説明

血液処理フィルター

【課題】濾過時に凝集塊などの血液成分よりも大きな塊がプレフィルターで捕捉されずに通過した場合であっても、メインフィルターの目詰まりが生じ難く、血液の流れが阻害される虞がなくて均一な血液の流れを確保できる血液処理フィルターを提供することにある。
【解決手段】複数の濾材層21a,21b、25a〜25cから成るプレフィルター21及びメインフィルター25を備えた白血球除去フィルター1Aであって、プレフィルター21及びメインフィルター25を形成する複数の濾材層21a,21b、25a〜25cのうち、プレフィルター21の最上流に配された上流濾材層21b及びメインフィルター25の最下流に配された下流濾材層25cを除いて、下流濾材層25cよりも上流に配された少なくとも一つの濾材層25aには、切除開口部33が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液から凝集物や白血球等の好ましくない成分を除去する為の血液処理フィルターに関し、特に、輸血用の全血製剤、赤血球製剤、血小板製剤、血漿製剤などから副作用の原因となる微小凝集物や白血球を除去する目的で用いられる白血球除去フィルターなどに関する。
【背景技術】
【0002】
ドナーから採血された全血は、赤血球製剤、血小板製剤、血漿製剤等の血液成分製剤に分離され、貯蔵された後に輸血されるのが一般的となりつつある。またこれらの血液製剤に含まれる微小凝集物や白血球が種々の輸血副作用の原因となることから、輸血の前にこれらの好ましくない成分を除去してから輸血する、または、採血後これらの好ましくない成分を除去してから保存した後に輸血に用いられる方法が多く用いられている。
【0003】
血液製剤から白血球を除去する為の方法としては、血液製剤を白血球除去フィルターで処理するのが最も一般的である。白血球除去フィルターには、不織布や多孔質体からなるフィルター要素を、採血分離セットのバッグに使用されているものと同一または類似の、可撓性かつ蒸気浸透性に優れる素材を容器に用いた、可撓性容器の白血球除去フィルターまたは、不織布や多孔質体からなるフィルター要素をポリカーボネート等の硬質容器に充填したものの二種類が用いられている(特許文献1〜4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−168711号公報
【特許文献2】特開平5−17361号公報
【特許文献3】特開2005−204781号公報
【特許文献4】特表2006−503670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
白血球除去フィルターのフィルター要素は、例えば、孔径が大きく、主として凝集塊を捕捉するために配置されたプレフィルターと、孔径が小さく、主として白血球や血小板などの血液成分を捕捉するために配置されたメインフィルターとを備えている。
ほとんどの凝集塊はプレフィルターで捕捉可能であるが、凝集塊のサイズは血液の保存状態や個体差があるため、プレフィルターで確実に捕捉することは困難である。プレフィルターを通過した凝集塊はメインフィルターで捕捉されるが、血液の個体差により凝集塊のサイズや数が異なるため、凝集塊の多い血液ではメインフィルターの目詰まりにより流れが阻害される虞がある。この問題を解決する方法として、孔径の異なるあらゆるプレフィルターを組み合わせることによりサイズの異なる凝集塊に対応することは可能であるが、そうなるとプレフィルターの数(フィルター量)が増えて血液ロス量が多くなってしまう。一方で、メインフィルターの目詰まりを回避する手段として、メインフィルターの濾過面積を大きくすることが考えられるが、メインフィルターのサイズを大きくすることは生産性や取扱い性、の点で好ましくなく血液回収性も低下してしまう。
【0006】
本発明は、以上の課題を解決することを目的としており、濾過時に凝集塊などの血液成分よりも大きな塊がプレフィルターで捕捉されずに通過した場合であっても、メインフィルターの目詰まりが生じ難く、血液の流れが阻害される虞がなくて均一な血液の流れを確保できる血液処理フィルターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決するために、まず、凝集塊によるメインフィルターの目詰まりの仕組みについて鋭意検討した。その結果、プレフィルターでは捕捉できなかったサイズの凝集塊がメインフィルターに捕捉される際、凝集塊はメインフィルターの最上流層で捕捉され、最上流層よりも下流側には抜けず、従ってメインフィルターの目詰まりは主としてメインフィルターの上流部分で生じていることが判明した。そして、目詰まりが生じ易い部分に血液が通過し易くなる開口などを意図的に設ける一方で、プレフィルターの最上流層とメインフィルターの最下流層とには開口を形成しないことで、インフィルターの目詰まりを防止し、且つ凝集塊や濾過対象の血液成分の漏出を効果的に防止できることを知見し、本発明に到った。
【0008】
すなわち、本発明は、少なくとも血液の入口と出口とを有する容器と、容器の入口側と出口側とを区画すると共に、入口から流入する血液中の微小凝集物、白血球および血小板の少なくとも一種を除去する濾材とを有する血液処理フィルターにおいて、濾材は、複数の濾材層から成る濾材層郡を複数備え、複数の濾材層郡は、血液流入側の最も上流に配置された第1の濾材層郡と、第1の濾材層郡よりも下流側に配置されると共に、平均繊維径が最も小さな濾材層を有する第2の濾材層郡とを含み、複数の濾材層郡を形成する複数の濾材層のうち、第1の濾材層郡の最上流に配された上流濾材層及び第2の濾材層郡の最下流に配された下流濾材層を除いて、下流濾材層よりも上流に配された少なくとも一つの濾材層には、切除開口部及び破断切れ目部の少なくとも一方が形成されていることを特徴とする。なお、本発明に係る血液とは、輸血用の全血製剤、赤血球製剤、血小板製剤、血漿製剤などの血液製剤を含む。
【0009】
さらに、濾材層には一または複数の切除開口部が形成されており、切除開口部一つ当りの開口面積は3mm〜400mmであり、切除開口部が形成された濾材層の濾過面積に対する切除開口部の総開口面積の割合は、0.02%〜15%であると好適である。
【0010】
さらに、濾材層には破断切れ目部が形成されており、破断切れ目部の破断長さは3mm〜70mmであると好適である。
【0011】
さらに、濾材はシート状フィルター材であり、容器は可撓性容器であり、シート状フィルター材は可撓性容器に溶着されていると好適である。
【0012】
さらに、複数の濾材層郡のうち、切除開口部及び破断切れ目部の少なくとも一方が形成された濾材層を有する二つの濾材層郡が隣接して重なり合っており、一方の濾材層郡の濾材層に形成された切除開口部または破断切れ目部と、他方の濾材層郡の濾材層に形成された切除開口部または破断切れ目部とは、互いに重ならずに外れた位置に設けられていると好適である。
【0013】
切除開口部及び破断切れ目部の少なくとも一方が形成された濾材層の厚みは0.1mm〜0.5mmであると好適である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、濾過時に凝集塊などの血液成分よりも大きな塊が第1の濾材層郡で捕捉されずに通過した場合であっても、第2の濾材層郡の目詰まりが生じ難く、血液の流れが阻害される虞がなくて均一な血液の流れを確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施形態に係る白血球除去フィルターの平面図である。
【図2】図1のII−II線に沿った縦断面図である。
【図3】第1実施形態に係る白血球除去フィルターの概略を分解して示す断面図である。
【図4】第1実施形態に係る白血球除去フィルターの概略を分解して示す斜視図である。
【図5】第1実施形態に係る白血球除去フィルターの第1、及び第2メインフィルターに直線状の破断切れ目部を形成した態様を例示する斜視図である。
【図6】十字状の破断切れ目部を形成した濾材層を例示する斜視図である。
【図7】第2実施形態に係る白血球除去フィルターの概略を分解して示す断面図である。
【図8】第3及び第4実施形態に係る白血球除去フィルターを示し、(a)は第3実施形態に係る白血球除去フィルターの概略を分解して示す断面図であり、(b)は第4実施形態に係る白血球除去フィルターの概略を分解して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明を限定するものではない。
【0017】
血液処理フィルターは、血液から凝集物や白血球等の好ましくない成分を除去する為のフィルターであり、少なくとも血液の入口と出口とを有する容器と、容器の入口側と出口側とを区画すると共に、入口から流入する血液中の微小凝集物、白血球および血小板の少なくとも一種を除去するフィルター材(濾材)とを有する。本実施形態では、血液処理フィルターの一例として白血球除去フィルターを説明する。なお、本実施形態で説明する血液とは、輸血用の全血製剤、赤血球製剤、血小板製剤、血漿製剤などの血液製剤を含む。
【0018】
白血球除去フィルター1Aの外形は、矩形状、円盤状、長円盤状、楕円状などの様々態様を採用できるが、製造時の材料ロスを少なくするためには矩形状が好ましく、従って、以下の実施形態では矩形状を例に説明する。また、白血球除去フィルター1Aは、硬質の樹脂によって容器が製造された態様であってもよいが、本実施形態では、蒸気透過性のある可撓性樹脂から製造された容器(可撓性容器)からなる態様を説明する。
【0019】
図1〜図3に示されるように、白血球除去フィルター1Aは、血液の入口5と出口6を有する可撓性容器7と、可撓性容器7の内部を入口5側と出口6側とに区画するように配置されたシート状のフィルター濾材(シート状フィルター材)9Aとを備えている。
【0020】
可撓性容器7は、矩形扁平状の容器である。扁平状とは、厚みが薄くて面が広い形状を意図する。可撓性容器7は、入口5側となる矩形シート状の入口側容器11と、出口6側となる矩形シート状の出口側容器12とを備えている。入口側容器11と出口側容器12とは、矩形状のフィルター濾材9Aを介して重なり合っており、フィルター濾材9Aの周縁を挟み付けるように溶着されている。フィルター濾材9Aの周縁に沿った帯状の接着領域は内側シール部7aであり、内側シール部7aよりも内側の内部領域は血液が流動する濾過領域となる。
【0021】
また、入口側容器11と出口側容器12とは、内側シール部7aよりも外側で周縁同士が互いに溶着されている。入口側容器11と出口側容器12とが直接接着された帯状の接着領域は外側シール部7bである。
【0022】
入口側容器11には、血液の入口5を形成する入口部材13が一体的に形成されており、出口側容器12には、血液の出口6を形成する出口部材15が一体的に形成されている。入口部材13と出口部材15とは、可撓性容器7の中心を基準にして点対象となるように配置されている。入口部材13に形成された入口5は入口流路13aを介して入口側容器11の内部(濾過領域)に連通しており、出口部材15に形成された出口6は出口流路15aを介して出口側容器12の内部(濾過領域)に連通している。入口5及び出口6には、それぞれ血液チューブの連結部13b,15bが形成されている。
【0023】
入口側容器11または出口側容器12に用いる可撓性樹脂は、シートまたはフィルムとして市販されている材料であれば使用することはできる。例えば、軟質ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリエチレン及びポリプロピレンのようなポリオレフィン、スチレンーブタジエンースチレン共重合体の水添物、スチレンーイソプレンースチレン共重合体またはその水添物等の熱可塑性エラストマー、及び、熱可塑性エラストマーとポリオレフィン、エチレン−エチルアクリレート等の軟化剤との混合物等が好適な材料として挙げられる。血液との接触が考えられるため、好ましくは血液バック等の医療品の材料として用いられている、軟質塩化ビニル、ポリウレタン、ポリオレフィン、及び、これらを主成分とする熱可塑性エラストマーであり、更に好ましくは軟質塩化ビニルである。
【0024】
なお、本実施形態に係る入口側容器11は、すべてが可撓性樹脂から形成されているが、一部が、硬質の樹脂からできていてもよい。少なくとも、入口側容器11の面積の10%以上の面積が可撓性容器となっていれば、オートクレーブ滅菌時の水蒸気透過性がよくなり、滅菌時間を短縮することができる。
【0025】
フィルター濾材9Aは、不織布や織布などの繊維状多孔性媒体などの公知の濾過媒体を用いることができる。フィルター濾材9Aは、複数のフィルター要素21,23,25,27が積層されて構成されており、例えば、プレフィルター21、第1メインフィルター23、第2メインフィルター25、及びポストフィルター27の順番で積層されて構成されている。プレフィルター21は、可撓性容器7の入口5側、すなわち血液の流入方向の上流側に配置され、ポストフィルター27は、可撓性容器7の出口6側、すなわち血液の流出方向の下流側に配置される。
【0026】
プレフィルター21は、例えば、平均繊維径が数〜数十μmの不織布からなる複数の濾材層21a,21bが積層されて構成された濾材層群であり、血液中の微少の微小凝集物を捕捉する機能を有する。また、第1メインフィルター23及び第2メインフィルター25は、それぞれ平均繊維径がプレフィルター21よりも小さい不織布からなる複数の濾材層23a,23b、25a,25b,25cが積層されて構成された濾材層群であり、主として白血球や血しょう板を除去する機能を有する。また、ポストフィルター27は、例えば、平均繊維径が数〜数十μmの不織布からなる複数の濾材層27aが積層されて構成された濾材層群であり、フィルター濾材9Aの形状安定性を確保して特定の空間を形成するように機能する。
【0027】
プレフィルター21は、第1メインフィルター23及び第2メインフィルター25に比べて平均繊維径が大きな濾材層21a,21bを備えている。更に、プレフィルター21は、血液流入側の最も上流に配置されているので第1の濾材層群に相当する。また、プレフィルター21を形成する複数の濾材層21a,21bのうち、最上流に配された濾材層21aは、他の濾材層21bと区別するため、以下の説明において上流濾材層21aと称する。
【0028】
なお、プレフィルター21は、フィルター濾材9Aのうち、平均繊維径が最も大きな濾材層を備えていることが好ましく、本実施形態の場合、プレフィルター21とポストフィルター27とは、略同一の平均繊維径からなる複数の濾材層21a,21b、27aによって形成されているので、少なくとも、プレフィルター21及びポストフィルター27は、平均繊維径が最も大きな濾材層21a,21b、27aを備えている態様を具現化している。
【0029】
第1メインフィルター23は、プレフィルター21やポストフィルター27に比べて平均繊維径が小さな濾材層23a,23bを備えており、さらに、第2メインフィルター25は、第1メインフィルター23よりも更に平均繊維径が小さな濾材層25a,25b,25cを備えている。従って、第2メインフィルター25は、フィルター濾材9Aの中で平均繊維径が最も小さな濾材層25a,25b,25cを備えていることになり、第2の濾材層群に相当する。また、第2メインフィルター25を形成する複数の濾材層25a,25b,25cのうち、最下流に配された濾材層25cは、他の濾材層25a,25bと区別するため、以下の説明において下流濾材層25cと称する。
【0030】
なお、第1メインフィルター23や第2メインフィルター25を形成する濾材層23a,23b、25a〜25cの態様としては様々な態様を選択でき、平均繊維径が略同一となる同種の複数の濾材層によって第1メインフィルター23及び第2メインフィルター25のそれぞれが形成されてもよく、また、平均繊維径が異なる複数種の濾材層によって第1メインフィルター23及び第2メインフィルター25の一方または両方が形成されてもよい。
【0031】
例えば、それぞれ複数種の濾材層によって形成されている場合に、平均繊維径が30〜40μmの不織布からなる濾材層と平均繊維径が10〜20μmの不織布からなる濾材層とを組み合わせて第1メインフィルター23を形成し、平均繊維径が1.5〜2.5μmの不織布からなる濾材層と0.5〜1.8μmの不織布からなる濾材層とを組み合わせて第2メインフィルター25を形成してもよい。また、平均繊維径が大きな不織布からなる濾材層と平均繊維径が小さな不織布からなる濾材層とを交互に配置して第1メインフィルター23及び第2メインフィルター25の少なくとも一方を形成することも可能であるが、基本的には、平均繊維径の大きな不織布からなる濾材層が、平均繊維径の小さな不織布からなる濾材層よりも上流側に配置されるように構成することが好ましい。
【0032】
第1メインフィルター23を形成する複数の濾材層23a,23bのうち、最上流に配置された濾材層23aの厚みは0.1mm〜0.5mmであり、この濾材層23aには、複数の切除開口部31が形成されている。切除開口部31の形状については特に限定されず、円形や多角形など加工が容易な態様が好ましい。切除開口部31一つ当りの面積は、3〜400mmであり、一枚の濾材層23aに形成された複数の切除開口部31全ての総面積は、濾過面積の0.02%〜15%となるようにするのが好ましい。
【0033】
複数の切除開口部31全ての総面積が濾過面積の0.02%未満であると、プレフィルター21で捕捉されずに通過した微小凝集物が第1メインフィルター23の切除開口部31を通過しにくいため目詰まりが生じ易くなる可能性があり、血液の流れが阻害され均一な血液の流れを長期にわたって確保することが困難になる虞が生じ易くなる。一方で、濾過面積の15%を超えると、切除開口部31により濾過面積が減少するため、濾材の持つ微小凝集物や白血球及び血小板の捕捉能が面積に比例して減少するだけでなく、切除開口部31を持つ濾過面に部分的な閉塞が生じずに血液が下流層へ流入するため、切除開口部31を持つ濾過層の捕捉能を発揮できず下流層に微小凝集物などの目詰まりを生じ易くなる可能性がある。
【0034】
なお、濾過面積とは、濾材平面のうち血液が流動する濾過面積を意味する。例えば、フィルター濾材9Aの周縁に沿った帯状の接着領域は内側シール部7aであり、内側シール部7aよりも内側の内部面積は血液が流動する濾過面積となる。
【0035】
なお、本実施形態に係る第1メインフィルター23では、濾材層23aに切除開口部31が形成されているが切除開口部31に代えて複数の破断切れ目部35aを形成するようにしてもよい(図5参照)。破断切れ目部35aは、例えば直線状であり、一本の破断切れ目部35aの長さLaは3mm〜70mmである。なお、直線状の破断切れ目部35aに代えて、例えば、十字状の破断切れ目部35bであってもよく(図6参照)、その他の形状であっても良い。また、本実施形態に係る第1メインフィルター23では、最上流に配置された濾材層23aのみに切除開口部31が形成されているが、他の濾材層23b,23cにも切除開口部31や破断切れ目部35aを形成するようにしてもよい。第1メインフィルター23を形成する複数の濾材層23a,23bに切除開口部31や破断切れ目部35aを形成する場合には、隣接する濾材層23a,23bそれぞれの切除開口部31や破断切れ目部35aが互いに重ならずに外れた位置に形成するようにすると好ましい。
【0036】
第2メインフィルター25を形成する複数の濾材層25a〜25cのうち、最上流に配置された濾材層25aの厚みは0.1mm〜0.5mmであり、この濾材層25aには、複数の切除開口部33(図3及び図4参照)が形成されている。切除開口部33の形状については特に限定されず、円形や多角形など加工が容易な態様が好ましい。切除開口部33一つ当りの面積は、3〜400mmであり、一枚の濾材層25aに形成された複数の切除開口部31全ての総面積は、濾過面積の0.02%〜15%となるようにするのが好ましい。
【0037】
複数の切除開口部33全ての総面積が濾過面積の0.02%未満であると、プレフィルター21で捕捉されずに通過した微小凝集物が第2メインフィルター25の切除開口部33を通過しにくいため目詰まりが生じ易くなる可能性があり、血液の流れが阻害され均一な血液の流れを長期にわたって確保することが困難になる虞が生じ易くなる。一方で、濾過面積の15%を超えると、切除開口部33により濾過面積が減少するため、濾材の持つ微小凝集物や白血球及び血小板の捕捉能が面積に比例して減少するだけでなく、切除開口部33を持つ濾過面に部分的な閉塞が生じずに血液が下流層へ流入するため、切除開口部33を持つ濾過層の捕捉能を発揮できず下流層に微小凝集物などの目詰まりを生じ易くなる可能性がある。
【0038】
なお、濾過面積とは、濾材平面のうち血液が流動する濾過面積を意味する。例えば、フィルター濾材9Aの周縁に沿った帯状の接着領域は内側シール部7aであり、内側シール部7aよりも内側の内部面積は血液が流動する濾過面積となる。
【0039】
一方で、第2メインフィルター25の最下流に配置された下流濾材層25cには切除開口部33が形成されていない。従って、第2メインフィルター25の下流濾材層25cよりも上流側に配置された各濾材層21a,21b、23a,23b、25a,25bを白血球などの血液成分が通過したとしても、下流濾材層25cにおいて確実に捕捉され、漏出の虞がない。
【0040】
なお、本実施形態に係る第2メインフィルター25では、濾材層25aに切除開口部33が形成されているが切除開口部33に代えて複数の破断切れ目部37aを形成するようにしてもよい(図5参照)。破断切れ目部37aは、例えば直線状であり、一本の破断切れ目部37aの長さLbは3mm〜70mmである。なお、直線状の破断切れ目部37aに代えて、例えば、十字状の破断切れ目部37bであってもよく(図6参照)、その他の形状であっても良い。また、本実施形態に係る第2メインフィルター25では、最上流に配置された濾材層25aのみに切除開口部33が形成されているが、他の濾材層25bにも切除開口部33や破断切れ目部37a,37bを形成するようにしてもよい。第2メインフィルター25を形成する複数の濾材層25a,25bに切除開口部33や破断切れ目部37a,37bを形成する場合には、隣接する濾材層25a,25bそれぞれの切除開口部31や破断切れ目部37a,37bが互いに重ならずに外れた位置に形成するようにすると好ましい。
【0041】
以上の切除開口部31,33や破断切れ目部35a,35b、37a,37bの作成は、レーザー照射による切除や破断、または、打ち抜きなど、濾材層23a,23b、25a,25bに適当は開口や切れ目を形成できる態様であれば、種々の製法を採用できる。
【0042】
次に、本実施形態に係る白血球除去フィルター1Aの作用及び効果について説明する。濾過時に凝集塊などの血液成分よりも大きな塊(以下、「凝集成分」と称する)がプレフィルター21で捕捉されずに通過した場合には、この凝集成分は、主として第1メインフィルター23で捕捉される。ここで、例えば、第1メインフィルター23に切除開口部31や破断切れ目部35a,35bが形成されていなければ、凝集成分のほとんどが第1メインフィルター23の、特に最上流の濾材層23aで捕捉されるため、この最上流の濾材層23aにおいて目詰まりが生じ易くなり、結果的に、血液の流れが阻害され、従って均一な血液の流れを長期にわたって確保することが困難になる。
【0043】
しかしながら、本実施形態に係る白血球除去フィルター1Aでは、第1メインフィルター23の特に最上流の濾材層23aに切除開口部31及び破断切れ目部35a,35bの少なくとも一方が形成されているので、この濾材層23aの濾過面に部分的な閉塞が生じても、血液の流れが阻害されることなく、切除開口部31や破断切れ目部35aを通過し、更に他の濾材層23bを通って第2メインフィルター25に到る。更に、第2メインフィルター25の最上流の濾過層25aにも同様の切除開口部33及び破断切れ目部37a,37bの少なくとも一方が形成されているので、第2メインフィルター25に凝集成分が到達したとしても、第2メインフィルター25の最上流の濾過層25aでは目詰まりが生じ易くなる。その結果として、第1メインフィルター23及び第2メインフィルター25の両方において目詰まりが生じ難くなり、血液の流れが阻害される虞がなくて均一な血液の流れを確保できるようになる。
【0044】
一方で、本実施形態に係る白血球除去フィルター1Aでは、プレフィルター21を形成する各濾材層21a,21b、特に上流濾材層21aには切除開口部31,33や破断切れ目部35a,35b、37a,37bは形成されていない。また、第2メインフィルター25の最下流に配置された下流濾材層25cにも切除開口部31,33や破断切れ目部37a,37bは形成されておらず、切除開口部31,33や破断切れ目部35a,35b、37a,37bは、あくまで下流濾材層25cよりも上流に配された濾材層23a,25aに形成されている。従って、目詰まりを防止しながらも、血液中の凝集成分がプレフィルター21よりも下流の第1メインフィルター23や第2メインフィルター25に流出してしまうのを的確に抑えることができ、更に第2メインフィルター25からの白血球などの血液成分の漏出を防止できる。
【0045】
また、本実施形態に係る白血球除去フィルター1Aでは、第1メインフィルター23と第2メインフィルター25とは隣接した状態で積層されている。そして、第1メインフィルター23の最上流に配置された濾材層23aに形成された切除開口部31と、第2メインフィルター25の最上流に配置された濾材層25aに形成された切除開口部33とは、平面視、すなわち濾材層23a,25aを平面と仮定した場合の法線に沿った方向から見た場合に互いに重ならずに外れた位置となるように設けられている。
【0046】
第1メインフィルター23の切除開口部31と第2メインフィルター25の切除開口部33とが重なり合っていると、その重なり合う領域では白血球などの血液成分が抜け易くなってしまう。しかしながら、本実施形態では、第1メインフィルター23の切除開口部31と第2メインフィルター25の切除開口部33とが重なり合わずに外れているので、第1メインフィルター23の切除開口部33を通過しても第2メインフィルター25では確実に捕捉される。さらに、第1メインフィルター23の切除開口部31と第2メインフィルター25の切除開口部33とが、ズレているので重なり合っている場合に比べて広い範囲で目詰まりを効果的に防止できる。なお、切除開口部31,33の代わりに破断切れ目部35a,35b,37a,37bが形成されている場合であっても、第1メインフィルター23の破断切れ目部35a,35bと第2メインフィルター25の破断切れ目部37a,37bとが平面視で互いに重ならずに外れた位置に設けられていることによって、同様の作用、効果を期待できる。
【0047】
次に、第2、第3、及び第4実施形態に係る白血球除去フィルター1Aについて、図7または図8を参照して説明する。なお、第2〜第4実施形態に係る白血球除去フィルター1B,1C,1Dについて第1実施形態に係る白血球除去フィルター1Aと同様の要素や部材については、同一の符号を付して詳しい説明を省略する。また、第2〜第4実施形態に係る白血球除去フィルター1B,1C,1Dは、基本的に第1実施形態に係る白血球除去フィルター1Aと同一の材料を用いて製造することができる。
【0048】
図7に示されるように、第2実施形態に係る白血球除去フィルター1Bのフィルター濾材(濾材)9Bには、ポストフィルター27(図3参照)は設けられておらず、フィルター濾材9Bは三種のフィルター要素(濾材層群)21,23,25が積層されて構成されている。本実施形態に係るプレフィルター21は第1の濾材層群に相当し、また、第2メインフィルター25は第2の濾材層群に相当する。第1メインフィルター23の最上流の濾材層23a及び第2メインフィルター25の最上流の濾材層25aには、切除開口部31,33が形成されているが、少なくとも、プレフィルター21の上流濾材層21aと第2メインフィルター25の下流濾材層25cには切除開口部31は形成されていない。なお、本実施形態において、切除開口部31,33の代わりに破断切れ目部35a,35b、37a,37bを形成するようにしてもよい。
【0049】
図8(a)に示されるように、第3実施形態に係る白血球除去フィルター1Cのフィルター濾材(濾材)9Cは、三種のフィルター要素(濾材層群)、すなわちプレフィルター21、メインフィルター24、及びポストフィルター27が積層されて構成されており、第2のメインフィルター25(図3参照)は設けられていない。メインフィルター24は、複数の濾材層24a,24b,24cによって形成されており、特に、平均繊維径が最も小さな濾材層を備えており、第2の濾材層群に相当する。
【0050】
メインフィルター24の最上流の濾材層24aには切除開口部31が形成されているが、少なくとも、プレフィルター21の上流濾材層21aとメインフィルター24の下流濾材層24cには切除開口部31は形成されていない。なお、本実施形態において、切除開口部31の代わりに破断切れ目部35a,35b(図5、図6参照)を形成するようにしてもよい。
【0051】
図8(b)に示されるように、第4実施形態に係る白血球除去フィルター1Dのフィルター濾材(濾材)9Dは、二種のフィルター要素(濾材層群)、すなわちプレフィルター21、メインフィルター24が積層されて構成されており、第3実施形態に係るフィルター濾材9Cに比べて、ポストフィルター27が設けられていない。本実施形態に係るプレフィルター21は第1の濾材層群に相当し、また、メインフィルター24は第2の濾材層群に相当する。メインフィルター24の最上流の濾材層24aには切除開口部31が形成されているが、少なくとも、プレフィルター21の上流濾材層21aとメインフィルター24の下流濾材層24cには切除開口部31は形成されていない。なお、本実施形態において、切除開口部31の代わりに破断切れ目部35a,35b(図5、図6参照)を形成するようにしてもよい。
【0052】
上記の第2〜第3実施形態に係る白血球除去フィルター1B〜1Dも、第1実施形態に係る白血球除去フィルター1Aと同様に、第1メインフィルター23及び第2メインフィルター25の両方、またはメインフィルター24において目詰まりが生じ難くなり、血液の流れが阻害される虞がなくて均一な血液の流れを確保できるようになる。一方で、血液中の凝集成分がプレフィルター21から第1メインフィルター23や第2メインフィルター25、またはメインフィルター24に流出してしまうのを的確に抑えることができ、更に、第2メインフィルター25やメインフィルター24からの白血球などの血液成分の漏出を防止できる。
【実施例】
【0053】
以下の実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。
【0054】
<血液試験方法>
血液評価に用いる血液は牛全血であり、採血直後の血液100mLに対して抗凝固剤であるCPD溶液を14mL加えて混和したものである(以後、濾過前血という)。本発明の実施例に係る血液処理カラム(血液処理フィルター)を、濾過前血300gが充填された貯留バッグと回収バッグとの間に配置し、貯留バッグに接続した入口側導管を血液処理カラムの血液入口へ、回収バッグに接続した出口側導管を血液処理カラムの血液出口へそれぞれ接続した。また、それぞれの導管として、内径3mm、外径4.2mmの塩化ビニル製のチューブを使用し、長さは60cmとした。落差1.2mにてシステム全体を吊り下げ、また、塩化ビニル製の回収バッグを天秤の上に静置した後、入口側導管を閉じているクランプを開放し、濾過を開始した。
牛全血が回収バッグに到達してから貯留バッグの牛全血が空になるまでの時間を処理時間とした。
貯留バッグが空になった後、1分毎に回収バッグを載せた天秤の値を読み取り、1分間の天秤の値の変動が0.1g以下になった時点で回収を終了し、回収終了時の天秤の値を回収量とした(以後、濾過後血という)。
白血球除去性能は、白血球除去能を求めることにより評価した。白血球除去能はフローサイトメトリー法(装置:BECTON DICKINSON社製 FACSCalibur)を用いて白血球数を測定し、次の式(1)に従い計算した。
【0055】
白血球除去能=−Log[(白血球濃度×濾過後液体積)
÷(白血球濃度×濾過前液体積)] 式(1)
なお、白血球数の測定は、各血液100μLをサンプリングし、ビーズ入りLeucocountキット(日本ベクトン・ディッキンソン社)を用いて行った。
【0056】
[実施例1]
(1)血液入口の付いた塩化ビニル樹脂製シートからなる入口側可撓性容器、(2)プレフィルターとして目付30g/m、厚さ0.20mm、平均繊維径15μmのPET不織布4枚、(3)第1メインフィルターとして目付65g/m、厚さ0.40mm、平均繊維径1.8μmのPET不織布4枚を使用し、上流側の1枚目をφ2mmで1箇所打ち抜いた。(4)第2メインフィルターとして目付40g/m、厚さ0.22mm、平均繊維径1.2μmのPET不織布8枚、(5)プレフィルターとして目付30g/m、厚さ0.20mm、平均繊維径15μmのPET不織布4枚、(6)血液出口の付いた塩化ビニル樹脂製シートからなる出口側可撓性容器をこの順序に配置し、(2)〜(5)のフィルター要素からなるフィルター濾材は入口側可撓性容器(1)と出口側可撓性容器(6)で挟んだ状態でその周縁部近傍が全周に渡って可撓性容器(1),(6)と一体化するように溶着した。濾過面積が43.5cmの血液処理カラムを作成し、血液試験を行った。
結果、白血球除去能は3.8、濾過時間は16分となった。
【0057】
[実施例2]
(3)第1メインフィルターとして目付65g/m、厚さ0.40mm、平均繊維径1.8μmのPET不織布4枚を使用し、上流側の1枚目と2枚目を切除開口部が重ならないようφ4mmで4箇所打ち抜き、(4)第2メインフィルターとして目付40g/m、厚さ0.22mm、平均繊維径1.2μmのPET不織布8枚を使用し、上流側の1枚目と2枚目を切除開口部が重ならないようφ4mmで4箇所打ち抜いた。(3)と(4)のフィルター要素以外は実施例1と同様に血液処理カラムを作成し、血液試験を行った。
結果、白血球除去能は3.6、濾過時間は14分となった。
【0058】
[実施例3]
(3)第1メインフィルターとして目付65g/m、厚さ0.40mm、平均繊維径1.8μmのPET不織布4枚を使用し、上流側の1枚目と2枚目を切除開口部が重ならないようφ4mmで4箇所打ち抜いた。(3)のフィルター要素以外は実施例1と同様に血液処理カラムを作成し、血液試験を行った。
結果、白血球除去能は3.8、濾過時間は15分となった。
【0059】
[実施例4]
(3)第1メインフィルターとして目付65g/m、厚さ0.40mm、平均繊維径1.8μmのPET不織布4枚を使用し、上流側の1枚目と2枚目を切除開口部が重ならないようφ9mmで9箇所打ち抜いた。(3)のフィルター要素以外は実施例1と同様に血液処理カラムを作成し、血液試験を行った。
結果、白血球除去能は3.7、濾過時間は16分となった。
【0060】
[実施例5]
(3)第1メインフィルターとして目付65g/m、厚さ0.40mm、平均繊維径1.8μmのPET不織布4枚を使用し、上流側の1枚目と2枚目の切除開口部が重なる位置にφ4mmで4箇所打ち抜いた。(3)のフィルター要素以外は実施例1と同様に血液処理カラムを作成し、血液試験を行った。
結果、白血球除去能は3.5、濾過時間は22分となった。
【0061】
[実施例6]
(3)第1メインフィルターとして目付65g/m、厚さ0.40mm、平均繊維径1.8μmのPET不織布4枚を使用し、上流側の1枚目と2枚目の破断切れ目部が重ならないよう4箇所に3mmの破断切れ目を入れた。(3)のフィルター要素以外は実施例1と同様に血液処理カラムを作成し、血液試験を行った。
結果、白血球除去能は3.7、濾過時間は19分となった。
【0062】
[実施例7]
(3)第1メインフィルターとして目付65g/m、厚さ0.40mm、平均繊維径1.8μmのPET不織布4枚を使用し、上流側の1枚目と2枚目の破断切れ目部が重ならないよう4箇所に15mmの破断切れ目を入れた。(4)第2メインフィルターとして目付40g/m2、厚さ0.22mm、平均繊維径1.2μmのPET不織布8枚を使用し、上流側の1枚目と2枚目の破断切れ目部が重ならないよう4箇所に15mmの破断切れ目を入れた。(3)と(4)のフィルター要素以外は実施例1と同様に血液処理カラムを作成し、血液試験を行った。
結果、白血球除去能は3.8、濾過時間は17分となった。
【0063】
[実施例8]
(3)第1メインフィルターとして目付65g/m、厚さ0.40mm、平均繊維径1.8μmのPET不織布4枚を使用し、上流側の1枚目と2枚目の破断切れ目部が重ならないよう4箇所に15mmの破断切れ目を入れた。(3)のフィルター要素以外は実施例1と同様に血液処理カラムを作成し、血液試験を行った。
結果、白血球除去能は3.9、濾過時間は17分となった。
【0064】
[実施例9]
(3)第1メインフィルターとして目付65g/m、厚さ0.40mm、平均繊維径1.8μmのPET不織布4枚を使用し、上流側の1枚目と2枚目の破断切れ目部が重ならないよう1箇所に50mmの破断切れ目を入れた。(3)のフィルター要素以外は実施例1と同様に血液処理カラムを作成し、血液試験を行った。
結果、白血球除去能は3.7、濾過時間は19分となった。
【0065】
[実施例10]
(3)第1メインフィルターとして目付65g/m、厚さ0.40mm、平均繊維径1.8μmのPET不織布4枚を使用し、上流側の1枚目と2枚目の破断切れ目部が重なる位置に9箇所15mmの破断切れ目を入れた。(3)のフィルター要素以外は実施例1と同様に血液処理カラムを作成し、血液試験を行った。
結果、白血球除去能は3.5、濾過時間は21分となった。
【0066】
[比較例1]
(3)比較例に係る第1メインフィルターとして目付65g/m、厚さ0.40mm、平均繊維径1.8μmのPET不織布4枚を使用し、(3)のフィルター要素が切除開口部や破断切れ目部を持たない以外は実施例1と同様に血液処理カラムを作成し、血液試験を行った。
結果、白血球除去能は3.7、濾過時間は31分となった。
【0067】
[比較例2]
(3)比較例に係る第1メインフィルターとして目付65g/m、厚さ0.40mm、平均繊維径1.8μmのPET不織布4枚を使用し、上流側の1枚目と2枚目の切除開口部が重ならないようφ4mmで4箇所打ち抜き、(4)比較例に係る第2メインフィルターとして目付40g/m、厚さ0.22mm、平均繊維径1.2μmのPET不織布8枚を使用し、8枚の切除開口部が重ならないようφ4mmで4箇所打ち抜いた。(3)と(4)のフィルター要素以外は実施例1と同様に血液処理カラムを作成し、血液試験を行った。
結果、白血球除去能は1.8、濾過時間は12分となった。
【0068】
[比較例3]
(3)比較例に係る第1メインフィルターとして目付65g/m、厚さ0.40mm、平均繊維径1.8μmのPET不織布4枚を使用し、上流側の1枚目と2枚目の破断切れ目部が重ならないよう4箇所に15mmの破断切れ目を入れ、(4)比較例に係る第2メインフィルターとして目付40g/m、厚さ0.22mm、平均繊維径1.2μmのPET不織布8枚を使用し、8枚の破断切れ目部が重ならないよう4箇所に15mmの破断切れ目を入れた。(3)と(4)のフィルター要素以外は実施例1と同様に血液処理カラムを作成し、血液試験を行った。
結果、白血球除去能は1.9、濾過時間は14分となった。
【0069】
比較例1に示される通り、第2メインフィルターに切除開口部や破断切れ目が形成されていない場合には、濾過時間は30分以上もかかり、非常に長くなってしまった。一方で、比較例2,3に示される通り、第2メインフィルターの最下流に配された下流濾材層(8枚目の濾材層)に切除開口部または破断切れ目がある場合、切除開口部または破断切れ目部を持つ濾過面に部分的な閉塞が生じずに血液がそのまま下流層へ流入するため、濾過時間は短い結果となった。しかし、比較例2,3では、下流濾材層の切除開口部または破断切れ目部から微小凝集塊や白血球などが捕捉されずに流出するため白血球除去性能は低くなることが分かった。
実施例1〜10と比較例1〜3の結果から、メインフィルター上流層に適度な切除開口部または破断切れ目部を形成することにより、白血球除去性能は低下せず血液処理時間が大幅に短縮することが分かった。以上の結果を表1〜表5にまとめた。なお、表1は実施例1〜実施例3の結果を示し、表2は実施例4〜実施例6の結果を示し、表3は実施例7〜実施例9の結果を示し、表4は実施例10の結果を示し、表5は比較例1〜比較例3の結果を示している。
【0070】
【表1】

【0071】
【表2】

【0072】
【表3】

【0073】
【表4】

【0074】
【表5】

【符号の説明】
【0075】
1A〜1D…白血球除去フィルター(血液処理フィルター)、5…入口、6…出口、7…可撓性容器7、9A〜9D…フィルター濾材(濾材)、21…プレフィルター(第1の濾材層群)、21a…上流濾材層、21b…濾材層、25…第2メインフィルター(第2の濾材層群)、25a,25b…濾材層、25c…下流濾材層、31,33…切除開口部、35a,35b,37a,37b…破断切れ目部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも血液の入口と出口とを有する容器と、前記容器の入口側と出口側とを区画すると共に、前記入口から流入する血液中の微小凝集物、白血球および血小板の少なくとも一種を除去する濾材とを有する血液処理フィルターにおいて、
前記濾材は、複数の濾材層から成る濾材層郡を複数備え、
前記複数の濾材層郡は、血液流入側の最も上流に配置された第1の濾材層郡と、前記第1の濾材層郡よりも下流側に配置されると共に、平均繊維径が最も小さな濾材層を有する第2の濾材層郡とを含み、
前記複数の濾材層郡を形成する複数の濾材層のうち、前記第1の濾材層郡の最上流に配された上流濾材層及び前記第2の濾材層郡の最下流に配された下流濾材層を除いて、前記下流濾材層よりも上流に配された少なくとも一つの濾材層には、切除開口部及び破断切れ目部の少なくとも一方が形成されていることを特徴とする血液処理フィルター。
【請求項2】
前記濾材層には一または複数の前記切除開口部が形成されており、前記切除開口部一つ当りの開口面積は3mm〜400mmであり、前記切除開口部が形成された前記濾材層の濾過面積に対する前記切除開口部の総開口面積の割合は、0.02%〜15%であることを特徴とする請求項1記載の血液処理フィルター。
【請求項3】
前記濾材層には破断切れ目部が形成されており、前記破断切れ目部の破断長さは3mm〜70mmであることを特徴とする請求項1または2記載の血液処理フィルター。
【請求項4】
前記濾材はシート状フィルター材であり、前記容器は可撓性容器であり、
前記シート状フィルター材は前記可撓性容器に溶着されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載の血液処理フィルター。
【請求項5】
前記複数の濾材層郡のうち、前記切除開口部及び前記破断切れ目部の少なくとも一方が形成された前記濾材層を有する二つの前記濾材層郡が隣接して重なり合っており、
一方の前記濾材層郡の前記濾材層に形成された前記切除開口部または前記破断切れ目部と、他方の前記濾材層郡の前記濾材層に形成された前記切除開口部または前記破断切れ目部とは、互いに重ならずに外れた位置に設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項記載の血液処理フィルター。
【請求項6】
前記切除開口部及び前記破断切れ目部の少なくとも一方が形成された前記濾材層の厚みは0.1mm〜0.5mmであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項記載の血液処理フィルター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−255043(P2011−255043A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−133334(P2010−133334)
【出願日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(507365204)旭化成メディカル株式会社 (65)
【Fターム(参考)】