説明

血液凝固測定用試薬及び血液凝固時間測定方法

【課題】本発明は、血液凝固測定において、測定の初期段階における光学的変化の発生を抑制して、より正確に血液凝固時間を測定することが可能な血液凝固測定用試薬及び血液凝固時間測定方法を提供することを課題とする。
【解決手段】血液試料中の血液凝固因子以外の物質とカルシウムとの反応は阻害するが、血液凝固反応を阻害しないカルシウムキレート化剤を含有する血液凝固測定用試薬により、上記の課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液凝固測定用試薬及び血液凝固時間測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
血液凝固は、血液中の種々の血液凝固因子が関与する反応であって、この反応により最終的に血液中のフィブリノゲンがフィブリンに変換される。血液凝固に要する時間(以降、血液凝固時間ともいう)を測定することにより、各種の血液凝固因子の不足や異常などを調べることができる。ゆえに、血液凝固時間を種々の疾患、障害などの指標とすることができる。また、血液凝固時間に基づいて、患者の出血傾向を調べることもできる。
【0003】
血液の凝固は、通常、次の2つの経路から起こると考えられている(図1を参照)。すなわち、第一の経路は、外因系(組織因子系)凝固とよばれる経路であり、まず、表皮細胞などから放出される組織トロンボプラスチン(組織因子ともいう)を出発点として、組織トロンボプラスチンにより凝固第VII因子が活性化される。この活性化された第VII因子により凝固第X因子が活性化される。次いで、第V因子、第II因子が順次活性化され、最終的にフィブリノゲンがフィブリンに変換される。この経路による血液凝固時間は、プロトロンビン時間(PT)測定法により測定できる。
【0004】
第二の経路は、内因系(接触因子系)凝固とよばれる経路である。内因系凝固では、コラーゲンなど陰性電荷の異物面への接触などにより、凝固第XII因子が活性化される。そして、活性化された凝固第XII因子により第XI因子が活性化される。次に、活性化された第XI因子により第IX因子が活性化され、活性化された第IX因子はカルシウムイオン及び第VIII因子と共に第X因子を活性化する。次いで、第V因子、第II因子が順次活性化され、最終的にフィブリノゲンがフィブリンに変換される。この経路による血液凝固時間は、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)測定法により測定できる。
なお、いずれの経路においても、カルシウム及びリン脂質(PL)が関与している。
【0005】
血液凝固時間の測定法としては、血液凝固因子を含む血液試料と、リン脂質(PL)、カルシウムなどを含む試薬とを混合して血液の凝固を生じさせ、フィブリンの形成を光学的変化として検出する光学的測定方法が知られている。上記のPT測定法及びAPTT測定法は、光学的測定方法の一種である。
このような光学的測定方法においては、通常、血液試料に血液凝固測定用試薬が添加されて血液凝固反応が開始してから、反応が進んでフィブリンが形成される前までは、光学的変化はごく小さい。そして、フィブリンの形成が進むと短時間のうちに急激な光学的変化が生じる。
しかしながら、血液凝固測定用試薬中に含まれるカルシウムと血液試料中に含まれる血液凝固因子以外の物質とが反応して凝集することがある。カルシウムと反応する血液凝固因子以外の物質としては、例えば、血液試料中に含まれるC反応性タンパク質(CRP)や脂質成分(例えば、超低密度リポタンパク質(VLDL))などが挙げられる。このような反応により凝集が生じると、測定の初期段階において該凝集が光学的変化として検出されてしまい、その光学的変化が血液凝固として誤って認識される場合がある(非特許文献1)。
【0006】
特開2003−169700号(特許文献1)には、血液凝固を光学的に測定する際に、測定開始から凝固反応終了までの間に少なくとも1つのチェックポイント又はチェック領域を設けることによって、初期反応の異常を検出する方法が開示されている。
【0007】
しかしながら、上述したような測定の初期段階における光学的変化の発生を抑制して、正確に血液凝固時間を測定できる試薬は、今まで存在しなかった。
【特許文献1】特開2003−169700号公報
【非特許文献1】Toh, CHら、Blood, 100 (7), p.2522-2529 (2002)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は血液凝固測定において、測定の初期段階における光学的変化の発生を抑制して、より正確に血液凝固時間を測定することが可能な血液凝固測定用試薬及び血液凝固時間測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、血液試料中の血液凝固因子以外の物質とカルシウムとの反応は阻害するが、血液凝固反応を阻害しないカルシウムキレート化剤を含有する血液凝固測定用試薬を提供する。
また、本発明は、リン脂質を含有する第1試薬及びカルシウムを含有する第2試薬を含み、前記第1試薬及び前記第2試薬の少なくとも一方が、血液試料中の血液凝固因子以外の物質とカルシウムとの反応は阻害するが、血液凝固反応を阻害しないカルシウムキレート化剤を含む血液凝固測定用試薬キットを提供する。
【0010】
また、本発明は、血液試料中の血液凝固因子以外の物質とカルシウムとの反応は阻害するが、血液凝固反応を阻害しないカルシウムキレート化剤を含む血液凝固測定用試薬の存在下で、血液試料とカルシウムとリン脂質とを接触させる工程と、
血液凝固時間を測定する工程と
を含む血液凝固時間測定方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の血液凝固測定用試薬及び血液凝固時間測定方法を用いることにより、測定の初期段階における光学的変化の発生を抑制して、血液凝固時間を測定できる。ゆえに、従来の血液凝固時間の測定法に比べて、より正確な血液凝固測定を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
血液凝固測定に用いられる血液試料は、通常、患者から採取した血液(全血又は血漿)に、クエン酸ナトリウムなどの抗凝固剤を加えて調製されるものである。血液試料に含まれる抗凝固剤が、血液凝固を測定する場(以下、「血液凝固測定系」という)に存在すると、血液凝固が阻害されてしまう。よって、抗凝固剤の影響を除くために、血液凝固測定系には、通常、カルシウムを大量に存在させて、抗凝固剤とカルシウムとを結合させることにより、抗凝固剤の作用を阻害する。
カルシウムは、また、図1にも示すように、血液凝固反応を進行させるために必須の成分でもある。すなわち、血液凝固測定系に過剰に存在するカルシウムが、血液凝固測定系に存在させるリン脂質(PL)とともに、血液試料中の血液凝固因子と反応してこれを活性化するので、血液凝固反応が進行する。
抗凝固剤と反応せず、血液凝固反応にも用いられなかった過剰のカルシウムは、血液試料中の超低密度リポタンパク質(VLDL)などの脂質粒子やC反応性タンパク質(CRP)などの血液凝固因子以外の物質と反応して凝集する。この凝集が、測定の初期段階における光学的変化を引き起こす。上記のように、光学的測定においては、この凝集による光学的変化と血液凝固反応による光学的変化とを区別することが難しい。ゆえに、上記のような凝集が生じた場合、正確な血液凝固時間を測定することができない。
【0013】
本発明者らは、測定の初期段階における光学的変化の発生の原因物質の1つであるカルシウムに注目した。そして、カルシウムをキレート化剤によりキレートして、測定の初期段階における光学的変化の原因となる他の物質(すなわち血液試料中の血液凝固因子以外の物質)との反応を抑制することにより、測定の初期段階における光学的変化の発生を抑制できるのではないかと考えた。しかし、上記のように、カルシウムは、抗凝固剤と反応して抗凝固剤の作用を阻害する役割と、血液試料中の血液凝固因子と反応して血液凝固反応を進行させる役割とを有する。ゆえに、キレート化剤によりカルシウムを完全にキレート化してしまうと、カルシウムが抗凝固剤や血液試料中の血液凝固因子と反応できない恐れがある。そこで、本発明者らは、抗凝固剤及び血液凝固因子よりもカルシウムと結合する力が弱い、適切なカルシウムキレート化剤を選択して用いることにより、測定の初期段階における光学的変化の発生を抑制して、血液凝固時間を測定できることを見出して、本発明を完成した。
【0014】
本発明の血液凝固測定用試薬は、血液凝固時間の測定に用いるための試薬であり、血液試料中の血液凝固因子以外の物質とカルシウムとの反応は阻害するが、血液凝固反応を阻害しないカルシウムキレート化剤を含む。本発明の血液凝固測定用試薬は、単独で血液試料と混合することにより血液凝固の測定に用いることができるように、カルシウムやリン脂質など血液凝固時間の測定に用いる他の組成をさらに含んだものであってもよい。また、本発明の血液凝固測定用試薬は、血液凝固時間の測定に用いる他の組成を含む複数種の試薬と組み合わせた試薬キットとして、血液凝固の測定に用いることができるものであってもよい。
【0015】
血液凝固測定の方法は、種々の方法が知られている。本発明の血液凝固測定用試薬は、特に、透過光変化、散乱光変化などの光学的情報を測定することにより血液凝固反応を検出する光学的な血液凝固測定方法に好適に用いることができる。光学的な血液凝固測定の方法としては、例えばプロトロンビン時間(PT)測定法、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)測定法、ループスアンチコアグラント(LA)測定法、トロンボテスト、ヘパプラスチンテスト、凝固因子定量法などが挙げられる。
【0016】
例えば、従来公知のAPTT測定法は、リン脂質(部分トロンボプラスチンともいう)及び活性化剤を含むAPTT試薬とカルシウム溶液とを用いる方法である。具体的には、APTT試薬と血液試料(血漿)とを混合し、得られた混合液をインキュベーションし、インキュベーション後の混合液とカルシウム溶液を混合して、凝固時間を測定する方法である。なお、APTT測定法において使用される活性化剤としては、エラジン酸、カオリン、セライトなどが挙げられる。
本発明の血液凝固測定用試薬は、例えばAPTT測定法に用いられる場合、APTT試薬又はカルシウム溶液とは別の独立した試薬の形態であってもよいし、上記のキレート化剤をリン脂質と共に含む試薬の形態(すなわち、従来公知のAPTT試薬に上記のキレート化剤を加えた形態)であってもよいし、上記のキレート化剤をカルシウムと共に含む試薬の形態であってもよい。
【0017】
例えば、従来公知のPT測定法は、組織因子とリン脂質との複合体又は組織トロンボプラスチン、及びカルシウムを含むPT試薬を用いる方法である。具体的には、PT試薬と血液試料(血漿)とを混合して、凝固時間を測定する方法である。
本発明の血液凝固測定用試薬は、例えばPT測定法に用いられる場合、PT試薬とは別の独立した試薬の形態であってもよいし、上記のキレート化剤をリン脂質及びカルシウムと共に含む試薬の形態(すなわち、従来公知のPT試薬に上記のキレート化剤を加えた形態)であってもよい。なお、PT測定法において、組織因子とリン脂質との複合体又は組織トロンボプラスチンと、カルシウムとは、別々の試薬としてもよい。この場合、本発明の血液凝固測定用試薬は、上記のキレート化剤をリン脂質と共に含む試薬の形態(すなわち、組織因子とリン脂質との複合体又は組織トロンボプラスチンを含む試薬に上記のキレート化剤を加えた形態)であってもよいし、上記のキレート化剤をカルシウムと共に含む試薬の形態であってもよい。
【0018】
LA測定法は、凝固検査を利用して血液試料中の抗リン脂質抗体を検出する方法である。LA測定法には、様々な方法が知られており、例えば、リン脂質の濃度が異なる2つの試薬を用いる方法が挙げられる。具体的には、リン脂質の濃度が異なる2つの試薬それぞれを用いて血液試料の血液凝固時間を測定し、得られた2つの血液凝固時間の差又は比に基づいて血液試料中の抗リン脂質抗体を検出する方法である。LA測定法において凝固時間を測定する方法は、試薬の種類により異なる。例えば、LA測定法に用いる試薬が、カルシウム及び活性化剤を含む場合には、APTT測定の測定原理に基づいて凝固時間を測定する。LA測定法に用いる試薬が、カルシウム及び蛇毒を含む場合には、蛇毒測定時間の原理に基づいて凝固時間を測定する。また、LA測定法に用いる試薬が、カルシウム、及び組織因子とリン脂質との複合体又は組織トロンボプラスチンを含む場合には、PT測定の原理に基づいて凝固時間を測定する。
トロンボテストは、ビタミンK依存性凝固因子活性の異常を検出する方法の一つである。トロンボテストでは、通常、検体である全血又は血漿に、ウシ脳由来の組織トロンボプラスチンと、ウシ硫酸バリウム吸着血漿と、カルシウムとを含む試薬を加えて、凝固時間を測定する方法である。なお、トロンボテストにおいて、カルシウムと他の組成とは、別々の試薬としてもよい。
【0019】
ヘパプラスチンテストは、ビタミンK依存性凝固因子活性の異常を検出する方法の一つである。ヘパプラスチンテストは、ウシ脳由来の組織トロンボプラスチンの代わりにウサギ脳由来の組織トロンボプラスチンを使用すること以外は、基本的にトロンボテストと同様にして凝固時間を測定する。
凝固因子定量法は、APTT測定法又はPT測定法を利用して、個々の凝固因子を定量する方法である。具体的には、検体である血漿に、目的の凝固因子だけが欠乏した血漿を加え、APTT測定法又はPT測定法の測定原理を利用して凝固時間を測定する方法である。目的の凝固因子が内因系凝固に関与する凝固因子の場合は、APTT測定法で用いられる試薬が使用され、目的の凝固因子が外因系凝固又は共通系凝固に関与する凝固因子の場合は、PT測定法で用いられる試薬が使用される。
【0020】
本発明の血液凝固測定用試薬は、上記の各測定法に用いられる従来公知の試薬に含まれる成分と共に上記のカルシウムキレート化剤を含む形態であってもよいし、上記の各測定法に用いられる従来公知の試薬と組み合わせて用いるための、カルシウムキレート化剤を含む独立した試薬の形態であってもよい。
【0021】
本発明の血液凝固測定用試薬に含まれるキレート化剤は、血液試料に含まれる抗凝固剤のカルシウムに対するキレート安定度定数よりも低いキレート安定度定数を有するものが好ましく、具体的には、抗凝固剤として一般に使用されているクエン酸及びその塩のカルシウムに対するキレート安定度定数よりも低いキレート安定度定数を有するキレート剤が好ましい。このようなキレート安定度定数を有するキレート化剤は、血液試料に含まれている抗凝固剤がカルシウムと結合する能力及び血液凝固因子がカルシウムと結合する能力よりも、カルシウムと結合する能力が弱い。
本明細書において、「カルシウムに対するキレート安定度定数」とは、参考文献「坂口武一、上野景平編、金属キレート[III]、第1版」の付録の5〜10ページの表に記載の方法により測定してlogKMAとして算出される値である。
カルシウムに対するキレート安定度定数は、その数値が大きいほど、カルシウムとキレートを形成しやすいことを示す。
【0022】
上記参考文献の「坂口武一、上野景平編、金属キレート[III]、第1版」によると、クエン酸のカルシウムに対するキレート安定度定数は3.16である。
上記のキレート化剤のカルシウムに対するキレート安定度定数は、具体的には3以下であればよく、好ましくは2.5以下である。
カルシウムに対するキレート安定度定数が3以下のキレート化剤としては、例えばマレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、プロピオン酸、グルコン酸、乳酸、ギ酸、酢酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、コハク酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、トリカルバリル酸、プロパン−1,1,2,3−テトラカルボン酸、ブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸、グリコール酸、チオグリコール酸、酒石酸、イソクエン酸、ピルビン酸、オキサロ酢酸などの有機酸及びそれらの塩が挙げられる。これらの1種又は複数種を用いることができる。
キレート化剤は、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、プロピオン酸、グルコン酸、乳酸及びそれらの塩からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。これら好ましいキレート化剤のカルシウムに対するキレート安定度定数は、上記参考文献「坂口武一、上野景平編、金属キレート[III]、第1版」によると、マレイン酸 1.10、リンゴ酸 2.24、マロン酸 2.49、プロピオン酸 0.68、グルコン酸 1.21、乳酸 1.42である。
【0023】
上記のキレート化剤が上記の有機酸の塩である場合、塩は、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属又はアルカリ土類金属との塩を用いることができる。
【0024】
上記のキレート化剤は、血液試料に含まれている抗凝固剤がカルシウムと結合する能力及び血液凝固因子がカルシウムと結合する能力よりも、カルシウムと結合する能力が弱い。よって、上記のキレート化剤は、カルシウムと抗凝固剤との反応や血液凝固反応を阻害せずに、血液凝固測定系に存在する過剰のカルシウムが血液試料中のVLDLなどの血液凝固因子以外の物質と結合して、測定の初期段階における光学的変化の発生を抑制することができる。
【0025】
血液凝固測定用試薬中のキレート化剤の濃度は、血液凝固測定用試薬を用いて測定する血液凝固測定法の種類、及びキレート化剤の種類に応じて適宜設定することができる。例えばAPTT測定法に用いるカルシウム溶液中にキレート化剤を含む場合、カルシウム溶液中のキレート化剤の濃度は、20〜120mM程度が好ましく、40〜100mMがより好ましい。
また、APTT測定に用いるカルシウム溶液の濃度は、通常、20〜25mMの範囲であり得る。したがって、カルシウム溶液中のキレート化剤の濃度は、カルシウムの濃度の0.8〜6倍に設定することが好ましく、1.6〜5倍に設定することがより好ましい。
【0026】
本発明の血液凝固測定用試薬は、リン脂質をさらに含有することが好ましい。
上記のリン脂質は、血液凝固に用いられる成分として従来の血液凝固測定用試薬に用いられるものを好適に用いることができる。これらのリン脂質の脂肪酸側鎖は特に限定されないが、パルミチン酸、オレイン酸、ステアリン酸が好ましい。該リン脂質としては、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルコリンなどが挙げられる。上記のリン脂質は、ウシ脳由来、ウサギ脳由来、ヒト胎盤由来、大豆由来などの天然のもの、又は遺伝子組み換えにより作製されたもののいずれであってもよい。
【0027】
血液凝固測定用試薬中のリン脂質の濃度は、血液凝固測定用試薬を用いる血液凝固測定法の種類に応じて適宜設定することができる。例えばAPTT測定法に用いる場合、従来のAPTT試薬中のリン脂質の濃度は、20〜200μg/mLであり得る。また、PT測定法に用いる場合、従来のPT試薬中のリン脂質の濃度は、10〜300μg/mLであり得る。
【0028】
上記の血液凝固測定用試薬は、カルシウムをさらに含有することが好ましい。カルシウムは、無機酸とカルシウムとの塩の形が好ましい。このようなカルシウム塩としては、塩化カルシウムなどが挙げられる。また、無機酸とカルシウムとの塩以外のカルシウム塩としては、乳酸カルシウムが挙げられる。
血液凝固測定用試薬中のカルシウムの濃度は、血液凝固測定用試薬を用いる血液凝固測定法の種類に応じて適宜設定することができる。例えばAPTT測定法の場合、従来のAPTT測定法に用いられるカルシウム溶液のカルシウムの濃度は、20〜25mM程度であり得る。また、PT測定法の場合、従来のPT試薬中のカルシウムの濃度は、10〜12.5mMであり得る。
【0029】
上記の血液凝固測定用試薬は、pHが6.0〜8.0が好ましく、より好ましくは7.0〜7.6である。血液凝固測定用試薬のpHは、従来の血液凝固測定用試薬に用いられる緩衝剤を用いて調整できる。該緩衝剤としては、例えばHEPES、TRISなどが挙げられる。
【0030】
上記の血液凝固測定用試薬は、本発明の効果を損なわない範囲で、上記の成分以外に、従来公知の血液凝固測定用試薬に含まれる成分を含むことができる。このような成分としては、例えば活性化剤、蛇毒、組織因子などが挙げられる。活性化剤としては、エラグ酸、カオリン、セライト、コロイドシリカ、無水ケイ酸、アルミナ、マグネシウムなどが挙げられる。蛇毒としては、ラッセル蛇毒、テキスタリン蛇毒、エカリン蛇毒などが挙げられる。組織因子としては、ウサギ脳由来、ヒト胎盤由来、ウシ脳由来などの天然及び遺伝子組換えの組織トロンボプラスチンが挙げられる。
【0031】
上記の血液凝固測定用試薬は、プロトロンビン時間(PT)測定用試薬、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)測定用試薬、ループスアンチコアグラント(LA)測定用試薬、トロンボテスト用試薬、ヘパプラスチンテスト用試薬及び凝固因子定量用試薬からなる群より選択される試薬として用いることができる。
【0032】
本発明は、リン脂質を含有する第1試薬及びカルシウムを含有する第2試薬を含み、該第1試薬及び第2試薬の少なくとも一方が、上記のカルシウムキレート化剤を含む血液凝固測定用試薬キットを提供する。
より好ましくは、本発明の血液凝固測定用試薬キットは、上記の血液凝固測定用試薬を含む。
【0033】
上記の血液凝固測定用試薬キットは、例えばAPTT測定法に用いられる場合、APTT試薬、カルシウム溶液及び上記のキレート化剤含有溶液からなる形態であってもよいし、上記のキレート化剤とリン脂質とを共に含むAPTT試薬とカルシウム溶液とからなる形態であってもよいし、APTT試薬と上記のキレート化剤及びカルシウムを含む溶液とからなる形態であってもよい。
上記の血液凝固測定用試薬キットは、例えばPT測定法に用いられる場合、PT試薬と上記のキレート化剤を含む溶液とからなる形態であり得る。
【0034】
上記の血液凝固測定用試薬キットは、通常の各種の血液凝固測定用の試薬として用いられるその他の試薬を含むことができる。その他の試薬としては、標準血漿又は標準血清、各種血液凝固因子を欠乏させた血漿、緩衝液(例えば血液試料の希釈用のベロナール緩衝液、イミダゾール緩衝液)などが挙げられる。
【0035】
また、本発明は、
血液試料中の血液凝固因子以外の物質とカルシウムとの反応は阻害するが、血液凝固反応を阻害しないカルシウムキレート化剤を含む血液凝固測定用試薬の存在下で、血液試料とカルシウムとリン脂質とを接触させる工程と、
血液凝固時間を測定する工程と
を含む血液凝固時間測定方法をも提供する。
【0036】
上記の接触させる工程は、本発明のキレート化剤を含有する血液凝固測定用試薬、血液試料、カルシウム及びリン脂質を混合することにより得られる測定試料中で行われることが好ましい。
【0037】
上記の血液試料は、患者から採取した全血又はそれから得られる血漿と、抗凝固剤とを混合したものを用いることができる。血漿は、従来公知の方法により全血から調製することができる。抗凝固剤は、従来公知の抗凝固剤であればよく、クエン酸ナトリウムが好ましい。全血又は血漿と抗凝固剤との混合比は、測定する血液凝固時間の種類に応じて適宜選択できる。
【0038】
上記の接触させる工程において、血液試料、キレート化剤、カルシウム及びリン脂質を含む測定試料中のキレート化剤の濃度は、血液凝固測定方法の種類、キレート化剤の種類、測定試料中のカルシウムの濃度などに応じて適宜選択することができる。例えばAPTT測定法の場合、測定試料中のキレート化剤の濃度は好ましくは7〜40mMであり、より好ましくは13〜33mMである。また、例えばPT測定法の場合、測定試料中のキレート化剤の濃度は好ましくは3.5〜20mMであり、より好ましくは6.5〜16.5mMである。
【0039】
上記の接触させる工程において、測定試料中のカルシウムの濃度は、例えばAPTT測定法の場合、通常は6.5〜8.5mM程度であり、PT測定法の場合、通常は6.5〜8.5mM程度である。
したがって、上記の接触させる工程において、測定試料中のキレート化剤の濃度は、カルシウムの濃度の0.8〜6倍に設定することが好ましく、1.5〜5倍に設定することがより好ましい。
また、測定試料中のリン脂質の濃度は、例えばAPTT測定法の場合、通常は10〜60mM程度であり、PT測定法の場合、通常は20〜120mM程度である。
【0040】
上記の接触させる工程は、血液試料と、上記のキレート化剤を含む血液凝固測定用試薬と、カルシウムを含む試薬と、リン脂質を含む試薬とを混合することにより行うことができる。
ある実施形態において、上記の血液凝固測定用試薬は、カルシウムをさらに含んでいてもよい。
ある実施形態において、上記の血液凝固測定用試薬は、リン脂質をさらに含んでいてもよい。
ある実施形態において、上記の血液凝固測定用試薬は、カルシウム及びリン脂質をさらに含んでいてもよい。
【0041】
血液凝固測定用試薬と血液試料との混合比は、測定する血液凝固時間の種類に応じて、従来公知の血液凝固時間の測定方法に従って適宜選択できる。
例えば、APTT測定法では、通常、血液試料とAPTT試薬とカルシウム溶液とを、1:1:1の容量比で混合することにより、血液凝固を生じさせることができる。
また、PT測定法では、通常、血液試料とPT試薬とを、1:2の容量比で混合することにより、血液凝固を生じさせることができる。
【0042】
接触させる工程は、通常、37℃程度の温度で行うことが好ましい。接触させる時間は、血液凝固測定法の種類により適宜選択できる。
【0043】
血液凝固時間を測定する工程は、血液凝固により得られる光学的情報を測定することにより行うことが好ましい。該光学的情報としては、透過光の変化、散乱光の変化などが挙げられる。該光学的情報は、光学的情報検出部を備える従来公知の血液凝固測定装置を用いて検出することができる。該血液凝固測定装置としては、例えばCS−2000i、CS−2100i(いずれもシスメックス社製)などが挙げられる。これらの血液凝固測定装置は、通常、接触させる工程において調製された測定用試料中で血液が凝固する過程を、透過光の変化などを測定することにより検出することができる。
【実施例】
【0044】
以下の実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
参考例1
本参考例では、ループスアンチコアグラント(LA)測定法において、測定の初期段階における異常な光学的変化が発生することを確認した。
乳び血漿など脂質成分を多く含む試料を血液凝固の測定に用いると、試薬中に含まれるカルシウムと血漿中の脂質成分とが反応して凝集が引き起こされ、結果として、測定の初期段階において異常な光学的変化が発生することがある。そこで、本参考例では、血液試料として乳び血漿を使用した。
測定は、血液凝固測定装置CS−2000i(シスメックス社製)を用いて行った(測定項目:LA1)。具体的には、患者から採取した乳び血漿100μLを、37℃にて4分間インキュベーションした。この乳び血漿に、LA測定用試薬(LA1 Screening Reagent、デイドベーリング社製)100μLを加えて測定試料を調製し、測定用試料の透過光の変化を37℃にて4分間測定した。
【0045】
結果を、図2に示す。
図2において、血液試料と測定用試薬とを混合した直後からおよそ40秒までの反応の初期に、透過光の値が急激に低下した。このことから、LA測定法において、測定の初期段階における異常な光学的変化が発生することが確認された。
【0046】
参考例2
本参考例では、プロトロンビン時間(PT)測定法において、測定の初期段階における異常な光学的変化が発生することを確認した。
測定は、血液凝固測定装置CS−2000i(シスメックス社製)を用いて行った(測定項目:PT)。具体的には、患者から採取した低フィブリノゲン血漿50μLを、37℃にて3分間インキュベーションした。この低フィブリノゲン血漿に、PT測定用試薬(Thromborel S、デイドベーリング社製)100μLを加えて測定用試料を調製し、測定用試料の透過光の変化を37℃にて2分間測定した。
【0047】
結果を、図3に示す。
本参考例では、血液試料として低フィブリノゲン血漿を使用している。そのため、測定においては、血液凝固による光学的変化が非常に起こりにくいと考えられる。しかし、図3において、血液試料と測定用試薬とを混合した直後からおよそ40秒までの反応の初期に、透過光の値が低下しており、このことから測定の初期段階における異常な光学的変化が発生したことがわかった。本参考例で、このような異常な光学的変化が発生した原因は明確ではないが、試薬中のカルシウムと血漿中の血液凝固因子以外の物質が反応したために発生した可能性が考えられる。また、試PT測定用試薬にはリン脂質が比較的多く含まれている。そのため、試薬中のリン脂質とカルシウムが反応したことにより、このような異常な光学的変化が発生した可能性も考えられる。
【0048】
実施例1
参考例より、測定の初期段階における異常な光学的変化は、血液試料中の脂質粒子と試薬中のカルシウムとの反応だけでなく、試薬中のリン脂質とカルシウムとの反応によっても発生する可能性が示された。そこで、本実施例では、血液試料の代わりに水を使用して、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)測定法において、測定の初期段階における異常な光学的変化が発生することを確認した。そして、APTT試薬とカルシウムとを混合することにより発生した測定の初期段階における異常な光学的変化を、本発明に従ってキレート化剤を用いることにより抑制できるかについて検討した。
【0049】
測定は、血液凝固測定装置CS−2000i(シスメックス社製)を用いて行った(測定項目:APTT)。具体的には、血液試料の代わりに逆浸透膜で処理した水(RO水)5μlを、37℃にて1分間インキュベーションした。このRO水に、APTT測定用試薬(Actin FSL、デイドベーリング社製)75μlを加え、37℃にてさらに3分間インキュベーションした。この混合液に、キレート化剤を含有した25mM CaCl2溶液75μlを加えて測定用試料を調製し、測定用試料の透過光の変化を37℃にて3分間測定した。なお、CaCl2溶液に含まれるキレート化剤の種類とその濃度は、下記の表1の通りである。また、測定は各濃度のキレート化剤について、4回ずつ行った。
【0050】
【表1】

なお、上記のキレート化剤は、いずれもシグマアルドリッチ社から購入した。
【0051】
各測定において、塩化カルシウム溶液を加えてから3分後までの1分当たりの透過光の変化量:
dH={(3分経過後の透過光量)−(CaCl2溶液添加時の透過光量)}/3
を算出した。
dHの値は、測定の初期段階における光学的変化を反映しており、dHの値が小さいほど、初期段階における光学的変化を抑制する効果が高いと考えられる。
結果を、図4に示す。なお、図4には、4回の測定で得られた変化量の平均値を示す。
【0052】
図4において、キレート化剤の濃度が0mMの時のdHの値が40であったことから、初期段階における光学的変化が、試薬中のリン脂質とカルシウムとの反応によっても発生することが確認できた。
また、図4において、各キレート化剤を試薬に含有させることにより、dHの値が低減したことがわかった。これより、これらキレート化剤を用いることによって、測定の初期段階における異常な光学的変化を抑制できることがわかった。図4において、キレート化剤の中でも、特にマレイン酸及びリンゴ酸について高い抑制効果が見られた。例えば、マレイン酸であれば、20〜120mMの濃度で抑制効果が見られ、30〜100mMでより高い抑制効果が見られた。リンゴ酸であれば、20mM以上の濃度で抑制効果が見られ、30〜60mMでより高い抑制効果が見られた。グルコン酸であれば、40mM以上の濃度で抑制効果が見られ、60〜90mMでより高い抑制効果が見られた。プロピオン酸であれば、30mM以上の濃度で抑制効果が見られ、40〜150mMでより高い抑制効果が見られた。
【0053】
実施例2
市販の血液凝固試験用コントロール血漿を用いて擬似乳び血漿試料を作製し、これを用いてAPTT測定を行った。
血漿凝固試験用コントロール血漿P(デイドベーリング社製)に、イントラファット(武田薬品社製)を0.2%となるように加えて、擬似乳び血漿試料を作製した。コントロール血漿Pは、凝固因子異常により凝固活性が低値を示すように調製されたコントロール血漿である。イントラファットは、脂質製剤である。得られた擬似乳び血漿試料は、凝固活性が低いので、試薬中のカルシウムと試料中の脂質成分との反応による測定の初期段階における光学的変化を検出しやすいと考えられる。
【0054】
実施例1のRO水の代わりに擬似乳び試料50μlを用い、APTT試薬及びキレート化剤を加えた25mM CaCl2溶液の量をそれぞれ50μlずつ用いた以外は、実施例1と同様にして測定を行い、透過光の変化量dHを算出した。
キレート化剤として、リンゴ酸・2Naを0又は30mMとなるようにCaCl2溶液に添加して用いた。測定は、各濃度について4回ずつ行った。
結果を、以下の表2に示す。なお、表2には、4回の測定で得られた変化量の平均値を示す。
【0055】
【表2】

【0056】
表2において、キレート化剤であるリンゴ酸の濃度が0mMの時のdHの値が80であったことから、試薬中のカルシウムと試料中の脂質成分との反応による、測定の初期段階における光学的変化が確認できた。
そして、表2において、キレート化剤を試薬に含有させることにより、dHの値が低減したことがわかった。これより、キレート化剤を用いることによって、試薬中のカルシウムと試料中の脂質成分との反応による、測定の初期段階における異常な光学的変化を抑制できることがわかった。
【0057】
実施例3
本実施例では、血液試料の代わりに水を使用して、プロトロンビン時間(PT)測定法において、測定の初期段階における異常な光学的変化が発生することを確認した。そして、PT試薬中のリン脂質とカルシウムにより発生した測定の初期段階における異常な光学的変化を、本発明に従ってキレート化剤を用いることにより抑制できるかについて検討した。
測定は、血液凝固測定装置CS−2000i(シスメックス社製)を用いて行った(測定項目:PT)。具体的には、血液試料の代わりに逆浸透膜で処理した水(RO水)5μlを、37℃にて3分間インキュベーションした。このRO水に、キレート化剤としてマレイン酸・2Naを含有したPT測定用試薬(Thromborel S、デイドベーリング社製)150μlを加え測定用試料を調製し、測定用試料のの透過光の変化を37℃にて2分間測定を行った。なお、PT測定用試薬に含まれるマレイン酸・2Naの濃度は、下記の表3に示す通りである。また、測定は各濃度について、4回ずつ行った。
各測定における透過光の変化量dHを算出した。結果を、表3に示す。なお、表3には、4回の測定で得られた変化量の平均値を示す。
【0058】
【表3】

【0059】
表3において、キレート化剤であるマレイン酸の濃度が0mMの時のdHの値が29であったことから、初期段階における光学的変化が、試薬中のリン脂質とカルシウムとの反応によっても発生することが確認できた。
また、表3において、キレート化剤を試薬に含有させることにより、dHの値が低減したことがわかった。これより、キレート化剤を用いることによって、測定の初期段階における異常な光学的変化を抑制できることがわかった。表3において、マレイン酸の濃度が34mM以上で抑制効果が見られ、68〜135mMでより高い抑制効果が見られた。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】血液凝固の主な2つの経路を示す図である。
【図2】参考例1で得られた透過光の変化を示すグラフである。
【図3】参考例2で得られた透過光の変化を示すグラフである。
【図4】実施例1で得られた、各キレート化剤を用いた場合の反応強度(dH)の結果を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルシウムと血液試料中の血液凝固因子以外の物質との反応は阻害するが、血液凝固反応を阻害しないカルシウムキレート化剤を含有する血液凝固測定用試薬。
【請求項2】
前記カルシウムキレート化剤が、カルシウムに対するキレート安定度定数がクエン酸及びその塩のカルシウムに対するキレート安定度定数より低いキレート化剤である請求項1に記載の血液凝固測定用試薬。
【請求項3】
前記カルシウムキレート化剤が、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、プロピオン酸、グルコン酸、乳酸及びそれらの塩からなる群から選択される少なくとも1種である請求項1又は2のいずれか1項に記載の血液凝固測定用試薬。
【請求項4】
リン脂質をさらに含有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の血液凝固測定用試薬。
【請求項5】
カルシウムをさらに含有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の血液凝固測定用試薬。
【請求項6】
前記血液凝固測定用試薬が、プロトロンビン時間測定用試薬、活性化部分トロンボプラスチン時間測定用試薬、ループスアンチコアグラント測定用試薬、トロンボテスト用試薬、ヘパプラスチンテスト用試薬及び凝固因子定量用試薬からなる群より選択される請求項1〜5のいずれか1項に記載の血液凝固測定用試薬。
【請求項7】
リン脂質を含有する第1試薬及びカルシウムを含有する第2試薬を含み、前記第1試薬及び前記第2試薬の少なくとも一方が、カルシウムと血液試料中の血液凝固因子以外の物質との反応は阻害するが、血液凝固反応を阻害しないカルシウムキレート化剤を含むことを特徴とする血液凝固測定用試薬キット。
【請求項8】
カルシウムと血液試料中の血液凝固因子以外の物質との反応は阻害するが、血液凝固反応を阻害しないカルシウムキレート化剤を含む血液凝固測定用試薬の存在下で、血液試料とカルシウムとリン脂質とを接触させる工程と、
血液凝固時間を測定する工程と
を含む血液凝固時間測定方法。
【請求項9】
前記接触させる工程において、血液試料とカルシウムとリン脂質とが接触したときの前記カルシウムキレート化剤の濃度が、前記カルシウムに対して0.8〜6倍である請求項8に記載の血液凝固時間測定方法。
【請求項10】
前記血液凝固測定用試薬が、前記リン脂質をさらに含む請求項8又は9に記載の血液凝固時間測定方法。
【請求項11】
前記血液凝固測定用試薬が、前記カルシウムをさらに含む請求項8〜10のいずれか1項に記載の血液凝固時間測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−58393(P2009−58393A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−226463(P2007−226463)
【出願日】平成19年8月31日(2007.8.31)
【出願人】(390014960)シスメックス株式会社 (810)
【Fターム(参考)】