血の採血中に、(1)血液に抗凝固剤を混合する工程、(2)前記血液を4〜28℃
の間で所定の温度で一定となるように冷却する工程、(3)前記血液を白血球除去フィルタで濾過して白血球を除去する工程、以上の各工程を含む血液成分分離方法の発明が記載されている。
さらに特許文献2には、人工心肺装置の熱交換部(2)の少なくとも一部に、ペルチェ素子(PD)を装着し、当該ペルチェ素子(PD)の発熱面または吸熱面に放熱部材(5)を装着したペルチェユニット(1)の発明が記載されている。
【0004】
さらに特許文献3には、ろ過フィルタの血液流入口に脱血ラインが接続され血液流出口に返血ラインが接続されると共に、ろ過フィルタの透析液流入口に透析液ラインが接続され透析液流出口に除水ラインが接続された加温冷却自在型CHDF(持続的血液濾過透析)装置において、返血ラインと透析液ラインのいずれか一方に、ペルチェ素子への供給電圧の極性切替制御によって返血ラインの血液を加温もしくは冷却し得る加温冷却器を配置した発明が開示されている。
【0005】
特許文献1の発明は、採血チューブの途中に、血液の温度制御手段(冷却器)を配置しているので冷却器を通過する採血チューブ内の血液の流速が速い時と、遅い時で血液に対する冷却時間が変わってしまい、採血を行う個々の血液において温度を均一に調整することが難しい。
【0006】
【特許文献1】特開2004−173853号公報(特許請求の範囲、図1)
【特許文献2】特開2006−296452(特許請求の範囲、図1)
【特許文献3】特開2000−93449号公報(特許請求の範囲、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする問題点は、従来採血後の血液を冷却する手段として用いられてきた、クーラーボックス等の冷却手段では十分な冷却効果が得られず、冷却にも長い時間が掛かっていたことと、血液センターの出張採血現場のように冷蔵庫などの大型の冷却機器を設置できない場所においても血液バッグを冷却する手段が求められている点である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明者は、これまで保存前白血球除去を行う工程の前でばらつきが生じていた全血製剤の温度を、白血球除去フィルタにより最適な除去性能が得られる25℃にまで、ばらつきがなく均一に簡単かつ迅速に調整を行うことができる発明について鋭意検討を重ねた結果、以下の発明に到達した。
[1]本発明は、ハウジング(2)の上部に、冷却手段(3)を装着し、当該冷却手段(3)の下部[ハウジング(2)の内部]に排熱手段(5)を配置し、当該排熱手段(5)の下部[ハウジング(2)の内部]に揺動手段(4)を配置し、前記冷却手段(3)がペルチェ素子である血液冷却装置(1)を提供する。
[2]本発明は、血液バッグ(B)を、前記冷却手段(3)に載せて、揺動しながら冷却する[1]に記載の血液冷却装置(1)を提供する。
[3]本発明は、血液バッグ(B)中の血液の温度を温度測定手段(6)によりモニタリングし、設定された温度に冷却されたことを検知して、作業者等に知らせる報知手段(7)を備えた[1]または[2]に記載の血液冷却装置(1)を提供する。
[4]本発明は、血液バッグ(B)の冷却手段(3)と、血液バッグ(B)中の血液の温度測定手段(6)と、目標温度に到達したことを知らせる報知手段(7)と、目標温度・測定温度・揺動速度の表示手段(8)と、目標温度・揺動速度の設定条件を記憶する記憶手段(10)と、これらの各手段の制御手段(9)を有する[1]から[3]のいずれか1に記載の血液冷却装置(1)を提供する。
[5]本発明は、血液バッグ(B)の受皿(22.2)と当該受皿(22.2)の下部に配置された揺動手段(24)と、これらを一体収納する収納空間を有し、かつ収納空間を蓋体(22.1)で気密に密閉して真空室(22VR)としたハウジング(22)とから構成され、
前記受皿(22.2)と揺動手段(24)の間に、冷却手段(23)を配置し、
当該冷却手段(23)の下部に排熱手段(25)を装着し、当該排熱手段(25)の下部に揺動手段(24)を配置し、
前記排熱手段(25)に、熱伝導部(25.1)を介して、排熱部(25.2)を接続した採血装置(21)を提供する。
[6]本発明は、血液バッグ(B)の受皿(22.2)と当該受皿(22.2)の下部に配置された揺動手段(24)と、これらを一体収納する収納空間を有し、かつ収納空間を蓋体(22.1)で気密に密閉して真空室(22VR)としたハウジング(22)とから構成され、
前記受皿(22.2)の下部に、熱伝導部(25.1)を介して冷却手段(23)を接続し、冷却手段(23)に、排熱手段(25.2)を装着した採血装置(21.1)を提供する。
[7]本発明は、前記受皿(21)に載せる血液バッグ(B)を、覆うことができる冷却用のカバー(C)を有し、当該カバー(C)に、熱伝導部(25.12)を接続した[5]または[6]に記載の採血装置(21、21.1)を提供する。
[8]本発明は、前記冷却手段(23)がペルチェ素子である[5]から[7]のいずれか1に記載の採血装置(21、21.1)を提供する。
[9]本発明は、血液バッグ(B)の冷却手段(23)と、血液バッグ(B)中の血液の第1温度測定手段(22.7a)及び/又は第2温度測定手段(22.7b)と、目標温度に達したことを作業者に知らせる報知手段(27)と、目標温度・測定温度・揺動速度の表示手段(28)と、目標温度・揺動速度の設定値を記憶する記憶手段(30)と、これらの各手段の制御手段(29)を有する[5]から[8]のいずれか1に記載の採血装置(21、21.1)を提供する。
[10]本発明は、前記第1温度測定手段(22.7a)が、非接触式の赤外線放射温度計であり、当該第1温度測定手段(22.7a)を、真空室(22VR)内のハウジング(22)壁面に装着した[5]から[9]のいずれか1に記載の採血装置(21、21.1)を提供する。
[11]本発明は、前記第2温度測定手段(22.7b)が、接触式の熱電対温度計、白金抵抗温度計、サーミスタの中から選ばれるいずれかであり、
前記第2温度測定手段(22.7b)を、(A)前記載皿22.2の天面に装着及び/又は(B)前記カバー(C)に装置した[5]から[9]のいずれか1に記載の採血装置(21、21.1)を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の血液冷却装置1では、
(1)採血後の血液温度を白血球除去に適した温度にすることで、製品製造作業においてこれまでよりも良好な白血球除去性能が得られる。
(2)小型かつ短時間で血液バッグを冷却することができるため、献血バスなどの狭いスペースへの積載も可能となり、冷蔵庫など大型の機器を積載できない現在の課題も解決できる。
本発明の採血装置(21、21.1)では、
(3)血液を、血液バッグ内に採血しながら、血液バッグを冷却するので、後で冷却する手間が省略でき、作業性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
[血液冷却装置1]
図1は、本発明の血液冷却装置1(以下、単に「装置1」と略記する場合もある)の全体図(外観)で、図2は図1に血液バッグBを配置した使用状態の全体図(外観)、図3は図1の内部構造の概略図(側面)、図4は図1の内部構造の概略図(斜視)、図5は本発明の血液冷却装置1のブロック図である。なお、図2中、B1は親バッグ、B2は子バッグ、Tはこれらを接続するチューブである。以下説明の便宜上、親バッグB1を血液バッグBとして記載し説明する。
【0011】
本発明の血液冷却装置1は、図1から図4に例示するように、ハウジング2の上部(天面)に、冷却手段3を装着し、当該冷却手段3の下部(ハウジング2の内部)に排熱手段5を配置している。さらに排熱手段5の下部(ハウジング2の内部)に揺動手段4を配置している。
ハウジング2の表面(天面、各側面のいずれかの箇所)には、表示手段8、電源部11、操作手段12を配置している。(なお必要に応じて報知手段7も配置することができる。)
本発明の血液冷却装置1は、冷却手段3として、ペルチェ素子を採用し、血液バッグBを、冷却手段3(ペルチェ素子)に載せて、揺動しながら冷却する。
血液バッグB中の血液の温度を、温度測定手段6によりモニタリングして、設定された温度に冷却されたことを検知して、報知手段7により作業者等に知らせる。
本発明の血液冷却装置1は、図5に例示するように、血液バッグBの冷却手段3と、血液バッグB中の血液の温度測定手段6と、目標温度に到達したことを知らせる報知手段7と、目標温度・測定温度・揺動速度の表示手段8と、目標温度・揺動速度の設定条件を記憶する記憶手段10と、これらの各手段の制御手段9を有する。
【0012】
[冷却手段3]
冷却手段3は、板状(皿状)又は、血液バッグBが膨張した状態の丸みに対して接触面が沿うように弧状の斜面で形成され、血液バッグBを載せ、血液バッグBの熱を吸収することにより、血液バッグBを冷却する役割を果たす。
本発明の冷却手段3として、「ペルチェ素子」が使用される。「ペルチェ素子」は、2種類の金属の接合部に電流を流すと、片方の金属からもう片方へ熱が移動するというペルチェ効果(Peltier effect)を利用した板状の半導体素子であり、電圧を印加すると一方の面が吸熱を行い(吸熱面)、反対の面が発熱する(発熱面)。小型であり騒音振動を発生しないことから、一般的にはコンピュータのCPU冷却手段や医療機器の冷却手段として使用されている。
冷却手段3(ペルチェ素子)は、吸熱面3.1を上にしてハウジング2に配置する。吸熱面3.1の反対側は熱が発生するため、発熱した熱が吸熱面に影響を与えないように熱を逃がすために、排熱手段5を配置している。
【0013】
[揺動手段4]
揺動手段4は、冷却手段3(ペルチェ素子)の下部に(ハウジング2の内部に)配置され、冷却手段3を血液バッグBとともに、水平回転方向に揺動する手段である。
血液バッグBを水平回転方向に揺動(震盪)しながら吸熱することにより、血液バッグB内の血液が循環して冷却効果を高めることができる。
揺動手段4は、図3から図4に例示するように、電動式のモーター4.1と(冷却手段3の)支持部材(支柱4.2と支持枠4.3)より構成される。
モーター4.1の動力は、シャフト4.4、ウォームホイル4.5、ウォーム4.6を経て、支持部材(支柱4.2と支持枠4.3)に伝達される。
モーター4.1の速度は、後述する制御手段9によりコントロール(制御)される。モーター4.1の速度をコントロールすることで、揺動の速度を調整することができる。
揺動手段4は、ここで例示した水平揺動方式の他にも、シーソー式や三次元複合揺動方式を採用することができる。
【0014】
[排熱手段5]
排熱手段5として、例えば、銅やアルミ等の金属を材料とした放熱板(ヒートシンク)や、冷却ファン等を使用することができる。
[温度制御手段と温度測定手段6]
血液バッグB中の血液を白血球除去に適した温度である25℃に下げる温度制御手段として、(A)血液バッグに熱電対式の温度測定手段6(「温度センサ」という場合もある)をあてて温度の監視を行う手段や、(B)採血量毎に血液の吸熱時間を統計的に導き出し、電圧を印加する時間を時限式にする手段等を採用することができる。
温度測定手段6として、例えば、熱電対、または白金測温抵抗体もしくはサーミスタ等の接触式のものや、または非接触式の赤外線放射温度計等を使用することができる。
温度測定手段6によって測定された温度と、目標とする温度を比較して、目標とする温度に達した際に、制御部9により、報知手段7や表示手段8に出力することができる。
したがって本発明で、温度制御手段とは、温度測定手段6または温度測定手段6と制御部9を意味する。
【0015】
[報知手段7]
報知手段7は、目標とする温度に達したことを音で作業者に知らしめるために、ブザー、発光等を使用することができる。
[表示手段8]
表示手段8には、7セグLED、液晶画面等を採用し、目標に設定している温度や、現在測定されている温度、揺動機構の速度を数値として表示することができる。
また、電源のON状態や目標とする温度に達した状態を報知する表示手段として、LED灯や液晶画面等を採用することができる。
[制御手段9]
制御手段9は、一般的な組み込みシステム機器と同様に内蔵したマイクロコンピュータ(CPU)使用する手段と、装置1外のパソコン(PC)上で動作するソフトウェアを使用する手段等を採用することができる。例えば、装置1を単体で運用する場合は前者の内蔵したマイクロコンピュータ(CPU)による制御を選択できるが、複数個の血液バッグBに対して複数台の装置1を運用して温度変化を管理、記録する場合は後者のソフトウェアを使用する手段を選択できる。その際には、制御手段9にはPCと通信するためにUSBポートやRS−232C等の通信手段13を備える。
制御手段9は、冷却手段3(ペルチェ素子)とモーター4.1、報知手段7、表示手段8に供給する電源をコントロールすることができる。例えば、温度測定手段6によって測定している血液バッグBの温度が、記憶手段10に記憶されている目標の温度に達した時に、表示手段8の表示灯を点灯させたり、報知手段7に音を出させたりする。さらに冷却手段(ペルチェ素子)3に供給している電圧を止めて血液バッグBの冷却を停止したり、モーター4.1に供給している電圧を止めて揺動を停止させることができる。
【0016】
[記憶手段10]
記憶手段10は、目標とする温度の設定条件や、揺動速度の設定条件を記憶しておくためのものである。記憶手段10として、DRAMやフラッシュメモリ等を採用することができる。また、外部のPCから制御を行う場合は、PCのHDD上に設定条件を記憶しておくこともできる。
[電源部11]
電源部11は、制御部9を通して、冷却手段3(ペルチェ素子)とモーター4.1、温度測定手段6、報知手段7、表示手段8、記憶手段10に電源を供給する。電源部11には電源スイッチ11.1が備わっており、給電のON/OFFを切り替えることができる。
[操作手段12]
操作手段12は、血液冷却装置1の動作を開始させたり、目標とする温度を設定、モーター4.1の速度をコントロールするためのもので、ダイヤル型、またはスイッチ型のものを採用することができる。
【0017】
[血液冷却装置1の操作方法の説明]
(1)電源スイッチ11.1をオンにして電源を投入する。
(2)操作手段12により、目標とする設定温度を入力する。さらに、揺動手段4の速度を設定する。(2回目以降の使用時には設定を記憶手段10に記憶させておくことで本操作を省略できる。)
(3)採血後の血液バッグBを、冷却装置3(ペルチェ素子)の吸熱面3.1上に載せる。
(4)さらに温度測定手段6を血液バッグBにセットする。(非接触式の温度測定手段6を使用する場合は、常に血液バッグBの温度を測定できる位置に、温度測定手段6を配置することで、本操作を省略できる。)
(5)開始スイッチ12.1を押して、血液冷却装置1を動作させる。
(6)目標温度に達すると、報知手段7(音、発光)や表示手段8で報知する。[このとき冷却手段3(ペルチェ素子)の吸熱動作は停止するが、揺動手段4は作動させたままにしておいても良い。]
(7)血液バッグBを取り外す。
(8)作業が終了したら電源スイッチ11.1をオフにして電源を切る。
【0018】
[採血装置21]
図6から図11は、前記冷却手段3(ペルチェ素子)を搭載した本発明の採血装置21(21.1)の概略図等で、図6は全体図(外観図)、図7は採血装置21の概略図(断面図)、図8はその他の採血装置21.1の実施例を示す概略図(断面図)、図9はブロック図である。
【0019】
本発明の採血装置21は、図6から図7に例示するように、血液バッグBの受皿22.2と当該受皿22.2の下部に配置された揺動手段24と、これらを一体収納する収納空間を有しかつ収納空間を、蓋体22.1で気密に密閉して真空室22VR(真空構造)としたハウジング22とから構成され、受皿22.2と揺動手段24の間に、冷却手段23を配置している。
さらに詳述すれば、受皿22.2の下部に冷却手段23を装着し、冷却手段23の下部に排熱手段25を装着し、排熱手段25の下部に揺動手段24を配置している。
冷却手段23は、受皿22.2と接触する部分を吸熱面、排熱手段25と接触する部分を発熱面として配置する。
さらに排熱手段25に、熱伝導部25.1を介して、排熱部25.2を接続し、排熱部25.2より、冷却手段23で吸収した血液バッグBの熱を、ハウジング22の外に放出するようにしている。
【0020】
ハウジング22の表面(天面、各側面のいずれかの箇所)には、表示手段28、電源31(電源スイッチ31.1)、操作手段32を配置している。(なお必要に応じて報知手段27も配置することができる。)
ハウジング22の上部には、チューブT1のクランプ34とクランプ開放レバー34.1が装着されている。
ハウジング22には、真空室22VR内の圧力・温度、これらを制御するための圧力測定手段22.5(圧力センサという場合もある)と、圧力制御手段22.6と、第1温度測定手段22.7aがそれぞれ装着されている。
第1温度測定手段22.7aは、受皿22.2の上に載せた血液バッグBに対して指向する位置(配置)となるように、真空室22VR内のハウジング22壁面に装着している。
【0021】
さらに、ハウジング22内部には、あえて詳細は図示しないが、重量測定手段22.3と、制御手段29(図示せず)が配置されている。
制御手段29は、図9のブロック図のように、揺動手段24、冷却手段23、重量測定手段22.3、第1温度測定手段22.7a(図7に例示するようにハウジング22に装着される)、第2温度測定手段22.7b(後述する図8に例示するように血液バッグBの受皿22.2、同カバーCに装着される)等の連動制御を行う。詳細は後述する。
また揺動手段24は、あえて詳細は図示しないが、例えば特開2000-84067号公報に記載の採血装置と同様に、駆動手段(モーター)と、受皿22.2の支持部材(支柱とシャフトからなる)と当該支持部材に、駆動手段により受皿22.2に駆動力を伝達する手段(ウォームとウォームホイル)を有する。受皿22.2は、支持部材と駆動手段により、前後方向上下揺動と左右方向上下揺動の三次元複合揺動や、
また図1の冷却装置1のように水平揺動方式、シーソー式の揺動を行うことができる。
【0022】
[冷却手段23]
冷却手段23は、前記血液冷却装置1の冷却手段3(ペルチェ素子)が使用される。
[排熱手段25]
排熱手段25は、前記血液冷却装置1の排熱手段5が使用される。
[熱伝導部25.1]
熱伝導部25.1としては、例えば銅やアルミ等の金属を材質とした熱チューブや、ポリエチレン等の樹脂素材のチューブ内にラジエータ液を充填したものが使用される。
ラジエータ液を充填したチューブ(熱伝導部25.1)は、冷却手段23の吸熱面、受皿22.2、カバーC(図8の採血装置21.1のみ)間をラジエータ液が小型のポンプ等を使用して循環する機構を採用することができる。
[報知手段27]
報知手段27は、前記血液冷却装置1の報知手段7が使用される。
[表示手段28]
表示手段28は、前記血液冷却装置1の表示手段8が使用される。
[重量測定手段22.3]
重量測定手段22.3は、例えばロードセルが使用される。
[減圧ポンプ22.4]
減圧ポンプ22.4は、例えば真空ポンプが使用される。
[圧力測定手段22.5]
圧力測定手段22.5は、例えばダイヤフラム式の圧力計が使用される。
[圧力制御手段22.6]
圧力制御手段22.6は、例えば真空室VRと外気を接続する管に配置された電動で制御することができる弁であり、真空ソレノイドが使用される。
[第1温度測定手段22.7a]
第1温度測定手段22.7aは、非接触式の赤外線放射温度計が使用される。
[第2温度測定手段22.7b]
第2温度測定手段22.7bは、接触式の熱電対温度計や、白金抵抗温度計、サーミスタ等が使用される。第1温度測定手段22.7a(図7に例示するようにハウジング22に装着される)、第2温度測定手段22.7b(後述する図8に例示するように、血液バッグBの受皿22.2、同カバーCに装着される)は、どちらか一方を使用しても良いし、両方併用しても良い。
【0023】
[制御手段29]
制御手段29は、前記血液冷却装置1の制御手段9が使用される。
なお、制御手段29は、図9に例示するように、(前記血液冷却装置1の制御手段9と同様に)冷却手段23(ペルチェ素子)とモーター(揺動手段24)、報知手段27、表示手段28に供給する電源をコントロールすることができる。例えば、温度測定手段22,7a(22.7b)によって測定している血液バッグBの温度が、記憶手段30に記憶されている目標の温度に達した時に、表示手段28の表示灯を点灯させたり、報知手段27に音を出させたりする。さらに冷却手段(ペルチェ素子)23に供給している電圧を止めて血液バッグBの冷却を停止したり、モーター(揺動手段24)に供給している電圧を止めて揺動を停止させることができる。
また制御手段29は、出願人が開示した公知の採血装置[例えば特開2000-84067号公報(その他特開2005−253991号公報、特開2005−152662号公報)]と同様に、「制御部」と「駆動部」を有する。
「制御部」は、前記各手段の他に、入出力回路を有する。入出力回路には受皿22.2の揺動速度検出用センサ(定位置停止用センサ)の検出信号が転送される。記憶手段30には血液バッグBの風袋量、収納空間に生成する陰圧力、設定採血量等のデータを記憶することができる。「制御部」にはそれぞれ表示手段28、操作手段32(各種スイッチ、ドライブ回路を有する操作パネル、設定パネル等を含む)が接続され、これらの入力データが制御手段29.1に転送される。
「駆動部」は「制御部」に接続され二つの変換回路A/D(アナログ→デジタル)及びD/A(デジタル→アナログ)を備える。一方の変換回路A/Dには切換器、アンプAPを介してそれぞれ重量測定手段22.3と圧力測定手段22.5が接続される。他方の変換回路D/Aにはドライブ回路DCを介してモーター(駆動手段24)が接続される。さらにその他の各ドライブ回路DCにはクランプソレノイド、真空ソレノイド、電力制御部を介して減圧ポンプ22.4が接続され、それぞれのドライブ回路DCによりクランプソレノイド、圧力制御手段22.6(真空ソレノイド)、減圧ポンプ22.4、モーター(駆動手段24)を制御する。
【0024】
また図8に例示する採血装置21.1は、受皿22.2の下部に、熱伝導部25.1の端部を接続し、当該熱伝導部25.1の他方の端部を、冷却手段23の吸熱面に接続し、冷却手段23の発熱面(吸熱面と反対側の面)に、排熱手段25を装着している。
血液バッグBの冷却効率をあげるために、排熱手段25は、ハウジング22の外部に装着する。
さらに、冷却効率をあげるために、受皿21に載せる血液バッグBに、直接、覆い被さる状態で接触するカバーC(吸熱ゲル等からなる吸熱シート)を、冷却手段23と併用することができる。カバーCにも熱伝導部25.12が接続される。熱伝導部25.12の他方の端部は、冷却手段23の吸熱面に接続される。
第2温度測定手段22.7bが、受皿22.2(の天面)とカバーCの両方に装着される。
前記第2温度測定手段(22.7b)の一方は、受皿22.2に載せた血液バッグBに接触する位置である載皿22.2天面に装着し、もう一方は、カバーCの血液バッグBに接触する表面に装着している。
冷却手段23の吸熱面から熱伝導体25.1、25.12を通して受皿22.2、カバーCに熱を誘導して、血液バッグBを冷却する。
採血装置21.1その他の構成は、図7の採血装置21と実質的に同じであるから、
詳細な説明は省略する。
なお図7の採血装置21にも、第2温度測定手段22.7bを装着し、熱伝導部25.12を接続したカバーCを使用することができる。採血装置21では、熱伝導部25.12の他方の端部は、冷却手段23の吸熱面(または排熱部25.2)に接続される。
【0025】
[採血装置21(21.1)の操作方法の説明]
(1)電源スイッチ31.1をオンにして電源を投入する。
(2)操作手段32により、目標とする設定温度を入力する。さらに、揺動手段24の速度、採血する目標採血量、陰圧力を設定する。(2回目以降の使用時には設定を記憶手段32に記憶させておくことで本操作を省略できる。)
(3)受皿22.2の上に採血前の空の血液バッグBを載せ、採血針Nをドナーの静脈に刺穿して血流を確保し、真空室22VRの蓋体22.1を閉じ、開始スイッチ32.1を押して採血を開始する。
(4)採血の開始と共に、受皿22.2が冷却(図8の採血装置21.1では、カバーCも冷却)を開始する。同時に温度測定手段22.7a(22.7b)により、採血を開始したときから採取された血液の温度の測定を開始する。
(5)目標採血量に達すると、採血チューブT1がクランプ34によって閉塞され、真空状態が開放されて採血は終了するが、冷却手段23および揺動手段24は温度測定手段26による測定温度が目標とする温度に達するまでは動作し続ける。
(6)目標温度に達すると、報知手段27(音、発光)や表示手段28で報知する。
[冷却手段23(ペルチェ素子)の吸熱動作は停止するが、揺動手段は作動させたままにしておいても良い。]
(7)血液バッグBを採血装置21(21.1)より取り外す。
(8)作業が終了したら電源スイッチ31.1をオフにして電源を切る。
【実施例】
【0026】
[血液冷却装置1の冷却試験]
図1から図5に記載した血液冷却装置1の冷却効果を確認する試作機を、図10に示すように作製し、血液バッグBの冷却試験を実施した。
血液バッグBとして川澄化学工業株式会社製400mLバッグ(内容量CPD液56mL)を使用し、図10に記載する様に36℃の温水で満たしたビーカーより血液バッグチューブTを通して落差の作用で血液バッグBに400mLの採水を行い、血液バッグB内に挿入した温度測定手段6(熱電対)によって温度を測定し、記録計によって記録した。
試験室の温度は25℃に保ち、試験は冷却手段3(ペルチェ素子)による冷却を行った条件と冷却を行わなかった条件の2通り実施した。
採水時間は、実際の採血で行われている時間では一般的な8分20秒に設定し、流量のばらつきで時間に差異が発生しないように、流速調整機能付き流量計をビーカーと血液バッグB間の血液バッグチューブTに配置して流量を0.8mL/秒に設定した。
冷却手段3(ペルチェ素子)として、オーム電機(型式0CE-40P-D24)を使用した。
試験結果を、図11(グラフ)に示す。
図11(グラフ)の結果より、冷却を行わなかった血液バッグB中の水の温度は採水開始後、2分程で温度が30℃に達していたが、冷却を行った血液バッグB中の水の温度は採水を開始してから、採水が終了するまで水温が25℃を上回る事が無かった。
また採水終了後、4分間試験状態を保って温度測定を行ったが、冷却を行った場合の方が、温度の下降が大きく確認された。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の血液冷却装置の全体図(外観)
【図2】図1に血液バッグを配置した使用状態の全体図(外観)
【図3】図1の内部構造の概略図(側面)
【図4】図1の内部構造の概略図(斜視)
【図5】本発明の血液冷却装置のブロック図
【図6】本発明の採血装置の全体図(外観)
【図7】本発明の採血装置の概略図(断面図)
【図8】本発明の採血装置のその他の実施例を示す概略図(断面図)
【図9】本発明の採血装置のブロック図
【図10】本発明の血液冷却装置の冷却試験の一例を示す概略図
【図11】図10の試験結果を示すグラフ
【符号の説明】
【0028】
1 血液冷却装置
2 ハウジング
3 冷却手段(ペルチェ素子)
3.1 吸熱面
4 揺動手段
4.1 モーター
4.2 支柱
4.3 支持枠
4.4 シャフト
4.5 ウォームホイル
4.6 ウォーム
5 排熱手段
6 温度測定手段(温度センサ)
7 報知手段
8 表示手段
9 制御手段
10 記憶手段
11 電源
11.1 電源スイッチ
12 操作手段
12.1 開始スイッチ
13 通信手段
B1(B) 親バッグ(血液バッグ)
B2 子バッグ
T チューブ
21(21.1) 採血装置
22 ハウジング
22.1 蓋体(カバー)
22.2 受皿
22.3 重量測定手段
22.4 減圧ポンプ
22.5 圧力測定手段
22.6 圧力制御手段(圧力センサ)
22.7a 第1温度測定手段
22.7b 第2温度測定手段
22VR 真空室
23 冷却手段
24 揺動手段
25 排熱手段
25.1 熱伝導部
25.12 熱伝導部
25.2 排熱部
26 温度測定手段(温度センサ)
27 報知手段
28 表示手段
29 制御手段
30 記憶手段
31 電源
31.1 電源スイッチ
32 操作手段
32.1 開始スイッチ
33 通信手段
34 クランプ
34.1 クランプ開放レバー
N 採血針
T1 チューブ
C カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング(2)の上部に、冷却手段(3)を装着し、当該冷却手段(3)の下部[ハウジング(2)の内部]に排熱手段(5)を配置し、当該排熱手段(5)の下部[ハウジング(2)の内部]に揺動手段(4)を配置し、前記冷却手段(3)がペルチェ素子であることを特徴とする血液冷却装置(1)。
【請求項2】
血液バッグ(B)を、前記冷却手段(3)に載せて、揺動しながら冷却する請求項1に記載の血液冷却装置(1)。
【請求項3】
血液バッグ(B)中の血液の温度を温度測定手段(6)によりモニタリングし、設定された温度に冷却されたことを検知して、作業者等に知らせる報知手段(7)を備えたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の血液冷却装置(1)。
【請求項4】
血液バッグ(B)の冷却手段(3)と、血液バッグ(B)中の血液の温度測定手段(6)と、目標温度に到達したことを知らせる報知手段(7)と、目標温度・測定温度・揺動速度の表示手段(8)と、目標温度・揺動速度の設定条件を記憶する記憶手段(10)と、これらの各手段の制御手段(9)を有することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1に記載の血液冷却装置(1)。
【請求項5】
血液バッグ(B)の受皿(22.2)と当該受皿(22.2)の下部に配置された揺動手段(24)と、これらを一体収納する収納空間を有し、かつ収納空間を蓋体(22.1)で気密に密閉して真空室(22VR)としたハウジング(22)とから構成され、
前記受皿(22.2)と揺動手段(24)の間に、冷却手段(23)を配置し、
当該冷却手段(23)の下部に排熱手段(25)を装着し、当該排熱手段(25)の下部に揺動手段(24)を配置し、
前記排熱手段(25)に、熱伝導部(25.1)を介して、排熱部(25.2)を接続したことを特徴とする採血装置(21)。
【請求項6】
血液バッグ(B)の受皿(22.2)と当該受皿(22.2)の下部に配置された揺動手段(24)と、これらを一体収納する収納空間を有し、かつ収納空間を蓋体(22.1)で気密に密閉して真空室(22VR)としたハウジング(22)とから構成され、
前記受皿(22.2)の下部に、熱伝導部(25.1)を介して冷却手段(23)を接続し、冷却手段(23)に、排熱手段(25.2)を装着した、ことを特徴とする採血装置(21.1)。
【請求項7】
前記受皿(21)に載せる血液バッグ(B)を、覆うことができる冷却用のカバー(C)を有し、当該カバー(C)に、熱伝導部(25.12)を接続した、ことを特徴とする請求項5または請求項6に記載の採血装置(21、21.1)。
【請求項8】
前記冷却手段(23)がペルチェ素子である、請求項5から請求項7のいずれか1に記載の採血装置(21、21.1)。
【請求項9】
血液バッグ(B)の冷却手段(23)と、血液バッグ(B)中の血液の第1温度測定手段(22.7a)及び/又は第2温度測定手段(22.7b)と、目標温度に達したことを作業者に知らせる報知手段(27)と、目標温度・測定温度・揺動速度の表示手段(28)と、目標温度・揺動速度の設定値を記憶する記憶手段(30)と、これらの各手段の制御手段(29)を有することを特徴とする請求項5から請求項8のいずれか1に記載の採血装置(21、21.1)。
【請求項10】
前記第1温度測定手段(22.7a)が、非接触式の赤外線放射温度計であり、当該第1温度測定手段(22.7a)を、真空室(22VR)内のハウジング(22)壁面に装着したことを特徴とする請求項5から請求項9のいずれか1に記載の採血装置(21、21.1)。
【請求項11】
前記第2温度測定手段(22.7b)が、接触式の熱電対温度計、白金抵抗温度計、サーミスタの中から選ばれるいずれかであり、
前記第2温度測定手段(22.7b)を、(A)前記載皿22.2の天面に装着及び/又は(B)前記カバー(C)に装置したことを特徴とする請求項5から請求項9のいずれか1に記載の採血装置(21、21.1)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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